JP2009289817A - 光電変換装置およびその製造方法 - Google Patents

光電変換装置およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】微結晶材料を一部に含む光電変換層である場合でも、生産スループットを悪化させずに製造することができる光電変換装置を得ること。
【解決手段】絶縁透光性基板2上に、透明導電性材料からなる表面電極層11−2と、バンドギャップの異なる光電変換層を基板面に垂直な方向に複数含む光電変換体12と、裏面電極層18と、を含むセル10−1〜10−2が複数配列して形成されるとともに、セル10−2の裏面電極層18−2が、セル10−3の表面電極層11−3と、このセル10−3に対向する光電変換体12の側面上を介して接続される光電変換装置1において、裏面電極層18−2が形成される光電変換体12の側面は、側面の下部と表面電極層11−3との交線を含み基板面に垂直に形成した面との間の距離が基板から離れるにしたがって大きくなるように形成されている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、バンドギャップの異なる光電変換層を複数段含む積層構造を有する薄膜の光電変換装置およびその製造方法に関するものである。
太陽光発電システムは21世紀の地球環境を化石エネルギーの燃焼によるCO2ガスの増加から守るクリーンエネルギーとして期待されており、その生産量は世界中で爆発的に増加している。このため、世界中でシリコンウェハが不足するという事態が発生している。そのため、近年では、シリコンウェハの供給量に律速されない光電変換層(半導体層)が薄膜からなる薄膜太陽電池の生産量が急速に伸びつつある。
従来から薄膜太陽電池では、太陽光スペクトルを幅広く有効利用すべく、バンドギャップの異なる材料からなる複数の光電変換層を絶縁透光性基板上に積層したタンデム構造のものが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。このタンデム構造の薄膜太陽電池は、透光性基板上に、透明導電性材料からなる表面電極層、p−i−n構造のアモルファスシリコン膜とp−i−n構造の微結晶シリコン膜との積層膜などからなる光電変換層、およびAgなどの裏面電極層が順に積層された複数のセルが、一方向に直列に接続された構造を有する。ここで、表面電極層は、第1の分離溝で隣接するセルの表面電極層と分離され、かつ隣接する一方の光電変換層と部分的に重畳されて形成される。また、光電変換層と裏面電極層は、第2の分離溝で隣接するセルの光電変換層と裏面電極層と分離され、かつ隣接する他方の表面電極層と部分的に重畳されて形成される。そして、裏面電極層は、光電変換層を貫通して形成された接続溝を介して、部分的に重畳する隣接する他方のセルの表面電極層と接続される。
特開2005−045129号公報
上記したように、光電変換層の一部に微結晶材料を用いて、太陽電池として機能させるのに十分な電流を発生させるためには、一般的に数μmもの膜厚が要求される。たとえば、光電変換層の一部に微結晶シリコン膜を用いた場合では2μmの膜厚が必要であり、微結晶シリコンゲルマニウム膜を用いた場合では1μmの膜厚が必要となる。したがって、これらの微結晶材料を数層重ねたタンデム構造の薄膜太陽装置を形成すると、光電変換層の総膜厚は数μm以上となってしまう。
一方、上記特許文献1に記載のタンデム構造の薄膜太陽電池の製造方法においては、表面電極層の上に積層した光電変換層をレーザスクライビングで接続溝を形成した後に、裏面電極層が形成される。ここで、上記のタンデム構造の場合には、深さ数μm以上の接続溝を埋めるように裏面電極層を形成しなければならない。そして、この裏面電極層を形成した後、再びレーザスクライビングで裏面電極層と光電変換層とを短冊状に素子分離する必要があった。
つまり、従来では、真空プロセスでの光電変換層の形成、レーザスクライビングでの接続溝の形成、真空プロセスでの裏面電極層の形成、レーザスクライビングでの分離溝の形成というように、裏面電極層を隣接するセルの表面電極層と接続するための接続溝を形成する処理と、セルを分離する分離溝を形成する処理と、を別々に行っており、薄膜太陽電池の製造に多くの時間を費やしてしまい、その結果、コストがかかってしまうという問題点があった。また、裏面電極層の形成時に、深さが数μm以上もある接続溝を導電性材料で満たすのに多くの時間を要し、生産スループットを悪化させてしまうという問題点もあった。
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、微結晶材料を一部に含む光電変換層である場合でも、生産スループットを悪化させずに製造することができる光電変換装置の製造方法を得ることを目的とする。また、この製造方法で製造される光電変換装置を得ることも目的とする。
上記目的を達成するため、この発明にかかる光電変換装置の製造方法は、透光性の基板上に、透明導電性材料からなる膜を形成し、各セル間を分離するようにパターニングして前記各セルの第1の電極層を形成する第1の工程と、前記第1の電極層を形成した前記基板上に、バンドギャップの異なる光電変換層を基板面に垂直な方向に複数含む光電変換層積層体を形成する第2の工程と、前記光電変換層積層体を構成する各光電変換層ごとに、上の光電変換層から下の光電変換層になるほど幅が狭くなる切断溝を形成し、前記セルごとに分離された光電変換積層体を分離する分離溝を形成する第3の工程と、前記各セルに対応して分離した前記光電変換積層体の上面と、前記セルの分離溝の一方の側面と、隣接するセルの第1の電極層の一部とに接する、第2の電極層を形成する第4の工程と、を含むことを特徴とする。
この発明によれば、微結晶材料を一部に含み膜厚が数μm以上となる光電変換層を少なくとも1層有する光電変換層積層体を形成し、この光電変換層積層体をセルごとに分離する溝を形成して光電変換体を形成した後に、光電変換体の上面と、光電変換体の配列方向に形成される側面のうち一方の側面と隣接するセルの第1の電極上に第2の電極層を形成するようにしたので、第2の電極層を隣接するセルの第1の電極層と接続するための接続溝を形成する処理と、セルを分離する分離溝を形成する処理と、を同時に行うことができる。その結果、光電変換装置の製造に要する時間を従来に比して抑え、製造コストを下げることができるという効果を有する。また、第2の電極層の形成に当たって、光電変換体の第2の電極層を形成する側面を、側面の下部と第1の電極層との交線を含み基板面に垂直に形成した面との間の距離が基板から離れるにしたがって大きくなるように形成したので、光電変換体の膜厚が数μm以上となった場合でも、この側面上に形成される第2の電極層の膜厚が側面上のどの位置でもほぼ均一となり、この部分における抵抗値を十分に低くすることができるという効果も有する。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる光電変換装置およびその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下の実施の形態で用いられる光電変換装置の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
図1は、この発明にかかる光電変換装置の実施の形態の構造の一例を模式的に示す断面図であり、図2は、傾斜した側面を有するセルの様子を部分的に示す斜視図である。この光電変換装置1は、ガラス基板や樹脂基板などの絶縁透光性基板2上に複数のセル10−1,10−2,10−3が所定の方向(図中では、左右方向)に直列に接続されている。それぞれのセル10は、表面電極層11(11−2,11−3)、第1の光電変換層13、第1の中間層14、第2の光電変換層15、第2の中間層16、第3の光電変換層17、および裏面電極層18(18−1,18−2,18−3)が順に積層された光電変換素子によって形成される。ここで、第1〜第3の光電変換層13,15,17が形成される絶縁透光性基板2上の領域をセル形成領域Rというものとする。また、この光電変換装置において、光入射側の面を表面といい、表面とは反対側の面を裏面という。
表面電極層11は、酸化錫などの透明導電性材料で構成される。表面電極層11は、セル10−1,10−2,10−3ごとに分離溝20によって分離して形成されるが、その形成位置はセル形成領域Rとは一致しておらず、自身が属するセル形成領域Rの一部と、隣接する(この図の例では、左側に隣接する)セル形成領域Rの一部にまたがって形成される。つまり、セル形成領域Rには、そのセル形成領域Rで機能する表面電極層11と、隣接するセル形成領域Rで機能する表面電極層11とが、距離をおいて形成されている。たとえば、セル10−2が形成されるセル形成領域Rには、セル形成領域Rのほぼ左半分の領域にはセル10−2の光電変換素子の一部を構成する表面電極層11−2が形成され、セル形成領域Rのほぼ右半分の領域にはセル10−3の光電変換素子の一部を構成する表面電極層11−3が形成されている。
第1の光電変換層13は、たとえばp−i−n構造を有する非晶質シリコン膜によって構成され、第2と第3の光電変換層15,17は、たとえばp−i−n構造を有する微結晶シリコン膜によって構成される。また、第2と第3の光電変換層17を構成する微結晶シリコンの平均粒径をそれぞれr2,r3とすると、r2>r3となるようにそれぞれの光電変換層が形成される。つまり、入射面側である絶縁透光性基板2に近いほどバンドギャップが大きな光電変換層によって形成されるようにしている。ここで、第2と第3の光電変換層15,17は、微結晶シリコン膜で構成されるので、それぞれ数μm以上の厚さを有する。
第1の中間層14は、酸化シリコンや酸化亜鉛、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明導電性材料によって構成され、第1の光電変換層13側から入射した光の一部を、第1の光電変換層13側に反射させるとともに、残りの光を後方の第2の光電変換層15側に透過させる。より具体的には、第1の中間層14は、第1の光電変換層13側から入射した光のうち、第1の光電変換層13で吸収可能な波長範囲の光を第1の光電変換層13側に反射させ、その他の波長範囲の光を第2の光電変換層15側に透過させる機能を有することが望ましい。
第2の中間層16は、酸化シリコンや酸化亜鉛、ITOなどの透明導電性材料によって構成され、第2の光電変換層15側から入射した光の一部を、第2の光電変換層15側に反射させるとともに、残りの光を後方の第3の光電変換層17側に透過させる。この第2の中間層16も、具体的には、第2の光電変換層15側から入射した光のうち、第2の光電変換層15で吸収可能な波長範囲の光を第2の光電変換層15側に反射させ、その他の波長範囲の光を第3の光電変換層17側に透過させる機能を有することが望ましい。
以下では、第1の光電変換層13、第1の中間層14、第2の光電変換層15、第2の中間層16および第3の光電変換層17からなる積層体を、光電変換体12という。
裏面電極層18は、Al,Ag,Au,Cu,Pt,Crなどから選ばれる少なくとも1つの導電性材料、または酸化亜鉛、ITO、二酸化錫などの透明導電性材料とAl,Ag,Au,Cu,Pt,Crなどから選ばれる少なくとも1つの導電性材料との積層体によって形成され、第1〜第3の光電変換層13,15,17で発電された光電流を収集するとともに、第3の光電変換層17で吸収され難い長波長の光を第3の光電変換層17側に反射させる機能も有する。
この裏面電極層18は、光電変換体12のセル10−1,10−2,10−3の配列方向の一方の側面の全面にも、ほぼ同じ厚さで形成され、下部で隣接するセル10から延びる表面電極層11と接続されている。つまり、裏面電極層18は、光電変換体12のセルの配列方向の一方の側面をコンフォーマルに被覆している。たとえば、セル10−2の裏面電極層18−2は、図中の右隣に隣接するセル10−3の表面電極層11−3とセル10−2,10−3間の分離溝21の底部で接続されている。
また、光電変換体12のセル10−1,10−2,10−3の配列方向の一方の側面、図では光電変換体12の裏面電極層18が形成される側の側面が、絶縁透光性基板2の基板面に垂直な方向からある角度θを持って傾いて形成されている。以下では、この光電変換体12の側面が基板面に垂直な方向となす角度のことを側面角度θというものとする。図1や図2に示されるように、絶縁透光性基板2の表面から離れるほど、隣接する光電変換体12との距離が大きくなるように、側面が傾いている。つまり、光電変換体12の側面の基板表面となす角度が鋭角となっている。また、光電変換体12のセル10の配列方向の一方の側面は、平面である必要はなく、裏面電極層18が形成される側の側面は、この側面の下部と表面電極層11との交線を含み基板面に垂直に形成した面との間の距離が絶縁透光性基板2から離れるにしたがって大きくなるように形成されていればよく、図1や図2に示されるように、上の層に行くほど、セル10の配列方向の幅が不連続に短くなる階段状の構造であってもよい。
なお、光電変換体12のセル10の配列方向の他方の側面は、基板面に垂直であってもよいし、基板面に垂直な方向からある角度θを持って傾いていてもよい。また、後者の場合には、上の層に行くほど、セルの配列方向の幅が不連続に狭くなる階段状の構造であってもよい。ただし、この側面には裏面電極層18は形成されない。
以上のような構成によって、たとえばセル10−2の裏面電極層18−2が隣接するセル10−3の表面電極層11−3と接続され、セル10−2の表面電極層11−2が隣接する他のセル10−1の裏面電極層18−1と接続され、これが繰り返されることによって、セル10−1〜10−3が直列に接続された光電変換装置1が形成される。
ここで、このような構造の光電変換装置1における動作の概略について説明する。絶縁透光性基板2の裏面(セル10が形成されていない方の面)から太陽光が入射すると、第1〜第3の光電変換層13,15,17で自由キャリアが生成され、電流が発生する。各セル10で発生した電流は表面電極層11と裏面電極層18を介して隣接するセル10に流れ込み、光電変換装置1(モジュール)全体の発電電流を生成する。たとえば、図1のセル10−3で発生した電流Iは表面電極層11−3を通り、隣接するセル10−2の光電変換体12のセル10−3側の側面と上面に形成された裏面電極層18−2に流れる。ここで、この実施の形態による光電変換装置1では、光電変換体12の側面に形成されている裏面電極層18は、光電変換体12の上部から底部まで十分な膜厚を有しているので、この光電変換体12の側面における裏面電極層18の電気抵抗は低く、セル10−3で発生した電流を低損失でセル10−2まで流すことができる。これは、図1や図2に示されるように、セル10−2の光電変換体12のセル10−3側の側面が、0°でない側面角度θ(セル10−2の光電変換体12のセル10−3側の側面が基板面に対して90°でない鋭角のある角度)を持って形成される構造となっており、裏面電極層18をスパッタリング法などで形成する際に、光電変換体12の側面を裏面電極層18がコンフォーマルに被覆することができるからである。
つぎに、各セルの光電変換体12の裏面電極層18が形成される側の側面角度θの望ましい範囲について説明する。図3は、側面角度θを0〜90°まで変化させた光電変換素子の側面における裏面電極層の段差被覆率の関係を示す図である。この図において、横軸は、光電変換体12の側面角度θ[°]であり、縦軸は各側面角度θにおける段差被覆率[%]である。ここで、段差被覆率とは、光電変換体12の上面における裏面電極層18(Ag)の膜厚tmaxと光電変換体12の底部における側面の膜厚tminの比(tmin/tmax)から求められる値のことである。また、ここでは、隣接する光電変換素子(光電変換体12)間に形成される分離溝21の深さを2μmとし、ここにスパッタリング法で目標膜厚200nmの裏面電極層18(Ag)を形成した場合の結果を示した。この図に示されるように、側面角度θが0〜20°の間では、側面角度θが大きくなるにつれて、段差被覆率が急激に改善され、側面角度θが約20°で段差被覆率は97%になり、側面角度θが60°以上で段差被覆率はほぼ100%となった。
図4−1は、側面角度が0°の場合の裏面電極層の光電変換体の側面への被覆の様子を模式的に示す断面図であり、図4−2は、側面角度が20°の場合の裏面電極層の光電変換体の側面への被覆の様子を模式的に示す断面図である。図4−1に示されるように、側面角度θが0°の場合には、光電変換体12の側面の上部には薄く裏面電極層18が形成されるが、分離溝21の底部に向かうにつれてその厚さが減少していき、分離溝21の底部では裏面電極層18が形成されているのかいないのかわからない状態となっている。このため、段差被覆率はほぼ0%となっている。一方、図4−2に示されるように、側面角度θが20°の場合には、光電変換体12の側面の上部から底部に至るまでほぼ均一な厚さで裏面電極層18が形成されている。これは、側面角度を持たせることで、飛来したスパッタ粒子が光電変換体12の側面の下部(分離溝21の底部)まで入り込みやすくなり、光電変換体12の側面の下部における裏面電極層18の製膜がより促進されるためである。このように、側面角度θが20°以上の場合に、裏面電極層18をコンフォーマルに形成することができる。
図5は、光電変換素子の側面角度θと裏面電極層の電気抵抗値との間の関係を示す図である。この図において、横軸は光電変換体12の裏面電極層18が形成された側面の側面角度θ[°]を示し、縦軸は、光電変換体12の上面部と分離溝21の底面部との間に形成された裏面電極層18の電気抵抗率[Ω]を示している。ここで、裏面電極層18として、Ag膜を用いている。この図に示されるように、側面角度θが0〜10°の間では、側面角度θの増加に伴い、Ag膜が良好な段差被覆性で分離溝21に形成されるので、電気抵抗値が急激に減少している。そして、側面角度θが10°以上では、電気抵抗値はほぼ一定の値となっている。
以上より、側面角度θが0°よりも大きければ段差被覆率が改善されるため、側面角度θは0°より大きければよい。しかし、側面角度θが0〜10°の間では、光電変換体12の側面において裏面電極層18のカバレッジが不十分となり、十分な厚さの裏面電極層18が形成されず、電気抵抗値が高くなる。その結果、セル10が直列接続されて構成される光電変換装置1の直列抵抗成分が増加し、発電効率が低下してしまう。また、段差被覆率で見た場合には、側面角度θは20°以上であることが望ましいが、電気抵抗値を見ると側面角度θが10°以上で電気抵抗値がほぼ一定の値となることから、電気抵抗値が裏面電極層18本来の値となる10°以上であることがより好ましい。
ただし、側面角度θを単調に増加させた場合、光電変換層13,15,17の体積が減少するため、発電電流が減少してセル効率が低下してしまう。図6は、側面角度θと光電変換装置の1セル当たりの発電電流密度Jscとの間の関係を示す図である。この図において、横軸は光電変換体12の裏面電極が形成された側面の側面角度θ[°]であり、縦軸は1セル当りの発電電流密度Jsc[mA/cm2]を示している。なお、ここでは、つぎに示す(1)〜(4)の仮定の下、θを0°から90°の範囲で変化させた場合の発電電流密度Jscを概算している。
(1)光照射時に1セル当たりの光電変換層が発生する最大電流密度を5mA/cm2とする。
(2)θ=0時の1セルあたりの光電変換層の体積を1.0m(D)×1.0cm(W)×2μm(H)とする。
(3)裏面電極層18はθ値に関係なく光電変換体12の側面にコンフォーマルに形成されるものとする。
(4)光電変換層の体積と発電電流値とは線形関係にあるものとする。
図6に示されるように、発電電流は側面角度θが80°よりも大きい領域から減少し始めて、θ>88°で急激に減少している。そのため、側面角度をθ≦88°となるように、より好ましくはθ≦80°となるように光電変換体12の側面を形成することで、セル効率の低下を防止することができる。
以上をまとめると、側面角度を0°<θ≦88°となるように、より好ましくは10°≦θ≦80°となるように、光電変換体12の側面を形成するように、セル分離加工を実施することで、発電電流を損ねることなく、かつ電気抵抗値が十分に低い良好なカバレッジの裏面電極層18を実現することが可能となる。
つぎに、上記した構造を有する光電変換装置1の製造方法について説明する。図7−1〜図7−9は、この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図であり、図8は、図7−3の斜視図である。まず、絶縁透光性基板2上に酸化亜鉛、酸化錫、またはITOなどを含む透明導電性材料からなる表面電極層11をスパッタ法などの成膜方法によって形成し、フォトリソグラフィ技術やレーザスクライビングなどの方法で、所定の位置に分離溝20を形成して分離し、パターニングを行う(図7−1)。
ついで、パターニングした表面電極層11上に、第1の光電変換層13、第1の中間層14、第2の光電変換層15、第2の中間層16、第3の光電変換層17を順に積層する(図7−2)。ここで、第1〜第3の光電変換層13,15,17は、p−i−n型の三層構造からなる結晶シリコン系半導体膜または非晶質シリコン系半導体膜などの半導体薄膜からなり、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって形成される。また、上記したように、ここでは、第1の光電変換層13は、p−i−n構造を有する非晶質シリコン膜によって構成され、第2と第3の光電変換層15,17は、p−i−n構造を有する微結晶シリコン膜によって構成される。また、第1と第2の中間層14,16は、酸化シリコン系、または酸化亜鉛やITOなどの透明導電性材料によって構成される。
ついで、第3の光電変換層17の上からレーザ光201を、表面電極層11間に形成した分離溝20とほぼ平行に、またこの分離溝20の位置と重ならない位置にライン状に照射し、第3の光電変換層17の所定の位置に切断溝211を加工する(図7−3、図8)。この加工工程では、レーザ光201は、第3の光電変換層17のみに吸収され、第2の中間層16では吸収されにくい波長域の光を使用する。たとえば、上記した材料で各層が構成される場合には、このようなレーザ光として、通常、波長525nmの緑色レーザを使用する。波長525nmの入射光に対する、シリコン系材料の光吸収係数は0.1−0.6cm-1である。一方、透明電極系材料の光収集係数は0.01−0.02cm-1とシリコン系材料に比べて約1桁小さくなっている。このため、波長525nmのレーザ光を用いることで、第3の光電変換層17のみを選択的に加工することができる。なお、図8では、切断溝211の形成途中の状態を示している。
その後、レーザ光202を切断溝211の上から、この切断溝211に沿って照射し、第2の中間層16に切断溝212の加工を施す(図7−4)。ここで、レーザ光202は、第2の中間層16のみに吸収され、第2の光電変換層15の表面で反射される波長域の光を使用する。たとえば、上記した材料で各層が構成される場合には、このようなレーザ光202として、波長1,050nmの赤外レーザを使用する。波長1,050nmの入射光に対するシリコン系材料の光吸収係数は約0.01cm-1であるのに対し、透明電極系材料はプラズマ振動による吸収が生じるため約0.5cm-1と一桁以上も大きくなっている。よって、このレーザ光を用いることで、第2の中間層16のみを選択的に加工することができる。なお、このとき加工される切断溝212の幅は切断溝211よりも小さくなるようにレーザ光202の出力パワーを調整する。
つぎに、レーザ光203を切断溝212に沿って上から照射し、第2の光電変換層15に対して切断溝213を加工する(図7−5)。ここで、レーザ光203としては、第2の光電変換層15のみに吸収され、第1の中間層14ではほとんど吸収されない波長域の光を使用する。上記した材料で各層が構成される場合には、レーザ光203として波長525nmの緑色レーザを使用することができる。また、切断溝213の幅は切断溝212よりも小さくなるようにレーザ光203のパワーを調整する。
その後、レーザ光204を切断溝213に沿って照射し、第1の中間層14に切断溝214の加工を施す(図7−6)。ここで、レーザ光204は、第1の中間層14のみに吸収され、第1の光電変換層13でほとんど吸収されない波長域の光を使用する。上記した材料で各層が構成される場合には、このようなレーザ光204として、波長1,050nmの赤外レーザを使用することができる。なお、このとき加工される切断溝214の幅は切断溝213よりも小さくなるようにレーザ光204の出力パワーを調整する。
さらに、レーザ光205を切断溝214に沿って上から照射し、第1の光電変換層13に対して切断溝215を加工する(図7−7)。ここで、レーザ光205としては、第1の光電変換層13のみに吸収され、表面電極層11ではほとんど吸収されない波長域の光を使用する。上記したレーザ光を用いる場合には、レーザ光205として波長525nmの緑色レーザを使用することができる。また、切断溝215の幅は切断溝214よりも小さくなるようにレーザ光205のパワーを調整する。
以上の図7−3〜図7−7の工程によって、セル10ごとに光電変換層が分離溝21によって分離され、光電変換体12が形成される。また、この光電変換体12の側面は、下層に行くほど紙面の左右方向の長さが長くなる階段状の側面を有しており、大きく見た場合には、基板面に垂直な方向に対して所定の角度傾斜している。
その後、反射率が高くかつ電気伝導率の高い銀やアルミニウムなどの導電性材料からなる裏面電極層18を、分離された光電変換体12を有する絶縁透光性基板2上に形成する(図7−8)。このとき、光電変換体12の側面は、基板面に対して垂直でない鋭角を有しているので、光電変換体12の側面にはコンフォーマルに裏面電極層18が堆積する。
最後に、絶縁透光性基板2の裏面側からレーザ光206を切断溝215に沿って照射し、分離溝21の底面部に形成されている裏面電極層18のうち、一部のみが表面電極層11と接続されるように、他の部分を除去する(図7−9)。これによって、隣接するセル10間の裏面電極層18は電気的に絶縁される。以上の工程によって、素子分離溝21が形成され、図1と図2に示されるような光電変換装置が完成する。
なお、上述した説明では、光電変換体12に第1〜第3の光電変換層13,15,17が含まれる構造の場合を示したが、この構造に限られるものではなく、光電変換層が複数含まれ、そのうちの少なくとも1層が微結晶半導体層からなる光電変換層である光電変換体12であれば、この実施の形態を適用することができる。また、上記した例では、光電変換層の材料としてシリコンを例に挙げたが、他の半導体材料であってもよい。
この実施の形態によれば、微結晶材料を一部に含み膜厚が数μm以上となる光電変換層を有する光電変換装置を形成する場合に、複数積層された光電変換層を形成した後、セル10を直列に接続する方向の側面の側面角度が0°でない角度となるように分離溝21を形成して各セル10に光電変換体12を形成した後に、所定の厚さとなるように裏面電極層18を堆積させ、分離溝21に形成された裏面電極層18の一部を除去するようにしたので、セル10間を分離して裏面電極層18を形成するための工程数を従来に比して削減し、生産スループットを向上させることができるという効果を有する。また、光電変換体12の側面の側面角度が90°でない角度となるようにしたので、光電変換体12の側面や分離溝21の底面に均一な厚さの裏面電極層18を形成することもできるという効果を有する。その結果、モジュール化後の直列抵抗成分を低減させることができ、光電変換装置1全体の発電効率を上げることができるという効果も有する。
以上のように、この発明にかかる光電変換装置の製造方法は、光電変換層が薄膜で形成される薄膜太陽電池に有用である。
この発明にかかる光電変換装置の実施の形態の構造の一例を模式的に示す断面図である。 傾斜した側面を有するセルの様子を部分的に示す斜視図である。 側面角度θを0〜90°まで変化させた光電変換素子の側面における裏面電極層の段差被覆率の関係を示す図である。 側面角度が0°の場合の裏面電極層の光電変換体の側面への被覆の様子を模式的に示す断面図である。 側面角度が20°の場合の裏面電極層の光電変換体の側面への被覆の様子を模式的に示す断面図である。 光電変換素子の側面角度θと裏面電極層の電気抵抗値との間の関係を示す図である。 側面角度θと光電変換装置の1セル当たりの発電電流密度Jscとの間の関係を示す図である。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その1)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その2)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その3)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その4)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その5)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その6)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その7)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その8)。 この発明にかかる光電変換装置の製造方法の一例を模式的に示す断面図である(その9)。 図7−3の斜視図である。
符号の説明
1 光電変換装置
2 絶縁透光性基板
10 セル
11 表面電極層
12 光電変換体
13 第1の光電変換層
14 第1の中間層
15 第2の光電変換層
16 第2の中間層
17 第3の光電変換層
18 裏面電極層
20,21 分離溝
211〜215 切断溝
201〜206 レーザ光

Claims (6)

  1. 透光性の基板上に、透明導電性材料からなる膜を形成し、各セル間を分離するようにパターニングして前記各セルの第1の電極層を形成する第1の工程と、
    前記第1の電極層を形成した前記基板上に、バンドギャップの異なる光電変換層を基板面に垂直な方向に複数含む光電変換層積層体を形成する第2の工程と、
    前記光電変換層積層体を構成する各光電変換層ごとに、上の光電変換層から下の光電変換層になるほど幅が狭くなる切断溝を形成し、前記セルごとに分離された光電変換積層体を分離する分離溝を形成する第3の工程と、
    前記各セルに対応して分離した前記光電変換積層体の上面と、前記セルの分離溝の一方の側面と、隣接するセルの第1の電極層の一部とに接する、第2の電極層を形成する第4の工程と、を含むことを特徴とする光電変換装置の製造方法。
  2. 前記第2の工程において、積層される上の光電変換層と下の光電変換層との間に透明材料からなる中間層を形成する工程をさらに含み、
    前記第3の工程は、前記中間層の光吸収係数に比べて前記上の光電変換層の光吸収係数が大きい第1のレーザ光を照射して前記上の光電変換層に第1の加工溝を形成する工程と、前記下の光電変換層の光吸収係数に比べて前記中間層の光吸収係数が大きい第2のレーザ光を照射して前記中間層に第1の加工溝よりも幅が狭い第2の加工溝を形成する工程と、前記下の光電変換層に第3のレーザ光を照射して前記下の光電変換層に前記第2の加工溝よりも幅が狭い第3の加工溝を形成する工程と、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の光電変換装置の製造方法。
  3. 透光性の基板上に、透明導電性材料によって形成される第1の電極層と、バンドギャップの異なる光電変換層を基板面に垂直な方向に複数含む光電変換体と、光を反射する導電性の材料によって形成される第2の電極層と、を含むセルが複数配列して形成され、端部に位置しない前記セルの前記第2の電極層が、隣接する一方のセルの第1の電極層と、該隣接するセルに対向する前記セルの光電変換体の側面上を介して接続される光電変換装置において、
    前記第2の電極層が形成される前記光電変換体の側面は、前記側面の下部と前記第1の電極層との交線を含み基板面に垂直に形成した面との間の距離が前記基板から離れるにしたがって大きくなるように形成されていることを特徴とする光電変換装置。
  4. 前記第2の電極層が形成される前記光電変換体の側面は、基板面に垂直な方向に対して、ある大きさの側面角度を有することを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
  5. 前記側面角度は、0°より大きく88°以下であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換装置。
  6. 前記第2の電極層が形成される前記光電変換体の側面は、前記光電変換体の前記基板側に形成される層ほど端部が前記隣接するセル側に張り出す階段状の構造を有していることを特徴とする請求項3に記載の光電変換装置。
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