JP2009286979A - リグニン誘導体樹脂組成物及びそれを用いた基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 リグニン化合物と架橋剤を含む樹脂組成物を、基材に含浸させたプリプレグであって、前記リグニン化合物は、バイオマスを分解して得られるフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するリグニン化合物、及び該リグニン化合物のフェノール性水酸基に反応性基を導入したリグニン誘導体から選ばれる1種又は2種であることを特徴とするプリプレグ。前記プリプレグを、1枚又は2枚以上の積層体を硬化させた基板。
【選択図】 なし
Description
(1) リグニン化合物と架橋剤を含む樹脂組成物を、基材に含浸させたプリプレグであって、前記リグニン化合物は、バイオマスを分解して得られるフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するリグニン化合物、及び該リグニン化合物のフェノール性水酸基に反応性基を導入したリグニン誘導体から選ばれる1種又は2種であることを特徴とするプリプレグ。
(2) 前記樹脂組成物は、さらに充填材を含む第(1)項に記載のプリプレグ。
(3) 前記樹脂組成物は、リグニン化合物と架橋剤の合計量において、リグニン化合物の含有量が40〜95質量%、架橋剤の含有量が5〜60質量%である第(1)項又は第(2)項に記載のプリプレグ。
(4) 前記反応性基が、エポキシ基である第(1)項〜第(3)項のいずれか1項に記載のプリプレグ。
(5) 第(1)項〜第(4)項のいずれか1項に記載のプリプレグを、1枚又は2枚以上の積層体を硬化させた基板。
また、該リグニン化合物にフェノール性水酸基以外の反応性基を有するリグニン誘導体は、後述するエポキシ基、ビニル基、エチニル基、マレイミド基、シアネート基及びイソシアネート基等の反応性基を、前記フェノール性水酸基に導入したものである。
前記リグニン誘導体を含めたリグニン化合物は、架橋部位を多数有するため、プリプレグに用いた場合、耐熱性などの特性に優れたものとなる。
本発明に用いるリグニン化合物としては、上記の中でも、反応性や取扱いのし易さの上で、バイオマスを分解して得られるリグニン分解物が好ましい。
リグニン化合物の製造方法の具体例としては、まず、前記バイオマスを一定の大きさに調整し、次いで、これを、溶媒、任意に触媒、と共に、撹拌機及び加熱装置付の耐圧容器に入れて、加熱及び加圧をしながら、撹拌して、前記バイオマスの分解処理を行う。次いで、耐圧容器の内容物をろ過して、ろ液を除去し、水不溶分を水で洗浄し、分離する。次いで、前記水不溶分を、リグニン化合物が可溶な溶媒、例えば、アセトンなどに浸漬して、リグニン化合物をアセトンに抽出して、前記アセトンを留去することにより、リグニン分解物としてリグニン化合物を得ることができる。
前記高圧処理における圧力としては1.0MPaから40MPaが好ましく、さらに好ましくは1.5MPaから25MPaである。前記圧力は、前記範囲外でも使用できるが、より高圧で処理することで、長時間処理を施した場合と同等の効果が得られる。
また、前記製造方法の具体例においては、フェノール性水酸基当量と分子量は独立に制御が可能であり、例えば、処理温度にかかわらず、短時間処理によりフェノール性水酸基当量(主にフェノール性水酸基)が200前後と大きいものが得られ、長時間処理により100前後で飽和して小さなフェノール性水酸基当量が得られる。
反応性基としてエポキシ基を導入する場合、例えば、上記で得たリグニン分解物を、エピクロロヒドリンに溶解し、減圧還流下、水酸化ナトリウムなどの塩基触媒を用いて反応させることで得られる。
上記ワニスにおいて有機溶剤の使用量としては、リグニン樹脂組成物100質量部に対して、20〜400質量部が好ましく、50〜200質量部がより好ましい。
乾燥して得られたプリプレグにおいて、ワニスに使用した有機溶剤が80質量%以上揮発していることが好ましい。
上記プリプレグの製造条件等を説明したが、これらに限定されない。
本発明におけるプリプレグ又はそれを複数枚積層した積層体に、通常150〜280℃、好ましくは180℃〜250℃の範囲の温度で、通常0.5〜20MPa、好ましくは1〜8MPaの範囲の圧力で、加熱しながら加圧して成形することにより、単層の基板及び上記積層体より得られる積層板である基板を製造することができる。
また、上記製造工程において、必要に応じて、上記プリプレグ又は積層体の片面又は両面に金属箔を積層して、加熱加圧して成形することにより金属張積層板を製造することができる。金属箔を使用して金属張積層板とすることにより、金属層に回路加工を施してプリント配線回路板とすることができる。
[リグニン分解物ワニスの製造]
孟宗竹粉(60メッシュアンダー)15gと純水80gを、300mlオートクレーブに導入し、内容物を300rpmで攪拌しながら、1.6MPa、200℃で120分間処理して、孟宗竹を分解した。次いで、分解物をろ過し、純水で洗浄することで、水不溶部10.0gを分離した。この水不溶部をアセトン200mlに8時間浸漬した後、ろ過することでアセトン可溶部を回収した。次いで、前記アセトン可溶部より、アセトンを留去後、乾燥することで、リグニン分解物(A)3.2gを得た。次いで、上記リグニン分解物の製造の操作を繰り返して得たリグニン分解物(A)をメタノールで希釈して樹脂分50質量%のリグニン分解物(A)ワニス330gを得た。
攪拌機、冷却管を備えた300mL3つ口フラスコにフェノール240g、37質量%ホルムアルデヒド水溶液240g、トリエチルアミン4.8gからなる混合物を、60℃で2時間反応させ、次に減圧下で濃縮し、これをメタノールで希釈して樹脂分50質量%のレゾール型フェノール樹脂ワニス670gを得た。
上記で得られたリグニン分解物(A)ワニス33質量部とレゾール型フェノール樹脂ワニス67質量部とを混合し、基材含浸用の樹脂ワニス1000gを得た。
次に、上記で得られた基材含浸用の樹脂ワニスを樹脂含有率55質量%(プリプレグ全体に対する割合)となるように、クラフト紙(坪量135g/m2)へ、ディップコーター装置で塗工し、160℃で5分間乾燥してプリプレグを得た。このプリプレグ8枚とその表裏両面に接着剤つき銅箔(FSM日本電解(株)製、厚さ18μm)を重ね合わせ、200℃、5MPa、10分加熱加圧成形して、厚さ1.6mmの積層板を得た。
[桐油変性レゾール型フェノール樹脂の製造]
フェノール115gと桐油72gを、パラトルエンスルホン酸の存在下、95℃で2時間反応させ、更にパラホルムアルデヒド47g、ヘキサメチレンテトラミン2.2g、トルエン2000gを加えて、90℃で2時間反応後、減圧下で濃縮し、これをトルエンとメタノールの混合溶媒で希釈して樹脂分50質量%の桐油変性レゾール型フェノール樹脂ワニス420gを得た。
[エポキシ基を有するリグニン誘導体ワニスの製造]
攪拌装置、冷却器、滴下ロートの付いた100mlの三つ口フラスコに、実施例1と同様にして得たリグニン分解物(A)1.2gと、エピクロロヒドリン100.0gを導入し、100mmHgの圧力下で減圧還流しながら、20質量%濃度のNaOH水溶液2.0gを30分かけて滴下した。その後、90分間減圧還流状態を保持して反応混合物を得た。反応混合物は、不溶部を濾過して取り除き、エピクロロヒドリン可溶部を単離した。このエピクロロヒドリン可溶部からエピクロロヒドリンを留去し、乾燥することで、リグニン誘導体(D)(エポキシ化リグニン)0.8gを得た。
エポキシ基を有するリグニン誘導体(D)のエポキシ当量は、1H−NMRで測定のところ、390であった。
ノボラック型フェノール樹脂(軟化点:105℃、水酸基当量:104)をメタノールで希釈して樹脂分50質量%のノボラック型フェノール樹脂ワニスを得た。
実施例1における基材含浸用の樹脂ワニスにおいて、リグニン分解物(A)ワニス33質量部とレゾール型フェノール樹脂ワニス67質量部を、実施例3と同様にして得られたエポキシ基を有するリグニン誘導体(D)ワニス77質量部、リグニン分解物(A)ワニス23質量部に2−メチルイミダゾール2質量部を加えたものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
実施例1における基材含浸用の樹脂ワニスにおいて、リグニン分解物(A)ワニス33質量部とレゾール型フェノール樹脂ワニス67質量部を、実施例3と同様にして得られたエポキシ基を有するリグニン誘導体(D)ワニス98質量部に2−メチルイミダゾール2質量部を加えたものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
実施例1において、リグニン分解物の製造における処理温度200℃を300℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、リグニン分解物(B)3.6gを得た。ここで得られたリグニン分解物(B)を、実施例1と同様にして評価のところ、水酸基当量=171、P/A比=8.5:1.5、軟化点88℃、Mn=570、Mw/Mn=1.24であった。
実施例2における基材含浸用の樹脂ワニスにおいて、リグニン分解物(A)ワニス42質量部を実施例6と同様にして得られたリグニン分解物(B)ワニス42質量部に変更した以外は、実施例2と同様にし、積層板を得た。
実施例3のリグニン誘導体の製造において、リグニン分解物(A)1.2gを、実施例6と同様にして得たリグニン分解物(B)1.2gに変更した他は、実施例3と同様に行い、エポキシ基を有するリグニン誘導体(E)0.9gを得た。ここで得られたエポキシ基を有するリグニン誘導体(E)を、実施例3と同様にして評価のところ、分子量は、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、Mn=750、Mw/Mn=2.89であった。
エポキシ基を有するリグニン誘導体(E)のエポキシ当量は、1H−NMRで測定のところ、540であった。
実施例1において、基材含浸用の樹脂ワニスを、実施例8と同様にして得たエポキシ基を有するリグニン誘導体(E)ワニス76質量部、実施例6と同様にして得たリグニン分解物(B)ワニス24質量部及び2−メチルイミダゾール2質量部を混合したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
実施例1において、基材含浸用の樹脂ワニスを、実施例8と同様にして得たエポキシ基を有するリグニン誘導体(E)ワニス98質量部及び2−メチルイミダゾール2質量部を混合したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
実施例1において、リグニン分解物の製造における処理温度200℃を150℃に変更した以外は、実施例1と同様に行い、リグニン分解物(C)3.5gを得た。ここで得られたリグニン分解物(C)を、実施例1と同様にして評価のところ、水酸基当量=122、P/A比=8.1:1.9、軟化点121℃、Mn=1800、Mw/Mn=1.82であった。
実施例2における基材含浸用の樹脂ワニスにおいて、リグニン分解物(A)ワニス33質量部を実施例11と同様にして得られた(C)ワニス33質量部に変更した以外は、実施例2と同様にし、積層板を得た。
実施例3のリグニン誘導体の製造において、リグニン分解物(A)1.2gを、実施例11と同様にして得たリグニン分解物(C)1.2gに変更した他は、実施例3と同様に行い、エポキシ基を有するリグニン誘導体(F)0.7gを得た。ここで得られたエポキシ基を有するリグニン誘導体(F)を、実施例3と同様にして評価のところ、分子量は、ポリスチレン換算のゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したところ、Mn=2000、Mw/Mn=3.47であった。
エポキシ基を有するリグニン誘導体(F)のエポキシ当量は、1H−NMRで測定のところ、620であった。
実施例1において、基材含浸用の樹脂ワニスを、実施例13と同様にして得たエポキシ基を有するリグニン誘導体(F)ワニス84質量部、実施例11同様にして得たリグニン分解物(C)ワニス16質量部及び2−メチルイミダゾール2質量部を混合したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
実施例1において、基材含浸用の樹脂ワニスを、実施例13と同様にして得たエポキシ基を有するリグニン誘導体(F)ワニス98質量部及び2−メチルイミダゾール2質量部を混合したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
攪拌機、冷却管を備えた1L3つ口フラスコに実施例1の操作を繰り返して得たリグニン分解物(A)100g、アセトン300mL、炭酸カリウム5g、アリルブロミド100gを導入し、3時間還流加熱した。反応混合物から溶媒を除去し、酢酸エチルに残渣を溶解した。有機相を2質量%塩酸、純水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥し、1Lのヘキサンに再沈殿し、乾燥することで、ビニル基を有するリグニン誘導体(G)88gを得た。
ビニル基を有するリグニン誘導体(G)の分子量、分子量分布、軟化点は実施例1と同様に評価し、それぞれMn=1150、Mw/Mn=2.86、93℃であった。
実施例1において、基材含浸用の樹脂ワニスを、上記と同様にして得たリグニン誘導体(G)ワニス99質量部にアゾビスイソブチロニトリル1質量部を添加したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
破砕状溶融シリカ粉末(平均粒径10μm)にメタノールを加えて50質量%に調整した溶融シリカワニス330gを得た。
実施例1において、基材含浸用の樹脂ワニスを、実施例1と同様にして得たリグニン分解物(A)ワニス22質量部、実施例1と同様にして得たレゾール型フェノール樹脂ワニス45質量部及び上記で得た溶融シリカワニス33質量部を混合したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
非特許文献1(K. Mikame, M. Funaoka, Polym. J., 38, 585−591, 2006)に準じて、リグノフェノール誘導体を以下の方法で合成した。孟宗竹粉10gを、500ml容ビーカーにとり、p−クレゾールのアセトン溶液(リグニン構成単位当たり3モル倍量のフェノール誘導体を含む)を加え、ガラス棒で撹拌し、24時間静置させた。その後、アセトンを完全に留去して、p−クレゾール収着木粉を得た。この竹粉に対して、72質量%硫酸100mlを加え、30℃で、1時間激しく撹拌した後、混合物を、大過剰の水に投入、不溶解区分を回収、脱酸し、乾燥して、リグノフェノール誘導体を得た。このリグノフェノール誘導体を、実施例1と同様にして評価のところ、Mn=3600、OH当量=143g/eq、P/A比=5.8:4.2であった。
このリグノフェノール誘導体をメタノールで希釈して樹脂分50質量%のリグノフェノール誘導体ワニスを得た。
実施例1において、基材含浸用ワニスを、上記で得られたリグノフェノール誘導体ワニス37質量部と、実施例1と同様にして得られたレゾール型フェノール樹脂ワニス63質量部を混合したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
非特許文献2(Kadota, K. Hasegawa, M. Funaoka Journal of Network Polymer. Japan, 27, 118−125, 2006)に準じて、比較例1で得たリグノフェノール誘導体を以下の方法でエポキシ化した。攪拌装置、冷却器、滴下ロートの付いた100mlの三つ口フラスコに、比較例1で得たリグノフェノール誘導体1.4gとエピクロロヒドリン100.0gを導入し、100mmHgに減圧還流しながら、20%NaOH水溶液1.0gを30分かけて滴下した。その後、90分間減圧還流状態を保持した。反応混合物から不溶部を濾過して除き、エピクロロヒドリン可溶部からエピクロロヒドリンを留去、乾燥することで、エポキシ化リグノフェノール二次誘導体1.3gを得た。得られたエポキシ基を有するリグノフェノール二次誘導体を実施例3と同様にして評価のところ、Mn=2400、エポキシ当量は790であった。
このエポキシ基を有するのリグノフェノール二次誘導体をメタノールで希釈して樹脂分50質量%のエポキシ基を有するリグノフェノール二次誘導体ワニスを得た。
実施例1において、基材含浸用ワニスを、上記で得られたエポキシ基を有するリグノフェノール二次誘導体ワニス100質量部と、2−メチルイミダゾール2質量部を混合したものにした以外は、実施例1と同様にし、積層板を得た。
Claims (5)
- リグニン化合物と架橋剤を含む樹脂組成物を、基材に含浸させたプリプレグであって、前記リグニン化合物は、バイオマスを分解して得られるフェノール性水酸基とアルコール性水酸基をモル比として9:1から8:2の比率で有するリグニン化合物、及び該リグニン化合物のフェノール性水酸基に反応性基を導入したリグニン誘導体から選ばれる1種又は2種であることを特徴とするプリプレグ。
- 前記樹脂組成物は、さらに充填材を含む請求項1に記載のプリプレグ。
- 前記樹脂組成物は、リグニン化合物と架橋剤の合計量において、リグニン化合物の含有量が40〜95質量%、架橋剤の含有量が5〜60質量%である請求項1又は2に記載のプリプレグ。
- 前記反応性基が、エポキシ基である請求項1〜3のいずれか1項に記載のプリプレグ。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプリプレグを、1枚又は2枚以上の積層体を硬化させた基板。
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