JP2009286939A - ナノ物質含有組成物、ナノ物質含有多孔質体、その製造方法、積層体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水およびアルコールを含む混合溶剤(a)と、該混合溶剤(a)に溶解したメタクリル酸エステル系重合体(b)と、ナノ物質(c)とを含むナノ物質含有組成物;ナノ物質含有組成物を用いて形成されたナノ物質含有多孔質体;および、該ナノ物質含有多孔質体からなる層を有する積層体。
【選択図】図1
Description
また、基材の表面構造をサブミクロンレベルで制御することによって、1つの層で種々の機能を付与する技術についても開発されている。該技術のなかでも、多孔質構造形成技術、ハニカム構造形成技術は、撥水性、撥油性、防曇性、反射防止性、防汚性等の機能性を付与する技術として注目を集めている。
しかしながら、ナノ物質は、通常、その表面状態が不安定で、樹脂や溶剤との複合化の際に凝集したり、構造体形成時の構造コントロールが十分できていなかったりするために、特有の性能を十分に発揮できていないという問題がある。そのため、ナノ炭素材料や金属微粒子を物理的に処理したり、化学的に表面修飾したりして、溶剤や樹脂に均一に分散または溶解させる試みがなされている。
前記ナノ物質(c)は、ナノ炭素材料(c−1)または無機微粒子(c−2)であることが好ましい。
本発明のナノ物質含有組成物は、さらに、前記ナノ物質(c)を混合溶剤(a)に分散させるための分散剤(d)を含むことが好ましい。
本発明のナノ物質含有多孔質体は、本発明のナノ物質含有組成物を乾燥させて形成されたものが好ましい。
本発明のナノ物質含有多孔質体の製造方法は、本発明のナノ物質含有組成物を乾燥させてナノ物質含有多孔質体を形成することを特徴とする。
また、本発明の積層体は、基材からなる層と、前記基材の表面に形成された本発明のナノ物質含有多孔質体からなる層とを有することを特徴とする。
本発明の積層体の製造方法は、基材の表面に、本発明のナノ物質含有組成物を塗工し、乾燥させてナノ物質含有多孔質体を形成することによって、基材からなる層とナノ物質含有多孔質体からなる層とを有する積層体を得ることを特徴とする。
本発明の積層体は、基材からなる層と、前記基材の表面に、水およびアルコールを含む混合溶剤(a)と、該混合溶剤(a)に溶解したメタクリル酸エステル系重合体(b)とを含む組成物を塗工し、乾燥させて形成された多孔質体からなる層とを有することを特徴とする。
本発明のナノ物質含有多孔質体は、少量のナノ物質の添加でナノ物質の持つ機能を効果的に発現できる。
本発明のナノ物質含有多孔質体の製造方法によれば、本発明のナノ物質含有多孔質体を簡便な方法で製造できる。
本発明の積層体は、少量のナノ物質の添加でナノ物質の持つ機能を効果的に発現できるナノ物質含有多孔質体からなる層を有し、該層と基材等との密着性が良好である。
本発明の積層体の製造方法によれば、本発明の積層体を簡便な方法で製造できる。
本発明のナノ物質含有組成物は、水およびアルコールを含む混合溶剤(a)と、該混合溶剤(a)に溶解したメタクリル酸エステル系重合体(b)と、ナノ物質(c)とを必須成分とし、必要に応じて、ナノ物質(c)を混合溶剤(a)に分散させるための分散剤(d)、高分子化合物(e)を含む組成物である。
混合溶剤(a)は、少なくとも水およびアルコールを含む。
アルコールとしては、水と混合できるアルコールであればよく、例えば、モノアルコール(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、3−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブチノール、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等。)、多価アルコール誘導体(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メトキシメトキシエタノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、グリセリルモノアセテート等。)等が挙げられる。
他の溶剤としては、水およびアルコールに混合し、メタクリル酸エステル系重合体(b)が溶解するものであればよく、例えば、エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
他の溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
メタクリル酸エステル系重合体(b)は、メタクリル酸エステル単量体を含む単量体成分を重合して得られる重合体である。
メタクリル酸エステル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸エチルの割合は、単量体成分100質量%中、50〜100質量%が好ましく、70〜100質量%がより好ましい。該範囲において、メタクリル酸エステル系重合体(b)の混合溶剤(a)への溶解性が良好となり、かつ効率よくナノ物質含有多孔質体が形成される。
他の重合性単量体としては、例えば、アクリル酸エステル(メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート等。)、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
他の重合性単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
アゾ化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられる。
また、過硫酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩等の水溶性無機化合物の単独、またはこれらと水溶性還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤、または過酸化水素やヒドロパーオキサイドと還元剤とを組み合わせたレドックス系重合開始剤も用いることができる。
重合溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ナノ物質(c)としては、ナノサイズの大きさを有する物質であればよく、例えば、ナノ炭素材料、無機微粒子(金属微粒子、金属酸化物微粒子等。)、高分子ラテックス、高分子ナノスフェア等が挙げられ、ナノ炭素材料(c−1)または無機微粒子(c−2)が好ましい。
カーボンナノチューブ(c−1−1)としては、通常のカーボンナノチューブ、すなわち、単層カーボンナノチューブ、何層かが同心円状に重なった多層カーボンナノチューブ、これらがコイル状になったコイル状カーボンナノチューブ、底の空いたコップを積み重ねたような形状であるカップスタック型カーボンナノチューブ等が挙げられる。
該製造方法によって得られたカーボンナノチューブ(c−1−1)として、各種機能を十分に発現できる点から、単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブが好ましい。
カーボンナノチューブ(c−1−1)は、ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等のボール型混練装置等を用いて粉砕されていてもよく、化学的、物理的処理によって短く切断されていてもよい。
米国カーボンナノテクノロジーズ社製:カーボンナノチューブ、HiPco単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ。
韓国イルジンナノテク社製:SWNT、MWNT。
韓国CNT社製:C−100、C−200。
中国シンセンナノテクポート社製:カーボンナノチューブ。
ベルギーナノシル社製:NC7100、NC1100、NC2100等。
金属粒子としては、Au、Ag、Pd、Pt、Cu、Ni、Co、Fe、Mn、Ru、Rh、Os、Ir等の粒子が挙げられる。
金属酸化物粒子は、MxOy(ただし、Mは金属、Oは酸素、xおよびyは整数を表す。)で表される化合物の粒子であり、例えば、Fe2O3、Ag2O、TiO2、SiO2等の粒子が挙げられる。
金属酸化物微粒子(c−2−1)としては、例えば、Ti、Al、Zr、Si、Ge、B、Li、Na、Fe、Ga、Mg、P、Sb、Sn、Ta、V、Cu、Be、Sc、Cr、Mn、Co、Zn、As、Y、W、Ce、In等の金属の酸化物の微粒子、または2種以上の金属の酸化物を含有する複合金属酸化物微粒子が挙げられる、複合金属酸化物微粒子(c−2−2)が好ましい。
金属酸化物微粒子(c−2)の分散媒としては、例えば、モノアルコール(メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等。)、多価アルコール(エチレングリコール等。)、多価アルコール誘導体(エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メトキシプロパノール等。)、ケトン化合物(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等。)、単量体(2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート等。)等が挙げられる。
金属酸化物微粒子(c−2)の一次粒子の質量平均粒子径は、1〜300nmが好ましく、1〜150nmがより好ましい。
分散剤(d)は、ナノ物質(c)を混合溶剤(a)に分散させるための成分である。また、分散剤(d)を含むことにより、ナノ物質含有組成物を長期間保存しても、ナノ物質(c)が分離または凝集しにくい。
分散剤(d)としては、例えば、界面活性剤(d−1)、高分子分散剤(d−2)が挙げられる。
界面活性剤(d−1)としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤(d−1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
水溶性導電性ポリマーとして、ポリエチレンジオキシチオフェンポリスチレンスルフェートを用いてもよい。該水溶性導電性ポリマーは、高分子の骨格にスルホン酸基は導入されていないが、ドーパントとしてポリスチレンスルホン酸が付与されている構造を有している。
高分子化合物(e)は、ナノ物質含有多孔質体の基材への密着性、ナノ物質含有多孔質体の強度をさらに向上させる成分である。
高分子化合物(e)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の割合で併用してもよい。
本発明のナノ物質含有組成物は、必要に応じて、可塑剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤等の公知の添加剤を含んでいてもよい。
導電性物質としては、炭素系物質(炭素繊維、導電性カーボンブラック、黒鉛等。)、金属酸化物(SnO2、ZnO等。)、金属(銀、ニッケル、銅等。)、対称型または非対称型のインドール誘導体三量体等が挙げられ、インドール誘導体三量体またはそのド−ピング物が好ましい。
メタクリル酸エステル系重合体(b)の量は、混合溶剤(a)の100質量部に対して、0.05〜20質量部が好ましく、0.1〜10質量部がより好ましい。該範囲内において、メタクリル酸エステル系重合体(b)の溶解性が良好となり、かつ良好な多孔質構造を有する多孔質体が得られる。メタクリル酸エステル系重合体(b)の量が0.05質量部未満では、良好な多孔質構造を有する多孔質体を形成できないおそれがある。メタクリル酸エステル系重合体(b)の量が20質量部を超えると、メタクリル酸エステル系重合体(b)の溶解性が低下する、またはナノ物質含有組成物の粘度が高くなり、取り扱い性が低下する。
本発明のナノ物質含有組成物の調製方法としては、上述の各成分を一括で混合する方法;混合溶剤(a)中にメタクリル酸エステル系重合体(b)を溶解した溶液と、ナノ物質(c)の分散液とを混合する方法等が挙げられる。
撹拌または混練装置としては、超音波発振機、ホモジナイザー、スパイラルミキサー、プラネタリーミキサー、ディスパーサー、ハイブリットミキサー等が挙げられ、超音波照射とホモジナイザーとを併用した装置(超音波ホモジナイザー)が特に好ましい。
超音波照射処理の後、さらにボール型混練装置(ボールミル、振動ミル、サンドミル、ロールミル等。)を用いて分散または溶解を徹底化してもよい。
本発明のナノ物質含有多孔質体は、メタクリル酸エステル系重合体(b)から構成される多孔質体中にナノ物質(c)を含むものである。
(i)メタクリル酸エステル系重合体(b)の塗膜に独立した細孔を形成することにより形成された多孔質体。
(ii)メタクリル酸エステル系重合体(b)の微粒子が数珠状に連結および/または分岐することにより形成された多孔質体。
本発明のナノ物質含有多孔質体の製造方法としては、例えば、下記の(I)〜(V)の方法が挙げられ、ナノ物質(c)の構造制御の点から、(I)の方法が好ましい。
(I)高分子化合物溶液の相変化を利用する方法。
(II)非水系溶剤へ溶解した高分子化合物を高湿度下で製膜する方法。
(III)細孔形成のための添加剤を添加し成形後に除去する方法。
(IV)発泡剤を利用して細孔を形成する方法。
(V)中性子線、レーザー等を照射して細孔を形成する方法。
(I−1)高分子化合物の相分離により細孔を形成する方法。
(I−2)単量体の重合時に細孔を形成させながら多孔質化する方法。
(I−2)の方法としては、単量体から高分子化合物になる重合過程において、高分子化合物濃度の増加により相分離させる方法等が挙げられる。
本発明のナノ物質含有組成物を用いる方法としては、下記(I−1−1)〜(I−1−2)の方法が挙げられる。
(I−1−1)本発明のナノ物質含有組成物を塗工し、常温または加熱により乾燥してナノ物質含有多孔質体(ナノ物質含有多孔質塗膜)を形成する方法。
(I−1−2)本発明のナノ物質含有組成物を冷却し、ナノ物質含有多孔質体を析出させる方法。
塗工方法としては、例えば、公知の塗布装置(グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等。)を用いた塗布方法、公知のスプレー(エアスプレー、エアレススプレー等。)を用いたスプレーコーティング等の噴霧方法、ディップ等の浸漬方法、刷毛塗り等が挙げられる。
加熱によりナノ物質含有多孔質体の構造を制御することが可能であり、また、残留する混合溶剤(a)の量をより低下できるため、ナノ物質(c)の特性を効率よく発現できる。特にナノ物質(c)として、カーボンナノチューブ(c−1−1)を用いる場合、導電性がさらに向上する。
ナノ物質含有組成物を冷却し、ナノ物質含有多孔質体を析出させた後、混合溶剤(a)を除去する。
冷却温度としては、ナノ物質含有多孔質体が析出するのに十分な低温であればよく、−10〜20℃が好ましく、−5〜10℃がより好ましい。冷却温度が該範囲内であれば、ナノ物質含有多孔質体は規則的な多孔質構造を形成して析出できる。
溶剤除去方法としては、例えば、ろ過、デカンテーション等が挙げられる。
乾燥温度としては、混合溶剤(a)が揮発する温度であればよく、20〜300℃が好ましく、40〜250℃がより好ましい。乾燥温度が300℃を超えると、メタクリル酸エステル系重合体(b)自体が分解するおそれがあり、多孔質体の構造が破壊され、強度が悪化することがある。
また、本発明のナノ物質含有組成物を減圧乾燥または凍結乾燥することにより、混合溶剤(a)を留去し、溶剤溶液状態から直接、多孔質体を得ることもできる。
プレス方法としては、公知のプレス方法が挙げられ、例えば、プレス機器(液圧プレス、機械プレス、ハイドロメカニカルプレス、手動プレス等。)を用いた、ホットプレス、型抜きプレス等が挙げられる。
本発明の積層体は、基材からなる層と、前記基材の表面に形成された本発明のナノ物質含有多孔質体(ナノ物質含有多孔質塗膜)からなる層とを有する。必要に応じて、各種機能層を有していてもよい。
本発明の積層体の製造方法としては、例えば、下記の(x)〜(z)の方法が挙げられる。
(x)基材の表面に、本発明のナノ物質含有組成物を塗工し、乾燥させてナノ物質含有多孔質体を形成することによって、基材からなる層とナノ物質含有多孔質体からなる層とを有する積層体を得る方法。
(y)本発明のナノ物質含有組成物を冷却し、ナノ物質含有多孔質体を析出させて、分離、乾燥した後、ナノ物質含有多孔質体をプレスして薄膜化し、基材と積層する方法。
(z)転写フィルムまたは型の内面にナノ物質含有多孔質体を形成した後、ナノ物質含有多孔質体の表面に重合性原料または溶融樹脂を接触させ、これを固化させて基材を形成し、基材とともにナノ物質含有多孔質体を転写フィルムまたは型から剥離する方法。
塗工方法としては、上述のナノ物質含有多孔質体の製造方法にて例示した方法が挙げられる。
乾燥方法としては、上述のナノ物質含有多孔質体の製造方法にて例示した方法が挙げられる。
プレスする方法としては、上述のナノ物質含有多孔質体の製造方法にて例示した方法が挙げられる。
型としては、注型重合用の鋳型、成形用型等が挙げられる。鋳型が2枚の表面平滑な板状物からなる場合、表面平滑な板状積層体を得ることができる。この際、硬化膜を一方の鋳型に形成してもよく、両方の鋳型に形成してもよい。
キャスト重合法としては、例えば、本発明のナノ物質含有組成物をガラス板からなる注型重合用のガラス型の内面に塗工し、乾燥させた後、ガラス型内に重合性原料を流し込んで重合させる方法が挙げられる。
ガラス型は、例えば、2枚のガラス板の間に、軟質ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等からなるガスケットを挟み込み、これらをクランプ等で固定することにより、組み立てられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリルジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸エチルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
単量体混合物の一部が重合した重合体と単量体混合物との混合物における、単量体の重合率は35質量%以下が好ましい。
機能層を有する積層体の製造方法としては、下記の(X)〜(Y)の方法が挙げられる。
(X)基材表面に本発明のナノ物質含有多孔質体を形成した後、その表面に機能層を積層する方法。
(Y)剥離層を有する転写シート表面に、本発明のナノ物質含有多孔質体を形成した後、機能層の表面に転写し、機能層を積層する方法。
機能層の形成方法としては、下記の(X−1)〜(X−2)の方法が挙げられる。
(X−1)溶剤系および/または単量体系のコーティング剤を用いる方法。
(X−2)接着層を有する機能層フィルムを貼着する法。
(メタ)アクリル酸誘導体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル類、重合性基を2つ以上有する(メタ)アクリル系化合物、これらの単量体の重合体を含有する重合性単量体溶液が挙げられる。
(α)多価アルコール1モルに対し2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体を反応して得られるエステル化物。
(β)多価アルコール、多価カルボン酸またはそれの無水物および(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物。
(γ)ポリイソシアネートの3量化体1モル当たり、活性水素を有するアクリル系単量体を3モル以上反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート。
(δ)ポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジあるいはトリ(メタ)アクリレート等。)。
(ε)公知のエポキシポリアクリレート。
(ζ)公知のウレタンポリアクリレート。
ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等。
他の単量体としては、スチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、酢酸ビニル、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
単量体系のコーティング剤における単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
熱重合開始剤としては、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
光重合開始剤としては、フェニルケトン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
また、必要に応じて、連鎖移動剤、可塑剤、塗面調整剤、流動性調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保存安定剤、接着助剤、増粘剤等の公知の各種物質を添加してもよい。
転写方法としては、下記の(Y−1)〜(Y−2)の方法が挙げられる。
(Y−1)ナノ物質含有多孔質体が形成された転写フィルムと、機能層が形成された基材とをラミネートし、加圧および/または加熱し、転写フィルムを剥離する方法。
(Y−2)ナノ物質含有多孔質体および機能層が形成された転写フィルムと型との間に重合性原料を流し込み、光または加熱により硬化させた後、転写フィルムを剥離する方法。
本発明の多孔質体は、水およびアルコールを含む混合溶剤(a)と、該混合溶剤(a)に溶解したメタクリル酸エステル系重合体(b)とを含む組成物を乾燥させて形成されたものである。
多孔質体の形成方法としては、上述のナノ物質含有多孔質体の製造方法と同様の方法が挙げられる。
以上説明した本発明の多孔質体にあっては、メタクリル酸エステル系重合体(b)から構成される多孔質体であるため、少量のナノ物質(c)を添加した場合には、ナノ物質(c)の持つ機能を効果的に発現できる。
本発明の多孔質体は、基材からなる層と、前記基材の表面に、水およびアルコールを含む混合溶剤(a)と、該混合溶剤(a)に溶解したメタクリル酸エステル系重合体(b)とを含む組成物を塗工し、乾燥させて形成された多孔質体からなる層とを有する。
塗工方法としては、上述のナノ物質含有多孔質体の製造方法にて例示した方法が挙げられる。
乾燥方法としては、上述のナノ物質含有多孔質体の製造方法にて例示した方法が挙げられる。
以上説明した本発明の積層体にあっては、メタクリル酸エステル系重合体(b)から構成される多孔質体からなる層を有するため、少量のナノ物質(c)を添加した場合、ナノ物質(c)の持つ機能を効果的に発現できる。また、多孔質体からなる層がメタクリル酸エステル系重合体(b)を含むため、基材等との密着性が良好である。
カーボンナノチューブ(c−1−1)としては、多層カーボンナノチューブ(CNT社製、多層カーボンナノチューブ、商品名:C−Tube100)(以下、MWNT(c1)と記す。)を用いた。
メタクリル酸エステル系重合体(b)溶液:
乳化重合により合成した下記のメタクリル酸エステル系重合体(b1)〜(b3)の3質量部(固形分)をそれぞれ、水の19.4質量部とイソプロピルアルコール(以下、IPAと記す。)の77.6質量部の混合溶剤(a)中で60℃に加温、撹拌し、溶解させて、メタクリル酸エステル系重合体(b1)〜(b3)溶液(以下、重合体溶液(B1)〜(B3)と記す。)を得た。
メタクリル酸エステル系重合体(b1):メタクリル酸メチルの重合体、GPCによる質量平均分子量:280,000。
メタクリル酸エステル系重合体(b2):メタクリル酸メチル/アクリル酸エチル=99/1(質量比)の共重合体、GPCによる質量平均分子量:95,000。
メタクリル酸エステル系重合体(b3):メタクリル酸メチルの重合体、GPCによる質量平均分子量:40,000。
ポリビニルピロリドン溶液:
ポリビニルピロリドン(以下、PVPと記す。)(五協産業(株)製、K−15)の3質量部を、水/IPA=20/80(質量比)の混合溶剤の97質量部中で撹拌し、溶解させて、PVP溶液を得た。
分散剤(d1)(ポリ(2−スルホ−5−メトキシ−1,4−イミノフェニレン))の合成:
2−アミノアニソール−4−スルホン酸の100mmolを4mol/Lのトリエチルアミン水溶液に加え、25℃で撹拌し、溶解させ、これにパーオキソ二硫酸アンモニウムの100mmolの水溶液を滴下した。滴下終了後、25℃で12時間さらに撹拌した後、反応生成物を濾別し、洗浄した後、乾燥し、分散剤(1)の15gを得た。
分散剤(d2)(メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム/メタクリル酸カリウム/メタクリル酸メチル共重合体)水溶液の合成:
メタクリル酸2−スルホエチルナトリウムの150g、メタクリル酸カリウムの25g、メタクリル酸メチルの30g、脱イオン水の2250gを、コンデンサーを備えた内容積3000mLのセパラブルフラスコ中で窒素雰囲気下に撹拌しながら50℃に昇温し、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の0.2gを添加して60℃に昇温した。重合開始剤を添加したと同時に滴下ポンプを用いて0.6g/分の速度でメタクリル酸メチルの滴下を開始し、75分間連続的に滴下を行った。同温度で6時間撹拌を続けたところ、透明な重合体溶液が得られた。重合中、水溶液は均一に保たれており、メタクリル酸メチルの油滴が懸濁状態で存在することは観測されなかった。固形分8.4質量%の分散剤(d2)水溶液を得た。
ナノ物質分散液(C1):
分散剤(d1)の2質量部と水の98質量部からなる水溶液に、MWNT(c1)の0.4質量部を室温にて混合して、氷冷下、超音波ホモジナイザー(SONIC社製、vibra cell、20kHz)を用いて1時間処理し、ナノ物質分散液(C1)を得た。
ナノ物質分散液(C2):
分散剤(d1)の1質量部と水の99質量部からなる水溶液に、MWNT(c1)の0.4質量部を室温にて混合して、氷冷下、超音波ホモジナイザー(SONIC社製、vibra cell、20kHz)を用いて1時間処理し、ナノ物質分散液(C2)を得た。
ナノ物質分散液(C3):
分散剤(d2)水溶液の23.8質量部と水の76.2質量部からなる水溶液に、MWNT(c1)の0.4質量部を室温にて混合して、氷冷下、超音波ホモジナイザー(SONIC社製、vibra cell、20kHz)を用いて1時間処理し、ナノ物質分散液(C3)を得た。
分散剤水溶液(D1):
分散剤(d1)の2質量部を水の98質量部に溶解させ、分散剤水溶液(D1)を得た。
分散剤水溶液(D2):
分散剤(d1)の1質量部を水の99質量部に溶解させ、分散剤水溶液(D2)を得た。
重合性原料:
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学工業(株)製、商品名:NKエステル A−HD−N)の60質量部、ペンタエリスリトールトリアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:M305)の10質量部、6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業(株)製、商品名:NKオリゴ U6HA)の30質量部を混合した後、光重合開始剤(チバスペシャルティケミカルズ製、商品名:イルガキュア184)の1.5質量部を添加、溶解させ、重合性原料を得た。
表1に示す成分を、20mLのガラス瓶中に計量し、60℃で30分撹拌した後、室温にて冷却してナノ物質含有組成物(1)を得た。
実施例1と同様に、表1に示す組成で混合し、ナノ物質含有組成物(2)〜(8)を得た。
表2に示す成分を、20mLのガラス瓶中に計量し、60℃で30分撹拌した後、室温にて冷却してナノ物質含有組成物(9)を得た。
比較例1と同様に、表2に示す組成で混合し、ナノ物質含有組成物(10)〜(11)を得た。
すべての実施例および比較例のナノ物質含有組成物で実施:
ナノ物質含有組成物を、基材であるガラス板(厚さ:1mm、幅:5cm、長さ:5cm)の表面に滴下し、バーコーター法(バーコートNo.5、想定膜厚:0.1μm)により塗布し、80℃で2分間乾燥させ、ナノ物質含有多孔質体を形成し、積層体1を得た。得られた積層体1の全光線透過率および表面抵抗値を測定した後、観察した。結果を表3に示す。
実施例2のナノ物質含有組成物で実施:
基材のガラス板を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルムと記す。)(厚さ:188μm、幅:10cmおよび長さ15cm、東洋紡績(株)製)に変更した以外は、積層体1の製造と同様にして、ナノ物質含有多孔質体を形成し、積層体2を得た。得られた積層体2の全光線透過率および表面抵抗値を測定した後、観察した。結果を表3に示す。
実施例2のナノ物質含有組成物で実施:
積層体2の表面に重合性原料を滴下し、その上に厚さ50μmのPETフィルム(帝人(株)製)を配置し、ゴムロームにてしごき、前記重合性原料の厚さを5μmに設定した。その後、高圧水銀灯(株式会社オーク製作所製、紫外線照射装置、製品名:ハンディーUV−1200、QRU−2161型)にて、約1,000mJ/cm2の紫外線を照射し、重合性原料を硬化させ、PETフィルムを剥離することにより、表面に硬化膜を有する積層体3を得た。得られた積層体3の全光線透過率と表面抵抗値を測定した後、観察した。結果を表3に示す。
(溶液状態の目視観察)
実施例および比較例で得られたナノ物質含有組成物の溶液状態を目視で観察した。
○:溶液状態で目視上均一な組成物。
×:溶液状態で目視上不均一な組成物。
25℃、50%RHの条件下で表面抵抗値の測定を行った。測定には表面抵抗値が108Ω以上の場合は二重リング法(三菱化学(株)社製、ハイレスタ―UP)を用い、表面抵抗値が107Ω以下の場合は四探針法(三菱化学(株)社製、ロレスタ―GP、各電極間距離:5mm)を用いた。
全光線透過率(%)はHAZEMETER NDH2000(日本電色工業(株)社製)により測定した。
積層体について、共焦点レーザー顕微鏡(カールツァイス社製、LSM5 PASCAL Axioplan2 imaging)を用い、下記条件で1000倍の画像を取得した。該条件での1画像あたりの光学厚さは300nm程度であった。得られた画像の拡張フォーカス像を作成し、多孔質構造を評価した。
(条件)
レンズ:100倍油浸レンズ(開口数1.4、Plan−APOCHROMAT)、
屈折率調整液:屈折率1.518の屈折率調整液(カールツァイス社製、Immersol 518F)、
レーザー:波長458nmのアルゴンレーザー、
垂直方向の走査:表面から基材との界面まで、
画像の大きさ:100μm□、
画像取得厚さ:約3μm、
画像取得ピッチ:0.1μm。
(評価)
○:ナノ物質を含有した多孔質構造が形成されていた。
×:ナノ物質を含有した多孔質構造が形成されていなかった。
各種帯電防止剤、コンデンサー、電気二重層キャパシタ、電池、燃料電池およびその部材(高分子電解質膜、電極層、触媒層、ガス拡散層、ガス拡散電極層、セパレーター等。)、EMIシールド、化学センサー、表示素子、非線形材料、防食剤、接着剤、繊維、紡糸用材料、帯電防止塗料、防食塗料、電着塗料、メッキプライマー、静電塗装用導電性プライマー、電気防食、電池の蓄電能力向上等。
Claims (8)
- 水およびアルコールを含む混合溶剤(a)と、
該混合溶剤(a)に溶解したメタクリル酸エステル系重合体(b)と、
ナノ物質(c)と
を含む、ナノ物質含有組成物。 - さらに、前記ナノ物質(c)を混合溶剤(a)に分散させるための分散剤(d)を含む、請求項1に記載のナノ物質含有組成物。
- メタクリル酸エステル系重合体(b)から構成される多孔質体中にナノ物質(c)を含む、ナノ物質含有多孔質体。
- 請求項1または2に記載のナノ物質含有組成物を乾燥させて形成された、ナノ物質含有多孔質体。
- 請求項1または2に記載のナノ物質含有組成物を乾燥させてナノ物質含有多孔質体を形成する、ナノ物質含有多孔質体の製造方法。
- 基材からなる層と、
前記基材の表面に、請求項1または2に記載のナノ物質含有組成物を塗工し、乾燥させて形成されたナノ物質含有多孔質体からなる層と
を有する、積層体。 - 基材からなる層と、
前記基材の表面に形成された、請求項3または4に記載のナノ物質含有多孔質体からなる層と
を有する、積層体。 - 基材の表面に、請求項1または2に記載のナノ物質含有組成物を塗工し、乾燥させてナノ物質含有多孔質体を形成することによって、基材からなる層とナノ物質含有多孔質体からなる層とを有する積層体を得る、積層体の製造方法。
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