JP2009286731A - ハロゲン化α−フルオロエーテル類の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ハロゲン化α−フルオロエーテル類の工業的な製造方法を提供する。
【解決手段】ハロゲン化ヘミアセタール類(または該ビス体)を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、ハロゲン化α−フルオロエーテル類(または該ビス体)を製造することができる。好ましくは、「有機塩基とフッ化水素の塩または錯体」を存在させて反応を行うことにより、目的とする脱ヒドロキシフッ素化反応が極めて良好に進行する。より好ましくは、フルオラールまたは3,3,3−トリフルオロピルビン酸エステル類から調製できるハロゲン化ヘミアセタール類を出発基質として用いることにより、産業上重要なハロゲン化α−フルオロエーテル類が高い選択性で収率良く工業的に製造できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、医農薬中間体および代替フロン化合物として重要なハロゲン化α−フルオロエーテル類の工業的な製造方法に関する。
本発明で対象とするハロゲン化α−フルオロエーテル類は、重要な医農薬中間体および代替フロン化合物である。特にα,β,β,β−テトラフルオロエーテル類は、吸入麻酔剤デスフルランの有用中間体として利用される。この様なα−フルオロエーテル類の、本発明に関連する従来技術として以下の2つを挙げることができる。
フルオラールヘミアセタール類をヤロベンコ試薬と反応させる方法(特許文献1)や、フルオラールヘミアセタール類を対応するp−トルエンスルホン酸エステル体に変換し、次いでフッ素アニオン(F)と反応させる、2工程からなる方法(特許文献2)が開示されている。
特開昭50−76007号公報 特開平2−104545号公報
本発明の目的は、ハロゲン化α−フルオロエーテル類の工業的な製造方法を提供することにある。
特許文献1では、脱ヒドロキシフッ素化剤としてヤロベンコ試薬を用いているが、本試薬は予めクロロトリフルオロエチレンとジエチルアミンから調製する必要があり、さらに有機性の含フッ素廃棄物を量論的に副生するため、工業的な実施が困難であった。
特許文献2では、反応を2工程で実施するため、後処理も含めて操作が煩雑となり、高い生産性が期待できなかった。さらに、トータル収率も満足の行くものではなかった。
この様に、ハロゲン化α−フルオロエーテル類が高い生産性で収率良く得られ、さらに工業的にも実施容易な製造方法が強く望まれていた。
本発明者らは、上記の課題を踏まえて鋭意検討した結果、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリドと反応させることにより、一般式[2]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類が製造できることを新たに見出した。さらに、本反応が、アルキレン基を介したビス体に適応できることも新たに見出した(一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体を出発基質として用いることにより、一般式[2a]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体が目的物として得られる)。
なお、本出願人は、スルフリルフルオリド(SO)と有機塩基の組み合わせによる、アルコール類の脱ヒドロキシフッ素化反応を見出し、既に出願している[国際公開2006/098444号パンフレット(特開2006−290870号公報)]。これに対し、本発明の原料は、比較的不安定な「ハロゲン化ヘミアセタール類」又はそのビス体であり、これらは「同一の炭素上にヒドロキシル基が2個結合した化合物の等価体」と言える。本発明者らは、これらの原料化合物を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、「遊離のヒドロキシル基」のみが選択的にフッ素置換を受け、これに対し、−OR基、[−O−(CH−O−]基、ハロアルキル基は変化を受けることなく、式[2]に示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類又は式[2a]に示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体に、高い収率で誘導できることを明らかにした。
また、本発明においては、出発基質であるハロゲン化ヘミアセタール類(または該ビス体)のフルオロ硫酸エステル化と、引き続くフッ素置換が連続的に進行し、ワンポット反応として1工程で実施することができる。フッ素置換においては、フルオロ硫酸エステル化で反応系中に副生した「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」が、フッ素アニオン源として有効に利用される(スキーム1を参照。出発基質として一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を使用した場合の例)。
Figure 2009286731
本発明では、系中にさらに「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことにより、引き続くフッ素置換が極めて良好に進行することも新たに明らかにした(スキーム2を参照。出発基質として一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を使用した場合の例)。比較的不安定なハロゲン化ヘミアセタール類(または該ビス体)のフルオロ硫酸エステル化が、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」の存在下でも良好に進行することは新たな知見である。
Figure 2009286731
さらに、本発明では、フルオラールのヘミアセタール類(一般式[3]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類に対応)または3,3,3−トリフルオロピルビン酸エステルのヘミアセタール類(一般式[5]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類に対応)が極めて好適な出発基質であることも新たに明らかにした。これらの出発基質を用いると、所望の反応が緩和な反応条件下で良好に進行し、目的とするハロゲン化α−フルオロエーテル類が高い選択性で収率良く得られる。これらの出発基質は、大量規模での入手が容易なフルオラールまたは3,3,3−トリフルオロピルビン酸エステル類から容易に調製できるため、工業的な製造方法の出発基質と言う観点からも好適である。特に、フルオラールメチルヘミアセタールから得られるα,β,β,β−テトラフルオロエチルメチルエーテルは、吸入麻酔剤デスフルランの中間体として有用なため、特に好適である。
この様に、ハロゲン化α−フルオロエーテル類の工業的な製造方法として、極めて有用な方法を見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は[発明1]から[発明7]を含み、ハロゲン化α−フルオロエーテル類の工業的な製造方法を提供する。
[発明1]
一般式[1]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[2]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
[式中、haloRはハロアルキル基を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシカルボニル基または置換アルコキシカルボニル基を表し、Rはアルキル基または置換アルキル基を表す]
[発明2]
一般式[1a]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[2a]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体を製造する方法。
[式中、haloRはそれぞれ独立にハロアルキル基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシカルボニル基または置換アルコキシカルボニル基を表し、nは2から18の整数を表す]
[発明3]
発明1または発明2において、系中にさらに「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことを特徴とする、発明1または発明2に記載のハロゲン化α−フルオロエーテル類またはハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体を製造する方法。
[発明4]
一般式[3]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[4]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
[式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を表す]
[発明5]
発明4において、系中にさらに「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことを特徴とする、発明4に記載のハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
[発明6]
一般式[5]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[6]
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
[式中、RおよびRはそれぞれ独立にアルキル基または置換アルキル基を表す]
[発明7]
発明6において、系中にさらに「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことを特徴とする、発明6に記載のハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
本発明が従来技術に比べて有利な点を、以下に述べる。
特許文献1に対しては、本発明で用いる脱ヒドロキシフッ素化剤は大量規模での生産にも好適である。スルフリルフルオリドは、燻蒸剤として広く利用されており、工業的に安価に入手することができる。さらに、スルフリルフルオリドを用いた場合の廃棄物としては、蛍石(CaF)や硫酸カルシウム等の無機塩に簡便に処理することができ、環境への負荷が少ない。
特許文献2に対しては、反応を1工程(ワンポット反応としてフルオロ硫酸エステル化と、引き続くフッ素置換が連続的に進行する)で実施することができ、生産性が非常に高い。さらに、収率も高い。
また、本発明では、分離の難しい不純物を殆ど副生することがなく、高い化学純度の目的物を得ることができる。
この様に、本発明は、従来技術の問題点を全て解決し、工業的にも実施容易な製造方法である。
本発明のハロゲン化α−フルオロエーテル類の製造方法について、詳細に説明する。
本発明においては、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類(または一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体)を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリドと反応させることにより、一般式[2]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類(または一般式[2a]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体)を製造することができる。
一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類のhaloRは、ハロアルキル基を表す。該ハロアルキル基は、炭素数が1から18の、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)のアルキル基の、任意の炭素原子上に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子が、任意の数でさらに任意の組み合わせで、置換したものを採ることができる(アルキル基は、少なくとも1つのハロゲン原子で置換される)。その中でもフルオロアルキル基およびクロロアルキル基が好ましく、特にトリフルオロメチル基がより好ましい。
一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類のRは、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシカルボニル基または置換アルコキシカルボニル基を表す。該アルキル基およびアルコキシカルボニル基のアルキル部位(例えば、一般式[5]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類においては、Rに対応)は、炭素数が1から18の、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数が3以上の場合)を採ることができる。
これらのアルキル基またはアルコキシカルボニル基のアルキル部位は、任意の炭素原子上に、任意の数でさらに任意の組み合わせで、置換基を有することもできる(それぞれ置換アルキル基、置換アルコキシカルボニル基に対応)。係る置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のハロゲン原子、アジド基、ニトロ基、メチル基、エチル基、プロピル基等の低級アルキル基、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基等の低級ハロアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の低級アルコキシ基、フルオロメトキシ基、クロロメトキシ基、ブロモメトキシ基等の低級ハロアルコキシ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等の低級アルキルアミノ基、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基等の低級アルキルチオ基、シアノ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基(CONH)、ジメチルアミノカルボニル基、ジエチルアミノカルボニル基、ジプロピルアミノカルボニル基等の低級アルキルアミノカルボニル基、アルケニル基、アルキニル基等の不飽和基、フェニル基、ナフチル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の芳香環基、フェノキシ基、ナフトキシ基、ピロリルオキシ基、フリルオキシ基、チエニルオキシ基等の芳香環オキシ基、ピペリジル基、ピペリジノ基、モルホリニル基等の脂肪族複素環基、ヒドロキシル基の保護体、アミノ基(アミノ酸またはペプチド残基も含む)の保護体、チオール基の保護体、アルデヒド基の保護体、カルボキシル基の保護体等が挙げられる。なお、本明細書において、次の各用語は、それぞれ次に掲げる意味で用いられる。"低級"とは、炭素数が1から6の、直鎖または枝分れの鎖式、または環式(炭素数3以上の場合)を意味する。"不飽和基"が二重結合の場合(アルケニル基)は、E体、Z体、またはE体とZ体の混合物を採ることができる。"ヒドロキシル基、アミノ基(アミノ酸またはペプチド残基も含む)、チオール基、アルデヒド基およびカルボキシル基の保護基"としては、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.に記載された保護基等を用いることができる(2つ以上の官能基を1つの保護基で保護することもできる)。また、"不飽和基"、"芳香環基"、"芳香環オキシ基"および"脂肪族複素環基"には、ハロゲン原子、アジド基、ニトロ基、低級アルキル基、低級ハロアルキル基、低級アルコキシ基、低級ハロアルコキシ基、低級アルキルアミノ基、低級アルキルチオ基、シアノ基、低級アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、低級アルキルアミノカルボニル基、ヒドロキシル基の保護体、アミノ基(アミノ酸またはペプチド残基も含む)の保護体、チオール基の保護体、アルデヒド基の保護体、カルボキシル基の保護体等が置換することもできる。
その中でも水素原子、アルコキシカルボニル基および置換アルコキシカルボニル基が好ましく、特に水素原子およびアルコキシカルボニル基がより好ましい。
一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類のRは、アルキル基または置換アルキル基を表す。
該アルキル基および置換アルキル基は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類のRで開示したアルキル基および置換アルキル基と同じであり、Rとは独立に選択することができる。
一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体のhaloRおよびRは、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類で開示したhaloRおよびRと同じであり、nは2から18の整数を表す。nについては、その中でも2から12の整数が好ましく、特に2から6の整数がより好ましい。一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体の2つのhaloRは、それぞれ独立に該置換基を採ることができる。しかしながら、出発基質の調製を考慮すると、2つのhaloRが同じ置換基を採ることが好適である。また、一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体の2つのRについても、同様のことが言える。
一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類の立体化学については、haloRとRが同じ置換基を採る場合を除くと、ヒドロキシル基が共有結合した炭素原子は不斉炭素になる。不斉炭素を有する出発基質の場合は、ラセミ体以外に(ラセミ体は当然用いることができる)、光学活性体(R体またはS体)を用いることもでき、その光学純度に制限はない。本発明の脱ヒドロキシフッ素化反応は、立体化学の反転、保持またはラセミ化を伴って進行するが、この立体選択性は、出発基質と有機塩基の組み合わせ、および採用した反応条件により異なる。目的とする一般式[2]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類の、所望の立体化学(R体、S体またはラセミ体)に応じて、出発基質、有機塩基または反応条件を適宜使い分ければ良い。一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体の対応する2つの炭素原子の立体化学についても、それぞれ独立に、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類の立体化学と同様のことが言える。
一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類(または一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体)は、公知の方法で調製することができる。本発明の特に好適な出発基質である、一般式[3]または一般式[5]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類は、それぞれフルオラール[CFCHO(またはその等価体)]、3,3,3−トリフルオロピルビン酸エステル類[CFCOCOR(Rはアルキル基または置換アルキル基)]から容易に調製できる。また、フルオラールのエチルヘミアセタールや水和物、および3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチルは市販されている。
スルフリルフルオリド(SO)の使用量は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、通常は0.8から10モルが好ましく、特に0.9から5モルがより好ましい。一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体を出発基質に用いる場合は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類に対する使用量の2倍を同様に用いれば良い。
本発明の脱ヒドロキシフッ素化剤としては、トリフルオロメタンスルホニルフルオリド(CFSOF)またはパーフルオロブタンスルホニルフルオリド(CSOF)を用いることもできる。しかしながら、これらの反応剤の、大量規模での入手容易性、フッ素の原子経済性や、廃棄物処理(有機性の含フッ素廃棄物が量論的に副生する)等を考慮すると、これらの反応剤を敢えて用いる優位性はない。
本発明の有機塩基としては、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジn−プロピルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、ジイソプロピルイソブチルアミン、ジメチルn−ノニルアミン、トリn−ブチルアミン、ジn−ヘキシルメチルアミン、ジメチルn−ドデシルアミン、トリn−ペンチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,3,4−コリジン、2,4,5−コリジン、2,5,6−コリジン、2,4,6−コリジン、3,4,5−コリジン、3,5,6−コリジン等が挙げられる。その中でもトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジンおよび3,5,6−コリジンが好ましく、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジンおよび2,4,6−コリジンがより好ましい。これらの有機塩基は、単独または組み合わせて用いることができる。また、炭素数が8以上の有機塩基は、脂溶性が高いため、水を用いる後処理においても回収が容易に行え、反応性が低下することなく再利用できる。よって、工業的な製造方法に好適である。なお、本明細書において、“炭素数”とは、有機塩基の炭素原子の合計数を意味する。
有機塩基の使用量は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、通常は0.8から15モルが好ましく、特に0.9から10モルがより好ましい。一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体を出発基質に用いる場合は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類に対する使用量の2倍を同様に用いれば良い。
次に、発明3、発明5および発明7で用いる「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」について、詳細に説明する。
「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」の有機塩基は、トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリエチルアミン、ジn−プロピルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、ジイソプロピルイソブチルアミン、ジメチルn−ノニルアミン、トリn−ブチルアミン、ジn−ヘキシルメチルアミン、ジメチルn−ドデシルアミン、トリn−ペンチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,3,4−コリジン、2,4,5−コリジン、2,5,6−コリジン、2,4,6−コリジン、3,4,5−コリジン、3,5,6−コリジン等が挙げられる。その中でもトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−コリジンおよび3,5,6−コリジンが好ましく、特にトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、3,5−ルチジンおよび2,4,6−コリジンがより好ましい。
「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」の有機塩基とフッ化水素のモル比は、100:1から1:100の範囲であり、通常は50:1から1:50の範囲が好ましく、特に25:1から1:25の範囲がより好ましい。さらにアルドリッチ(Aldrich、2007−2008総合カタログ)から市販されている、「トリエチルアミン1モルとフッ化水素3モルからなる錯体」および「ピリジン〜30%(〜10モル%)とフッ化水素〜70%(〜90モル%)からなる錯体」を用いるのが便利である。
「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」の使用量は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類1モルに対してフッ素アニオン(F-)として0.3モル以上を用いれば良く、通常は0.5から50モルが好ましく、特に0.7から25モルがより好ましい。一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体を出発基質に用いる場合は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類に対する使用量の2倍を同様に用いれば良い。
反応溶媒は、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その中でもn−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、キシレン、メシチレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、特にトルエン、キシレン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルがより好ましい。これらの反応溶媒は、単独または組み合わせて用いることができる。また、本発明は、無溶媒で反応を行うこともできる。
反応溶媒を用いる場合の該使用量は、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類(または一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体)1モルに対して0.1L(リットル)以上を用いれば良く、通常は0.2から10Lが好ましく、特に0.3から5Lがより好ましい。
温度条件は、−100から+100℃の範囲で行えば良く、通常は−60から+60℃が好ましく、特に−50から+50℃がより好ましい。スルフリルフルオリドの沸点(−49.7℃)以上の温度条件で反応を行う場合には、耐圧反応容器を用いることができる。
圧力条件は、大気圧から2MPaの範囲で行えば良く、通常は大気圧から1.5MPaが好ましく、特に大気圧から1MPaがより好ましい。従って、ステンレス鋼(SUS)またはガラス(グラスライニング)の様な材質でできた耐圧反応容器を用いて反応を行うことが好ましい。また、大量規模でのスルフリルフルオリドの仕込みとしては、初めに耐圧反応容器を陰圧にし、復圧しながら減圧下で、ガスまたは液体として導入する方法が効率的である。
反応時間は、通常は72時間以内であるが、出発基質と有機塩基の組み合わせ、および採用した反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、出発基質が殆ど消失した時点を反応の終点とすることが好ましい。 後処理は、反応終了液に対して通常の操作を行うことにより、目的とする一般式[2]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類(または一般式[2a]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体)を得ることができる。目的生成物は、必要に応じて、活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等により、高い化学純度に精製することができる。
特に、反応終了液を直接、蒸留する操作が効果的である。この様な後処理(必要に応じて、脱弗処理、分別蒸留等)を行うことにより、医農薬中間体および代替フロン化合物として十分な品質のものを得ることができる。
本発明においては、一般式[1]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類(または一般式[1a]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体)を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリドと反応させることにより、一般式[2]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類(または一般式[2a]で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体)を製造することができる。
好ましくは、「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことにより、目的とする脱ヒドロキシフッ素化反応が極めて良好に進行する。
より好ましくは、フルオラールまたは3,3,3−トリフルオロピルビン酸エステル類から調製できる、一般式[3]または一般式[5]で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を出発基質として用いることにより、産業上重要なハロゲン化α−フルオロエーテル類が高い選択性で収率良く工業的に製造できる。
[実施例]
実施例により、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例における略記号は、以下の通りとする。 Et;エチル基、Me;メチル基。
[実施例1]
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、下記式
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化ヘミアセタール類500mg(3.47mmol、1.00eq)、アセトニトリル3.5mL、トリエチルアミン1,756mg(17.35mmol、5.00eq)とトリエチルアミン・3フッ化水素錯体839mg(5.20mmol、1.50eq)を加え、−78℃の冷媒浴に浸し、スルフリルフルオリド(SO)708mg(6.94mmol、2.00eq)をボンベより吹き込み、室温で終夜攪拌した。反応終了液のH−NMRと19F−NMRより変換率と選択率は、それぞれ100%、70%以上であった。反応終了液を直接、蒸留(常圧)することにより、下記式
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を、トリエチルアミンとアセトニトリルの混合物として得た。収率は、反応終了液の変換率と選択率より70%以上であった。GC−MS(CI法)より分子量147(M+1)が観測された。H−NMRと19F−NMRを下に示す。
H−NMR[基準物質;(CHSi、重溶媒;CDCl];δ ppm/1.34(t、7.0Hz、3H)、3.86(m、1H)、4.03(m、1H)、5.41(dq、61.9Hz、3.0Hz、1H)。
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl);δ ppm/19.60(dq、61.9Hz、6.4Hz、1F)、78.03(dd、6.4Hz、3.0Hz、3F)。
[実施例2]
有機合成化学協会誌(日本),1999年,第57巻,第10号,p.102−103に従い、過剰量のフルオラール1水和物からフルオラール(ガス)を発生させ、アリルアルコールに吹き込んだ。室温で2時間攪拌することにより、下記式
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を定量的収率で得た。
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、上記式で示されるハロゲン化ヘミアセタール類1.56g(9.99mmol、1.00eq)、アセトニトリル10mL、トリエチルアミン4.05g(40.02mmol、4.01eq)とトリエチルアミン・3フッ化水素錯体1.61g(9.99mmol、1.00eq)を加え、−78℃の冷媒浴に浸し、スルフリルフルオリド(SO)2.04g(19.99mmol、2.00eq)をボンベより吹き込み、室温で終夜攪拌した。反応終了液のH−NMRと19F−NMRより変換率と選択率は、それぞれ100%、70%以上であった。反応終了液を直接、蒸留(常圧)することにより、下記式
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を、トリエチルアミンとアセトニトリルの混合物として得た。収率は、反応終了液の変換率と選択率より70%以上であった。H−NMRと19F−NMRを下に示す。
H−NMR[基準物質;(CHSi、重溶媒;CDCl];δ ppm/4.30(dd、13.2Hz、6.0Hz、1H)、4.47(dd、13.2Hz、4.2Hz、1H)、5.36(dd、16.8Hz、0.4Hz、1H)、5.40(dd、16.8Hz、1.2Hz、1H)、5.42(dq、60.7Hz、3.2Hz、1H)、5.92(m、1H)。
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl);δ ppm/17.95(dq、60.7Hz、6.0Hz、1F)、78.29(dd、6.0Hz、3.2Hz、3F)。
[実施例3]
少過剰量のメタノールを3,3,3−トリフルオロピルビン酸エチルに加えた。室温で終夜攪拌することにより、下記式
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を定量的収率で得た。
ステンレス鋼(SUS)製耐圧反応容器に、上記式で示されるハロゲン化ヘミアセタール類500mg(2.47mmol、1.00eq)、アセトニトリル2.5mL、トリエチルアミン1,000mg(9.88mmol、4.00eq)とトリエチルアミン・3フッ化水素錯体399mg(2.47mmol、1.00eq)を加え、−78℃の冷媒浴に浸し、スルフリルフルオリド(SO)505mg(4.95mmol、2.00eq)をボンベより吹き込み、室温で終夜攪拌した。反応終了液のH−NMRと19F−NMRより変換率と選択率は、それぞれ100%、70%以上であった。反応終了液を直接、蒸留(常圧から23kPa)することにより、下記式
Figure 2009286731
で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を、トリエチルアミンとアセトニトリルの混合物として得た。収率は、反応終了液の変換率と選択率より70%以上であった。H−NMRと19F−NMRを下に示す。
H−NMR[基準物質;(CHSi、重溶媒;CDCl];δ ppm/1.38(t、7.2Hz、3H)、3.59(s、3H)、4.41(q、7.2Hz、2H)。
19F−NMR(基準物質;C、重溶媒;CDCl);δ ppm/26.70(s、1F)、80.51(s、3F)。

Claims (7)

  1. 一般式[1]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[2]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
    [式中、haloRはハロアルキル基を表し、Rは水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシカルボニル基または置換アルコキシカルボニル基を表し、Rはアルキル基または置換アルキル基を表す]
  2. 一般式[1a]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化ヘミアセタール類ビス体を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[2a]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体を製造する方法。
    [式中、haloRはそれぞれ独立にハロアルキル基を表し、Rはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシカルボニル基または置換アルコキシカルボニル基を表し、nは2から18の整数を表す]
  3. 請求項1または請求項2において、系中にさらに「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のハロゲン化α−フルオロエーテル類またはハロゲン化α−フルオロエーテル類ビス体を製造する方法。
  4. 一般式[3]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[4]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
    [式中、Rはアルキル基または置換アルキル基を表す]
  5. 請求項4において、系中にさらに「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことを特徴とする、請求項4に記載のハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
  6. 一般式[5]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化ヘミアセタール類を、有機塩基の存在下に、スルフリルフルオリド(SO)と反応させることにより、一般式[6]
    Figure 2009286731
    で示されるハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
    [式中、RおよびRはそれぞれ独立にアルキル基または置換アルキル基を表す]
  7. 請求項6において、系中にさらに「有機塩基とフッ化水素からなる塩または錯体」を存在させて反応を行うことを特徴とする、請求項6に記載のハロゲン化α−フルオロエーテル類を製造する方法。
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