以下、本発明の実施形態に係る鉄塔用ケーブル固定金具について、添付図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
まず、本発明の第一実施形態に係る鉄塔用ケーブル固定金具(以下、単に固定金具という)について説明する。本実施形態に係る固定金具は、図1に示す如く、送電線(図示しない)を架設するための鉄塔Aの上部に設置された航空傷害灯Maや事故区間検出装置Mb(事故区間を検知するためのセンサ)等の機器Ma,Mbに接続される各種ケーブルCを、鉄塔Aの下部或いは地上にある機器(図示しない)に導くべく、鉄塔Aを構築する構造用材Bに沿わせて配置するためのものである。
ここで、本実施形態に係る固定金具の詳細な説明に先立ち、該固定金具の取り付けの対象となる鉄塔Aについて概略説明する。
かかる鉄塔Aは、図2(a)〜図2(c)に示す如く、一方向を長手にして延びる二つの帯状板部Pa,Pbが長手方向と直交する短手方向の一端同士が接続され、且つ二つの帯状板部Pa,Pbが直角又は略直角をなした屈曲部Pを有する形鋼(山形鋼(アングル)や、溝形鋼(C形鋼)、H形鋼)を構造用材Bにして構築されている。すなわち、鉄塔Aは、二つの帯状板部Pa,Pbが断面L字状の屈曲部Pを形成し、少なくとも一部に前記屈曲部Pを有する形鋼を構造用材Bにして構築されている。本実施形態においては、図2(a)に示す如く、一方向を長手にして延びる二つの帯状板部Pa,Pbが長手方向と直交する短手方向の一端同士が接続され、二つの帯状板部Pa,Pbが直角又は略直角をなした屈曲部Pのみで構成される山形鋼(等辺山形鋼)を構造用材Bにして構築された鉄塔Aを対象とする。
鉄塔Aを構築する構造用材Bとしては、図1に示す如く、鉄塔Aの四隅に立設される柱材Baや、横方向に延びて柱材Ba同士を連結する梁材Bb、斜め方向に延びて柱材Ba同士、或いは梁材Bb同士を連結するブレース材Bcがあり、前記柱材Baは、屈曲部Pの頂点(二つの帯状板部Pa,Pbの境界となる稜線)が鉄塔Aの四隅に位置するように配設され、梁材Bbやブレース材Bcは、一方の帯状板部Paが柱材Baの帯状板部Pa,Pbと面一になり、他方の帯状板部Pbが一方の帯状板部Paから鉄塔Aの中心に向けて延びるように配置される。
そして、かかる鉄塔Aは、柱材Baに対して作業者が昇降するステップボルトSが外方に向けて延出するように設けられている。すなわち、該鉄塔Aは、鉄塔Aの外側で作業者が昇降できるように複数のステップボルトSが上下方向に間隔をあけて設けられている。なお、ステップボルトSは、鉄塔Aの高さ方向の略全長に亘って複数設けられるが、図1においては、鉄塔Aの下部の一部にのみ示し、他の部分については図示を省略している。ステップボルトSは、図3に示す如く、棒状のステップSaの一端部に雄ネジSbが連設されており、柱材Ba(帯状板部Pa)に穿設された穴Hに雄ネジSbを挿通した上でナットNが螺合されることで柱材Baに固定されている。
本実施形態に係る固定金具は、上記鉄塔Aを対象とするもので、図4(a)及び図4(b)に示す如く、構造用材Bに取り付けられる金具本体10と、ケーブルCを直接的又は間接的に保持可能に構成された保持手段20とを備えている。
前記金具本体10は、一方の帯状板部Paに沿って螺設されるベース部100と、該ベース部100から延出するとともに、保持手段20が取り付けられる保持手段取付部110とを備える。
前記ベース部100は、一方の帯状板部Paに沿わせるべく板状に形成されている。本実施形態においては、ベース部100は、平面視矩形状に形成されており、一端を帯状板部Paの他端と略平行にした状態で該帯状板部Pに螺設されるようになっている。そして、本実施形態に係るベース部100は、帯状板部Paに取り付けられた状態(螺設された状態)で、一端部が帯状板部Paの他端(先端)近傍に位置するようにサイズ設定されている。
そして、ベース部100は、帯状板部Paに対して螺設するためのネジ部材S,Dを挿通させるネジ挿通穴101が穿設されている。本実施形態において、ネジ挿通穴101は、構造用材Bに取り付けられるステップボルトSの雄ネジSbの外径に対応した穴径に設定されている。
前記保持手段取付部110は、構造用材Bにおける一方の帯状板部Paに対する面直交方向への該帯状板部Paの投影領域Xと、他方の帯状板部Pbに対する面直交方向への該帯状板部Pbの投影領域Yとが重なる重複領域Z内に保持手段20を位置させるように形成されている。すなわち、保持手段取付部110は、二つの帯状板部Pa,Pbと、一方の帯状板部Paと略平行をなして他方の帯状板部Pbの他端から延びる仮想線Laと、他方の帯状板部Pbと略平行をなして一方の帯状板部Paの他端から延びる仮想線Lbとによって包囲された領域(=重複領域Z)内に保持手段20及びケーブルCを位置させるように形成されている。また、本実施形態に係る保持手段取付部110は、当該保持手段取付部110の大部分についても保持手段20と共に前記重複領域Z内に位置するように形成されている。
ここで本実施形態に係る保持手段取付部110について具体的に説明すると、保持手段取付部110は、ベース部100と同様に板状に形成されており、ベース部100に対して面交差する方向に真っ直ぐに延出している。そして、保持手段取付部110は、ベース部100の一端から該ベース部100に対して所定角度(鋭角)をなすように延出しており、本実施形態においては、ベース部100に対して概ね45°の角度になるように延出している。すなわち、金具本体10は、保持手段取付部110とベース部100との内角が45°になるように形成されている。
本実施形態に係る金具本体10は、上述の如く、ベース部100及び保持手段取付部110のそれぞれを板状に形成するようにしているため、金属製の板材を屈曲させるように曲げ加工することにより、曲げ稜線を境にして一端側にベース部100を形成するとともに、他端側に保持手段取付部110を形成するようにしている。これにより、保持手段取付部110は、上述の如く、ベース部100の一端から延出している。
本実施形態に係る金具本体10は、上述の如く、ベース部100が帯状板部Paに螺設された状態で一端が帯状板部Paの他端近傍に位置するようにサイズ設定されているため、該ベース部100の一端部及び保持手段取付部110の基端部(曲げ部分)が僅かに重複領域Zの外側に位置することになるが、上述の如く、ベース部100に対して鋭角をなすことにより、保持手段20及びこれに保持されるケーブルCを重複領域Z内に位置させるのに併せて、保持手段取付部110の大部分が重複領域Z内に位置するようになっている。
本実施形態に係る保持手段取付部110は、保持手段20と共に当該保持手段取付部110自身を重複領域Z内に位置させるに当り、ベース部100の形態(サイズや形状等)、ベース部100の帯状板部Paに対する取付位置(取付態様)、保持手段取付部110のベース部100からの延出位置を基準にして、ベース部100からの延出量やベース部100に対する角度が設定される。本実施形態に係る保持手段取付部110は、ベース部100の一端から延出しているため、ベース部100の一端を基準にしてベース部100に対する角度やベース部100からの延出量が決定されている。
前記保持手段取付部110には、保持手段20を構成する後述のUボルト200の両端部を挿通する挿通穴111a,111bが保持手段取付部110の延出方向に並んで二つ一組になるように設けられている。
本実施形態に係る金具本体10は、ベース部100と保持手段取付部110とを連結した補強リブ120が設けられている。該補強リブ120は、ベース部100の一端側と保持手段取付部110の基端側とを連結しており、ベース部100と保持手段取付部110との相対的な位置関係を適正な状態で維持させるようになっている。本実施形態において、前記補強リブ120として、ベース部100の上端の一部と保持手段取付部110の上端の一部とを連結した第一リブと、ベース部100の下端の一部と保持手段取付部110の下端の一部とを連結した第二リブとが設けられている。
本実施形態に係る保持手段20は、図5に示す如く、Uボルト200と、保持手段取付部110の挿通穴111a,111bに挿通したUボルト200の両端部に螺合されるナット210とを備えている。該保持手段20は、Uボルト200の端部に螺合したナット210を締め付けることにより、Uボルト200と保持手段取付部110との間に配置されたケーブルCを挟み込んで保持するように構成されている。本実施形態に係るUボルト200は、U字状の円弧部が弾性材料202で被覆されており、ケーブルCを保持したときにケーブルCの被覆等を弾性材料202によって保護するようになっている。
本実施形態に係る保持手段20は、Uボルト200及びナット210に加え、保持手段取付部110に固定されたケーブル受材220を備えている。ケーブル受材220は、ケーブルCを沿わせるための凹条221がUボルト200の両端部の間で前記円弧部(弾性材料202)の内周側と対向するように形成されている。すなわち、ケーブル受材220は、ケーブルCを沿わせる凹条221が保持手段取付部110の延出方向と直交方向に延びるように形成されている。
ケーブル受材220について具体的に説明すると、該ケーブル受材220は、金属製の薄板を曲げ加工した上で保持手段取付部110に固定されている。該ケーブル受材220は、帯板を長手方向の中央部全体を一方の面側に突出させる(他方の面側を窪ませる)ように曲げ加工して凹条221が形成されるとともに、両端部を一方の面側に屈曲させるように曲げ加工して断面略M字状に形成されている。前記凹条211は、ケーブルCを沿わせることができればよいが、本実施形態においては、ケーブルCの外周面が密接するように内周面が円弧面状に形成されている。該ケーブル受材220は、一方の面側に屈曲された両端部が保持手段取付部110に対して溶接等で固着されている。本実施形態に係るケーブル受材220は、Uボルト200の両端の間隔よりも広く形成されているため、凹条221がUボルト200のU字状の円弧部(弾性材料202)と対向する、すなわち、凹条211が保持手段取付部110の二つの挿通穴111a,111b間に位置するように配置され、凹条221の両側にUボルト200の両端部が挿通される穴222a,222bが挿通穴111a,111bと同心になるように穿設されている。
保持手段20は、保持手段取付部110に対して一つ又は二つ以上取り付けられる。本実施形態に係る保持手段20は、保持手段取付部110の延出方向に並ぶように二つ設けられており、保持手段取付部110に対してベース部100と保持手段取付部110との内角側の一方の面に取り付けられている。
本実施形態に係る固定金具1は、以上の構成からなり、柱材Baや梁材Bb、ブレース材Bc等の構造用材Bに対し、該構造用材Bの長手方向に間隔をあけて複数配設される。このように固定金具1を構造用材Bに配設するに当り、固定金具1は、図6(a)及び図6(b)に示す如く、二つの帯状板部Pa,Pbの内角側にある一方の帯状板部Paの面(内側面)にベース部100を重ね合わせた上で、該帯状板部Paに穿設された穴Hと固定金具1のネジ挿通穴101とに挿通したネジ部材S,DにナットNを螺合させることによって構造用材B(鉄塔A)に対して取り付けられる。
本実施形態に係る固定金具1は、図6(a)に示す如く、構造用材Bとしての柱材Baに対してはステップボルトSをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、柱材Baに対し、該柱材Baの帯状板部Paに穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したステップボルトSの雄ネジSbにナットNを螺合することで取り付けられる。この場合、ステップボルトS毎に固定金具1を設けてもよいが、ステップボルトSの間隔が固定金具1を配置する間隔よりも狭い場合には、例えば、複数あるステップボルトSに対し、一つおき、或いは複数個おきに固定金具1を取り付けるようにしてもよい。
これに対し、本実施形態に係る固定金具1は、図6(b)に示す如く、梁材Bbやブレース材Bc等に対しては、汎用のボルトDをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、梁材Bbやブレース材Bcに対し、これらの帯状板部Paに対して予め穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したボルトDにナットNを螺合させることで取り付けられる。なお、梁材Bbやブレース材Bcには、柱材BaのようにステップボルトSが設けられていないため、帯状板部Paの所定位置(固定金具1の取付位置)にボルトDを挿通するための穴Hが穿設される。かかるボルトDは、ステップボルトSの雄ネジSbと同径又はそれよりも小径のものが採用される。これにより、取り付ける対象が柱材Ba、梁材Bb、ブレース材Bcの何れであっても同一構成の固定金具1で対応できるようになっている。
そして、各固定金具1の保持手段20でケーブルCを保持する。すなわち、Uボルト200(U字状の円弧部)とケーブル受材220(凹条221の内面)とでケーブルCを挟みこんで保持する。これにより、鉄塔Aの上部に設置された航空傷害灯Maや事故区間検出装置Mb等の機器に接続された長尺なケーブルCは、各固定金具1の保持手段20によってケーブルCを長手方向に間隔をあけて複数箇所で保持され、構造用材Bに沿った状態になる。
この状態で、固定金具1の保持手段20及びケーブルCは、構造用材Bの重複領域Z内に位置することになる。そのため、鉄塔Aを構成する構造用材Bに沿わせるようにしてケーブルCが配置されても、固定金具1やケーブルCが、作業者の昇降や作業等を行う動作領域に存在することがない。すなわち、対象となる鉄塔Aは、構造用材Bの屈曲部Pの両端(二つの帯状板部Pa,Pbの一端(頂点)及び他端)が作業者の動作領域側に最も突出した部位になり、重複領域Zが構造用材B(屈曲部P:二つの帯状板部Pa,Pb)によって作業者の動作領域と隔離された領域となる。これにより、これにより、ケーブルCや固定金具1は、作業者の動作を阻害することがなく、また、作業者の接触によって姿勢変更することもなく、一定の姿勢で維持することができる。
以上のように、本実施形態に係る固定金具1によれば、構造用材Bに取り付けられる金具本体10と、ケーブルCを直接的又は間接的に保持可能に構成された保持手段20とを備え、前記金具本体10は、一方の帯状板部Paに沿って螺設されるベース部100と、ベース部100から延出し、前記保持手段20が取り付けられる保持手段取付部110とを備え、保持手段取付部110は、構造用材Bにおける一方の帯状板部Paに対する面直交方向への該帯状板部Paの投影領域Xと、他方の帯状板部Pbに対する面直交方向への該帯状板部Pbの投影領域Yとが重なる重複領域Z内に保持手段20を位置させるように形成されているので、保持手段20及び該保持手段20によって保持されたケーブルCは、作業者の動作領域内に位置することがなく、作業者の動作を害することがない。また、上記構成の固定手段1は、作業者と接触することがないため、姿勢変更したり外れたりすることがなく、構造用材Bの所定位置でケーブルCを確実に保持することができる。
そして、前記保持手段20は、Uボルト200とナット210とを備え、保持手段取付部110には、Uボルト200の両端部を挿通する挿通穴111a,111bが保持手段取付部110の延出方向に並んで二つ一組になるように設けられ、挿通穴111a,111bに挿通したUボルト200の端部に螺合したナット210を締め付けることにより、Uボルト200と保持手段取付部110との間に配置されたケーブルCを保持するように構成されているので、ケーブルCの軸線に対する直交方向への移動を確実に規制した状態でケーブルCを保持することができる。
特に、Uボルト200は、U字状の円弧部が弾性材料202で被覆されているので、ケーブルCを直接挟み込んで保持しても弾性材料202によってケーブルCを保護することができ、ケーブルCの損傷を防止することができる。
また、前記保持手段20は、保持手段取付部110に固定されたケーブル受材220をさらに備え、該ケーブル受材220は、ケーブルCを沿わせる凹条221が保持手段取付部110の延出方向と直交方向に延びるように形成されているので、凹条221の内面とUボルト200とによってケーブルCの外周の略全周が包囲されることになり、ケーブルCを所定位置でより確実に保持することができる。
さらに、保持手段20は、保持手段取付部110に一つ又は二つ以上取り付けられるので、一つの固定金具1で二本以上のケーブルCを保持することができる。
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態に係る鉄塔用ケーブル固定金具(固定金具)について説明する。本実施形態に係る固定金具は、第一実施形態と同様、図1に示す鉄塔Aの上部に設置された機器Ma,Mbに接続されたケーブルCを保持するもので、L字状の屈曲部を有する形鋼を構造用材B(柱材Baや梁材Bb、ブレース材Bc)にして構築された鉄塔Aを取り付けの対象としたものである。なお、以下の説明において、第一実施形態と同様の構成或いは相当する構成については、同一名称及び同一符号を付すこととする。
本実施形態に係る固定金具1は、図7(a)及び図7(b)に示す如く、第一実施形態と同様に、構造用材Bに取り付けられる金具本体10と、ケーブルCを直接的又は間接的に保持可能に構成された保持手段20とを備えており、金具本体10が、帯状板部Paに対して螺設されるベース部100と、ベース部100から延出し、前記保持手段20が取り付けられる保持手段取付部110とを備える。
前記ベース部100は、一方の帯状板部Paに沿わせるべく板状に形成されている。本実施形態においては、ベース部100は、平面視矩形状に形成されており、一端を帯状板部Paの他端と略平行にした状態で該帯状板部Pに螺設されるようになっている。そして、本実施形態に係るベース部100は、帯状板部Paに取り付けられた状態(螺設された状態)で、一端から他端までの全長が帯状板部Paの短手方向の幅内に収まるサイズに設定されている。すなわち、ベース部100は、帯状板部Paに螺設された状態で全体が重複領域Z内に位置するサイズに設定されている。
そして、ベース部100は、帯状板部Paに対して螺設するためのネジ部材S,Dを挿通させるネジ挿通穴101が穿設されている。本実施形態において、ネジ挿通穴101は、構造用材Bに取り付けられるステップボルトSの雄ネジSbの外径に対応した穴径に設定されている。
前記保持手段取付部110は、構造用材Bにおける一方の帯状板部Paに対する面直交方向への該帯状板部Paの投影領域Xと、他方の帯状板部Pbに対する面直交方向への該帯状板部Pbの投影領域Yとが重なる重複領域Z内に保持手段20を位置させるように形成されている。すなわち、保持手段取付部110は、二つの帯状板部Pa,Pbと、一方の帯状板部Paと略平行をなして他方の帯状板部Pbの他端から延びる仮想線Laと、他方の帯状板部Pbと略平行をなして一方の帯状板部Paの他端から延びる仮想線Lbとによって包囲された領域(=重複領域Z)内に保持手段20及びケーブルCを位置させるように形成されている。また、本実施形態に係る保持手段取付部110は、当該保持手段取付部110の全体が保持手段20と共に前記重複領域Z内に位置するように形成されている。
本実施形態に係る金具本体10は、前記重複領域Zのうち、構造用材Bにおける二つの帯状板部Pa,Pbの他端同士を結ぶ直線状の仮想線Lcと、二つの帯状板部Pa,Pbとで包囲された三角領域(二つの帯状板部Pa,Pbの投影領域X,Yの重なる重複領域Z(X+Y)の半分となる三角領域)内に保持手段取付部110の全体及び保持手段20の全体が位置するように保持手段取付部110が形成されている。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、全体(金具本体10(ベース部100及び保持手段取付部110)及び保持手段20の全て)が三角領域内に位置するように形成されている。
ここで本実施形態に係る保持手段取付部110について具体的に説明すると、保持手段取付部110は、ベース部100と同様に板状に形成されており、ベース部100に対して面交差する方向に真っ直ぐに延出している。そして、保持手段取付部110は、ベース部100の一端から該ベース部100に対して所定角度(鋭角)をなすように延出しており、本実施形態においては、ベース部100に対して概ね45°の角度になるように延出している。すなわち、金具本体10は、保持手段取付部110とベース部100との内角が45°になるように形成されている。
かかる保持手段取付部110は、保持手段20と共に重複領域Z(三角領域)内に位置するべく、ベース部100の形態(サイズや形状等)、ベース部100の帯状板部Paに対する取付位置(取付態様)、当該保持手段取付部110のベース部100からの延出位置を基準にして、ベース部100からの延出量やベース部100に対する角度が設定される。本実施形態に係る保持手段取付部110は、帯状板部Paの幅内に収まるサイズのベース部100の一端から延出しているため、該ベース部100の一端を基準にしてベース部100に対する角度やベース部100からの延出量が決定されている。なお、本実施形態に係る金具本体10についても、金属製の板材を屈曲させるように曲げ加工することにより、曲げ稜線を境にして一端側にベース部100が形成されるとともに、他端側に保持手段取付部110が形成されている。
前記保持手段20は、第一実施形態と同様に、Uボルト200、ナット201、及びケーブル受材220で構成されたものであるため、ここでの説明は割愛する。なお、言うまでもないが、前記保持手段取付部110には、保持手段20を取り付けるべく、Uボルト200の両端部を挿通する挿通穴111a,111bが保持手段取付部110の延出方向に並んで二つ一組になるように、取り付ける保持手段20の配置に対応して一組又は複数組設けられている。
本実施形態に係る固定金具1は、以上の構成からなり、柱材Baや梁材Bb、ブレース材Bc等の構造用材Bに対し、該構造用材Bの長手方向に間隔をあけて複数配設される。このように固定金具1を構造用材Bに配設するに当り、固定金具1は、二つの帯状板部Pa,Pbの内角側にある一方の帯状板部Paの面(内側面)にベース部100を重ね合わせた上で、該帯状板部Paに穿設された穴Hと固定金具1のネジ挿通穴101とに挿通したネジ部材S,DにナットNを螺合させることによって構造用材B(鉄塔A)に対して取り付けられる。
本実施形態に係る固定金具1においても、図7(a)に示す如く、構造用材Bとしての柱材Baに対してはステップボルトSをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、柱材Baに対し、該柱材Baの帯状板部Paに穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したステップボルトSの雄ネジSbにナットNを螺合することで取り付けられる。
また、本実施形態に係る固定金具1は、図7(b)に示す如く、梁材Bbやブレース材Bc等に対しては、汎用のボルトDをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、梁材Bbやブレース材Bcに対し、これらの帯状板部Paに対して予め穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したボルトDにナットNを螺合させることで取り付けられる。なお、この場合においても、梁材Bbやブレース材Bcには、柱材BaのようにステップボルトSが設けられていないため、第一実施形態及び第二実施形態と同様に、梁材Bbやブレース材Bcの帯状板部Paの所定位置(固定金具1の取付位置)にボルトDを挿通するための穴Hが穿設される。また、ボルトDは、ステップボルトSの雄ネジSbと同径又はそれよりも小径のものが採用される。
そして、各固定金具1における保持手段20でケーブルCを挟みこんで保持する。これにより、鉄塔Aの上部に設置された航空傷害灯Maや事故区間検出装置Mb等の機器に接続された長尺なケーブルCは、構造用材Bに沿った状態になる。
この状態で、固定金具1(金具本体10、保持手段20)及びケーブルCは、重複領域Z内にある三角領域に位置することになるため、鉄塔Aを構成する構造用材Bに沿わせるようにしてケーブルCが配置されても作業者の動作領域に存在することがない。すなわち、固定金具1(金具本体10、保持手段20)及びケーブルCは、構造用材B(屈曲部P)によって作業者の動作領域から隔離(隠蔽)された状態となる。これにより、ケーブルCや固定金具1は、作業者の動作を阻害することがなく、また、作業者の接触によって姿勢変更することもなく、一定の姿勢で維持することができる。
以上のように、本実施形態に係る固定金具1は、基本的な構成や取付態様が第一実施形態の固定金具1と同様であるので、第一実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。特に、本実施形態において、保持手段取付部110は、前記重複領域Zのうち、二つの帯状板部Pa,Pb、及び該二つの帯状板部Pa,Pbの他端同士を結ぶ直線状の仮想線Lcで包囲される三角領域内に保持手段20が位置するように形成されているので、固定手段1及びケーブルCが、重複領域Z内のより奥まった所に位置して作業者の動作領域から隔離された状態となり、作業者との接触をより確実に抑制することができる。
(第三実施形態)
次に、本発明の第三実施形態に係る鉄塔用ケーブル固定金具(固定金具)について説明する。本実施形態に係る固定金具は、第一実施形態及び第二実施形態と同様、図1に示す鉄塔Aの上部に設置された機器Ma,Mbに接続されたケーブルCを保持するもので、L字状の屈曲部を有する形鋼を構造用材B(柱材Baや梁材Bb、ブレース材Bc)にして構築された鉄塔Aを取り付けの対象としたものである。なお、以下の説明において、第一実施形態と同様の構成或いは相当する構成については、同一名称及び同一符号を付すこととする。
本実施形態に係る固定金具1は、図8(a)及び図8(b)に示す如く、第一及び第二実施形態と同様に、構造用材Bに取り付けられる金具本体10と、ケーブルCを直接的又は間接的に保持可能に構成された保持手段20とを備えており、金具本体10が、帯状板部Paに対して螺設されるベース部100と、ベース部100から延出し、前記保持手段20が取り付けられる保持手段取付部110とを備える。
前記ベース部100は、一方の帯状板部Paに沿わせるべく板状に形成されている。本実施形態においては、ベース部100は、平面視矩形状に形成されており、一端を帯状板部Paの他端と略平行にした状態で該帯状板部Pに螺設されるようになっている。そして、本実施形態に係るベース部100は、帯状板部Paに取り付けられた状態(螺設された状態)で、一端から他端までの全長が帯状板部Paの短手方向の幅内に収まるサイズに設定されている。すなわち、ベース部100は、帯状板部Paに螺設された状態で全体が重複領域Z内に位置するサイズに設定されている。
そして、ベース部100は、帯状板部Paに対して螺設するためのネジ部材S,Dを挿通させるネジ挿通穴101が穿設されている。本実施形態において、ネジ挿通穴101は、構造用材Bに取り付けられるステップボルトSの雄ネジSbの外径に対応した穴径に設定されている。
そして、本実施形態に係る保持手段取付部110は、両面(ベース部100との内角側及び外角側の両方)に保持手段20が取り付けられる。本実施形態においては、保持手段取付部110の内角側に二つの保持手段20が設けられ、外角側にも二つの保持手段20が設けられている。内角側にある二つの保持手段20は、保持手段取付部110の延出方向に横並ぶに配置され、外角側にある二つの保持手段20も保持手段取付部110の延出方向に横並びに配置されている。この内角側の保持手段20と外角側の保持手段20(保持手段20におけるケーブルCの保持位置)は、図8(b)に示す如く、保持するケーブルCの長手方向にオフセットするように配置されている。
前記保持手段20は、第一実施形態と同様に、Uボルト200、ナット201、及びケーブル受材220で構成されたものであるため、ここでの説明は割愛する。なお、言うまでもないが、保持手段20を上述の配置で取り付けるべく、保持手段取付部110には、Uボルト200の両端部を挿通するための二つ一組(一対)の挿通穴111a,111bが、保持手段取付部110の延出方向に二組形成され、該延出方向と直交する方向(ケーブルCの長手方向に相当する方向)にも二組形成されて合計四組がマトリックス状に形成されている。
前記保持手段取付部110は、構造用材Bにおける一方の帯状板部Paに対する面直交方向への該帯状板部Paの投影領域Xと、他方の帯状板部Pbに対する面直交方向への該帯状板部Pbの投影領域Yとが重なる重複領域Z内に、両面に取り付けられた全ての保持手段20を位置させるように形成されている。すなわち、保持手段取付部110は、二つの帯状板部Pa,Pbと、一方の帯状板部Paと略平行をなして他方の帯状板部Pbの他端から延びる仮想線Laと、他方の帯状板部Pbと略平行をなして一方の帯状板部Paの他端から延びる仮想線Lbとによって包囲された領域(=重複領域Z)内に保持手段20及びケーブルCの全てを位置させるように形成されている。また、本実施形態に係る保持手段取付部110は、当該保持手段取付部110の全体が保持手段20と共に前記重複領域Z内に位置するように形成されている。
ここで本実施形態に係る保持手段取付部110について具体的に説明すると、保持手段取付部110は、ベース部100と同様に板状に形成されており、ベース部100に対して面交差する方向に真っ直ぐに延出している。そして、保持手段取付部110は、ベース部100の一端から該ベース部100に対して所定角度(鋭角)をなすように延出しており、本実施形態においては、ベース部100に対して概ね45°の角度になるように延出している。すなわち、金具本体10は、保持手段取付部110とベース部100との内角が45°になるように形成されている。
かかる保持手段取付部110は、保持手段20と共に重複領域Z内に位置するべく、ベース部100の形態(サイズや形状等)、ベース部100の帯状板部Paに対する取付位置(取付態様)、当該保持手段取付部110のベース部100からの延出位置を基準にして、ベース部100からの延出量やベース部100に対する角度が設定される。本実施形態に係る保持手段取付部110は、帯状板部Paの幅内に収まるサイズのベース部100の一端から延出しているため、該ベース部100の一端を基準にしてベース部100に対する角度やベース部100からの延出量が決定されている。なお、本実施形態に係る金具本体10についても、金属製の板材を屈曲させるように曲げ加工することにより、曲げ稜線を境にして一端側にベース部100を形成するとともに、他端側に保持手段取付部110を形成するようにしている。
本実施形態に係る固定金具1は、以上の構成からなり、第一及び第二実施形態と同様に、柱材Baや梁材Bb、ブレース材Bc等の構造用材Bに対し、各構造用材Bの長手方向に間隔をあけて複数配設される。このように固定金具1を構造用材Bに配設するに当り、固定金具1は、図9(a)及び図9(b)に示す如く、二つの帯状板部Pa,Pbの内角側にある一方の帯状板部Paの面(内側面)にベース部100を重ね合わせた上で、該帯状板部Paに穿設された穴Hと固定金具1のネジ挿通穴101とに挿通したネジ部材S,DにナットNを螺合させることによって構造用材B(鉄塔A)に対して取り付けられる。
本実施形態に係る固定金具1は、図9(a)に示す如く、構造用材Bとしての柱材Baに対してはステップボルトSをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、柱材Baに対し、該柱材Baの帯状板部Paに穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したステップボルトSの雄ネジSbにナットNを螺合することで取り付けられる。
また、本実施形態に係る固定金具1は、図9(b)に示す如く、梁材Bbやブレース材Bc等に対しては、汎用のボルトDをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、梁材Bbやブレース材Bcに対し、これらの帯状板部Paに対して予め穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したボルトDにナットNを螺合させることで取り付けられる。なお、この場合においても、梁材Bbやブレース材Bcには、柱材BaのようにステップボルトSが設けられていないため、第一実施形態と同様に、梁材Bbやブレース材Bcの帯状板部Paの所定位置(固定金具1の取付位置)にボルトDを挿通するための穴Hが穿設される。また、ボルトDは、ステップボルトSの雄ネジSbと同径又はそれよりも小径のものが採用される。
そして、各固定金具1における保持手段20でケーブルCを挟みこんで保持する。これにより、鉄塔Aの上部に設置された航空傷害灯Maや事故区間検出装置Mb等の機器に接続された長尺なケーブルCは、構造用材Bに沿った状態になる。
この状態で、固定金具1(金具本体10、保持手段20)及びケーブルCは、構造用材Bの重複領域Z内にある三角領域に位置することになるため、鉄塔Aを構成する構造用材Bに沿わせるようにしてケーブルCが配置されても作業者の動作領域に存在することがない。すなわち、固定金具1(金具本体10、保持手段20)及びケーブルCは、構造用材B(屈曲部P)によって作業者の動作領域から隔離(隠蔽)された状態となる。これにより、ケーブルCや固定金具1は、作業者の動作を阻害することがなく、また、作業者の接触によって姿勢変更することもなく、一定の姿勢で維持することができる。
以上のように、本実施形態に係る固定金具1も、基本的な構成や取付態様が第一実施形態の固定金具1と同様であるので、第一実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。特に、本実施形態に係る固定金具1は、保持手段取付部110の両面を利用して保持手段20を取り付けるようにしたので、単一な固定金具1でより多くにケーブルCを保持することができる。
(第四実施形態)
次に、本発明の第四実施形態に係る鉄塔用ケーブル固定金具(固定金具)について説明する。本実施形態に係る固定金具は、第一乃至第三実施形態と同様、図1に示す鉄塔Aの上部に設置された機器Ma,Mbに接続されたケーブルCを保持するもので、L字状の屈曲部を有する形鋼を構造用材B(柱材Baや梁材Bb、ブレース材Bc)にして構築された鉄塔Aを取り付けの対象としたものである。なお、以下の説明において、第一乃至第三実施形態と同様の構成或いは相当する構成については、同一名称及び同一符号を付すこととする。
本実施形態に係る固定金具1は、図10(a)及び図10(b)に示す如く、第一乃至第三実施形態と同様に、構造用材Bに取り付けられる金具本体10と、ケーブルCを直接的又は間接的に保持可能に構成された保持手段20とを備えており、金具本体10が、帯状板部Paに対して螺設されるベース部100と、ベース部100から延出し、前記保持手段20が取り付けられる保持手段取付部110とを備える。
前記ベース部100は、一方の帯状板部Paに沿わせるべく板状に形成されている。本実施形態においては、ベース部100は、平面視矩形状に形成されており、一端を帯状板部Paの他端と略平行にした状態で該帯状板部Pに螺設されるようになっている。そして、本実施形態に係るベース部100は、帯状板部Paに取り付けられた状態(螺設された状態)で、一端から他端までの全長が帯状板部Paの短手方向の幅内に収まるサイズに設定されている。すなわち、ベース部100は、帯状板部Paに螺設された状態で全体が重複領域Z内に位置するサイズに設定されている。
そして、ベース部100は、帯状板部Paに対して螺設するためのネジ部材S,Dを挿通させるネジ挿通穴101が穿設されている。本実施形態において、ネジ挿通穴101は、構造用材Bに取り付けられるステップボルトSの雄ネジSbの外径に対応した穴径に設定されている。
前記保持手段取付部110は、構造用材Bにおける一方の帯状板部Paに対する面直交方向への該帯状板部Paの投影領域Xと、他方の帯状板部Pbに対する面直交方向への該帯状板部Pbの投影領域Yとが重なる重複領域Z内に保持手段20を位置させるように形成されている。すなわち、保持手段取付部110は、二つの帯状板部Pa,Pbと、一方の帯状板部Paと略平行をなして他方の帯状板部Pbの他端から延びる仮想線Laと、他方の帯状板部Pbと略平行をなして一方の帯状板部Paの他端から延びる仮想線Lbとによって包囲された領域(=重複領域Z)内に保持手段20及びケーブルCを位置させるように形成されている。また、本実施形態に係る保持手段取付部110は、当該保持手段取付部110の全体が保持手段20と共に前記重複領域Z内に位置するように形成されている。
ここで本実施形態に係る保持手段取付部110について具体的に説明すると、保持手段取付部110は、ベース部100と同様に板状に形成されており、ベース部100に対して面交差する方向に真っ直ぐに延出している。そして、保持手段取付部110は、ベース部100の一端から該ベース部100に対して所定角度をなすように延出しており、本実施形態においては、ベース部100に対して概ね90°の角度になるように延出している。すなわち、金具本体10は、保持手段取付部110とベース部100との内角が90°になるように形成されている。
かかる保持手段取付部110は、保持手段20と共に重複領域Z内に位置するべく、ベース部100の形態(サイズや形状等)、ベース部100の帯状板部Paに対する取付位置(取付態様)、当該保持手段取付部110のベース部100からの延出位置を基準にして、ベース部100からの延出量やベース部100に対する角度が設定される。本実施形態に係る保持手段取付部110は、帯状板部Paの幅内に収まるサイズのベース部100の一端から延出しているため、該ベース部100の一端を基準にしてベース部100に対する角度やベース部100からの延出量が決定されている。なお、本実施形態に係る金具本体10についても、金属製の板材を屈曲させるように曲げ加工することにより、曲げ稜線を境にして一端側にベース部100を形成するとともに、他端側に保持手段取付部110を形成するようにしている。
前記保持手段20は、第一乃至第三実施形態と同様に、Uボルト200、ナット201、及びケーブル受材220で構成されたものであるため、ここでの説明は割愛する。なお、言うまでもないが、前記保持手段取付部110には、保持手段20を取り付けるべく、Uボルト200の両端部を挿通する挿通穴111a,111bが保持手段取付部110の延出方向に並んで二つ一組になるように、取り付ける保持手段20の配置に対応して一組又は複数組設けられている。
本実施形態に係る固定金具1は、以上の構成からなり、柱材Baや梁材Bb、ブレース材Bc等の構造用材Bに対し、各構造用材Bの長手方向に間隔をあけて複数配設される。このように固定金具1を構造用材Bに配設するに当り、固定金具1は、二つの帯状板部Pa,Pbの内角側にある一方の帯状板部Paの面(内側面)にベース部100を重ね合わせた上で、該帯状板部Paに穿設された穴Hと固定金具1のネジ挿通穴101とに挿通したネジ部材S,DにナットNを螺合させることによって構造用材B(鉄塔A)に対して取り付けられる。
本実施形態に係る固定金具1においても、図10(a)に示す如く、構造用材Bとしての柱材Baに対してはステップボルトSをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、柱材Baに対し、該柱材Baの帯状板部Paに穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したステップボルトSの雄ネジSbにナットNを螺合することで取り付けられる。
また、本実施形態に係る固定金具1は、図10(b)に示す如く、梁材Bbやブレース材Bc等に対しては、汎用のボルトDをネジ部材として用いることで取り付けられる。すなわち、本実施形態に係る固定金具1は、梁材Bbやブレース材Bcに対し、これらの帯状板部Paに対して予め穿設された穴H及びベース部100のネジ挿通穴101に挿通したボルトDにナットNを螺合させることで取り付けられる。なお、この場合においても、梁材Bbやブレース材Bcには、柱材BaのようにステップボルトSが設けられていないため、第一実施形態と同様に、梁材Bbやブレース材Bcの帯状板部Paの所定位置(固定金具1の取付位置)にボルトDを挿通するための穴Hが穿設される。また、ボルトDは、ステップボルトSの雄ネジSbと同径又はそれよりも小径のものが採用される。
そして、各固定金具1における保持手段20でケーブルCを挟みこんで保持する。これにより、鉄塔Aの上部に設置された航空傷害灯Maや事故区間検出装置Mb等の機器に接続された長尺なケーブルCは、構造用材Bに沿った状態になる。
この状態で、固定金具1(金具本体10、保持手段20)及びケーブルCは、構造用材Bの重複領域Z内に位置することになるため、鉄塔Aを構成する構造用材Bに沿わせるようにしてケーブルCが配置されても作業者の動作領域に存在することがない。すなわち、固定金具1(金具本体10、保持手段20)及びケーブルCは、構造用材B(屈曲部P)によって作業者の動作領域から隔離(隠蔽)された状態となる。これにより、ケーブルCや固定金具1は、作業者の動作を阻害することがなく、また、作業者の接触によって姿勢変更することもなく、一定の姿勢で維持することができる。
以上のように、本実施形態に係る固定金具1は、基本的な構成や取付態様が第一実施形態の固定金具1と同様であるので、第一実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
ところで、上記第一乃至第四実施形態においては作業者の動作領域に対して隔離された重複領域(デッドスペース)が形成される形鋼を構造用材にして構築された鉄塔Aを前提に説明したが、鉄塔には、鋼管を構造用材にして構築されたものがあるため、以下に、鋼管を構造用材とした鉄塔に対してケーブルを配設するための鉄塔用ケーブル固定金具の参考例について説明する。
まず、丸形鋼管を構造用材にして構築された鉄塔を対象とする二種類の鉄塔用ケーブル固定金具(固定金具)の参考例について説明する。
(第一参考例)
上述の如く、構造用材に丸形鋼管が採用された鉄塔は、上記各実施形態で説明した鉄塔Aのように、構造用材Bの二つの帯状板部Pa,Pbが屈曲部Pを形成していないため、該鉄塔を対象とする第一参考例に係る固定金具は、鉄塔の中央側でケーブルを保持するように構成される。
具体的には、本参考例に係る固定金具は、図11に示す如く、構造用材B’を構成する鋼管に取り付けられる金具本体10’と、ケーブルCを直接的又は間接的に保持可能に構成された保持手段20’とを備えている。金具本体10’は、構造用材B’の外周に当接状態で配置されるベース部100’と、該ベース部100’に連設されるとともに、前記保持手段20’が取り付けられる保持手段取付部110’と、ベース部100’を構造用材B’に固定するための固定手段125’とを備えている。
前記ベース部100’は、板材を曲げ加工して形成されており、円筒状の構造用材B’の外周に当接させるべく円弧状に形成された当接部105’と、当接部105’の両端から該当接部105’の凸状の円弧面(外面)側に延出した一対の延出部106’,106’と、各延出部106’,106’の先端から屈曲して外側に延出し、保持手段取付部110’を連結する一対の連結部107’,107’とを備えている。これに対し、保持手段取付部110’は、一枚の平板で構成されており、一対の連結部107’,107’に跨るサイズに設定されるとともに、両端部がボルトDとこれに螺合されるナットNとによって一対の連結部107’,107’に連結されている。
そして、保持手段20’は、上記実施形態と同様に、Uボルト200’と、該Uボルト200’の両端部に螺着されるナット210’と、ケーブルCを沿わせるための凹条221’が形成されたケーブル受材220’とを備え、Uボルト200’のU字状の円弧部とケーブル受材の凹条221’の内面とでケーブルCを挟み込んで保持するようになっている。これに伴い、保持手段取付部110’には、Uボルト200’の両端部を挿通するための挿通穴111,111b’が二つ一組にして穿設されるとともに、前記ケーブル受材220’が固定されている。なお、図においては、保持手段20’が二つ設けられているため、保持手段取付部110’には、Uボルト200’の両端部を挿通する挿通穴111,111b’が二組横並びに設けられるとともに、ケーブル受材220’が挿通穴111,111b’の配置に対応して二つ設けられている。
固定手段125’は、結束バンドで構成されており、金具本体10’(一対の延出部106’,106’)に挿通した上で構造用材B’に巻き付けて結束することで、金具本体10’を構造用材B’に固定するようになっている。
本参考例に係る固定金具1’は、上述の如く、二つの帯状板部Pa,Pbによってデッドスペースが形成される形鋼とは異なり、丸形鋼管を構造用材B’にして構築された鉄塔を対象とするため、保持手段20’が鉄塔の中央側に位置する、すなわち、保持手段20’が構造用材B’の軸線と直交する鉄塔の中心方向への該構造用材B’の投影領域内に位置するように金具本体10’が固定される。これにより、構造用材B’全体で保持手段20’及びケーブルCが作業者の動作領域から隔離された状態となる。従って、本参考例に係る固定金具1’においても、作業者の動作を阻害することなくケーブルCを確実に保持することができる。
(第二参考例)
第二参考例に係る固定金具は、保持手段取付部以外の構成が第一参考例の固定金具と同様の構成であるため、第一参考例と同様の構成又は相当する構成について同一名称及び同一符号を付して説明を割愛し、第一参考例と相違する保持手段取付部についてのみ説明する。
図12に示す如く、第二参考例に係る保持手段取付部110’は、一対の連結部107’,107’に跨るように配設される連結ベース部110a’と、該連結ベース部110a’に対して直交方向に延出し、保持手段20’が取り付けられる取付板部110b’とで構成されている。該連結ベース部110a’は、第一参考例における保持手段取付部110’と同様に平板で構成され、両端部がボルトDとこれに螺合されるナットNとによって一対の連結部107’,107’に連結されるようになっている。そして、前記取付板部110b’についても平板で構成されており、構造用材B’の軸線に沿うように一端が連結ベース部110a’に溶接等で固定されている。該取付板部110b’には、保持手段20’としてのUボルト200’の両端部を挿通する挿通穴111a’,111b’が穿設されるとともに、保持手段20’の一構成であるケーブル受材220’が固定されている。
本参考例に係る固定金具1’についても、第一参考例と同様に、丸形鋼管を構造用材B’とする鉄塔を対象とするため、保持手段20’が鉄塔の中央側に位置する、すなわち、保持手段20’が構造用材B’の軸線と直交する鉄塔の中心方向への該構造用材B’の投影領域内に位置するように金具本体10’が固定される。これにより、構造用材B’自体で保持手段20’及びケーブルCが作業者の動作領域から隔離された状態となる。従って、本参考例に係る固定金具1’においても、作業者の動作を阻害することなくケーブルCを確実に保持することができる。
なお、上記第一参考例及び第二参考例において、構造用材B’に円筒鋼管を採用した鉄塔を対象としたが、第一参考例及び第二参考例に係る固定金具1’は、角形鋼管を構造用材B’にして構築された鉄塔にも採用することができる。このように角形鋼管を構造用材B’にした鉄塔を対象とする場合、金具本体10’の当接部105’を円弧状にせずに平面状に形成して角形鋼管の平面部に当接するようにしたり、当接部105’を屈曲した態様で形成して角形鋼管の角部に当接するようにしたりすればよい。
次に、角形鋼管を構造用材にして構築された鉄塔を対象とする二種類の鉄塔用ケーブル固定金具(固定金具)の参考例について説明する。
(第三参考例)
本参考例に係る固定金具は、上記各実施形態で説明した固定金具1や、第一参考例及び第二参考例で説明した固定金具1’のように、保持手段20’及びケーブルCを動作領域から隔離するものではないが、ケーブルCを安定して固定できるようにしたものである。
より具体的に説明すると、第三参考例に係る固定金具は、図13に示す如く、構造用材B’’に取り付けられる金具本体10’’と、ケーブルCを保持可能に構成された保持手段20’’とを備えている。
前記金具本体10’’は、角形鋼管の外周面を構成する四つの平面のうち、直角をなす二つの平面を基準にして取り付けられるもので、その二つの平面のうちの一方の平面と対向するように、一方の面にネジ部材S’’,D’’及びナットN’’を介して螺設されるとともに、保持手段20’’が取り付けられる板状の保持手段取付部110’’と、保持手段取付部110’’の一端から前記一方の平面側に向けて延び、前記二つの平面のうちの他方の平面に沿わせて配置され、保持手段取付部110’’におけるネジ部材S’’,D’’の軸周りでの回転を規制する規制片130’’と、保持手段取付部110’’の他端から規制片130’’と同方向に延出し、前記一方の平面に先端を当接することで保持手段取付部110’’と該一方の平面との間隔を所定間隔にする位置決片140’’とを備えている。
前記保持手段取付部110’’は、帯板状に形成され、所定位置にネジ部材D’’を挿通するためのネジ挿通穴101’’が穿設されている。そして、保持手段20’’は、上記実施形態と同様に、Uボルト200’’と、該Uボルト200’’の両端部に螺着されるナット210’’と、ケーブルCを沿わせるための凹条221’’が形成されたケーブル受材220’’とを備え、Uボルト200’’のU字状の円弧部とケーブル受材220’’の凹条221’’の内面とでケーブルCを挟み込んで保持するようになっている。これに伴い、保持手段取付部110’’には、Uボルト200’’の両端部を挿通するための挿通穴111,111b’’が二つ一組にして穿設されるとともに、前記ケーブル受材220’’が固定されている。なお、本実施例においては、上記構成の保持手段20’’が保持手段取付部110’’の長手方向に間隔をあけて複数設けられている。
本参考例に係る固定金具1’’は、金具本体10’’が構造用材B’’に螺入されるネジ部材S’’,D’’で取り付けられるようになっているが、上述の如く、保持手段取付部110’’が構造用材B’’の一方の平面に対して間隔をあけて配置されるため、ネジ挿通穴101’’に挿通したネジ部材S’’,D’’の頭部と該ネジ部材S’’,D’’に螺合されるナットN’’とで保持手段取付部110’’を挟み込んで該ネジ部材D’’を構造用材B’’に螺入したり、保持手段取付部110’’と構造用材B’’との間にスペーサを介装し、保持手段取付部110及びスペーサをネジ部材S’’,D’’を介して構造用材B’’に螺設したりすることで、上述のような配置とされる。なお、図においては、構造用材B’’の一方の平面に固着したナットN’’をスペーサに兼用させるようにしており、ネジ挿通穴110’’に挿通したネジ部材S’’,D’’をナットN’’に螺合させるようにしている。なお、構造用材B’’が柱材である場合には、その柱材に螺設されるステップボルトS’’をネジ部材として用い、保持手段取付部110’’を構造用材B’’の一面に対して間隔をあけて対向した配置にされる。
本参考例に係る固定金具1’’は、上述の如く、一本のネジ部材S’’,D’’によって構造用材B’’に対して固定されるが、上述の如く、規制片130’’が構造用材B’’の一方の平面と直角をなす他方の平面に沿わせるように配置されるため、ネジ部材S’’,D’’の軸心周りでの回転が確実に規制される。また、位置決片140’’が一方の平面に当接するため、保持手段取付部110’’を構造用材B’’の一方の平面に対して所定間隔を開けた状態で維持させることができる。これにより、本参考例に係る固定金具1’’は、保持手段20’’に保持させたケーブルCが姿勢変更することなく一定の姿勢で確実に保持することができる。
(第四参考例)
第四参考例に係る固定金具は、位置決片を備えていない点で第三参考例に係る固定金具1’’と異なるが、その他の構成は第三参考例と同様である。これに伴い、以下の説明において、第三参考例の固定金具1’’と同様の構成或いは相当する構成について同一名称及び同一符号を付すこととする。
図14に示す如く、本参考例に係る固定金具1’’は、構造用材B’’に取り付けられる金具本体10’’と、ケーブルCを保持可能に構成された保持手段20’’とを備えている。
前記金具本体10’’は、角形鋼管の外周面を構成する四つの面のうち、直角をなす二面を基準にして取り付けられるもので、前記二面のうち一方の面と対向するように、一方の面にネジ部材S’’,D’’を介して螺設されるとともに、保持手段20’’が取り付けられる板状の保持手段取付部110’’と、保持手段取付部110’’の一端から前記一方の面側に向けて延び、前記二面のうちの他方の面に沿わせて配置され、保持手段取付部110’’におけるネジ部材S’’,D’’の軸周りでの回転を規制する規制片130’’とを備えている。
前記保持手段取付部110’’は、帯板状に形成され、所定位置にネジ部材S’’,D’’を挿通するためのネジ挿通穴101’’が穿設されている。そして、保持手段20’’は、上記各実施形態と同様にUボルト200’’、ナット210’’、ケーブル受材220’’を備えており、保持手段取付部110’’には、Uボルト200’’の両端部を挿通する二つ一組の挿通穴111a’’,111b’’が穿設されている。本参考例においても複数のケーブルCを保持手段取付部110’’の長手方向に間隔をあけて配設すべく、保持手段20’’が横並びに複数設けられているが、隣接するケーブルCの間隔を狭くするために、隣り合う保持手段20’’は、保持するケーブルCの軸線方向にオフセットし、保持手段取付部110’’の延出方向(規制片130’’からの延出方向)において一部が重なるように配設されている。これにより、横方向に並ぶ保持手段20’’同士を可能な限り接近して配置できるため、ケーブルCの間隔を狭く、すなわち、保持手段取付部110’’の長さを短くすることができる。
本参考例に係る固定金具1’’についても、第三参考例と同様に、金具本体10’’が構造用材B’’に螺入されるネジ部材S’’,D’’で取り付けられるようになっているが、上述の如く、保持手段取付部110’’が構造用材B’’の一方の平面に対して間隔をあけて配置されるため、ネジ挿通穴101’’に挿通したネジ部材S’’,D’’の頭部と該ネジ部材S’’,D’’に螺合されるナットN’’とで保持手段取付部110’’を挟み込んで該ネジ部材D’’を構造用材B’’に螺入したり、保持手段取付部110’’と構造用材B’’との間にスペーサを介装し、保持手段取付部110及びスペーサをネジ部材S’’,D’’を介して構造用材B’’に螺設したりすることで、上述のような配置とされる。なお、図においては、第三参考例と同様に、構造用材B’’の一方の平面に固着したナットN’’をスペーサに兼用させるようにしており、ネジ挿通穴101’’に挿通したネジ部材S’’,D’’をナットN’’に螺合させるようにしている。なお、構造用材B’’が柱材である場合には、その柱材に螺設されるステップボルトS’’をネジ部材として用い、保持手段取付部110’’を構造用材B’’の一方の平面に対して間隔をあけて対向した配置にされる。
本参考例に係る固定金具1’’は、上述の如く、一本のネジ部材S’’,D’’によって構造用材B’’に対して固定されるが、上述の如く、規制片130’’が構造用材B’’の一方の平面と直角をなす他方の平面に沿わせるように配置されるため、ネジ部材S’’,D’’の軸心周りでの回転が確実に規制される。これにより、本参考例に係る固定金具1’’についても保持手段20’’に保持させたケーブルCが姿勢変更することなく一定の姿勢で確実に保持することができる。
尚、本発明の鉄塔用ケーブル固定金具は、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
上記各実施形態において、鉄塔Aを構築する構造用材Bとして等辺山形鋼を採用したものについて説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、鉄塔Aを構築する構造用材Bとして図2(b)に示す溝形鋼(C形鋼)や、図2(c)に示すH形鋼を採用したものであってもよい。このようにしても、溝形鋼やH形鋼が山形鋼のように、一方向を長手にして延びる二つの帯状板部Pa,Pbが長手方向と直交する短手方向の一端同士が接続され、二つの帯状板部Pa,Pbが直角又は略直角をなした断面L字状の屈曲部Pを有するため、図15(a)、図15(b)、図16(a)及び図16(b)に示す如く、一方の帯状板部Paにベース部100を取り付けることで上記各実施形態と同様に、ケーブルCや保持手段20が直角又は略直角をなす二つの帯状板部Pa,Pbの投影領域Xが重なる重複領域Z内に位置することになる。すなわち、溝形鋼やH形鋼は、断面L字状をなす部位(屈曲部)Pを一部の構成として有し、該一部(屈曲部P)が長手方向に形成される溝部を画定することになるので、一方の帯状板部Paにベース部100を取り付けることで保持手段20が溝部内、すなわち、前記重複領域Z内に位置し、作業者の動作を阻害することがない。
上記各実施形態において、一枚の板材を曲げ加工することで、ベース部100及び保持手段取付部110を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、ベース部100及び保持手段取付部110のそれぞれを独立した板材で構成し、ベース部100に対して保持手段取付部110を溶接等で固着するようにしてもよい。また、ベース部100を板材で構成する一方、保持手段取付部110を棒材で構成し、ベース部100に対して保持手段取付部110を溶接等で固着するようにしてもよい。すなわち、保持手段取付部110がベース部100から延出していれば、ベース部100及び保持手段110の形態は種々変更可能である。
そして、上述のようにベース部100と保持手段取付部110を別部材で構成する場合、保持手段取付部110は、必ずしもベース部100の一端から延出させる必要はなく、ベース部100が帯状板部Paに対して螺設できる状態にしてベース部100の途中位置から保持手段取付部110を延出させるようにしてもよい。この場合、保持手段取付部110の延出位置を基準にして該保持手段取付部110が前記重複領域Z或いは重複領域Z内の三角領域内に位置するように保持手段取付部110の延出量やベース部100に対する角度を設定すればよい。なお、保持手段取付部110は、全体が重複領域Z内に位置する必要はなく、少なくとも作業者の動作を阻害する虞のあるケーブルC及び保持手段20が重複領域Z内に位置すればよいが、上記各実施形態のように、保持手段取付部110の全体又は大部分が重複領域Z内に位置することが好ましことは言うまでもない。
さらに、上記各実施形態において、保持手段取付部110をベース部100から真っ直ぐ延びるように形成したが、これに限定されるものではなく、例えば、保持手段取付部110を湾曲又は屈曲した構成にしてもよい。この場合においても、保持手段20を重複領域Z内に位置させるようにすることは勿論のことである。
上記各実施形態において、固定金具1の取付態様として保持手段取付部110の基端を帯状板部Paの他端側に位置させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、二つの帯状板部Pa,Pbの境界側に保持手段取付部110の基端を位置させるようにして取り付けるようにしても勿論よい。但し、少なくとも保持手段20を重複領域Z内に位置させるように保持手段取付部110を形成することは勿論のことである。
上記各実施形態において、保持手段20を構成するUボルト200のU字状の円弧部を弾性材料202で被覆したが、これに限定されるものではなく、例えば、U字状の円弧部が鋼材そのもの、すなわち、被覆されていないものであってもよい。また、保持手段20にケーブル受材220を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、Uボルト200と保持手段取付部110とでケーブルCを挟み込むようにしてケーブルCを保持するようにしてもよい。
上記各実施形態において、保持手段20をUボルト200で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば、図17(a)に示す如く、ケーブルCを両側から挟み込むようにした一対の挟持体250a,250bで保持手段20を構成したり、図17(b)に示す如く、ケーブルCを掛止可能なフックボルト260で保持手段20を構成したり、図17(c)に示す如く、ケーブルCを挿通可能なアイボルト270で保持手段20を構成したりしてもよい。ようは、ケーブルCを保持できるものであれば、保持手段20には種々のものを採用してもよい。但し、保持手段20のケーブルCを保持する部位を重複領域Z内に位置させることは勿論のことである。
上記各実施形態において、保持手段20にケーブルCを直接保持させるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、図18に示す如く、配線用配管30を保持手段20に保持させ、その配線用配管30内にケーブルCを挿通するようにしてもよい。すなわち、保持手段20は、ケーブルCを直接保持するものに限定されるものではなく、配線用配管30等を介して間接的の保持するものであってもよい。
上記各実施形態において、間隔をあけて二つ以上の保持手段20を横並びに配置したが、例えば、図19に示す如く、隣り合う保持手段20は、保持するケーブルCの軸線方向にオフセットさせ、且つ保持手段取付部110の延出方向において一部が重なるように配置されてもよい。このようにすれば、隣り合う保持手段20の間隔を詰めることができ、複数のケーブルCを接近させた配置にすることができる。また、保持手段20の間隔を詰めることができるので、保持手段取付部110のサイズを小さくすることができる。
上記各実施形態において、保持手段取付部110を平板で構成し、これに挿通したUボルト200の端部に螺合したナット210を保持手段取付部110の平面に接触させるようにしたが、例えば、図20に示す如く、保持手段取付部110の外側面(ベース部100と保持手段取付部110との外角側にある保持手段取付部110の面)にザグリ215を形成し、Uボルト200の端部及びナット210がザグリ215内に収容するようにしてもよい。このようにすれば、保持手段20をUボルト200等で構成したときにナット210やUボルト200の端部を気にすることなく保持手段取付部110を重複領域Z内に位置させることができる。
上記第二乃至第三実施形態において、保持手段20のみならず金具本体10全体が重複領域Zに位置するように該金具本体10(ベース部100や保持手段取付部110)を寸法設定するようにしたが、これに限定されるものではなく、第一実施形態のように、少なくとも保持手段20のケーブルCを保持する部位が重複領域Zに位置すればよい。このように、保持手段20が重複領域Z内にあれば、金具本体10が部分的に重複領域Z外にあっても作業者の動作を阻害することを抑制することができる。
1…鉄塔用ケーブル固定金具(固定金具)、10…金具本体、20…保持手段、30…配線用配管、100…ベース部、101…ネジ挿通穴、110…保持手段取付部、111a,111b…挿通穴、120…補強リブ、200…Uボルト、202…弾性材料、210…ナット、215…ザグリ、220…ケーブル受材、221…凹条、222a,222b…穴、250a,250b…挟持体、260…フックボルト、270…アイボルト、A…鉄塔、B…構造用材(形鋼)、Ba…柱材(構造用材:形鋼)、Bb…梁材(構造用材:形鋼)、Bc…ブレース材(構造用材:形鋼)、C…ケーブル、D…ボルト(ネジ部材)、H…穴、La…仮想線、Lb…仮想線、Lc…仮想線、Ma…航空傷害灯(機器)、Mb…事故区間検出装置(機器)、N…ナット、P…屈曲部、Pa,Pb…帯状板部、S…ステップボルト、Sa…ステップ、Sb…雄ネジ、X,Y…投影領域、Z…重複領域