JP2009280743A - 高酸素透過性プラスチック材料 - Google Patents
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Abstract
【課題】 高い酸素透過性を有するプラスチック材料、あるいは高い酸素透過性とともに、優れた光透過性と表面のタンパク質の接着を抑えた成形性に優れた柔軟なゴム状のプラスチック材料を提供する。
【解決手段】 高酸素透過性プラスチック材料は、熱可塑性ポリマーのゾル中で、ジアルコキシジアルキルシランを重合して得られたナノサイズの線状ポリシロキサンを含むゲルをもとに成型して得られる。
【選択図】 なし
【解決手段】 高酸素透過性プラスチック材料は、熱可塑性ポリマーのゾル中で、ジアルコキシジアルキルシランを重合して得られたナノサイズの線状ポリシロキサンを含むゲルをもとに成型して得られる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、高い酸素透過性を有するプラスチック材料およびその製造方法に関するものである。
高酸素透過性材料は、酸素富化膜、人工肺、コンタクトレンズとしての用途が知られている。酸素富化膜は燃焼効率を上げる目的で、酸素をより多く供給するために利用されてきた。現在は医療用として酸素を空気中から高濃度で分離し供給することも行われている。これらの用途に適合した材料は力学物性の面からポリマープラスチックが有用である。例えば非特許文献1に示されているように、ポリヒドロキシスチレン−ポリスルホン−ポリジメチルシロキサンの共重合体が用いられている。
人工肺の用途としては、血液に酸素を供給し二酸化炭素を脱離することを目的としている。これらの材料として酸素透過性が高いポリマーとしてポリエチレンやポリプロピレンの中空糸が用いられ、これに抗血栓性を付与するために抗凝結剤を付与する方法(非特許文献2)や抗血栓性ポリマーであるポリウレタンで被覆する方法(特許文献1)が知られている。しかし、抗凝固剤は高価であり、またポリウレタンの抗血栓性は十分なものでは無い(非特許文献3)。
コンタクトレンズの酸素透過性を高めるためには含水ゲルを用いた、いわゆるソフトコンタクトレンズの開発および酸素透過性の高い物質として知られるポリシロキサンを光透過性の高いポリマーに化学的に結合したものの開発がなされてきた(特許文献2)。
ソフトコンタクトレンズは、含水ゲルであるため雑菌の繁殖による角膜の損傷、水分の揮発による装着感が悪いなどの難点がある。さらにポリシロキサンと化学結合したポリマーを利用したコンタクトレンズ材料は表面への涙の成分であるタンパク質の付着が多く且つ成形性が悪いという難点がある。
酸素富化膜については高い酸素透過性を有し、実用に耐える力学物性を有すること、人工肺用材料としては高い酸素透過性を有し、実用に耐える力学物性および抗血栓性を有するプラスチック材料の開発が必要である。コンタクトレンズについては、含水ゲルで無い高い光透過性を有するポリマーが高酸素透過性を持たない場合、このポリマーに高い酸素透過性を付与することが必要であり、且つ成形性に優れた柔軟なゴム状であること、且つ表面へのタンパク質の吸着が少ないプラスチック材料が必要である。
本発明は、このような要求を満たし、高い酸素透過性を有するプラスチック材料、あるいは高い酸素透過性とともに、優れた光透過性と表面のタンパク質の接着を抑えた成形性に優れた柔軟なゴム状のプラスチック材料を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するための手段として提供される請求項1に係る発明の高酸素透過性プラスチック材料は、熱可塑性ポリマーのゾル中で、ジアルコキシジアルキルシランを重合して得られたナノサイズの線状ポリシロキサンを含むゲルをもとに成型して得られたことを特徴とする。
同じく請求項2に係る発明の高酸素透過性プラスチック材料は、該熱可塑性ポリマーが、ポリビニルアルコール、アクリル酸とエチレンとの共重合体、ビニルアルコールとエチレンとの共重合体、スチレンとブタジエンおよびイソプレンとのブロック共重合体、フッ素系ポリマーから選ばれるポリマーであことを特徴とする。
請求項3に係る発明の高酸素透過性プラスチック材料は、請求項1の高酸素透過性プラスチック材料であって、該ポリシロキサンが、ジメトキシジメチルシランおよびジメトキシジメチルシランから選ばれる少なくとも1種類の該ジアルコキシジアルキルシランから重合されたことを特徴とする。
請求項4に係る発明の高酸素透過性プラスチック材料は、前記ゾルが、請求項1に記載の熱可塑性ポリマーにポリエチレングリコールをグラフト重合したゾルであることを特徴とする。
また上記課題を解決するための手段として提供される請求項5に係る発明の酸素富化膜は、請求項1から4のいずれかに記載の高酸素透過性プラスチック材料を含む。
同じく上記課題を解決するための手段として提供される請求項6に係る発明の人工肺は、
請求項1から4のいずれかに記載の高酸素透過性プラスチック材料を含む。
請求項1から4のいずれかに記載の高酸素透過性プラスチック材料を含む。
上記課題を解決するための手段として提供される請求項7に係る発明のコンタクトレンズは、請求項1から4のいずれかに記載の高酸素透過性プラスチック材料を含む。
さらに上記課題を解決するための手段として提供される請求項5に係る発明の高酸素透過性プラスチック材料の製造方法は、熱可塑性ポリマーのゾルに、ジアルコキシジアルキルシランを加えて重合し、得られたゲルを成型することを特徴とする。
本発明の高酸素透過性プラスチック材料は、基材となるべき熱可塑性ポリマーのゾル中で、ジアルコキシジアルキルシランを重合すると線状ポリシロキサンがナノサイズに分散した熱可塑性ポリマーのゲルになる。このゲルから多様な形状に成型し、高い酸素透過性を有するプラスチック材料が得られる。このプラスチック材料は、酸素富化膜、人工肺に使用できる。
さらに熱可塑性ポリマーの表面を親水性と疎水性のミクロ相分離構造を形成させることにより、タンパク質が付着することを抑制でき、抗血栓性の向上にも役立つ。例えば熱可塑性ポリマーの表面をポリエチレングリコールでグラフト重合し、線状ポリシロキサンがナノサイズに分散した熱可塑性ポリマーのゲルであれば、タンパク質吸着を抑えることができる。熱可塑性ポリマーが透明であれば、酸素透過性を高められ更に表面に親水性を付与することで優れた性能を有するコンタクトレンズの製造が可能となる。光透過性に優れた熱可塑性ポリマーを利用し柔軟なゴム状材料であれば、例えばソフトコンタクトレンズとして利用可能である。
本発明の高酸素透過性プラスチック材料は、熱可塑性ポリマーにゾル−ゲル反応によりポリシロキサンをナノサイズで分散したハイブリッドからなる。
ポリシロキサンの原料はジアルコキシジアルキルシランであり、好ましくはジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジメチルシランである。
熱可塑性ポリマーはビニル系ポリマーであり、好ましくはケン化度が99%以下のポリビニルアルコール、アクリル酸とエチレンとの共重合体、好ましくはアクリル酸のモル比が10%以下のもの、ビニルアルコールとエチレンとの共重合体であり、好ましくはビニルアルコールのモル比が10%以下のもの、熱可塑性エラストマーブロック共重合体であり、好ましくはスチレンとブタジエンおよびイソプレンとのブロック共重合体、およびフッ素系ポリマーであり、好ましくは軟化点が150℃以下のものである。この他に酢酸セルロースを用いることも可能である。
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
重合度500、ケン化度73.5±1%のポリビニルアルコール(PVA)をメタノール中で精製を行い、このPVAを10wt%水溶液とし、ジエトキシジメチルシラン(DEDMS)をPVAの重量に対し5wt%、10wt%、20wt%として、5日間室温で攪拌し、反応終了後、ポリスチレンのシャーレに注入しキャスト膜の試料を作製した。
重合度500、ケン化度73.5±1%のポリビニルアルコール(PVA)をメタノール中で精製を行い、このPVAを10wt%水溶液とし、ジエトキシジメチルシラン(DEDMS)をPVAの重量に対し5wt%、10wt%、20wt%として、5日間室温で攪拌し、反応終了後、ポリスチレンのシャーレに注入しキャスト膜の試料を作製した。
(実施例2)
ポリスチレン部の重量比40wt%のスチレン−ブタジエン−スチレンブロックブロック共重合体(SBS)をテトラヒドロフランに溶解・再沈し精製した。この精製試料を再度テトラヒドロフランに溶解し10wt%テトラヒドロフラン溶液を作製し,この溶液にDEDMS:水:塩酸=1:2:0.1のモル比となるように調整した。なお、SBSとDEDMSとの重量比を9:1、9.5:0.5、9.75:0.25となるように調整した。得られた試料溶液は30℃で48時間反応させ得られた試料を室温でキャスト膜を作製した。試料膜中の塩酸の除去のために熱水中に充分浸漬した。さらにキャスト膜を細かく切断後150℃で加熱溶融成形によりフィルムの試料を作製した。
ポリスチレン部の重量比40wt%のスチレン−ブタジエン−スチレンブロックブロック共重合体(SBS)をテトラヒドロフランに溶解・再沈し精製した。この精製試料を再度テトラヒドロフランに溶解し10wt%テトラヒドロフラン溶液を作製し,この溶液にDEDMS:水:塩酸=1:2:0.1のモル比となるように調整した。なお、SBSとDEDMSとの重量比を9:1、9.5:0.5、9.75:0.25となるように調整した。得られた試料溶液は30℃で48時間反応させ得られた試料を室温でキャスト膜を作製した。試料膜中の塩酸の除去のために熱水中に充分浸漬した。さらにキャスト膜を細かく切断後150℃で加熱溶融成形によりフィルムの試料を作製した。
(実施例3)
実施例1のキャスト膜、実施例2の加熱溶融膜のポリブタジエン部の親水性化のために、ポリエチレングリコール(PEG)をグラフトした。そのためにSBSブロック共重合体をラジカル反応開始剤としての1−ヒドロキシルヒドロエチルフェニルケトン0.35g、水40ml、エタノール60mlの溶液に浸漬し、酸素ガスをバブリングしながら加熱用白熱灯、ブラックライトを照射し30分間反応させ、大量の蒸留水で1昼夜洗浄その後減圧乾燥を行った。この操作により表面にカルボキシル基を導入できた。この試料を各種分子量のPEG液体中に浸漬し80℃、24時間グラフト反応を行ない、大量の蒸留水で長時間洗浄後、減圧乾燥したものを試料とした。
実施例1のキャスト膜、実施例2の加熱溶融膜のポリブタジエン部の親水性化のために、ポリエチレングリコール(PEG)をグラフトした。そのためにSBSブロック共重合体をラジカル反応開始剤としての1−ヒドロキシルヒドロエチルフェニルケトン0.35g、水40ml、エタノール60mlの溶液に浸漬し、酸素ガスをバブリングしながら加熱用白熱灯、ブラックライトを照射し30分間反応させ、大量の蒸留水で1昼夜洗浄その後減圧乾燥を行った。この操作により表面にカルボキシル基を導入できた。この試料を各種分子量のPEG液体中に浸漬し80℃、24時間グラフト反応を行ない、大量の蒸留水で長時間洗浄後、減圧乾燥したものを試料とした。
試料につき、ポリシロキサンが形成されていることは赤外線吸収スペクトルの測定により評価出来る。酸素透過性は、酸素透過性実験による酸素透過係数により評価出来る。光透過性は、この指標として印字された紙の上に試料を置きその印字の判読可能性により評価できる。また、紫外可視近赤外分光光度計により光吸収係数を測定することによっても評価できる。試料表面へのタンパク着の吸着は吸着量を直接測定するのではなく、タンパク質の吸着を介して血小板が粘着することから、血小板の粘着状況から評価できる。
実施例1、2、3で得られた試料につき以下のテストを行った。
(赤外線吸収スペクトル実験)
(赤外線吸収スペクトル実験)
パーキンーエルマー社製1600シリーズ赤外線吸収スペクトル装置を用い,透過法により乾燥膜の測定を測定波数範囲4000〜500カイザー、分解能4カイザー、積算回数100回で行った。
図1にはPVA中にDEDMSのゾル−ゲル反応によりポリジメチルシロキサン(PDMS)を形成させた膜の赤外線吸収スペクトル実験の結果を示してある。PVAとDEDMSとの比率は、PVAのみ、9:1、8:2、7:3について行った。図1のPVA
中でのDEDMSのゾル−ゲル反応後の試料には850cm-1、790cm-1付近にSi-CH3による吸収ピーク。1040cm-1にSi-O-Siの吸収ピーク、900cm-1にSi-OHによる吸収ピークが存在しDEDMSがPDMSとなっていることがわかる。また、上記のSi-CH3、Si-O-SiおよびSi-OHの吸収ピークが増加していることがわかり、これらのことによりPVAにPDMSが導入されていることがわかる。
中でのDEDMSのゾル−ゲル反応後の試料には850cm-1、790cm-1付近にSi-CH3による吸収ピーク。1040cm-1にSi-O-Siの吸収ピーク、900cm-1にSi-OHによる吸収ピークが存在しDEDMSがPDMSとなっていることがわかる。また、上記のSi-CH3、Si-O-SiおよびSi-OHの吸収ピークが増加していることがわかり、これらのことによりPVAにPDMSが導入されていることがわかる。
図2にはSBS中にPDMSを形成させた膜の赤外線吸収スペクトル実験の結果を示している。SBSとDEDMSとの比率は、SBSのみ、9:1、9.5:0.5、9.75:0.25について行った。図2のSBS中でのDEDMSのゾル−ゲル反応後の試料にも低いDEDMS分率では1070cm-1にDEDMS分率が増すと1030cm-1にSi-O-Siの吸収ピークおよび800cm-1 付近にSi-CH3による吸収ピークが存在し、DEDMSの含有量が増すと上記の吸収強度が増すことが分かる。このことはSBSにPDMSが導入されたことを意味している。
(酸素透過実験)
(酸素透過実験)
JASCO(株)製酸素透過性測定装置Gasperm-100を用いて20℃の室温で行った。試料は膜厚保約100ミクロンで直径5cmのものを用い、以下の条件で酸素を送り込み、透過した酸素の量を記録紙の縦軸(perm値)に取り、以下の式で酸素透過係数を算出した。
P=qL/pAt
P:ガス透過係数(cm3・cm/cm2・sec・cmHg)
q:透過量(cm3) q=perm値×装置定数(0.2/1000)
L:フィルムの厚さ(μm)
p:酸素供給圧(kg/cm2)
A:フィルムの透過面積(c2) t:測定時間(min)
したがって、酸素透過係数は最終的に以下の式で算出された。
P=(perm値/2206.5×p×A×t)×10-8
P=qL/pAt
P:ガス透過係数(cm3・cm/cm2・sec・cmHg)
q:透過量(cm3) q=perm値×装置定数(0.2/1000)
L:フィルムの厚さ(μm)
p:酸素供給圧(kg/cm2)
A:フィルムの透過面積(c2) t:測定時間(min)
したがって、酸素透過係数は最終的に以下の式で算出された。
P=(perm値/2206.5×p×A×t)×10-8
表1はPVA中に各%のDEDMSのゾル−ゲル反応によりPDMSを形成させた膜の酸素透過係数の結果を示している。
表1のPVAにPDMSを導入した試料の酸素透過率のDEDMS依存性を見ると、DEDMS含有量の増加に伴い酸素透過性が向上している。これは、酸素親和性の高いケイ素酸化物を導入による結果とケイ素酸化物の導入による非晶領域の増加によるものと考えられる。尚、水の酸素透過係数は9.13×10−9であり、PDMSが含有されると水よりも酸素透過性が向上することが分かる。
表2はSBSに各%のDEDMSのゾル−ゲル反応によりポリシロキサンを形成させた膜の酸素透過係数の結果を示している。
表2のSBSにPDMSを導入した試料の酸素透過率のDEDMS依存性を見ると、この場合もDEDMS含有量の増加に伴い酸素透過性が向上している。
(試料膜の紫外可視近赤外分光計による実験)
試料膜を日立製作所((株)製の紫外可視近赤外分光計U−3500を用い、波長範囲185−1000nmで測定した。吸収係数α(1/m)は以下の式から求めた。
α=log10T/−0.434×L
T:透過率
L:試料の厚さ(m)
試料膜を日立製作所((株)製の紫外可視近赤外分光計U−3500を用い、波長範囲185−1000nmで測定した。吸収係数α(1/m)は以下の式から求めた。
α=log10T/−0.434×L
T:透過率
L:試料の厚さ(m)
図3はPVAにPDMSを導入した試料の紫外可視近赤外分光計により光吸収係数の波長依存性を調べた結果である。尚、ポリビニルアルコールは重合度500、ケン化度98.5±0.5Mol%(PVA105)を使用した。各DEDMS分率のなかで、DEDMS分率30%までのPDMSを導入した膜の光吸収係数は、目で見ても充分透明なPVAとほぼ同じ値を示している。このことはDEDMS分率30%までPDMSを導入した膜が優れた透明性を有することを意味している。
(印字した紙の上に試料を置いて印字の判読性を評価する実験)
印字した紙の上にほぼ100ミクロンの厚さのSBS試料を置きデジタルカメラにて撮影した。図4はSBS中にポリシロキサンを形成させた膜を印字した紙の上に置いて印字の判読性を評価する実験結果を示している。SBSとDEDMSとの比率は、SBSのみ、9.75:0.25、9.5:0.5、9:1について行った。図4を見ると、SBSにPDMSを導入した試料も印字した文字を明瞭に判読でき、SBSの透明性と同程度である。
印字した紙の上にほぼ100ミクロンの厚さのSBS試料を置きデジタルカメラにて撮影した。図4はSBS中にポリシロキサンを形成させた膜を印字した紙の上に置いて印字の判読性を評価する実験結果を示している。SBSとDEDMSとの比率は、SBSのみ、9.75:0.25、9.5:0.5、9:1について行った。図4を見ると、SBSにPDMSを導入した試料も印字した文字を明瞭に判読でき、SBSの透明性と同程度である。
(血小板粘着試験)
実施例2で得たPEGをグラフトした試料および対照試料としてポリスチレン膜と2−メタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリンとブチルメタクリレ−トとの共重合体(以下PMBと略記)をコーティングしたスライドグラスを24穴培養用セル中に入れ、これらに健康人から採血した血液と抗凝固剤を9:1の体積比となるように混合し、室温にて1000回転/minで15分間遠心分離して得た多血小板血漿を500μlずつ注入し、1時間培養した。培養後にLDH法により血小板の付着量を定量した。
実施例2で得たPEGをグラフトした試料および対照試料としてポリスチレン膜と2−メタクリロイル オキシエチル ホスホリルコリンとブチルメタクリレ−トとの共重合体(以下PMBと略記)をコーティングしたスライドグラスを24穴培養用セル中に入れ、これらに健康人から採血した血液と抗凝固剤を9:1の体積比となるように混合し、室温にて1000回転/minで15分間遠心分離して得た多血小板血漿を500μlずつ注入し、1時間培養した。培養後にLDH法により血小板の付着量を定量した。
LDH法とは、血小板が試料表面に粘着した際に、細胞内から培養液中に放出される乳酸脱水素酵素(Lactate dehydorogenase LDH)がその量に比例して発色色素を発色させるので、この色素の吸光度を一定波長(580nm)の光線で測定する方法である。具体的には、タンパク質可溶化効果を持った非イオン性界面活性剤トリトンX100(オクチルフェノールポリエチレングリコールエーテル)を用い、0.5vol%トリトン/緩衝溶液を各セルに500μLずつ注ぎ、24時間冷蔵保存し、LDHを溶解した。溶解後の溶液をプレートへ50μL分滴下し、さらに発色試薬を50μL入れ45分間室温で静地し発色させ、反応停止液を100μL入れ発色を停止した後、マイクロプレートリーダーを用いて560±10nmUV測定で比色分析を行った。
図5はLDH法による各種試料の吸光度の違いを示した図である。SBSキャストフィルム(SBS-cast)、カルボキシル基を導入した試料(SBS-carboxyl)はポリスチレンと同程度の高い吸光度を示しており、血小板の付着量が多いことを意味している。SBSにPEGをグラフトした試料の吸光度は血小板の付着が極めて少ないといわれているPMB試料に近い値を示している。PEG400(分子量=400)、PEG600(分子量=600)、PEG1000のグラフト試料について行い、特にPEG600の試料は良好な血小板付着抑制効果を示している。対照試料であるポリスチレン膜(PS)、および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとブチルメタクリレ−トとの共重合体(PMB)を示してある。血小板の付着はタンパク質の付着を介して起ることから、PEGグラフト試料のタンパク質吸着抑制効果も顕著と考えられる。
本発明の高酸素透過性プラスチック材料はボイラー用酸素富化膜、人工肺用中空糸などの材料として有用であり、高酸素透過性と同時に高透明性材料はソフトコンタクトレンズに利用できる。
Claims (8)
- 熱可塑性ポリマーのゾル中で、ジアルコキシジアルキルシランを重合して得られたナノサイズの線状ポリシロキサンを含むゲルをもとに成型して得られたことを特徴とする高酸素透過性プラスチック材料。
- 該熱可塑性ポリマーが、ポリビニルアルコール、アクリル酸とエチレンとの共重合体、ビニルアルコールとエチレンとの共重合体、スチレンとブタジエンおよびイソプレンとのブロック共重合体、フッ素系ポリマーから選ばれるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載の高酸素透過性プラスチック材料。
- 該ポリシロキサンが、ジメトキシジメチルシランおよびジメトキシジメチルシランから選ばれる少なくとも1種類の該ジアルコキシジアルキルシランから重合されたことを特徴とする請求項1に記載の高酸素透過性プラスチック材料。
- 前記ゾルが、請求項1に記載の熱可塑性ポリマーにポリエチレングリコールをグラフト重合したゾルであることを特徴とする高酸素透過性プラスチック材料。
- 請求項1から4のいずれかに記載の高酸素透過性プラスチック材料を含む酸素富化膜。
- 請求項1から4のいずれかに記載の高酸素透過性プラスチック材料を含む人工肺。
- 請求項1から4のいずれかに記載の高酸素透過性プラスチック材料を含むコンタクトレンズ。
- 熱可塑性ポリマーのゾルに、ジアルコキシジアルキルシランを加えて重合し、得られたゲルを成型することを特徴とする高酸素透過性プラスチック材料の製造方法。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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