JP2009280729A - 粘着剤組成物および金属面貼付用粘着シート - Google Patents

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Abstract

【課題】カルボキシル基含有モノマーを用いることなく粘着性能の改善された粘着シートを与える粘着剤組成物および該組成物を用いてなる金属面貼付用粘着シートを提供する。
【解決手段】金属面に直接貼り付けるための粘着シートに用いられ、以下の(a)〜(c)を満たすモノマー成分を重合させてなるアクリル系共重合体をベースポリマーとして含む粘着剤組成物。(a)CH=C(R)COOR(Rは水素原子かメチル基、Rは炭素数1〜20のアルキル基)で表されるモノマー(m1)を50〜99.9質量%含む。(b)CH=C(R)CONHR(Rは水素原子かメチル基、Rは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基)で表されるモノマー(m2)を0.1〜25質量%含む。(c)カルボキシル基を有するモノマーを実質的に含有しない。
【選択図】なし

Description

本発明は、金属面に直接貼り付けて使用される粘着シート用の粘着(感圧接着ともいう。以下同じ。)剤組成物および金属面貼付用粘着シートに関する。
近年、物品の固定(接合)、搬送、保護、装飾等の種々の局面において粘着シートが活用されるようになってきている。かかる粘着シートの代表例として、アクリル系共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物(アクリル系粘着剤組成物)を用いて形成された粘着剤層を備えるものが挙げられる。かかるアクリル系共重合体としては、一般に、アルキル(メタ)アクリレートを主体(主成分)とし、さらに粘着性能向上等の目的からアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを含む共重合組成を有するものが用いられる。
ところで、金属面を有する物品(電子部品等)に関連して使用される粘着シートでは、上述のようにカルボキシル基含有モノマーを含む共重合組成とすると、ベースポリマー中のカルボキシル基が金属面を腐食させる要因となり得る。したがって、かかる用途(特に金属面に直接貼り付けられる用途)向けの粘着シートに具備される粘着剤層を形成するための粘着剤組成物では、カルボキシル基含有モノマーを含まない共重合組成のアクリル系共重合体をベースポリマーとすることが望ましい。この種の技術に関する従来技術文献として特許文献1〜3が例示される。アクリル系粘着剤に関連する他の従来技術文献として特許文献4が挙げられる。特許文献5は粘接着剤に関する従来技術文献である。
特開2007−63536号公報 特開2005−325250号公報 特開2000−303045号公報 特開2007−264092号公報 特開2003−165965号公報
しかしながら、カルボキシル基含有モノマーを用いないアクリル系共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物では、該組成物を用いて形成された粘着シートの粘着特性が不足しがちである。この点に関し、特許文献1には特定のマレイミド系化合物を共重合させることが、特許文献2にはN−アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有モノマーを共重合させることが、特許文献3には主モノマー成分としてフェノキシエチルアクリレート等の特定のモノマーを用いることが記載されている。しかし、これらの技術を適用してなる粘着シートにおいても、その粘着性能にはなお改善の余地があった。例えば、カルボキシル基含有モノマーを用いることなく所望の凝集力を示し、さらに耐反撥性(曲面接着性)が高められた粘着シートを形成可能な粘着剤組成物が提供されれば有用である。
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、カルボキシル基含有モノマーを実質的に用いることなく、粘着性能(特に耐反撥性)の改善された粘着シートを形成し得るアクリル系粘着剤組成物を提供することである。本発明の他の目的は、かかる粘着剤組成物を用いてなる金属面貼付用粘着シートを提供することである。
本発明によると、金属面に直接貼り付けるための粘着シートに用いられる粘着剤組成物が提供される。その粘着剤組成物は、以下の条件(a)〜(c)のいずれをも満たすモノマー成分を重合させてなるアクリル系共重合体をベースポリマーとして含む。
(a)下記式(I):
CH=C(R)COOR (I)
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜20のアルキル基である。);
で表されるアルキル(メタ)アクリレートから選択される一種または二種以上のモノマー(モノマーm1)を含む。該モノマーm1の含有量は、全モノマー成分の凡そ50〜99.9質量%であり得る。
(b)下記式(II):
CH=C(R)CONHR (II)
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基である。);
で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドから選択される一種または二種以上のモノマー(モノマーm2)を含む。該モノマーm2の含有量は、全モノマー成分の凡そ0.1〜25質量%であり得る。
(c)カルボキシル基を有するモノマーを実質的に含有しない。
かかる粘着剤組成物は、カルボキシル基を有するモノマー(カルボキシル基含有モノマー)を実質的に使用しないアクリル系共重合体をベースポリマーとするので、該組成物を用いて形成された粘着剤層を金属面に直接貼り付けた場合にも、上記カルボキシル基が金属面を腐食させる事象を未然に防ぐことができる。また、モノマーm1を主成分としつつ所定量のモノマーm2を含むモノマー組成(モノマー成分として使用する各モノマーの分量比、すなわち共重合組成)のアクリル系共重合体をベースポリマーとすることにより、凝集力が高く且つ改善された耐反撥性を示す粘着剤層(ひいては該粘着剤層を備えた粘着シート。以下同じ)が形成され得る。モノマーm2の好適例として、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドが挙げられる。なかでもN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドの使用が好ましい。
ここに開示される粘着剤組成物の好ましい一態様では、前記モノマーm1と前記モノマーm2との合計含有量が、全モノマー成分の凡そ90質量%以上である。かかる組成のモノマー成分を例えば熱重合法(溶液重合法等)で重合させてなるアクリル系共重合体をベースポリマーとして含む粘着剤組成物によると、より品質安定性に優れた粘着剤層が形成され得る。
前記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)は、凡そ−10℃以下(典型的には凡そ−10〜−70℃)であることが好ましい。Tgが上記範囲となるモノマー組成のアクリル系共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物は、例えば、常温(典型的には5〜35℃程度、例えば20〜25℃)において良好な粘着性能(タック等)を示す粘着剤層を形成するものであり得る。
ここに開示される粘着剤組成物の好ましい一態様では、該組成物が、前記モノマー成分100質量部に対して凡そ0.01〜1質量部のイソシアネート系架橋剤を含む。かかる組成物によると、上記架橋剤の機能(典型的には、主としてアクリル系共重合体中モノマーm2に由来する水酸基と架橋剤との間で起こる架橋反応)により、適切な架橋構造を有する粘着剤層を形成することができる。かかる粘着剤層は、より良好な粘着性能(例えば凝集力)を発揮するものであり得る。
本発明によると、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える金属面貼付用粘着シートが提供される。かかる粘着シートは、金属面に直接貼り付けられた場合にも該金属面を腐食させることがない。また、該粘着シートは上記金属面に対して良好な接着性を示し、かつ凝集力および耐反撥性に優れたものであり得る。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここに開示される粘着剤組成物は、所定のモノマー成分を重合(少なくとも部分的に重合)させてなるアクリル系共重合体をベースポリマーとする。上記モノマー成分は、少なくともモノマーm1およびモノマーm2を必須成分として含む。
モノマーm1は、上記モノマー成分の主モノマー(主成分)をなす成分であって、下記式(I)で表されるアルキル(メタ)アクリレート、すなわちアルキルアルコールの(メタ)アクリル酸エステルからなる。ここで「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸を包含する概念である。また、モノマーm1が主モノマーであるとは、全モノマー成分に占めるモノマーm1の量(式(I)で表されるアルキル(メタ)アクリレートを二種以上含む場合にはそれらの合計量)が50質量%以上であることをいう。
モノマーm1は、下記式(I)で表されるアルキル(メタ)アクリレートから選択される一種または二種以上であり得る。
CH=C(R)COOR (I)
ここで、式(I)中のRは、水素原子またはメチル基である。また、式(I)中のRは、炭素数1〜20のアルキル基である。該アルキル基は直鎖状であってもよく、分岐を有してもよい。式(I)で表されるアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのうちRが炭素数2〜14(以下、このような炭素数の範囲を「C2−14」と表すことがある。)のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、RがC2−10のアルキル基(例えば、n−ブチル基、2−エチルヘキシル基等)であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましい。
好ましい一つの態様では、モノマーm1の総量のうち凡そ70質量%以上(より好ましくは凡そ90質量%以上)が、上記式(1)におけるRがC2−10(より好ましくはC4−8)のアルキル(メタ)アクリレートである。モノマーm1の実質的に全部がC2−10アルキル(より好ましくはC4−8アルキル)(メタ)アクリレートであってもよい。上記モノマー成分は、例えば、モノマーm1としてブチルアクリレート(BA)を単独で含む組成、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)を単独で含む組成、BAおよび2EHAの二種を含む組成、等であり得る。
モノマーm1の含有量は、全モノマー成分の凡そ50〜99.9質量%(好ましくは凡そ60〜99質量%)であり得る。モノマーm1の含有量が上記範囲よりも少なすぎる粘着剤組成物では、該組成物から形成される粘着剤層の粘着性能(接着性、タック等)が不足しがちである。一方、モノマーm1の含有量が上記範囲よりも多すぎると、モノマー成分に含ませ得るモノマーm2の量が少なくなるため、凝集力(例えば、一定応力存在下での剥がれに対する耐久性、すなわち定荷重特性)と耐反撥性との両立が困難となる傾向にある。モノマーm1の含有量が全モノマー成分の凡そ75〜99質量%(例えば凡そ85〜97質量%)であってもよい。なお、上記モノマー成分の組成(モノマー組成)は、典型的には、該モノマー成分を重合させて得られるアクリル系共重合体の共重合割合に概ね対応する。
上記モノマー成分は、主モノマーとしてのモノマーm1に加えて、さらにモノマーm2を含む。このモノマーm2は、下記式(II)で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドから選択される一種または二種以上であり得る。
CH=C(R)CONHR (II)
ここで、式(II)中のRは、水素原子またはメチル基である。また、式(II)中のRは、炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基である。該ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐を有してもよい。式(II)で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド等が挙げられる。親水性と疎水性とのバランスがよく粘着物性のバランスに優れた粘着剤層を形成し得ることから、本発明にとり好ましいモノマーm2として、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドおよびN−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミドが挙げられる。特にN−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド(HEAA)の使用が好ましい。例えば、モノマーm2の50質量%以上(より好ましくは70質量%以上、典型的には実質的に全部)がHEAAであることが好ましい。
モノマーm2は、該モノマーm2の分子間の相互作用によって、粘着剤の凝集性向上に寄与する成分として機能し得る。このモノマーm2の含有量は、全モノマー成分の凡そ0.1〜25質量%(典型的には凡そ1〜22質量%)であり得る。モノマーm2の含有量が上記範囲よりも少なすぎる粘着剤組成物では、該組成物から形成される粘着剤層の粘着性能(高温での接着性、一定応力存在下での剥がれに対する耐久性等)が不足しがちである。一方、モノマーm2の含有量が上記範囲よりも多すぎると、タックや低温下での接着性が低下しがちである。
ここに開示される粘着剤組成物の好ましい一態様では、モノマーm2の含有量が全モノマー成分の凡そ2質量%以上(典型的には2〜20質量%)であり、より好ましくは凡そ3質量%以上(典型的には凡そ3〜15質量%、例えば凡そ3〜12質量%)である。かかる粘着剤組成物によると、例えば、モノマー成分が酸素以外のヘテロ原子(窒素、硫黄等)有するモノマーをモノマーm2以外には実質的に含有しない(モノマーm2以外のヘテロ原子含有モノマーを全く含有しないか、あるいはその含有量が全モノマー成分の0.1質量%以下であることをいう。)組成である場合においても、より凝集力および耐反撥性のよい粘着シートを形成し得るという効果が得られる。
モノマー成分に含まれるモノマーm1とモノマーm2との質量比(m1:m2)は、例えば凡そ99.9:0.1〜70:30とすることができる。通常は、上記質量比を凡そ98:2〜80:20(より好ましくは凡そ97:3〜90:10)とすることが好ましい。かかる粘着剤組成物によると、例えば、モノマー成分が酸素以外のヘテロ原子(窒素、硫黄等)を有するモノマーをモノマーm2以外には実質的に含有しない(例えば、モノマー成分が実質的にモノマーm1およびモノマーm2のみからなる)組成である場合にも、より凝集力および耐反撥性のよい粘着シートを形成し得るという効果が得られる。
モノマーm1とモノマーm2との合計含有量は、例えば、全モノマー成分の凡そ70質量%以上であり得る。上記合計含有量が全モノマー成分の凡そ90質量%以上(より好ましくは凡そ95質量%以上)であることが好ましい。ここに開示される粘着剤組成物の好ましい一態様では、モノマー成分が実質的にモノマーm1およびモノマーm2のみからなる(すなわち、モノマーm1とモノマーm2との合計含有量が全モノマー成分の実質的に100質量%である。)。かかる粘着剤組成物によると、単純な組成によって凝集力および耐反撥性のよい粘着シートを形成し得るという効果が得られる。
ここに開示される技術では、上記モノマー成分がカルボキシル基含有モノマーを実質的に含有しない。ここで「カルボキシル基含有モノマー」とは、一分子内に少なくとも一つのカルボキシル基(無水物の形態であり得る。)を有するビニルモノマー(エチレン性不飽和単量体)を指す。かかるカルボキシル基含有モノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。また、モノマー成分がカルボキシル基含有モノマーを「実質的に含有しない」とは、モノマー成分がカルボキシル基含有モノマーを全く含有しないか、あるいはその含有量が全モノマー成分の0.1質量%以下であることをいう。
上記モノマー成分は、カルボキシル基含有モノマーを実質的に含有しないのみならず、カルボキシル基以外の酸性基(スルホン酸基、リン酸基等)を含有するモノマーについても実質的に含有しないことが好ましい。すなわち、カルボキシル基含有モノマーその他の酸性基含有モノマー(カルボキシル基含有モノマーと他の酸性基含有モノマーとを包含する意味である。)を全く含有しないか、あるいはその合計量が全モノマー成分の0.1質量%以下であることが好ましい。かかる粘着剤組成物は、金属面に直接貼り付けられた場合に該金属面を腐食させる事象がより高度に防止された(すなわち、金属面を腐食させる性質がより高度に抑制された)粘着剤層を形成するものであり得る。
上記モノマー成分は、モノマーm1およびモノマーm2に加えて、任意成分として、その他のモノマー(すなわち、モノマーm1およびモノマーm2以外のモノマー。以下、「モノマーm3」ともいう。)を含有することができる。かかるモノマーm3を用いることによって、例えば、粘着剤の各種特性やアクリル系共重合体の構造等をより適切にコントロールし得る。モノマーm3としては、ここで使用するアルキル(メタ)アクリレートと共重合可能であり且つカルボキシル基(典型的には、カルボキシル基その他の酸性基)を有しない種々のモノマーから選択される一種または二種以上を採用することができる。例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和基を一個または二個以上有する各種のモノマーを用いることができる。
例えば、モノマーm3として、窒素(N)を構成原子として含むモノマー(ただし、モノマーm2に該当する化合物を除く。)から選択される一種または二種以上を用いることができる。かかる窒素原子含有モノマーの例としては、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピロリジン等の環状(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド、N−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド)等の非環状(メタ)アクリルアミド;N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン等のN−ビニル環状アミド;アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の、アミノ基を有するモノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等の、マレイミド骨格を有するモノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド等の、イタコンイミド系モノマー;等が挙げられる。
モノマーm3として採用し得るモノマーの他の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等の、エポキシ基を有するモノマー;メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール等の、アルコキシ基を有するモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の、シアノ基を有するモノマー;スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン等のα−オレフィン;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の、イソシアネート基を有するモノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;ビニルエーテル等のビニルエーテル系モノマー;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の、複素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;フッ素(メタ)アクリレート等の、ハロゲン原子を有するモノマー;3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等の、アルコキシシリル基を有するモノマー;シリコーン(メタ)アクリレート等の、シロキサン結合を有するモノマー;上記式(I)におけるRが炭素数21以上のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレート;シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール等の、芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリレート;等が挙げられる。
また、モノマーm3として、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレート等の多官能モノマーを用いてもよい。
モノマーm3のさらに他の例として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、[4−(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;上記式(II)におけるRが炭素数1または5以上のヒドロキシアルキル基であるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド;ビニルアルコール、アリルアルコール等のアルケニルアルコール;等の、水酸基を有するモノマーが挙げられる。
なお、モノマーm3として水酸基を有するモノマーを用いる場合、モノマーm2の使用による効果をより適切に発揮させ得るという観点からは、かかる水酸基含有モノマーm3をモノマーm2よりも少ない分量で使用することが好ましい。換言すれば、モノマー成分に含まれる水酸基含有モノマーの総量のうち50質量%を超える分量(典型的には60質量%以上、より好ましくは75質量%以上、例えば90質量%以上の分量)がモノマーm2であることが好ましい。あるいは、モノマー成分に含まれる水酸基含有モノマーが実質的にモノマーm2のみであってもよい。
モノマーm3の含有量(二種以上を含む場合にはそれらの合計含有量)は、全モノマー成分の凡そ30質量%以下とすることが適当である。モノマーm3の含有量が多すぎる粘着剤組成物では、該組成物を用いて形成される粘着シートにおいて、粘着性能のバランスが崩れやすくなることがある。好ましい一態様では、モノマー成分におけるモノマーm3の含有量(質量基準)がモノマーm2の含有量未満(より好ましくはモノマーm2の含有量の半分以下、さらに好ましくは4分の1以下)である。モノマーm3の含有量を全モノマー成分の凡そ10質量%以下とすることが好ましく、凡そ5質量%以下(例えば凡そ2質量%以下)とすることがより好ましい。あるいは、モノマーm3を実質的に含有しないモノマー成分(すなわち、実質的にモノマーm1およびモノマーm2のみからなるモノマー成分)であってもよい。
ここに開示される技術におけるモノマー成分は、該モノマー成分を重合させて得られるアクリル系共重合体のTgが凡そ−10℃以下(典型的には凡そ−10℃〜−70℃)となる分量で各モノマーを含有することが好ましく、凡そ−20℃以下(典型的には凡そ−20℃〜−70℃)であることがより好ましい。Tgが上記範囲となるようにモノマー成分の組成を調整するとよい。ここで、アクリル系共重合体のTgとは、モノマー成分を構成する各モノマーの単独重合体のTgおよび該モノマーの質量分率(共重合組成)に基づいてFoxの式から求められる値をいう。単独重合体のTgの値は、各種の公知資料(日刊工業新聞社の「粘着技術ハンドブック」等)から得ることができる。
ここに開示する技術において、かかる組成のモノマー成分からベースポリマーとしてのアクリル系共重合体(粘着性共重合物)を得るための重合方法は特に限定されず、従来公知の各種重合方法を適宜採用し得る。例えば、熱重合開始剤を用いて行う重合方法(溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法等の熱重合法);光や放射線等の活性エネルギー線(高エネルギー線ともいう。)を照射して行う重合方法;等を採用することができる。
これらの重合方法のうち、作業性や品質安定性等の観点から、例えば溶液重合法を好ましく採用することができる。該溶液重合の態様は特に限定されず、従来公知の一般的な溶液重合と同様の態様により、例えば公知の各種モノマー供給方法、重合条件(重合温度、重合時間、重合圧力等)、使用材料(重合開始剤、界面活性剤等)を適宜採用して行うことができる。上記モノマー供給方法としては、モノマー成分の全量を一度に反応容器に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等のいずれも採用可能である。好ましい一態様として、モノマー成分の全量および開始剤を溶媒に溶かした溶液を反応容器内に用意し、該モノマー成分を一括して重合させる態様(一括重合)が例示される。このような一括重合は、重合操作および工程管理の容易であるので好ましい。他の好ましい一態様として、反応容器内に開始剤(典型的には開始剤を溶媒に溶かした溶液)を用意し、モノマー成分を溶媒に溶かした溶液を該反応容器に滴下しながら重合させる態様(滴下重合または連続重合)が例示される。モノマー成分の一部(一部種類および/または一部分量)を典型的には溶媒とともに反応容器内に入れ、その反応容器に残りのモノマー成分を滴下してもよい。モノマーm2を15質量%以上含むモノマー成分を重合させる場合には、重合反応を均一に進行させやすいという観点から、滴下重合を用いることがより好ましい。
熱重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、等のアゾ系化合物(アゾ系開始剤);過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエート、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物(過酸化物系開始剤);フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等のレドックス系開始剤;等が挙げられる。モノマー成分を熱重合法により重合させる場合は、例えば20〜100℃(典型的には40〜80℃)程度の重合温度を好適に採用することができる。
光(典型的には紫外線)を照射して行う重合方法は、典型的には光重合開始剤を使用して行われる。該光重合開始剤は特に制限されず、例えば、ケタール系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等を用いることができる。このような光重合開始剤は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。
ケタール系光重合開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[例えば、商品名「イルガキュア651」(チバ・ジャパン社製品)]等が挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン[例えば、商品名「イルガキュア184」(チバ・ジャパン社製品)]、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤の具体例としては、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等が挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば商品名「ルシリンTPO」(BASF社製品)等を使用することができる。α−ケトール系光重合開始剤の具体例としては、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オン等が挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤の具体例としては、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤の具体例としては、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤の具体例としてはベンゾインが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤の具体例としてはベンジルが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
重合開始剤の使用量は特に制限されない。例えば、モノマー成分の総量100質量部に対する重合開始剤の使用量を凡そ0.01〜2質量部(好ましくは凡そ0.01〜1質量部)程度とすることができる。
ここに開示される粘着剤組成物は、上記モノマー成分を重合させて得られたアクリル系共重合体に加えて、さらに架橋剤を含有する組成であり得る。該架橋剤としては、粘着剤の分野において従来公知のものを適宜選択することができ、例えば、イソシアネート系化合物(イソシアネート系架橋剤)、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、過酸化物系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、尿素系架橋剤、アミノ系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、カップリング剤系架橋剤(例えばシランカップリング剤)等を用いることができる。これらのうち一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用してもよい。かかる架橋剤を用いてアクリル系共重合体を架橋(硬化)させることにより、粘着剤層に適度な凝集力および粘着力を付与するとともに、該粘着剤層の耐反撥性を高めることができる。
本発明においては、これらのうちイソシアネート系架橋剤を特に好ましく用いることができる。好ましい一態様では、架橋剤として一種または二種以上(典型的には一種)のイソシアネート系架橋剤のみを使用する。あるいは、本発明の効果が顕著に損なわれない範囲で、イソシアネート系架橋剤と他の架橋剤とを併用してもよい。
イソシアネート系化合物の例としては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネート;等が挙げられる。
なお、イソシアネート系架橋剤としては、上記で例示したイソシアネート系化合物の二重体や三量体、反応生成物または重合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートの二重体や三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応生成物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート)等も用いることができる。例えば、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物を好ましく用いることができる。
イソシアネート系架橋剤の使用量は、例えば、モノマー成分100質量部(粘着剤組成物におけるモノマー成分の重合転化率が略100%である場合には、アクリル系共重合体100質量部に概ね対応する。)に対して凡そ0.01〜20質量部(好ましくは凡そ0.01〜15質量部)程度とすることができる。架橋剤の使用量が少なすぎると十分な効果(粘着性能を向上させる効果)が発揮され難く、該使用量が多すぎても粘着特性のバランスが崩れやすくなる。通常は、モノマー成分100質量部に対して凡そ0.01〜1質量部(好ましくは凡そ0.02〜1質量部、例えば凡そ0.05〜0.5質量部)のイソシアネート系架橋剤を用いることが適当である。
ここに開示される粘着シートに具備される粘着剤層は、好ましくは、該粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率が例えば凡そ25〜75%程度である。かかるゲル分率を有する粘着剤(架橋剤を含む組成では架橋後の粘着剤)が形成されるように、モノマー組成(例えばモノマーm2の使用量)、アクリル系共重合体の分子量、粘着剤層の形成条件、架橋剤の種類および使用量、等の条件を適宜設定するとよい。粘着剤のゲル分率が低すぎると、凝集力や耐反撥性が不足しがちである。一方、ゲル分率が高すぎると、粘着力やタックが低下しやすくなることがある。ゲル分率が凡そ25〜75%(例えば凡そ30〜60%)の範囲にある粘着剤によると、より良好な粘着性能が実現され得る。
ここで「粘着剤のゲル分率」とは、次の方法により測定される値をいう。
[ゲル分率測定方法]
粘着剤サンプル(質量Wb1)を平均孔径0.2μmの多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(質量Wb2)で巾着状に包み、口をタコ糸(質量Wb3)で縛る。この包みを酢酸エチル50mLに浸し、室温(典型的には23℃)で7日間放置した後、上記包みを取り出して外表面に付着している酢酸エチルを拭き取り、該包みを130℃で2時間乾燥させ、該包みの質量(Wb4)を測定する。粘着剤のゲル分率は、各値を以下の式に代入することにより求められる。
ゲル分率[%]=[(Wb4−Wb2−Wb3)/Wb1]×100
なお、上記多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)膜としては、日東電工株式会社から入手可能な商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」(平均孔径0.2μm、気孔率75%、厚さ85μm)またはその相当品を使用することが望ましい。
ここに開示される粘着剤組成物は、上記アクリル系共重合体および必要に応じて使用される架橋剤のほか、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を任意成分として含有し得る。かかる任意成分としては、粘着付与剤(ロジン系樹脂、石油系樹脂、テルペン系樹脂、フェノール系樹脂、ケトン系樹脂等)、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、酸化防止剤、レベリング剤、安定剤、防腐剤等が例示される。このような添加剤は、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
また、ここに開示される粘着剤組成物には、粘度調整(典型的には増粘)の目的で、上記アクリル系共重合体以外のポリマーを適宜配合することができる。かかる粘度調整用ポリマーとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、ポリウレタン、ポリエステル等を用いることができる。また、アルキル(メタ)アクリレートに官能性モノマー(例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、アクリロイルモルホリン、アクリル酸等の、官能基を有するアクリル系モノマーから選択される一種または二種以上)を共重合させたアクリル系ポリマーを粘度調整用ポリマーとして用いてもよい。カルボキシル基(より好ましくは、カルボキシル基その他の酸性基)を実質的に含有しない粘度調整用ポリマーを採用することが好ましい。
かかる粘度調整用ポリマーは、一種のみを単独で用いてもよく二種以上を組み合わせて用いてもよいが、粘着剤組成物から形成される粘着剤全体の凡そ40質量%以下(典型的には凡そ5〜40質量%)の範囲で使用することが好ましい。換言すれば、該組成物に含まれる粘着剤形成成分のうち粘度調整用ポリマーの分量を凡そ40質量%以下(より好ましくは凡そ20質量%以下)とすることが好ましい。
ここに開示される粘着剤組成物は、該組成物から形成される粘着剤において上記モノマー成分が重合してなるアクリル系共重合体が凡そ50質量%以上(より好ましくは凡そ70質量%以上、例えば90質量%以上)を占めるように構成されていることが好ましい。かかる粘着剤組成物は、より粘着性能のよい粘着剤を形成するものとなり得る。
本発明に係る金属面貼付用粘着シートは、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える。かかる粘着剤層をシート状基材(支持体)の片面または両面に固定的に(当該基材から粘着剤層を分離する意図なく)設けた形態の基材付き粘着シートであってもよく、あるいは該粘着剤層を例えば剥離ライナー(剥離紙、表面に剥離処理を施した樹脂シート等)のような剥離性を有する支持体上に設けた形態の基材レス粘着シートであってもよい。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、上記粘着剤層は連続的に形成されたものに限定されず、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
ここに開示される粘着シートは、例えば、図1〜図6に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。このうち図1,図2は、両面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図1に示す粘着シート11は、基材1の両面に粘着剤層2が設けられ、それらの粘着剤層2が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー3によってそれぞれ保護された構成を有している。図2に示す粘着シート12は、基材1の両面に粘着剤層2が設けられ、それらの粘着剤層のうち一方が、両面が剥離面となっている剥離ライナー3により保護された構成を有している。この種の粘着シート12は、該粘着シート12を巻回することにより他方の粘着剤層を剥離ライナー3の裏面に当接させ、該他方の粘着剤層もまた剥離ライナー3によって保護された構成とすることができる。
図3,図4は、基材レス粘着シートの構成例である。図3に示す粘着シート13は、基材レスの粘着剤層2の両面が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー3によってそれぞれ保護された構成を有する。図4に示す粘着シート14は、基材レスの粘着剤層2の一面が、両面が剥離面となっている剥離ライナー3により保護された構成を有し、これを巻回すると粘着剤層2の他面が剥離ライナー3に当接して該他面もまた剥離ライナー3で保護された構成とできるようになっている。
図5,図6は、片面粘着タイプの基材付き粘着シートの構成例である。図5に示す粘着シート15は、基材1の片面に粘着剤層2が設けられ、その粘着剤層2の表面(接着面)が、少なくとも該粘着剤層側が剥離面となっている剥離ライナー3によって保護された構成を有する。図6に示す粘着シート16は、基材1の一面に粘着剤層2が設けられた構成を有する。その基材1の他面は剥離面となっており、粘着シート16を巻回すると該他面に粘着剤層2が当接して該粘着剤層の表面(接着面)が基材1の他面で保護された構成とできるようになっている。
このような粘着シートを構成する基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム等のプラスチックフィルム;ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム等のフォーム基材;クラフト紙、クレープ紙、和紙等の紙;綿布、スフ布等の布;ポリエステル不織布、ビニロン不織布等の不織布;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;等を、粘着シートの用途に応じて適宜選択して用いることができる。上記プラスチックフィルムとしては、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれも使用可能である。また、基材のうち粘着剤層が設けられる面には、下塗剤の塗布、コロナ放電処理等の表面処理が施されていてもよい。基材の厚みは目的に応じて適宜選択できるが、一般的には概ね10μm〜500μm(典型的には10μm〜200μm)程度である。
上記粘着剤層は、例えば、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を支持体(基材または剥離ライナー)に付与(典型的には塗布)し、該組成物を乾燥させることにより形成され得る。かかる粘着剤層形成方法は、あらかじめ適宜の重合法(典型的には熱重合法)にてモノマー成分を少なくとも部分的に(好ましくはほぼ完全に)重合させてなるアクリル系共重合体と、必要に応じて使用される架橋剤や添加剤等とが、液状媒体(有機溶剤、水等)に溶解または分散した形態の粘着剤組成物に好ましく適用され得る。架橋剤を含む粘着剤組成物の場合、上記乾燥に加えて、必要に応じて適宜の架橋処理を行ってもよい。
上記粘着剤層は、また、ここに開示されるいずれかの粘着剤組成物を支持体(基材または剥離ライナー)に付与(典型的には塗布)し、該組成物に活性エネルギー線(例えば紫外線)を照射して硬化させることにより形成され得る。かかる粘着剤層形成方法は、あらかじめ適宜の重合法(例えば光重合法)にてモノマー成分を部分的に重合させ、その部分重合物に光重合開始剤および必要に応じて使用される架橋剤(多官能(メタ)アクリレート等)を配合して調製された活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物に好ましく適用され得る。このような活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、液状媒体を実質的に含有しない組成であり得る。該組成物が液状媒体を含む場合には、支持体に付与した組成物を乾燥させた後に活性エネルギー線を照射することが好ましい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の慣用のコーターを用いて行うことができる。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。該組成物が塗布される支持体の種類にもよるが、例えば凡そ40〜150℃程度の乾燥温度を採用することができる。なお、基材付き粘着シートの場合、基材に粘着剤組成物を直接付与して粘着剤層を形成してもよく、剥離ライナー上に形成した粘着剤層を基材に転写してもよい。
粘着剤層の厚みは特に限定されないが、通常は、例えば凡そ10μm以上(好ましくは凡そ20μm以上、より好ましくは凡そ30μm以上)とすることにより良好な粘着性能(例えば接着強度)が実現され得る。また、通常は該厚みを凡そ400μm以下(典型的には凡そ200μm以下、例えば凡そ100μm以下)とすることが適当である。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
<例1>
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および攪拌機を備えた反応容器に、重合開始剤としての2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN) 0.1部、モノマー成分としての2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA、ホモポリマーのTg −70℃) 98部およびN−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA、ホモポリマーのTg 98℃) 2部、および溶媒としての酢酸エチルを入れ、室温において窒素ガス雰囲気下で1時間攪拌した。その後、反応容器の内容物(モノマー成分の全量を含む溶液)を60℃に加熱して窒素ガス流中で5.5時間重合を行い、次いで70℃に2時間保持した。かかる一括仕込み方式の溶液重合によってアクリル系ポリマーの溶液を得た。
得られたアクリル系ポリマー溶液に、イソシアネート系架橋剤として、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとの反応生成物(日本ポリウレタン工業株式会社製品、商品名「コロネートL」を使用した。以下、「架橋剤A」と表記することもある。)を、アクリル系ポリマー100部当たり 0.3部(固形分基準。以下同じ。)添加した。このようにして例1に係る粘着剤組成物を作製した。
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの表面にシリコーン系剥離剤による剥離処理が施された剥離ライナー(厚さ38μm)を二枚用意した。一枚目の剥離ライナーの剥離面(剥離剤で処理された面)に上記粘着剤組成物をアプリケータで塗布し、130℃で3分間乾燥して、該剥離ライナー上に厚さ50μmの粘着剤層を形成し、この粘着剤層に二枚目の剥離ライナーの剥離面を貼り合わせた。このようにして、粘着剤層の両面が上記剥離ライナーで保護された構成の粘着シート(剥離ライナー付き粘着シート)を作製した。
本例に係る粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率を、上述したゲル分率測定方法に沿って、以下のようにして測定した。すなわち、100mm×100mmの大きさの多孔質PTFE膜(日東電工株式会社製品、商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」)と、約100mmの長さのタコ糸(太さ1.5mm)とを用意し、これらの質量を測定した。上記剥離ライナー付き粘着シートを20cmのサイズにカットしたものから両方の剥離ライナーを剥がして粘着剤サンプルを上記PTFE膜で巾着状に包み、包んだ口を上記タコ糸で縛った。この包みの質量を測定し、当該質量からPTFE膜の質量(Wb1)およびタコ糸の質量(Wb3)を差し引いて粘着剤サンプルの質量(Wb1)を求めた。次いで、上記包みを酢酸エチル50mLに浸して室温(典型的には23℃)で7日間放置した。その後、酢酸エチル中から包みを取り出して外表面に付着した酢酸エチルを拭き取り、これを130℃の乾燥機中にて2時間乾燥させた後、該包みの質量(Wb4)を測定した。上述した式に各値を代入して本例に係る粘着剤のゲル分率を算出したところ、68.4%であった。
<例2>
表1に示す組成のモノマー成分を使用した点および架橋剤Aの使用量を0.1部とした点を除いては、例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。例1と同様にして測定した粘着剤のゲル分率は60%であった。
<例3>
表1に示す組成のモノマー成分を使用した点、および架橋剤Aの使用量を0.1部とした点を除いては、例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。粘着剤のゲル分率は61.5%であった。
<例4>
表1に示す組成(表中の「HEA」はヒドロキシエチルアクリレートを表す。ホモポリマーのTg −15℃)のモノマー成分を使用した点を除いては、例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。粘着剤のゲル分率は63.9%であった。
<例5>
表1に示す組成のモノマー成分を使用した点を除いては、例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。粘着剤のゲル分率は72%であった。
例1〜例5で作製した粘着シートについて、以下の評価試験を行った。
[腐食性]
各例に係る粘着シートから一方の側の剥離ライナーを剥がして粘着剤層の一面を露出させ、厚さ25μmの透明なPETフィルム(剥離処理はされていない。)に貼り付けて裏打ちした。さらに他方の側の剥離ライナーを剥がして粘着剤層の他面を露出させ、これを厚さ80μmの銅箔に貼り合わせた後、60℃×95%RHの雰囲気下に250時間保持した。その後、粘着シートが貼り合わされている箇所の銅箔表面をPETフィルム側から目視にて観察し、銅箔表面の変色を指標として該銅箔表面の腐食の有無を確認した。その結果、銅箔表面に変色が認められない場合には腐食性「無」とし、変色が認められる場合には腐食性「有」として評価した。
[接着力]
各例に係る粘着シートから一方の側の剥離ライナーを剥がして粘着剤層の一面を露出させ、厚さ50μmのPETフィルム(剥離処理はされていない。)に貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを25mm幅にカットして試験片を作製した。被着体としては、イソプロピルアルコールを染み込ませたクリーンウェスで10往復擦って洗浄した清浄なアクリル板を使用した。上記試験片から他方の側の剥離ライナーを剥がし、5kgのローラを一回転がす方法で上記被着体に圧着した。これを40℃で2日間保存した後、23℃×50%RHの測定環境下に取り出して30分置き、引張試験機を用いて引張速度300mm/分、剥離角度180°の条件で剥離強度[N/25mm]を測定した。
[耐反撥性]
各例に係る粘着シートを幅10mm、長さ90mmのサイズにカットして一方の側の剥離ライナーを剥がし、同サイズのアルミニウム板(厚み0.5mm)に貼り合わせて試験片を作製した。この試験片を、アルミニウム板側を内側として長手方向をφ50mmの丸棒に沿わせることで(すなわちR50の曲率で)湾曲させた。次いで、試験片の他面から剥離ライナーを剥がし、上記と同様に洗浄したポリプロピレン板の表面にラミネータを用いて浮きのないように圧着した。これを23℃の環境下に4時間放置した後、試験片の長手方向の端部がポリプロピレン板表面から浮きあがった高さ[mm]を測定した。測定は試験片の両端について行い、それら両端における浮き高さの合計値を耐反撥性の値とした。
[保持力]
凝集力の指標として、各例に係る粘着シートの保持力(定荷重特性)を以下のようにして評価した。すなわち、該粘着シートから一方の側の剥離ライナーを剥がして粘着剤層の一面を露出させ、厚さ50μmのPETフィルム(剥離処理はされていない。)に貼り付けて裏打ちした。この裏打ちされた粘着シートを幅10mm、長さ50mmのサイズにカットして試験片を作製した。被着体としては、トルエンを染み込ませたクリーンウェスで10往復擦って洗浄した清浄なベークライト板を使用した。上記試験片から他方の側の剥離ライナーを剥がし、2kgのローラを一往復転がす方法で、幅10mm、長さ20mmの接着面積で上記被着体に圧着した。これを40℃に30分間保持した後、上記ベークライト板を40℃の環境下に垂下し、上記試験片の自由端(上記ベークライト板からはみ出した部分)に500gの荷重を付与して40℃の環境下に2時間放置した。上記荷重を付与してから2時間経過する前に試験片が被着体から落下した場合には保持力「不良」とし、2時間経過後にも試験片が被着体に保持されていた場合には保持力「良」とした。
これらの評価試験の結果を表1に示す。この表には、各例に係る粘着剤組成物の作製に使用したモノマー成分の組成(使用したモノマーの種類および量比)と、該組成からFoxの式に基づいて算出したTgとを併せて示している。
Figure 2009280729
表1に示されるように、例1〜5に係る粘着シートは、いずれも金属面腐食性を有さず、且つ十分な保持力を示すものであった。これらのうち例1と例4との比較から、モノマー成分中のHEA(例4)を同量のHEAA(例1)に置き換えた共重合組成によると、他の特性を同等に維持しつつ耐反撥性が向上した(浮き高さの合計値が小さくなった)ことがわかる。HEAAの使用量を3〜12%に増した例2,3によると、より高い耐反撥性向上効果が得られ、接着力(剥離強度)も向上した。HEAAの使用量を3〜7%(具体的には4%)とした例2では特に良好な結果が得られ、ほぼ同量のHEAAを用いた例5に対して耐反撥性および剥離強度がいずれも顕著に改善された。
<例6>
冷却管、窒素ガス導入管、温度計、滴下漏斗および攪拌機を備えた反応容器に、重合開始剤としてのAIBN 0.2部、モノマー成分としての2EHA 85部および溶媒としての酢酸エチルを入れ、室温において窒素ガス雰囲気下で1時間攪拌した。その後、反応容器の内容物を60℃に加熱し、窒素ガス流中において、滴下漏斗内に用意したHEAA 15部を3時間かけて滴下しながら重合を行った。かかる連続仕込み方式の溶液重合によってアクリル系ポリマーの溶液を得た。これにアクリル系ポリマー100部当たり0.1部の架橋剤Aを添加して、例6に係る粘着剤組成物を得た。この組成物を用いた点以外は例1と同様にして粘着シートを作製した。粘着剤のゲル分率は57.7%であった。
<例7>
表2に示す組成のモノマー成分を使用した点および架橋剤Aの使用量を0.05部とした点を除いては、例6と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。ゲル分率は65.3%であった。
<例8>
表2に示す組成(表中の「EA」はエチルアクリレートを表す。ホモポリマーのTg −22℃)のモノマー成分を使用した点および架橋剤を使用しなかった点を除いては、例6と同様にして粘着剤組成物を作製した。該組成物を用いて、乾燥温度を50℃で7分間とした点以外は例1と同様にして粘着シートを作製した。ゲル分率は0%であった。
例6〜例8で作製した粘着シートについて、上記と同様の評価試験を行った。それらの結果を表2に示す。
Figure 2009280729
表2に示されるように、HEAAを2〜20%の共重合割合で用いた例6,7に係る粘着シートでは、HEAA不使用の粘着シート(例4)に比べて耐反撥性および剥離強度が明らかに向上した。ただし、HEAAの使用量が多すぎる例8に係る粘着シートでは、十分な粘着性能が得られなかった。なお、例6〜8に係る粘着シートはいずれも金属面腐食性を有しないものであった。
<例9>
表3に示す組成(表中の「CHMI」はN−シクロヘキシルマレイミドを表す。)のモノマー成分を使用した点および架橋剤Aの使用量を0.1部とした点を除いては、例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。ゲル分率は56.8%であった。
<例10>
表3に示す組成(表中の「VAc」は酢酸ビニルを表す。)のモノマー成分を使用した点および架橋剤Aの使用量を0.1部とした点を除いては、例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。ゲル分率は60.1%であった。
<例11>
表3に示す組成のモノマー成分を使用した点および架橋剤Aの使用量を0.5部とした点を除いては、例1と同様にして粘着剤組成物を作製し、該組成物を用いて粘着シートを作製した。ゲル分率は44.5%であった。
例9〜例11で作製した粘着シートについて、上記と同様の評価試験を行った。それらの結果を表3に示す。
Figure 2009280729
表3に示す例9と例11との比較からわかるように、カルボキシル基および水酸基のいずれも有しない窒素含有モノマーの一例としてCHMI(モノマーm3に該当する。)を5%以下の割合で使用したモノマー組成においても、HEAA不使用の例11と比較して、HEAをHEAAに置き換えた例9によると耐反撥性が著しく改善された。CHMIをVAcに変更した例10においても同様の耐反撥性向上効果がみられた。この結果から、CHMI等の窒素含有モノマーと本発明におけるモノマーm2とでは、当該モノマーの使用(共重合)が粘着性能に及ぼす効果の質(種類)が明らかに異なることが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
以上に説明したとおり、本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を備える粘着シートは、常温で良好な粘着性能(耐反撥性、定荷重特性等)を示し且つ金属面を腐食させる性質が抑制された接合材料として、例えば、電子部品その他の金属面を有する物品の固定に好ましく使用され得る。該粘着シートは、このような特性を活かして、金属面に直接貼り付けられる態様で使用される他の用途、例えば金属面を有する物品の搬送、保護、装飾等の用途にも好ましく使用され得る。本発明の粘着剤組成物は、かかる金属面貼付用粘着シートに用いられる(典型的には、該粘着シートの粘着剤層を形成する)粘着剤組成物として好適である。
本発明に係る粘着シートの一構成例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。 本発明に係る粘着シートの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
符号の説明
1:基材
2:粘着剤層
3:剥離ライナー
11,12,13,14,15,16:粘着シート

Claims (5)

  1. 金属面に直接貼り付けるための粘着シートに用いられる粘着剤組成物であって、
    以下の条件:
    下記式(I):
    CH=C(R)COOR (I)
    (式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数1〜20のアルキル基である。);
    で表されるアルキル(メタ)アクリレートから選択される一種または二種以上のモノマー(モノマーm1)を、全モノマー成分に対して50〜99.9質量%含む;
    下記式(II):
    CH=C(R)CONHR (II)
    (式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜4のヒドロキシアルキル基である。);
    で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドから選択される一種または二種以上のモノマー(モノマーm2)を、全モノマー成分に対して0.1〜25質量%含む;および、
    カルボキシル基を有するモノマーを実質的に含有しない;
    を満たすモノマー成分を重合させてなるアクリル系共重合体をベースポリマーとして含む、粘着剤組成物。
  2. 前記モノマーm1と前記モノマーm2との合計含有量が、全モノマー成分の90質量%以上である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記アクリル系共重合体のガラス転移温度(Tg)が−10℃以下である、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 前記モノマーm2は、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
  5. 金属面に直接貼り付けて使用される粘着シートであって、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物を用いて形成された粘着剤層を備える、金属面貼付用粘着シート。
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