JP2009279818A - インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】記録媒体上のインクのビーディングに起因した粒状感による画質劣化を低減する。
【解決手段】8パスで完成する単位領域の記録を、1パス目から4パス目までの最初の4パスでブラックインクを打ち込み、5パス目以降でブラック以外の色のインクを打ち込む。すなわち、4回の走査で、4画素×4画素の総ての画素に1滴のブラックインクが打ち込まれる。一方、ブラック以外の色のインクについては5パス目以降の4回の走査で単位領域の記録を完成する。以上のとおり、総ての画素について、未だインクが打ち込まれていない紙面にグラックインクが他のインクよりも先に打ち込まれる。これにより、ブラックインクが先に打ち込まれた他のインクの層に重ねて打ち込まれないようにすることができる。その結果、ビーディングが視認されやすいブラックインクのビーディング発生を軽減し、画像全体としての粒状感を軽減することができる。
【選択図】図7
【解決手段】8パスで完成する単位領域の記録を、1パス目から4パス目までの最初の4パスでブラックインクを打ち込み、5パス目以降でブラック以外の色のインクを打ち込む。すなわち、4回の走査で、4画素×4画素の総ての画素に1滴のブラックインクが打ち込まれる。一方、ブラック以外の色のインクについては5パス目以降の4回の走査で単位領域の記録を完成する。以上のとおり、総ての画素について、未だインクが打ち込まれていない紙面にグラックインクが他のインクよりも先に打ち込まれる。これにより、ブラックインクが先に打ち込まれた他のインクの層に重ねて打ち込まれないようにすることができる。その結果、ビーディングが視認されやすいブラックインクのビーディング発生を軽減し、画像全体としての粒状感を軽減することができる。
【選択図】図7
Description
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法に関し、詳しくは、ビーディングによる粒状性悪化を低減する技術に関するものである。
近年のパーソナルコンピュータ等、情報処理機器の普及に伴い、画像形成端末としての記録装置も急速に発展し、また普及して来ている。これらの記録装置の中でも、インクジェット方式の記録装置は、吐出口からインクを吐出させて、紙、布、プラスチックシート、OHP用シートなど種々の記録媒体に記録を行うことができるものである。そして、この方式の記録装置は、低騒音のノンインパクト型であること、高密度かつ高速な記録動作が可能であること、カラー記録にも容易に対応できること、低廉であることなど、優れた特長を有しており、パーソナルユースの記録装置の主流となりつつある。そして、このような広範な普及によって、パーソナルユーザからも画質のより一層の向上が求められるようになってきており、特に近年では、家庭で手軽に写真をプリントできるようなプリントシステムおよび銀塩写真に見合う記録画像の品位が求められて来ている。
銀塩写真と比べた場合、インクジェット記録装置では、記録画像の品位についていわゆる粒状感が従来注目されており、また、この粒状感を低減するための様々な対策が提案されている。例えば、通常のシアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクの他に、より色材濃度の低いライトシアンインクやライトマゼンタインクを加えたインクシステムを備えたインクジェット記録装置が知られている。このようなインクシステムを用いる場合、画像濃度の低い領域でライトシアンインクやライトマゼンタインクを用いることにより、粒状感を低減することができる。また、画像濃度の高い領域では通常のシアンインクやマゼンタインクを用いて記録を行うことにより、より広い色再現域や滑らかな階調性を実現することが可能となる。
また、インクが記録媒体に着弾して形成されるドットの大きさをより小さく設計して粒状感を低減する方法も知られている。これを実現するために、記録ヘッドの吐出口から吐出されるインク滴を少量化することが進められて来ている。この場合、インク滴の少量化のみならず、より多くの吐出口をより高い密度で配列することによって、記録速度を損なわずに高解像な画像を同時に得ることも可能となっている。
粒状感を悪化させる要因としては、上述以外にもにじみやビーディングがある。記録媒体のインクの吸収量には限界があるので、限界を超える量のインクを吸収させようとするとインクのにじみが発生し、粒状性悪化の原因となる。特に、シアン、マゼンタおよびイエローの基本色のインクを使用するインクジェット記録装置では、レッド、ブルー、グリーンの2次色などを表現するために2色またはそれ以上のインクを重ねる。このため、イエロー、マゼンタ、シアンの1次色を表現する場合に比べて1画素当たりに吐出されるインク量が多くなる。この場合に、記録媒体のインク吸収量の限界を超えるとインクのにじみが発生し易くなる。また、ビーディングは、複数のインク滴が紙面上に吸収されないで液体として存在しそれらが互いに引き合い、2つ分あるいはそれ以上の大きなインク滴を形成する。そして、最終的に記録媒体上にそれに応じた大きさのドットが形成されて粒状性悪化の原因となる。
このようなインク吸収性に起因した粒状性悪化を抑制する一構成として以下のような方法が提案されている。
いわゆるマルチパス記録を実施することにより、単位時間の単位面積あたりのインクの打ち込み量を少なくするものである。これにより、記録媒体の相対的な吸収能力低下を抑制して、にじみやインク滴同士の接触によるビーディングを発生し難くすることができる。
また、特許文献1に記載されるように、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの他に、レッド、ブルー、グリーンのインクを用いることにより、2色またはそれ以上のインクを重ねて記録する画素を少なくするものがある。これにより、にじみを発生させることなく十分な濃度を持った画素を記録することが可能となる。また、このようなインクシステムを用いることにより、画像の高濃度域の階調の再現性を改善することもできる。
さらに、特許文献2に記載されるように、2次色を記録する際に各インクの最大吐出量を100%以下とし、1次色の2色と2次色で記録を行うものがある。
しかしながら、本願発明者は、以上のようなビーディングについて、従来知られていなかった発生原因ないし発生条件に関する知見を得た。すなわち、記録媒体に先行して吐出されたインクよりも、既にインクが吐出された領域に吐出されるインクの方がビーディングを生じ易いということを確認した。そして、特に顔料インクを用いた場合はこの現象が顕著となることである。
図1(a)および(b)および図2(a)〜(e)は、この現象を説明する図であり、表面に光沢のある記録媒体に対して、顔料を色材としその濃度の低い淡シアンインクを吐出したときのインク定着の状態を示している。
図1(a)に示すように、記録媒体102に淡インク101を吐出しそれらが着弾すると、インクの水分、溶剤が記録媒体内に浸透するとともに蒸発する。そして、図1(b)に示すように、顔料インクの固形分のドット103が記録媒体102上に定着してドットが形成される。
図2(a)に示すようにドットが記録媒体に隙間なく形成されるような記録デューティーの場合、同図(b)に示すように、ドットが連なってできる層203となる。その後、層203の領域にさらにインク滴204が吐出されると、図1(b)に示す、記録媒体に直接ドット103が形成される場合と比較して、インク滴205は大きく拡がりより大きなドット206が形成される。これは、紙などの記録媒体上よりもインク層の上のほうが、表面エネルギーが高いことによってドットが拡がるからであると考えられる。なお、先に吐出されるインク滴101と後から吐出されるインク滴204の吐出時間差によっては、層203は完全に定着が完了していない、インクの水分などを含んだ状態であることもある。このような場合でも、上記の理由で後から吐出されるインク滴が記録媒体に直接吐出される場合と比較して大きく拡がることがある。
このような大きなドットが形成される場合、先に吐出されるインクの色との関係で視覚的に目立つ場合には、それが粒状感を呈することになる。ここで、視覚的にその色や濃度が目立ちやすいインクとしては、例えば、ブラックインク等の明度の低いインクが挙げられる。これに対し、例えば淡シアン等の明度の高いインク、同じドットの大きさ(拡がり)でも粒状感に与える影響は小さい。
本発明は、上記の観点からなされたものであり、その目的は、ビーディングに起因した粒状感による画質劣化を低減することが可能なインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することにある。すなわち、本発明は、仮にビーディングが発生したとしてもそれが目立たないようにすることによって、結果として粒状感を低減できるインクジェット記録装置およびインクジェット記録方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するための本発明は、インクジェット記録装置であって、記録ヘッドの往復移動を行う移動手段と、記録媒体の単位領域に対する前記記録ヘッドの往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う制御手段とを具備し、前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、前記制御手段は、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインク以外の少なくとも1つのインクが吐出されるべき画素に対して、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも先に吐出される割合が、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とする。
また、本発明は、インクジェット記録装置であって、記録ヘッドの往復移動を行う移動手段と、記録媒体の単位領域に対する前記記録ヘッドの往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う制御手段とを具備し、前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、前記制御手段は、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインクよりも明度の高いインクを少なくとも含む第1のインクグループの少なくとも1つのインクと、前記第2のインクグループのインクよりも明度の高い2種類以上のインクを含む第2のインクグループの少なくとも1つのインクとが吐出されるべき画素に対して、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも先に吐出される割合が、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とする。
また、本発明は、インクジェット記録方法であって、記録媒体の単位領域に対して記録ヘッドを往復移動させる工程と、前記単位領域に対する往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う工程とを有し、前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、前記記録工程では、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインク以外の少なくとも1つのインクが吐出されるべき画素に対して、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも先に吐出される割合が、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とする。
また、本発明は、インクジェット記録方法であって、記録媒体の単位領域に対して記録ヘッドを往復移動させる工程と、前記単位領域に対する往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う工程とを有し、前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、前記記録工程では、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインクよりも明度の高いインクを少なくとも含む第1のインクグループの少なくとも1つのインクと、前記第2のインクグループのインクよりも明度の高い2種類以上のインクを含む第2のインクグループの少なくとも1つのインクとが吐出されるべき画素に対して、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも先に吐出される割合が、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とする。
以上の構成によれば、低明度のインクと、高い明度のインクを同じ画素に吐出する場合、低明度のインクが高明度のインクより先に吐出される画素の比率を高くすることができる。また、最低明度のインクを含む低明度インクグループと、それよりも明度の高い高明度高インクグループを同じ画素に吐出する場合、前者のグループのインクが後者のグループのインクより先に吐出される画素の比率を高くすることができる。これにより、先に吐出された高明度インクの層に対して低明度インクが打ち込まれることにより生じる、低明度インクのビーディングの発生を抑制できる。一方、高明度インクは、低明度インクの上に打ち込まれることになり、この場合にビーディングを生じることがある。しかし、このような場合でも、ビーディングが生じる高明度インクは低明度インクより相対的に明度が高く目立たないことから、そのビーディングが観察する者に対して粒状感を与えることは少ない。
この結果、ビーディングに起因した粒状感による画質劣化を低減することが可能となる。
本発明の各実施形態では、記録媒体の単位領域に対して記録ヘッドを往復移動させ、その往復移動の双方向で単位領域を構成する画素に対して記録を行う、いわゆる双方向記録を行う。また、記録ヘッドからは明度の異なる複数種類のインクが吐出可能になっており、記録ヘッドにはこれら複数種類のインクに対応した複数の吐出口がヘッドの移動方向に沿って配列されている。そして、この双方向記録の際、低明度インクと高明度インクが吐出されるべき画素に対しては、低明度インクが高明度インクよりも先に吐出される割合が、低明度インクが高明度インクよりも後に吐出される画素の割合よりも高くなるように制御している。これにより、ビーディングが視認されやすい低明度インクによるビーディングの発生が抑制され、画像全体の粒状感が低減される。
特に、最低明度インクとそれ以外の少なくとも1つのインクが吐出されるべき画素に対して、最低明度インクがその他のインクよりも先に吐出される割合が、最低明度インクがそれ他のインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように制御するのが好ましい。これにより、未だインクが打ち込まれていない領域に対して最低明度インクが打ち込まれる箇所が多くなるので、ビーディングが最も視認されやすい最低明度インクによるビーディングの発生が抑制され、画像全体の粒状感を低減する。
また、低明度インクグループの少なくとも1つのインクと高明度インクグループの少なくとも1つのインクが同じ画素に吐出される場合における両グループのインク吐出順番を制御することでも本発明の上記課題は解決できる。この場合、前者のグループのインクが後者のグループのインクよりも先に吐出される画素の割合が、前者のグループのインクが後者のグループのインクよりも後に吐出される画素の割合よりも高くなるように制御する。これにより、未だインクが打ち込まれていない領域に対して最低明度インクグループのインクが打ち込まれる箇所が多くなるので、ビーディングが視認されやすい複数の低明度インクによるビーディングが抑制され、画像全体の粒状感が低減される。なお、低明度インクグループ(第1のインクグループ)とは、最低明度のインクとそれよりも明度の高いインクを少なくとも含むグループである。一方、高明度インクグループ(第2のインクグループ)とは、低明度のインクグループのインクよりも明度の高い2種類以上のインクを含むグループである。
本発明において2種のインクの相対的な明度の高低は、下記測定方法に従って測定されるL*の高低によって定まる。従って、2種のインクに着目したとき、下記測定方法に従って測定されたL*の値が低い方が第1インクに相当し、L*の値が高い方が第2インクに相当することになる。
本明細書において「明度」とは、CIE(国際照明委員会)によって1976年に勧告された「CIE1976LAB色空間」によって定義されるL*の値である。また、明度L*は、記録媒体に100%の記録デュ−ティで記録された領域を分光光度計によって測定した値である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るホスト機器としてのパーソナルコンピュータ(以下、単にPCとも言う)と、ここで処理された情報を記録出力するプリンタの構成を示すブロック図である。すなわち、PC100は、プリンタ104で記録する画像データを生成する。
図3において、PC100は、オペレーティングシステム(OS)102によって、アプリケーションソフトウェア101、プリンタドライバ103、モニタドライバ105の各ソフトウェアを動作させる。アプリケーションソフトウェア101は、ワープロ、表計算、インターネットブラウザなどに関する処理を行う。モニタドライバ105は、モニタ106に表示する画像データを作成するなどの処理を実行する。
プリンタドライバ103は、アプリケーションソフトウェア101からOS102へ発行される各種描画命令群(イメージ描画命令、テキスト描画命令グラフィクス描画命令など)を描画処理して、最終的にプリンタ104で用いる2値の画像データを生成する。詳しくは、図4で後述される画像処理を実行することにより、プリンタ104で用いる複数のインク色それぞれの2値の画像データを生成する。
ホストコンピュータ100は、以上のソフトウェアを動作させるための各種ハードウェアとして、CPU108、ハードディスク(HD)107、RAM109、ROM110などを備える。すなわち、CPU108は、ハードディスク107やROM110に格納されている上記のソフトウェアプログラムに従ってその処理を実行し、RAM109はその処理実行の際にワークエリアとして用いられる。
本実施形態のプリンタ104は、インクを吐出する記録ヘッドを記録媒体に対して走査(移動)し、その移動中にインクを吐出して記録を行ういわゆるシリアル方式のプリンタである。以下のいくつかの実施形態では、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(PC)、ライトマゼンタ(PM)、グレー(Gy)、ライトグレー(PGy)、ブラック(Bk)の8種類の顔料インクを吐出可能な記録ヘッドが使用される。更に、この記録ヘッドにこれら8種類の顔料インクを供給するための、8種類の顔料インク夫々に対応したインクタンクも使用される。ここで、ライトシアン等、「ライト」が付された名称のインクは、シアンインクなど通常のインクよりも顔料濃度が低いインクを示している。
これらの記録ヘッドおよびインクタンクがキャリッジに装着されることにより、記録用紙などの記録媒体に対して記録ヘッドによる走査を行うことができる。記録ヘッドとしては、例えば、図5にて後述されるような、8種類のインクに対応した吐出口群(ノズル群)が走査方向に沿って配されてなるヘッドが使用される。
プリンタ104はマルチパス記録を実行可能な記録装置である。ここで、「マルチパス記録」とは、記録媒体上の単位領域に対する記録ヘッドの複数回の走査(以下、移動、パスともいう)によって、単位領域に対する記録を完成させる記録方式である。より詳しくは、記録媒体の単位領域に記録されるべき2値の画像データを記録ヘッドの複数回の走査で記録すべき2値の画像データに分割し、その分割画像データに従って各走査で記録を行う。そのために、後述の各実施形態で説明されるマスクを所定のメモリに格納しておき、記録の際は走査およびインク色ごとに定められたマスクを用いて2値の分割画像データを生成する処理を行う。なお、上記の「単位領域」とは、例えば、後述の通り、記録ヘッドの走査と走査の間に行なわれる記録媒体の搬送の量に対応した幅を有する領域(例えば、N(Nは2以上の整数)パス記録の場合、記録ヘッドの1/Nの幅を有する領域)を指す。また、「単位領域」の別の例としては、一つの画素列に対応する領域(1ラスタ領域)を指すものとしてもよい。
図4は、図3に示した構成においてプリンタ104で記録を行う際のPC100およびプリンタ104における主なデータ処理過程を説明するブロック図である。本実施形態のインクジェットプリンタ104は、以下の主な実施形態では、上述した8色のインクによって記録を行うものであり、そのためにこれら8色のインクを吐出する記録ヘッドJ0010を備える。
ホストPC100のアプリケーション101を介して、ユーザはプリンタ104で記録する画像データを作成することができる。そして、記録を行うときはアプリケーション101で作成された画像データがプリンタドライバ103に渡される。
プリンタドライバ103は、その処理として、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、2値化処理J0005、および記録データ作成J0006をそれぞれ実行する。前段処理J0002では、アプリケーションによる画面を表示する表示器が持つ色域をプリンタ104の色域に変換する色域変換を行う。具体的には、R、G、B夫々が8ビットで表現された画像データR、G、Bを3次元LUTにより、プリンタの色域内の8ビットデータR、G、Bに変換する。次いで、後段処理J0003では、変換された色域を再現する色をインク色に分解する。具体的には、前段処理J0002にて得られた8ビットデータR、G、Bが表す色を再現するためのインクの組合せに対応した8ビットデータC、M、Y、Kを求める処理を行う。γ補正J0004では、色分解で得られたCMYKのデータ夫々についてγ補正を行う。具体的には、色分解で得られた8ビットデータCMYK夫々がプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。次いで、2値化処理J0005では、γ補正がなされた8ビットデータC、M、Y、Kそれぞれを1ビットデータC、M、Y、Kに変換する2値化処理を行う。最後に、記録データ作成処理J0006では、2値化された1ビットデータC、M、K、Yを内容とする2値の画像データに記録制御データなどを付して記録データを作成する。ここで、2値の画像データは、ドットの記録を示すドット記録データと、ドットの非記録を示すドット非記録データを含む。なお、記録制御データは、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」とから構成されている。以上のようにして生成された記録データは、プリンタ104へ供給される。
一方、プリンタ104は、2値の画像データに対して、後述の各実施形態のようにマスクデータ変換処理J0008を行う。マスクデータ変換処理J0008では、予めプリンタの所定のメモリ(格納部)に格納されている、後述の各実施形態で説明されるマスクパターンを用い、入力されてきた2値の画像データに対しAND処理を行う。これにより、記録媒体の単位領域に記録すべき2値の画像データが、マルチパス記録の各走査で記録すべき2値の画像データに分割される。このようにしてマルチパス記録におけるそれぞれの走査で用いられる2値の分割画像データが生成されると共に、実際にインクが吐出されるタイミングが決定される。なお、2値の分割画像データには、ドット記録データとドット非記録データが含まれる。
(第1実施形態)
本発明の第1の実施形態は、インクとして、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(PC)、ライトマゼンタ(PM)、グレー(Gy)、ライトグレー(PGy)、ブラック(Bk)の8色の顔料インクを用いる記録装置に関する。また、これらのインクを吐出する記録ヘッドによる、往、復合計8回の走査(パス、移動)によって記録を完成する8パスの双方向記録を行う。すなわち、8パスのマルチパス記録では、8回の走査に分散させて単位領域の記録を完成する。この場合に、ブラック(Bk)インクを、マルチパス記録によって記録を完成する単位領域に対する8回のパスの最初の方のパスで吐出するようにする。これにより、明度のより低いブラックインクが、より明度の高いインクが吐出され定着した層の上に吐出されないようにする。
本発明の第1の実施形態は、インクとして、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ライトシアン(PC)、ライトマゼンタ(PM)、グレー(Gy)、ライトグレー(PGy)、ブラック(Bk)の8色の顔料インクを用いる記録装置に関する。また、これらのインクを吐出する記録ヘッドによる、往、復合計8回の走査(パス、移動)によって記録を完成する8パスの双方向記録を行う。すなわち、8パスのマルチパス記録では、8回の走査に分散させて単位領域の記録を完成する。この場合に、ブラック(Bk)インクを、マルチパス記録によって記録を完成する単位領域に対する8回のパスの最初の方のパスで吐出するようにする。これにより、明度のより低いブラックインクが、より明度の高いインクが吐出され定着した層の上に吐出されないようにする。
より具体的には、それぞれのインクの吐出量(インク滴の量)は4.5pl、キャリッジ(走査)速度は40inch/secである。本実施形態の記録ヘッドは、図5に示すように、それぞれのインク色について、640個の吐出口(ノズル)501が1/600インチの間隔で搬送方向に配列された(ノズル列を二列備えている。各色それぞれの二列のノズル列は、インク供給口(実際には記録ヘッド表面には見えないが、図示の簡略化のため実線で示す)を挟んで配列されている。従って、二列のノズル列からなるノズル群は、1/1200インチの間隔で1280個の吐出口が所定方向に配列されてなる。また、各色のノズル群はヘッドの移動方向に対応した所定方向に沿って配されている。そして、このような記録ヘッドを所定方向にそって往復移動させ、その往方向への移動(往走査)および復方向への移動(復走査)の両方において記録ヘッドからインクを吐出させて記録を行う双方向記録モードを実行する。
図6は、本実施形態に用いるインクによる記録の明度を示す図である。具体的には、それぞれのインクについて、1200dpi×1200dpiの解像度で、100%の記録デューティーのパターンを記録したときに、そのパターンの明度L*を分光光度計(Spectrolino)で測定した結果を示している。この明度は、国際照明委員会のCIE1976L*a*b*表色系の明度である。ここで、記録デューティーとは、上記パターンを構成する1200dpi×1200dpiの解像度の画素の全体に対してインクが1滴吐出される画素の数の割合を表している。記録デューティーが100%の場合、パターンを構成する総ての画素それぞれにインクが1滴吐出されることになる。
図6に示すように、本実施形態で用いるインクによって記録したときの明度は、ブラックインクが最も低く、このブラックインクを8パス記録の最初の方のパスで記録し、ブラックインクが他の色のインクによる定着層の上に吐出されないようにする。このような、ブラックインクを含めそれぞれのインク吐出を8パスのうちどのパスで行うかは、8色インクそれぞれのマスクを用いて決定する。すなわち、8パスのマルチパス記録は、図5に示した各色1280個のノズルのノズル列を8等分した160ノズル分(×ノズルピッチ)の幅を有した単位領域の記録を、8回の記録ヘッドの主走査方向における往復走査で完成するものである。その際、走査ごとに上記160ノズル分と同じ距離の記録媒体搬送を副走査方向に行う。そして、各色インクのマスクは、各色1280個のノズルのノズル列における上記160ノズルごとに、副走査方向の160個のマスク画素と主走査方向の1280個のマスク画素の領域を有したものである。マスクは、2値の各色画像データにおける各画素の内容(“1”または“0”)をそのまま出力する記録許容画素と画像データの内容に拘らず“0”を出力する非記録許容画素のいずれかが以下で説明するようなパターンで配置されたものである。
以下では、本発明の第1の実施形態に係る、8パスのいずれのパスで明度の低いブラックインクとそれより明度の高い他の色のインクを吐出するかについて、いくつかの記録デューティーの場合を例にとり説明する。なお、以下では、「吐出する」を「打ち込む」とも言い、また、「記録デューティー」を単に「打ち込み量」とも言う。また、以下で説明する記録デューティーないし打ち込み量は、具体的には、図4に示した後段処理J0003の色分解処理によって定まるものである。すなわち、色分解処理は、プリンタ104で再現する色に適した各色インクの打ち込み量の組合せを定める。一方、以下の説明における打ち込み量の組み合わせが、実際にプリンタで再現する色に対応していない場合がある。しかし、それは説明を簡略化するためであり、また、そのような組合せを用いた本願発明の説明が実際の打ち込み量の組み合わせの場合にも当てはまることは、以下の説明からも明らかである。
(a)打ち込み量が、Bkインクが100%+その他のインクが100%の場合
インクの打ち込み量が、ブラックが100%、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレー、ライトグレーの合計の打ち込み量が100%で、合計200%を打ち込み量の場合について説明する。ここで打ち込み量100%は、上述のとおり、ある領域の1200dpi×1200dpiの画素の総てに4.5plのインク滴が1滴吐出されたときの記録デューティーを表している。
インクの打ち込み量が、ブラックが100%、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレー、ライトグレーの合計の打ち込み量が100%で、合計200%を打ち込み量の場合について説明する。ここで打ち込み量100%は、上述のとおり、ある領域の1200dpi×1200dpiの画素の総てに4.5plのインク滴が1滴吐出されたときの記録デューティーを表している。
図7は、本実施形態の8パス記録を説明する図であり、8パスで記録を完成する領域に対して各パスで打ち込まれるそれぞれのインクをその領域に対応したデータ(のレイヤー;層)として表現している。なお、この4画素×4画素のレイヤーにおいて同じ位置(画素)のデータは記録において同じ画素に記録されることはもちろんである。吐出の順序(打ち込みの順序)は、1パス目が最初で8パス目が最後となる。なお、1パス目、3パス目、5パス目、7パス目は往方向への移動中(往走査中)に記録を行い、2パス目、4パス目、6パス目、8パス目は往方向への移動中(往走査中)に記録を行うことになる。図7では、図示および説明の簡略化のため、各パスのレイヤーを1200dpi×1200dpiの解像度の4画素×4画素で表している。上述の打ち込み量ないし記録デューティーは、図に示す4画素×4画素の総ての画素に1滴のインクが打ち込まれる場合が100%となる。このように、図7に示す各パスのレイヤーは、ブラックインクおよび他の色のインクのパスごとのマスクパターンを表している。つまり、図7に示す各レイヤーのインクが打ち込まれる画素が、それぞれのインクのパスごとのマスクパターンにおいて記録許容画素が対応して配置される画素となる。
図7おいて、黒い色で示される画素401はブラックインクが打ち込まれる画素を示し、斜線で示される画素402は、ブラック以外の他の色のインクが打ち込まれる画素を示す。図7に示すように、8パスで完成する単位領域の記録を、1パス(往走査)目から4パス(復走査)目までの最初の4パスでブラックインクを打ち込み、5パス目以降でブラック以外の色のインクを打ち込む。すなわち、ブラックインクのマスクは、1パス目から4パス目までのマスクパターンが図7の画素401に対応するマスク画素に記録許容画素を配置したものであり、4回の走査で単位領域の記録を完成する。つまり、4回の走査で、4画素×4画素の総ての画素にそれぞれ1滴のインクが打ち込まれる。そして、ブラックインクの5パス目から8パス目までのマスクは、総てのマスク画素に非記録許容画素が配置されたもの、つまり記録許容画素が全く配置されないマスクパターンとなる。一方、ブラック以外の色のインクのマスクはいずれも、1パス目から4パス目までのマスクが総てのマスク画素に非記録許容画素を配置したものである。そして、5パス目から8パス目までのマスクパターンが図7の画素402に対応するマスク画素に記録許容画素を配置したものである。これにより、ブラック以外の色のインクについては5パス目以降の4回の走査で単位領域の記録を完成する。
以上のとおり本実施形態によれば、総ての画素について、ブラックインクが未だインクが打ち込まれていない紙面(以下、「紙白」ともいう)にブラックインク以外のインクよりも先に打ち込まれる。この場合、ブラックインクが打ち込まれる総画素数に対して実際にブラックインクが他のインクよりも先に紙白に打ち込まれる画素数の比率は100%、つまり他の色のインクがブラックインクよりも先に紙白に打ち込まれる画素数の比率は0%となる。これにより、ブラックインクが先に打ち込まれた他の色のインクの層に重ねて打ち込まれないようにすることができる。その結果、ブラックインクが、先に定着したインクの層に対して打ち込まれることによって拡がりビーディングが発生することを防止できる。一方、ブラックインクより明度が高い、ブラックインク以外の色のインクは、ブラックインクが定着した層の上に打ち込まれることになる。この場合、図2にて前述したようにビーディングを生じることがある。このような場合でも、ビーディングを生じているインクはブラックインクより相対的に明度が高く目立たないことから、そのビーディングが観察する者に対して粒状感を与えることは少ない。
なお、図7に示した例では、1パス〜4パスでブラックインクを打ち込む場合に、打ち込み量を各パスに均等(25%)とした。しかし、各パスに均等である必要はなく、例えば、1パス目に40%、2パス、3目に30%パス目に20%、4パス目に10%としてもよい。
図8は、比較例として従来知られる8パスのマルチパス記録を説明する図である。図8に示すように、従来は、複数回のパスのそれぞれで、低明度のブラックインクとそれより明度の高い他の色のインクの両方が打ち込まれる。図8は、上記の実施形態と同様、インクの打ち込み量が、ブラックが100%、シアン、マゼンタ、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレー、ライトグレーの合計の打ち込み量が100%で、合計200%を打ち込み量の場合を示している。また、図8おいて、黒い色で示される画素501はブラックインクが打ち込まれる画素を示し、斜線で示される画素502は、ブラック以外の他の色のインクが打ち込まれる画素を示す。この比較例のマスクは、総打ち込み量が200%に対して、1パスあたり均等に25%(ブラックインク12.5%およびブラック以外のインク12.5%)打ち込むようにするものである。
このマスクを用いると、1パス目の往走査では、ブラックインクとブラック以外の色のインクが共に12.5%の打ち込み量で打ち込まれる。図8に示すように、ブラックインクの画素501とブラック以外のインクの画素502は、異なる画素である。この場合、ブラックインクおよびブラック以外の色のインクがそれぞれ紙白に打ち込まれる比率は100%となる。
次に、2パス目では、ブラックとブラック以外のインクで打ち込む画素がそれぞれ異なり、さらに1パス目で打ち込んだ画素には打ち込まないようなマスクとする。この場合、1パス目と同様、ブラックインクおよび他のインクを紙白に打ち込む比率はそれぞれ100%となる。3パス目、4パス目も同様に前のパスまでに打ち込んでいない画素に打ち込み、また、ブラックインクとブラック以外のインクで異なる画素に打ち込むようにする。これにより、ブラックインクおよび他のインクの紙白に打ち込む比率はそれぞれ100%となる。
503は、4パス目までにインクを打ち込んだ状態、すなわち1パス目から4パス目までのレイヤーを重ねた状態を示している。これから分るように、総ての画素にインクが打ち込まれているので、5パス目以降に打ち込むブラックインクは総て、紙白でなくブラック以外のインクの上に打ち込まれることになる。従って、1パス目から8パス目までのインク吐出(打ち込み)において、ブラックインクがブラック以外のインクよりも先に紙白に打ち込まれる比率は50%、ブラック以外のインクが先に紙白に打ち込まれる比率も50%となる。このように、従来のマルチパス記録では、マスクの記録許容画素の配置を工夫してブラックインクとその他のインクができるだけ重ならないようにしても、ブラックインクが先に紙白に打ち込まれる比率は最大50%である。従って、50%以上の比率で明度の低いインクがそれより明度の高いインクが吐出された後に吐出されることになる。その結果、その部分では、明度の低いインクがより明度の高いインクの定着層の上で広がってビーディングを生じ、これが粒状感を呈することがある。
なお、図5に示す記録ヘッドを用いる場合、1パス目の往走査で、ブラックインクはマゼンタ、ライトマゼンタの次に打ち込まれる。従って、仮にマスクの内容が、同じ走査でマゼンタ、ライトマゼンタ、ブラックを同一画素に打ち込むものである場合は、ブラックインクを先に紙面に打ち込むことはできず、先に紙面に打ち込む比率は0%になる。このため、マスクの内容によっては、全体としてブラックインクが先に紙白に打たれる比率が50%よりも小さくなる。
(b)打ち込み量が、Bkインクが50%+その他のインクが50%の場合
ブラックインクの打ち込み量が50%、ブラック以外のインクの打ち込み量が50%、すなわち合計の打ち込み量が100%の場合も、上記(a)に示す例と同様である。すなわち、各色、各パスについて、同じマスクを用いることから、図7に示すのと同様、1パス目から4パス目まではブラックインクが打ち込まれる。ただし、打ち込み率が50%であるから、この4回の走査で4画素×4画素のうち50%の8画素にブラックインクが打ち込まれる。また、5パス目から8パス目までも同様、ブラックインク以外のインクが同様に8画素に打ち込まれる。
ブラックインクの打ち込み量が50%、ブラック以外のインクの打ち込み量が50%、すなわち合計の打ち込み量が100%の場合も、上記(a)に示す例と同様である。すなわち、各色、各パスについて、同じマスクを用いることから、図7に示すのと同様、1パス目から4パス目まではブラックインクが打ち込まれる。ただし、打ち込み率が50%であるから、この4回の走査で4画素×4画素のうち50%の8画素にブラックインクが打ち込まれる。また、5パス目から8パス目までも同様、ブラックインク以外のインクが同様に8画素に打ち込まれる。
このように、記録を完成する走査のうちより少ない走査回数でブラックインクを打ち込み、残りの走査でブラック以外のインクを打ち込む。これにより、ブラックインクとブラック以外のインクを同一画素に打ち込む場合であっても、ブラックインクを先に紙白に打ち込むことができる。
(c)打ち込み量が、Bkインクが10%+その他のインクが100%の場合
この場合も、上記(b)に示す例と同様の方法が適用できる。すなわち、上記(a)、(b)の例と同じマスクを用いることにより、1パス目から4パス目まではブラックインクが打ち込まれる。この際、4パスでブラックインクが打ち込まれる画素は全体の10%となる。また、5パス目から8パス目まではブラックインク以外のインクが打ち込まれ、その際、この4回の走査で100%の画素に上記ブラックインク以外のインクが打ち込まれることになる。
この場合も、上記(b)に示す例と同様の方法が適用できる。すなわち、上記(a)、(b)の例と同じマスクを用いることにより、1パス目から4パス目まではブラックインクが打ち込まれる。この際、4パスでブラックインクが打ち込まれる画素は全体の10%となる。また、5パス目から8パス目まではブラックインク以外のインクが打ち込まれ、その際、この4回の走査で100%の画素に上記ブラックインク以外のインクが打ち込まれることになる。
図9は本実施形態で用いる色分解テーブルの一部の内容である、入力値に対応した、いわゆるグレー軸上の色とそれを表す各色インクの打ち込み量との関係を示す図である。具体的には、図9の横軸は入力画像の輝度値(グレー軸の場合、R、G、Bはそれぞれ同じ値)、縦軸は各インクの打ち込み量を示している。同図に示すように、入力輝度値が小さくなるにしたがってブラックインクの打ち込み量が増す。このような打ち込み量の各色インクの記録データに対して、図7にて説明したマスクを用いることにより、最初の4回の走査でブラックインクを打ち込み、その後の4回の走査でその他のインクを打ち込むことができる。
図10は、これらの色を記録する場合に、本実施形態の上述した記録と比較例の記録における粒状性評価の結果を示す図である。図10から、本実施形態の上述した記録を行うことで粒状性が低減し、画質が向上することが確認することができる。
以上の本実施形態では、最低明度のブラックインクとその他のインクが同じ画素に吐出される場合、ブラックインクがその他のインクよりも先に吐出されるようなマスクパターンを用いて、ブラックインクとその他のインクの打ち込み順序を制御している。これにより、ビーディングが視認されやすいブラックインクが、その他のインクが未だ打ち込まれていない未インク打ち込み領域に打ち込まれることになるので、ブラックインク自体のビーディングが低減され、画像全体の粒状感を低減させることができる。
(第1の実施形態の変形例1)
上記第1の実施形態では、記録ヘッドの4回往復移動を伴う8パス記録において、前半の4パスで最低明度インク(ブラックインク)を吐出し、後半の4パスで残りのインクを吐出しているが、この例に限られるものではない。最低明度インク(ブラックインク)の吐出が完了した後のパスで、残りのインクを吐出すればよく、例えば、2パス目まで、3パス目まで、あるいは5パス目まで等で最低明度インクの吐出が完了するように制御する形態であってもよい。また、パス数も8パスに限られず、K(Kは2以上の整数)パス記録に広く適用可能である。
上記第1の実施形態では、記録ヘッドの4回往復移動を伴う8パス記録において、前半の4パスで最低明度インク(ブラックインク)を吐出し、後半の4パスで残りのインクを吐出しているが、この例に限られるものではない。最低明度インク(ブラックインク)の吐出が完了した後のパスで、残りのインクを吐出すればよく、例えば、2パス目まで、3パス目まで、あるいは5パス目まで等で最低明度インクの吐出が完了するように制御する形態であってもよい。また、パス数も8パスに限られず、K(Kは2以上の整数)パス記録に広く適用可能である。
要するに、単位領域に対する記録ヘッドのK(Kは2以上の整数)回の移動を行う場合、M(Mは整数で、且つ、1≦M<K)回目までの移動で最低明度のインクを吐出させる一方、M+1回目以降の移動で最低明度のインク以外のインクを吐出させればよい。
(第1の実施形態の変形例2)
上記第1の実施形態では、ビーディングが視認されやすい低明度インク(ブラックインク)のグループ(低明度のインクグループ)と、それよりもビーディングが視認されにくい高明度インクのグループ(高明度のインクグループ)に分けている。そして、低明度グループのインクが高明度グループのインクより先に吐出されるようなマスクパターンを用いている。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、グループ分けの仕方を変えてもよい。例えば、ブラックインク以外であっても、比較的明度が低いシアンやマゼンタ、グレーなどは、ビーディングが視認されやすい傾向にある。
上記第1の実施形態では、ビーディングが視認されやすい低明度インク(ブラックインク)のグループ(低明度のインクグループ)と、それよりもビーディングが視認されにくい高明度インクのグループ(高明度のインクグループ)に分けている。そして、低明度グループのインクが高明度グループのインクより先に吐出されるようなマスクパターンを用いている。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、グループ分けの仕方を変えてもよい。例えば、ブラックインク以外であっても、比較的明度が低いシアンやマゼンタ、グレーなどは、ビーディングが視認されやすい傾向にある。
そこで、本変形例では、相対的に明度の低いブラック、グレー、シアン、マゼンタの4種類のインクを低明度グループとし、相対的に明度の高い残りの4種類(ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトグレー、イエロ−)インクを高明度グループとする。そして、低明度のインクグループ(第1のインクグループ)については、上記第1の実施形態のブラックインク用のマスクを適用して、1〜4パスでインクを打ち込む。一方、高明度のインクグループ(第2のインクグループ)については、上記第1の実施形態のブラック以外のインク用のマスクを適用し、5〜8パスでインクを打ち込む。
これにより、ビーディングが視認されやすい複数の低明度インクが、ビーディングが視認されにくい高明度インクよりも先に打ち込まれることになり、低明度インクによるビーディングを軽減できる。その結果、仮に、高明度インクによるビーディングが生じたとしても、画像全体の粒状感を低減することができる。
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態は、ブラックインクとブラックインク以外のインクを同一の走査で打ち込み、その際に、ブラックのインクを先に記録媒体に対して打ち込む構成に関するものである。本実施形態で用いる記録ヘッドも、図5に示すノズル配列を有した記録ヘッドである。また、同じく、インクは顔料を色材とするC、M、Y、PC、PM、Bk、Gy、PGyの8色のインクである。さらに、往、復双方向の8パスの双方向マルチパス記録を行う場合に本発明を適用したものである。
本発明の第2の実施形態は、ブラックインクとブラックインク以外のインクを同一の走査で打ち込み、その際に、ブラックのインクを先に記録媒体に対して打ち込む構成に関するものである。本実施形態で用いる記録ヘッドも、図5に示すノズル配列を有した記録ヘッドである。また、同じく、インクは顔料を色材とするC、M、Y、PC、PM、Bk、Gy、PGyの8色のインクである。さらに、往、復双方向の8パスの双方向マルチパス記録を行う場合に本発明を適用したものである。
(a)打ち込み量が、Bk100%+その他のインクが100%の場合
図11は、本発明の第2の実施形態に係る8パス記録を説明する図であり、図7と同様の図を示している。本実施形態も同様、図11に示すマスクを用いて各パスの吐出データを生成する。なお、図11では、図7に示した例と異なり、斜線で示す、ブラックインク以外のインクの記録許容画素が配置される位置は、以下で説明されるように、それら記録許容画素を配置可能な位置を示す。すなわち、実際は斜線で示す位置の総てに配置されるのではなく、インクごとに記録許容画素の配置が8パスで記録比率(マスクにおける記録許容画素の割合)が100%となるようパス間で相補的に定められるものである。
図11は、本発明の第2の実施形態に係る8パス記録を説明する図であり、図7と同様の図を示している。本実施形態も同様、図11に示すマスクを用いて各パスの吐出データを生成する。なお、図11では、図7に示した例と異なり、斜線で示す、ブラックインク以外のインクの記録許容画素が配置される位置は、以下で説明されるように、それら記録許容画素を配置可能な位置を示す。すなわち、実際は斜線で示す位置の総てに配置されるのではなく、インクごとに記録許容画素の配置が8パスで記録比率(マスクにおける記録許容画素の割合)が100%となるようパス間で相補的に定められるものである。
図11に示すように、1パス目の往走査では、マゼンタ、ライトマゼンタは使用せずにブラック、グレー、ライトグレー、シアン、ライトシアン、イエローのインクを使用する。また、ブラックインクとブラック以外のインクは同一画素に打ち込む。すなわち、図11において黒で示す画素601には、1パス目でブラックインクが打ち込まれ、斜線で示す画素602それぞれには、グレー、ライトグレー、シアン、ライトシアン、イエローインクのいずれかが打ち込まれる。つまり、同じ走査でブラックインクとそれ以外の所定のインクが同じ画素に打ち込まれる。この際、図5に示す各色のノズル列の配列から明らかなように、往走査では、ブラックインクがそれ以外のインクよりも先に紙白に打ち込まれることになる。
次に、2パス目の復走査では、グレー、ライトグレー、シアン、ライトシアンおよびイエローインクのいずれかを、1パス目でブラックインクが打ち込まれた画素603に打ち込む。次に、画素604にブラックインクを打ち込む。最後に、それまでにブラックインクが打ち込まれた画素605(601、604)にライトマゼンタおよびマゼンタインクを打ち込む。なお、図11に示す例は、ブラックインクの打ち込み量が100%であり、それ以外のインクの組み合わせたものの打ち込み量も100%である。従って、8パスについて均等マスクを用いる場合、ブラックインクと、それ以外のインクのいずれかまたはそれらの組合せとがそれぞれ1パス当たり12.5%(2画素/16画素)の割合で打ち込まれる。すなわち、各パスでは、黒で示すブラックインクの記録許容画素が2箇所、それ以外のインクの斜線で示す記録許容画素が2箇所となる。例えば、図11において、2パス目では、ブラックインク以外のインクの斜線で示す記録許容画素が6箇所(603、605)示されているが、これらは配置が可能な位置を示しており、実際は、6箇所のうち2箇所に配置される。以下、同様である。
3パス目の往走査では、ライトマゼンタ、マゼンタのインクのいずれかをブラックインクが既に打ち込まれた画素606に打ち込む。そして、画素607にブラックインクを打ち込み、さらに、グレー、ライトグレー、シアン、ライトシアン、イエローインクのいずれかを、既にブラックインクが打ち込まれている画素608に打ち込む。
4パス以降も以上のように、既にブラックインクが打ち込まれた画素に対してブラック以外のインクを打ち込むことにより、ブラックインクを比率100%で紙白に打ち込むことができ、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
なお、1つの方向の走査でのみ記録を行う片方向記録の場合も、上述のように既にブラックインクが打ち込まれた画素についてブラック以外のインクを打ち込むことにより、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態は、上述した第2の実施形態と記録ヘッドの構成のみが異なる。図12は、第3実施形態で用いる記録ヘッドの各色インクのノズル列の配列を示す図である。同図に示すように、Bkのノズル列がノズル列配列の両端にある点が第2実施形態と異なる。
本発明の第3の実施形態は、上述した第2の実施形態と記録ヘッドの構成のみが異なる。図12は、第3実施形態で用いる記録ヘッドの各色インクのノズル列の配列を示す図である。同図に示すように、Bkのノズル列がノズル列配列の両端にある点が第2実施形態と異なる。
詳しくは、本実施形態の記録ヘッドは、図12に示すように、ブラックを吐出するノズル列がノズル列配列の最も外側の両端にそれぞれ配されている。これによって、同一走査で同一画素に複数のインクが打ち込まれる場合、常に、ブラックインクを他のインクよりも先に紙白に打ち込むようにすることができる。
(第4実施形態)
上記第1〜第3の実施形態では、8種類のインクを用いる例について示したが、本発明は8種類のインクを用いることに限定されるものではなく、複数種類のインクを用いる形態であれば適用可能である。また、上記第1〜第3の実施形態では、複数種類(8種類)のインクの中で最低明度のインクとして、ブラックインクを例に挙げて説明したが、最低明度のインクはブラックインクに限られるものではない。
上記第1〜第3の実施形態では、8種類のインクを用いる例について示したが、本発明は8種類のインクを用いることに限定されるものではなく、複数種類のインクを用いる形態であれば適用可能である。また、上記第1〜第3の実施形態では、複数種類(8種類)のインクの中で最低明度のインクとして、ブラックインクを例に挙げて説明したが、最低明度のインクはブラックインクに限られるものではない。
本発明の第4の実施形態は、ブラックインクを用いない、3色インクのプリンタに関するものである。本実施形態で用いるインクは、顔料を色材としたシアン、マゼンタ、イエローインクである。このとき、図6に示すように、これら3色のうち最も明度が低いのはシアンとなる。従って、本実施形態は、シアンインクを上述の各実施形態におけるブラックインクと同じ扱いとし、シアンインクが他のインク(イエローインク、マゼンタインク)よりも先に紙白に打ち込まれるようにする。その結果、相対的に明度が低いシアンインクのビーディングが生じないようにして粒状性悪化を抑制することができる。
また、顔料インクではなく、染料インクを用いた場合においても、同様にしてビーディングに起因した粒状感を抑制することができる。
(第5実施形態)
本発明の第5の実施形態は、ブラックインクとグレーインク(ライトブラック)の2種類のインクを用いるモノクロプリンタに関するものである。この場合、これら2種類のインクうち、相対的に明度が低いのはブラックインクとなり、相対的に明度が高いのはグレーインクとなる。従って、本実施形態は、ブラックインクがグレーインクよりも先に紙色(未インク打ち込み領域)に打ち込まれるようにする。その結果、相対的に明度が低いブラックインクのビーディングが生じないようにして粒状性悪化を抑制することができる。また、顔料インクではなく、染料インクを用いた場合においても、同様にしてビーディングに起因した粒状感を抑制することができる。
本発明の第5の実施形態は、ブラックインクとグレーインク(ライトブラック)の2種類のインクを用いるモノクロプリンタに関するものである。この場合、これら2種類のインクうち、相対的に明度が低いのはブラックインクとなり、相対的に明度が高いのはグレーインクとなる。従って、本実施形態は、ブラックインクがグレーインクよりも先に紙色(未インク打ち込み領域)に打ち込まれるようにする。その結果、相対的に明度が低いブラックインクのビーディングが生じないようにして粒状性悪化を抑制することができる。また、顔料インクではなく、染料インクを用いた場合においても、同様にしてビーディングに起因した粒状感を抑制することができる。
(第6実施形態)
上述した各実施形態は、100%の比率でブラックインクがその他のインクより先に紙白に打ち込まれる形態に関するものである。これに対し、本実施形態は、ブラックインクとその他のインクが吐出される画素に関し、このブラックインクが先に紙白に打ち込まれる割合が50%超且つ100%未満となるようにするものである。そのために、本実施形態では、マスクの記録許容画素の配置を適切に定め、上記100%未満の値を実現する。すなわち、ブラックインクが他色インクより先に吐出される画素の割合が、ブラックインクが他色インクより後に吐出される画素の割合よりも多くなるようなマスクパターンを用いて、ブラックインクと他色インクの打ち込み順序を制御する。
上述した各実施形態は、100%の比率でブラックインクがその他のインクより先に紙白に打ち込まれる形態に関するものである。これに対し、本実施形態は、ブラックインクとその他のインクが吐出される画素に関し、このブラックインクが先に紙白に打ち込まれる割合が50%超且つ100%未満となるようにするものである。そのために、本実施形態では、マスクの記録許容画素の配置を適切に定め、上記100%未満の値を実現する。すなわち、ブラックインクが他色インクより先に吐出される画素の割合が、ブラックインクが他色インクより後に吐出される画素の割合よりも多くなるようなマスクパターンを用いて、ブラックインクと他色インクの打ち込み順序を制御する。
以下では、ブラックインクおよびそれ以外のインクが顔料インクであり、吐出量4.5pl、キャリッジ速度40inch/sec、8パスで光沢紙に双方向記録する場合について説明する。
図13は、比較のため上述した第1実施形態で用いるマスクを示す図である。図13において、101はブラックインクのマスクを示し、102はブラックインク以外のインクそれぞれのマスクを示す。この図に示すように、8回の走査で記録を完成する場合、ブラックインクが紙面に先に打ち込まれる比率は100%となる。図15は、図13に示すマスクの記録比率(マスクにおける記録許容画素の割合)を示す図である。図15に示すように、1〜640番目のノズルに対応した1パス目〜4パス目の記録比率は、ブラックインクが25%でそれ以外のインクがそれぞれ0%である。また、641番目から1280番目のノズルに対応した5パス目〜8パス目の記録比率は、ブラックインクが0%でそれ以外のインクがそれぞれ25%である。なお、上記の例では、記録比率が25%と一定であるが、ブラックインクが前半(1〜4)パス、ブラック以外のインクが後半(5〜8)パスであれば記録比率は一定でなくてもよい。また、ブラックインクが打ち込まれる前半パスは上記の例のように1〜4パスに限定されない。例えば、1パス〜2パス(従って、後半は3パス〜8パス)、あるいは1パス〜6パス(従って、後半は7パス〜8パス)でもよい。また、全インクの打ち込み量によって各インクのパス数を変更してもよい。
図14は、本実施形態で用いるマスクであって、111はブラックインクのマスクを示し、112はブラックインク以外のインクのマスクである。この図14によれば、ブラックインクがその他のインクよりも先に打ち込まれる画素の比率が50%超且つ100%未満となる。換言すれば、ブラックインクが他色インクより先に吐出される画素の割合が、ブラックインクが他色インクより後に吐出される画素の割合よりも多くなる。また、図16は、図14に示すマスクの記録比率を示す図である。図16に示すように、1〜640番目のノズルに対応した1パス目〜4パス目の記録比率は、ブラックインクが25%で、それ以外のインクがそれぞれ1〜640番目のノズルに対応して徐々に増加する記録比率である。また、641番目から1280番目のノズルに対応した5パス目〜8パス目の記録比率は、ブラックインクが0%で、それ以外のインクが641番目から1280番目のノズルに対応して徐々に減少する記録比率である。
このように、ノズル位置(つまりマルチパスにおいてどれだけ先に記録が行われるか指標となるもの)とその位置での記録比率とをパラメータとする。そして、これらのパラメータに基づき、ブラックインクの方が、より前のノズル位置(つまり先の記録)で、より大きな記録比率となるように、ブラックインクおよびそれ以外のインクそれぞれのマスクを定めることができる。なお、図13、図14に示すように、本明細書および図面では、ノズル番号(吐出口番号)が小さいほどマルチパス記録において先に記録が行われる。
以上の点を一般化すると、図13に示すマスクを含み、ブラックインクとそれ以外のインクそれぞれが重なる画素に対して、ブラックインクが紙面に先に打ち込まれる画素の割合が多くなるためには、以下の条件を満たすことが必要である。
Σ(n×fBk(n))<Σ(n×fCLR(n)) ・・・(1)
ここで、fBk(n)は、ブラックインクのマスクにおける吐出口番号nに対応した記録比率、fCLR(n)は、同じくブラック以外のインクそれぞれのマスクにおける吐出口番号nに対応した記録比率である。また、Σはnに関し1〜N(ここでは1280)までの和を取ることを意味する。さらに、ΣfBk(n)=ΣfCLR(n)=100%である。
Σ(n×fBk(n))<Σ(n×fCLR(n)) ・・・(1)
ここで、fBk(n)は、ブラックインクのマスクにおける吐出口番号nに対応した記録比率、fCLR(n)は、同じくブラック以外のインクそれぞれのマスクにおける吐出口番号nに対応した記録比率である。また、Σはnに関し1〜N(ここでは1280)までの和を取ることを意味する。さらに、ΣfBk(n)=ΣfCLR(n)=100%である。
上記(1)式は、各インクのマスクを比較したとき、ブラックインクのマスクにおける記録比率の重心(のノズル位置)が前半にあることを意味しており、ブラックインクの方が紙白に先に打ち込まれる比率が大きいことを表している。なお、式(1)はブラックインクとそれ以外のインクが重なる画素に対して成り立てばよく、重ならない画素に関しては満たさなくてよい。以上の本実施形態では、ブラックインクが他色インクよりも先に吐出される画素の割合が、ブラックインクが他色インクより後に吐出される画素の割合よりも多くなるようなマスクパターンを用いて、ブラックインクと他色インクの打ち込み順序を制御している。
これにより、ビーディングが視認されやすいブラックインクは、未だ他のインクが打ち込まれてない未インク打ち込み領域に対して打ち込まれることになるので、ブラックインクによるビーディングが低減され、画像全体の粒状感を低減させることができる。
(第7実施形態)
上記第6の実施形態では、ビーディングが視認されやすい低明度インク(ブラックインク)のグループ(低明度のインクグループ)と、それよりもビーディングが視認されにくい高明度インクのグループ(高明度のインクグループ)に分けている。そして、低明度グループのインクが高明度グループのインクより先に吐出されるようなマスクパターンを用いている。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、グループ分けの仕方を変えてもよい。例えば、ブラックインク以外であっても、比較的明度が低いグレーインクは、ビーディングが視認されやすい傾向にある。
上記第6の実施形態では、ビーディングが視認されやすい低明度インク(ブラックインク)のグループ(低明度のインクグループ)と、それよりもビーディングが視認されにくい高明度インクのグループ(高明度のインクグループ)に分けている。そして、低明度グループのインクが高明度グループのインクより先に吐出されるようなマスクパターンを用いている。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、グループ分けの仕方を変えてもよい。例えば、ブラックインク以外であっても、比較的明度が低いグレーインクは、ビーディングが視認されやすい傾向にある。
そこで、本実施形態は、ブラック、グレーの2色インクを低明度グループ(第1のインクグループ)とし、残りの6色(マゼンタ、シアン、ライトシアン、ライトマゼンタ、ライトグレー、イエロ−)インクを高明度グループ(第2のインクグループ)とする。そして、低明度グループについては、上記第6の実施形態のブラックインク用マスク111を適用して、1〜4パスでインクを打ち込む。一方、高明度グループについては、上記第6の実施形態のブラック以外の他色インク用マスク112を適用し、1〜8パスでインクを打ち込む。
これにより、ビーディングが視認されやすい低明度インクが、ビーディングが視認されにくい高明度インクよりも先に打ち込まれることになり、低明度インクによるビーディングを抑制することができる。その結果、仮に、高明度インクによるビーディングが生じたとしても、画像全体の粒状感を低減することができる。
(第8の実施形態)
上記第7および第8の実施形態では、低明度インクを1〜4パスで打ち込み、高明度インクを1〜8パスで打ち込んでいるが、低明度インクが打ち込まれるパスは1〜4パスに限定されるものではない。低明度インクが高明度インクより先に打ち込まれる画素の割合が、低明度インクが高明度インクより後に打ち込まれる画素の割合よりも多くなればよく、例えば、低明度インクを8パスよりも少ないパスで打ち込むこのが好適である。また、パス数も8パスに限られず、K(Kは2以上の整数)パス記録に広く適用可能である。従って、単位領域に対する記録ヘッドのK(Kは2以上の整数)回の移動を行う場合、M(Mは整数で、且つ、1≦M<K)回目までの移動で低明度インクを吐出させる一方、1回目からK回目までの移動で高明度インクを吐出させればよい。
上記第7および第8の実施形態では、低明度インクを1〜4パスで打ち込み、高明度インクを1〜8パスで打ち込んでいるが、低明度インクが打ち込まれるパスは1〜4パスに限定されるものではない。低明度インクが高明度インクより先に打ち込まれる画素の割合が、低明度インクが高明度インクより後に打ち込まれる画素の割合よりも多くなればよく、例えば、低明度インクを8パスよりも少ないパスで打ち込むこのが好適である。また、パス数も8パスに限られず、K(Kは2以上の整数)パス記録に広く適用可能である。従って、単位領域に対する記録ヘッドのK(Kは2以上の整数)回の移動を行う場合、M(Mは整数で、且つ、1≦M<K)回目までの移動で低明度インクを吐出させる一方、1回目からK回目までの移動で高明度インクを吐出させればよい。
また、8パス記録を行う場合に、高明度インクの打ち込みパスは1〜8パスに限られるものではなく、例えば、打ち込みを開始するパスを2パス目以降にしたり4パス目以降にしたりすることもできる。要するに、記録ヘッドのK(Kは2以上の整数)回の移動を行う場合、M(Mは整数で、且つ、1≦M<K)回目までの移動で低明度インクを吐出させる一方、L(Lは整数で、且つ1≦L<M)回目以降の移動で高明度インクを吐出させればよい。
なお、本発明は、記録ヘッドの少なくとも1回の往復移動の双方向(往方向と復方向)を含む複数回の移動によって、単位領域を構成する複数の画素に対する記録を行う双方向記録モードに広く適用可能であり、パス数は何ら限定されるものではない。
以上説明したとおり、本発明の第1〜第8実施形態によれば、低明度のインクと、高明度インクを同じ画素に吐出する場合、記録媒体の未だインクが吐出されていない画素に低明度インクが吐出される割合を高くすることができる。これにより、先に定着した高明度インクの層に対して低明度インクが打ち込まれることによって生じる、低明度インクのビーディングの発生を抑制できる。一方、高明度インクは、低明度インクが定着した層の上に打ち込まれることになり、この場合にビーディングを生じることがある。しかし、このような場合でも、ビーディングを生じている高明度インクは低明度インクより相対的に明度が高く目立たないことから、そのビーディングが観察する者に対して粒状感を与えることは少ない。
この結果、ビーディングに起因した粒状感による画質劣化を低減することが可能となる。
100 PC
104 プリンタ
J0008 マスクデータ変換処理
J0010 記録ヘッド
104 プリンタ
J0008 マスクデータ変換処理
J0010 記録ヘッド
Claims (7)
- インクジェット記録装置であって、
記録ヘッドの往復移動を行う移動手段と、
記録媒体の単位領域に対する前記記録ヘッドの往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う制御手段とを具備し、
前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、
前記制御手段は、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインク以外の少なくとも1つのインクが吐出されるべき画素に対して、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも先に吐出される割合が、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記制御手段は、前記単位領域に対する前記記録ヘッドのK(Kは2以上の整数)回の移動のうち、M(Mは整数で、且つ、1≦M<K)回目までの移動で前記最低明度のインクを前記画素に吐出させ、M+1回目以降の移動で前記最低明度のインク以外のインクを前記画素に吐出させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御手段は、前記単位領域に対する前記記録ヘッドのK(Kは2以上の整数)回の移動のうち、M(Mは整数で、且つ、1≦M<K)回目までの移動で前記最低明度のインクを前記画素に吐出させ、L(Lは整数で、且つ1≦L<M)回目以降の移動で前記最低明度のインク以外のインクを画素に吐出させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 前記制御手段は、前記単位領域に対する前記記録ヘッドのK(Kは2以上の整数)回の移動のうち、M(Mは整数で、且つ、1≦M<K)回目までの移動で前記最低明度のインクを前記画素に吐出させ、1回目からK回目までの移動で前記最低明度のインク以外のインクを画素に吐出させることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- インクジェット記録装置であって、
記録ヘッドの往復移動を行う移動手段と、
記録媒体の単位領域に対する前記記録ヘッドの往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う制御手段とを具備し、
前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、
前記制御手段は、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインクよりも明度の高いインクを少なくとも含む第1のインクグループの少なくとも1つのインクと、前記第2のインクグループのインクよりも明度の高い2種類以上のインクを含む第2のインクグループの少なくとも1つのインクとが吐出されるべき画素に対して、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも先に吐出される割合が、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とするインクジェット記録装置。 - インクジェット記録方法であって、
記録媒体の単位領域に対して記録ヘッドを往復移動させる工程と、
前記単位領域に対する往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う工程とを有し、
前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、
前記記録工程では、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインク以外の少なくとも1つのインクが吐出されるべき画素に対して、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも先に吐出される割合が、前記最低明度のインクが前記最低明度のインク以外のインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。 - インクジェット記録方法であって、
記録媒体の単位領域に対して記録ヘッドを往復移動させる工程と、
前記単位領域に対する往復移動の双方向で、前記単位領域を構成する画素に対して記録を行う工程とを有し、
前記記録ヘッドは、前記記録ヘッドの移動方向に沿って配列された複数の吐出口から複数種類のインクを吐出可能であり、
前記記録工程では、前記複数種類のインクの中で最低明度のインクと当該最低明度のインクよりも明度の高いインクを少なくとも含む第1のインクグループの少なくとも1つのインクと、前記第2のインクグループのインクよりも明度の高い2種類以上のインクを含む第2のインクグループの少なくとも1つのインクとが吐出されるべき画素に対して、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも先に吐出される割合が、前記第1のインクグループのインクが前記第2のインクグループのインクよりも後に吐出される割合よりも高くなるように、前記画素に対する記録を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2008133439A JP2009279818A (ja) | 2008-05-21 | 2008-05-21 | インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2009279818A true JP2009279818A (ja) | 2009-12-03 |
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Family Applications (1)
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2008
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