JP2009275274A - マグネシウム合金、およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】常温での加工性に優れ、かつ難燃性および強度の高いマグネシウム合金の製造方法を提供する。
【解決手段】溶体化処理を施したインゴットは、多方向からそれぞれ順に押圧し鍛造される。(多方向鍛造法)。この多方向鍛造法は、図2(a)に示すように、工程Cを経たインゴット10を例えば立方体とした時に、インゴット10に対して互いに直角を成すX軸,Y軸,Z軸の各軸方向から、それぞれ2回以上インゴットを押圧して鍛造する方法である。
【選択図】図2
【解決手段】溶体化処理を施したインゴットは、多方向からそれぞれ順に押圧し鍛造される。(多方向鍛造法)。この多方向鍛造法は、図2(a)に示すように、工程Cを経たインゴット10を例えば立方体とした時に、インゴット10に対して互いに直角を成すX軸,Y軸,Z軸の各軸方向から、それぞれ2回以上インゴットを押圧して鍛造する方法である。
【選択図】図2
Description
本発明は、常温における加工性(「延性」を意味する)に優れたマグネシウム合金、およびその製造方法に関する。
近年、エネルギー・環境問題に対する取り組みの中で、構造用金属材料の中でも最も軽量なマグネシウム合金は、資源エネルギー消費を抑制する材料として、例えば、航空機や自動車等へ適用する試みが近年本格化しつつある。こうしたマグネシウム合金は、従来、比強度などの機械的特性が低いということが課題であったが、組成や組織を工夫することにより、比強度が著しく改善されつつある(例えば、特許文献1、2参照)。
しかしながら、マグネシウム合金は、圧延材特有の集合組織により、常温における加工性が低いという課題があった。このため、延性を低下させるCaを除いた組成とすることにより、23%程度の優れた延性を備えたマグネシウム合金が知られ記載されている(非特許文献1参照)。
一方、Caを含まないマグネシウム合金は、難燃性が劣ることが知られている(非特許文献2、3参照)。難燃性が乏しい場合、例えば、マグネシウム合金の大きな用途として見込まれる自動車や航空機のボディへ適用が困難となる。
特開2003−328063号公報
特開2003−328065号公報
佐藤雅彦、"マグネシウム合金薄板圧延コイルの製造工程と諸特性"、新合金、第54巻 第11号(2004),465−471
Materials Science and Engineering, A181/A182 (1994) 1410−1414
Materials transactions,Vol.45,No.10(2004)pp.3018−3022
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、常温における加工性に優れ、難燃性を備え、強度の高いマグネシウム合金を得ることが可能にする、マグネシウム合金の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、常温における加工性に優れるとともに、難燃性を備え、かつ強度も高いマグネシウム合金を提供することを目的とする
本発明の請求項1に記載のマグネシウム合金の製造方法は、Zn,Al,Ca,Mgを少なくとも含むマグネシウム合金の製造方法であって、原料を溶融して融液を形成する工程Aと、前記融液を鋳型に流し込み、固化させてインゴットを形成する工程Bと、前記インゴットを所定の温度において、その組成を均質化する工程Cと、前記インゴットを少なくとも3方向からそれぞれ順に押圧する多方向鍛造法を用い、第一のマグネシウム合金を形成する工程Dと、を少なくとも順に備えたこと特徴とする。
本発明の請求項2に記載のマグネシウム合金の製造方法は、請求項1において、前記第一のマグネシウム合金を圧延して圧延材を形成する工程Eと、前記圧延材を所定の温度で熱処理して第二のマグネシウム合金を得る工程Fと、を更に備えたことを特徴とする。
本発明の請求項3に記載のマグネシウム合金の製造方法は、請求項1または2において、前記工程Dは、前記インゴットに対して互いに直角を成すX軸,Y軸,Z軸の各軸方向から、それぞれ2回以上押圧することを特徴とする。
本発明の請求項4に記載のマグネシウム合金の製造方法は、1,3,4記載いずれか1項において、前記工程Dにおける前記インゴットの温度T(℃)は、190≦T≦300であることを特徴とする。
本発明の請求項5に記載のマグネシウム合金は、請求項1,3,4記載いずれか1項記載のマグネシウム合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金であって、前記工程Dにより形成された第一のマグネシウム合金は、重量%単位において、5.0<Zn≦8.0,0<Al≦3.0,0.1≦Ca≦1.0,残部Mgから構成されていることを特徴とする。
本発明の請求項6に記載のマグネシウム合金は、請求項2記載のマグネシウム合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金であって、前記工程Fにより形成された第二のマグネシウム合金は、20%以上の延性をもつことを特徴とする。
本発明のマグネシウム合金の製造方法によれば、インゴットを多方向鍛造法で鍛造する(D工程)ことにより、マグネシウム合金の組織が微細化し、常温での延性が20%以上のマグネシウム合金を得ることができる。しかも、常温での延性が20%以上であってもCa添加により難燃性を持ち、比強度が150以上のマグネシウム合金を得ることができる。常温での延性が20%以上であるため、常温でプレス加工が可能となり、冷間プレス加工が可能な優れたマグネシウム合金を得ることが可能になる。
なお、ここで、延性とは、JIS14B号試験片を用いて、JISに規定されている室温での引張り試験方法により得られた破断伸びを指す。
なお、ここで、延性とは、JIS14B号試験片を用いて、JISに規定されている室温での引張り試験方法により得られた破断伸びを指す。
また、本発明のマグネシウム合金によれば、重量%単位において、5.0<Zn≦8.0,0<Al≦3.0,0.1≦Ca≦1.0,残部Mgから構成し、かつ多方向鍛造法を経て形成することにより、延性が20%以上であり、かつCa添加により難燃性を持ち、比強度が高く、冷間プレス加工も可能な、加工性に優れたマグネシウム合金を実現することが可能になる。
以下、本発明に係るマグネシウム合金の製造方法の一実施形態を説明する。なお、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
図1は、本発明におけるマグネシウム合金の製造方法の一例を示すフローチャートである。マグネシウム合金を製造する際には、まず、原料を所定の温度まで加熱して溶融し、融液を形成する(工程A)。ここで言う原料は、Mgを主体として、少なくともZn,Al,Caを含むものである。なお、これらの元素を含む化合物や、Mnなどを更に含んでいても良い。原料の溶融にあたっては、例えば、グラファイトるつぼに原料を入れ、高周波溶融炉を用いて、不活性ガス雰囲気中で750℃以上になるように加熱すれば良い。
次に、A工程によって形成された融液を鋳型に流し込み、冷却して上記原料の混合物であるインゴットを形成する(工程B)。鋳型としては、例えば、円筒状の銅製容器を用いることができる。
続いて、工程Bで得たインゴットを所定の温度にして組成を均質化する(工程C)。合金において、一般に温度が高くなるほど主金属に加える合金元素は溶け込みやすくなる。したがって、合金固有の温度に加熱して急冷すると、低温では析出するはずの合金元素が固溶(溶け込み)したままとなる。工程Cは原料の構成物が低温で析出することを防止するための、いわゆる溶体化処理工程である。工程Cでのインゴットの処理は、例えば、315℃で24時間保持すればよい。
こうして溶体化処理を施したインゴットを多方向からそれぞれ順に押圧し鍛造する(多方向鍛造法:工程D)。この多方向鍛造法は、図2(a)に示すように、工程Cを経たインゴット10を例えば立方体とした時に、インゴット10に対して互いに直角を成すX軸,Y軸,Z軸の各軸方向から、それぞれ2回以上インゴットを押圧して鍛造する方法である。
例えば、図2(b)に示すように、最初にインゴット10のX軸方向に沿ってインゴット10を押圧する。この時、押圧前におけるインゴット10のX軸方向の長さをW1、押圧後のX軸方向の長さをW2としたときに、W2がW1よりも30〜50%程度小さくなるような押圧力でインゴット10を押圧すれば良い。同様に、Y軸方向に沿ってインゴット10を押圧し(図2(c)参照)、更にZ軸方向に沿ってインゴット10を押圧する(図2(d)参照)。
インゴット10に対する押圧は、X軸,Y軸,Z軸の各軸方向から、少なくともそれぞれ2回以上、合計6回行えばよい。更に好ましくは、X軸,Y軸,Z軸の各軸方向からそれぞれ3回以上、加えて任意の2方向から1回づつ、合計11回押圧するのが好ましい。なお、インゴット10に対する押圧方向は、上述したような互いに直角を成すX軸,Y軸,Z軸の各軸方向に限定されるものではなく、例えば、互いに任意の角度で交差する複数の軸方向に沿って、それぞれ任意の回数だけ押圧してもよい。
工程Cにおける多方向鍛造時のインゴットの温度T(℃)は、190≦T≦300の範囲であればよく、より好ましくは220≦T≦280の範囲であればよい。多方向鍛造時のインゴットの温度Tが190℃よりも低いと、インゴットの硬度が高いために押圧した際にインゴットにヒビや割れが生じる懸念がある。一方、インゴットの温度Tが300℃よりも高いと、インゴットの一部が軟化したり溶融したりする懸念がある。
以上のような工程A〜Dを経て、第一のマグネシウム合金を形成する事ができる。このように本発明の製造方法によれば、例えば、室温での延性が20%以上であり、比強度も150(UTS/ρ(MPa/Mg/m3))以上あるなど、冷間プレス加工が可能で、かつ、比強度にも優れたマグネシウム合金を得ることが可能になる。
なお、ここでいう延性とは、JIS14B号試験片を用いて、JISに規定されている室温での引張り試験方法により得られた破断伸びを指す。
次に、本発明に係るマグネシウム合金の製造方法の別な実施形態を説明する。図3は、本発明におけるマグネシウム合金の製造方法の別な一例を示すフローチャートである。この実施形態では、上述した実施形態における工程A〜Dを経て得られた第一のマグネシウム合金に、更に圧延工程と熱処理工程とを施すものである。本実施形態において、図3の工程A〜Dは、既に説明した通りである。
工程Dの多方向鍛造法によって得られた第一のマグネシウム合金は圧延装置で圧延され、圧延材が形成される(工程E)。圧延にあたっては、例えば、第一のマグネシウム合金を厚み10mm程度に切り出し、圧延ロールに複数回通して、厚み1mm程度の圧延材を形成する。この圧延時の圧延温度は、例えば、240℃程度であればよい。
次に、工程Eを経て得られた圧延材を、所定の温度で熱処理し、第二のマグネシウム合金を得る(工程F)。この熱処理工程では、例えば、圧延材を大気中で300〜400℃まで加熱し、0.5〜24時間程度保持すればよい。これにより、圧延によって生じた応力を開放し、圧延材の歪を無くした均質な強度の第二のマグネシウム合金を得る事ができる。
以上のように、工程A〜Dに加えて、更に工程E,Fを経て、第二のマグネシウム合金を形成する事ができる。本発明の製造方法によれば、例えば、室温での延性が20%以上、比強度が150(UTS/ρ(MPa/Mg/m3))以上であり、かつ加工が容易な板状の第二のマグネシウム合金を得ることができる。
次に、上述したマグネシウム合金の製造方法によって得られる本発明のマグネシウム合金について説明する。本発明の第一のマグネシウム合金は、上述した工程A〜Dを経て形成され、その組成は重量%単位において、5.0<Zn≦8.0,0<Al≦3.0,0.1≦Ca≦1.0,残部Mgから構成されている。Zn,Al,Ca,Mgは、例えば、それぞれ99.99%純度の金属を用いれば良い。代表的な合金組成として、例えば、Mg−6%Zn−1%Al−0.5%Caからなるマグネシウム合金が挙げられる。
上述したような組成範囲で、かつ多方向鍛造法(工程D)を経て得られた第一のマグネシウム合金は、例えば、室温での延性が20%以上であり、比強度も150(UTS/ρ(MPa/Mg/m3))以上あるなど、冷間プレス加工が可能で、かつ、比強度にも優れたものとなる。
また、第一のマグネシウム合金は、重量%単位において、0.1≦Ca≦1.0の範囲のCaを含んでいるため、難燃性を備えている。ここで、難燃性とは、対象物を加熱して発火する温度を測定し、従来知られているものの発火点よりも高い温度で発火する性質のことをいう。なお、一般的な難燃性の具体例に関しては、インターネット<http://www.aist.go.jp/aist_j/research/patent/2002/08_2/index.html>(産業技術総合研究所)の図1が挙げられる。
本発明の第二のマグネシウム合金は、上述した工程A〜Dおよび工程E,Fを経て形成され、その組成は重量%単位において、5.0<Zn≦8.0,0<Al≦3.0,0.1≦Ca≦1.0,残部Mgから構成され、少なくとも20%以上の延性を備えている。
このような第二のマグネシウム合金は、産業上用途の広い板材であり、20%以上の延性を備えているので、冷間プレス成形でも割れやヒビが生じることが無い。このため、自動車や航空機のボディに適用すれば、従来の高張力鋼板やアルミニウム合金圧延材等と比較して、大幅に軽量化でき、燃料の消費を大幅に抑制して環境保護に寄与することが可能になる。しかも、Caを含んでいるため難燃性を備えており、自動車や航空機のボディなど、難燃性を必要とされる構成材として利用する事ができる。
本発明の第一のマグネシウム合金と第二のマグネシウム合金の金属組織を示す顕微鏡写真を図4に示す。図4のうち、写真(a)は工程A〜Dを経た第一のマグネシウム合金の組織である。写真(b)は工程Eを経た圧延材の組織である。写真(c)は工程Fにおいて、300℃×0.5時間熱処理を行って得た第二のマグネシウム合金の組織である。写真(d)は工程Fにおいて、300℃×24時間熱処理を行って得た第二のマグネシウム合金の組織である。
また、工程A〜Fのそれぞれの段階における、マグネシウム合金のX線回折パターンを図5示す。
また、工程A〜Fのそれぞれの段階における、マグネシウム合金のX線回折パターンを図5示す。
一方、工程D(多方向鍛造)を行わないマグネシウム合金の金属組織を示す顕微鏡写真を図6に示す。図6のうち、写真(a)は、工程D(多方向鍛造)を行わずに工程Eを経た圧延材の組織である。写真(b)は工程D(多方向鍛造)を行わずに工程Fにおいて、300℃×0.5時間熱処理を行って得たマグネシウム合金の組織である。
また、工程Dを行わない場合の、工程A〜C,E,Fのそれぞれの段階における、マグネシウム合金のX線回折パターンを図7示す。
また、工程Dを行わない場合の、工程A〜C,E,Fのそれぞれの段階における、マグネシウム合金のX線回折パターンを図7示す。
多方向鍛造(工程D)を施した直後の組織(図4写真(a)参照)は、偏析物が2〜3μm程度まで破壊され、結晶粒も鍛造方向に変形して2〜35μm程度にまで微細化していた。この時、図5に示すように(002)底面方向に配向した集合組織はなく、結晶組織は(101)錐面が多いもののランダムな方位であると考えられる。多方向鍛造材を圧延した組織は、動的再結晶によって等軸粒が多く観察され、1〜10μmの微細な結晶組織が観察された。この状態ですでに結晶方位は(002)底面方向に多く配向しており、熱処理によって結晶組織は成長し若干集合組織は減少するが、依然強い配向組織を保っている。熱処理後の結晶粒径は、300℃×0.5h熱処理後(図4写真(c)参照)で6〜21μm、300℃×24h熱処理後(図4写真(d)参照)で3〜28μmとなり、熱処理時間の増加と共に結晶粒が成長していた。
一方、多方向鍛造(工程D)を行わずに圧延(工程E)を施した直後の組織(図6写真(a)参照)は、偏析物が数μm程度に破壊され圧延方向に分散していた。圧延材の結晶組織は1.5〜25μm程度の等軸粒が多く、240℃の圧延温度で動的再結晶により形成されたものであると考えられる。図7に示すように、インゴット(工程B)及び均質化処理材(工程C)は、(002)底面や(101)錐面など結晶方位はランダムになっているが、圧延材(工程E)になると結晶方位が(002)底面に配向した集合組織になっていることがわかる。200〜400℃×0.5hの熱処理では、結晶組織は成長するが、集合組織を解消することは困難である(図6写真(b)参照)。
10 インゴット。
Claims (6)
- Zn,Al,Ca,Mgを少なくとも含むマグネシウム合金の製造方法であって、
原料を溶融して融液を形成する工程Aと、前記融液を鋳型に流し込み、固化させてインゴットを形成する工程Bと、前記インゴットを所定の温度において、その組成を均質化する工程Cと、前記インゴットを少なくとも3方向からそれぞれ順に押圧する多方向鍛造法を用い、第一のマグネシウム合金を形成する工程Dと、を少なくとも順に備えたこと特徴とするマグネシウム合金の製造方法。 - 前記第一のマグネシウム合金を圧延して圧延材を形成する工程Eと、前記圧延材を所定の温度で熱処理して第二のマグネシウム合金を得る工程Fと、を更に備えたことを特徴とする請求項1記載のマグネシウム合金の製造方法。
- 前記工程Dは、前記インゴットに対して互いに直角を成すX軸,Y軸,Z軸の各軸方向から、それぞれ2回以上押圧することを特徴とする請求項1または2記載のマグネシウム合金の製造方法。
- 前記工程Dにおける前記インゴットの温度T(℃)は、190≦T≦300であることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のマグネシウム合金の製造方法。
- 請求項1,3,4記載いずれか1項記載のマグネシウム合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金であって、
前記工程Dにより形成された第一のマグネシウム合金は、重量%単位において、5.0<Zn≦8.0,0<Al≦3.0,0.1≦Ca≦1.0,残部Mgから構成されていることを特徴とするマグネシウム合金。 - 請求項2記載のマグネシウム合金の製造方法によって製造されたマグネシウム合金であって、
前記工程Fにより形成された第二のマグネシウム合金は、20%以上の延性をもつことを特徴とするマグネシウム合金。
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