JP2009274590A - センターピラー補強部材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】当該センターピラー補強部材1を横幅方向に分断した際の断面2次モーメントを、センターピラー補強部材1の縦長方向の各々の位置で2階微分することで得られる2次微係数が、センターピラー補強部材1の縦長方向において「0」となる境界部よりも下側の位置に、軟化部位である強度変質部2が設けられている。
【選択図】図1
Description
しかしながら、センターピラー補強部材の全体を同一材料で構成した場合、構造強度としては、下部に比べて小寸の上部が相対的に弱くなる。このため、衝突で荷重負荷が付与された際、センターピラー補強部材の上部で変形が開始し、この部分が搭乗者の身体に接触する等、好ましくない変形形態となることから、側面の衝突安全性を向上させるうえでの問題となっていた。
また、センターピラー補強部材において、サイドウインドガラスの下端を通るラインであるベルトラインより下方に、凹状に形成された脆弱部を複数設けることにより、下部の強度を上部の強度よりも相対的に弱くすることが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
また、特許文献2、3の何れも、センターピラー補強部材の縦長方向において、板厚に変化を持たせたり、あるいはリブや凹状の脆弱部を設けたりすることで、上部と下部とで異なる強度とする構成のため、材料コストが増加するとともに、加工工程の増加によって全体的な製造コストが増加する等の大きな問題があった。
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[2] 前記強度変質部が、主としてフェライトとパーライトの混合組織に一部ベイナイトを含む軟化組織であり、且つ、当該センターピラー補強部材の縦長方向において前記境界部から上側が、主としてマルテンサイトを含む硬化組織であることを特徴とする上記[1]に記載のセンターピラー補強部材。
[3] 前記強度変質部は、当該センターピラー補強部材の縦長方向において、前記自動車のボディサイドパネルに取り付けられるドアに備えられるドアウエスト補強部材に対応する位置よりも下側の位置に設けられることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のセンターピラー補強部材。
[5] 当該センターピラー補強部材の縦長方向において、前記境界部から上側の位置の引張強度TS1が1200MPa以上とされており、前記強度変質部の引張強度TS2と前記引張強度TS1との比(TS2/TS1)が、次式(TS2/TS1≦0.85)で表される範囲とされていることを特徴とする上記[1]乃至[3]の何れか1項に記載のセンターピラー補強部材。
[6] 当該センターピラー補強部材の縦長方向において、前記2次微係数が「0」となる境界部から上側が、前記境界部よりも下側に比べて小さな断面積に構成されていることを特徴とする上記[1]乃至[5]の何れか1項に記載のセンターピラー補強部材。
[7] 当該センターピラー補強部材は、横壁部と該横壁部の両側端部から延出する縦壁部とからなる断面略ハット型に形成されているとともに、前記縦壁部は、当該センターピラー補強部材に対する荷重負荷方向である、自動車外部からの荷重負荷方向に対して概略平行とされるものであり、前記強度変質部が前記縦壁部に設けられていることを特徴とする上記[1]乃至[6]の何れか1項に記載のセンターピラー補強部材。
[9] 前記焼入れ処理を強制冷却によって行なうことを特徴とする上記[8]に記載のセンターピラー補強部材の製造方法。
また、車体側面における衝突安全性を向上させるためには、ドアやサイドウインドの間に配されるセンターピラー(センターピラー補強部材)の強度向上が必要となる。また、その一方で、側面衝突時にセンターピラーが変形して室内側に折れ曲がった場合、その変形形態によってはセンターピラー補強部材や他の車体部材等が搭乗者に接触し、傷害の原因となるという問題があった。
またさらに、自動車分野においては、低燃費化や炭酸ガス(CO2)の排出量削減を目的として車体の軽量化を進めるニーズが高まっており、高い強度を有し且つ軽量である車体を実現することが求められている。このため、自動車車体の側面に配されるセンターピラー補強部材についても、高強度化及び軽量化の両方を共に満たすことが求められている。
(1)センターピラー補強部材の縦長方向における強度分布を最適化し、衝突後の変形形態を、搭乗者への部材接触を抑制できる形態に制御する、
(2)可能な限り高強度の材料を用いることにより、板厚を薄く低減する、
の2点を見出した。
以下、本発明のセンターピラー補強部材について詳細に説明する。
本発明においては、低強度の軟化部位である強度変質部2を、センターピラー補強部材1の上記した位置に配して設けることにより、例えば、衝突等による過重負荷が付与された際に、センターピラー補強部材1の上部に比べて下部の変形が開始されやすいという作用がある。
まず、センターピラーの高さ方向の位置(Z)毎に、衝突時に加わる曲げの方向の断面2次モーメント(I)を算出する。この断面2次モーメント(I)は、位置(Z)に対して離散的な値となっているので、連続関数となるように近似を行う。このような近似関数としては、実際の分布を表現できるものであれば任意のものを使用できるが、下記一般式(1)に示すような多項式近似が簡便である。従って、まず、下記一般式(1)により、位置(Z)毎の断面2次モーメント(I)を算出する。
なお、後述の製造方法における冷却条件や成分によっては、強度変質部が設けられる縦壁部のほぼ全体がベイナイト組織となる場合もある。このような場合には、強度変質部と他の部位との間で強度差を設けるため、強度変質部の組織を、フェライト−パーライト主体の組織とすることが好ましい。
本発明のセンターピラー補強部材1においては、強度変質部2と、境界部Kから上側の位置との間の硬度又は引張強度の関係を上述のように規定することにより、良好な変形形態が得られ、自動車の側面衝突が発生した場合であっても高い衝突安全性を確保することが可能となる。
これに対し、本発明のセンターピラー補強部材は、上記構成により、図4に示す例のような(鎖線部参照)、境界部Kよりも下部に設けられた強度変質部2を起点として変形する形態となり、搭乗者に対してセンターピラー補強部材1やインナー補強部材90等が接触するのが抑制される。これにより、仮に自動車の側面衝突が発生した場合であっても、搭乗者が傷害を負うのが効果的に防止され、高い衝突安全性を備えたセンターピラー補強部材が実現できる。
また、本発明においては、上記した如何なる鋼板を用いた場合であっても、詳細を後述する製造方法によって強度変質部2を設けることで、上記効果を得ることが可能となる。
また、後述の製造方法において詳述するホットプレス法による成形の際、荷重負荷方向に垂直に位置する横壁部3はパンチの底となり、成形初期段階からの金型との接触が不可避である。従って、横壁部3は、金型による抜熱のために緩冷却とすることが困難であることから、製造上の観点からも、強度変質部2は縦壁部41、42に配置することが好ましい。
しかしながら、インナー補強部材は、一般に縦壁部の高さが低く、強度変質部を設けた場合でも、得られる効果が限られたものになるため、本発明においては、センターピラー補強部材1にのみ強度変質部を設けた構成とすることで、充分に大きな効果が得られる。
本発明に係るセンターピラー補強部材1の製造方法は、センターピラー補強部材1を横幅方向に分断した際の断面2次モーメント(I)を、センターピラー補強部材の縦長方向の各々の位置で2階微分することで得られる2次微係数(f)が、センターピラー補強部材1の縦長方向において「0」となる位置である境界部Kよりも下側の位置に強度変質部2を設けるとともに、鋼板をAc3点から溶融までの温度範囲に加熱した後、次いで、金型を用いて鋼板を成形しながら前記金型の内部で焼入れ処理を行う際、鋼板の少なくとも一部における冷却速度を、その他の部位よりも低速として相対的に緩冷することにより、強度変質部2を軟化部位として形成する方法である。
本発明のセンターピラー補強部材の製造方法は、上記条件によって鋼板を成形加工することにより、強度特性に優れるとともに、側面衝突時の変形形態を適正に制御可能なセンターピラー補強部材1を得ることができる。
(1) 金型内部の一部にセラミックスを埋め込み、この部分のみ熱伝導を遅くする。
(2) 予備成形において凹凸を局所的に設けた鋼板とした後、内部に凹部が設けられた金型を用いて最終成形を行なうことにより、空隙が生じた箇所を緩冷する(鋼板の内、金型に対して密着した部位と空隙を介した部位とでは、熱伝導が10倍以上となることから、空隙を介した部位を強度変質部に形成することが可能)。
(3) 水冷可能な金型を用い、鋼板の内、高強度が必要な部位、つまり、強度変質部を除く部位のみを水冷する。
本実施例においては、下記表1に示すような成分組成の鋼板a〜eを準備し、各サンプルの素材とした。また、下記表1には、これらの鋼板a〜eのオーステナイト単相域となるAc3点の温度も合わせて示した。ホットプレス法を用いて成形加工を行う場合には、成形前にAc3点以上の温度に加熱し、オーステナイト単層とする必要がある。また、焼入れ処理を施した後の鋼板の強度は、主としてC量に依存する。
表1に示す各鋼板を用いて、以下に説明するようなホットプレス法を用いて成形加工を行い、センターピラー補強部材のサンプルを作製した。また、センターピラー補強部材の成形に用いる鋼板としては、板厚が1.8mmのものを使用した。
図6(a)、(b)に示すように、センターピラー補強部材1の縦長方向において100mm間隔で計算した断面2次モーメントは、上部においては大きく、また、下部に向かうに従って大きくなっており、小寸の上部が下部に比べて低強度で折れ曲がりやすいことを示している。また同様に、図6(b)中に、上記断面2次モーメントを位置(縦長方向の座標)で2階微分した2次微係数を示す。図6(b)に示すように、断面2次モーメントの2次微係数が「0」となるのは、下端12から約700mmの位置であり、この部位(境界部K)で、断面2次モーメントの変化率が極値を取っていることが分かる。即ち、この境界部Kが、センターピラー補強部材1の縦長方向において、折れ曲がり易さが最も急峻に変化している部位であることが明らかである。
本実施例において用いたルーフサイドレール及びシルは、全て板厚が3.2mmの590MPa級鋼板(JSH 590Y)を用いて作製した。また、各部材の間は、約50mm間隔のスポット溶接によって接合した。
まず、ルーフサイドレール及びシルの左右端(図1(a)の横幅方向)を治具によって固定した。
次いで、半球状の治具(R=1000mm、125kg)を、その頂点が、図6(a)、(b)に示す座標で高さ500mmに位置するようにした状態で、側方より、速度15m/sでセンターピラー補強部材1側から衝突させた。この際、半球状治具に生じる反力を計測するとともに、センターピラー補強部材の内側に配されるインナー補強部材の稜線に、約100mm間隔で付与したマークの位置を、逐次計測して車内側への侵入量の指標とした。
以下に、本実施例の評価結果について表2及び各図面を適宜参照しながら説明する。
図7のグラフに、鋼板bを用いたサンプルの変形形態を示す。図7のグラフは、強度変質部を持たない比較例であるNo.6のサンプルと、図4(a)、(b)に示す高さにして500〜250mmの位置の縦壁部に強度変質部を設けた本発明例であるNo.10(図3に相当)のサンプルに関し、20msec経過時のインナー補強部材の車内側への侵入量を比較したものである。図7に示すように、No.6のサンプルでは、相対的に断面強度の低くなる上部に変形が集中し、上部(下端から1100mmの位置付近)に部材の折れが発生していた。一方、強度変質部を持つNo.10のサンプルでは、その部位(下端から1100mmの位置付近)が率先的に変形し、エネルギーを吸収していたものと考えられ、その結果として、上部への変形集中が起こらないために折れが発生せず、20msec経過時の部材形状は、No.6のサンプルと比べると、鉛直に近く好ましい形態となった。そして、このような部材鉛直度を評価するため、最上部のマークの20msecでの位置と、下部の各マークの20msecでの位置の水平方向の差をそれぞれ算出し、2乗した上で総和し、その平方根を算出し、鉛直度として表2に示した(mmの次元を持つ数値となる)。もし、各マークの水平方向の位置が同じであれば、この算出値は0となり、衝突後、インナー補強部材の形状が鉛直となっていることを示す。つまり、この鉛直度の数値が小さいほど、センターピラー補強部材として好ましい特性を有していると考えられる。図7に示す衝突後の部材形態に対して鉛直度を求めると、No.10のサンプルでは86、No.6のサンプルでは110と数値化することができる。
Claims (9)
- 自動車のボディサイドパネルの内側に配され、鋼板からなるセンターピラー補強部材であって、
当該センターピラー補強部材を横幅方向に分断した際の断面2次モーメントを、センターピラー補強部材の縦長方向の各々の位置で2階微分することで得られる2次微係数が、センターピラー補強部材の縦長方向において「0」となる境界部よりも下側の位置に、軟化部位である強度変質部が設けられていることを特徴とするセンターピラー補強部材。 - 前記強度変質部が、主としてフェライトとパーライトの混合組織に一部ベイナイトを含む軟化組織であり、且つ、当該センターピラー補強部材の縦長方向において前記境界部から上側が、主としてマルテンサイトを含む硬化組織であることを特徴とする請求項1に記載のセンターピラー補強部材。
- 前記強度変質部は、当該センターピラー補強部材の縦長方向において、前記自動車のボディサイドパネルに取り付けられるドアに備えられるドアウエスト補強部材に対応する位置よりも下側の位置に設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンターピラー補強部材。
- 当該センターピラー補強部材の縦長方向において、前記境界部から上側の位置の硬度H1が400Hv以上とされており、前記強度変質部の硬度H2と前記硬度H1との比(H2/H1)が、次式(H2/H1≦0.85)で表される範囲とされていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のセンターピラー補強部材。
- 当該センターピラー補強部材の縦長方向において、前記境界部から上側の位置の引張強度TS1が1200MPa以上とされており、前記強度変質部の引張強度TS2と前記引張強度TS1との比(TS2/TS1)が、次式(TS2/TS1≦0.85)で表される範囲とされていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のセンターピラー補強部材。
- 当該センターピラー補強部材の縦長方向において、前記2次微係数が「0」となる境界部から上側が、前記境界部よりも下側に比べて小さな断面積に構成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のセンターピラー補強部材。
- 当該センターピラー補強部材は、横壁部と該横壁部の両側端部から延出する縦壁部とからなる断面略ハット型に形成されているとともに、前記縦壁部は、当該センターピラー補強部材に対する荷重負荷方向である、自動車外部からの荷重負荷方向に対して概略平行とされるものであり、前記強度変質部が前記縦壁部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のセンターピラー補強部材。
- 自動車のボディサイドパネルの内側に配され、鋼板からなるセンターピラー補強部材を製造する方法であって、
当該センターピラー補強部材を横幅方向に分断した際の断面2次モーメントを、センターピラー補強部材の縦長方向の各々の位置で2階微分することで得られる2次微係数が、センターピラー補強部材の縦長方向において「0」となる境界部よりも下側の位置に強度変質部を設けるとともに、前記鋼板をAc3点から溶融までの温度範囲に加熱した後、次いで、金型を用いて前記鋼板を成形しながら前記金型の内部で焼入れ処理を行う際、前記鋼板の少なくとも一部における冷却速度を、その他の部位よりも低速として相対的に緩冷することにより、前記強度変質部を軟化部位として形成することを特徴とするセンターピラー補強部材の製造方法。 - 前記焼入れ処理を強制冷却によって行なうことを特徴とする請求項8に記載のセンターピラー補強部材の製造方法。
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