JP2011179028A - 成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、Cが0.08%以上0.45%以下、MnおよびCrの合計が0.5%以上3.0%以下、残部がC、Mn、Cr以外の任意の添加物、Fe、および不可避的不純物である化学組成からなり、Ac3点以上に加熱した鋼板をAr3点以上のプレス開始温度から金型にて成形品にプレス成形する方法であって、プレス成形の下死点における鋼板の第1の部分と第2の部分の下死点保持温度をそれぞれ異なる温度に制御することにより、フェライト又はベイナイト組織の少なくとも一方を主体とする低強度部と、マルテンサイト組織からなる高強度部と、を有する成形品を得ることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
特許文献2には、加熱後の搬送中における搬送装置との局部的な接触抜熱により金属板材の各部位の温度を制御し、金属板材の部位により焼入れ開始温度を異ならせることで成形品の部位ごとに焼入れ硬さを異ならせる熱間プレス方法が開示されている。
特許文献3には、金型にくぼみ部を設け、プレス成形の際にくぼみ部で保持された部分の硬度を冷却速度が速い他の部分の硬度に比べ低くする熱間プレス方法が開示されている。
本発明者らは、熱間プレス成形において、上記課題を解決するために、プレス成形の下死点で成形品を保持する際の保持終了温度(下死点保持温度)と焼入れにより得られる硬度との関係を調査した。
鋼板の化学組成は、以下のように規定する。なお、鋼板の組成を規定する%は質量%を意味する。
Cの含有量は0.08%以上0.45%以下である。Cは、鋼板の焼き入れ性を高め、かつ成形品の強度を決定する重要な元素である。Cの含有量が0.08%未満ではその効果が十分でなく、Cの含有量が0.45%を超えると靭性や溶接性が劣化する虞がある。望ましいCの含有量の上限は0.3%である。なお、Cの含有量が0.2%以上では、焼入れによりHV450以上の硬度を得られる。
MnおよびCrの合計含有量は0.5%以上3.0%以下である。ここで、当該範囲はMn、Crのいずれか一方が0%であってもよいことを含む概念ある。MnおよびCrは鋼板の焼き入れ性を高め、かつ成形品の強度を安定して確保するために有効な元素である。しかし、MnおよびCrの合計含有量が0.5%未満では、その効果は十分でなく、3.0%を超えるとその効果は飽和し、安定した強度確保が困難となる。
焼き入れ性を確保する観点からは上記したC、Mn、およびCrの含有量を確保すればよい。
また、焼き入れ性を高め、靭性を向上させる観点から、Bを0.0002%以上0.01%以下、Niを2%以下、Cuを1%以下、Moを1%以下、Vを1%以下、Tiを1%以下、Nbを1%以下、の一種以上を任意の添加物として含有させることもできる。
上記任意の添加物以外の残部は、Fe、上記C、Mn、Crおよび不可避的不純物である。
上記化学成分を含有する鋼板の表面に亜鉛やアルミニウムのめっき層を形成した亜鉛めっき鋼板やアルミニウムめっき鋼板を用いることもできる。これらのめっき鋼板は、プレス時にスケールが発生せず、事後のスケール除去も不要となる。
はじめに、本実施形態で用いられるプレス金型をハット断面成形用金型10(以下、「金型10」と記載することがある。)を例に説明する。図1は、金型10を模式的に示す斜視図である。図1からわかるように、金型10は上型11と下型12を備える。
上型11は、成形品の高強度部に対応する部分を成形する高強度部上型11a、および低強度部に対応する部分を成形する低強度部上型11bを備えている。ここで、高強度部上型11aおよび低強度部上型11bは個別に昇降可能とされている。具体的には、高強度部上型11aは、ダブルアクションプレス(複動プレス)1のアウタスライド2に取り付けられ、低強度部上型11bはインナースライド3に取り付けられる。
同様に、下型12も成形品の高強度部に対応する部分を成形する高強度部下型12a、および低強度部に対応する部分を成形する低強度部下型12bを備え、これらはそれぞれ分割され、ベースに固定して取り付けられる。
一方、低強度部上型11b及び低強度部下型12bにも上記熱間工具鋼を用いることもできるが、低強度部下型は、高強度部下型に比べ熱伝導率が低い材質、例えばセラミックスを用いるのが望ましい。なお、低強度部下型の表面に低熱伝導率材を取り付けてもよい。
また、金型10は下型を2分割した例であるが、必ずしも分割する必要はない。また、上記金型10では、低強度部下型12bとして、低熱伝導率材を用いたが、金型表層に加熱ヒータを取り付けた構造の金型を用いることもできる。
さらに、上記例はダブルアクションプレス1に金型10を取り付けた場合であるが、プレス機とは別体の圧縮空気や油圧などの動力源を用いて金型を昇降させても良い。
<加熱>
鋼板はAc3点以上の温度に加熱される。Ac3点以上の温度に加熱された鋼板はオーステナイト単相となる。オーステナイト化をより確実なものとするために加熱温度は(Ac3+20)℃以上にすることが望ましい。一方、加熱温度が高温すぎると省エネルギーの面で問題がある他、結晶粒径が過大となり焼入れ後の特性が悪化するという問題、および裸材の場合には過剰なスケールの発生も懸念される。従って、(Ac3+120)℃以下とすることが望ましい。加熱時間については十分なオーステナイト化を行うためにAc3以上の温度で60秒間以上保持するのが望ましい。ただし、生産性の観点から、Ac3以上の保持時間は10分以下とすることが望ましい。
上記温度域に加熱することができれば加熱方法は特に限定しない。ただし鋼板にめっき鋼板を用いる場合にはめっきが消失する懸念があるため、通電加熱のような急速加熱は適さない。裸材を用いる場合にはスケール防止のために酸素濃度の低い状態に雰囲気制御された炉を用いることが望ましい。
オーステナイト単相域まで加熱された鋼板は速やかに金型に搬送され、フェライトまたはベイナイトへの変態が開始するAr3点以上の温度(図2のTp)から金型10にてプレスが開始され、所定の形状に成形される(プレス成形、プレス下降)。そして、下死点で保持されるとともに金型で急速に冷却されて焼入れされる。図3には、下死点におけるプレスの状態を模式的に示した。プレス成形では、図3に示すように、下型12に対して高強度部上型11aと低強度部上型11bとが一体として下降し、鋼板8はストローク下死点にて上下金型により挟まれるように保持される。
ここで、第1の部分8bの下死点保持温度T1はMs点より高いことが好ましい。これがMs点以下となると、マルテンサイト変態が開始し、硬質相が生じるので、低い硬度を安定して得ることが困難となる。下死点保持温度T1の上限値は特に限定されないが、実用上は750℃程度である。
また、第2の部分8aの下死点保持温度T2が(Ms−120)℃を超えると、オーステナイトからマルテンサイトへの変態が不完全となり、十分に高い硬度が安定して得られない。下死点保持温度T2の下限値は特に規定しないが、生産性の低下抑制の観点から200℃とするのが望ましい。
第2の部分8aの下死点保持温度T2が(Ms−120℃)以下の温度に到達後、金型10から成形品を取り出し、速やかに図6に示すように、成形品のフランジや側壁などの主要部位をクランプのような拘束治具20、20、…で200℃未満になるまで拘束することが望ましい。これにより冷却に伴う変形が抑制されるため高い寸法精度を確保することができる。なお、形状拘束の手段としては搬送用パレットにクランプ機構が設けられたものなどとすることができ、冷却に伴う形状変化を抑制できれば特にその形態は問わない。また、低強度部8bについてはクランプ機構との接触抜熱により局部的に硬度上昇することがないよう、成形品と接触する部位には熱伝導率の低い素材を用いることが望ましい。
鋼板は、質量%でCを0.21%、Siを0.25%、Mnを1.20%、およびBを0.0014%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、板厚1.2mm、長さ300mm、幅80mmのものを用いた。
10 金型
11 上型
11a 高強度部上型
11b 低強度部上型
12 下型
12a 高強度部下型
12b 低強度部下型
20 拘束治具
Claims (4)
- 質量%で、Cが0.08%以上0.45%以下、MnおよびCrの合計が0.5%以上3.0%以下、残部が前記C、Mn、Cr以外の任意の添加物、Fe、および不可避的不純物である化学組成からなり、Ac3点以上に加熱した鋼板をAr3点以上のプレス開始温度から金型にてプレス成形して成形品を得る成形品の製造方法であって、
前記プレス成形の下死点における前記鋼板の第1の部分と第2の部分の下死点保持温度をそれぞれ異なる温度に制御することにより、フェライト又はベイナイト組織の少なくとも一方を主体とする低強度部と、マルテンサイト組織からなる高強度部と、を有する成形品を得る工程を含むことを特徴とする成形品の製造方法。 - 前記第1の部分は、下死点保持温度がMs点以上で、下死点保持終了後の冷却速度が臨界冷却速度未満であり、前記第2の部分は、下死点保持温度が(Ms−120℃)以下で、プレス成形開始から下死点保持終了までの冷却速度が前記鋼板の臨界冷却速度以上である請求項1に記載の成形品の製造方法。
- 前記金型を構成する上型又は下型の少なくともいずれか一方は、複数に分割され、かつそれぞれが独立に昇降可能である請求項1または2に記載の成形品の製造方法。
- 前記高強度部の硬度がHV420以上、前記低強度部の硬度がHV300以下である請求項1から3のいずれか1項に記載の成形品の製造方法。
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