JP2009274554A - ハイブリッド車およびその制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】内燃機関と、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸とに接続された電力動力入出力装置と、駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、を備えるハイブリッド車において、内燃機関のより適正な停止と燃費の向上との両立を図る。
【解決手段】エンジンを運転停止する条件が成立したときに、エコスイッチがオフのときには(S300)、第2モータから出力しているトルクとしての前回Tm2*と車速Vとに基づいてギヤのガタ詰めによる歯打ち音により運転者に違和感を与えない範囲内で第1モータからの回転低下用トルクの出力を伴ってエンジンの運転を停止し(S310,S320,S340)、エコスイッチがオンのときには(S300)、第2モータから出力しているトルクや車速Vに拘わらずにエンジンを運転停止する(S340)。これにより、エンジンのより適正な停止と燃費の向上との両立を図ることができる。
【選択図】図6

Description

本発明は、ハイブリッド車およびその制御方法に関する。
従来、この種の車両としては、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立したときにエンジンを再始動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、シフトレバーが走行レンジであるか非走行レンジであるかによって所定の自動停止条件の一部を変更するものとしている。
特開2004−197638号公報
ところで、エンジンと、車軸に連結された駆動軸とエンジンの出力軸とに接続された電力動力入出力装置と、駆動軸に動力を入出力可能な電動機とを備え、エンジンの間欠運転を伴って走行可能なハイブリッド車では、エンジンの運転を停止する条件が成立したときにギヤ機構での歯打ち音により運転者に違和感を与えない範囲内でエンジンを迅速に停止する制御を行なうものがある。また、こうしたハイブリッド車では、運転者によって動力性能より燃費の優先を指示可能なスイッチを備えるものもある。このため、運転者に違和感を与えない範囲内でのエンジンの迅速な運転停止と燃費の向上との両立を図ることが望まれる。
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、内燃機関と、車軸に連結された駆動軸と内燃機関の出力軸とに接続された電力動力入出力装置と、駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、を備えるハイブリッド車において、内燃機関のより適正な停止と燃費の向上との両立を図ることを主目的とする。
本発明のハイブリッド車およびその制御方法は、少なくとも上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
本発明のハイブリッド車は、
内燃機関と、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記内燃機関の運転を停止する所定の自動停止条件が成立したときには、前記内燃機関の回転数を低下させるトルクが前記電力動力入出力手段から出力されると共に該電力動力入出力手段のトルクの出力に伴って前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクと走行に要求される要求トルクとの和のトルクが前記電動機から出力されて前記内燃機関の運転が停止されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する停止時制御を実行する制御手段と、を備えるハイブリッド車であって、
燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチを備え、
前記制御手段は、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが値0以上の所定トルク範囲外のときには前記停止時制御を実行し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが前記所定トルク範囲内のときには前記内燃機関の運転を停止せずに該内燃機関の運転を継続して前記要求トルクが出力されて走行するよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記電動機から出力しているトルクに拘わらずに前記停止時制御を実行する手段である、
ことを要旨とする。
この本発明のハイブリッド車では、内燃機関の運転を停止する所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ電動機から出力しているトルクが値0以上の所定トルク範囲外のときには内燃機関の回転数を低下させるトルクが電力動力入出力手段から出力されると共に電力動力入出力手段のトルクの出力に伴って駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクと走行に要求される要求トルクとの和のトルクが電動機から出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する停止時制御を実行し、所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ電動機から出力しているトルクが所定トルク範囲内のときには内燃機関の運転を停止せずに内燃機関の運転を継続して要求トルクが出力されて走行するよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。これにより、所定トルク範囲をより適正な範囲とすれば、内燃機関をより適正かつ比較的迅速に停止することができる。 また、所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには電動機から出力しているトルクに拘わらずに停止時制御を実行する。これにより、燃費の向上を図ることができる。この結果、内燃機関のより適正な停止と燃費の向上との両立を図ることができる。ここで、「所定トルク範囲」としては、停止時制御を実行すると電動機から出力するトルクの正負が反転するトルク範囲などが含まれる。また、「所定の自動停止条件」としては、内燃機関に要求されるパワーが閾値未満となる条件などが含まれる。
こうした本発明のハイブリッド車において、前記制御手段は、前記内燃機関の運転を停止する際に前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが値0以上の前記所定トルク範囲内のときであっても、車速が所定車速未満のときには前記停止時制御を実行する手段であるものとすることもできる。こうすれば、車速が所定車速以上のときには、燃費優先の指示や電動機から出力しているトルクに拘わらずに停止時制御を実行することができる。
また、本発明のハイブリッド車において、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であるものとすることもできる。
本発明のハイブリッド車の制御方法は、
内燃機関と、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチと、を備えるハイブリッド車において、前記内燃機関の運転を停止する所定の自動停止条件が成立したときには、前記内燃機関の回転数を低下させるトルクが前記電力動力入出力手段から出力されると共に該電力動力入出力手段のトルクの出力に伴って前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクと走行に要求される要求トルクとの和のトルクが前記電動機から出力されて前記内燃機関の運転が停止されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する停止時制御を実行する、ハイブリッド車の制御方法であって、
前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが値0以上の所定トルク範囲外のときには前記停止時制御を実行し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが前記所定トルク範囲内のときには前記内燃機関の運転を停止せずに該内燃機関の運転を継続して前記要求トルクが出力されて走行するよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記電動機から出力しているトルクに拘わらずに前記停止時制御を実行する、
ことを特徴とする。
この本発明のハイブリッド車の制御方法では、内燃機関の運転を停止する所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ電動機から出力しているトルクが値0以上の所定トルク範囲外のときには内燃機関の回転数を低下させるトルクが電力動力入出力手段から出力されると共に電力動力入出力手段のトルクの出力に伴って駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクと走行に要求される要求トルクとの和のトルクが電動機から出力されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する停止時制御を実行し、所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ電動機から出力しているトルクが所定トルク範囲内のときには内燃機関の運転を停止せずに内燃機関の運転を継続して要求トルクが出力されて走行するよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する。これにより、所定トルク範囲をより適正な範囲とすれば、内燃機関をより適正かつ比較的迅速に停止することができる。 また、所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには電動機から出力しているトルクに拘わらずに停止時制御を実行する。これにより、燃費の向上を図ることができる。この結果、内燃機関のより適正な停止と燃費の向上との両立を図ることができる。ここで、「所定トルク範囲」としては、停止時制御を実行すると電動機から出力するトルクの正負が反転するトルク範囲などが含まれる。また、「所定の自動停止条件」としては、内燃機関に要求されるパワーが閾値未満となる条件などが含まれる。
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、駆動輪63a,63bや図示しない従動輪のブレーキを制御するためのブレーキアクチュエータ92と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエ
ンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量SOCを演算したり、演算した残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキペダル85の踏み込みに応じて生じるブレーキマスターシリンダ90の圧力(ブレーキ圧)と車速とにより車両に作用させる制動力におけるブレーキの分担分に応じた制動トルクが駆動輪63a,63bや図示しない従動輪に作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したり、ブレーキペダル85の踏み込みに無関係に、駆動輪63a,63bや従動輪に制動トルクが作用するようブレーキホイールシリンダ96a〜96dの油圧を調整したりすることができるように構成されている。ブレーキアクチュエータ92は、ブレーキ用電子制御ユニット(以
下、ブレーキECUという)94により制御されている。ブレーキECU94は、駆動輪63a,63bや従動輪に取り付けられた図示しない車輪速センサからの各車輪速,図示しない操舵角センサからの操舵角などの信号を入力して、運転者がブレーキペダル85を踏み込んだときに駆動輪63a,63bや従動輪のいずれかがロックによりスリップするのを防止するアンチロックブレーキシステム機能(ABS)や運転者がアクセルペダル83を踏み込んだときに駆動輪63a,63bのいずれかが空転によりスリップするのを防止するトラクションコントロール(TRC),車両が旋回走行しているときに姿勢を保持する姿勢保持制御(VSC)なども行なう。ブレーキECU94は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってブレーキアクチュエータ92を駆動制御したり、各車輪速に関する信号や必要に応じてブレーキアクチュエータ92の状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,車両の燃費を優先する旨を指示するエコスイッチ89からのエコスイッチ信号ESWなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52,ブレーキECU94と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。ここで、トルク変換運転モードは、充放電運転モードのうちバッテリ50の充放電が行なわれない状態であるから、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特にエンジン22の運転を停止する際の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accやブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,エコスイッチ89からのエコスイッチ信号ESW,エンジン22の回転数Ne,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の残容量SOC,バッテリ50の入出力制限Win,Woutなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、エンジン22の回転数Neは図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいて演算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。さらに、バッテリ50の残容量SOCは、図示しない電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて演算されたものを、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量SOCとに基づいて設定されたものを、それぞれバッテリECU52から通信により入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度AccとブレーキペダルポジションBPと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図3に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
続いて、設定したエンジン22の要求パワーPe*を閾値Prefと比較し(ステップS120)、要求パワーPe*が閾値Pref以上のときには、前述のエンジン運転モードで走行すると判断し、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS200)。ここで、閾値Prefは、エンジン22を比較的効率よく運転することができるパワー領域の下限値近傍の値を用いるものとした。また、目標回転数Ne*と目標トルクTe*との設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図4に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
次に、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS210)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図5に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
こうしてモータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと計算したモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および式(4)により計算すると共に(ステップS220)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを式(5)により計算し(ステップS230)、計算したトルク制限Tmin,Tmaxで仮トルクTm2tmpを制限した値としてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS240)。ここで、式(5)は、前述した図5の共線図から容易に導き出すことができる。
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (5)
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、ブレーキホイールシリンダ96a〜96dを介して駆動輪63a,63bや従動輪に作用させるべき制動力のリングギヤ軸32aに相当する制動トルクとして、モータMG2のトルク指令Tm2*と減速ギヤ35のギヤ比Grとの積を要求トルクTr*から減じたものをブレーキトルク指令Tb*に設定し(ステップS250)、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に、ブレーキトルク指令Tb*についてはブレーキECU94にそれぞれ送信して(ステップS260)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。ブレーキトルク指令Tb*を受信したブレーキECU94は、リングギヤ軸32aにブレーキトルク指令Tb*に相当する制動トルクが作用するようブレーキアクチュエータ92を制御して駆動輪63a,63bや従動輪に制動力を作用させる。こうした制御により、エンジン運転モードでは、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
ステップS120でエンジン22の要求パワーPe*が閾値Pref未満のときには、入力したバッテリ50の残容量SOCを閾値Srefと比較すると共に(ステップS130)、エンジン停止禁止フラグFを設定し(ステップS140)、設定したエンジン停止禁止フラグFを調べる(ステップS150)。ここで、閾値Srefは、エンジン22を始動するために必要な電力量に相当する残容量より若干大きな値を用いるものとした。また、エンジン停止禁止フラグFは、図6に例示するエンジン停止禁止フラグ設定処理により、エンジン22の停止を許可するときに値0が設定され、エンジン22の停止を禁止するときに値1が設定される。エンジン停止禁止フラグ設定処理については、説明の都合上、後述する。
バッテリ50の残容量SOCが閾値Sref未満のときや残容量SOCが閾値Sref以上でエンジン停止禁止フラグFが停止禁止を示す値1のときには、エンジン運転モードで走行すると判断し、ステップS200以降の処理を実行して、駆動制御ルーチンを終了する。
一方、バッテリ50の残容量SOCが閾値Sref以上でエンジン停止禁止フラグFが停止許可を示す値0のときには、前述のモータ運転モードで走行すると判断し、エンジン22が停止されるようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*に値0を設定すると共に(ステップS160)、入力したエンジン22の回転数Neを停止直前回転数Nrefと比較し(ステップS170)、回転数Neが停止直前回転数Nref以上のときには、エンジン22の回転数Neを低下させるための回転低下用トルクT1をモータMG1のトルク指令Tm1*に設定し(ステップS180)、設定した値0のトルク指令Tm1*を用いてステップS220以降の処理を実行して、駆動制御ルーチンを終了する。ここで、回転低下用トルクT1は、エンジン22の回転数Neを迅速かつスムーズに低下させるためにモータMG1から出力すべき負側のトルクとして、予め実験等により定めたものを用いることができる。また、停止直前回転数Nrefは、モータMG1から回転低下用トルクT1を出力してエンジン22の回転数Neを低下させる状態を継続したときにエンジン22を逆回転させることなく回転停止することができる回転数Neの下限値より若干大きな値として、予め実験等により定めたもの(例えば、300rpmや400rpmなど)を用いることができる。値0の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御などの制御が行なわれているときにはこれらの制御を停止する。図7に、エンジン22の運転を停止する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示し、図8に、時間t1から時間t2に亘ってモータMG1から回転低下用トルクT1を出力しながらエンジン22の運転を停止する際の、エンジン22の回転数NeとモータMG1のトルク指令Tm1*とモータMG2のトルク指令Tm2*との時間変化の様子を示す。図7に示すように、モータMG1から回転低下用トルクT1を出力すると、動力分配統合機構30を介してリングギヤ軸32aにトルク(−Tm1/ρ)が作用するため、ステップS230の処理により、このトルクをキャンセルするトルクと要求トルクTr*との和のトルク(Tr*+Tm1/ρ)が基本的にはモータMG2から出力される。
ステップS170でエンジン22の回転数Neが停止直前回転数Nref未満のときには、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS190)、ステップS220以降の処理を実行して、駆動制御ルーチンを終了する。こうした制御により、エンジン22を運転停止する条件(エンジン22の要求パワーPe*が閾値Pref未満となると共にバッテリ50の残容量SOCが閾値Sref以上となる条件)が成立したとき、即ち、エンジン運転モードからモータ運転モードに移行する際には、モータMG1から回転低下用トルクT1を出力してエンジン22を迅速かつスムーズに停止させると共に、回転低下用トルクT1によりリングギヤ軸32aに作用するトルクをモータMG2によりキャンセルしながら、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。また、エンジン22の回転数Neが値0に至った以降のモータ運転モードでは、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2からリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。以上、駆動制御について説明した。
次に、エンジン停止禁止フラグ設定処理について説明する。図6のエンジン停止禁止フラグ設定処理では、エコスイッチ信号ESWのオンオフを判定すると共に(ステップS310)、モータMG2から出力しているトルクとして駆動制御ルーチンを前回実行したときに設定したモータMG2のトルク指令(前回Tm2*)と車速Vとに基づいて、モータMG1からの回転低下用トルクT1の出力を伴ってエンジン22の運転を停止してもよいか否かを判定する(ステップS310,S320)。エンジン22を運転停止してもよいか否かの判定は、具体的には、モータMG2の前回Tm2*が値0より大きく閾値Tref未満のトルク範囲にあるか否かの判定と(ステップS310)、車速Vが閾値Vref未満であるか否かの判定と(ステップS320)、により行なわれる。ここで、閾値Trefは、エンジン22の運転停止に際してモータMG1からの回転低下用トルクT1によりリングギヤ軸32aに作用するトルクをモータMG2でキャンセルしたときに、モータMG2から出力しているトルクが正側から負側に反転するか否かを判断するためのものであり、回転低下用トルクT1と動力分配統合機構30のギヤ比ρと減速ギヤ35のギヤ比Grとを用いて計算されるトルク(−T1/ρ・Gr)やこれより若干大きなトルクなどを用いることができる。これは、例示した共線図が図5から図7の状態に変化したときのように、モータMG2から出力しているトルクの正負が反転すると、動力分配統合機構30や減速ギヤ35などのギヤの隙間を詰めるガタ詰めにより歯打ち音が生じて運転者に違和感を与える場合があることに基づく。また、閾値Vrefは、エンジン22の停止時に生じ得る歯打ち音が走行に伴う騒音によりマスクされる程に高い車速で走行しているか否かを判断するためのものであり、予め実験等により求めた値を用いることができる。なお、閾値Trefについても、エンジン22の停止時にギヤのガタ詰めによる歯打ち音により違和感を与えることのない正側のトルクの下限値として予め実験等により求めたものを用いるものとしてもよい。
エコスイッチ信号ESWがオフのときであって、モータMG2の前回Tm2*が値0より大きく閾値Tref未満のトルク範囲で車速Vが閾値Vref未満のときには、エンジン22の停止時に運転者に違和感を与え得るため、エンジン22を運転停止すべきでない判断して、エンジン停止禁止フラグFに停止禁止を示す値1を設定し(ステップS330)、エコスイッチ信号ESWがオフのときであって、モータMG2の前回Tm2*が値0以下または閾値Tref以上のときや車速Vが閾値Vref以上のときには、エンジン22を運転停止してもよいと判断して、エンジン停止禁止フラグFに停止許可を示す値0を設定し(ステップS340)、エンジン停止禁止フラグ設定処理を終了する。こうして設定されたエンジン停止禁止フラグFを用いて前述した駆動制御を行なうことにより、エンジン22を運転停止する条件が成立したときに、エコスイッチ89がオフのときには、モータMG2から出力しているトルクとしての前回Tm2*や車速Vに基づいて運転者に違和感を与えない範囲内でモータMG1からの回転低下用トルクT1の出力を伴ってエンジン22の運転を停止するから、エンジン22の停止をより適正に行なうことができる。一方、ステップS300でエコスイッチ信号ESWがオンのときには、エンジン停止禁止フラグFに停止許可を示す値0を設定して(ステップS340)、エンジン停止禁止フラグ設定処理を終了する。こうして設定されたエンジン停止禁止フラグFを用いて前述した駆動制御を行なうことにより、エンジン22を運転停止する条件が成立したときに、エコスイッチ89がオンのときには、モータMGから出力しているトルクとしての前回Tm2*や車速Vに拘わらずにエンジン22を停止するから、燃費の向上を図ることができる。この結果、エンジン22のより適正な停止を燃費の向上との両立を図ることができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、エンジン22を運転停止する条件が成立したときに、エコスイッチ89がオフのときには、モータMG2から出力しているトルクとしての前回Tm2*と車速Vとに基づいてギヤのガタ詰めによる歯打ち音により運転者に違和感を与えない範囲内でモータMG1からの回転低下用トルクT1の出力を伴ってエンジン22の運転を停止し、エコスイッチ89がオンのときには、モータMG2の前回Tm2*や車速Vに拘わらずにエンジン22を運転停止するから、エンジン22のより適正な停止と燃費の向上との両立を図ることができる。また、エンジン22を停止する際にモータMG1から回転低下用トルクT1を出力するから、エンジン22を迅速かつスムーズに停止させることができる。もとより、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、エコスイッチ信号ESWがオフのときには、モータMG2の前回Tm2*の判定と車速Vの判定とによりエンジン停止禁止フラグFを設定するものとしたが、車速Vの判定を行なわず、モータMG2の前回Tm2*の判定のみによりエンジン停止禁止フラグFを設定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン停止禁止フラグFを設定するためのモータMG2の前回Tm2*が、値0より大きく閾値Tref未満のトルク範囲にあるか否かを判定するものとしたが、値0以上閾値Tref未満のトルク範囲にあるか否かを判定するものとしてもよい。これは、モータMG2から出力しているトルクが値0のときにもギヤのガタ詰めが生じる場合があるためである。
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図9の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図9における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図10の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の列車などのハイブリッド車やハイブリッド車の制御方法の形態としてもよい。
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、動力分配統合機構30とモータMG1とが「電力動力入出力手段」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、エコスイッチ89が「燃費優先指示スイッチ」に相当し、エンジン22を運転停止する条件が成立したときにエコスイッチ信号ESWがオフのときにモータMG2の前回Tm2*が値0より大きく閾値Tref未満の所定のトルク範囲にないときや車速Vが閾値Vref以上のときにはエンジン停止禁止フラグFに停止許可を示す値0を設定しエコスイッチ信号ESWがオフのときにモータMG2の前回Tm2*が所定のトルク範囲で車速Vが閾値Vref未満のときにはエンジン停止禁止フラグFに停止禁止を示す値1を設定しエコスイッチ信号ESWがオンのときには前回Tm2*や車速Vに拘わらずにエンジン停止禁止フラグFに停止許可を示す値0を設定する図6のエンジン停止禁止フラグ設定処理を実行すると共に、エンジン22の要求パワーPe*とバッテリ50の残容量SOCとに基づく判定結果によりエンジン22を運転停止する条件が成立したときにエンジン停止禁止フラグFが値1のときにはエンジン運転モードでバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定しエンジン停止禁止フラグFが値0のときにはモータMG1からの回転低下用トルクT1の出力を伴ってエンジン22を停止すると共に回転低下用トルクT1によりリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするトルクと要求トルクTr*との和のトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2から出力して走行するようエンジン22の値0の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1の回転低下用トルクT1としてのトルク指令Tm1*とモータMG2のトルク指令Tm2*とを設定して各設定値をエンジンECU24やモータECU40に送信する図2の駆動制御ルーチンのステップS150〜S260の処理を実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御するエンジンECU24と、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。また、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、対ロータ電動機230も「電力動力入出力手段」に相当する。
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電力動力入出力手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に駆動軸とは独立に回転可能に内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って出力軸と駆動軸とに動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、駆動軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電力動力入出力手段および電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「燃費優先指示スイッチ」としては、エコスイッチ89に限定されるものではなく、燃費の優先を指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、エンジン22を運転停止する条件が成立したときにエコスイッチ信号ESWがオフのときにモータMG2の前回Tm2*が値0より大きく閾値Tref未満の所定のトルク範囲にないときや車速Vが閾値Vref以上のときにはエンジン停止禁止フラグFに停止許可を示す値0を設定しエコスイッチ信号ESWがオフのときにモータMG2の前回Tm2*が所定のトルク範囲で車速Vが閾値Vref未満のときにはエンジン停止禁止フラグFに停止禁止を示す値1を設定しエコスイッチ信号ESWがオンのときには前回Tm2*や車速Vに拘わらずにエンジン停止禁止フラグFに停止許可を示す値0を設定する図6のエンジン停止禁止フラグ設定処理を実行すると共に、エンジン22の要求パワーPe*とバッテリ50の残容量SOCとに基づく判定結果によりエンジン22を運転停止する条件が成立したときにエンジン停止禁止フラグFが値1のときにはエンジン運転モードでバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定しエンジン停止禁止フラグFが値0のときにはモータMG1からの回転低下用トルクT1の出力を伴ってエンジン22を停止すると共に回転低下用トルクT1によりリングギヤ軸32aに作用するトルクをキャンセルするトルクと要求トルクTr*との和のトルクをバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2から出力して走行するようエンジン22の値0の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1の回転低下用トルクT1としてのトルク指令Tm1*とモータMG2のトルク指令Tm2*とを設定し設定した目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御したり設定したトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、内燃機関の運転を停止する所定の自動停止条件が成立したときには、内燃機関の回転数を低下させるトルクが電力動力入出力手段から出力されると共に電力動力入出力手段のトルクの出力に伴って駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクと走行に要求される要求トルクとの和のトルクが電動機から出力されて内燃機関が停止されるよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御する停止時制御を実行したり、所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ電動機から出力しているトルクが値0以上の所定トルク範囲外のときには停止時制御を実行し、所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ電動機から出力しているトルクが所定トルク範囲内のときには内燃機関の運転を停止せずに内燃機関の運転を継続して要求トルクが出力されて走行するよう内燃機関と電力動力入出力手段と電動機とを制御し、所定の自動停止条件が成立したときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには電動機から出力しているトルクに拘わらずに停止時制御を実行するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。 要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。 エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。 エンジン22を運転して走行しているときの動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。 実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止禁止フラグ設定処理の一例を示すフローチャートである。 エンジン22の運転を停止する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。 エンジン22の運転を停止する際のエンジン22の回転数NeとモータMG1のトルク指令Tm1*とモータMG2のトルク指令Tm2*との時間変化の様子を示す説明図である。 変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。 変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
符号の説明
20,120,220 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 エコスイッチ、90 ブレーキマスターシリンダ、92 ブレーキアクチュエータ、94 ブレーキ用電子制御ユニット(ブレーキECU)、96a〜96d ブレーキホイールシリンダ、98a〜98d 車輪速センサ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、MG1,MG2 モータ。

Claims (5)

  1. 内燃機関と、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、前記内燃機関の運転を停止する所定の自動停止条件が成立したときには、前記内燃機関の回転数を低下させるトルクが前記電力動力入出力手段から出力されると共に該電力動力入出力手段のトルクの出力に伴って前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクと走行に要求される要求トルクとの和のトルクが前記電動機から出力されて前記内燃機関の運転が停止されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する停止時制御を実行する制御手段と、を備えるハイブリッド車であって、
    燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチを備え、
    前記制御手段は、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが値0以上の所定トルク範囲外のときには前記停止時制御を実行し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが前記所定トルク範囲内のときには前記内燃機関の運転を停止せずに該内燃機関の運転を継続して前記要求トルクが出力されて走行するよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記電動機から出力しているトルクに拘わらずに前記停止時制御を実行する手段である、
    ハイブリッド車。
  2. 前記制御手段は、前記所定トルク範囲として前記停止時制御を実行すると前記電動機から出力するトルクの正負が反転するトルク範囲を用いて制御する手段である請求項1記載のハイブリッド車。
  3. 前記制御手段は、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが値0以上の前記所定トルク範囲内のときであっても、車速が所定車速以上のときには前記停止時制御を実行する手段である請求項1または2記載のハイブリッド車。
  4. 前記電力動力入出力手段は、動力を入出力する発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段である請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載のハイブリッド車。
  5. 内燃機関と、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され電力と動力の入出力を伴って前記駆動軸と前記出力軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段と、前記駆動軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチと、を備えるハイブリッド車において、前記内燃機関の運転を停止する所定の自動停止条件が成立したときには、前記内燃機関の回転数を低下させるトルクが前記電力動力入出力手段から出力されると共に該電力動力入出力手段のトルクの出力に伴って前記駆動軸に作用するトルクをキャンセルするためのトルクと走行に要求される要求トルクとの和のトルクが前記電動機から出力されて前記内燃機関の運転が停止されるよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御する停止時制御を実行する、ハイブリッド車の制御方法であって、
    前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが値0以上の所定トルク範囲外のときには前記停止時制御を実行し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されておらず且つ前記電動機から出力しているトルクが前記所定トルク範囲内のときには前記内燃機関の運転を停止せずに該内燃機関の運転を継続して前記要求トルクが出力されて走行するよう前記内燃機関と前記電力動力入出力手段と前記電動機とを制御し、前記所定の自動停止条件が成立したときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記電動機から出力しているトルクに拘わらずに前記停止時制御を実行する、
    ことを特徴とするハイブリッド車の制御方法。
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