JP2009270546A - 内燃機関の油中希釈燃料分離装置 - Google Patents

内燃機関の油中希釈燃料分離装置 Download PDF

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Abstract

【課題】内燃機関の潤滑オイル中に含まれる燃料をオイルの劣化を抑制して効率良く分離することができる内燃機関の油中希釈燃料分離装置を提供する。
【解決手段】本油中希釈燃料分離装置20は、内燃機関の潤滑オイルを加熱する加熱手段(下部排気管)23と、加熱手段により加熱される潤滑オイルを貯留する第1室21、及び加熱手段により加熱された潤滑オイルを導入し得るように第1室から区画された第2室22が設けられたオイル貯留部(オイルパン)17と、内燃機関の本体内に設けられ且つ内燃機関の被潤滑部のうちのピストン3を潤滑した潤滑オイルを第1室に案内するオイル案内部(バッフルプレート)25と、を備え、第2室内には、第2室内の潤滑オイルを被潤滑部に供給するためのオイルポンプ18bを有するオイル通路18が接続されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、内燃機関の油中希釈燃料分離装置に関し、さらに詳しくは、内燃機関の潤滑オイル中に含まれる燃料をオイルの劣化を抑制して効率良く分離することができる内燃機関の油中希釈燃料分離装置に関する。
従来の内燃機関の油中希釈燃料分離装置として、潤滑オイルの燃料混入による希釈を抑制するために潤滑オイルを加熱してオイル中に含まれる燃料を気化分離するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
上記特許文献1には、内燃機関のオイル回路の途中にオイルヒータを設け、このヒータによりオイル回路を流れる潤滑オイルを加熱して燃料を気化分離することが開示されている。
また、上記特許文献2には、オイルパンの底部にヒータを設け、このヒータによりオイルパン内の潤滑オイルを加熱して燃料を気化分離することが開示されている。
特開2004−190513号公報 特開2004−340056号公報
しかし、上記特許文献1では、オイルパンとエンジンの被潤滑部とを連絡するオイル通路又はこのオイル通路に設けられたバイパス通路を通る比較的大量の潤滑オイルをヒータで加熱しているので、熱エネルギーロスが大きい。また、上記特許文献2では、オイルパン内の全オイルを加熱しているので、上述の問題が極めて顕著なものとなる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、内燃機関の潤滑オイル中に含まれる燃料をオイルの劣化を抑制して効率良く分離することができる内燃機関の油中希釈燃料分離装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下の通りである。
1.内燃機関の潤滑オイルを加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱される潤滑オイルを貯留する第1室、及び該加熱手段により加熱された潤滑オイルを導入し得るように該第1室から区画された第2室が設けられたオイル貯留部と、
前記内燃機関の本体内に設けられ且つ前記内燃機関の被潤滑部のうちのピストンを潤滑した潤滑オイルを前記第1室に案内するオイル案内部と、を備え、
前記第2室内には、該第2室内の潤滑オイルを前記被潤滑部に供給するためのオイルポンプを有するオイル通路が配設されていることを特徴とする内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
2.前記第1室のオイル貯留容積は前記第2室のオイル貯留容積より小さい上記1.記載の内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
3.前記加熱手段は前記第1室から前記第2室へ流出する潤滑オイルを加熱する上記1.又は2.に記載の内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
4.前記加熱手段は前記内燃機関の排気を熱源とする上記1.乃至3.のいずれかに記載の内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
本発明の内燃機関の油中希釈燃料分離装置によると、内燃機関の被潤滑部であるピストンを潤滑した潤滑オイルは、オイル案内部によりオイル貯留部の第1室内に導かれ、加熱手段により加熱されて燃料の気化が促進される。このように、燃料が比較的多く混入した潤滑オイルがオイル案内部により第1室内に導入され、その燃料を比較的多く含んだ潤滑オイルが選択的に加熱されるようにしたので、従来のように燃料を多く含む、含まないに拘わらず潤滑オイルを非選択的に加熱して燃料を気化分離するものと比較して効率的に燃料を分離させることができると共に、燃料を比較的多く含んだ潤滑オイルを選択的に加熱することにより、加熱によって潤滑オイルが必要以上に劣化することを抑制することができる。また、第2室内にはピストンを潤滑した潤滑オイルが直接流入しないようにしたので、被潤滑部に供給される潤滑オイルを燃料希釈による粘度低下率の小さい潤滑オイルとすることができ、被潤滑部の潤滑不良を防止することができる。
また、前記第1室のオイル貯留容積が前記第2室のオイル貯留容積より小さい場合は、第1室に貯留される、加熱手段により加熱される対象となる潤滑オイルの貯留量を比較的少量とすることができると共に、第2室に貯留される、被潤滑部に供給可能な潤滑オイルの貯留量は比較的多量とすることができる。その結果、効率的な燃料分離を実現しつつ、潤滑オイルの総貯留量は必要以上に多く確保しなくてもよい。
更に、前記加熱手段が前記第1室から前記第2室へ流出する潤滑オイルを加熱する場合は、より少量の潤滑オイルを対象とした更に効率的な燃料分離を実現でき且つ加熱による潤滑オイルの必要以上の劣化を更に抑制することができる。
また、前記加熱手段が前記内燃機関の排気を熱源とする場合は、燃料分離のための熱源を新たに設けることなく、既存の熱源を利用して潤滑オイルから燃料を気化分離することができる。
本実施形態に係る内燃機関の油中希釈燃料分離装置は、以下に述べる加熱手段、オイル貯留部及びオイル案内部を備えている。
上記「加熱手段」は、内燃機関の潤滑オイルを加熱する限り、その構造、加熱形態、熱源の種類等は特に問わない。この加熱手段としては、例えば、内燃機関の排気ガスを排気する排気管、電熱ヒータ等を挙げることができる。既存の熱源を利用できるといった観点から、内燃機関の排気管であることが好ましい。
上記「オイル貯留部」は、上記加熱手段により加熱される潤滑オイルを貯留する第1室、及び上記加熱手段により加熱された潤滑オイルを導入し得るように第1室から区画された第2室が設けられている限り、その構造、形状、材質、区画形態等は特に問わない。このオイル貯留部としては、例えば、内燃機関の本体の下部に設けられるオイルパン、内燃機関の本体とは別体に設けられるオイルタンク等を挙げることができる。
上記第1室及び第2室の区画形態としては、例えば、(1)オイル貯留部の底壁が、クランクシャフトの軸方向と平行な方向に立ち上げられて区画されている形態(図1、3等参照)、(2)オイル貯留部の底壁が、クランクシャフトの軸方向と直交する方向に立ち上げられて区画されている形態(図2等参照)等を挙げることができる。
上記(1)及び(2)の形態では、例えば、第1室内から溢れる潤滑オイルが、立ち上げられた底壁の上端縁を乗り越えて第2室内に導入されることができる。
ここで、上記加熱手段による潤滑オイルの加熱形態としては、(1)第1室に貯留された潤滑オイル全体を加熱する形態、(2)潤滑オイルが第1室から第2室へ流出する過程において、その流出する潤滑オイルを加熱する形態等を挙げることができる。少量の潤滑オイルを対象とした効率的な燃料分離を実現できるといった観点から、上記(2)の加熱形態が好ましい。
上記第2室内には、第2室内の潤滑オイルを内燃機関の被潤滑部に供給するためのオイルポンプを有するオイル通路が配設されている。
上記オイル貯留部がオイルパンである場合には、通常、オイル通路の一端側にはオイルストレーナが設けられ、このオイルストレーナがオイルパン内に配置されている。
上記オイル通路としては、例えば、配管、内燃機関の本体又は機構部に形成された通路、空間等のうちの1種又は2種以上の組み合わせを挙げることができる。
上記オイルポンプとしては、例えば、トロコイド式、内接ギヤ式、外接ギヤ式、インナギヤ式等を挙げることができる。このオイルポンプは、例えば、内燃機関の駆動力により作動されたり、内燃機関とは別の駆動源により作動されたりできる。
ここで、例えば、上記第1室のオイル貯留容積は、第2室のオイル貯留容積より小さいことができる。この第1室のオイル貯留容積C1と第2室のオイル貯留容積C2との比(C1/C2)が0.2〜0.5(特に0.25〜0.3)であることが好ましい。第1室内で比較的少量の潤滑オイル中の燃料をより効率良く分離できると共に、第2室内により大量の潤滑オイルを確保できるためである。
ここで、オイル貯留部は、例えば、オイル貯留部の底壁を段差状に形成し、第1室を構成する底壁を第2室を構成する底壁より高位レベルとして、第1室のオイル貯留容積を第2室のオイル貯留容積より小さくすることができる。
上記「オイル案内部」は、上記内燃機関の被潤滑部であるピストンを潤滑した潤滑オイルを上記第1室に案内する限り、その構造、形状、材質等は特に問わない。
また、上記オイル案内部と共に、上記内燃機関の本体内には、(a)エンジンのシリンダブロックに形成され且つクランク室とヘッドカバー内とを連絡する連絡路を通ってオイル貯留部内に戻される潤滑オイルを第2室に案内する他のオイル案内部が設けられていたり、(b)エンジンのチェーンケース又はベルトケースを通ってオイル貯留部内に戻される潤滑オイルを第2室に案内する他のオイル案内部が設けられていたりすることができる。これにより、他のオイル案内部により燃料が殆ど混入してしない潤滑オイルが第2室内に案内されて導入でき、第1室内での潤滑オイル中の燃料の分離効率をより向上させることができる。分離効率の更なる向上といった観点から、上記(a)(b)形態の組み合わせであることが好ましい。
上記(1)(2)形態では、例えば、(a)上記第2室が、エンジンのシリンダブロックに形成され且つクランク室とヘッドカバー内とを連絡する連絡路の直下に配置されていたり、(b)上記第2室が、エンジンのチェーンケース又はベルトケースの直下に配置されていたりすることができる。これにより、燃料が殆ど混入してしない潤滑オイルを第2室内に落下させて導入でき、第1室内での潤滑オイル中の燃料の分離効率をより向上させることができる。分離効率の更なる向上といった観点から、上記(a)(b)形態の組み合わせであることが好ましい。
尚、上記「内燃機関の被潤滑部」としては、上記ピストン以外に、例えば、クランクシャフト、コネクティングロッド、カムシャフト、駆動系等を挙げることができる。これらのうち、クランクシャフト、コネクティングロッド、ピストン等を潤滑してオイル貯留部に戻される潤滑オイル中には、ピストンの気筒内壁面の隙間から漏れる比較的多くの燃料が混入している。一方、カムシャフト、駆動系等を循環してオイル貯留部に戻される潤滑オイル中には殆ど燃料が混入していない。また、ピストン周りを潤滑する潤滑オイルは、通常、ピストンと気筒との隙間を介してオイル貯留部内に戻される。一方、ヘッド周りを潤滑する潤滑オイルは、通常、エンジンのシリンダブロック及びシリンダヘッドに形成されクランク室とヘッドカバー内の空間とを連絡する連絡路を介してオイル貯留部内に戻されたり、エンジンのチェーンケース又はベルトケースを介してオイル貯留部内に戻されたりする。
尚、筒内噴射型の内燃機関において、圧縮上死点近傍で気筒内へ燃料を噴射する主噴射に加え、この主噴射の前後に気筒内へ燃料を噴射する副噴射(例えば、パイロット噴射、ポスト噴射等)を行う場合、噴射燃料が気筒の内壁面に付着し易く、その付着した燃料が潤滑オイル中に混入し易い。したがって、本実施形態に係る内燃機関の油中希釈燃料分離装置は、主噴射の前後に副噴射を行う筒内噴射型の内燃機関の油中希釈燃料分離装置として好適に用いられることができる。
以下、図面を用いて実施例により本発明を具体的に説明する。
尚、本実施例では、本発明に係る「内燃機関」として、主噴射の前後に副噴射を行う筒内噴射型エンジンを例示する。
(1)エンジンの構成
本実施例1に係るエンジン1は、図1に示すように、気筒2が形成されたシリンダブロック1aと、このシリンダブロック1aの上部に固定されたシリンダヘッド1bとを備えている。このシリンダブロック1aの気筒2内には、ピストン3が往復動自在に支持されている。また、シリンダブロック1aの下部には、クランクシャフト4を回転自在に支持してなるクランクケース1cが固定されている。このクランクシャフト4は、コネクティングロッド5を介してピストン3に連結されている。このピストン3の上方には、ピストン3の頂面とシリンダヘッド1bの壁面と気筒2の壁面とに囲まれた燃焼室6が形成されている。
上記シリンダヘッド1bには、その一端側が吸気管7aに接続され且つその他端側が燃焼室6に接続される吸気ポート8aと、その一端側が排気管7bに接続され且つその他端側が燃焼室6に接続される排気ポート8bと、が形成されている。また、シリンダヘッド1bには、吸気ポート8aを開閉する吸気弁9a及び排気ポート8bを開閉する排気弁9bが設けられると共に、これら吸気弁9a及び排気弁9bを駆動するカムシャフト10a,10bがそれぞれ回転自在に支持されている。さらに、シリンダヘッド1bの上部には、上記動弁機構を覆うシリンダヘッドカバー1dが取り付けられている。上記吸気管7aの一端側は、エアクリーナボックス11に接続されている。この吸気管7aの途中には、吸気管7a内を流れる吸気量を調整するスロットルバルブ12が設けられている。
上記シリンダヘッドカバー1d内の空間13には、その一端側が吸気管7aのスロットルバルブ12の下流側に接続された第1還流路15の他端側がPCVバルブ15aを介して接続されている。また、シリンダヘッドカバー1d内の空間13には、その一端側が吸気管7aのスロットルバルブ12の上流側に接続された第2還流路16の他端側が接続されている。
上記クランクケース1cの下部には、潤滑オイルを貯留するオイルパン17(本発明に係る「オイル貯留部」として例示する。)が取り付けられている。このオイルパン17とエンジン1の被潤滑部とは、オイル通路18を含むオイル循環経路(図示省略)を介して連絡されている。
(2)油中希釈燃料分離装置の構成
本実施例1に係る油中希釈燃料分離装置20は、図1に示すように、潤滑オイルを貯留するオイルパン17を備えている。このオイルパン17の底壁は、クランクシャフト4の軸方向と平行な直線方向に沿って、断面円弧状に隆起した隆起部17aが形成されている。この隆起部17aにより、オイルパン17内は第1室21と第2室22とに区画されている。また、オイルパン17の底壁は、第1室21側の底壁が第2室22側の底壁と比較して高い位置に設けられている。また、第1室21のオイル貯留容積C1は約1.2lに設定されており、第2室22のオイル貯留容積C2は約4lに設定されている。したがって、第1室21のオイル貯留容積C1と第2室22のオイル貯留容積C2との比(C1/C2)が0.3とされている。
隆起部17aの下部であってエンジン1の本体外側には、エンジン1の排気ガスを排出する下部排気管23(本発明に係る加熱手段として例示する。)が潜通されている。
上記第2室22内には、上記オイル通路18の一端側に設けられたオイルストレーナ18aが配置される。このオイル通路18の途中には、第2室22内の潤滑オイルをエンジン1の被潤滑部に供給するためのオイルポンプ18bが設けられている。また、第2室22は、エンジン1のシリンダブロック1a及びシリンダヘッド1bに形成され且つクランク室14とシリンダヘッドカバー1d内の空間13とを連絡する連絡路24の直下に配置されている。
上記クランクケース1cの下部であってオイルパン17の上部には、ピストン3と気筒2との隙間を通ってオイルパン17に戻される潤滑オイルを第1室21に案内する板状のバッフルプレート25が設けられている。
(3)油中希釈燃料分離装置の作用
次に、上記構成の油中希釈燃料分離装置20の作用について説明する。
なお、本実施例では、主噴射の前後に副噴射を行う筒内噴射型エンジン1を採用しているので、気筒内周面に付着した燃料が潤滑オイルに混ざりピストン3と気筒2との隙間を通ってオイルパン17内に戻される潤滑オイル中の燃料希釈率が高くなる。
エンジン運転中には、エンジン1の被潤滑部としてのクランクシャフト4、コネクティングロッド5、ピストン3等のピストン周りを循環する潤滑オイルは、ピストン3と気筒2との隙間を通ってバッフルプレート25に案内されてオイルパン17の第1室21内に戻される。一方、エンジン1の被潤滑部としてのカムシャフト10a,10b、駆動系等のヘッド周りを循環する潤滑オイルは、連絡路24を通ってオイルパン17の第2室22内に戻されたり、エンジン1のチェーンケース又はベルトケース(図示省略)を通ってオイルパン17の第2室22内に戻されたりする。
バッフルプレート25により第1室21に案内され、貯留され、第1室21から溢れた潤滑オイルは、オイルパン17の底壁に設けられた隆起部17aの上端縁を乗り越えて第2室22室内に導入される。このとき、隆起部17aの壁面に沿って溢れる潤滑オイルは、隆起部17aの下部を通る下部排気管23の内部を通過する排気ガスの輻射熱によって加熱され、潤滑オイルに混入した燃料が気化される。
一方、被潤滑部を潤滑したが、バッフルプレート25上に落下しない潤滑オイル、即ち、エンジン1の上部のカムシャフト10a、10b等の被潤滑部を潤滑して、シリンダヘッドカバー1d内から連絡路24を介してオイルパン17に還流される潤滑オイル等は、第1室21を経由せずに直接第2室22に導入される。そして、第2室22に到達した潤滑オイルは、オイルストレーナ18aに吸入され、オイルポンプ18bにより圧送されて、オイル通路18を介して再びエンジン1の各被潤滑部に送られる。
気化された燃料は、ブローバイガスに混じって、連絡路24を介してクランク室14からシリンダヘッドカバー1d内の空間13に送られる。そのブローバイガスは、エンジン1の低負荷運転状態(スロットルバルブの開度が小さな運転状態)では第1還流路15を介して吸気管7aに還流され、エンジン1の高負荷運転状態(スロットルバルブの開度が大きな運転状態)では第1還流路15に加えて第2還流路16を介して吸気管7aに還流される。
なお、エンジン1の低負荷運転状態では、第2還流路16を介して吸気管7aのスロットルバルブ12の上流を流れる新気がシリンダヘッドカバー1d内の空間13に吸い込まれ、その空間13内のブローバイガスが換気されることとなる。
(4)実施例の効果
以上より、本実施例では、エンジン1の被潤滑部であるピストン3を潤滑した潤滑オイルは、バッフルプレート25によりオイルパン17の第1室21内に導かれ、第1室21に貯留される。そして、第1室21に貯留された潤滑オイルは、オイルパン17の底壁に設けられた隆起部17aの上端縁を乗り越えて第2室22室内に導入される。この際、潤滑オイルは、下部排気管23により加熱され、燃料の気化が促進される。このように、燃料が比較的多く混入した潤滑オイルがバッフルプレート25により第1室21内に導入され、その燃料を比較的多く含んだ潤滑オイルが選択的に加熱されるようにしたので、従来のように燃料を多く含む、含まないに拘わらず潤滑オイルを非選択的に加熱して燃料を気化分離するものに比べて効率的に燃料を分離させることができると共に、加熱によって潤滑オイルが必要以上に劣化することを抑制することができる。
また、本実施例では、第2室22内にはピストン3を潤滑した潤滑オイル、即ち、燃料を比較的多く含んでいる潤滑オイルが直接流入しないようにしたので、被潤滑部に供給される潤滑オイルを燃料希釈による粘度低下率の小さい潤滑オイルとすることができ、被潤滑部の潤滑不良を防止することができる。
更に、本実施例では、第2室22を、エンジン1のシリンダブロック1a及びシリンダヘッド1bに形成され且つクランク室14とシリンダヘッドカバー1d内の空間13とを連絡する連絡路24の直下に配置したので、連絡路24により燃料が殆ど混入してしない潤滑オイルを第2室22内に落下させて導入でき、第1室21内での潤滑オイル中の燃料の分離効率をより向上させることができると共に、被潤滑部に供給される潤滑オイルを燃料希釈による粘度低下率の小さい潤滑オイルとすることができ、被潤滑部の潤滑不良を防止することができる。
また、本実施例では、第1室21のオイル貯留容積を前記第2室22のオイル貯留容積より小さくしたので、第1室21に貯留される潤滑オイル、即ち、加熱されるために貯留される潤滑オイルの貯留量を比較的少量とすることができると共に、第2室22に貯留される、被潤滑部に供給可能な潤滑オイルの貯留量は比較的多量とすることができる。その結果、効率的な燃料分離を実現しつつ、潤滑オイルの総貯留量は必要以上に多く確保しなくてもよい。
更に、本実施例では、下部排気管23が第1室21から第2室22へ流出する潤滑オイルを加熱するようにしたので、より少量の潤滑オイルを対象とした更に効率的な燃料分離を実現でき、且つ加熱による潤滑オイルの必要以上の劣化を更に抑制することができる。
また、本実施例では、加熱手段としてエンジン1の排気ガスを排出する下部排気管23を用いるようにしたので、燃料分離のための熱源を新たに設けることなく、既存の熱源を利用した潤滑オイルからの燃料気化分離を実現することができる。
尚、本発明においては、上記実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施例では、エンジン1のクランクシャフト4の軸方向と平行な直線方向で第1室21と第2室22とを仕切るようにしたが、これに限定されず、例えば、図2に示すように、クランクシャフト4の軸方向と直交する直線方向で第1室21と第2室22とを仕切るようにしてもよい。また、上記において、エンジン1がクランクシャフト4の軸端側にその動力をカムシャフト10a、10b等に伝達するチェーン26を有し、このチェーン26を潤滑した潤滑オイル等がオイルパン17に還流するチェーンケース27を有する場合は、第2室22をチェーンケース27側に設けるようにして、チェーンケース27を介してオイルパン17に還流する燃料を殆ど含まない潤滑オイルを、直接第2室22へ導入することができる。
上記実施例では、第1室21から溢れて第2室22に流出する潤滑オイルを加熱するようにしたが、これに限定されず、例えば、第1室21に貯留されている潤滑オイル全体を加熱するようにしてもよい。
上記実施例では、加熱手段として下部排気管23を例示したが、これに限定されず、例えば、加熱手段として、その内部に電熱線23’aを備える電熱ヒータ23’を採用してもよい。この場合も、第1室21から溢れて第2室22に流出する潤滑オイルを加熱するようにしてもよいし、また、図3に示すように、第1室21に貯留されている潤滑オイル全体を加熱するようにしてもよい。
内燃機関の潤滑オイル中に含まれる希釈燃料を分離する技術として広く利用される。特に、主噴射の前後に副噴射を行う筒内噴射型の内燃機関の油中希釈燃料分離装置として好適に利用される。
実施例に係る油中希釈燃料分離装置を示す説明図である。 他の形態の油中希釈燃料分離装置を示す説明図である。 更に他の形態の油中希釈燃料分離装置を示す説明図である。
符号の説明
1;エンジン、1a;シリンダブロック、1b;シリンダヘッド、1c;クランクケース、1d;シリンダヘッドカバー、2;気筒、3;ピストン、4;クランクシャフト、5;コネクティングロッド、6;燃焼室、7a;吸気管、7b;排気管、8a;吸気ポート、8b;排気ポート、9a;吸気弁、9b;排気弁、10a,10b;カムシャフト、11;エアクリーナボックス、12;スロットルバルブ、13;空間、14;クランク室、15;第1還流路、15a;PCVバルブ、16;第2還流路、17;オイルパン、17a;隆起部、18;オイル通路、18a;オイルストレーナ、18b;オイルポンプ、20;油中希釈燃料分離装置、21;第1室、22;第2室、23;下部排気管、23’;電熱ヒータ、23’a;電熱線、24;連絡路、25;バッフルプレート、26;チェーン、27;チェーンケース。

Claims (4)

  1. 内燃機関の潤滑オイルを加熱する加熱手段と、
    前記加熱手段により加熱される潤滑オイルを貯留する第1室、及び該加熱手段により加熱された潤滑オイルを導入し得るように該第1室から区画された第2室が設けられたオイル貯留部と、
    前記内燃機関の本体内に設けられ且つ前記内燃機関の被潤滑部のうちのピストンを潤滑した潤滑オイルを前記第1室に案内するオイル案内部と、を備え、
    前記第2室内には、該第2室内の潤滑オイルを前記被潤滑部に供給するためのオイルポンプを有するオイル通路が配設されていることを特徴とする内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
  2. 前記第1室のオイル貯留容積は前記第2室のオイル貯留容積より小さい請求項1記載の内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
  3. 前記加熱手段は前記第1室から前記第2室へ流出する潤滑オイルを加熱する請求項1又は2に記載の内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
  4. 前記加熱手段は前記内燃機関の排気を熱源とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内燃機関の油中希釈燃料分離装置。
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