JP2009270097A - 重合体の水素化方法および水素化反応により得られる水素化重合体 - Google Patents

重合体の水素化方法および水素化反応により得られる水素化重合体 Download PDF

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Abstract

【課題】β−ピネンを構成単位として含有する重合体に含まれる不飽和結合を水素化反応により飽和結合に変換しβ−ピネン系重合体を得るにあたり、水素化反応温度を高めることを可能とし、その結果として反応時間を実質的に短縮し、また、少ない触媒使用量を設定することができる反応方法を提供すること。
【解決手段】 β−ピネン単位を30質量%以上含有する重合体の主鎖および/または側鎖にある不飽和結合を飽和結合に変換し、β−ピネン系重合体を得る水素化反応において、金属を担持した水素化触媒を用い、かつ特定の、有機アルカリ金属類、有機アルカリ土類金属類、アミン類、ピリジン類から選ばれる塩基性化合物の少なくとも1種類を共存させる、β−ピネン系重合体の水素化方法、並びに該水素化方法により得られるβ−ピネン系重合体。
【選択図】 なし

Description

本発明はβ−ピネン単位を含有する重合体に含まれる不飽和結合を水素化反応により飽和結合に変換しβ−ピネン系重合体を得る反応方法および水素化反応により得られるβ−ピネン系重合体に関するものである。
近年、光学用樹脂への要求はますます高度になり、耐熱性及び耐光性に優れ、吸水性が低く、かつ高い透明性を有する樹脂が求められている。しかし、従来の光学用樹脂においてはこれらの要求性能が高い次元でバランスよく備わっておらず、光学用樹脂として種々の欠点を有する。
例えば、透明性の高い光学用樹脂としては、従来ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等が使用されてきた。ポリメタクリル酸メチルは透明性が高く、複屈折率が小さい等、光学的な性質は優れているが、吸水性が大きいため寸法が変化し易く、また耐熱性も低いという欠点を有する。一方、ポリカーボネートはガラス転移温度(Tg)が高く耐熱性は優れているが、吸水性がやや大きく、アルカリによる加水分解を起こしやすいという欠点を有する。
耐熱性が高く、吸水性が小さく、かつ透明性に優れた光学用樹脂としてはノルボルネン系モノマーの開環重合体水素添加物やノルボルネン系モノマーとエチレンとの付加型共重合体が知られている(特許文献1〜4)。しかしながら、ノルボルネン系モノマーとして使用しているテトラシクロドデセン類の多環モノマーは、その製造が必ずしも容易ではなく、重合触媒にモリブデン、タングステンの塩化物等のレアメタルを使用する必要がある。
上記の課題を改善した光学用樹脂としてβ−ピネンを構成成分として含有する重合体が提案されている(特許文献5、非特許文献2)。β−ピネンを構成成分として含有する重合体は耐熱性が高く、吸水性が低い材料である。また、近年問題となっている二酸化炭素の排出を抑える、カーボンニュートラル材料としても注目されている。しかしながら、これらβ−ピネン系重合体はβ−ピネン由来のオレフィン性二重結合が存在しており、酸化劣化し易いため、光や熱で着色し易いという問題点を有していた。
これらの問題に対し、β−ピネンを構成成分として含有する重合体を水素化することにより、耐候性や耐熱性を向上させる手法が報告されている(非特許文献1、非特許文献3)。非特許文献1によると、β−ピネン系重合体中の不飽和結合に対し、5モル倍という大過剰のヒドラジド化合物を用いて試薬により水素化反応を実施しており、反応率91%の水素化体を得ている。しかし、本手法は水素化する重合体に対して大量の試薬を使用する必要があり、製造効率が低い。
また、非特許文献3によると、β−ピネンを構成成分として含有する重合体に対し、5%パラジウムアルミナ化合物を重合体に対してほぼ等質量用い、160℃、5MPaの条件で7時間かけて水素化反応を行っており、反応率99.9%の水素化体を得ている。しかし本手法であっても、触媒を非常に多く使用する必要があり、触媒を多数繰り返し使用しない限り、製造コストがかさみ、また、反応時間も長いため、さらに効率的な製造方法の開発が必要となる。
β−ピネンを構成成分として含有する重合体はその構造から主鎖中の環構造内部に特徴的な3置換オレフィンを有しており、水素化速度そのものが極めて低いものとなっている。3置換オレフィンを有する重合体の例として、ポリイソプレン骨格を持つ重合体やイソプレン骨格を含むブロック共重合体などが知られているが、3置換オレフィンの置換基の1つは、最も立体的に小さいメチル基であり、水素化速度の低下は実質的に大きな問題にならない場合が多かった。β−ピネン系重合体は、オレフィンの置換数のみならずオレフィンの近傍に4級炭素を有しており、この隣接置換基によっても、立体的な嵩高さにより水素化速度を低下させていると考えられる。
以上のように、β−ピネン系重合体を水素化する場合、ポリイソプレンなどの重合体の水素化とは大きく異なる問題点を有しており、実用的な水素化反応速度を得るために新たな高活性化手法を開発する必要があった。
水素化反応速度を向上させる手法として、反応温度を高める手段が挙げられるが、反応温度を高めると、水素化反応中に重合体の分子量の低下が見られ、望ましくない反応が進行する傾向があることが判明し、本発明者らの評価によると、非特許文献3の手法を用いてもその現象がみられることが判明した。
よって、これまで、β−ピネン系重合体を水素化反応する場合、分子量の低下を引き起こす副反応を進行させず、かつ、速やかに反応を実施させる方法はこれまでに見出されていなかった。
特開昭64−24826号公報 特開昭60−168708号公報 特開昭61−115912号公報 特開昭61−120816号公報 特開2002−121231号公報
Satoh他、「Biomass-derived heat-resistant alicyclic hydrocarbon polymers:poly(terpenes) and their hydrogenated derivatives」、Green Chemistry、2006年、第8巻、878〜882頁 Keszler他、「Synthesis of High Moleculer Weight Poly(β−Pinene)」、Advances in Polymer Science、1992年、第100巻、1〜9頁 第56回高分子討論会予稿集 2Z10
本発明はβ−ピネンを構成単位として含有する重合体に含まれる不飽和結合を水素化反応により飽和結合に変換しβ−ピネン系重合体を得るにあたり、水素化反応温度を高めることを可能とし、その結果として反応時間を実質的に短縮し、また、少ない触媒使用量を設定することができる反応方法を提供することにある。
本発明者らが鋭意検討した結果、β−ピネン系重合体の水素化時に見られる分子量の低下などを引き起こす望ましくない反応は、水素化触媒の担体に起因する場合があることをつきとめた。必ずしも明らかではないが、水素化反応を比較的高温で実施する際に、担体の表面にある酸点が主鎖断裂反応を引き起こすと考えている。
そして、本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の方法を取ることにより上記課題を解決するに至った。
すなわち、本発明の解決手段の1つは、以下の方法である。
β−ピネン単位を30質量%以上含有する重合体の主鎖および/または側鎖にある不飽和結合を飽和結合に変換し、β−ピネン系重合体を得る水素化反応において、金属を含む、不均一系水素化触媒を用い、かつ、以下I〜IVから選ばれる化合物の少なくとも1種類を共存させることを特徴とするβ−ピネン系重合体の水素化方法。
I. M(OR)
II. M(OC(=O)R’)
III. R
IV. ピリジン類
(ただし、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選ばれ、
Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表し、
nは1または2を表し、
R’は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、
〜Rは互いに異なっていてもよく、任意の2つ以上が結合することにより環構造を有していてもよく、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数6〜12のアルキレン置換アルキレン基を表し、かつ、R〜Rについて水素原子以外の場合、他の置換基により置換されていてもよく、かつ、置換基の一部が酸素原子、窒素原子などにより置き換えられていてもよい)
また、もうひとつの課題の解決手段としては、
上記の方法により得られ、H−NMRスペクトルにおける4〜6ppmのプロトンの積分値Aと全プロトンの積分値Bとの比率(A/B)が0.002以下であるβ−ピネン系重合体である。
本発明の方法によれば水素化反応温度を高めることが可能となるため、その結果として反応時間を実質的に短縮し、また、少ない触媒使用量を設定することができるため、工業的に有利に目的とする水素化重合体を得ることが可能となる。
[I]水素化方法に供する重合体
・β−ピネン
本発明の水素化方法に供する重合体は、β−ピネンを構造単位として30質量%以上含有する重合体または共重合体である。共重合体は、β−ピネンおよびその他の重合可能な単量体を共重合して得られる。
単量体として用いるβ−ピネンは公知のものが利用可能である。すなわち、松等の植物から採取されたものや、α−ピネン等、他の原料から合成したβ−ピネン等も利用可能である。
・他の重合可能な単量体
本発明にて共重合体を用いる場合、β−ピネンと共重合可能な他の単量体を構成単位として含有していてもよい。共重合可能な単量体は特に制限はなく、具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−エチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、1−ビニルナフタレン、インデン等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、マレイミド;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー;エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン、ノルボルネン等のオレフィン類;リモネン、α−ピネン、ミルセン、カンフェン、カレン等のβ−ピネン以外のテレピン油由来の二重結合含有化合物;酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、トリメチルシリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;極性基を有するスチレン誘導体、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、アリルアルコール等;ブタジエン、イソプレン、リモネンなどの共役ジオレフィン化合物;α−ピネン、メチレンシクロプロパンなどの歪んだ環構造を持つ化合物などが挙げられる。また、2官能性の単量体、例えばp−ジビニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼン、エチレングリコールジビニルエーテル等を含有することも可能である。これらは単独で用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
共重合体の構造は特に制限されず、例えばランダム、ブロックおよびテーパードのいずれの共重合体でもよい。共重合体は耐熱性の観点からランダム共重合体が特に好ましい。
本発明にて共重合体を用いる場合、共重合体中のβ−ピネンとその他の単量体の質量比(β−ピネン/その他の単量体)は、水素化反応後に得られる重合体の耐熱性および機械的な強度の観点から、30/70〜100/0の範囲であり、30/70〜99/1の範囲が好ましく、40/60〜99/1の範囲がより好ましい。β−ピネンが少なすぎると水素化後に得られる重合体の耐熱性が低くなる。
本発明に用いる共重合体は、上記のβ−ピネンおよびその他の単量体を任意に組合せて重合した共重合体であってよい。共重合体の具体例としてはβ−ピネン−スチレン共重合体、β−ピネン−α−メチルスチレン共重合体、β−ピネン−3−メチルスチレン共重合体、β−ピネン−4−メチルスチレン共重合体、β−ピネン−4−エチルスチレン共重合体、β−ピネン−4−t−ブチルスチレン共重合体、β−ピネン−1−ビニルナフタレン共重合体、β−ピネン−インデン共重合体、β−ピネン−(メタ)アクリル酸共重合体、β−ピネン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、β−ピネン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、β−ピネン−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、β−ピネン−(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル共重合体、β−ピネン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、β−ピネン−無水マレイン酸共重合体、β−ピネン−マレイン酸共重合体、β−ピネン−フマル酸共重合体、β−ピネン−マレイミド共重合体、β−ピネン−アクリロニトリル共重合体、β−ピネン−メタクリロニトリル共重合体、β−ピネン−(メタ)アクリルアミド共重合体、β−ピネン−エチレン共重合体、β−ピネン−プロピレン共重合体、β−ピネン−イソブチレン共重合体、β−ピネン−ブタジエン共重合体、β−ピネン−イソプレン共重合体、β−ピネン−ノルボルネン共重合体、β−ピネン−リモネン共重合体、β−ピネン−α−ピネン共重合体、β−ピネン−ミルセン共重合体、β−ピネン−カンフェン共重合体、β−ピネン−カレン共重合体、β−ピネン−酢酸ビニル共重合体、β−ピネン−ピバリン酸ビニル共重合体、β−ピネン−安息香酸ビニル共重合体、β−ピネン−メチルビニルエーテル共重合体、β−ピネン−エチルビニルエーテル共重合体、β−ピネン−t−ブチルビニルエーテル共重合体、β−ピネン−トリメチルシリルビニルエーテル共重合体、β−ピネン−塩化ビニル共重合体、β−ピネン−塩化ビニリデン共重合体、β−ピネン−アリルクロライド共重合体、β−ピネン−アリルアルコール共重合体等が挙げられる。
・数平均分子量
本発明で使用するβ−ピネン系重合体の数平均分子量は特に限定されないが、水素化後に得られる重合体の力学的物性や加工性の観点から、約1万〜100万g/モルが好ましい。数平均分子量が小さすぎると機械的強度が不足し、大きすぎると成形が困難になる。ここで、数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の分子量を意味する。
[II]β−ピネン系重合体の製造方法
・重合反応
β−ピネン単独の重合体もしくはβ−ピネンと他の単量体を構造単位として含有する共重合体は、カチオン重合、ラジカル重合法、配位重合法等の公知の方法により得ることができる。工業的に容易に実施でき、高分子量体が得られるという観点から、特にカチオン重合法が好ましい。
・カチオン重合
カチオン重合は、非特許文献1、非特許文献2等に記載の公知の方法により行うことができる。具体的には、例えば不活性有機溶媒中において、重合触媒を添加または接触させることにより行う。
カチオン重合は、溶媒、重合触媒の種類・量、重合開始剤、電子供与性化合物、反応温度、反応圧力、反応時間等により制御することが可能である。
・開始剤
本発明において、カチオン重合を行う場合の重合開始剤としては、重合触媒によりカチオンを発生させる化合物であれば特に限定されないが、下式に示す官能基を少なくとも1つ有する有機化合物が好適に使用される。例えば、t−ブチルクロライド、t−ブチルメチルエーテル、t−ブチルメチルエステル、t−ブタノール、2,5−ジクロロ−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメトキシ−2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジアセテート、クミルクロライド、クミルメトキシド、クミルアルコールアセテート、クミルアルコール、p−ジクミルクロライド、m−ジクミルクロライド、p−ジクミルメトキシド、p−ジクミルアルコールジアセテート、p−ジクミルアルコール、1,3,5−トリクミルクロライド、1,3,5−トリクミルメトキシド等を挙げることができる。
−C(−R”)
(式中のR”は、2つが互いに異なってもよい水素、アルキル基、アリール基を、Xはハロゲン、アルコキシ基、アシロキシ基、水酸基を示す。)
カチオン重合で使用する重合開始剤の使用量は、目的とする重合体の分子量により異なるため、一概に使用量を規定することは難しいがβ−ピネンおよび用いるその他の単量体100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましく、0.001〜5質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が最も好ましい。重合開始剤が少ないと、重合反応速度が遅くなったり、不純物から重合が開始して安定して生産が困難となる。重合開始剤が多いと得られる重合体の分子量が小さくなり、重合体が脆くなってしまう。
・重合触媒
カチオン重合の重合触媒として酸性化合物を用いることができる。酸性化合物は特に限定されず、例えばルイス酸またはブレンステッド酸が挙げられる。具体的にはBF、BFOEt、BBr、BBrOEt、AlCl、AlBr、AlI、TiCl、TiBr、TiI、FeCl、FeCl、SnCl、SnCl、WCl、MoCl、SbCl、TeCl、EtMgBr、EtAl、EtAlCl、EtAlCl、EtAlCl、BuSnCl等の周期律表IIIA族からVIII族までの金属ハロゲン化合物;HF、HCl、HBr等の水素酸;HSO、HBO、HClO、CHCOOH、CHClCOOH、CHClCOOH、CClCOOH、CFCOOH、パラトルエンスルホン酸、CFSOH、HPO、P等のオキソ酸、およびこれらの基を有するイオン交換樹脂等の高分子化合物;燐モリブデン酸、燐タングステン酸等のヘテロポリ酸;SiO、Al、SiO−Al、MgO−SiO、B−Al、WO−Al、Zr−SiO、硫酸化ジルコニア、タングステン酸ジルコニア、Hまたは希土類元素と交換したゼオライト、活性白土、酸性白土、γ−Al、Pをケイソウ土と担持させた固体燐酸等の固体酸等が挙げられる。これらの酸性化合物は組み合わせて用いてもよく、また他の化合物等を添加してもよい。他の化合物等は、例えばそれを添加することにより酸性化合物の活性を向上させることができる化合物等である。金属ハロゲン化合物の酸性化合物としての活性を向上させる化合物の例としては、MeLi、EtLi、BuLi、EtMg、(i−Bu)Al、EtAl(OEt)、MeSn、EtSn、BuSn等の金属アルキル化合物が例示される。
カチオン重合で使用する重合触媒の使用量は、重合触媒の種類により触媒能が異なるため、一概に使用量を規定することは難しいが、均一系触媒の場合、その使用量は、β−ピネンおよび用いるその他の単量体100質量部に対し、0.001〜10質量部が好ましく、0.01〜5質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が最も好ましい。重合触媒に固体酸やイオン交換樹脂等の不均一触媒を使用する場合、その使用量はβ−ピネンおよび芳香族系単量体100質量部に対し、0.1〜10000質量部が好ましく、1〜1000質量部がより好ましい。触媒量が少ないとカチオン重合の進行が遅く、多いと不経済である。
・電子供与性化合物
カチオン重合を行う場合、電子供与性化合物を添加することで重合反応をより制御することが可能である。このような電子供与性化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル化合物、炭素数2〜10の環状エーテル化合物、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル化合物、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール化合物、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン、2−メチルピリジン、2,6−ジ−t−ブチルピリジン、2,6−ルチジン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル等の窒素含有化合物、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド等のアンモニウム塩等が挙げられる。
電子供与性化合物は、反応系中に、重合触媒100質量部に対し0.01〜500質量部が好ましく、0.1〜200質量部がより好ましい。電子供与性化合物の量が少なすぎると副反応が多くなる傾向があり、低分子量体が多く生成し得られる重合体の強度が低下してしまう。逆に電子供与剤が多すぎると重合反応速度が著しく抑制され、カチオン重合反応に長時間を要することとなり、生産性が低下する。したがって、更に好ましい電子供与性化合物の量は、重合触媒に対し0.1〜100質量部である。
・カチオン重合溶媒
カチオン重合は、不活性有機溶媒中において行うことができる。不活性有機溶媒は、β−ピネンおよび用いるその他の単量体が溶解し、かつ重合触媒に不活性な有機溶媒であれば特に制限なく使用することができる。具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロパン、塩化ブタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;エステル、エーテル等の含酸素系溶媒等を用いることができる。反応性を考慮すると、芳香族炭化水素系溶媒、脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒等が好ましい。これらの溶媒は単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
カチオン重合において不活性有機溶媒を使用する場合、不活性有機溶媒の使用量は特に限定されないが、β−ピネンおよび用いるその他の単量体100質量部に対して通常100〜10000質量部、好ましくは150〜5000質量部、より好ましくは200〜3000質量部である。不活性溶媒量が少ないと共重合体が生成した場合の粘度が高くなり撹拌が困難となるため反応が不均一となり、均一な共重合体が得られなかったり、反応の制御が困難になる。不活性溶媒量が多いと生産性が低下してしまう。
カチオン重合を行う場合の反応温度は通常−120℃〜60℃が好ましく、−80℃〜0℃がより好ましく、−40℃〜0℃が最も好ましい。反応温度が低すぎると不経済であり、高すぎると反応の制御が困難である。
カチオン重合を行うための反応圧力は特に限定されないが、0.5〜50気圧が好ましく、0.7〜10気圧がより好ましい。通常1気圧前後でカチオン重合を行う。
カチオン重合を行う反応時間は、特に限定されず、用いるその他の単量体の種類、その量、重合触媒の種類や量、反応温度、反応圧力等の条件に応じて、反応時間を適宜決めればよい。通常は0.01時間〜24時間、好ましくは0.1時間〜10時間である。
カチオン重合後の共重合体は、例えば、再沈澱、加熱下での溶媒除去、減圧下での溶媒除去、水蒸気による溶媒の除去(スチームストリッピング)等の、重合体を溶液から単離する際の通常の操作によって、反応混合物から分離、取得することができる。
[III]水素化
本発明における水素化[水素添加(水添)]反応は、金属を含む不均一系水素化触媒を用い、かつ特定の共存化合物を共存させる。
・水素化触媒
本発明において用いる不均一系水素化触媒は特に限定されない。水素化触媒に含まれる金属としては、ニッケル、コバルト、銅、パラジウム、イリジウム、白金などが例示でき、これらの中で水素化活性の観点からニッケル、パラジウムが好ましく用いられる。また、不均一系水素化触媒としては、微粒子や多孔体などの金属触媒、担体に金属を担持した水素化触媒などが用いられるが、操作性などの観点からは担体に金属を担持した担持金属触媒が好ましい。金属を担持させる担体としては、活性炭などのカーボン、グラファイト、シリカ、アルミナ、ゼオライト、珪藻土、炭酸カルシウムなどが例示でき、これらの中で本発明の効果が大きいものとしてシリカ、アルミナ、ゼオライト、珪藻土が挙げられる。このような金属を含む不均一系水素化触媒の具体例を挙げると、スポンジニッケル、スポンジコバルト、スポンジ銅などのスポンジメタル触媒;ニッケルシリカ、ニッケルアルミナ、ニッケルゼオライト、ニッケル珪藻土、パラジウムシリカ、パラジウムアルミナ、パラジウムゼオライト、パラジウム珪藻土、パラジウムカーボン、パラジウムグラファイト、パラジウム炭酸カルシウム、白金シリカ、白金アルミナ、白金ゼオライト、白金珪藻土、白金カーボン、白金グラファイト、白金炭酸カルシウム、ルテニウムシリカ、ルテニウムアルミナ、ルテニウムゼオライト、ルテニウム珪藻土、ルテニウムカーボン、ルテニウムグラファイト、ルテニウム炭酸カルシウム、イリジウムシリカ、イリジウムアルミナ、イリジウムゼオライト、イリジウム珪藻土、イリジウムカーボン、イリジウムグラファイト、イリジウム炭酸カルシウム、コバルトシリカ、コバルトアルミナ、コバルトゼオライト、コバルト珪藻土、コバルトカーボン、コバルトグラファイト、コバルト炭酸カルシウムなどの担持金属触媒が挙げられる。
これらの触媒は、活性向上、選択性向上、安定性を目的に、鉄、モリブデン、マグネシウムなどで変性されていてもよい。また、これらの触媒は単独で使用してもよいし、複数を混合して用いても構わない。
本発明における水素化反応は、水素化活性、入手性、取り扱いの容易さの面から、水素化活性をもつ金属としてニッケルもしくはパラジウムを用いることが好ましく、パラジウム化合物を用いることがさらに好ましい。また、水素化の最中に進行する望ましくない副反応をさらに抑制するために、カーボン担体を用いることが好ましい。
・溶媒
本発明における水素化反応は、通常、有機溶媒中で行われる。用いることのできる溶媒は、特に限定されるものではないが、β−ピネン系重合体を容易に溶解させるものが好ましい。共重合の種類によりその溶媒が異なるため、限定することは困難であるが、具体例を挙げるならば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン、トリシクロデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、塩化プロパン、塩化ブタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等のアルコール系溶媒などを用いることができる。
本発明における水素化反応は、重合工程で用いた溶媒をそのまま用いることもできるし、一部の溶媒を蒸留などの方法により除去して用いることもできる。また、重合工程終了後、一旦重合物を前述の方法で取り出した後に用いても構わない。未水添重合物をこれらの方法で水素化工程に導入する場合、重合工程の溶媒をそのままもしくは除去したのち、別途溶媒で希釈して用いることもできる。
本発明における水素化反応の有機溶媒の使用量は、共重合体100質量部に対して50質量部以上10000質量部以下、好ましくは100質量部以上3000質量部以下、より好ましくは150質量部以上1000質量部以下ある。10000質量部以上で行うと、生産性が著しく低下するし、100質量部未満の場合溶液粘度が著しく高まり、水素化反応効率が低下してしまう。
本発明における水素化反応には、以下、I〜IVに該当する化合物の共存下に実施される。これらの物質の共存下に水素化を実施することで、担体に起因する高温反応時の主鎖切断を大幅に抑制することが可能となる。
I. M(OR)n
II. M(OC(=O)R’)
III. R
IV. ピリジン類
I.に示されるMは、アルカリ金属、アルカリ土類金属を表し、特に限定されないが、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選ばれる。nは、Mがアルカリ金属の場合1を、アルカリ土類金属の場合2を示す。Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜10のアリール基;炭素数7〜11のアラルキル基が挙げられる。I.が示す化合物は、特に限定されないが、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、マグネシウムメトキシド、カルシウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、マグネシウムエトキシド、カルシウムエトキシド、リチウムプロポキシド、ナトリウムプロポキシド、カリウムプロポキシド、マグネシウムプロポキシド、カルシウムプロポキシド、リチウムブトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムブトキシド、マグネシウムブトキシド、カルシウムブトキシド、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、マグネシウムフェノキシド、カルシウムフェノキシド、リチウムナフトキシド、ナトリウムナフトキシド、カリウムナフトキシド、マグネシウムナフトキシド、カルシウムナフトキシド、リチウム−2−メチルフェノキシド、ナトリウム−2−メチルフェノキシド、カリウム−2−メチルフェノキシド、マグネシウム−2−メチルフェノキシド、カルシウム−2−メチルフェノキシドが挙げられる。
II.に示されるM,nはI.と同等である。R’は水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数1〜8のアルキル基を表す。II.が示す化合物は、特に限定されないが、具体的には、リチウムフォルメート、ナトリウムフォルメート、カリウムフォルメート、マグネシウムフォルメート、カルシウムフォルメート、リチウムアセテート、ナトリウムアセテート、カリウムアセテート、マグネシウムアセテート、カルシウムアセテート、リチウムプロピオネート、ナトリウムプロピオネート、カリウムプロピオネート、マグネシウムプロピオネート、カルシウムプロピオネート、リチウムブタノエート、ナトリウムブタノエート、カリウムブタノエート、マグネシウムブタノエート、カルシウムブタノエート、リチウムヘキサノエート、ナトリウムヘキサノエート、カリウムヘキサノエート、マグネシウムヘキサノエート、カルシウムヘキサノエート、リチウムオクタノエート、ナトリウムオクタノエート、カリウムオクタノエート、マグネシウムオクタノエート、カルシウムオクタノエートが挙げられる。
III.に示されるR〜Rは、互いに同一であっても異なっていてもよく、任意の2つまたは3つが結合することにより環構造を有していてもよく、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基;R〜Rの任意の2つが結合した炭素数2〜10のアルキレン基;R〜Rの3つが結合した炭素数6〜12のアルキレン置換アルキレン基[例:−R−CH(−R−)−R−]を表し、かつ、R〜Rについて水素原子以外の場合、他の置換基により置換されていてもよく、かつ、置換基の一部が酸素原子、窒素原子などにより置き換えられていてもよい。R〜Rは、特に限定されないが、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基、シクロドデシル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、メチレン−α−ナフチル基、メチレン−β−ナフチル基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシチレン基、3−オキサペンチレン基、3−アザ−3−メチルペンチレン基、3−メチレンペンチレン基、3−エチレンペンチレン基、3−アザ−3−エチレンペンチレン基などが挙げられる。
〜Rについて水素原子以外の場合、他の置換基により置換されていてもよいが、特に限定されないが、具体的には炭素数1〜6のアルキル基、水酸基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブチルオキシ基、2−メトキシエチレンオキシ基、2−エトキシエチレンオキシ基、アミノ基、(モノ、ジ)メチルアミノ基、(モノ、ジ)エチルアミノ基、(モノ、ジ)プロピルアミノ基、2−ジメチルアミノ(メチル)アミノ基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
III.が示す化合物は、特に限定されないが、具体的には、アンモニア、(モノ、ジ、トリ)メチルアミン、(モノ、ジ、トリ)エチルアミン、(モノ、ジ、トリ)プロピルアミン、(モノ、ジ、トリ)イソプロピルアミン、(モノ、ジ、トリ)ブチルアミン、(モノ、ジ、トリ)sec−ブチルアミン、(モノ、ジ、トリ)t−ブチルアミン、(モノ、ジ、トリ)ペンチルアミン、(モノ、ジ、トリ)ヘキシルアミン、(モノ、ジ、トリ)オクチルアミン、(モノ、ジ、トリ)ドデシルアミン、(モノ、ジ、トリ)シクロペンチルアミン、(モノ、ジ、トリ)シクロヘキシルアミン、(モノ、ジ、トリ)シクロオクチルアミン、(モノ、ジ、トリ)シクロドデシルアミン、(モノ、ジ、トリ)フェニルアミン、(モノ、ジ、トリ)α−ナフチルアミン、(モノ、ジ、トリ)β−ナフチルアミン、(モノ、ジ、トリ)ベンジルアミン、ピロリジン、(Nが2個はいった飽和5員環)、ピペリジン、(Nが2個はいった飽和6員環)、モルホリン、1,3−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキシレンジアミン、ノナンジアミン、ジメチルアミノエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチルブチレンジアミン、テトラメチルヘキシレンジアミン、テトラメチルノナンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)メチルアミン、(モノ、ジ、トリ)エタノールアミン、(モノ、ジ、トリ)プロパノールアミンなどが挙げられる。
IV.に示されるピリジン類は、ピリジン骨格を分子内に有する任意の化合物を使用することができる。特に限定されないが、具体的には、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、3,4−ルチジン、2−ピリジンメタノール、3−ピリジンメタノール、4−ピリジンメタノール、2,2’−ビピリジン、4,4’−ビピリジン、キノリン、2−メチルキノリン、3−メチルキノリン、4−メチルキノリン、o−フェナントロリン、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
これらI.〜IV.に挙げる化合物は、1種類のみ単独で用いてもよいし、複数種類を同時に用いてもよい。これらの化合物は、トータルの使用量として、水素化反応液100質量部あたり、0.005質量部以上10質量部以下、このましくは0.01質量部以上5質量部以下である。使用量が少ないと望ましくない反応を抑制する効果が得られず、多すぎても望ましくない反応を抑制する能力が向上するわけではない。
・反応圧力
本発明における水素化反応の圧力は使用する触媒により適切な値をことなることがあり、必ずしも規定できないが、通常、水素化反応の全圧として0.1MPa〜30MPa、好ましくは0.5MPa〜20MPa、より好ましくは1MPa〜15MPaである。一般に水素ガス分圧が高いほど、水素化に有利となるが、30MPa以上の場合、昇圧のための設備、耐圧構造を有する設備のためのコストが大きくなり、望ましくない。
水素化反応は、水素ガスが存在する条件下で実施するが、水素ガスの他に、水素化反応に不活性であるならば、任意のガスと混合して実施しても構わない。不活性ガスの具体例として、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などが挙げられる。また、反応条件によっては、反応に使用する溶媒がガス成分として有意な量の分圧を有することになるが差し支えない。これらの水素化反応に不活性なガスが存在する場合、分圧として0.01MPa以上、5MPa未満が好ましい。5MPa以上の場合、反応装置が大型化してしまい、設備費を多く必要となってしまう。
・反応温度、反応時間
本発明における水素化反応の温度は使用する触媒により適切な値がことなることがあり、必ずしも規定できないが、通常、60℃〜300℃、好ましくは100℃〜250℃、より好ましくは120℃〜220℃である。高温であるほど反応速度が高まり、水素化に必要な反応時間が短縮され有利となる。本発明では、160℃以上、場合により180℃以上の水素化反応温度を設定することができる。
水素化反応時間は、使用する触媒種、触媒量、反応温度により異なるため、必ずしも限定できないが、通常、5分〜20時間、好ましくは10分〜15時間である。反応時間が短すぎる場合、所望する水素化率を得ることができない。また、反応時間が長すぎる場合、望まない副反応の進行が顕著になり、所望する物性の水素化重合物が得られない場合がある。
・水素化反応の実施形態
本発明における水素化反応の実施形態は公知の任意の方法をとることができる。使用する触媒の形状により適切な反応形態がある場合があるが、例えば、バッチ反応、セミ連続反応、連続反応方式をとることができる。連続反応形式において、プラグフロー形式(PFR)、連続流通撹拌形式(CSTR)を取ることができる。また、固定床反応槽を用いることができる。積極的に混合して反応を行う場合、撹拌により混合する方法、ループ形式にて水素化反応液を循環させて混合する方法などをとることができる。
水素化反応を行ったあとの抜き取り液は一部分割し、水素化反応に再び用いることができる。再び用いることで、水素化にともなう発熱の局所化の回避や、水素化反応率が向上する場合がある。
これらの任意の反応形式において、同一、もしくは異なる2つ以上の反応形式を連結して水素化反応を行うことができる。より高い水素化反応率を目指す場合、固定床を用い、プラグフロー形式で反応させる工程を含むことが望ましい場合がある。
水素化触媒の使用量は、使用する水素化触媒の種類、共重合体濃度、反応形式などにより、触媒の使用量は異なるため限定することが困難であるが、懸濁床で実施する場合、水素化反応液100質量部あたりの触媒使用量は、通常、0.01〜20質量部、好ましくは、0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。使用量が少ない場合、水素化反応に長時間必要となり、また、使用量が多い場合、不均一触媒を混合する動力が多く必要になる。また、固定床を用いる場合、反応溶液あたりの触媒使用量を規定することが困難であり、任意の量を使用することができる。
固定床で水素化反応を行う場合、公知の手法をとることができる。多管式などの縦型の塔型反応器に触媒を充填し、そこにβ−ピネン系重合体溶液と水素を供給して水素化するものであり、このとき、重合体溶液と水素はともに上部から供給する方法、ともに下部から供給する方法、重合対溶液を上部から水素を下部から供給する方法などが挙げられる。
使用した水素化触媒は、水素化反応終了後に必要に応じ共重合体と分離することができる。分離は公知である任意の方法をとることができるが、不均一系触媒を使用した場合、連続もしくはバッチ式濾過、遠心分離、静置による沈降・デカンテーションにより分離できる。
これらの分離手法を用い触媒を分離したとしても、微量の金属成分が共重合体に残留していることがある。この場合、得られるβ−ピネン系重合体の水素化物の性能(耐候性など)が低下することがある。溶存している金属成分を除去するため、凝集沈澱法、吸着法、洗浄法および水相抽出法などを用いることにより残留する金属を分離することができる。
分離により回収された触媒は、一部除去、一部新規触媒を追加するなどの手段を必要によりとった後に、再び水素化反応に使用することができる。
[IV]水素化物
本発明の水素化方法は、β−ピネン単位に由来するシクロヘキセン環のオレフィン性二重結合を水素化するものであるが、共重合に芳香族環を有する単量体を用いた場合、芳香族環の水素化をも包含してよい。
・オレフィン性二重結合の水素化
本発明の水素化物は、空気中の酸素による劣化防止のため、好ましくはβ−ピネン由来のオレフィン性二重結合が重合体中のβ−ピネン単位に対し20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、さらに好ましくは1モル%以下、最も好ましくは0.5モル%以下である。本発明のβ−ピネン系重合体は、そのH−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)における4〜6ppmのプロトンの積分値Aと全プロトンの積分値Bとの比率(A/B)が1.1×10−2以下(β−ピネン単独重合体の場合、水添率80%以上に相当)であり、より好ましくは5.6×10−3以下(同、水添率90%以上に相当)である。上記比率が大きいと、オレフィン性二重結合の量が多くなり劣化しやすい可能性がある。
・芳香族環の水素化
本発明において、芳香族系単量体との共重合体を用いた場合、その水素化物は、耐熱性向上、透過率向上のため、芳香族系単量体由来の芳香族環も水素化に供することが望ましい。芳香族系単量体由来の芳香族環が共重合体中の芳香族系単量体単位に対し50モル%以下、より好ましくは20モル%以下、さらに好ましくは10モル%以下、最も好ましくは1モル%以下である。
・ガラス転移温度(Tg)
β−ピネン系重合体のTgは、示差走査熱量測定法(DSC)により測定することができる。Tgは用いる芳香族系単量体の種類および含有量、オレフィン性二重結合の水添率、芳香族環の水添率により一概に規定できないが、90℃〜250℃が好ましく、120℃〜250℃がより好ましい。Tgが低いと耐熱性が不足し、高過ぎるとβ−ピネン系重合体が脆くなる。
・全光線透過率
β−ピネン系重合体は、特に光学材料に使用する場合は全光線透過率が高い方が好ましい。β−ピネン系重合体の全光線透過率は80%以上が好ましく、85%以上がより好ましい。全光線透過率はJIS−K−7361−1−1997「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法−第1部:ジングルビーム法」に準じて測定される。
・耐光性
β−ピネン系重合体は、耐光性および耐候性が高い方が好ましい。例えばASTM−G53に準じて、UVB光100時間の促進暴露試験を行い、JIS−K−7373に準じ測定したYI(イエロー・インデックス)の試験前と試験後における黄変度(ΔYI)が10以下が好ましく、5以下がより好ましく、2以下が最も好ましい。
・耐熱性
本発明によれば5%質量減少温度が高い重合体を得ることが可能である。本発明のβ−ピネン系重合体の5%質量減少温度は300℃以上が好ましく、320℃以上がより好ましい。5%質量減少温度はJIS−K−7120−1987「プラスチックの熱重量測定法」に準じて熱天秤(TGA)で測定される、質量が5%減少した温度を意味する。
・用法
本発明により得られるβ−ピネン系重合体は、単独で使用することもできるし、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリオレフィン、ポリスチレン、スチレン系ブロック共重合体等の他の重合体と配合した組成物として使用することもできる。組成物として使用する場合、安定剤、滑剤、顔料、耐衝撃性改良剤、加工助剤、補強剤、着色剤、難燃剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防かび剤、抗菌剤、光安定剤、耐電防止剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、離型剤、発泡剤、香料等の各種添加剤;ガラス繊維、ポリエステル繊維等の各種繊維;タルク、マイカ、モンモリロナイト、スメクタイト、シリカ、木粉等の充填剤;各種カップリング剤等の任意成分を必要に応じて配合することができる。
β−ピネン系重合体は、種々の光学材料に使用可能であり、その範囲は特に限定されないが、耐熱性に優れ、低吸水性および高透明性が要求される光学材料に好適である。光学材料としては、例えばレンズ、非球面レンズ、フレネルレンズ、銀塩カメラ用レンズ、デジタル電子カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、プロジェクター用レンズ、複写機用レンズ、携帯電話用カメラレンズ、メガネ用レンズ、青色発光ダイオードを使用するデジタル光ディスク装置用非球面ピックアップレンズ、ロッドレンズ、ロッドレンズアレー、マイクロレンズ、マイクロレンズアレー、比較的高温の熱環境下で使用する上記の各種レンズ、各種レンズアレー、ステップインデックス型、グラジエントインデックス型、シングルモード型、マルチコア型、偏波面保存型、側面発光型等の光ファイバー、光ファイバーコネクタ、光ファイバー用接着剤、デジタル光ディスク(コンパクトディスク、光磁気ディスク、デジタルディスク、ビデオディスク、コンピュータディスク、導光体、光拡散板、液晶用ガラス基板代替フィルム、位相差フィルム、フラットパネルディスプレー用反射防止フィルム、タッチパネル用基板、透明導電性フィルム、反射防止フィルム、防げんフィルム、電子ペーパー用基板、有機エレクトロルミネッセンス用基板、プラズマディスプレー用前面保護板、プラズマディスプレー用電磁波防止板、フィールドエミッションディスプレー用前面保護板、圧電素子を使用し特定部位の光を前面拡散させる導光板、偏光子、検光子等を構成するプリズム、回折格子、内視鏡、高エネルギーレーザーを導波する内視鏡、ダハミラーに代表されるカメラ用ミラーもしくはハーフミラー、自動車用ヘッドライトレンズ、自動車用ヘッドライト用リフレクター、太陽電池用前面保護板、住宅用窓ガラス、移動体(自動車、電車、船舶、航空機、宇宙船、宇宙基地、人工衛星等)用窓ガラス、窓ガラス用反射防止フィルム、半導体露光時の防塵フィルム、電子写真感光材用保護フィルム、紫外光により書き込みもしくは書き換え可能な半導体(EPROM等)封止材、発光ダイオード封止材、紫外光発光ダイオード封止材、白色発光ダイオード封止材、SAWフィルター、光学的バンドパスフィルター、第二次高調波発生体、カー効果発生体、光スイッチ、光インターコネクション、光アイソレーター、光導波路、有機エレクトロルミネッセンスを使用した面発光体部材、半導体微粒子を分散させた面発光体部材、蛍光物質を溶解または分散させた蛍光体等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
重合もしくは水素化反応における評価は以下の方法によった
○数平均分子量及び重量平均分子量
何れも、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づき、ポリスチレン換算値で求めた。ここでは、GPC装置として、東ソー株式会社製のHLC−8020(品番)を用い、カラムとして、東ソー株式会社製のTSKgel・GMH−Mの2本とG2000Hの1本とを直列に繋いだものを用いた。
○モノマー転化率
重合停止時の溶液をガスクロマトグラフィー分析することにより求めた。ここでは、ガスクロマト本体としてGC14−B(島津製作所)、カラムとして、DB−1MSを用いた。
○水素化率
JEOL製 400MHzマグネットの核磁気共鳴装置を用いて室温にて10〜1000回積算にて測定した。得られたH−NMRスペクトル(テトラメチルシラン(TMS)のプロトンを0ppmとする)。4.5〜6.0ppmの積分値をβ−ピネン由来のオレフィン性二重結合とし、残存二重結合率を算出した。
参考例1
充分乾燥させたガラス製コック付フラスコを充分に窒素置換した後、これに、脱水したN−ヘキサンの1100質量部と、脱水した塩化メチレンの1100質量部と、蒸留精製したβ−ピネンの40質量部と、脱水したトリエチルアミンの4.5質量部とを加え、−78℃の温度に冷却した。更に、−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液の70質量部を加え、重合を開始した。10分間重合した後、メタノールの10質量部を添加して、重合を終了させた。その後、室温にて減圧して塩化メチレンを除いた後、蒸留水の800質量部にクエン酸の20質量部を添加した水溶液を添加し、30分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。かくして得られたメチルシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(60/30vol%)の混合溶媒の10000質量部に再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン重合体(A1)の39質量部を得た。この得られたβ−ピネン重合体(A1)の重量平均分子量は53,000、数平均分子量は32,000であった。
参考例2
充分乾燥させた撹拌装置付き耐圧容器を充分に窒素置換した後、これに、脱水したN−ヘキサンの1100質量部と、脱水した塩化メチレンの1100質量部と、蒸留精製したβ−ピネンの32質量部およびイソブチレン8質量部と、脱水したトリエチルアミンの4.5質量部とを加え、−78℃の温度に冷却した。更に、−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液の70質量部を加え、重合を開始した。10分間重合した後、メタノールの10質量部を添加して、重合を終了させた。その後、室温にて減圧して塩化メチレンを除いた後、蒸留水の800質量部にクエン酸の20質量部を添加した水溶液を添加し、30分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、触媒を除去した。かくして得られたメチルシクロヘキサン層をメタノール/アセトン(60/30vol%)の混合溶媒の10000質量部に再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン/イソブチレン共重合体(A2)の39質量部を得た。β−ピネン/イソブチレン共重合体(A2)のH−NMRを測定したところ、β−ピネンの含量は81質量%、イソブチレンは19質量%であった。この得られたβ−ピネン/イソブチレン共重合体(A2)の重量平均分子量は45,000、数平均分子量は28,100であった。
参考例3
十分乾燥させたガラス製コック付フラスコを、十分窒素置換した後、脱水したN−ヘキサン184質量部、脱水した塩化メチレン210質量部、脱水したジエチルエーテル0.5質量部を加え、−78℃に冷却した。さらに−78℃で撹拌しながら、二塩化エチルアルミニウムの1.0mol/Lヘキサン溶液7.2質量部を加えた。さらに−78℃に保持した状態でp−ジクミルクロライドの0.1mol/Lヘキサン溶液3.0質量部を加えたところ赤燈色に変化した。ただちに蒸留精製したβ−ピネン60質量部を1時間かけて添加したところ次第に濃燈色になり、溶液の粘度が上昇した。β−ピネンの添加終了後、メタノール30質量部を添加して、反応を終了した。蒸留水100質量部にクエン酸5質量部を添加した水溶液を添加し、5分撹拌した。水層を抜き取り、蒸留水を加えて水層が中性になるまで洗浄し、アルミ化合物を除去した。得られた有機層をメタノール/アセトン(60/40vol%)の混合溶媒5000質量部に再沈後、十分に乾燥してβ−ピネン重合体(A3)60質量部を得た。モノマー転化率は100%であった。得られたβ−ピネン重合体(A3)の重量平均分子量は116,000、数平均分子量は51,000、ガラス転移温度は95℃であった。
実施例1
電磁撹拌機、圧力ゲージ、ガス導入管を備えたSUS316製オートクレーブを用い、5%パラジウム/カーボン触媒(エボニックデグサジャパン製、E1002NN/W)0.3質量部及びシクロヘキサン24質量部、参考例1で得られたβ−ピネン重合体(A1)6質量部、トリエチルアミン0.1質量部を入れ、1MPaの水素で内部を3回置換した。次に、水素5MPaで加圧し、オートクレーブを220℃に昇温した後、水素でオートクレーブ内の全圧を8MPaとなるように圧力を調整した。反応で消費される分の水素を常時供給することにより、オートクレーブの全圧を8MPaに維持しながら反応を行った。220℃に到達時点から5時間反応させ、冷却・脱圧して粗反応液を得、0.5μmメッシュのテフロン(登録商標)製濾布を用いて触媒を加圧濾過により濾別除去した。濾液のうち5質量部をメタノール/アセトン(60/30vol%)50質量部用いて再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
実施例2
水素化触媒として、ニッケル/シリカ触媒(日揮化学株式会社製、N102F)0.3質量部、反応温度を180℃、トリエチルアミンに代えてピリジン0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
実施例3
水素化触媒として、5%パラジウム/アルミナ触媒(NEケムキャット社製)6.0質量部、反応温度を160℃、トリエチルアミンに代えてt−ブトキシカリウム0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
比較例1
t−ブトキシカリウムを不使用とし、反応温度を100℃にしたこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
比較例2
ピリジンを不使用としたこと以外は、実施例2と同様の操作を行い、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
比較例3
t−ブトキシカリウムを不使用としたこと以外は、実施例3と同様の操作を行い、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
実施例4
水素化原料として参考例2で得られたβ−ピネン重合体(A2)、水素化触媒としてニッケル/珪藻土触媒(日揮化学株式会社製、N103L)6.0質量部、反応温度を180℃、トリエチルアミンに代えてオクタン酸ナトリウム0.1質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
比較例4
オクタン酸ナトリウムを不使用としたこと以外は、実施例4と同様の操作を行い、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
実施例5
電磁撹拌機、圧力ゲージ、ガス導入管を備えたSUS316製オートクレーブを用い、5%/アルミナ触媒(NEケムキャット社製)1.5質量部及びシクロヘキサン10質量部、トリエチルアミン0.02質量部を入れ、1MPaの水素で内部を3回置換した。次に、水素5MPaで加圧し、オートクレーブを200℃に昇温した後、参考例3で得られたβ−ピネン重合体(A3)3質量部及びシクロヘキサン14質量部を加え、水素でオートクレーブ内の全圧を8MPaとなるように圧力を調整した。反応で消費される分の水素を常時供給することにより、オートクレーブの全圧を8MPaに維持しながら反応を行った。200℃に到達時点から5時間反応させ、冷却・脱圧して粗反応液を得、0.5μmメッシュのテフロン(登録商標)製濾布を用いて触媒を加圧濾過により濾別除去した。濾液のうち5質量部をメタノール/アセトン(60/30vol%)500質量部用いて再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体のガラス転移温度は131℃であった。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
実施例6
電磁撹拌機、圧力ゲージ、ガス導入管を備えたSUS316製オートクレーブを用い、ニッケル/シリカアルミナ触媒(日揮化学株式会社製、E22)1.5質量部及びシクロヘキサン24質量部、参考例3で得られたβ−ピネン重合体(A3)3質量部、トリエチルアミン0.02質量部を入れ、1MPaの水素で内部を3回置換した。次に、水素5MPaで加圧し、オートクレーブを200℃に昇温した後、水素でオートクレーブ内の全圧を8MPaとなるように圧力を調整した。反応で消費される分の水素を常時供給することにより、オートクレーブの全圧を8MPaに維持しながら反応を行った。200℃に到達時点から5時間反応させ、冷却・脱圧して粗反応液を得、0.5μmメッシュのテフロン(登録商標)製濾布を用いて触媒を加圧濾過により濾別除去した。濾液のうち5質量部をメタノール/アセトン(60/30vol%)500質量部用いて再沈殿後、充分に乾燥して、β−ピネン系重合体を得た。得られた重合体のガラス転移温度は131℃であった。得られた重合体の分析を行った結果を表1に示す。
Figure 2009270097
実施例は反応時間が短くかつ水素化添加率も99%以上と高いことがわかる。実施例3と比較例1との比較から反応温度をさげると水素化反応の速度が遅いことがわかる。一方、比較例2〜4に示すようにI〜IVから選ばれる化合物を添加せず、反応温度を上げる水素化反応速度は増大するが、分子量が低下してしまうことがわかる。

Claims (4)

  1. β−ピネン単位を30質量%以上含有する重合体の主鎖および/または側鎖にある不飽和結合を飽和結合に変換し、β−ピネン系重合体を得る水素化反応において、金属を含む不均一系水素化触媒を用い、かつ、以下I〜IVから選ばれる化合物の少なくとも1種類を共存させることを特徴とするβ−ピネン系重合体の水素化方法。
    I. M(OR)
    II. M(OC(=O)R’)
    III. R
    IV. ピリジン類
    (ただし、Mはリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムから選ばれ、
    Rは、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜11のアラルキル基を表し、
    nは1または2を表し、
    R’は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、
    〜Rは互いに異なっていてもよく、任意の2つ以上が結合することにより環構造を有していてもよく、それぞれ、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜11のアラルキル基、炭素数2〜10のアルキレン基または炭素数6〜12のアルキレン置換アルキレン基を表し、かつ、R〜Rについて水素原子以外の場合、他の置換基により置換されていてもよく、かつ、置換基の一部が酸素原子、窒素原子などにより置き換えられていてもよい)
  2. 水素化反応を、160℃以上で実施することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 水素化反応を、180℃以上で実施することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られ、H−NMRスペクトルにおける4〜6ppmのプロトンの積分値Aと全プロトンの積分値Bとの比率(A/B)が0.002以下であるβ−ピネン系重合体。
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