JP2009268390A - 高感度核酸マイクロアレイ及びその製造方法 - Google Patents

高感度核酸マイクロアレイ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】検出感度の低い核酸プローブについても、確実にシグナル強度を向上させることが可能な核酸マイクロアレイを提供する。
【解決手段】無機能プローブを固定している核酸マイクロアレイ。前記無機能プローブのうち、少なくとも1種類の無機能プローブに対して、2種類以上の間接プローブがハイブリットを形成している。
【選択図】図2

Description

本発明は、医療診断、遺伝子変異研究等に利用可能な、核酸マイクロアレイ及びその製造方法に関する。
核酸マイクロアレイとは、担体上に多数の核酸プローブを、高密度にそれぞれ独立に固定化したシステムである。このような核酸マイクロアレイは、例えば、複数の核酸塩基配列に関する発現量や、特定の核酸塩基配列の配列自体を解析するために利用可能なシステムである。
核酸マイクロアレイ上に固定されている核酸プローブは、該核酸プローブの塩基配列と相補である配列を有する核酸(標的核酸)をハイブリダイゼーションによりキャプチャーし、標的核酸を検出するための、一種のセンサーとして使用することができる。すなわち、核酸マイクロアレイは、核酸マイクロアレイに固定されている核酸プローブに対して、検査対象となる核酸試料をハイブリダイズさせ、配列特異的に形成したハイブリッドを何らかの手段(例えば、ハイブリダイズした核酸試料に施した蛍光物質等)により検出することで、複数の核酸プローブに対応する核酸試料中の標的核酸を、一度に定量的又は定性的に調べることができる。
核酸マイクロアレイの製造方法としては、あらかじめ調製した核酸プローブをスライドガラスやシリコンなどの基板に固定する方法と、基板上で核酸プローブを直接合成する方法が知られている。
基板上で核酸プローブを直接合成する方法としては、光リソグラフィー法が挙げられる(非特許文献1:Science 251,767−773(1991))。この方法によれば、光照射で選択的に除去される保護基をもつ物質を使用し、フォトリソグラフィー技術と固相合成技術を組み合わせて、微小なマトリックスの所定の領域(反応部位)に選択的に核酸を合成(マスキング)することによって、核酸マイクロアレイを作製することができる。
また、あらかじめ調製した核酸プローブを固定する方法としては、主にスポッティング法が挙げられる(非特許文献2:Science 270, 467−470(1995))。この方法は、あらかじめPCRや人工的な合成によって作製した核酸プローブを含む溶液を、通常は「スポッター」または「アレイヤー」と称される特別の装置を用いて、数nlから数plの微小体積でチップ表面に並べ、基板上の特定領域に固定する技術である。
当該方法に使用されるスポッターは、基板上の目標の位置に核酸プローブをスポットするために、定められた位置に一定量のサンプルを数10μm〜数100μmの大きさで定量的にスポットできる性能を有する必要がある。
核酸マイクロアレイに適用可能なスポット方式の種類に関しては、ピン先端の固相への機械的な接触によるピン方式、インクジェットプリンターの原理を利用したインクジェット方式、スポッター内に加熱によって泡を生じさせてその圧を利用してサンプルを噴出させるバブルジェット(登録商標)方式、毛細管によるキャピラリー方式などによって作製されることが多い。このようなスポット処理が行われた後は、必要に応じて、UV照射によるクロスリンク形成、表面のブロッキング、洗浄等の後処理が行われる。
スポットされた核酸プローブを基板上に共有結合で固定化させるため、核酸プローブの末端にはアミノ基、アルデヒド基、SH基、ビオチン等が導入されていることが多く、基板はアミノ基、アルデヒド基、エポキシ基等を有する各種シランカップリング剤で表面処理されていることが多い。
これらの核酸マイクロアレイにより、核酸試料中の標的核酸をハイブリダイゼーションによって検出する際には、検出対象となる標的核酸の量が少ないと、その検出が困難であることが多い。とはいえ、核酸試料を得るための生体組織や培養細胞等は微量である場合が多く、必ずしも解析に充分な量が得られるとは限らない。
そこで現在では、遺伝子転写産物をT7プロモーターやSP6プロモーター等により増幅し、充分な核酸試料を検体としてハイブリダイゼーションに使用することにより、検出感度を向上させる努力がなされている。その一方で、使用する検体量を増加させることはバックグラウンドシグナルの増加につながり、必ずしも検出感度の向上に貢献しない場合がある。また、使用する検体量を増加させると、転写量の多い遺伝子の検出量が飽和してしまうことにより、かえって定量性を低下させてしまうなどの悪影響もある。
核酸マイクロアレイの検出感度を向上させる手法としては、その他に、検出対象となる1種類の標的核酸に対し、複数種類の核酸プローブを設計、作製し、それらを混合して同じ位置に固定する手法がある(特許文献1)。しかしながら、核酸プローブを担体上に安定的に固定するためには、核酸プローブの修飾が必要となるため、本手法は、多種類の核酸プローブの修飾と修飾後の精製に多大なコストがかかる場合があった。
また、いったん核酸マイクロアレイに固定した核酸プローブに、検出感度が不充分な核酸プローブが存在する場合には、この核酸プローブを再度設計する必要があるが、核酸マイクロアレイ担体上に、設計変更した核酸プローブを含む全ての核酸プローブを再度固定し直すことは極めて効率が悪かった。
加えて、設計した核酸プローブの検出感度等の性能は、実験的に確認しなくてはわからない。このため、核酸プローブを入れ替えた核酸マイクロアレイを作製しても、再設計によって検出感度が向上する保証は無く、場合によっては煩雑な作業が全て無駄に終わる場合があり、非効率的であった。
Science 251,767−773(1991) Science 270, 467−470(1995) 特開2002−330767号公報
本発明の目的は、検出感度の低い核酸プローブについても、確実にシグナル強度を向上させることが可能な核酸マイクロアレイを簡便に提供することにある。
本発明者は、鋭意研究の結果、「検出対象となる標的核酸に対してハイブリダイズする複数種類の核酸プローブを、核酸マイクロアレイ上の同一位置に混合して固定すること」、また、「核酸プローブの固定化が、核酸マイクロアレイ上にあらかじめ固定化された無機能プローブに対する間接プローブのハイブリダイゼーションによってなされること」が、上記課題の解決に極めて効果的なことを見出した。ここに、「同一位置に混合して固定」とは、無機能プローブにハイブリダイズすることによって、核酸プローブが担体に固定することを言う(核酸プローブが担体に直接固定されているわけではない)。
すなわち、本発明の核酸マイクロアレイは、無機能プローブを固定している核酸マイクロアレイであって;
前記無機能プローブのうち、少なくとも1種類の無機能プローブに対して、2種類以上の間接プローブがハイブリットを形成しているものである。
本発明により、検出感度の低い核酸プローブについても、確実にシグナル強度を向上させることが可能となる。
また本発明により、核酸プローブを基板に固定化するための修飾が不要となり、通常の核酸マイクロアレイの製造に必要であったアレイヤー等の大型装置を必ずしも必須とすることなく、簡便に所望の核酸プローブを固定化した核酸マイクロアレイを得ることが可能となる。
従って、本発明によれば、検出感度の向上等を意図した核酸マイクロアレイの改良が、極めて効率的に実施できる。また、核酸プローブの固定化手法がハイブリダイゼーションによるものであるため、一旦作製した核酸マイクロアレイに対して再度追加で核酸プローブを固定することも可能となる。
(核酸マイクロアレイ)
本発明の核酸マイクロアレイは、無機能プローブを固定している核酸マイクロアレイである。
(無機能プローブ)
本発明において、「無機能プローブ」とは、検査対象となる核酸試料とはハイブリダイズしない核酸プローブをいう。このような無機能プローブのみでは、細胞や組織で発現している遺伝子の定量、定性といった有効な機能を成さない。無機能プローブは、アレイに搭載されている複数の配列間で、少なくとも計算値の上では、Tmが同一となるように設計されることが望ましい(この「Tm」に関しては、例えば、Joseph Sambrook、David W. Russell著、書籍" Molecular Cloning "、Cold Spring Harbor Laboratory Press発行、の該当頁を参照することができる)。
本発明において、上記「Tmが同一」とは、比較対象たる複数の配列間で、Tmの差の絶対値が、10℃以下(更には、5℃以下)であることが好ましい。
本発明においては、上記した「機能プローブ」としては、例えば、「何らかの転写産物を検出する目的で設計されたプローブ」が好適に使用可能である。他方、上記した「無機能プローブ」としては、例えば、「ネガティブコントロールとして設計されたプローブ」が好適に使用可能である。
本発明においては、例えば、後述する「実施例」に記載されたように、生体サンプルを用いたハイブリダイゼーションを行った場合に、シグナルが検出されないものが、「無機能プローブ」として好適に使用可能である。
更に、無機能プローブの配列長は、複数の無機能プローブ間で同一長であることが望ましい。また、プローブ内で立体構造を取りにくい配列であること、複数の無機能プローブ間で、配列中のGC含量が同一であることが望ましい。
(無機能プローブの設計)
このような無機能プローブは、例えば、以下の方法により設計することができる。
(1)既定の塩基長のアデニン、チミン、グアニン、シトシンからなるランダムな配列群から、グアニンおよびシトシンの含有率(GC含量)が一定又はほぼ一定となる配列群を選択する。ここに、「GC含量がほぼ一定」とは、複数の無機能プローブ候補配列におけるGC含量のCV値が20%以下であることが好ましく、更には10%以下(特に5%以下)であることが好ましい。
(2)前記配列群について、検査対象となる生物種を対象とした、例えばBlast(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)などの公開プログラムよる相同性検索を実施し、任意のスコアを閾値としてスクリーニングを実施する。
(3)上記のごとく選択された配列からなる核酸プローブ(群)は、それらを用いて一旦核酸マイクロアレイを作製し、該生物種の市販のリファレンストータルRNA等を核酸試料として用いて、ハイブリダイゼーションがおこらないことを検証しておく。
(無機能プローブの固定化)
上記無機能プローブは、核酸マイクロアレイに固定化される。固定化する無機能プローブの数は、特に制限されない。核酸マイクロアレイには、無機能プローブの他に、機能プローブが固定化されていてもよい。「機能プローブ」とは、検査対象となる核酸試料とハイブリダイズする核酸プローブをいう。
なお、機能プローブが核酸マイクロアレイ上に存在しない場合(すなわち、機能プローブが核酸マイクロアレイに直接固定化されていない場合)も、本発明の範囲内である。
(核酸マイクロアレイの作製)
本発明の核酸マイクロアレイとしては、どのような基板上に作製されたアレイでも適用が可能である。平面基板を使用する場合には、例えばフォトリソグラフィー法、スポッティング法により無機能プローブを固定することができる。貫通孔基板を使用する場合には、貫通孔の内壁に固定することもできる。また、貫通孔にゲルを保持し、ゲル内に無機能プローブを保持することも可能である。
アレイ性能を維持するためには、上記無機能プローブを基板に大量に固定化できることが望ましく、また、アレイの使用法上からは、常にアレイを湿潤状態で取り扱うタイプの核酸マイクロアレイが望ましい。好ましくは、基板に複数の貫通孔が存在し、それら貫通孔にはゲルを介してプローブが固定されている核酸マイクロアレイが好適に使用される。
そのような核酸マイクロアレイとしては、特開2000−60554号に記載の核酸マイクロアレイや、繊維法により製造された貫通孔型核酸マイクロアレイ(特開2000−245460号)が例示できる。
(繊維法による貫通孔型核酸マイクロアレイ)
上記繊維法による貫通孔型核酸マイクロアレイでは、中空繊維の中空部、すなわち核酸マイクロアレイの貫通孔中のゲルに核酸プローブが固定されている。よって、核酸プローブは、3次元構造体に、空間自由度を有して固定されていることとなる。更には、異なる種類の核酸プローブは物理的な隔壁を隔てて固定されている。
上記繊維法による貫通孔型核酸マイクロアレイは、平面基板上に高密度に核酸プローブが固定されている核酸マイクロアレイと異なり、核酸プローブが空間自由度を有して固定されている。したがって、核酸プローブは、リンカー、スペーサー等のハイブリダイゼーションに関与しない余分な配列を結合する必要なく設計され、核酸マイクロアレイに固定されることが可能である。また、平面基板上に固定化する通常の核酸マイクロアレイに比較し、より多くの核酸プローブを固定化することが可能である。
(間接プローブ)
上記無機能プローブを固定化した核酸マイクロアレイに対し、無機能プローブに相補な塩基配列と標的核酸の相補配列とを有する核酸プローブ(以下、「間接プローブ」と称す)をハイブリダイゼーションすることにより、所望の位置に標的核酸とハイブリダイズする核酸プローブを固定した核酸マイクロアレイを製造することができる。
間接プローブは、無機能プローブの相補配列部分と標的核酸の相補配列部分のTmの差が、なるべく近接していることが望ましい。
(無機能プローブの相補配列部分と標的核酸の相補配列部分のTm)
無機能プローブの相補配列部分のTmが、標的核酸の相補配列部分のTmに比較して著しく高い場合は、標的核酸の相補配列部分のTmを元にハイブリダイゼーション条件を決めると、無機能プローブの相補配列部分は、ミスマッチを許容したハイブリダイゼーションとなる可能性がある。また、無機能プローブ相補配列部分のTmに合わせてハイブリダイゼーション条件を決めると、標的核酸の相補配列部分にとっては極めてストリンジェンシーの高いハイブリダイゼーション条件となり、ハイブリダイゼーションが起こりにくくなる可能性がある。
逆に、無機能プローブの相補配列部分のTmが、標的核酸の相補配列部分のTmに比較して著しく低い場合も、各部分のハイブリダイゼーション条件に大きな差が生じるため、何れか一方の条件を最適化した際に、もう一方のハイブリダイゼーションの条件は良好とはならない可能性がある。
よって、無機能プローブの相補配列部分と、標的核酸の相補配列部分のTmの差は、可能な限り近接していることが望ましく、その差が10℃以内であることが望ましい。
間接プローブにおいて、無機能プローブの相補配列部分と、標的核酸の相補配列部分のTmをそろえる方法としては、それらを構成する配列の、配列長、及びGC含量を統一することにより調製が可能である。特異性を補完するためにGC含量が揃えられない場合は、配列長を一定の範囲で変更することも可能である。
(ハイブリットの形成)
本発明において、「少なくとも1種類の無機能プローブに対して、2種類以上の間接プローブがハイブリットを形成している」とは、「無機能プローブの相補配列部分」は同一であるが、「標的核酸の相補配列部分」が異なる複数種類の間接プローブを、同一の無機能プローブに対して競合的にハイブリダイズさせることによる。「標的核酸の相補配列部分が異なる」とは、標的核酸配列中の異なる部分に相補的な配列を間接プローブの一部として用いることをいう。
(標的核酸の検出感度向上)
以下に、複数種類の間接プローブを使用することによって、標的核酸の検出感度を向上させる必要性について記載する。
核酸マイクロアレイには、大きく分けてcDNAを核酸プローブとして使用するcDNAマイクロアレイと、人工合成したオリゴDNAを核酸プローブとして使用するオリゴDNAマイクロアレイが存在する。近年ではコストや特異性の観点から有利と考えられるオリゴDNAマイクロアレイが多く使用されている。
しかしながら、オリゴDNAマイクロアレイは、検出すべき標的核酸分子の量が少ないと、得られるシグナルの強度がバックグラウンドシグナルの強度に埋もれてしまうため、低発現量の遺伝子に関しては検出感度が満足でない場合がある。また、データの信頼性を維持する必要性から、更にシグナル強度を犠牲とする実験手法を用いる場合がある。
そのような実験手法の例として、オリゴDNAマイクロアレイを使用する場合には、核酸試料の立体構造形成等に由来する反応性の低下や、特異性の低下を防ぐ目的で、オリゴDNAプローブの長さに合わせた核酸試料の断片化が必要とされることが挙げられる。
核酸試料を断片化すると、1つの核酸断片が持つ標識物質の量は、断片化の頻度に反比例する。オリゴDNAプローブは、特異性を維持できると考えられる設計条件及びハイブリダイゼーション条件の範囲内では、プローブ一分子あたり基本的に一つの核酸断片しか捕捉できない。したがって、核酸試料を断片化することで、一分子当たりが持つ標識物質の量が少なくなり、オリゴDNAプローブに捕捉される標識物質の量も少なくなる。つまりは、検出されるシグナル強度は小さくなる。
本発明はこのようなオリゴDNAマイクロアレイの検出感度を向上させる手段として、好適に用いられる。
(標的核酸の検出感度向上の理由)
一方、核酸マイクロアレイは、より多くの標的核酸を高効率で捕捉する目的で、従来に比較してより多くの核酸プローブを固定化できるような構造への移行が進められてきた。そのような核酸マイクロアレイとしては、上述の「板に複数の貫通孔が存在し、それら貫通孔にはゲルを介して核酸プローブが固定されている核酸マイクロアレイ」などが挙げられる。
このような製法で作製される、核酸プローブ固定化能の高い核酸マイクロアレイにおいては、性能の頑健性が高いため、核酸プローブ分子を現在の二倍量固定化したとしても、シグナル強度、検出感度の向上にはほとんど寄与しない場合が多い。また逆に、仮に核酸プローブ固定化量をもとの量の半分にしたとしても、同一核酸試料をハイブリッドした場合のシグナル強度は数%から十数%の減少にとどまる。
このことは、核酸プローブ固定化能の大きい核酸アレイから得られるデータの再現性の高さに寄与している。また、このような現象が生じる理由は下記のように考えられる。
すなわち、固定化された核酸プローブ量が少ない場合は、核酸プローブの量がシグナル強度の限定要因となるため、シグナル強度がその量に比例するが、固定化された核酸プローブの量が多い場合は、標的核酸の量がシグナル強度の限定要因となるため、核酸プローブの量が多少変動しても、シグナル強度に大きな影響は与えないと考えられる。
以上のように考えるのであれば、同一標的核酸に対する核酸プローブを複数種類作製し、それを核酸マイクロアレイの同一スポット上に固定することにより、例え核酸プローブ一種類あたりの固定化量が減少したとしても、それを補って余りあるほどに検出感度を向上させることができる。
本発明の手法は、検出感度の向上だけでなく、例えば未知のスプライシングバリアントによる、核酸プローブの機能の無効化を補完する手段としても有効である。例えば、ある組織XにおいてAという遺伝子の転写産物を構成する一つのエクソンが、その他の組織Yにおいてイントロンとしてスプライシングされる場合には、当該配列部分に対応する核酸プローブを設計したとしても、組織Yでは遺伝子Aの転写産物を検出することは不可能である。しかしながら、遺伝子Aの塩基配列の複数箇所に対応する複数種類の核酸プローブを設計しておけば、一つの核酸プローブが機能しなかったとしても、別の核酸プローブが組織Yにおいて遺伝子A由来の核酸断片を捕捉できる可能性がある。したがって、全体として核酸マイクロアレイの検出結果が補完され、間違った結果を与える危険性が軽減される。
(核酸プローブ配列間の間隔)
同一標的核酸に対する複数の核酸プローブは、断片化された核酸試料の鎖長を勘案し、同一の核酸断片を奪い合わないように設計することが好ましい。すなわち、ひとつの核酸プローブがハイブリダイズする部位と、別の核酸プローブがハイブリダイズする部位が、標的核酸中で一定の間隔を確保していることが望ましい。
例えば、核酸試料の断片化鎖長を90merと仮定した場合、核酸プローブを30merで設計するのであれば、複数の核酸プローブは、同一の核酸断片を奪い合わないように60mer以上の間隔を空けて標的核酸にハイブリダイズするように設計されることが望ましい。
すなわち、同一の標的核酸に対する複数の核酸プローブ間で確保されるべき「好ましい間隔」は、下記で表される。
C=A−B
A:推定される核酸断片の鎖長
B:同一標的核酸上に複数設計される核酸プローブの鎖長
C:同一標的核酸に対する複数の核酸プローブ間で、確保されるべき間隔
同一標的核酸に対する複数の核酸プローブは、上述のように間接プローブとして無機能プローブにハイブリダイズすることができる。
(複数種類の間接プローブの同一スポットへの搭載)
複数種類の間接プローブを同一スポットに固定するには、無機能プローブの相補配列部分の配列を同一とした複数種類の間接プローブを作製し、該無機能プローブを固定化した核酸マイクロアレイに対しハイブリダイズすればよい。特に問題の無い限り、複数種類の間接プローブを等量混合した上で、ハイブリダイゼーションに用いることができる。また、例えば遺伝子Aに対応する間接プローブA1、A2、A3があり、それらを何れも同じ無機能プローブに同時に固定化させる場合には、A1、A2、A3の分子量の合計が、それぞれを単独で使用するときと等量になるようにすることが望ましい。つまり、A1、A2、A3それぞれの量が通常使用時の3分の1ずつとなるように混合することが望ましい。その他の条件については、上述の無機能プローブを固定化したアレイに間接プローブをハイブリダイズする手法に従うことが望ましい。
(複数回に分けて行われるハイブリダイゼーション)
本発明において、「間接プローブのハイブリダイゼーションが、複数回に分けて行われることを含む」とは、例えば、遺伝子Aに対応する間接プローブA1が既にハイブリダイズ済みである核酸マイクロアレイに対して、A2、A3を新たにA1と同一の位置にハイブリダイゼーションによって固定することである。この場合は、間接プローブA1を固定化した際と同じ処理を、間接プローブA2、A3を用いて実施することで、新たに最初からアレイ化をすることなく、遺伝子Aに対する検出感度の高感度化を達成できる。
以上のように、本発明においては、無機能プローブに間接プローブを固定化する手法と、同一標的核酸に対する複数の核酸プローブを混合して用いる手法を合わせることにより、高感度の核酸マイクロアレイを極めて簡便に作製することが可能となった。また、アレイ製造後に低感度プローブが判明した場合においても、無機能プローブが固定かされた核酸マイクロアレイ、もしくは既に間接プローブがハイブリダイズされている核酸マイクロアレイに対して新たに間接プローブをハイブリダイゼーションさせるだけという極めて簡便な手法で、所望の標的核酸に対する核酸プローブの高感度化を実現することが可能となった。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。
<実施例1>
無機能プローブが固定された核酸マイクロアレイの作製
1.プローブ配列の設計
マイクロソフト社のソフトウェアー「EXCEL」のRNDBETWEEN関数を使用し、1から4までの整数をランダムに30個発生させ、それをつなげて1から4までの数値のみから構成される30桁の数値とした。
上記により得られた「数値」において、数値1をA、数値2をT、数値3をC、数値4をGと置き換えることにより、ATGCの30塩基によるランダム配列を得た。
上記の操作を50000回繰り返すことにより、30塩基からなるランダムな配列、50000種を得た。
得られた50000種の配列につき、GとTの和が15(AとTの和が15)となる配列のみを抜粋した。
上記にて得られた配列をNCBI(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のヒトRefSeqデータベースに登録されている配列に対して、Blastnにより相同性検索を実施した。
得られた結果から、既にデータベースに登録されている配列と、相同性の小さい配列(192種類)を無機能プローブとして無作為に選択した(表1〜4を参照;配列番号1〜192)。ここに、「相同性の小ささ」は、Blastの結果のファイルの大小で判断した。
次に、表1〜4に記載の無機能プローブを、以下のように核酸マイクロアレイに固定した。
2.無機能プローブの調製
まず、無機能プローブとなるオリゴヌクレオチドをDNA自動合成装置により合成した。合成の際、最終段階で、アミノリンクTM(PEバイオシステムズ社製)を該オリゴヌクレオチドに反応させ、次いで脱保護操作を行うことにより、各オリゴヌクレオチドの末端にアミノヘキシル基が導入された5’−O−アミノヘキシルオリゴヌクレオチドを調製した。次いで、それらオリゴヌクレオチドに、無水メタクリル酸を反応させ、5’末端ビニル化オリゴヌクレオチドを調製した。
3.中空繊維束薄片の製造
図1に示す配列固定器具を利用して、中空繊維束を製造した。なお、図1中のx、y、zは直交の3次元軸であり、x軸は繊維の長手方向と一致する。
図1を参照して、直径0.32mmの孔11が、孔の中心間距離を0.42mmとして、縦12列横各19列で合計228個設けられた厚さ0.1mmの多孔板21、2枚を準備した。これらの多孔板を重ね合わせて、そのすべての孔に、ポリカーボネート中空繊維31(三菱エンジニアリングプラスチック社製 カーボンブラック1質量%添加)を1本ずつ、通過させた。
X軸方向に各繊維に0.1Nの張力をかけた状態で2枚の多孔板の位置を移動させて、中空繊維の一方の端部から20mmの位置と100mmの位置の2ヶ所に固定した。即ち、2枚の多孔板の間隔を80mmとした。
次いで、多孔板間の空間の周囲3面を、板状物41で囲った。このようにして上部のみが開口状態にある容器を得た。
次に、この容器の上部から容器内に樹脂原料を流し込んだ。樹脂としては、ポリウレタン樹脂接着剤(日本ポリウレタン工業(株)ニッポラン4276、コロネート4403)の総重量に対し、2.5質量%のカーボンブラックを添加したものを使用した。25℃で1週間静置して樹脂を硬化させた。次いで多孔板と板状物を取り除き、中空繊維束を得た。
ゲル前駆体重合性溶液として、表5に示す質量比で混合した溶液を調製した。核酸プローブとしては192種類の無機能プローブを用い(配列番号1〜192)、それぞれについてゲル前駆体重合性溶液を調製した。
次に、核酸プローブを含むゲル前駆体重合性溶液をデシケーター内に設置した。デシケーター内を減圧状態にしたのち、中空繊維束の繊維束が固定されていない一方の端部をこの溶液中に浸漬した。デシケーター内に窒素ガスを封入し、中空繊維の中空部に核酸プローブを含むゲル前駆体重合性溶液を導入した。次いで、容器内を70℃とし、3時間かけて重合反応を行った。
このようにして核酸プローブがゲル状物を介して中空繊維の中空部に保持された中空繊維束を得た。
次に得られた中空繊維束を、ミクロトームを用いて繊維の長手方向と直交する方向でスライスし、厚さ0.25mmの薄片シート(核酸マイクロアレイ)を200枚得た。このように無機能プローブを固定した核酸マイクロアレイを無機能型核酸マイクロアレイ(以下無機能型アレイと記載することもある)とした。
4.核酸試料の作製
Human Universal Reference Total RNA(タカラバイオ社製)1μgから、MessageAmpII−Biotin Enhancedキット(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、キットに添付のプロトコールに従って、ビオチン標識された相補鎖RNAを合成、精製した。
5.核酸試料の断片化
ビオチン標識された相補鎖RNA各5μgをプラスチックチューブに入れ、液量が18μlとなるように、蒸留水を添加した。RNA Fragmentation Reagent(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて以下の通りに断片化を行った。
まず、10X Fragmentation Reagentを、事前に準備した18ulの相補鎖RNA溶液に対して2ul添加し、よく混合した後、70℃で7.5分間加熱し、その後急冷した。次に、Stop Solutionを2μl添加し、よく混合することにより、断片化反応を終了した。断片化した検体22ulに対して、蒸留水を77ul添加した。
得られた99ulの検体に対して、18ulの1M Tris−HCl 溶液(インビトロジェン社製)と、18ulの1M NaCl溶液(アプライドバイオシステムズ社製)、15ulの0.5% Tween 20溶液をそれぞれ混合し、最終的に150ulの検体液を得た。
6.検証
上記で得られた検体液を、70℃で2分間熱変性した後、速やかにウェルプレートにアプライした。ウェルプレートにアプライされた検体液に対し、上記で作成した無機能型アレイを接触させることによりハイブリダイゼーションを行った。
ハイブリダイゼーションは、検体液と無機能型アレイを接触させる場であるウェルプレートに対してポリオレフィンフィルムを貼り付けた上で密閉状態とし、60℃の遮光条件下で16時間実施した。
16時間経過後、ハイブリダイゼーションに用いた検体液を除去し、無機能型アレイを60℃に温めた0.12M TNT溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl, 0.5% Tween 20溶液)中に20分間浸漬し、その後、新しい同一組成の溶液内にて同一温度、同一時間浸漬した。次に、60℃に温めた0.12M TN溶液(0.12M Tris−HCl、0.12M NaCl)に10分間浸漬し、洗浄を終了した。
次いで、無機能型アレイの無機能プローブにハイブリダイズした標的核酸を検出するために、Streptavidin, Alexa Fluor 647 conjugate(インビトロジェン社製)を用いて染色を行った。
すなわち、Streptavidin, Alexa Fluor 647 conjugate 1mgを、1mlの蒸留水に溶解し、そのうちの10ulを、TNT溶液5mlに混合し、染色液を作製した。
作製した染色液に対し、上記でハイブリダイゼーション済みの無機能型アレイを室温で30分間浸漬した。
浸漬した無機能型アレイは、TNT溶液5mlを用いて4回、各5分間ずつ室温で洗浄し、最終的に洗浄溶液をTN溶液に置換して洗浄を終了した。
検出操作は、冷却CCDカメラ方式の核酸マイクロアレイ自動検出装置を用いて、無機能型アレイをTN溶液中に浸漬し、カバーガラスをかぶせた後に、核酸試料に標識された蛍光シグナルを検出した。
図2は、無機能型アレイに対してHuman Universal Reference Total RNA由来の検体をハイブリダイズした後の蛍光検出画像を示す写真である。無機能型アレイは、192箇所の無機能プローブ固定化スポット、及びその他のプローブ非固定化スポットから構成されている。図2中、「囲み」で示した部分は、無機能プローブが固定化されていないスポットを示す。
この図2においては、無機能プローブが固定化されているスポットと、されていないスポットで、シグナル強度に差が無いことが判明した。
従って、本結果により、今回設計した無機能プローブは、Human Universal Reference Total RNA(すなわちヒト全遺伝子)より調製した検体とハイブリダイゼーションせず、無機能プローブとして有効に使用できることが明らかとなった。
<実施例2>
1.間接プローブ合成と機能型アレイの作製
標的核酸を捕捉するという機能を持った核酸マイクロアレイを作製する目的で、実施例1で作製した無機能型核酸マイクロアレイにハイブリダイズさせる間接プローブ16種類を作製した。間接プローブは、その3’側が無機能プローブの相補配列により構成され、5’側が、ヒトのいくつかのmRNAを標的とする配列(mRNAの部分的な相補配列)により構成される。
配列長が60merとなるように、上記「()」の項に記載した方法で間接プローブを合成した。ただし、末端のビニル化修飾は行わなかった。
間接プローブは、下記の通り、16種類作製した。
すなわち、IFNA1遺伝子を検出するためのプローブを、NCBIのデータベースより得られるmRNA配列(NM_024013.1)の817塩基目、577塩基目、457塩基目、307塩基目からそれぞれ30塩基の配列として設計した。本配列の5’側に、上記で作製した無機能プローブ(配列番号14)に相補である配列をつなげた。これにより、配列番号14の無機能プローブが搭載されている位置にハイブリダイズするIFNA1遺伝子検出用間接プローブが4種類(配列番号193、194、195、196)作製された。
IFNA4遺伝子を検出するためのプローブを、NCBIのデータベースより得られるmRNA配列(NM_021068.1)の5’末端より858塩基目、768塩基目、558塩基目、498塩基目からそれぞれ30塩基の配列として設計した。本配列の5’側に、上記で作製した無機能プローブ(配列番号36)に相補である配列をつなげた。これにより、配列番号36の無機能プローブが搭載されている位置にハイブリダイズするIFNA4遺伝子検出用間接プローブが4種類(配列番号197、198、199、200)作製された。
IFNB1遺伝子を検出するためのプローブを、NCBIのデータベースより得られるmRNA配列(NM_002176.2)の721塩基目、601塩基目、421塩基目、271塩基目からそれぞれ30塩基の配列として設計した。本配列の5’側に、上記で作製した無機能プローブ(配列番号54)に相補である配列をつなげた。これにより、配列番号54の無機能プローブが搭載されている位置にハイブリダイズするIFNB1遺伝子検出用間接プローブが4種類(配列番号201、202、203、204)作製された。
ATP5F1遺伝子を検出するためのプローブを、NCBIのデータベースより得られるmRNA配列(NM_001688.4)の1121塩基目、1156塩基目からそれぞれ30塩基の配列として設計した。1121塩基目から設計した配列の5’側に、上記で作製した無機能プローブ(配列番号63)に相補である配列を、1156塩基目から設計した配列の5’側に、上記で作製した無機能プローブ(配列番号64)に相補である配列をつなげた。これにより、配列番号63および配列番号64の無機能プローブが搭載されている位置にそれぞれハイブリダイズするATP5F1遺伝子検出用間接プローブが2種類(配列番号205、206)作製された。
更に、RPS5遺伝子を検出するためのプローブを、NCBIのデータベースより得られるmRNA配列(NM_001009.3)の321塩基目、356塩基目からそれぞれ30塩基の配列として設計した。321塩基目から設計した配列の5’側に、上記で作製した無機能プローブ(配列番号65)に相補である配列を、356塩基目から設計した配列の5’側に、上記で作製した無機能プローブ(配列番号66)に相補である配列をつなげた。これにより、配列番号65および配列番号66の無機能プローブが搭載されている位置にそれぞれハイブリダイズするRPS5遺伝子検出用間接プローブが2種類(配列番号207、208)作製された。
間接プローブの塩基配列を表6に示す。
これらの間接プローブは全て100pmol/ulの濃度で調製した。
間接プローブの混合組成と、作製するアレイの組み合わせを表7に示す。表7に従って各間接プローブを4ulずつ混合し、各間接プローブがそれぞれ400pmolずつ入った混合液28ulを4種類得た。
この溶液に対し、972ulの滅菌水を混合し、各間接プローブがそれぞれ400pmolずつ入った混合液1000ulを得た。この混合液25ulに対し、滅菌水を74ul、1M Tris−HCl溶液(インビトロジェン社製)を18ul、1M NaCl溶液を18ul、0.5% Tween 20溶液15ulを混合し、合計150ulの間接プローブ混合溶液を4種類得た。
上記で得られた間接プローブ混合溶液を、95℃で2分間加熱後、室温まで冷却し、攪拌した後に、実施例1にて作製した無機能型核酸マイクロアレイに対して60℃で16時間、密閉容器内にて接触させることにより、無機能プローブと、それに対応した間接プローブのハイブリダイゼーションを実施した。
ハイブリダイゼーション終了後のマイクロアレイを、60℃に温めた0.12M TNT溶液中に20分間浸漬し、その後、新しい同一組成の溶液内にて同一温度、同一時間浸漬した。次に、60℃に温めた0.12M TN溶液に10分間浸漬した。
ここまでの処理をもって、標的核酸に対応する配列を持った間接プローブが、ハイブリダイゼーションにより無機能型核酸マイクロアレイに固定化されて成る、「機能型核酸マイクロアレイ」(以下機能型アレイと記載することもある)が完成した(アレイ1〜アレイ4)。
すなわち、ATP5F1遺伝子を検出するための2種類の間接プローブ(無機能プローブの相補配列部分及び標的核酸の相補配列部分が共に異なる)、RPS5遺伝子を検出するための2種類の間接プローブ(機能部分の配列および対応する無機能プローブが異なる)が固定化されており;且つ、IFNA1遺伝子に対応する4種類の間接プローブ、IFNA4遺伝子に対応する4種類の間接プローブ、IFNB1遺伝子に対応する4種類の間接プローブそれぞれのうち、各遺伝子から1種類ずつが選ばれて搭載されている、4種類の機能型アレイが完成した(表7)。
作製された機能型核酸マイクロアレイを0.12M TN溶液に浸漬し、冷蔵庫中、4℃で保管した。
2.検体の作製・ハイブリダイゼーション・検出
ウイルスを感染させたヒト培養細胞から抽出されたTotal RNA 1ugから、MessageAmpII−Biotin Enhancedキット(アプライドバイオシステムズ社製)を用い、キットに添付のプロトコールに従って、ビオチン標識された相補鎖RNAを合成、精製した。
その後のハイブリダイゼーション溶液の作製、ハイブリダイゼーション、洗浄、標識、検出の各操作は、実施例1の操作に準じた。
図3〜図5に、各スポットより得られたシグナル強度を棒グラフにて示した。
IFNA1遺伝子については、4枚のアレイにそれぞれ異なる配列の間接プローブ(配列番号193〜196)が固定化されているが、各スポットにおいて、50から200程度のシグナル強度が得られた。
IFNA4遺伝子については、4枚のアレイにそれぞれ異なる配列の間接プローブ(配列番号197〜200)が固定化されているが、各スポットにおいて、50から150程度のシグナル強度が得られた。
IFNB1遺伝子については、4枚のアレイにそれぞれ異なる配列の間接プローブ(配列番号201〜204)が固定化されているが、各スポットにおいて、1500から3000程度のシグナル強度が得られた。
ATP5F1遺伝子については、4枚のアレイにそれぞれ2種類の間接プローブ(配列番号205及び206)が固定化されているが、配列番号205が固定化されたスポットにおいてはいずれも3500程度のシグナル強度が、配列番号206が固定化されたスポットにおいてはいずれも3500程度のシグナル強度が得られた。
RPS5遺伝子については、4枚のアレイにそれぞれ2種類の間接プローブ(配列番号207及び208)が固定化されているが、配列番号207が固定化されたスポットにおいてはいずれも30000程度のシグナル強度が、配列番号208が固定かされたスポットにおいてはいずれも25000程度のシグナル強度が得られた。
<実施例3>
1.間接プローブ合成と機能型アレイの作製・検体の作製・ハイブリダイゼーション・検出
間接プローブの組成を表8の組成とし、間接プローブの組成以外の条件は実施例2と同様にして、機能型アレイを作製した(アレイ5)。
アレイ5の作製に際しては、IFNA1遺伝子、IFNA4遺伝子、IFNB1遺伝子の各4種類全種の間接プローブを、1μlずつ使用した。すなわち、1つの遺伝子に対する間接プローブの分子量としては、実施例2と同量になるように調製した。
間接チップ作製以降の全ての実験操作は全て実施例2に準じた。また、実施例2で作製した検体をハイブリダイズし、シグナル強度を検出した。
2.結果と検証
図6〜図8に、アレイ5の各スポットより得られたシグナル強度と、比較のため、実施例2のアレイ1からアレイ4の結果を棒グラフにて示した。
IFNA1遺伝子については、4種類の間接プローブを混合したアレイ5で400程度のシグナル強度が得られた。この値は、実施例2における単独間接プローブのシグナル強度よりも大きく、最大でおよそ8倍のシグナル強度が得られた。
IFNA4遺伝子については、4種類の間接プローブを混合したアレイ5で260程度のシグナル強度が得られた。この値は、実施例2における単独間接プローブのシグナル強度よりも大きく、最大でおよそ5倍のシグナル強度が得られた。
IFNB1遺伝子については、4種類の間接プローブを混合したアレイ5で6200程度のシグナル強度が得られた。この値は、実施例2における単独間接プローブのシグナル強度よりも大きく、最大でおよそ3.5倍のシグナル強度が得られた。
ATP5F1遺伝子については、2種類の単独間接プローブで、いずれも3500程度のシグナル強度が得られた。この値は、実施例2のアレイ1からアレイ4で得られたシグナル値とほぼ同一の値であった。
RPS5遺伝子については、2種類の単独間接プローブで、30000程度及び25000程度のシグナル強度が得られた。この値は、実施例2のアレイ1からアレイ4で得られたシグナル値とほぼ同一の値であった。
間接プローブ量・種類の変更を行っていない遺伝子(ATP5F1遺伝子、RPS5遺伝子)では、シグナル強度が実施例2とほぼ同一であったため、IFNA1遺伝子,IFNA4遺伝子,IFNB1遺伝子のシグナル強度の増強は、実験手技等に由来ものでなく、スポットあたりの間接プローブ種類を増やしたことに起因するものであることが明らかとなった。
以上の結果より、間接プローブの分子量を変更せずに、間接プローブの種類を増加したアレイについて、シグナル強度が大幅に増加し、間接プローブの種類を増加することによるシグナル向上の効果が検証された。
また、本手法は、間接的にプローブをハイブリダイズすることで、簡便で効率的なアレイ作製を可能とした。
したがって、本手法により、仮にシグナル強度の低い遺伝子が存在した場合であっても、間接プローブのみを再度作製、ハイブリダイズするだけで、極めて簡便かつ効率的に高感度のアレイを作製することが可能となった。
本手法によれば、作製した機能型アレイの実験結果をふまえて、アレイに固定されている無機能プローブに対し、異なる間接プローブを追加でハイブリダイズすることによっても、アレイの高感度化が簡便に達成できると考えられる。
また、コントロールとして使用した、ATP5F1遺伝子及びRPS5遺伝子に対応する4種類のプローブのシグナル強度の再現性の高さから、間接プローブを無機能型アレイにハイブリダイゼーションするだけという、極めて簡便な製造方法により製造された機能型アレイが、スポッター等の通常の煩雑な手法で製造された核酸マイクロアレイに比較して遜色の無い性能を有していることが明らかとなった。
本発明の実施例において、中空繊維束を製造する際に使用した配列固定器具を示す模式斜視図である。 本発明の実施例において得られた、192箇所の無機能プローブ及び、その他のプローブ非搭載スポットにおいて検出された蛍光シグナル検出画像を示す写真である。 本発明の実施例において得られた、各スポットより得られたシグナル強度(間接プローブを単独で使用した場合のシグナル強度)を示す棒グラフである。 本発明の実施例において得られた、各スポットより得られたシグナル強度(間接プローブを単独で使用した場合のシグナル強度)を示す棒グラフである。 本発明の実施例において得られた、各スポットより得られたシグナル強度(間接プローブを単独で使用した場合のシグナル強度)を示す棒グラフである。 本発明の実施例において得られた、各スポットより得られたシグナル強度(間接プローブを単独で使用した場合のシグナル強度と、混合して使用した場合のシグナル強度の比較)を示す棒グラフである。 本発明の実施例において得られた、各スポットより得られたシグナル強度(間接プローブを単独で使用した場合のシグナル強度と、混合して使用した場合のシグナル強度の比較)を示す棒グラフである。 本発明の実施例において得られた、各スポットより得られたシグナル強度(間接プローブを単独で使用した場合のシグナル強度と、混合して使用した場合のシグナル強度の比較)を示す棒グラフである。
符号の説明
11 孔
21 多孔板
31 中空繊維
41 板状物

Claims (5)

  1. 無機能プローブを固定している核酸マイクロアレイであって;
    前記無機能プローブのうち、少なくとも1種類の無機能プローブに対して、2種類以上の間接プローブがハイブリットを形成している、核酸マイクロアレイ。
  2. 前記アレイが、複数の貫通孔を有し、それらの貫通孔に無機能プローブが固定されてなる請求項1記載の核酸マイクロアレイ。
  3. 無機能プローブを固定している核酸マイクロアレイを製造する工程と、
    その後、核酸マイクロアレイに搭載された少なくとも1種類の無機能プローブのそれぞれに、2種類以上の間接プローブをハイブリダイズさせる工程と、を有する核酸マイクロアレイの製造方法。
  4. 前記間接プローブのハイブリダイゼーションが、複数回に分けて行われることを含む請求項3に記載の核酸マイクロアレイの製造方法。
  5. 前記アレイが複数の貫通孔を有し、それらの貫通孔に無機能プローブが固定されてなる請求項3または4に記載の核酸マイクロアレイの製造方法。
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