光ディスク装置(光学的情報記録再生装置)は、レーザ光を用いて、光ディスクに記録された情報の読出しと、光ディスクへの情報の書込みを行うことができる。光ディスク装置は、例えば、情報処理装置の周辺機器や、AV(Audio Visual)機器などに用いられる。光ディスク装置は、光ディスクの記録層にレーザ光を照射し、その記録層を構成する物質の特性を変化させることで、光ディスクに記録マークを形成する。光ディスク装置は、記録データに基づいた記録マークを光ディスクに形成し、情報を記録する。
記録データに対応した記録マークを適切に形成するためには、記録層に照射するレーザ光のパワー、すなわち、記録層に加えられる熱のコントロールが重要である。例えば、特定の記録マークを形成する際に、記録層に加える熱量が少ないと、記録層に十分な記録マークを形成することができない。逆に、記録層に加える熱量が多すぎると、記録マークの形状が不適切になる。また、熱量が多い場合は、形成した記録マークが、隣接する他の記録マークの形成に悪影響を与えることもある。
従って、光ディスク装置では、マーク形成時のレーザ光の出力を適切に制御することが非常に重要である。レーザ光の制御は、記録ストラテジと呼ばれる波形形状を変更することによって行われる。記録ストラテジが示す波形は、振幅によってピーク(記録)パワー、バイアスパワーなどの出力レベルを表し、記録用レーザパルスのパルス幅(時間方向)によって、マーク形成のレーザ光の照射時間を表している。
記録ストラテジにはいろいろな種類があり、記録するメディアに応じて、パワーレベルやパルス形状などを変える場合がある。例えば、1回だけ記録可能な追記型光ディスクであるDVD−R(Digital Versatile Disk Recordable)などでは、矩形型の記録ストラテジが用いられる。また、繰り返し書換えが可能な光ディスクであるDVD−RW(Digital Versatile Disk ReWritable)などでは、マルチパス型の記録パルスが用いられる。
図21(a)〜(f)に、記録するパタンと、各種記録ストラテジとを示す。同図(b)〜(f)に示す記録ストラテジは、同図(a)に示すパタンを形成する際に用いられる記録ストラテジである。同図(b)は、2値のパワーレベルを持つパルストレイン型の記録ストラテジを示している。この記録ストラテジでは、マークに対応した位置で、バイアスパワーPbとピークパワーPwとの2値のパワーレベルを持つレーザ光のパルスを、複数回照射する。同図(c)は、単純矩形型の記録ストラテジを示している。この記録ストラテジでは、マークに対応した位置で、レーザ光のパワーを、バイアスパワーPbからピークパワーPwに上げる。
図21(d)は、先端を強調した矩形の記録ストラテジを示している。この記録ストラテジでは、記録マークに対応した位置でレーザ光のパワーをピークパワーPwに上げ、その後、パワーをピークパワーPwよりも低いミドルパワーPmに落として矩形の先端を強調している。同図(e)は、先頭と最後とを強調した矩形型の記録ストラテジである。この記録ストラテジでは、同図(d)の先端を強調した矩形の記録パワーにて、矩形の後端でレーザ光のパワーを再びピークパワーPwに上げ、矩形の先頭と最後とを強調している。
図21(f)は、3値のパワーレベルを持つパルストレイン型の記録ストラテジである。この記録ストラテジでは、レーザ光のパワーレベルを、ボトムパワーPbtm、ピークパワーPw、及び、ボトムパワーとピークパワーとの間のレベルのパワーの3つのレベルで変化させる。ボトムパワーとピークパワーとの間のレベルのパワーは、スペースに対応して照射されるパワーであり、書換え可能媒体用では消去パワーPeと呼ばれる。これは、そのレベルのパワーのレーザ光は、以前に存在した記録マークを消去する作用があるからである。しかしながら、このスペースに対応して照射されるパワーを、総称として、バイアスパワーと称する場合もある。
次世代DVDであるHD DVD(High Definition DVD)では、追記型のHD DVD−Rも、書換え可能型のHD DVD−RW又はHD DVD−RAMも、2倍速記録までは、主にマルチパス型の記録ストラテジを使用している。記録ストラテジは、光ディスクの記録再生性能に大きく影響する。このため、多くの記録ストラテジ調整手法が存在している。
続いて、光ディスクへの記録に必要な記録パラメータの調整に使用される性能指標について説明する。ここでは、記録時パワーの調整を例とする。ブランクディスクは、そのディスクの一部に、記録パワーの調整に使用できる領域(エリア)を持っている。光ディスク装置は、その領域を使用して、適宜、記録時パワーの調整を行う。
光学的情報記録再生装置は、ブランクディスクが装填されると、そのディスクから、ディスクの種類や媒体メーカ名等の情報を読み出す。光学的情報記録再生装置は、読み出した情報に基づいて、装填された媒体に応じた記録ストラテジや、媒体から読み出した情報が示す奨励記録ストラテジを用いて、OPC(Optimum Power Control)と言われる記録パワーの調整を行う。記録パワーの調整では、媒体から読み出した情報を使用せずに、装置が各媒体に対応させてあらかじめ保持している情報を利用する場合もある。
記録パワーの調整方法としては、長いマークと短いマークの再生振幅により得られるアシンメトリを検査してβ値を求めるβ法や、記録マーク振幅の飽和の程度から判断するγ法などが知られている。一般的に、DVD−Rではβ法が使用され、DVD−RWやDVD+RWではγ法が使用される。
β法では、短マークを再生して得られた基準値Refと、長マークのピークレベル及びボトムレベルとに基づいて、β値を算出する。図22に、β値の算出例を示す。この例では、長マークは11Tマークであり、短マークは3Tマークである。基準値Refは、3Tマーク再生振幅の中心に設定されている。3Tマークの再生波形から基準値Refを求め、その基準値Refと11Tマークのピークレベルとの差分A、及び、基準値Refと11Tマークのボトムレベルとの差分Bを求める。その後、下記式1により、β値を算出する。
β=0.5×(A−B)/(A+B) (1)
β値は、各パタンの最小値、最大値、平均レベル(平均電圧)等の信号レベルを使用して算出される。β値は、最大振幅と最小振幅の中心のずれを表しており、アシンメトリと同義として用いられる。また、β値は、記録信号品質の評価指標であるジッタσやエラー数などの信号品質指標との相関がある。β値は、値そのものは性能を保証するものではなく、β値と性能との絶対値指標、例えば、エラー数やエラーレート、ジッタ値などとの対応を取った上で、目標として用いられる。一般的に、ジッタσが15%以上になると、エラー訂正処理を行ってもエラーが訂正できなくなるので、ジッタσを15%以下にするように、記録パラメータの調整を行う必要がある。
また、高密度化された次世代DVDであるHD DVDにおいては、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)検出が用いられる。HD DVDでは、ジッタ自体の測定が困難である。そのため、HD DVDにおける性能指標には、PRSNR(Partial Response Signal to Noise Ratio)という性能指標が導入されている(例えば、非特許文献1参照)。PRSNRは、ジッタに代わる信号品質評価指標として用いられる。PRSNRは、PRML検出におけるSNR値である。PRSNRは、エラーレートへの換算も可能で、この値が高いほど、信号品質は優れていることを意味する。装置での運用に際しては、PRSNRが15以上の性能が要求されることが一般に知られている。なお、再生波形の品質を評価する他の手法には、直接にエラーレートやエラーバイト数を求める手法もある。これらは、性能の絶対値を示す指標である。エラーレートやジッタは、値が低い(小さい)ほど、性能がよい。
ここで、記録可能型光ディスクに求められる特性として、周囲の環境によって光ディスク自身やその特性が変化しない特性がある。これは、耐候性と呼ばれる。耐候性には、いくつかの特性があり、アーカイバル特性(アーカイバルライフ)、シェルフ特性(シェルライフ)、アーカイバルオーバーライト特性(オーバーライトシェルフ)などがある。これら特性の評価は、記録層に情報が記録されていない未記録、又は、情報が既に記録された既記録の光ディスクに、熱や湿度を強制的に加える環境加速試験により行う。
各耐候性特性に関して説明する。アーカイバル特性は、記録されたデータの保存性やその安定性に関する特性で、一度記録されたデータがどの程度の期間安定に存在できるかを決定する特性である。アーカイバル特性が劣化すると、記録したデータの再生ができなくなる。シェルフ特性は、経時変化や環境変化に対し、未記録部分に対し記録条件がどの程度の期間変化せずに存在するかを決める特性である。シェルフ特性が劣化すると、未記録の部分に記録しても、良好な記録ができなくなる。アーカイバルオーバーライト特性は、既に1回以上記録した部分に、どの程度の期間良好にオーバーライト(書換え)ができるかを決定する特性である。アーカイバルオーバーライト特性が劣化すると、良好にオーバーライト記録することができなくなる。
これまでに、耐候性を高めるための技術がいくつか提案されている。特許文献1には、媒体に関し、記録膜に添加物を入れる手法が記載されている。特許文献2には、装置に関し、光ディスクに経時変化が生じている場合は、記録ジッタが最小となるようにライトストラテジを補正する技術が記載されている。特許文献3では、2種類の特定パタンを記録し、記録した領域を再生する。特許文献3では、記録した領域を再生したときに、各特定パタンに対応するアシンメトリ値の差が|0.02|以下になるように記録照射パワーを定めることで、シェルフ特性が高い記録条件を選定する。
特許文献4では、テスト領域にDCパワーを変えて記録を行い、記録した領域を再生する。パワー変化に対して、反射率変化が最も大きなパワー値Pdを求め、これに、あらかじめ求めてある係数を乗算することで、ピークパワーPpとバイアスパワーPbとを決定する。特許文献4には、この動作を、光ディスクの記録条件が変化する要因が発生した場合に実施する旨が記載されている。特許文献5では、記録を行った後に、通常再生するパワーよりも高い再生パワーで少なくとも1回再生を行う。特許文献5には、この動作を行うことで、相変化光ディスクのアーカイバルオーバーライト特性の抑制が可能である旨が記載されている。
特許文献6には、波長780nm対応の追記型有機色素記録媒体の経時変化後のエラー率増加を防止する記録条件設定法が記載さている。特許文献6には、実験により、エラー率を最小にさせるレーザ光照射パワーの値の0.5〜0.93倍のレーザ照射パワーにより記録させることが記載されている。また、アーカイバル特性測定のために、仮想環境試験により媒体を暴露した後に、エラー率を測定していることが記載されている。
特開平5−124353号公報
特開2007−294047号公報
特開2006−040337号公報
特許第2797733号公報
特開2002−8240号公報
特許第2667445号公報
Japanese Journal of Applied Physics Vol.43, No.7B, 2004, pp.4859-4862 "Signal-to-Noise Ratio in a Partial-Response-Maximum-Likelihood Detection" S.OHKUBO et al
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の情報記録再生装置を示している。情報記録再生装置100は、RF回路103、復調器104、システムコントローラ105、変調器106、LDドライバ107、サーボコントローラ108、スピンドル駆動系109、及び、光ヘッド120を有する。光ディスク114は、記録が可能なメディア、例えば、1度だけ記録が可能な追記型メディアである。情報記録再生装置100は、光ディスク114に対する情報記録、及び、光ディスク114からの情報再生を行う。
光ヘッド120は、レーザダイオード(LD)121、受光部122、及び、ビームスプリッタ125を含む。レーザダイオード121は、光ディスク114の記録/再生に用いる光を出射する。ビームスプリッタ125は、レーザダイオード121側から入射する光を、光ディスク114側に反射する。ビームスプリッタ125を反射した光は、対物レンズによって、光ディスク114の記録層に集光される。
光ディスク114の記録層に集光した光は、光ディスク114で反射し、ビームスプリッタ125に入射する。ビームスプリッタ125は、光ディスク114側から入射する光を、受光部122側に透過する。受光部122は、ビームスプリッタ125を透過した光を電気信号に変換する。受光部122によって変換された電気信号は、プリアンプで増幅され、RF回路103に供給される。
スピンドル駆動系109は、光ディスク114を回転させる。RF回路103は、入力信号に基づいて2値化信号の生成を行う。また、RF回路103は、入力信号にフィルタリング等の処理を行って信号品質の測定を行い、信号品質を示す値を、システムコントローラ105に出力する。復調器104は、RF回路103で生成された2値化信号に基づいて、所定の復調規則に従ってデータを復調し、システムコントローラ105に出力する。
変調器106は、記録すべき信号を、所定の変調規則で変調する。LDドライバ107は、変調器106の出力信号に基づいて、光ヘッド120のレーザダイオード121を駆動する。変調器106の出力信号は、RF回路103にも入力され、RF回路103にて、信号品質の測定に利用される。サーボコントローラ108は、サーボ信号をコントロールする。システムコントローラ105は、装置全体の統括を行う。
システムコントローラ105は、パラメータ調整器115を有する。パラメータ調整器115は、記録ストラテジ、ピークパワー、バイアスパワーの調整をコントロールする部分である。パラメータ調整器115は、RF回路103が出力する信号品質値、具体的にはPRSNRやエラーレート値、アシンメトリ値、復調器104によって復調されたデータ列から得られるPIエラー(数)によって、記録条件と信号品質との対応を認識し、調整シーケンスをコントロールして、良好な記録を行うことができるパラメータの調整を行う。
図2に、RF回路103の構成を示す。RF回路103は、記憶部130、プリフィルタ131、オートゲインコントロール(AGC)回路132、A/Dコンバータ(ADC)134、PLL(Phase Locked Loop)回路135、適応等化器137、識別器138、基準波形信号生成器141、誤差算出器142、タイミング調整回路143、エラーレート算出器145、及び、PRSNR算出器147を有する。
プリフィルタ131は、光ヘッド120から入力する信号をフィルタリングする。AGC回路132は、フィルタリングされた信号の振幅制御を行う。A/Dコンバータ134は、振幅制御された入力信号をデジタル信号に変換する。PLL回路135は、デジタル化された信号に基づいてクロック信号を抽出する。A/Dコンバータ134でデジタル化された信号は、PLL回路135で、チャネル周波数に同期化されて、適応等化器137に出力される。
適応等化器137は、入力信号を、所望のパーシャルレスポンス特性に近づくように等化し、周波数特性が修正された等化再生信号を出力する。適応等化器137は、FIRフィルタ(Finite Impulse Response Filter)を含んでいる。適応等化器137は、FIRフィルタのタップ係数を、LMS(least mean square)アルゴリズムを用いて決定し、入力信号の周波数特性を適応的に修正する。
識別器138は、適応等化器137から等化再生信号を入力し、等化再生信号に基づいて2値化信号を生成する。識別器138は、ビタビ復号器を含んでいる。識別器138は、等化再生信号とユークリッド距離がもっと近いパスを選択し、選択したパスに対応する符号ビット系列を2値化信号(推定パターン列)として出力する。この2値化信号は、復調器104(図1)に入力されると共に、適応等化器137にフィードバックされる。
基準波形信号生成器141は、PRクラスのベクトルの畳み込み積分により、理想信号波形を生成する。基準波形信号生成器141は、例えば、PR(1,2,2,2,1)の場合は、(1,2,2,2,1)のベクトル畳み込み積分により、理想信号波形を生成する。基準波形信号生成器141の入力には、図示しない経路切替器が設けられており、入力を、識別器138が出力する2値化信号と、記憶部130が保持するデータとで切替可能になっている。基準波形信号生成器141は、識別器138が出力する2値化信号に基づいて、理想信号波形を生成する。または、基準波形信号生成器141は、記憶部130が保持する、記録に使用した、又は、使用する予定の記録データ列に基づいて、理想信号波形を生成する。
誤差算出器142は、基準波形信号生成器141が生成した理想信号波形と、タイミング調整回路143により入力時間が調整された等化再生信号との差(等化誤差信号)を算出する。PRSNR算出器147は、誤差算出器142が出力する等化誤差信号を、PRSNR算出時に必要な各時刻のノイズとして用い、PRSNRを算出する。エラーレート算出器145は、システムコントローラ105から入力するタイミング信号(図示せず)に基づいて、識別器138の出力と記憶部130が保持するデータ列とを比較し、エラーレートを算出する。算出されたPRSNRやエラーレート(再生信号品質)は、システムコントローラ105に入力され、信号評価指標として利用される。信号評価指標に、所定ECC(Error Correction Code)ブロックにおけるエラーバイト数を用いてもよい。
図3に、光照射パワー(記録条件)調整時の動作手順を示す。情報記録再生装置100は、光ディスク114が装填されると、光照射パワーの調整を開始する。システムコントローラ105は、光ヘッド120を、光ディスク114のシステム情報領域に移動する。情報記録再生装置100は、光ディスク114のシステム領域から、Disk Manufacturing informationを読み出し、その情報に基づいて、ディスクの種類、ディスクメーカ名などを取得する。情報記録再生装置100は、取得した媒体の種類やメーカ名などに基づいて、その媒体に関するパラメータテーブルを取得する。システムコントローラ105のパラメータ調整器115は、取得されたパラメータテーブルに基づいて、各種パラメータ(ピークパワー、バイアスパワー、ボトムパワーなど)を設定する(ステップA1)。
パラメータ調整器115は、ステップA1で設定したパワーを、記録時パワー(特定パワー)として選択する(ステップA2)。パラメータ調整器115は、記録時パワーを、ステップA2で設定した記録時パワーから段階的に変化させた複数の条件にて、所定のパタン列を記録する(ステップA3)。パラメータ調整器115は、記録時パワーの変更範囲の全てで記録を行ったか否かを判断する(ステップA4)。パラメータ調整器115は、変更範囲の全てで記録を行っていないと判断したときは、ステップA3に戻り、記録時パワーを変更して、所定パタン列の記録を継続する。
ステップA3での記録は、例えば、1ECCブロック単位で行う。パラメータ調整器115は、1ECCブロックごとに記録時パワーを段階的に変化させ、複数の記録時パワーで記録を行う。記録単位は、ECCブロック単位である必要はなく、より小さな単位、例えば、数セクタ単位(HD DVDでは1セクタは26シンクフレーム)であってもよい。パラメータ調整器115は、所定パタン列の記録後、記録パタン列を加熱する際に記録パタン列に対して照射するレーザ光のパワー(加熱量)を決定する(ステップA5)。パラメータ調整器115は、ステップA5で決定したパワーのレーザ光を、ステップA3で記録したパタン列に照射し、記録パタン列を加熱する(ステップA6)。
ステップA6のレーザ光の照射(加熱)は、記録パタンに対して熱負荷を与える目的で行うものである。従って、加熱時のレーザ光のパワーは、マーク形成時に使用されるレーザパワー(ピークパワー)では高すぎる。一方で、パワーが低すぎると、記録パタン列に対して熱負荷が加わらないので、ある程度のパワーは必要である。パラメータ調整器115は、ステップA5では、ステップA1で設定したバイアスパワーを基準に、加熱時に照射するレーザパワーとして決定することができる。これは、バイアスパワーは、マーク形成に影響するパワーではあるものの、それだけでマーク形成が可能なほどパワーが高くないため、熱負荷を与えることができるパワーの基準として適当であると考えられるためである。パラメータ調整器115は、例えば、ステップA1で設定したバイアスパワーを基準に、−30%〜+15%程度のパワーを、加熱時のレーザ照射パワーとして決定する。
パラメータ調整器115は、記録パタン列の加熱後、記録パタン列を再生し、RF回路103から、再生信号品質の測定結果を受け取る(ステップA7)。パラメータ調整器115は、再生信号品質の測定結果に基づいて、光ディスク114に対する情報記録時に光ディスク114に照射するレーザパワーを決定する(ステップA8)。パラメータ調整器115は、例えば、複数のパワーで記録された記録パタン列のそれぞれについて測定された再生信号品質のうちで、再生信号品質が最良となるパワーを、記録時の光照射パワーとして決定する。
以下、具体例を交えつつ、本実施形態の動作について説明する。光ディスク114には、HD DVD規格に対応したメディアで、1度だけ記録が可能な追記型メディア(HD DVD−R)を用いる。この光ディスク114は、記録層に有機色素を用い、記録を行うと反射率が高くなるタイプの媒体である。このタイプの媒体は、Low-to-Highメディアと呼ばれる。光ディスク114は、厚さが0.6mmで、直径が12cmの円板状の透明基板(ポリカーボネイト基板)を含む。この透明基板上には、プリグルーブと呼ばれる案内溝が形成されている。
情報記録再生装置100は、情報の記録及び再生時に、レーザ光を案内溝に沿って走査する。情報記録再生装置100は、基板上に成膜された記録層に対してレーザ光を照射し、パタン列を記録する。レーザダイオード121が出射する光の波長は405nmであり、光ヘッド120が有する対物レンズの開口数(NA)は0.65である。光ディスク114の物理フォーマットは、ピットピッチが0.15μmで、トラックピッチが0.40μmのイングルーブ・フォーマットである。また、光ディスク114の記録層にパタン列を記録する際の変復調符号には、ETM(Eight to Twelve Modulation)符号を用いる。情報記録再生装置100におけるパタン列再生時の再生パワーは、0.4mWとする。
情報記録再生装置100は、マーク形成に際しては、(k−1)型パルストレインの記録ストラテジを用いる。図4に、(k−1)型パルストレインの波形例を示す。図4(a)は、記録するパタンを示し、図4(b)は、図4(a)のパタンを記録する際のレーザ変調波形を示している。図4(b)において、NRZI(Non Return to Zero Inversion)のマーク部に対応する記録ストラテジで、その振幅が最大の上側部分はピークパワーであり、スペース部分に対応する振幅部分はバイアスパワーである。
(k−1)型パルストレインは、kT(kはマーク長)の長さの記録マークを記録する際に、k−1個のパルスで記録を行うストラテジである。kの値は、変復調方式によって異なる。ここでは、変復調方式をETMとするので、最短マークは2Tであり、kは2以上の自然数となる。(k−1)型パルストレインでは、例えば、2Tマークの記録の際には、k=2に対して、k−1個のパルスを照射するので、記録ストラテジとしての波形は先頭(トップ)パルスのみから成る。3Tマークを記録する際には、2つのパルスを照射するので、記録ストラテジとしての波形は、先頭パルスと最終パルスとから成る。図4(b)に示す波形は、5Tマークの記録に対応しており、中間パルスを含めて4つのパルスを照射している。
情報記録再生装置100に光ディスク114が装填されると、システムコントローラ105は、システム情報領域からDisc Manufacturing informationを読み出し、その情報に基づいてディスクの種類、ディスクメーカ名等を取得する。システムコントローラ105は、取得した情報に基づいて、装填された光ディスク114がHD DVD規格のHD DVD−RのLow-to-High媒体であることを認識する。
パラメータ調整器115は、図3のステップA1で、装填された光ディスク114に対応したパラメータテーブルを読み出し、各種パラメータを設定する。図5に、パラメータテーブル例を示す。このパラメータテーブルの情報は、光ディスク114に記録されている。或いは、装置が各種媒体のパラメータテーブルを記憶しており、読み出したディスク種類やディスクメーカ名などに基づいて、該当するパラメータテーブルを読み出してもよい。
パラメータ調整器115は、図5に示すパラメータテーブルに従って、ピークパワーを11.5mWに、バイアスパワーを3.5mWに設定する。ボトムパワーについては、0.1mWに固定することとする。また、パラメータ調整器115は、トップパルス幅や中間パルス幅、最終パルス幅、冷却パルス幅など、パワー以外のパラメータの設定も行う。
なお、パワー以外のパラメータについては、媒体から読み出したパラメータを使用せずに、装置にあらかじめ記憶されているパラメータを用いて設定してもよい。パラメータ調整器115は、ステップA1では、上記パラメータ以外にも、以降のステップで記録パワーを段階的に変化させて記録を行う際の変更ステップ数や変更範囲も設定する。パラメータ調整器115は、例えば、変更範囲を、パワーの初期値を0%として±20%、変更ステップを10%に設定する。変更ステップや変更範囲は、媒体のID等に対応させて、装置があらかじめ保持しているものとする。
パラメータ調整器115は、ステップA2で、ステップA1で設定したピークパワー11.5mW、バイアスパワー3.5mWを記録時パワー(特定パワー)として決定する。情報記録再生装置100は、記録時のパワー調整など、各種パラメータの調整には、装置が自由に読み書きできるOPC(Optimum Power Control)可能領域としてドライブテストゾーンを利用する。システムコントローラ105は、光ヘッド120を光ディスク114のドライブテストゾーンに移動し、ステップA3の記録を行う。
パラメータ調整器115は、ステップA3、ステップA4を繰り返し行い、ピークパワー及びバイアスパワーをそれぞれステップA2で設定したパワーに対して+20%のパワーから10%ずつパワーを段階的に減少させて記録を行う。パラメータ調整器115は、1ECCブロック単位で記録を行い、ECCブロックごとにパワーを変更して記録を行う。0%のピークパワーは11.5mW、バイアスパワーは3.5mWであるので、パラメータ調整器115は、ピークパワーを13.8mW〜9.2mWの範囲、及び、バイアスパワーを4.2mW〜2.8mWの範囲で変化させた組合せで、所定パタン列を記録する。
パラメータ調整器115は、ステップA5で、ステップA3で記録時パワーを変化させて記録を行った際のバイアスパワーの中から、加熱の際に記録パタン列に照射するレーザ光のパワーを決定する。パラメータ調整器115は、例えば、0%のバイアスパワーである3.5mWを、加熱時のレーザ照射パワーとして決定する。パラメータ調整器115は、ステップA6で、ステップA3で記録した記録パタン列に対して3.5mWのレーザ光を照射し、複数の記録時パワーで記録したパタン列を、一定の加熱量で加熱する。
図6に、加熱の様子を示す。図6において、横軸は時間経過を表している。パラメータ調整器115は、レーザ光が、ステップA3で記録された領域の記録トラックに追従する際に、LDドライバ107(図1)に対して、パワーを3.5mWに設定するように指示する。LDドライバ107が3.5mWでLD121を駆動することにより、ステップA3で記録された各領域に対して3.5mWのレーザ光が照射され、レーザ光照射により、熱負荷が与えられる。
なお、ステップA6では、一定の加熱量で記録パタン列を加熱すればいいので、レーザパワーが一定である必要はまではない。図7に、加熱時のレーザ出力の別例を示す。この例では、図7(a)及び(b)に示すように、レーザパワーの平均が所定のレーザパワー(加熱量)となるように、レーザパワーを変調している。この場合の平均熱量は、鎖線相当となる。一定出力のレーザパワーを用いない場合は、平均熱量が、ステップA5で決定した加熱量相当のパワーとなるように、レーザパワーを制御すればよい。
パラメータ調整器115は、ステップA7で、ステップA6で加熱した記録パタン列を再生し、各領域での再生信号品質を測定する。パラメータ調整器115は、ステップA8で、再生信号品質の測定結果に基づいて、情報記録の際に用いるパラメータ(ピークパワーとバイアスパワーとの組)を決定する。図8に、信号品質測定結果を示す。この例では、再生信号品質としてPRSNRを用いている。図8に示す再生信号品質の測定結果では、+10%のパワーの組で、PRSNRが最良となっている。パラメータ調整器115は、ステップA8では、+10%に対応するピークパワー12.7mW、バイアスパワー3.9mWを、情報記録時のパワーとして決定する。
なお、上記では、ステップA3の記録に用いたピークパワーとバイアスパワーの組み合わせの中から再生信号品質が最良となる組合せを選択することとしたが、再生信号品質測定結果を用いて、所定の再生信号品質が得られる複数のパラメータの中から、情報記録時のパワーの組合せを決定してもよい。複数のパラメータの中から1つのパラメータを選択する方法としては、所定の再生信号品質以上となる測定値に対応する複数のパラメータの平均値又は中央値となるパラメータを選択する方法が考えられる。または、平均値、中央値に最も近いパラメータ値を選択してもよい。パラメータ調整器115は、パラメータの設定精度がある場合などは、再生信号が最良となるパラメータ値を補間などにより算出し、補間により求めたパラメータ値を、情報記録時のパワーとして選択してもよい。
図9に、複数のパラメータから情報記録時のパワーを決定する例を示す。パラメータ調整器115は、まず、再生信号品質が所定の性能以上となるパラメータの範囲を求める。ここでは、PRSNRが20以上となるパラメータの範囲を求めることとする。図9では、所定の性能以上となるパラメータは4つある。パラメータ調整器115は、その4つのパラメータの平均値を求め、その値を、情報記録時のパワーとして決定する。このようにすることで、PRSNR20以上となるパラメータのうち、真ん中の2つの間に対応するパラメータを、情報記録時のパワーとして決定できる。
図10に、環境加速試験後の再生信号品質の測定結果を示す。図8との比較を容易にするために、同一ディスクに対し、ピークパワー及びバイアスパワーをそれぞれ11.5mW、3.5mWを0%として、±20%の範囲で10%ステップで変化させて記録を行った。その後、環境加速試験として、温度80℃、60%RH(相対湿度)の加速環境下で500時間保存後に、記録した領域を再生しPRSNRを測定した。
図11に、環境加速試験の前のPRSNR測定結果を示す。図10と同様な条件で、環境加速試験前に記録した領域を再生し、PRSNRを測定すると、図11に示す測定結果が得られる。環境加速試験前後でPRSNRを比較すると、環境加速試験前では0%でPRSNRが最良となるのに対し、環境加速試験後では+10%でPRSNRが最良となっている。このことは、保存性を上げるためには、記録直後にPRSNRが最良となる0%のパワーよりも、+10%のパワーで記録した方がよいということを示している。
図8と図10とを比較すると、図8でPRSNRが最良となるパラメータは、図10で環境加速試験後にPRSNRが最良となるパラメータと一致している。これは、記録パタン列を加熱するステップ(ステップA6)を追加し、記録パタンに対して熱負荷を与えた後に再生信号品質を測定して記録時パワーを決定することで、環境加速試験を行わなくても、保存安定性が高い記録条件を記録時パワーとして決定できるということを示している。
本実施形態では、光ディスク114に記録した記録パタン列を加熱し、加熱後に記録パタン列を再生して再生信号品質を求める。記録パタン列を加熱し、記録パタン列に対して熱負荷を与えることで、環境加速試験を行なわなくても、環境加速試験後の記録パタン列の状態を作り出すことができる。この記録パタン列を再生し、再生信号品質を測定して記録時パワーを決定することで、情報記録再生装置単体で、長時間使用後の状態でPRSNRが確保できる記録時パワーを求めることができる。つまり、長期にわたり、記録されたデータの消失を防止できる記録時パワー条件を求めることができる。本実施形態では、環境加速試験を必要とせず、また、情報記録再生装置単体でアーカイバル特性が確保しやすい記録条件を得ることができるので、簡易、かつ、短時間で、アーカイバル特性が確保できる記録条件を設定することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態における情報記録再生装置の構成は、図1に示す第1実施形態の情報記録再生装置100の構成と同様である。全体的な処理の流れは、図3に示す手順と同様である。第1実施形態では、図3のステップA5にて、バイアスパワーを基準として加熱時の光照射パワーを決定した。しかし、光ディスク114によっては、ステップA1で設定するパワーの初期値が必ずしもその媒体に適したパワーとなっていない場合もある。その場合にバイアスパワーを基準として加熱時のパワーを決定すると、加熱量が適切とならないことが考えられる。本実施形態では、加熱量決定に先立って、所定のパタン列を記録し、記録パタン列を加熱し、加熱したパタン列の再生信号品質を測定して、加熱量を決定する。
図12に、加熱量決定の動作手順を示す。この処理は、図3のステップA5の処理に相当する。加熱量の決定では、パラメータ調整器115は、まず、ステップA2(図3)で設定された特定パワーを記録時パワーとして、複数範囲にわたりパタン列を記録する(ステップB1)。次いで、パラメータ調整器115は、加熱量を変化させながら、ステップB1で複数領域に記録した記録パタン列を加熱する(ステップB2)。パラメータ調整器115は、LDドライバ107(図1)を制御し、領域ごとに記録パタン列に照射するレーザ光の照射パワーを変化させ、領域ごとに異なる加熱量で記録パタン列を加熱する。
パラメータ調整器115は、ステップB1では、ステップB2で加熱量を変化させる際の変化量、及び、変化ステップ幅に応じた数の領域に、所定のパタン列を記録する。例えば、加熱量の変化範囲がステップA2で決定されたバイアスパワーに対して±1.0mWの範囲であり、変化ステップが0.5mWであるときは、加熱量を5通り変化させることになるので、5つの領域に、所定の記録パタン列を記録する。記録する領域の単位は、例えばECCブロック単位とする。これら記録された領域は、同程度の性能を有する領域である。
パラメータ調整器115は、ステップB2で加熱された記録パタン列を再生し、領域ごと、つまりは加熱量ごとに、再生信号品質を測定する(ステップB3)。パラメータ調整器115は、ステップB3で測定された領域ごとの再生信号品質に基づいて、記録パタン列を加熱する際の加熱量を決定する(ステップB4)。その後、パラメータ調整器115は、図3のステップA6で、ステップB4で決定したパワーのレーザ光をステップA3で記録した記録パタン列に照射し、記録パタン列を一定の加熱量で加熱する。
パラメータ調整器115は、例えば再生信号品質としてPRSNRを用いる場合は、ステップB4で、PRSNRが特定レベル付近となる領域に対応する加熱量を、ステップA6での加熱量として決定する。このときのPRSNRの特定レベルは、性能境界として一般に用いられるPRSNR15以下が好ましい。また、光学情報記録再生装置では、経験的に、PRSNRが8を下回ると安定的にPLLがかからなくなるので、特定レベルの下限は8程度が好ましい。再生信号品質としてPRSNR以外を用いる場合は、PRSNR8〜15に対応するエラーレート又はエラーバイト数に相当する値を用いればよい。
以下、具体例を用いつつ、本実施形態の動作について説明する。光ディスク114には、第1実施形態で用いた媒体とは異なるメーカSの媒体を用いる。この光ディスク114には、パラメータテーブルに相当する情報は記録されておらず、ステップA1では、装置があらかじめ保持している情報を用いて、パラメータ設定を行う。このとき設定するピークパワーは11.0mWで、バイアスパワーは3.0mWとする。
パラメータ調整器115は、ステップB1で、5ECCブロックに所定パタン列を記録する。その後、パラメータ調整器115は、ステップB2で、記録した5ECCブロックに対し、ECCブロックごとに加熱量を変更しつつ、記録パタン列を加熱する。その後、パラメータ調整器115は、ステップB3で、ステップB1で記録したパタン列を再生し、ECCブロックごとに、再生信号品質を測定する。
図13(a)に、ステップB2の加熱時のレーザパワーの変化の様子を示す。パラメータ調整器115は、レーザパワーをバイアスパワー3.0mWを中心とした2.0mWから4.0mWまでの範囲で、ECCブロックごとにレーザパワー(加熱量)を0.5mWステップで変更しつつ、各ECCブロックに記録したパタン列に対してレーザ光を照射する。図13(b)に、再生信号品質の測定結果を示す。図13(b)において、横軸は加熱量を表している。ここでは、再生信号品質にPRSNRを用いている。PRSNRは、2.0mWで加熱した領域が最良となり、4.0mWで加熱した領域が最も悪くなる。
図13(b)に示す鎖線Aは、特定レベル以下の品質を示している。図13(b)では、この特定レベルを、PRSNR=10としている。パラメータ調整器115は、ステップB4で、測定されたPRSNRが、鎖線A付近となる領域の加熱量を、ステップA6で記録パタン列を加熱する際の加熱量として決定する。図13(b)では、PRSNRの測定結果が鎖線Aを横切る前後のうちで、加熱量2.5mWに対応する領域のPRSNRが、PRSNR=10に最も近い。パラメータ調整器115は、この加熱量2.5mWを、ステップA6での加熱量として決定する。
なお、加熱量の決定は上記には限定されず、PRSNRが鎖線Aを最初に下回る領域の加熱量を、ステップA6での加熱量として決定してもよい。また、PRSNRが鎖線Aを下回る直前の加熱量をステップA6での加熱量として決定してもよい。或いは、PRSNRが鎖線Aをまたぐ前後の加熱量から、PRSNRが鎖線Aと一致する加熱量を算術的に求め、その加熱量をステップA6での加熱量として決定してもよい。
本実施形態では、記録した領域を再生した際の再生信号品質に基づいて、記録時パワー調整の際に記録パタン列を加熱する際の加熱量を決定する。このようにすることで、加熱量を、実際の装置と媒体との組み合わせに応じて決定することができ、適合性を上げることができる。その結果として、記録時パワー調整を高精度で行うことができると共に、特定の装置と媒体との組み合わせに依存しない汎用性を高めた運用が可能となる。特に、装置が出荷された時点では市場に存在していない媒体や、使用することを想定しない未知ディスク媒体、或いは、装置があらかじめ保持している情報に対応しない場合などでは、ステップA6で、どのレベルの加熱量で加熱してよいかが不明となる。本実施形態では、そのような場合でも、適切な加熱量で、記録パタン列を加熱できる。
ここで、図14(a)〜(e)に、加熱量を変化させたときのPRSNRの測定結果例を示す。図14に示すPRSNRの測定結果は、図3のステップA7で測定されるPRSNRに相当する。図14において、横軸は記録時パワー条件を表している。図14(a)〜(e)において、鎖線Aは、図13(b)と同様の特定レベルを表している。鎖線Aのレベルは、PRSNR=10のレベルである。
図14(a)は、加熱量0、つまり、ステップA5の加熱を行わずに、異なる記録時パワーで記録された記録パタン列を再生した際のPRSNR(○)を示している。図14(b)〜図14(e)は、図14(a)と同一の記録パタン列に対して、ステップA5で加熱を行った後のPRSNRの測定結果(□)を示している。加熱量は、図14(b)から図14(e)に向けて大きくなっている。
図14(a)〜(e)を参照すると、記録直後の状態(図14(a))に対して加熱量を増加させつつ熱を加えていった場合、必ずしも、記録直後で性能がよい記録条件が、熱負荷に対し強い記録条件でないことがわかる。また、図14(b)のように、加熱量が小さく、記録パタン列に与える熱負荷が少なすぎる場合は、性能劣化はほとんど発生せず、図14(a)と同様なPRSNRが得られることになることがわかる。従って、この加熱量では、熱負荷に対して強い記録条件を得ることはできない。逆に、図14(e)のように、加熱量が大きく、記録パタン列に与える熱負荷が多すぎる場合は、性能劣化が激しすぎて、記録パタン列が破壊される結果となることわかる。従って、この加熱量でも、熱負荷に対して強い記録条件を得ることはできない。
図14(c)及び(d)は、各記録条件に対してPRSNRの絶対値は異なるものの、各条件に対する相対的な関係は同じである。すなわち、PRSNRが最良となる記録条件は同じである。従って、ステップB4にて、これらに対応する加熱量を、ステップA6での加熱量として決定することで、熱負荷に対して強い記録条件を得ることができる。言い換えれば、図12に示す手順で、加熱量を決定することで、所望の記録時パワー選定を適切に行うことができる加熱量を決定でき、その加熱量を用いて加熱することで、適合性を上げ、選択精度の確保を図ることができる。また、特定の装置と媒体との組み合わせに依存せずに加熱量を決定できるので、汎用性を高めることができるという効果も得られる。
なお、ステップB4では、図14(c)に対応する加熱量と図14(d)に対応する加熱量のように、複数の加熱量が選択可能となる場合がある。その場合、何れも用いたとしても、その後の処理に影響はない。複数の候補がある場合に、その候補から何れを選ぶかは、装置内の処理に依存する。装置に、自律的に判断して選択するアルゴリズムを実装するという手法も考えられるが、設計段階で適宜何れが選ばれるかを決めておくことが好ましい。
ところで、ピークパワーとバイアスパワーとの双方が形成マークの品質に影響を与えるような媒体では、バイアスパワーはマーク形成に影響するパワーである。特に、波長405nm近傍のレーザ光に対応した追記型の媒体では、この傾向は顕著である。このような媒体では、バイアスパワーは熱的に影響があるパワーなので、ステップA6で記録パタン列に与える熱負荷の目安になり得る。図14では、図14(c)の加熱量をバイアスパワー相当とすると、図14(d)の加熱量はバイアスパワーよりも少し高いパワーでの加熱量となる。また、図14(d)の加熱量をバイアスパワー相当とすると、図14(c)の加熱量は、バイアスパワーよりも少し低いパワーでの加熱量となる。
図12に示す手順で加熱量を決定する際には、バイアスパワーを目安に、その近傍から、ステップA6での加熱量として用いるパワーを決定すればよい。このような目安があることは、最適解を見つける上で、大変重要である。すなわち、バイアスパワーの近傍に決定すべき加熱量があることがわかっているので、その周辺で決定すべき加熱量を探せばよい。加熱量を探す範囲が限られていることで、闇雲に加熱量を変化させて加熱量を決定するのに比べて、高速、かつ、正確に、適切な加熱量を決定することができる。
引き続き、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態における情報記録再生装置の構成は、図1に示す第1実施形態の情報記録再生装置100の構成と同様である。全体的な処理の流れは、図3に示す手順と同様である。第1実施形態では、図3のステップA2で、ステップA1で設定したパワーを記録時パワー(特定パワー)として選択した。しかし、光ディスク114によっては、ステップA2で設定した記録時パワーにて所望の再生信号品質が得られない場合もある。本実施形態では、ステップA2で記録時パワーを決定する際に、光ディスク114に対する記録を行い、それを再生して所望の再生信号品質が得られることを確認する。
図15に、記録時パワー設定時の手順を示す。この処理は、図3のステップA2の処理に相当する。パラメータ調整器115は、ステップA1で各種パラメータを設定すると、ステップA1で設定した記録時パワーにて記録を行い(ステップC1)、記録した領域を再生して再生信号品質を測定する(ステップC2)。
パラメータ調整器115は、測定された再生信号品質と、所望の再生信号品質とを比較し、再生性能が担保されているかの判定を行う(ステップC3)。つまり、実際に記録を行って測定された再生信号品質が、想定される性能に見合うか否かをチェックする。所望の再生信号品質は、媒体ごとに用意され、情報記録再生装置内にあらかじめ記憶されている。パラメータ調整器115は、ステップC3で再生性能が担保されていると判定すると、ステップA1で設定したパワーを、記録時パワーに設定する(ステップC4)。
パラメータ調整器115は、ステップC3で再生性能が担保されていないと判定すると、記録時パワーを変化させ、複数の記録時パワーにて記録を行う(ステップC5)。パラメータ調整器115は、ステップC5では、例えば、バイアスパワーをステップA1で設定したパワーに固定し、ピークパワーをステップA1で設定したパワーから所定の範囲で変化させたパワーの記録時パワーで、複数の領域に所定の記録パタンを記録する。或いは、ピークパワーとバイアスパワーとを変化させた複数の組み合わせの記録時パワーで、所定の記録パタンを記録してもよい。
パラメータ調整器115は、ステップC5で記録した領域を再生し、再生信号品質を測定する(ステップC6)。パラメータ調整器115は、再生信号品質測定結果に基づいて、記録時パワーとして用いるパワーを選択し、そのパワーを記録時パワーに設定する(ステップC7)。パラメータ調整器115は、ステップC7では、例えば最良の再生信号品質が得られる領域の記録に用いた記録時パワーを、記録時パワーに設定する。
ステップC4又はステップC7で設定したパワーは、ステップA3で記録時パワーを段階的に変化させて記録を行う際の基準のパワーとして使用される。例えば、記録時パワーを、基準となるパワーに対して±10%の範囲で変化させてステップA3の記録を行う場合には、ステップC4又はステップC7で設定したパワーが、基準のパワー(0%のパワー)として用いられる。
以下、具体例を用いつつ、本実施形態の動作について説明する。以下では、光ディスク114として、媒体メーカMの媒体と、媒体メーカNの媒体との2つを考える。図16に、パラメータテーブルを示す。この情報は、装置内にあらかじめ記憶されている。はじめに、媒体メーカMの媒体が装填されたとする。情報記録再生装置100は、光ディスク114が装填されると、図16に示すパラメータテーブルから、装填された光ディスク114(媒体メーカM)に対応した情報を取得する。パラメータ調整器115は、ステップA1(図3)で、取得された情報により各種パラメータの設定を行う。
パラメータ調整器115は、ステップC1で、所定の記録可能領域に、ステップA1で設定されたパワーを用いて記録を行う。図16を参照すると、媒体メーカMの媒体に対するピークパワーは11.0mWで、バイアスパワーは3.0mWであるので、ステップC1では、これらの組み合わせのパワーを記録時パワーとして記録を行う。記録は、例えばECCブロック単位で行い、4ブロック分の領域に対して記録を行う。パラメータ調整器115は、ステップC2で、ステップC1で記録した領域を再生し、再生信号品質を測定する。再生信号品質には、PRSNRを用いる。
パラメータ調整器115は、ステップC3で、ステップC2で測定した再生信号品質と、所望の再生性能とを比較する。図16に示すパラメータテーブルを参照すると、媒体メーカMの媒体に対しては、想定PRSNRとして、PRSNR=20が記憶されている。ステップC2で測定された再生信号品質(4ECCブロックの平均値)がPRSNR=20.5であるとすると、このPRSNRは想定PRSNRよりも高い。従って、パラメータ調整器115は、ステップC3で、再生性能が担保されていると判定する。
パラメータ調整器115は、ステップC4で、ステップC1での記録に用いたピークパワー11.0mW、バイアスパワー3.0mWの組を、記録時パワーとして設定する。以降、パラメータ調整器115は、ステップA3(図3)で、記録時パワーを変更しつつ記録を行う際には、ステップC4で設定したピークパワー11.0mW、バイアスパワー3.0mWを中心に、記録時パワーを段階的に変化させる。また、パラメータ調整器115は、ステップA5では、ステップC4で設定したバイアスパワー3.0mWを基準に、加熱量を決定する。
次に、媒体メーカNの媒体が装填されたとする。情報記録再生装置100は、光ディスク114が装填されると、図16に示すパラメータテーブルから、装填された光ディスク114(媒体メーカN)に対応した情報を取得する。パラメータ調整器115は、ステップA1(図3)で、取得された情報により各種パラメータの設定を行う。
パラメータ調整器115は、ステップC1で、所定の記録可能領域に、ステップA1で設定されたパワーを用いて記録を行う。図16を参照すると、媒体メーカNの媒体に対するピークパワーは12.0mWで、バイアスパワーは3.4mWであるので、ステップC1では、これらの組み合わせのパワーを記録時パワーとして記録を行う。パラメータ調整器115は、ステップC2で、ステップC1で記録した領域を再生し、再生信号品質を測定する。
パラメータ調整器115は、ステップC3で、ステップC2で測定した再生信号品質と、所望の再生性能とを比較する。図16に示すパラメータテーブルを参照すると、媒体メーカNの媒体に対しては、想定PRSNRとして、PRSNR=20が記憶されている。ステップC2で測定された再生信号品質(平均)がPRSNR=18.5であるとすると、このPRSNRは想定PRSNRよりも低い。従って、パラメータ調整器115は、ステップC3で、再生性能が担保されていないと判定する。
パラメータ調整器115は、ステップC3で再生性能が担保されていないと判定すると、ステップC5に移行し、ドライブテストゾーンに対し、記録条件を変化させつつ、所定パタンを記録する。パラメータ調整器115は、ステップC5では、例えば、バイアスパワーを3.4mWとして、ピークパワーを12.0mWから±20%の範囲で、ECCブロックごとに5%ステップで変化させて記録を行う。パラメータ調整器115は、ステップC6で、ステップC5で記録した領域を再生し、記録条件ごとに、再生信号品質を算出する。
パラメータ調整器115は、ステップC7で、再生信号品質の測定結果に基づいて、記録時パワーを決定する。図17に、PRSNRの測定結果を示す。この例では、PRSNRは、ピークパワー+5%(12.6mW)のときに最良となる。パラメータ調整器115は、ステップC7では、このピークパワー12.6mWと、バイアスパワー3.4mWとの組を、記録時パワーとして決定する。なお、このとき、測定された再生信号品質が最良となる条件にて、必ずしも、ステップC3で比較した所望の再生性能を超えている必要はない。
以降、パラメータ調整器115は、ステップA3(図3)で、記録時パワーを変更しつつ記録を行う際には、ステップC7で設定したピークパワー12.6mW、バイアスパワー3.4mWを中心に、記録時パワーを段階的に変化させる。また、パラメータ調整器115は、ステップA5では、ステップC7で設定したバイアスパワー3.4mWを基準に、加熱量を決定する。
本実施形態では、記録時パワーの調整に先立って、記録時パワーの調整時の記録時パワーにて、所望の再生性能が得られるか否かを判断する。所望の再生性能が得られないときは、光ディスク114に対して記録を行い、よりよい再生性能が得られる記録条件を探す。このようにすることで、再生性能が低い記録時パワーにて記録時パワーの調整を行うことを避けることができ、記録時パワーの調整精度を向上することができる。
記録時パワーの調整に先立って、記録時パワーの調整時の記録時パワーにて、所望の再生性能が得られることを確認する理由は、装置と媒体との組み合わせによっては、必ずしも想定した装置状態や媒体特性とはならない場合があるためである。このような場合、性能が保証されていないパタン列を用いることになる。性能が保証されていないパタン列に対して熱負荷を与え、記録時パワー調整を行っても、必ずしも正確に保存安定性が高いパワーを選べるとは限らない。異常な結果となることや、局所最適な結果となることが考えられる。また、汎用性も損なわれることになる。本実施形態では、はじめに所期の性能が得られるか否かを判定し、所期の性能が得られないときは、できるだけ高い性能が得られる記録条件を探すことで、その後の処理の精度を確保することができる。また、特定の装置と媒体との組み合わせに依存せず、汎用性を高めることができる。
なお、上記各実施形態では、ステップA3(図3)、ステップC1(図15)で記録を行う際に、記録時パワーを一定の変化幅(ステップ幅)で変化させたが、変化幅は一定である必要はない。また、ステップB2(図12)で加熱量を変化させる際の変化幅についても、一定の変化幅である必要はなく、変化のさせ方は任意である。具体的には、ピークパワーとバイアスパワーとを、それぞれ12.0mW、3.0mWから±25%の範囲で変化させる際に、+25、+20、+15、+10、0、−10、−15、−20、−25(%)と変化させてもよい。この例では、0%〜±10%の範囲ではステップ幅を10%とし、10%〜25%ではステップ幅を5%としている。
図18に、記録時パワーを上記のように変化させてPRSNRを測定した結果を示す。図18を参照すると、記録時パワー0%(12.0mW、3.0mW)付近では、記録時パワー変化に対するPRSNRの変化が小さいことがわかる。また、記録時パワー0%を離れるほど、記録時パワー変化に対するPRSNR変化が大きいことがわかる。変化が小さい0%付近のステップ幅を大きめに設定し、変化が大きい周辺部分のステップ幅を小さく設定することで、特性変化が小さい部分の特性を粗めに調べ、特性変化が大きい部分の特性を詳細に調べることができる。これにより、処理の高速化、余分な領域の消費を抑えることが可能である。
上記各実施形態では、記録時パワー調整(図3)や加熱量決定(図12)、特定パワーの決定(図15)にて、所定のパタン列を記録し、既記録領域を作成して再生信号品質を利用した。しかし、光ディスク114のドライブテストゾーン内の領域などに、調整に使用してよいパタン列(品質が保証されたパタン列)が既に存在している場合には、そのパタン列を使用して、記録時パワー調整、加熱量決定、特定パワーの決定を行ってもよい。既に存在するパタン列を使用することで、記録動作処理を減らすことができ、処理の高速化、調整領域の節約が可能となる。
上記、既に存在するパタン列を使用する場合には、ドライブテストゾーン内の領域に、調整に使用可能なパタン列が存在するか否かを判定し、存在する場合に、そのパタン列を使用するとすればよい。また、その判定後、そのパタン列が所定のレベル品質を満たすか否か調べ、所定のレベル品質を満たすと判定したときに、そのパタン列を用いて調整を実施するとすればよい。調整に使用可能なパタン列が存在しない、或いは、パタン列は存在するがその品質が低いときには、新たに記録を行い、記録したパタン列を用いて調整を行えばよい。
上記各実施形態では、レーザ波長405nm、対物レンズの開口数0.65を用いたが、これには限定されず、上記各実施形態の記録時パワー調整は、種々のレーザ波長、開口数に適用可能である。上記各実施形態では、光ディスク114にHD DVD規格の媒体を用いる例を示したが、その他の規格の媒体にも適用可能である。光ディスク114に、例えば、ブルーレイディスク(BDディスク)を用いてもよい。光ディスク114は、有機色素媒体には限定されず、無機系の記録層を有する光ディスク媒体でもよい。無機系の記録層を有する媒体は、記録を行うと反射率が低くなるタイプの媒体で、High-to-Low媒体と呼ばれることもある。
また、PRMLにおける等化クラスとして、PR(1,2,2,2,1)を使用する例を示したが、他のPRクラス、例えばPR(1,2,2,1)を使用してもよい。変調符号については、HD DVDで採用されている一般的な(1,7)RLL符号を基にしたETMを仮定したが、その他の変調符号を用いてもよい。その場合は、最短データ長が3Tとなることもある。記録ストラテジについては、(k−1)型のパルストレインを用いる例を説明したが、その他の記録ストラテジを用いてもよい。
再生信号品質の性能指標には、主にPRSNRを用いたが、これ以外にも、エラーレート、PIエラーバイト数、エラーレートと定性的にほぼ等しい意味で使用されている他の指標などを用いることができる。このようなものとしては、例えばビタビ検出器内の信号を利用したSAM(Sequenced Amplitude Margin)やSAMを基にした指標などが考えられる。
図19は、再生信号品質としてビットエラーレートを用いたときの再生信号品質測定結果を示している。横軸は、記録時パワーを表している。図19には、ステップA6の加熱を行うまでの状態での再生信号品質(○)と、加熱後の再生信号品質(□)とを示している。エラービットレートは、値が小さいほど、再生性能が高い。図19を参照すると、加熱の前後で、再生信号品質が最良となる記録時パワーが異なっている。再生信号品質にビットエラーレートを用いたときでも、記録パタン列加熱後の再生信号品質に基づいて記録時パワーを決定することで、保存安定性が高い記録時パワーを決定できることがわかる。
図20は、再生信号品質として所定ブロック分のPIエラーバイト数を用いたときの再生信号品質測定結果を示している。横軸は、記録時パワーを表している。所定ブロック数は、1ECCブロックとしている。図20には、ステップA6の加熱を行うまでの状態での再生信号品質(○)と、加熱後の再生信号品質(□)とを示している。PIエラーバイト数は、値が小さいほど、再生性能が高い。図20を参照すると、加熱の前後で、再生信号品質が最良となる記録時パワーが異なっている。再生信号品質にPIエラーバイト数を用いたときでも、記録パタン列加熱後の再生信号品質に基づいて記録時パワーを決定することで、保存安定性が高い記録時パワーを決定できることがわかる。
上記各実施形態では、記録条件のうちの光照射パワーの調整について説明した。しかし、調整する記録条件のパラメータは、光照射パワー(ピークパワー、バイアスパワー)には限定されず、その他のパラメータ調整を行ってもよい。その場合には、例えば図3のステップA3では、パラメータを変化させた複数の記録条件にて記録を行い、ステップA8で、再生信号品質に基づいて、情報記録時の記録条件を決定すればよい。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の情報記録装置及び記録条件調整方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。