市場に流通している光ディスク装置は、光ディスクに記録された情報を読みだす機能を備えている。光ディスクに記録された情報は、再生光をその光ディスクに照射したときの反射光に基づいて読み出される。
近年の情報処理技術の進歩に伴って、ブランクディスク(ユーザが情報を書き込むことが可能な領域を備え、その領域にデータが書き込まれていない光ディスク)に、情報を記録することができる光ディスク装置(以下、光学的情報記再生装置と呼ぶ。)が普及してきている。光学的情報記再生装置は、ブランクディスクの記録層に熱を加え、その記録層を構成する物質の特性を変化させて記録マークを形成する。その記録マークは、その記録マークの長さ(記録マーク長)に対応した矩形波で表される記録データに基づいて形成される。
記録マークを適切に形成するためには、記録層に加える熱を適切にコントロールすることが要求される。記録層に加えられる熱量が小さいと、十分な記録マークを形成することができない。逆に、記録層に加えられる熱量が大きいと、記録マークの形状が不適切になる。また、記録層に加えられる熱量が大きいと、隣接する他の記録マークの形成に悪影響を与えてしまう。
光学的情報記再生装置は、記録層に熱を加える手段として、光ヘッドから出力されるレーザを使用している。光学的情報記再生装置は、記録データに基づいて入力データ波形を生成し、光ヘッドは、その入力データ波形に応じたレーザを光ディスクに照射する。特定の記録マークを形成するときに照射されるレーザの照射光量は、レーザの出力レベル(例えば、記録パワーやバイアスパワーなど)と、レーザ出力で記録層を過熱する時間(レーザパルスのパルス幅、パルス数、位置など)によって決定する。
光学的情報記再生装置は、入力データ波形の形状を変化させることで、レーザの出力レベルと加熱に要する加熱時間とを調整し、記録層に加える熱量のコントロールを行っている。レーザの出力レベル(レーザ光パワー)と加熱時間(照射時間)の調整に用いられる入力データ波形を、記録ストラテジと呼んでいる。なお、本明細書では、記録ストラテジを、時間を横軸にし、レーザ光の出力レベルを縦軸にした波形図で示す。
光学的情報記録再生装置によって情報の記録がなされる光ディスク媒体のタイプには、追記型や書き換え型などの異なるタイプの媒体があり、記録方式も異なる。記録方式が同じ光ディスクであっても、製造する製造元などが異なる光ディスクでは、その特性が異なることがある。特性が異なる複数の光ディスクに応じた記録ストラテジを使用し、その光ヘッドから照射されるレーザの照射光量を最適化し、特性が異なる光ディスクに情報を記録するときの記録性能(または、光ディスクからの再生性能)を向上させる技術が知られている。
図1は、従来のパルストレイン型の記録ストラテジST1の構成を示す波形図である。図1は、チャネルクロックCLKと、記録データD1と、パルストレイン型記録ストラテジST1と、記録マークMKとの対応を示している。記録データD1やパルストレイン型記録ストラテジST1は、チャネルクロックCLKに基づいて生成される。
光ディスクでは、1と0のビット列の連なりとして情報を記録する。記録されるデータのビット列(または、再生されるデータのビット列)における同一のビット情報の連なりをランという。1ビットに対応する長さを、チャネルビット長と呼ぶ。チャネルビット長に対応させたクロックを、チャネルクロックといい、チャネルクロックの1周期をTとしている。
一般的に、記録データD1と記録マークMKは、T(チャネルクロック周期)を用いて、n(nは2以上の自然数)の倍数として示される。図1に示されているように、パルストレイン型の記録ストラテジST1では、記録データD1がnT記録データの場合に、n−1個の矩形パルスを用いてnT記録マークの記録を行っている(以下、nTデータやnTマークと呼ぶ場合もある。)。このよう関係規則を、「n−1規則」と呼ぶ。「n−1規則」に対応したパルストレイン型記録ストラテジにおいて、n−1個の矩形パルスは、一つのグループとして構成される。
図1は、n=7の場合のチャネルクロックCLK、記録データD1、パルストレイン型記録ストラテジST1および記録マークMKの対応を示している。記録データが7Tマークの時、パルストレインは6つのパルスを含んでいる。なお、パルストレインは最後にクーリングパルスを含んでいても良い。
図1に示されているように、n=7のとき、パルストレイン型記録ストラテジST1は、列に配置される6つのパルスを含んでいる。各々のパルスに対応してレーザが照射され、媒体の記録層が加熱される。レーザ出射波形において、ゼロレベル、ボトムパワーレベル、バイアスパワー(書き換え可能型の場合消去パワー)レベル、記録パワー(ピークパワーという場合もある)レベルがあり、パルストレインの場合、照射パワーは記録パワーとボトムパワーの間を上下する。
パルストレイン型の記録ストラテジST1では、記録層が加熱される時間(加熱時間)と、記録層が殆ど加熱されない時間(非加熱時間)とが交互に並んでいる。レーザは、加熱時間において記録パワーで出射され、非加熱時間において、発振しつつ、ボトムパワーを出射する。したがって、パルストレイン型の記録ストラテジST1で記録マークを形成する場合、記録層に対する加熱と非加熱が交互におこなわれる。非加熱時間には、記録層の加熱がほとんど行われないため、記録層での熱蓄積を減らすことが可能である。これにより形成される記録マーク形状の歪みや熱干渉(所定の記録マークに対し、それの前後のマーク形成での熱が当該マーク形成に影響を及ぼす現象)による不具合(例えば、記録マーク形状の歪み)を少なくすることができる。
パルストレイン型の記録ストラテジST1に対応して記録を行なう場合、特定の場合を除き、光学的情報記再生装置は、一定の規則に従って複数のパルスを構成する。そして、光学的情報記再生装置は、その複数のパルスに基づいてレーザを照射する。たとえば、上述のn−1規則に従うとき、光学的情報記再生装置は、3Tマークを形成するために、2個のパルスを含むパルストレイン型記録ストラテジST1を構成する。また、4Tマークを形成するために、光学的情報記再生装置は、3個のパルスを含むパルストレイン型記録ストラテジST1を構成する。なお、上述のn−1規則に従うとき、2Tマークを形成するためのパルストレイン型記録ストラテジST1は、1個のパルスを含む。
記録層に加える熱量を調整する場合、パルストレイン型の記録ストラテジST1では、その複数のパルスのパルス幅や振幅を変更する。変更された複数のパルスのパルス幅や振幅に応じて、レーザパワーや照射時間が変化する。そのため、マーク長が異なる複数の記録マークに対して、ほぼ同程度の割合で記録層に加える熱量を調整することができる。
これによって、マーク長が異なる複数の記録マークに対し、線形性を有するように記録層に加える熱量の調整を行うことができる。ここで、線形性とは、記録する記録データ長と形成される記録マークの長さが比例する度合いを指し、線形性がよいとはその比例度合いが高いことに相当する。
また、その複数のパルスのパルス幅や振幅を変更するだけで記録ストラテジの調整が可能であるため、手軽に記録ストラテジの調整を行うことができる。
図2は、理想的なパルスの形状と実際に光ヘッドから出射されるレーザの出射波形との対応を示している。図2に示されているように、実際の出射波形は、オーバーシュート、アンダーシュート、パルスの上部の形状のばらつき、パルスの下部の形状のばらつき、前後端に対応する立ち上がり立ち下がりの偏差(以下、まとめて波形形状の乱れと記載する。)を含むことがある。波形形状の乱れは、信号の伝送状態、温度や湿度の環境条件、装置構成素子の経時変化などにより発生する。
パルストレイン型の記録ストラテジに基づいた記録マークの形成においては、加熱と非加熱の組合せで記録マークの形状が決まる。記録マークを形成するときに与えられる熱量は、パワーレベルとパルス幅(時間幅)の積算で決まる。パルス幅が狭いと、出射波形が理想的な形状のときに加えられる熱量に対し、波形形状の乱れ分の熱量の割合が大きくなる。パルス幅が広い場合には、出射波形が理想的な形状のときに加えられる熱量に対し、波形形状の乱れ分の熱量の割合が小さくなる。
上述したように、パルストレイン型の記録ストラテジST1においては、個々のパルス、例えば先頭パルス、中間パルス、後端パルスの各々に対応する実際の出射波形のパルス幅(形状)に差がある。波形形状の乱れは、先頭パルス、中間パルス、後端パルスの各々に対してバラバラに発生し、形成マークでの歪みをより多く発生させたり、線形規則性を崩したりしてしまうこととなる。
上述のように、媒体に加える熱量の調整は、記録ストラテジが示すパルスの振幅、パルス開始位置およびパルス幅(以下、これらを記録ストラテジパラメータと呼ぶ。)を変更することによって行われる。パルストレイン型の記録ストラテジST1は、複数のパルスを含んでいる。記録ストラテジを構成するパルスが多い場合、その波形形状の乱れを起こす要因を多くもってしまうという問題がある。したがって、複数のパルスのどれかにおいて、出射波形のパルス幅やパルス形状が変動すると、媒体に加えられる熱量が変わってしまう。出射波形の波形形状の乱れは、異なる複数の装置でばらつきをもって発生する。そのため、記録ストラテジを構成するパルスが多い場合、それぞれのパルスに生じる波形形状の乱れは、多くの装置に対しては装置間の機差バラツキを引き起こす要因となる。
波形形状の乱れが記録マークの形状に与える影響は、高速記録になればなるほど大きくなる。高速記録時は、記録クロック周波数があがり、記録ストラテジに対応した出射波形のパルス幅が狭くなる。上述のように、幅の狭いパルスは、波形形状の乱れが記録マークの形状に与える影響が大きくなる。また、パルス幅が狭い記録ストラテジに対応して高速記録を行うときに、パルス形状にはならず、三角波形状になってしまう場合もある。したがって、高速記録時にはパルストレイン型ではなく、矩形波形を基に構成されるキャッスル型の記録ストラテジが好ましい。
図3は、従来のキャッスル型記録ストラテジST2の構成を示す波形図である。図3は、チャネルクロックCLKと、記録データD1と、キャッスル型記録ストラテジST2と、記録マークMKとの対応を示している。キャッスル型記録ストラテジST2は、パルストレイン型記録ストラテジST1のように記録データのマークに対応する部分でのパルス分割はしない。また、先頭と後端の間に熱を逃がす非加熱部分は含まれていない。換言すると、キャッスル型の記録ストラテジST2は、矩形(ノンマルチという場合もある)パルスを基に構成されている。キャッスル型の記録ストラテジST2では、記録パワーは、レベルの異なるピークパワーとミドルパワーの2つを含んでいる。先頭部分、及び、後端部分のパルスはピークパワーであり、中間部分は、ミドルパワーである。キャッスル型の記録ストラテジST2は、熱を逃がす非加熱部分が含まれていない。
上述のように、記録ストラテジは、光ディスクの記録層に形成される記録マークの形状や、その光ディスクを再生した時のSNR( Signal to Noise Ratio )などに大きく影響を与える。光学的情報記再生装置での情報記録において、適切な情報再生を行うために要求される記録マークの形状やSNRなどは、再生方式に依存する。再生方式に合った出力が得られるように、記録マークを形成するために、波形の異なる複数の記録ストラテジや、その記録ストラテジの調整方法が知られている(例えば、特許文献1〜7参照)。
また、特許文献1(特開2003−203343号公報)には、パルストレインストラテジにおいて、記録パワーを固定してストラテジ(先頭パルス及びマルチパルス幅)を種々変化させてストラテジを調整することが開示されている。特許文献2(特開2005−216347号公報)には、DVD−Rの記録ストラテジ調整法が開示されている。特許文献3(特開2007−58939号公報)には、未知の記録媒体情報を持つ記録媒体において、良好な記録方法を選択し、記録品質に影響の大きい因子を制御することで効率のよく好適な記録波形を導出できることが述べられている。
特許文献4(特開2005−71438号公報)には、光源特性の実行的な出力低下が生じた場合でも、所望の記録線速度を低下させることなく対処可能とするために、当該記録線速度に対応する記録波形を変形させることによって対処する方法が示されている。公報実施の形態においては、光学的性質を変化させる発光パワーレベルである記録レベルの発光時間を延長させる方法が示されている。記録波形の変形は、測定監視された条件に従い、CPUにより演算して算出して決定する方法、予め各種要因に関する変動に対応付けて記録波形の変形パターンをテーブルとしてROMに格納しておき、測定監視された条件に従い、テーブルを参照して決定する方法が示され、実施例においてはパルストレインストラテジに対し、発光開始点を前方にずらす場合と、各記録波形の記録レベルの記録光が発光する終息点を時間的に後方にずらず場合と、両者を組合せて発光開始点を前方、終息点を後方にずらした場合が示されている。
特許文献5(特開2006−244545号公報)には、セットされた記録媒体の記録条件が予めROMに保持された複数の記録条件のいずれかに一致するかが判断され、一致しない場合は所定条件に基づいて最適な記録条件が選択され、さらに所定のルールに基づいた補正後の記録条件を用いることが述べられている。
特許文献6(特開2006−209815号公報)には、キャッスル型のストラテジに関して記載され、全てのマーク長に対し凹型となるキャッスル型記録ストラテジを用いる記述が掲載されている。特許文献7(特開2007−109367号公報)には、光記録媒体の同一記録線速領域で、一定の記録線速度に対してストラテジを変化させて記録する
記載があり、ストラテジの変化とは複数のパワー比、単純矩形パルスのパルス幅、先端部と後端部を有するパルスの先端部と後端部の各パルス幅、先頭パルス、後続パルスの各パルス幅、先頭パルスの発光タイミングのいずれかを変化させることが述べられている。また、上述の先行技術文献以外にも、記録ストラテジに関する技術が知られている(例えば、特許文献8、9参照。)。
また、非特許文献1(Japanese Journal of Applied Physics Vol.43, No.7B, 2004, pp.4859-4862 “Signal-to-Noise Ratio in a PRML Detection” S.OHKUBO et al)には、信号品質指標の一つであるPRSNR(Partial Response Signal to Noise ratio)に関する技術が記載されている。PRSNRとは、ジッタに代わる信号品質評価指標であり、HD DVDなどの次世代DVDにおいて採用された指標であり、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)におけるSNRである。さらに、PRSNRはエラーレートへの換算も可能で、この値が高ければ高いほど信号品質は優れていることを意味する。
再生波形の品質を評価する他の方法としては、ダイレクトにエラーレートやPIエラーを求めてしまう方法もある。PIエラーとは、ECC(Error Correction Code)のインナー側のパリティによってエラーがあることが検出された行のトータル数を意味し、エラーレートと定性的にほぼ等しい意味で使用されている。
特開2003−203343号公報
特開2005−216347号公報
特開2007−58939号公報
特開2005−71438号公報
特開2006−244545号公報
特開2006−209815号公報
特開2007−109367号公報
特開2005−346847号公報
特開平6−187640号公報
Japanese Journal of Applied Physics Vol.43, No.7B, 2004, pp.4859-4862 "Signal-to-Noise Ratio in a PRML Detection" S.OHKUBO et al
[第1実施形態]
以下に、図面を参照して本願発明の実施形態について説明を行う。本実施形態における光学的情報記再生装置は、記録するメディアや記録速度に応じて適切な記録マークを形成するために、出力レベルやパルス形状が異なる複数の記録ストラテジを保持し、少なくとも、キャッスル型記録ストラテジとパルストレイン型記録ストラテジを備えているものとする。なお、以下に述べる実施形態においては、前端部分と後端部分と中間部分とを備え、前端部分の振幅または後端部分の振幅よりも、その中間部分の振幅が小さい単一の波形をキャッスル型記録ストラテジと呼ぶ。また、先頭パルス、最終パルスおよび中間パルスを含む複数のパルスの集合で、各パルスの振幅の最大値が概ね一定である波形をパルストレイン型ストラテジと呼ぶ。
図4は、記録マークと、その記録マークに対応する複数の記録ストラテジとの対応を例示する波形図である。図4の(a)と図4の(b)は、パルストレイン型記録ストラテジの波形を例示している。なお、図4の(a)に示されるパルストレイン型記録ストラテジは、追記型記録媒体に情報を記録するときに使用される。また、図4の(b)に示されるパルストレイン型記録ストラテジは、書き換え可能型記録媒体に情報を記録するときに使用される。図4の(c)は、キャッスル型記録ストラテジの形状を例示している。図4の(d)は、単純矩形型の記録ストラテジの形状を例示している。
図4の(a)または図4の(b)を参照すると、パルストレイン型ストラテジは、先頭パルスと、最終パルスと、それらの間にある中間パルスとを備えている。先頭パルスは、Ttopで表されるパルス幅を有している。後端パルスは、Tlpで表されるパルス幅を有している。中間パルスは、Tmpで表されるパルス幅を有している。
また、本実施形態において、パルストレイン型記録ストラテジが示す波形の振幅の最大値を記録パワーと呼び、振幅の最小値をボトムパワーと呼び、ボトムパワーと記録パワーの間のパワーをバイアスパワーと呼ぶ。さらに、オーバーライト対応のパルストレイン型記録ストラテジでは、ゼロレベルと記録パワーとの間のバイアスパワーを特に消去パワーと呼称する。
なお、以下の実施形態においては、パルストレイン型ストラテジは、「n−1規則」に従うものとする。例えば、nT(nは2以上の自然数)の長さの記録マークを記録する場合、n−1個のパルスで記録を行う。n=2である2Tは先頭パルスだけ、n=3である3Tは先頭パルスと最終パルスだけからなる。
図4の(c)を参照すると、キャッスル型記録ストラテジは、前端部分と後端部分と中間部分とを備えている。以下の実施形態においては、本願発明の理解を容易にするために、冷却パルスを含まないキャッスル型記録ストラテジの波形を例示する。本実施形態において、キャッスル型記録ストラテジが示す波形の振幅の最大値をピークパワーと呼び、振幅の最小値をボトムパワーと呼び、ボトムパワーと記録パワーの間のパワーをバイアスパワーと呼ぶ。また、中間部分のパワーでピークパワーとバイアスパワーとの間の振幅をミドルパワーと呼ぶ。
図4の(c)に示されている、キャッスル型記録ストラテジは、冷却パルスを含んでいない、そのため、ボトムパワーとバイアスパワーとが同じパワーである。
また、図4の(c)に示されているように、キャッスル型記録ストラテジは、前端部分の振幅がピークパワーPpで、幅がTtopである。また後端部分の振幅は、ピークパワーPpで、幅がTlpである。さらに、中間部分は先頭パルスと後端パルスに挟まれ、その振幅であるミドルパワーPmは一定値である。
以下に、本実施形態の情報記録再生装置1の構成に関して説明を行う。図5は、本実施形態の情報記録再生装置1の構成を例示するブロック図である。情報記録再生装置1は、光ディスク2を搭載することができるように構成されている。情報記録再生装置1は、スピンドル駆動系3と、光ヘッド部4と、サーボコントローラ5と、RF(Radio Frequency)回路部6と、LD駆動部7と、復調器8と、変調器9と、システムコントローラ11とを含んでいる。
スピンドル駆動系3は、光ディスク2を駆動する。光ヘッド部4は、光ディスク2に光を照射し、また、光ディスク2が反射する光を検出する。なお本実施形態では、光ヘッド部4として、レーザダイオード波長405nm、NA(開口数)0.65のものを使用した場合を例示する。RF回路部6は、入力信号にフィルタリング等の処理を行う。なお本実施形態では、RF回路部6が、PR(1,2,2,2,1)用のビタビ復号器を有するものである場合を例示する。
復調器8は、入力信号を復調する。システムコントローラ11は、装置全体を統括する。変調器9は、記録すべき信号を変調する。LD駆動部7は、レーザダイオード(LD)12を駆動する。サーボコントローラ5は、サーボ信号をコントロールする。
光ヘッド部4は、レーザダイオード(LD)12と、対物レンズ13と、ビームスプリッタ14と、受光部15と、PreAMP16とを含んでいる。ビームスプリッタ14は、レーザダイオード(LD)12からの光を対物レンズ13に反射させる。また、ビームスプリッタ14は、光ディスク2からの反射光を受光部15に通過させる。受光部15は、光を電気信号に変換してPreAMP16に供給する。PreAMP16は、受けとった電気信号を増幅してRF回路部6に供給する。本実施形態では、RF回路部6は、信号品質としてPRSNR(PRSNRに関しては後述する)、振幅、変調度を計測している。
図6は、システムコントローラ11の構成を例示するブロック図である。システムコントローラ11は、記録ストラテジ調整器21とパラメータ保持部22とを含んでいる。記録ストラテジ調整器21は、記録ストラテジが示す波形のパルス幅やパルス開始位置の調整を行う。また、記録ストラテジ調整器21は、記録パワー、ミドルパワー、バイアスパワー等のパワー関係の調整をコントロールする。パラメータ保持部22は、記録ストラテジが示す波形の時間軸方向のパラメータと、パワーレベルのパラメータとを組み合わせたものをストラテジパラメータとして保持している。
図6に示されているように、記録ストラテジ調整器21は、パワーコントロール部23と波形調整部24とを含んでいる。パワーコントロール部23は、記録ストラテジが示す波形における時間軸方向のパラメータをコントロールする。波形調整部24は、記録マークの形成に用いられる記録パワー、ミドルパワー、バイアスパワー等の記録時パワーを独立にコントロールする。システムコントローラ11は、RF回路部6から得られる信号品質を示す指標と、パラメータ保持部22に保持されているストラテジパラメータとの対応を示す対応情報を生成する。記録ストラテジ調整器21は、その対応情報を用いて後述する一連の調整シーケンスを実行し、ストラテジパラメータを最適化する。
図7は、RF回路部6の構成を例示するブロック図である。RF回路部6は、プリフィルタ(図示されず)と、オートゲインコントロール(図示されず)と、ADC(A/Dコンバータ)31と、PLL(フェーズロックドループ)回路35と、オフセット補正器32と、アシンメトリ補正器33と、最尤検出器34と、誤差検出器36とを含んでいる。また、最尤検出器34は、適応等化器(図示されず)とビタビ復号器(図示されず)を含んでいる。RF回路部6は、PreAMP16からの信号に応答して、フィルタリング、イコライジング、PLL等の処理を実行する。PRMLを使用する場合はここで、ビタビ復号等の処理も行われる。
最尤検出器34は、適応等化後の信号と、ビタビ復号後のデータ列信号とを信号比較器(図示されず)に供給することによってPRSNRを計算する。PRSNR計算時に必要な各時刻のノイズは、理想信号波形と実際信号波形の差に基づいて算出される。理想信号波形は、ビタビ複合後のデータ列信号と(1,2,2,2,1)ベクトルの畳み込み積分により求められる。実際信号波形は、適応等化後の信号を用いる。
また、振幅又は変調度、アシンメトリ値はPRML検出器にて、理想信号波形と適応等化後の信号(実際信号波形)の差を利用して算出される。アシンメトリ値は最短マーク(スペース)による最小の再生振幅と最大の再生振幅を示す長マーク(スペース)からも算出可能である。また、アシンメトリ値は、最短マーク(スペース)よりも1T長いマーク(スペース)に対応する振幅と最大の再生振幅を示す長マーク(スペース)からも算出可能である。これは例えば最小が2T、2Tより1T長いマークが3T、最大振幅は8Tや13Tということになる。
システムコントローラ11の記録ストラテジ調整器21は、RF回路部6から送られてくるPRSNR、復調器8によって復調されたデータ列から得られるPIエラー数、および振幅・変調度によって、記録条件と信号品質の対応を認識し、後述する一連の調整シーケンスをコントロールし、最適な記録ストラテジの調整を行う。
本実施形態においては、情報を記録する光ディスク2として、HD DVD−R(1度だけ記録が可能な追記型のHD DVD)を使用する場合を例示する。図8は、光ディスク2の構成を例示するブロック図である。光ディスク2は、リードインエリアと、データエリアと、リードアウトエリアを備えている。リードインエリアは、HD DVDのディスク内周部に構成されている。リードインエリアは、システムリードインエリアを含み、そのシステムリードインエリア内のコントロールデータゾーンには、Disc Manufacturing informationが備えられている。
これらのHD DVD−Rは記録層に短波長対応の有機色素系の部材を用い、記録を行うと反射率が高くなるタイプの媒体で、Low−To−Highメディアと呼ばれている。ディスクの物理構造としては、ポリカーボネイトからなる、厚さが0.6mm、直径が12cmである円板状の透明な基板に、プリグルーブと呼ばれる案内溝が形成されている。記録及び再生時には、情報記録再生装置1(光ディスクドライブ)の光ビームがこの案内溝に沿って走査できるようになっている。この基板上に記録用の膜が成膜されている。また、以下の実施形態においては、物理フォーマットとして、ビットピッチが0.15μm、トラックピッチが0.40μmのイングルーブ・フォーマットを使用した場合を例示する。
情報記録再生装置1は、光ディスク2にETM(Eight to Twelve Modulation)と呼ばれる変調符号を用いて記録を行う。ETMは、最短マークあるいは最短スペース長は2T(Tはチャネルクロック周期)で、(1−7)RLL( Run Length Limited )の一種である。一般的な(1−7)RLLとは、入力データ系列を1と0のビット列の連なりとすると、同一ビット情報の連なりをラン(Run)という。(1‐7)RLLは、最小ランが1、最長ランが7である変調規則である。(1‐7)RLLに従うと、最小マークまたは最小スペースは2Tとなる。また、最長マークまたは最長スペースは8Tとなる。ただし、ETMでは、同期マークや符号の特性により、これよりも長いマーク長を宛てるので、実際には8Tよりも長いマークも含まれる。
図9は、本実施形態における記録ストラテジの調整動作を例示するフローチャートである。本実施形態の動作は、情報記録再生装置1に光ディスク2を入れた後、記録ストラテジ調整プログラムを実行することによって開始する。以下の実施形態の動作においては、対象となる光ディスク2が、HD DVD−Rである場合を例示する。情報記録再生装置1は、光ディスク2の特定領域に予め保持されている情報(例えば、ディスクメーカ名、生産地、ディスクの種別の情報を含むDisc Manufacturing information)により、ディスクがHD DVD−Rであると判別する。
ステップS101において、記録ストラテジ調整器21は、パルストレイン型記録ストラテジの調整を実行する。記録ストラテジ調整器21は、パルストレイン型記録ストラテジが示す波形に基づいて、先頭パルス、後端パルス、中間パルスに対し、それらのパルス幅の調整とピークパワーの調整とを行う。
ステップS102において、記録ストラテジ調整器21は、パラメータの移行を行う。記録ストラテジ調整器21は、ステップS101を実行することによって得られたパルストレイン型記録ストラテジの調整結果に基づいて、それぞれ、キャッスル型記録ストラテジの波形を調整する。記録ストラテジ調整器21は、パルストレイン型記録ストラテジの先頭パルスのパルス幅を、キャッスル型記録ストラテジの先頭部分の幅とし、その先頭パルスの振幅をキャッスル型記録ストラテジの先頭部分のパワーレベルとする。また、記録ストラテジ調整器21は、パルストレイン型記録ストラテジの後端パルスのパルス幅を、キャッスル型記録ストラテジの後端部分の幅とし、その後端パルスの振幅をキャッスル型記録ストラテジの後端部分のパワーレベルとする。
ステップS103において、記録ストラテジ調整器21は、パルストレイン型記録ストラテジの中間パルスのパルス幅とピークパワーとを用いて、キャッスル型記録ストラテジのミドルパワー値を導出する。なお、キャッスル型記録ストラテジのミドルパワー値を導出した後に、上述したパルストレイン型記録ストラテジの先頭パルスのパルス幅を、キャッスル型記録ストラテジの先頭部分の幅とし、その先頭パルスの振幅をキャッスル型記録ストラテジの先頭部分のパワーレベルとする処理を行っても良い。
図10は、パルストレイン型記録ストラテジが示す波形を基に構成されるキャッスル型ストラテジを例示する波形図である。図10は、記録データが7T記録データである場合を例示している。また、そのパルストレイン型記録ストラテジは、n−1規則に従って構成されている。したがって、キャッスル型ストラテジは、2T記録マークに対応する場合には、非キャッスル型の単一矩形の波形となる(図11参照)。
図10を参照すると、パルストレイン型記録ストラテジを構成するパルストレインの先頭パルスは、先頭パルス幅Ttopで表されている。中間パルスのパルス幅は、中間パルス幅Tmpで表されている。後端パルスのパルス幅は、後端パルス幅Tlpで表されている。また、各パルスの最大値はピークパワーPpで表され、最小値はボトムパワーPbtmで表されている。また、図10に示すパルストレイン型記録ストラテジは、バイアスパワーPbを含んでいる。
HD DVD−R Low−to−High媒体は、ボトムパワーと異なるバイアスパワーを備えたパルストレイン型記録ストラテジによって、記録が行われる。このときのボトムパワーは、形成されるマークの性能(記録再生性能)にほとんど影響を与えない。したがって、この場合に、光学的情報記録再生装置は、設定可能なもっとも低いパワーをボトムパワーとする。
キャッスル型記録ストラテジを構成するパルスの先端部分は、先端パルス幅CTtopで表されている。中間部分の幅は、中間パルス幅CTmpで表されている。後端部分の幅は、後端パルス幅CTlpで表されている。また、キャッスル型記録ストラテジを構成するパルスの振幅の最大値は、ピークパワーCPpで表され、最小値はバイアスパワーCPbで表されている。
本実施形態において、ミドルパワーPmの導出には、中間パルス幅をTmp、ピークパワーをPp、補正係数をα1とした時、下記(1)式を用いる。
Pm=α1×Pp×Tmp/T・・・(1)
ここで、本実施形態におけるキャッスル型記録ストラテジのミドルパワーを決定する動作について、より詳細に説明を行う。上述したステップS101では、パルストレイン型記録ストラテジに対応して記録を行うときに光ディスク2に加えられる熱量が決定する。その熱量は、時間(加熱期間のパルス幅)とパワーとの積となる。ステップS102では、パルストレイン型記録ストラテジの先頭パルスのパルス幅がTtopのとき、キャッスル型記録ストラテジの先頭部分の幅CTtopを、
CTtop=Ttop
とする。また、パルストレイン型記録ストラテジの後端パルスのパルス幅がTlpのとき、キャッスル型記録ストラテジの後端部分の幅CTlpを
CTlp=Tlp
とする。
パルストレイン型記録ストラテジにおいて、中間パルスを構成するパルスの個数は、マーク長によって異なる。したがって、ステップS103において、ミドルパワーを決定する場合、加熱期間と非加熱期間の組を1周期とし、下記(2)式に基づいて得られるミドルパワーを、基本値と考える。
例えば、中間パルスのパルス幅がTmp(Tmp<1T、Tはチャネルクロック周期)の場合、一個の中間パルスに対応して加えられる熱量の基本値は、
基本値=パルス幅Tmp/チャネルクロック周期T×ピークパワーPp・・・(2)
で求めることができる。
また、(1−7)RLL変調規則に従って構成される記録データを、n−1規則のパルストレインに変換した際、3Tパターンに対応するパルストレイン型記録ストラテジは、中間パルスを含まない。そのため、本実施形態の動作によって得られるキャッスル型記録ストラテジは、ミドルパワーを付加されたことに起因して、3T記録マークがやや大きめに記録される。本実施形態のキャッスル型記録ストラテジにおいては、中間パルスの変換だけで構成された(2)式に対し、補正係数α1を導入する。ミドルパワーPmは、上述したように
Pm=α1×Pp×Tmp/T・・・(1)
として算出される。これによって、3T記録マークと他の記録マークとの対応を適切にし、3T記録マークの大きさに基づいて他の記録マークをやや大きめに記録することができる。
補正係数α1を算出する動作について説明を行う。以下では、nT記録データにおいて、n=3(3T記録データ)のときのパルストレイン型記録ストラテジの先頭パルス幅Ttopが0.75Tであり、後端パルス幅Tlpが0.66Tである場合を例示する。また、n=4以上の記録データにおいては、先頭パルス幅Ttopが0.66Tである場合を例示する。
キャッスル型記録外ラテジの3T記録データでのミドルパワーをミドルパワーPmβとするとき、ミドルパワーPmβとなる部分の幅は、1T周期を基本とした時、パルストレイン型記録ストラテジ先頭パルスの残り分の幅なので、
1−0.75=0.25(T)
となる。
0.25T分の熱量は、Pmβ×0.25である。3T記録データに対応するキャッスル型ストラテジにおいて、この3Tでのミドルパワー部分が、パルストレインに対して占める割合は
(0.25×Pmβ)/((0.75T+0.66T)×Pp)…(3)
となる。ここで、Pmβは中間パルス幅とピークパワーから算出されるパワーなので、
Pmβ=Pp×Tmp/T
となり、実際の値として、式2は(0.25×0.66)/1.41となる。これが、ミドルパワーによって、3Tに過剰にかかった熱量の割合である。熱追加分の補正係数として使用するので1を足した数が補正係数α1となり
α1=1+(0.25×0.66)/1.5
=1.12
が得られる。
上述したように、記録ストラテジは、記録データを基にして構成されている。記録ストラテジの調整に用いられる記録ストラテジパラメータは、基準とする記録データの前のスペース長や後のスペース長に応じて補正が行われる。例えば、同じ2Tマークのパラメータでも、そのマークの前が2Tスペースの場合と、3Tスペースの場合とでは、記録波形開始位置を変更する等の補正が行われる。これをパターン対応補正と称する。
本実施形態において、パルストレイン型記録ストラテジを調整するときに、パターン対応補正を行った場合、キャッスル型記録ストラテジの調整において、パターン対応補正を省略することができる。そのため、前後のスペース長の考慮を含めた先頭パルスの開始位置、後端パルスの終了位置を含め、前後端のパルス幅のパラメータの調整を減らすことができる。
また、パルストレイン型記録ストラテジに対応してマーク形成を行った場合、品質のよい記録マークの形成が補償されるパワーを、形の異なるキャッスル型記録ストラテジに適用させている。そのため、パワーにおいても品質のよいマークが形成できる最適パワー又は最適パワー近傍のパワーを用いることが可能となる。
キャッスル型のような矩形ストラテジでは、熱蓄積が大きいので、個々のパラメータが他のパラメータに与える影響が大きい。そのため、予め品質のよいマーク形成できる条件に近いパラメータを用いることで、さらなる調整を行った場合であっても、局所最適なパラメータになりにくい。
[第2実施形態]
以下に、図面を参照して、本発明の第2実施形態について説明を行う。第2実施形態の動作は、第1実施形態の動作に、さらに、ステップS104〜ステップS106の動作を含んでいる。
図12は、第2実施形態の動作を例示するフローチャートである。図12を参照すると、ステップS104において、記録ストラテジ調整器21は、ステップS103を実行することによって得られたキャッスル型記録ストラテジの波形を特定する。そして、記録されるマーク長が最短の記録マーク用のキャッスル型記録パルス幅を調整する。
中間パルスのパラメータを用いた変換でミドルパワーを導出したことによって、マーク長の線形性がずれる場合がある。その影響は短いマークに発生しやすいので、短いマークをさらに調整するのが好ましい。短いマークとは、例えば、(1−7)RLLを基にした変調規則の場合、最短の2Tマーク、最短マークより1T長い3Tマークが相当する。
ステップS105において、記録ストラテジ調整器21は、キャッスル型記録ストラテジでのピークパワーを調整する。記録ストラテジの調整においては、パルス幅よりもパワーの方がより微調整が可能である。これは、ストラテジの変更単位は汎用LSIの回路が通常同期系で構成される都合から1/32Tや1/64T単位精度となるが、パワー設定値は同期系である必要がないことから、ストラテジ設定精度よりもさらに1桁程度高い設定精度を確保できる場合がある。従って、ピークパワーをさらに調整した場合、微妙な調整が可能で、さらに性能を上げることができる場合がある。
また、ピークパワーは全てのマーク長形成ストラテジでのピークパワーに影響を及ぼすが、様々なマーク長において、ピークパワー幅がマーク形成時の全熱量に占める割合が大きい場合と小さい場合があり、ピークパワーの影響度が異なる。例えば、ピークパワーの影響は記録マーク長が長い程小さいが、逆に最短マーク長に対応する記録ストラテジ(1−7RLLでは2T)や最短マークの次に短いマーク長(1−7RLLでは3T)に対応したストラテジでは比較的影響が大きい。従って、特に短いマークに対しての微調整が可能なので、さらになる性能向上につながる場合がある。
ステップS106において、記録ストラテジ調整器21は、ステップS103を実行することによって得られたキャッスル型記録ストラテジのミドルパワーを調整する。ミドルパワーに関し、パルストレイン型記録ストラテジにおける中間パルスの前後の先頭パルス、後端パルスのパルス幅やピークパワーの大きさによっても熱の伝達度合いが異なるので、変換にてパワーを導出するよりもパワーを具体的に調整する方がより適合性があがり、さらに性能を上げることができる場合がある。この場合でも変換により導出したパワーを初期値として用いれば、全く情報がない場合に比べ速く調整が可能となるばかりでなく、局所最適なパラメータに陥るのを回避することができる。
図13は、キャッスル型記録ストラテジのミドルパワーを調整する動作の詳細を例示するフローチャートである。図13を参照すると、ステップS201において、ステップS103を実行することによって得られたミドルパワー値を中心に、段階的にキャッスル型記録ストラテジのミドルパワーを変化させる。そして、所定のテストパターン列を記録する。ステップS202において、記録したパターン列を再生して段階的に変化させたミドルパワー各々に対応する再生信号品質を測定する。ステップS203において、測定された前記再生信号品質のうちの所定の再生信号品質を示すパターン列を記録したときに用いたミドルパワーを最適ミドルパワー値として選択する。
なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、上述のステップS104〜ステップS106の各ステップを実行する順番の入れ替えを行う機能や、特定のステップの実行をスキップする機能を備えていても良い。
[実施例]
以下に、具体的な数値を用いた本願発明の実施例について説明を行う。以下の実施例においては、上述のステップS101におけるパルストレイン型記録ストラテジのパルス幅を調整する時には、パルス前端の位置を変更するものとする。また、以下の実施例では、情報記録再生装置1での出射可能記録パワーの上限パワーが12mWである場合を例示する。そして、全てのパルス幅を0.5Tとして、所定の記録パターンにて記録パワーを12mWの半分程度のパワー6mWから12mWまで1mW刻みでパワーを変えつつ記録を行う。さらに、情報記録再生装置1は、記録した領域を再生して、信号品質を測定する。以下に述べる実施例での信号品質は振幅とするが、PIエラー数やPRSNRを用いることも可能である。
記録パワーの変化に対し、振幅の変化がほぼ一定となるパワーとして11mWを選定する。記録パワーに対するバイアスパワーとボトムパワーは、予め校正してあるパワーとして3.6mWと0.1mWを選定する。ここでのパワーの選定は、HD DVD−Rと判定後、事前に検討に用いた多くの媒体の平均的なパワーマージン分と経時変化や環境変化等を考慮にいれ所定のパワーとして、記録パワーを11mW、バイアスパワーは3.6mW、ボトムパワーは0.1mWとしてもよい。
バイアスパワーは、仮決めとして再度パルストレイン型記録ストラテジの調整(ステップS101)の中で、実際にバイアスパワーを所定の刻み幅で変えつつ所定のテストパターンを記録し、記録した領域を再生して再生信号品質を測定することで選定されてもよい。また、このベースストラテジを決定する時にのみアシンメトリ補正回路を適用してPRML検出し、PRSNRを測定してもよい。
図14は、上述のステップS101のより詳細な動作を例示するフローチャートである。ステップS301において、ベースストラテジの決定を行う。このとき、先頭パルス、中間パルス、後端パルスを全て同一パルス幅の基本パルスとし、基本パルス幅を0.38Tから0.86Tまで略0.03Tのステップ幅にて変更しつつ記録する。そして、記録した領域を再生してPRSNRを求める。これによって、最良性能となるように記録できた領域の記録に使用したパラメータに基づいて、基本パルス幅を求め、ベースストラテジを決定する。ここでベースストラテジとしてのパルス幅として0.66Tが得られたものとする。
ステップS302において、基本パルス幅を基に、最短マークに対応したパルス幅を、PRSNRを用いて決定する。この時のパルス幅は基本パルス幅を中心に
基本パルス+(略−0.06T 〜+0.18T)
を略0.03Tステップにて変更しつつ記録する。そして、記録した領域を再生してPRSNRが最良となるように記録できた時の先頭パルス幅を、先頭パルス幅として決定する。なお、n−1規則のパルストレインでは最短マーク2Tは単一パルスとなり、先頭パルスのみで作成されているとする。
ステップS303において、初期パワー(本実施例では記録パワーは11mW、バイアスパワーは3.6mW)を中心に、略±20%の範囲を2%のステップにて変更しつつ記録する。そして、記録した領域を再生してPRSNRを求める。これによって、最良性能となるように記録できた領域の記録に使用したパラメータに基づいて、記録パワー(ピークパワー)を決定する。
ここで続けてバイアスパワーの調整をしてもよい。バイアスパワーの調整は、選定された記録パワーを用いて初期パワー3.6mWを中心に略±20%の範囲を5%のステップにて変更しつつ記録する。そして、記録した領域を再生してPRSNRを求める。このPRSNRを用いてバイアスパワーを決定する。ピークパワーは10.7mW、バイアスパワーは3.4mWと求まる。本実施形態のパルストレイン型でのボトムパワーは、0.1mW固定とし、特に調整はしない。
ステップS304において、最短マークより1T長い記録マークを形成するための、先頭パルスの幅を決定する。ETM変調の場合、最短マーク長が2T(最長は13T)なので、3T以上のマークがこれにあたる。本実施例では、今回は3T記録マークと4T以上の記録マークとを区別して調整を実施する。
4T以上の記録マークに関しては、全て同一の先頭パルス幅とする。調整の順番は3T、4T以上の順とし、ステップS301で求めた基本パルス幅を基に、3Tのマークに対応した先頭パルス幅、4T以上のマークに対応した先頭パルス幅の順に先頭パルス幅を順次決定する。具体的には、基本パルス幅を中心に、略−0.06T〜+0.18Tを、略0.03Tステップ刻みでパルスの前端を変更して記録マークを形成する。そして、形成された記録マークを再生することにより、先頭パルス幅を、PRSNRを指標に用いて決定する。
ステップS305において、後端パルスの幅を設定する。ステップS305では、最短マークより1記録単位長(1T)以上長いいずれかの長さのマークを記録するための後端パルスの幅を決定する。なお、(n−1)型パルストレインの場合、2Tは先頭パルスだけで構成されるので、このステップS305において、ステップS302で調整に利用したパルスの縁(エッジ)と逆の縁(エッジ)を調整するとしてもよい。また、本実施形態においては、調整の手順としては、最短マークの後端を調整し、3Tの後端パルスの後端を調整し、その後、4T以上の後端パルスの後端を調整する。調整は先程と同様に、3Tと4T以上とカテゴリー分けをして、調整を行い、4T以上の後端パルスの幅に関しては全て同一の後端パルス幅とする。調整は、ステップS301で求めた基本パルス幅を基に2Tマーク、3Tマークに対応した後端パルス幅、4T以上のマークに対応した後端パルス幅の順に後端パルス幅を順次決定する。
この時のパルス幅は、基本パルス幅を中心に略−0.16T〜+0.18Tを略0.03Tステップ刻みでパルスの前端を変更して記録マークを形成する。そして、形成された記録マークを再生することにより得られたPRSNRを指標に用いて後端パルス幅を決定する。またこのステップでは、さらに後続スペース長対応後縁調整を実行するとしてもよい。つまり、ステップS301で決定されたパラメータを基に、直後のスペース長が2Tの場合、3Tの場合、4T以上の場合の2T,3T,4T以上の各マーク長に対応する記録ストラテジの最後端エッジ位置を、
ステップS301で求めたパルス幅+(略−0.21T〜+0.12T)
の範囲を略0.06Tステップにて同一量、同一方向に変更しつつ、媒体に記録を行い、記録した領域を再生してPRSNRが最良となるパラメータを決定する。つまり、特定マークとして2Tマーク以上のマークに対する記録ストラテジの最後端立下りエッジ位置を前記マーク直後のスペース長に応じて同一量だけ変化させる一律後縁調整を行う。調整の順番としては、直後のスペース長が2Tの場合、3Tの場合、4T以上の順番に個別に実施するとし、各調整ではその前の調整までに得られる結果を用いる。
図15は、上述のステップS301〜ステップS305の動作を実行することによって得られた実行結果を例示するテーブルである。図15は、マークを”M”、スペースを”S”として表している。例えば、MXSYは、マーク長がXTの記録マークと、スペース長がYTのスペースとが連即していることを表している。ここにおいて、XやYが4の時は、4T以上を表すものとする。また、M234は2T以上のマークを示すものとする。
図15を参照すると、記号M234S2は、2T以上マークと2T以上マークに続くスペース長が2Tの場合を示している。M234S3は、2T以上マークと2T以上マークに続くスペース長が3Tの場合を示している。M234S4は、2T以上マークと2T以上マークに続くスペース長が4T以上の場合を示している。
後端パルスは、後続スペース長によってパラメータが異なる。基準位置に対し、Tlp=0.66Tは、基準位置よりも左側に0.66T分のパルス幅を持つことを示している。M234S2=0.75Tは、0.75−0.66=0.09T分、基準位置より後が長いことを示す。なお、ステップS101における調整において、全ての調整を実施する必要はない。
また本実施例では、ステップS305において、3Tと4T以上というように、記録マークのマーク長に応じた調整は、順番を入れ替えてもよい。また、ステップS305における、記録マークのマーク長に応じた調整は、どちらか一方のみを実行するようにしてもよい。さらに、ステップS305において、記録マークのマーク長に応じた調整は、4T以上をさらに細分化して調整することも可能である。
ステップS102において、ステップS101により調整された先頭パルスのパルス幅、後端パルスのパルス幅およびピークパワーを、それぞれ、キャッスル型記録ストラテジの先頭部分と後端部分の幅、およびパワーレベルとして適用する。
ステップS103において、パルストレインでの中間パルスのパルス幅とピークパワーを用いて、キャッスル型記録ストラテジのミドルパワー値を導出する。上述した補正係数α1を、図15のパラメータを用いて算出すると
α1=1.12
となる。したがって、ミドルパワーは、
Pp=10.7mW、
Tmp=0.66T、
α1=1.12
より
Pm=7.91mW
となる。
また、ミドルパワーPmは、中間パルスのピークパワーPp=10.7mWと、スペース部にて照射されるバイアスパワーPb=3.4mWの中間程度のパワーとして近似も可能である。したがって、中間パルスパラメータから算出される補正係数α1を用い、
Pm=α1×(Pp+Pb)/2
α1は、先の値を用い、α1=1.12とし
1.12×(10.7+3.4)/2=7.90mW
を用いるとしてもよい。また、予め実験により校正した補正係数を用いることも可能である。なお、この時、ミドルパワーの変換値が多少ばらつく場合があるが、後述のミドルパワー調整(ステップS106)により調整可能である。ここまででPRSNRは23程度が得られる。
ステップS104においては、
2TTop=0.84Tに
対し、前端位置を
ステップS101で求めたパルス幅(図15では0.84T)+(略−0.06T〜+0.30T)の範囲、つまり、パルス幅を0.78Tから1.14Tまで0.03Tのステップ幅にて変更して最短マーク対応記録パルス幅を決定する。
図16は、ステップS104によって得られた最短マーク対応記録パルス幅とPRSNRとの対応を示す図である。図16に示されているように、最短マーク対応記録パルス幅として、1.02Tが求められる。なお、性能指標はアシンメトリ値やPIエラー数を用いてもよい。アシンメトリ値を用いた時は、アシンメトリ値ができるだけゼロに近くできるパルス幅を選択する。この時点でPRSNRは30程度が得られる。
ステップS105において、キャッスル型ストラテジでのピークパワー調整を実施する。記録ストラテジ調整器21は、ステップS101で得られたパワー10.7mWを中心に、12mWを上限に±20%の範囲を0.3mW刻みにて記録マークの形成を行う。そして、その記録マークを再生することで得られたPRSNRを用いてキャッスル型ストラテジでのピークパワー調整を実施する。
なお、性能指標としてはアシンメトリ値やPIエラー数を用いてもよい。アシンメトリ値を用いた時はアシンメトリ値ができるだけゼロに近くできるパルス幅を選択する。この調整によりピークパワーは10.1mWと求まる。この時点でPRSNRは31程度が得られる。
ステップS106において、記録ストラテジ調整器21は、パラメータ変換(ステップS103)において求まったミドルパワーPm=7.91mWを中心に、±12%の範囲を3%の刻み幅にて変えつつ記録を行う。そして、記録した領域を再生して信号品質を測定する。その測定結果に基づいて、最良性能となるミドルパワーPmを求める。この時の性能指標としてはPRSNRを用いるが、アシンメトリ値、PIエラー数、振幅値を用いてもよい。振幅値を用いた場合は再生振幅変化が略一定となり始めるミドルパワーPmを選択する。アシンメトリ値を用いた時はアシンメトリ値ができるだけゼロに近くできるパルス幅を選択する。このステップにより、ミドルパワーPm=7.67mWと求まる。
以上の処理により、PRSNR=32となり、キャッスル型記録ストラテジを用いた場合においても良好な記録条件が高速にかつ安定して得られる。本実施形態では、パルストレインにて調整を実施して確からしさを確保した後に、エッジ位置の情報を移行する手法を用いた方が、そもそも最初の性能が高い状態で調整のスタートが可能となるので、やみくもに調整を行って最初の性能が低い状態から調整して追い込んで行く場合に比べ確実にかつ短時間での調整をすることができるのである。
(比較例)
以下に、本実施形態の比較例として、最初からキャッスル型のストラテジを用いて調整を行った場合について述べる。以下の比較例は、上述の実施形態で例示したHDDVD−R媒体と、情報記録再生装置1とを用いた場合に対応している。キャッスル型ストラテジの波形は、記録データの前縁を基準に、記録開始位置が、0.5T分後ろに位置しているものとする。また、後端パルスの終了位置は、記録されるべきパターンの終了位置(記録データの終了位置)と同じとする。そして、先頭部分幅と後端部分幅とを0.5Tとし、ピークパワー、ミドルパワー、バイアスパワーを組み合わせて最良パワーを見つけるものとする。
各パワーの初期値としては、多くの媒体に対し予め実験により得られたパワーとして、ピークパワー11mW、11mWを中心に±20%の範囲を5%刻みにて変化させる。また、各々のピークパワーに対しミドルパワーは8mWを中心に±20%の範囲を5%刻みで変化させる。
そして、各々のピークパワー、ミドルパワーの組合せに対し、バイアスパワーを3.5mWを中心に±20%の範囲を5%刻みで変化させつつ、1ECCブロック単位で記録を行う。その記録を行った中から、最良のPRSNRとなる領域を記録した時のパワーの組合せを選択する。この時点で最良PRSNRは8程度となる。パワーとしては一意の組合せに決まらず、複数組のパワーが得られるので、同程度の性能でマージンのほぼ中心となるパワーを選択する。パワーとしては、ピークパワーは10.8mW、ミドルパワーは8.4mW、バイアスパワーは3.5mWとなった。
この時点で最短マークと最長マークから得られるアシンメトリ値はゼロから大きくかけ離れている。したがって、2Tマーク、3Tマークおよび4T以上のマークとを分けて、最初に2Tの先頭パルス幅の調整を行う。その後、3Tマーク,4T以上マークの順に先頭パルス幅の調整を行う。
2Tマークに対応するストラテジのパルス幅を調整する。0.5Tから1.2Tまでを略0.1T刻みで変えて記録し、記録した領域を再生した時に最良の性能となるように記録した時のパラメータとして0.9Tが選択される。この時点でPRSNRは12程度となる。
次に3T記録データに対応する記録ストラテジの先頭パルス幅を0.5Tから1.2Tまでを略0.1T刻みで所定のパターン列をテスト記録し、最良のPRSNRとなるパラメータを選択する。この時、PRSNRは12程度となる。4T以上に対しては0.5Tから1.2Tまでを略0.1T刻みで所定のパターン列をテスト記録し、最良のPRSNRとなるパラメータを選択する。0.6Tを選択し、この時、PRSNRは13程度となる。
次に、再度、ピークパワーの調整を実施する。先に行った場合よりも細かい刻み幅2%で±10%の範囲にて記録を行い、再生することで最適ピークパワーを10.4mWとなる。PRSNRとしてはほぼ同程度の13.5程度である。
次に後端パルス幅を調整する。3T,4T以上とカテゴリー分けをし、0.5Tから1.0Tまで0.1T刻みにてパルス幅を変化させて記録を行い、記録した領域を再生したが、PRSNRとして元々の値13.5を上回る結果を得られなかった。これは途中のいずれかのパラメータの選択がよくなかったため、局所最適に陥った結果、残りのパラメータを調整しても性能改善効果が得られなくなってしまったためである。
図17は、異なる記録ストラテジとPRSNRとの対応を示す図である。図17に示されているように、パルストレイン型記録ストラテジにて調整を実施した後、キャッスル型記録ストラテジを行うことで、最もよい性能の確保ができる。
上述の実施形態において、パルストレイン型の記録ストラテジST1におけるベースストラテジの調整(パルス幅の調整)において、パルスの変更位置は前端としたが、後端としてもよい。本実施形態は波長405nm、NA0.65に限定されることなく、あらゆる波長、および開口数NAに適応可能である。
また、上述の実施形態ではPR(12221)というクラスを使用したがPR(1221)など他のクラスでも同様に使用することができる。また、変調符号としてHDDVDで採用されているETMを用いて説明したが、その他の変調符号でも同様に使用できる。その場合、例えば、nT(nは3以上の自然数)というような最短データ長であってもよいまた、実施形態ではHDDVDを用いたが、ブルーレイディスク(BDディスク)を使用しても良い。
また、性能指標としてはPRSNRを用いたが、エラーレート(PRSNRはエラーレートへの換算も可能)や、SAM(Sequence Amplitude Margin)、SAMをベースとした指標であっても基本的にエラーレート指標に置き換え可能な指標、エラーレートと定性的にほぼ等しい意味で使用されている指標として、所定のECCブロック数において発生するエラーバイト数やECCのインナー側のパリティによってエラーがあることが検出された行のトータル数であるPIエラー数を用いてもよい。PRML検出を用いない系ではジッタを用いてもよい。