ここで、図19は、記録データの例(a)、及び、その記録データの再生信号波形の例(b)を示している。同図(b)中の実線22は、点線21で示すときよりも記録密度が高いときの再生信号波形を示している。高密度化がより進み、ディスク上に記録される記録マーク長が短くなっていくと、同図(b)に示すように、短い記録マークでは再生信号の振幅が低下し、記録マークが形成されているにも拘わらず、マーク位置測定のための信号スライスレベル23を下回ることがある。再生信号の振幅がスライスレベル23を下回ると、記録マークの前端及び後端の位置を精度よく測定することができなくなるという問題が発生する。
特に、光学回折限界に近い長さの記録マークでは、十分な再生信号の振幅が得られず、符号間干渉の影響が大きくなるために、ジッタやアシンメトリ値の検出精度が低下する。このため、上記特許文献1を含め、従来のジッタを用いる方法やアシンメトリ値を用いる方法では、再生信号を直接用いて記録ストラテジの最適化を行うことが困難となる。
図20は、レーザ波長405nm、開口数NA=0.85の光ヘッドを搭載した光ディスクで、カバー層厚(基板厚)0.1mmの相変化ディスクで記録/再生を行って得られた再生アイパタンの波形例を示している。同図(a)は変調符号における最短マークの記録マーク長が0.166μmとなる記録密度で記録を行った場合の再生アイパタンを示し、同図(b)は最短マークの記録マーク長が0.148μmとなる記録密度で記録を行った場合の再生アイパタンを示し、同図(c)は最短マークの記録マーク長が0.125μmとなる記録密度で記録を行った場合の再生アイパタンを示している。同図(a)から(c)に示すように、最短マークの記録マーク長が短くなるに従って、つまり、記録密度が高くなるに従って、振幅中心の短マーク部分で波形の分離ができなくなることがわかる。
図21は、最短マーク長とジッタの関係を示している。記録密度を高くしていき、変調符号における最短マーク長を短くしていくと、再生信号のジッタが増えていくことがわかる。特に、変調符号における最短マークの再生信号振幅と、最長マークの再生信号振幅との比が10%以下になる、同図中に点線で示すマーク長よりも短いマーク長を最短マーク長とする記録マークの再生信号では、ジッタが15%を超えることがわかる。ジッタが15%を超える状態では、各々の記録マークの分散が大きく、各マークに許容されるウインドウを超える状態になることがわかっている。これは、特に短い記録マークでの再生信号の分離が不十分であるために符号間干渉が引き起こされ、記録密度が低いときに検出できたマークの生成確度をジッタを用いて精度よく検出することができなくなることを示している。同様に、β法では最短マークのアシンメトリ値の検出精度が低下し、記録マークが良好に形成できたか否かの的確な判断ができなくなることを示している。
十分な再生信号の振幅が得られない程度に記録マークを高密度に記録した場合には、PRML技術が有効である。しかし、PRML技術は、PRML検出回路が別途必要になるため回路構成が複雑になる。また、PRML技術では、既知データとPRML検出した記録再生データとを比較してビットエラーレートを算出するため、比較元のデータが既知である必要があり、ジッタやアシンメトリ値を使用する場合とは異なり、汎用的な扱いが難しいという欠点がある。
本発明は、上記問題点を解消し、最短マークの再生信号を直接に使用することができないほど高い記録密度で記録を行う場合であっても、簡易かつ高精度に記録条件を設定することができる記録条件設定方法、それを用いた情報記録装置、及び、プログラムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の視点の記録条件設定方法は、情報記録媒体の記録条件設定方法であって、情報記録に使用される変調符号における最短マークより1記録長単位だけ長い第1テストマークを複数の記録条件で記録し、該記録された第1テストマークを再生して得られた複数の再生信号に基づいて第1の記録条件を選定し、最短マーク長より2記録単位長以上長くかつ最長マーク以下の長さを有するマークから選定される1つ以上の第2テストマークを複数の記録条件で記録し、該記録された第2テストマークを再生して得られた複数の再生信号に基づいて第2の記録条件を選定し、前記第1及び第2の記録条件に基づいて、前記最短マークの記録条件を求めることを特徴とする。
本発明の第1の視点の記録条件設定方法では、複数の記録条件で記録した第1及び第2テストマークのそれぞれについて、テストマークを再生した信号が良好になる記録条件を求め、第1及び第2のテストマークを良好に形成できる記録条件に基づいて、例えば、線形推定補間を利用して最短マークを良好に形成できる記録条件を求める。このため、記録密度が高いために最短マークの再生信号から最短マークを良好に形成できる記録条件を直接的に求めることができない場合についても、簡易に最短マークの記録条件を求めることができる。
本発明の第1の視点の記録条件設定方法は、前記最短マークの再生振幅が最長マークの再生振幅の10%以下である情報記録媒体への記録や、前記最短マークの再生信号を含む再生信号のジッタが15%以上である情報媒体への記録に適用することができる。これらの場合には、最短マークを再生した信号の品質が悪く、再生信号から直接的に記録条件を求めることができないが、再生信号から直接的に記録条件が求まるより長い記録マークを良好に形成できる記録条件に基づいて、最短マークの記録条件を設定することができる。
本発明の第1の視点の記録条件設定方法では、前記複数の記録条件を、記録レーザのレーザパワー、先頭パルス幅、中間パルス幅、後端パルス幅、及び、後端冷却幅の少なくとも1つを可変として得ることが好ましい。これらのパラメータのうち、記録媒体に記録を行う際に影響が大きいパラメータを適切に設定することで、最短マークについても、記録マークを良好に形成することができる。
本発明の第1の視点の記録条件設定方法では、前記第1及び第2の記録条件を、前記再生信号のアシンメトリ又はジッタに基づいて選定することが好ましい。第1及び第2の記録条件は、第1及び第2テストパターンの再生信号に基づいて、従来の方法と同様な方法で選定することができる。
本発明の第2の視点の記録条件設定方法は、情報記録媒体の記録条件設定方法であって、情報記録密度を通常記録時の記録密度よりも低くした複数の記録密度で、少なくとも最短マークを含むテストマークを記録し、前記記録されたテストマークを再生して、前記複数の記録密度のそれぞれにおいて良好な再生信号が得られる記録条件を求め、前記通常記録時の記録密度で記録する少なくとも最短マークの記録条件を、前記複数の記録密度と、前記良好な再生信号が得られた記録条件とに基づいて求めることを特徴とする。
本発明の第2の視点の記録条件設定方法では、通常記録時よりも記録密度を低くした複数の記録密度のそれぞれにおいて、少なくとも変調符号における最短マークを含むテストマークを、記録条件を変化させて情報記録媒体に記録し、テストマークに含まれる各マーク長の記録マークを良好に形成できる記録条件をその再生信号に基づいて求める。複数の記録密度における記録条件の関係に基づいて、少なくとも最短マークの通常記録時の記録条件を、推定により求める。このため、通常記録時には最短マークの再生信号を直接的に使用して記録条件を設定することができない場合についても、記録密度を低くして求めた記録条件を使用することで、最短マークの記録条件を簡易に求めることができる。
本発明の第2の視点の記録条件設定方法では、前記複数の記録密度を、通常の情報記録に使用されるチャネルクロックよりも長い周期のチャネルクロック、及び、通常の情報記録に使用される記録媒体の線速度よりも速い線速度の少なくとも一方を採用して得ることが好ましい。この場合、通常記録時よりも低い、複数の記録密度を簡易に得ることができる。
本発明の第2の視点の記録条件設定方法は、前記通常記録時の記録密度では、前記最短マークの再生振幅は、最長マークの再生振幅の10%以下であり、前記通常記録時の記録密度よりも小さくした複数の記録密度では、前記最短マークの再生振幅は、最長マークの再生振幅の10%以上であることが好ましい。この場合、記録密度を低下させたときの最短マークの再生信号を直接的に使用してその記録密度での最短マークを良好に形成できる記録条件を求め、それらを使用して通常記録時の最短マークを良好に形成できる記録条件を設定することができる。
本発明の第2の視点の記録条件設定方法では、前記最短マークの記録条件を、2次関数の近似によって求めることが好ましい。複数の記録密度における最短マークを良好に形成できる記録条件の関係を2次曲線で近似することで、通常記録時の最短マークを良好に形成できる記録条件を求めることができる。
本発明の記録条件設定方法では、前記最短マーク長が、情報記録媒体に光スポットを形成する集光レンズの開口数NAと、光源波長λと、情報記録媒体の基板厚dと、定数αとによって規定される以下の式:
最短マーク長≧(α/d)×λ/(4×NA)(但し、1.0<α/d<1.2)
を満たすことが好ましい。最短マーク長が光学回折限界近傍に設定されている場合には、最短マークの再生信号の振幅が小さく、再生信号を直接的に使用して最短マークの記録条件を求めることができないが、本発明では、その場合であっても、簡易に最短マークを良好に形成できる記録条件を簡易に求めることができる。
本発明の記録条件設定方法では、前記開口数NAを0.6以上0.7以下、光源波長λを390nm以上410nm以下、記録を行う光ディスクの基板厚を0.6mmとし、最短マーク長の下限を145nmとすることができる。
本発明の記録条件設定方法では、前記開口数NAを0.7以上0.85以下、光源波長λを390nm以上410nm以下、記録を行う光ディスクの基板厚を0.1mmとし、最短マーク長の下限を120nmとすることができる。
本発明の第1の視点の情報記録装置は、情報記録媒体に光学的に情報を記録する情報記録装置であって、情報記録媒体に情報を記録する際の記録条件を設定する記録条件設定手段と、前記記録条件設定手段によって設定された複数の記録条件を採用して、情報記録に使用される変調符号における最短マークより1記録長単位だけ長い第1テストマーク、及び、最短マーク長より2記録単位長以上長くかつ最長マーク以下の長さを有するマークから選定される1つ以上の第2テストマークを、それぞれ情報記録媒体に記録する記録手段と、前記情報記録媒体から前記第1テストマーク及び第2テストマークを再生し再生信号を生成する再生手段と、前記第1テストマークの再生信号に基づいて第1の記録条件を、前記第2テストマークの再生信号に基づいて第2の記録条件をそれぞれ選定する信号処理手段と、前記信号処理手段によって選定された第1の記録条件及び第2の記録条件に基づいて、前記最短マークの記録条件を設定する記録条件設定手段とを備えることを特徴とする。
本発明の第1の視点の情報記録装置では、信号処理手段は、複数の記録条件で記録した第1及び第2テストマークのそれぞれについて、テストマークを再生した信号が良好になる記録条件を選定する。記録条件設定手段は、選定された第1及び第2のテストマークを良好に形成できる記録条件に基づいて、例えば、線形推定補間を利用して最短マークを良好に形成できる記録条件を設定する。このため、情報記録装置は、記録密度が高く、最短マークの再生信号から最短マークを良好に形成できる記録条件を直接的に求めることができない場合についても、最短マークの記録条件を簡易に設定することができる。
本発明の第2の視点の情報記録装置は、情報記録媒体に光学的に情報を記録する情報記録装置であって、情報記録密度を通常記録時の記録密度よりも低くした複数の記録密度で、少なくとも最短マークを含むテストマークを記録する記録手段と、前記記録手段によって記録されたテストマークを再生して再生信号を生成する再生手段と、前記複数の記録密度のそれぞれにおいて、前記再生信号の内から良好な再生信号が得られる記録条件を求める信号処理手段と、前記通常記録時の記録密度で記録する少なくとも最短マークの記録条件を、前記複数の記録密度と、前記良好な再生信号が得られた記録条件とに基づいて設定する記録条件設定手段とを備えることを特徴とする。
本発明の第2の視点の情報記録装置では、信号処理手段は、通常記録時よりも記録密度を低くした複数の記録密度のそれぞれにおいて、少なくとも変調符号における最短マーク含むテストマークを記録条件を変化させて情報記録媒体に記録し、テストマークに含まれる各マーク長の記録マークを良好に形成できる記録条件をその再生信号に基づいて求める。記録条件設定手段は、複数の記録密度における記録条件の関係に基づいて、少なくとも最短マークの通常記録時の記録条件を推定により求める。このため、情報記録装置は、通常記録時には最短マークの再生信号を直接的に使用して記録条件を設定することができない場合についても、記録密度を低くして求めた記録条件を使用することで、最短マークの記録条件を簡易に設定することができる。
本発明の第1の視点のプログラムは、情報記録再生媒体に情報を記録するための記録条件を設定するためのプログラムであって、前記情報記録媒体又は情報記録再生装置にあらかじめ設定された初期記録条件に基づいて、複数のテスト記録条件を設定するステップと、前記設定された各テスト記録条件のもとで、情報記録に使用される変調符号における最短マークよりも1記録長単位だけ長い記録マーク(第1テストマーク)と、前記最短マークよりも2記録単位長以上長くかつ最長マーク以下の長さを有するマークから選定される1つ以上の記録マーク(第2テストマーク)とを含むデータを用いて信号を記録するステップと、前記記録された信号を再生し、該再生された再生信号のアシンメトリ又はジッタを検出するステップと、前記テスト記録条件のそれぞれについて検出されたアシンメトリ又はジッタの絶対値に基づいて、前記第1テストマーク及び第2テストマークのそれぞれについて1つのテスト記録条件を抽出するステップと、前記第1テストマークについて得られたテスト記録条件と、前記第2テストマークについて得られたテスト記録条件とに基づいて、最短マークの記録条件を決定するステップとを有することを特徴とする。
本発明の第1の視点のプログラムは、情報記録再生媒体を読み書きする装置を制御するコンピュータの制御により、記録密度が高いために最短マークの再生信号から最短マークを良好に形成できる記録条件を直接的に求めることができない場合についても、簡易に最短マークの記録条件を求めることができる。
または、上記に代えて、本発明の第1の視点の別のプログラムは、情報記録再生媒体に情報を記録するための記録条件を設定するためのプログラムであって、前記情報記録媒体又は情報記録再生装置にあらかじめ設定された初期記録条件又は修正された記録条件に基づいて、複数のテスト記録条件を選定する第1ステップと、前記選定されたテスト記録条件のもとで、情報記録に使用される変調符号における最短マークよりも1記録長単位だけ長い記録マーク(第1テストマーク)と、前記最短マークよりも2記録単位長以上長くかつ最長マーク以下の長さを有するマークから選定される1つ以上の記録マーク(第2テストマーク)を含むデータを用いて信号を記録する第2ステップと、前記記録された信号を再生し、該再生された再生信号のアシンメトリ又はジッタを検出する第3ステップと、前記テスト記録条件のそれぞれについて検出されたアシンメトリ又はジッタの絶対値に基づいて各テスト記録条件の良否を判定し、第1テストマーク及び第2テストマークの何れかについて、良と判定されたテスト記録条件がないときには第2ステップに戻って前記テスト記録条件の選定をやり直し、第1テストマーク及び第2テストマークの双方について良と判定されたテスト記録条件があるときには次のステップに移行する第4ステップと、前記第1テストマークについて得られ良と判定されたテスト記録条件と、前記第2テストマークについて得られ良と判定されたテスト記録条件とに基づいて、最短マークの記録条件を決定する第5ステップとを順次に有することを特徴とする。
本発明の第1の視点の別のプログラムでは、第4ステップで、第1テストマーク及び第2テストマークの双方について良と判定されたテスト記録条件があると判断された段階で、第5ステップに進むため、例えば記録条件の2つのパラメータの値をそれぞれ所定の範囲で変動させて記録条件を設定する際には、全ての組合せについて第2ステップを実行しなくてもよいため、全ての組合せで第2ステップを実行する場合に比して、記録条件の設定に要する時間を短縮することができる。
本発明の第2の視点のプログラムは、情報記録再生媒体に情報を記録するための記録条件を設定するためのプログラムであって、情報記録密度を通常記録時の記録密度よりも低い複数の記録密度に設定するステップと、前記複数の記録密度のそれぞれについて、前記情報記録媒体又は情報記録再生装置にあらかじめ設定された初期記録条件に基づいて複数のテスト記録条件を選定するステップと、前記複数の記録密度のそれぞれについて、前記選定された複数のテスト記録条件で、所定の記録単位長を有するマークを含む信号を記録するステップと、前記複数の記録密度のそれぞれについて、前記記録された信号を再生し、該再生された再生信号のアシンメトリ又はジッタを検出するステップと、前記複数の記録密度のそれぞれについて、前記テスト記録条件のそれぞれについて検出されたアシンメトリ又はジッタの絶対値に基づいて、前記所定の記録単位長を有するマークについて1つのテスト記録条件を選定するステップと、前記複数の記録密度と、前記記録密度のそれぞれについて選定されたテスト記録条件とに基づいて、通常記録時の記録密度における、前記所定の記録単位長を有するマークの記録条件を設定するステップとを有することを特徴とする。
本発明の第2の視点のプログラムは、情報記録再生媒体を読み書きする装置を制御するコンピュータの制御により、例えば、情報記録媒体に、所定の記録単位長を有するマークとして、最短マークを記録することで、通常記録時には最短マークの再生信号を直接的に使用して記録条件を設定することができない場合についても、記録密度を低くして求めた最短マークの記録条件を使用して、通常記録時の最短マークの記録条件を簡易に求めることができる。
または、上記に代えて、本発明の第2の視点の別のプログラムは、情報記録再生媒体に情報を記録するための記録条件を設定するためのプログラムであって、情報記録密度を通常記録時の記録密度よりも低い所定数の記録密度の内の1つに設定する第1ステップと、前記情報記録媒体又は情報記録再生装置にあらかじめ設定された初期記録条件又は修正された記録条件に基づいて、複数のテスト記録条件を選定する第2ステップと、前記選定された複数のテスト記録条件で、所定の記録単位長を有するマークを含む信号を記録する第3ステップと、前記記録された信号を再生し、該再生された再生信号のアシンメトリ又はジッタを検出する第4ステップと、前記テスト記録条件のそれぞれについて検出されたアシンメトリ又はジッタの絶対値に基づいて各テスト記録条件の良否を判定し、良と判定されたテスト記録条件がないときには前記第2ステップに戻って前記複数のテスト記録条件の選定をやり直し、良と判定されたテスト記録条件があるときであって、前記所定数の記録密度の全ての選定が終わっていないときには前記第1のステップに戻って別の記録密度を選定し、前記所定数の記録密度の全ての選定が終わっているときには次のステップに移行する第5ステップと、前記複数の記録密度と、前記記録密度のそれぞれについて選定された記録条件とに基づいて、前記通常記録時の記録密度における、前記所定の記録単位長を有するマークの記録条件を設定する第6ステップとを順次に有することを特徴とする。
本発明の第2の視点の別のプログラムでは、第5ステップで、第1テストマーク及び第2テストマークの双方について良と判定されたテスト記録条件があるか否かを判断するため、例えば記録条件の2つのパラメータの値をそれぞれ所定の範囲で変動させて記録条件を設定する際には、全ての組合せについて第3ステップを実行しなくてもよいため、全ての組合せで第2ステップを実行する場合に比して、記録条件の設定に要する時間を短縮することができる。
本発明の第1の視点の記録条件設定方法、それを用いた情報記録装置、及び、プログラムは、第1及び第2のテストマークのそれぞれの再生信号に基づいて、第1及び第2のテストマークが良好に再生(形成)できる記録条件をそれぞれ選定し、選定された第1及び第2テストマークの記録条件に基づいて、最短マークの記録条件を求める。このため、最長マークの再生信号の振幅と、最短マークの生成信号の振幅との比がほぼ10%以下となり、最短マークの再生信号を直接的に用いて記録条件を求めることができない場合についても、最短マークの記録条件を簡易に求めることができる。
また、第2の視点の記録条件設定方法、それを用いた情報記録装置、及び、プログラムは、通常記録時よりも記録密度を低くした複数の記録密度のそれぞれにおいて、少なくとも変調符号における最短マークを含むテストマークに含まれる各マーク長の記録マークを良好に形成できる記録条件をその再生信号に基づいて求め、複数の記録密度における記録条件の関係に基づいて、少なくとも最短マークの通常記録時の記録条件を推定により求める。このため、通常記録時には最短マークの再生信号を直接的に使用して記録条件を設定することができない場合についても、新規な検出機能を付加することなく、最短マークの記録条件を求めることができる。
以下、図面を参照し、本発明の実施形態例に基づいて、本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態例の記録条件調整方法の処理の概略を示している。情報の記録・再生を行う光ディスク装置は、光ディスク(情報記録媒体)に情報を記録するのに先立って、同図に示す手順に従って記録ストラテジの各パラメータを含む記録条件を設定する。
はじめに、記録に用いる記録パワーを含む、記録ストラテジの各パラメータの規定値を、光ディスク装置から、或いは、記録対象の光ディスク自身から読み出す(ステップS11)。これら規定値は、例えば、記録対象の光ディスクに適した記録条件として、メーカによってあらかじめ設定されており、光ディスク装置内の記憶装置に記憶されている。或いは、光ディスクの所定領域に記録されている。ステップS11では、例えば、記録ストラテジのパラメータとして、図17(b)に示す波形と同様な(n−1)Tパルストレインにおける先頭幅Ttopや後端冷却幅Tclなどのパラメータや、記録対象の光ディスクに適した記録パワーが読み出される。
次いで、所定記録パターンを、記録条件を変えながら光ディスクに記録する。記録に用いられる所定記録パターンには、ラン長制限された記録変調後のデータにおける最長マーク(Lmax)の再生信号の振幅と、最短マーク(Lmin)の再生信号の振幅との比がほぼ10%以下になるマークを最短マークとして、少なくとも最短マークよりも1T長い記録マーク(第1テストマーク)と、最短マークよりも2T以上長く、かつ最長マーク以下の記録マーク(第2テストマーク)が含まれる。ステップS12では、例えば、ステップS11で読み出された規定記録パワーや、(n−1)Tパルストレインにおける規定先頭幅Ttopを±0.15Tの範囲で変動させ、1セクタ毎に記録条件を変化させながら、所定記録パターンを、2048バイト/セクタ単位で光ディスクに記録する。
次いで、ステップS12で記録した所定記録パターンを再生し、所定記録パターンから、最短マーク長の再生信号を除いて、記録マーク長ごとにアシンメトリ値を算出する(ステップS13)。アシンメトリ値が算出されると、ジッタ値とアシンメトリ値との相関関係から、記録マークの再生が良好に行える記録パワーと、最短マーク長を除く記録マーク長ごとの記録ストラテジの各パラメータとを決定する(ステップS14)。ステップS14で決定された記録マーク長ごとの記録ストラテジの各パラメータから、最短マーク長における記録ストラテジの各パラメータを計算により求める。具体的には、例えば記録変調後データを(1、7)RLLとしたときは、ステップS14で決定した4Tマーク長の先頭パルス幅4Ttopと、3Tマーク長の先頭パルス幅3Ttopから推定補間を用いて、最短マーク長2Tの先頭パルス幅2Ttopを計算する。推定補間としては、例えば次式を用いることができる。
2Ttop=2×3Ttop−4Ttop
本実施形態例では、所定記録パターンに含まれる最短マーク長よりも1T長い記録マークの記録ストラテジの各パラメータと、最短マーク長よりも2T以上長く、かつ最長マーク以下の記録マークの記録ストラテジの各パラメータとを用いて、最短マーク長の記録ストラテジの各パラメータを設定する。このため、再生信号のジッタが大きく、最短マーク長の再生信号から記録ストラテジの各パラメータを設定できない場合であっても、最短マーク長の記録マークを良好に記録するための記録ストラテジの各パラメータを簡易に設定することができる。
実施例1
一例として、開口数NA0.85、レーザ波長λ405nmの光ヘッドを搭載する光ディスク装置を用いて、実験を行った。実験では、カバー層厚0.1mmの相変化型光ディスクに、線速度が5m/s、(1,7)RLLでの最短マーク2T長を0.13μm(最短ビット長を0.104μm/ビット)に設定して記録を行う際の記録条件を、図1に示す手順に従って設定した。光ディスクに記録マークを形成する際のレーザの駆動波形は、図17(b)に示す(n−1)Tパルストレインを採用した。光ディスク装置では、記録パワーPw、先頭幅Ttop、及び、後端冷却幅Tcl以外の各パラメータを、ステップS11(図1)で光ディスク自身から読み出した規定値に設定した。
図2は、記録条件の変化の組合せ例を示している。ステップS12(図1)では、記録パワーPwを、例えば、ステップS11で読み取った値を中心として、−10〜+10(%)の範囲で5%ステップで変化させる。また、先頭幅Ttop、及び、後端冷却幅Tclを、それぞれ、例えば、ステップS11で読みとった規定値を中心として、−0.15〜+0.15(T)の範囲で、0.05Tステップで変化させる。例えば、ステップS11で読み取った先頭パルス幅Topが1Tであったときには、先頭パルス幅Topを0.85T〜1.15Tの範囲で変化させ、先頭幅Ttopが0.5Tであったときは、先頭パルス幅Topを0.35T〜0.65Tの範囲で変化させる。
実験では、ステップS12において、変化させた先頭幅Ttop、及び、後端冷却幅Tclのそれぞれについて、記録パワーPwを、図2中の網掛け部分で示す範囲(25通り)で変化させた。先頭幅Ttop及び後端冷却幅Tclは、先頭幅Ttopを固定して後端冷却幅Tclを変化させる組み合わせ、或いは、その逆に後端冷却幅Tclを固定して先頭幅Ttopを変化させる組み合わせを適宜山登り的に決定して変化させた。
ステップS12では、光ディスクのPCA(power calibration area)に、2048バイト/セクタ単位で、最短マーク(2T)から最長マーク(8T)までの各マークを、図2に示す組合せで変化させて記録を行った。ステップS12では、まず、各先頭幅Ttop及び後端冷却幅Tclにおける記録パワーを選定した。記録パワーの選定にあたっては、信号振幅が大きく、調整対象として適している8Tマーク及びスペースを使用した。具体的には、従来から用いられている、8Tマーク及びスペースの大きさが理論値に最も近くなるレーザパワーを記録パワーとして選定する手法を採用した。
ステップS13では、次いで、記録した記録マークを再生し、最短マーク(2T)を除く各記録マーク長について、記録条件ごとにアシンメトリ値を計算し、そのアシンメトリ値に基づいて、記録が良好に行える記録ストラテジのパラメータ(Ttop、Tcl)を記録マーク長ごとに求めた。アシンメトリ値は、光ヘッドと光ディスクの種類との組合せで値が変わるため、あらかじめ、光ヘッドの構成に従って記録が良好に行えると判定される範囲を見積もっておくとよい。また、光ディスクごとに奨励値があるときにはその奨励値に基づいて判定してもよい。なお、4Tマークから8Tマークを記録する際の先頭幅Ttop及び後端冷却幅Tclは、それらの記録マークについて共通に同じ値を採用することができる。そこで、本実施例では、4Tマークについて記録が良好に行える記録ストラテジのパラメータを求め、5Tマークから8Tマークについては、4Tマークと同じパラメータを採用した。
ステップS15では、最短マーク2Tよりも1T大きな3Tマークにおける記録ストラテジのパラメータ(3Ttop、3Tcl)と、最短マーク2Tよりも2T大きな4Tとにおける記録ストラテジのパラメータ(4Ttop、4Tcl)の関係から、推定補間によって最短マーク2Tにおける記録ストラテジのパラメータ(2Ttop、2Tcl)を求めた。推定補間には線形補間を用い、3Tマークにおけるパラメータから、3Tマークと4Tマークにおけるパラメータの差分を引いて、
2Ttop=2×(3Ttop)−(4Ttop)
2Tcl=2×(3Tcl)−(4Tcl)
によって求めた。
なお、ステップS12で記録した信号の再生信号に関しては、ラン長制限された記録変調後データのおける、最短記録マーク2Tと最長記録マーク8Tとを再生した際の振幅比が10%以下であるため、各記録マークにおけるジッタは分散が大きく、クロック−データ間のジッタは15%を越えて、再生信号を使用したジッタでの性能測定は不可能であった。
図3及び図4は、上記実施例で求めた記録ストラテジのパラメータとマーク長の関係を示している。図3において、縦軸は先頭幅Ttopを示し、横軸は記録マーク長を示している。また、2Tマーク長の先頭幅Ttopは、3Tマーク長と4Tマーク長(4Tマーク長以上)の双方の先頭幅Ttopの関係から求めている。図4において、縦軸は後端冷却幅Tclを示し、横軸は記録マーク長を示している。また、2Tマーク長の後端冷却幅Tclは、3Tマーク長と4Tマーク長(4Tマーク長以上)の双方の後端冷却幅Tclの関係から求めている。また、図3及び図4では、ステップS14(図1)で決定された記録パワーを中心(◇)として、−10%〜+5%までの記録パワーについての各パラメータがプロットされている。図3及び図4に示すようの、記録パワーが上がるにつれて、各記録マーク長における先頭幅Ttopは短く(小さく)なっていく。
次いで、図1に示す手順に従って決定された記録条件が、適当であるか否かを検証するために、PRML検出により検証を行った。上記のように決定した記録条件で記録を行ったところ、PRML検出でのビットエラーレート(以下、BER)は目標の10-4以下となることが確かめられた。また、参考として、ステップS14で決定された記録パワーを中心として、−10%〜+5%までの記録パワーについての各パラメータ(Ttop、Tcl)を求め、ビットエラーレートを検証したところ、それらの記録条件で記録を行った場合についても、BERは10-4以下となった。つまり、−10%〜+5%までの記録パワーは、中心の記録パワーに対してのマージンを示している。
以上実施例で示したように、3Tマークと、4Tマーク以上の記録ストラテジから2Tマークの記録ストラテジのパラメータを設定することで、再生信号を用いてジッタやアシンメトリ値を求めることができない記録密度で2Tマークが形成される場合についても、2Tマークの形成に使用する記録ストラテジのパラメータを簡易かつ高精度に設定できることが確認された。
図5は、本発明の第2実施形態例の記録条件設定方法の手順の概略を示している。本実施形態例では、線速度やチャネルクロック周期を変更することで、最短マークについても再生信号を用いてジッタやアシンメトリ値が算出できる程度に記録密度を低くし、その記録密度で記録ストラテジの各パラメータを求め、そのパラメータに基づいて記録密度を高く設定した際の記録ストラテジの各パラメータを決定する。
図5に示すように、はじめに、図1に示すステップS11と同様に、記録パワー及び記録ストラテジの各パラメータを読み出し、規定値として設定する(ステップS21)。光ディスク装置又は光ディスクに、複数の記録条件(記録密度)に応じた記録パワーや記録ストラテジの各パラメータが記憶(記録)されているときには、記録条件に対応して、記録パワーや記録ストラテジの各パラメータが読み出される。
次いで、変調規則における各記録マーク長が含まれる所定記録パターンを、記録パワーや記録ストラテジの各パラメータを変更しつつ、記録条件を緩和し記録密度を変化させて光ディスクに記録する(ステップS22)。このとき、本来であれば、光ディスク上に形成される記録マークを再生したときに、最長マーク長の再生信号の振幅と、最短マーク長の再生信号の振幅との比が10%以下になる記録密度を、記録条件を緩和することで振幅比が10%より大きくなる記録密度に設定する。ステップS2では、本来の記録密度における最短マーク長をLminとすると、例えば、最短マーク(テストマーク)長がLp2、Lp1、Lp0(Lp2>Lp1>Lp0>Lmin)となる各記録密度について、記録パワーや記録ストラテジの各パラメータを変化させて記録する。
ステップS22で記録したデータを再生し、再生信号に基づいてジッタ値、或いは、β値を算出する(ステップS23)。本来の記録密度であれば、最長マークと最短マークとの再生振幅比は10%以下であるため、再生信号から最短マークのジッタ値やβ値を算出することはできないが、記録密度を低下させて記録しているため、再生信号を直接使用して、ジッタ値やβ値の算出が可能となる。ステップS23で算出したジッタ値或いはβ値に基づいて、各記録マーク長における記録信号が良好に再生できる記録パワーや記録ストラテジの各パラメータを、記録密度ごとに求める(ステップS24)。
本来の記録密度よりも低い記録密度で求めた記録ストラテジの各パラメータに基づいて、本来の記録密度で記録を行う際の記録ストラテジの各パラメータを決定する(ステップS25)。例えば、最短マーク長がLp2、Lp1、Lp0(Lp2>Lp1>Lp0>Lmin)となるような3つの記録密度で記録を行った場合には、各記録マーク長における3つの記録ストラテジのパラメータを基に推定補間を行い、最短マーク長がLminとなる本来の記録密度での各記録マーク長におけるパラメータ値を決定する。例えば、推定補間として、最短記録マーク長、及び、最短記録マーク長よりも1チャネルクロック周期長い記録マーク長では2次程度の近似を使用することができ、それらよりも長い記録マーク長では1次近似を使用することができる。
本実施形態例では、記録密度を低下させて再生信号のジッタ値やβ値を算出し、それらに基づいて求められた記録ストラテジのパラメータから、推定補間により本来の高い記録密度における記録ストラテジのパラメータが決定される。記録密度が低い状態でのパラメータの設定は、従来と同様の方法で行うことができ、新たな装置を必要としない。このため、再生信号を直接用いてジッタ値やβ値が算出できない高密度記録を行う場合についても、良好な記録が行える記録ストラテジのパラメータを、簡易に決定することができる。
実施例2
一例として、開口数NA0.65、レーザ波長λ405nmの光ヘッドを搭載する光ディスク装置を用いて、実験を行った。実験では、カバー層厚0.6mmの相変化型光ディスクに、(1,7)RLLでの最短マーク2T長(Lmin)を0.125μmに設定して記録を行う際の記録条件を図5に示す手順に従って設定した。なお、最短マーク2T長を0.125μmに設定したときの最長マークの再生信号の振幅と、最短マークの再生信号の振幅との比は10%以下となり、最短マークの再生信号を含む再生信号のジッタは15%を超え、再生信号を直接使用して記録ストラテジのパラメータ等を決定することは不可能であった。
実験では、光ディスクに記録マークを形成する際のレーザの駆動波形は、図17(b)に示す(n−1)Tパルストレインを採用した。光ディスク装置では、記録パワーPw、先頭幅Ttop、及び、後端冷却幅Tcl以外の各パラメータを、ステップS21(図5)で光ディスク装置から読み出した、或いは、光ディスク自身から読み出した規定値に設定した。
ステップS22では、光ディスクのPCA(power calibration area)に、2048バイト/セクタ単位で、最短マーク(2T)から最長マーク(8T)までの各マークで構成される所定記録パターンを、図2に示す組合せと同様な組合せで変化させつつ、記録密度を変化させて記録した。このとき、記録密度は、線速度を一定として、チャネルクロックを低速化することで変化させた。具体的には、最短マーク長がLmin=0.125であった記録密度から、Lp2=0.17μm、Lp1=0.16μm、Lp0=0.15μmとなる記録密度に低下させた。このとき、最短マーク長がLp0以上となる記録密度では、最長マーク長の再生信号の振幅と、最短マーク長の再生信号の振幅との比が10%を超え、再生信号のジッタ値は15%未満となった。
ステップS24では、まず、実施例1におけるステップS14と同様な手順で、記録パワーを選定した。次いで、記録した記録マークを再生し、記録条件ごとにアシンメトリ値を計算し、そのアシンメトリ値に基づいて、記録が良好に行える記録ストラテジのパラメータ(Ttop、Tcl)を、各記録密度について、記録マーク長ごとに求めた。
図6は、上記実施例で求めた記録ストラテジのパラメータと記録密度(最短マーク長)の関係を示している。ステップS25では、各記録密度における最短マーク2Tにおける記録ストラテジのパラメータ(グラフ(a)の●)の関係から、2次近似により、本来の記録密度(最短マーク長Lmin)における記録ストラテジのパラメータ(グラフ(a)の○)を決定した。同様に、各記録密度における3Tマークにおける記録ストラテジのパラメータ(グラフ(b)の●)の関係から、2次近似により、本来の記録密度(最短マーク長Lmin)における記録ストラテジのパラメータ(グラフ(b)の○)を決定し、各記録密度における4Tマークにおける記録ストラテジのパラメータ(グラフ(c)の●)の関係から、1次近似により、本来の記録密度(最短マーク長Lmin)における記録ストラテジのパラメータ(グラフ(b)の○)を決定した。
次いで、図5に示す手順に従って決定された記録条件が適当であるか否かを検証するために、PRML検出により検証を行った。上記のように決定した記録条件で記録を行ったところ、PRML検出でのビットエラーレート(以下、BER)は目標の10-4以下となることが確かめられた。
以上、実施例で示したように、記録密度が低いときの記録ストラテジの各パラメータを、複数の記録密度について求め、複数の記録密度における各パラメータの関係から、推定補間により記録密度が高いときのパラメータを計算することで、再生信号を用いてジッタやアシンメトリ値が算出できない記録密度についても、記録ストラテジの各パラメータを簡易に設定できることが確かめられた。
図7は、本発明の第3実施形態例の記録条件設定方法の手順の概略を示している。はじめに、図5に示すステップS21と同様に、記録パワー及び記録ストラテジの各パラメータを読み出し、規定値として設定する(ステップS31)。次いで、変調規則における各記録マーク長が含まれる所定記録パターンを、記録パワーや記録ストラテジの各パラメータを変更しつつ、複数の記録密度で光ディスクに記録する(ステップS32)。このとき、複数のうち何れの記録密度についても、最長マークの再生信号振幅と、最短マークの再生信号振幅との比が10%以上となるようにする。ステップS32では、例えば最短マーク長がLp2、Lp1、Lp0(Lp2>Lp1>Lp0)となる各記録密度で、所定記録パターンを2040バイト/セクタ単位で記録する。
ステップS32で記録したデータを再生し、それに基づいて再生信号の性能を測定する(ステップS33)。性能の測定では、例えば、PRML検出を用いたビットエラーレートを使用することができる。測定された性能に基づいて、所定の性能指標を満たす各記録マーク長の記録条件の範囲を導出する(ステップS34)。
図8は、先頭幅Ttopを変化させた際にエラービットレートが10-4以下となる範囲を、記録マーク長ごとに示している。ステップS34では、記録マーク長ごとに、各記録密度における所定の性能を満たすか否かの境界から、例えば、同図中に斜線で示すビットエラーレートBERが10-4以下となる範囲を求める。
ステップS34で求めた範囲を使用して、最大マーク長の再生信号の振幅と、最短マーク長の再生信号の振幅との比が10%以下、つまり、再生信号から直接性能を求めることができない記録密度での、記録条件を決定する。例えば、図8に示す範囲から、記録密度を高めたときの最短マーク2Tにおける先頭幅2Ttopを決定する際には、Lp2、Lp1、及び、Lp0のそれぞれにおける所定の性能を満たす範囲の境界となるパラメータ値を用い、近似にて複数の関係式を求め、求めた関係式を用いて2Ttopの記録パラメータを決定すればよい。
本実施形態例では、所定の性能を満たす範囲の境界に基づいて複数の関係式で近似するため、記録密度が高く、再生信号のジッタが15%を超えるような場合であっても、記録条件の設定にあたって、複数の関係式で規定されるパラメータを、所定の性能を満たす範囲内から選択することができる。なお、複数の関係式は、所定の性能を満たす範囲の境界だけでなく、範囲内の値を複数用いる構成とすることもできる。
図9は、上記本発明の記録条件設定方法を採用する光ディスク装置の構成を示している。光ディスク装置10は、レーザ(LD)を有する光ヘッド2、LDドライバ3、判定回路4、ストラテジ選定回路5、及び、ストラテジ設定回路6を備える。光ヘッド2は、光ディスク1にレーザ光を照射し、光ディスクを読み書きする。LDドライバ3は、ストラテジ設定回路6が設定した記録ストラテジで、光ヘッド2内のレーザを駆動する。判定回路4は、光ディスク1の記録に用いる記録条件が良好であるか否かを判定する。ストラテジ選定回路5は、判定回路4の判定結果に基づいて、光ディスク1の記録に使用する記録ストラテジをストラテジ設定回路6に指示する。
光ディスク装置10では、データを記録する際には、図示しないフォーマットコントローラからの信号が、図示しないデータ変調回路に供給され、データが変調される。ストラテジ設定回路6は、記録再生が良好となるように設定されたストラテジによってLDトライバ3を介して光ヘッド2内のレーザを駆動し、変調されたデータが光ディスク1に記録される。記録ストラテジを設定する際には、光ディスク1からの再生信号が、図示しない再生アンプを通して判定回路4に供給され、判定回路4では記録が良好に行えるか否かが判定される。判定回路4の判定結果に基づいて、ストラテジ選定回路5は、ストラテジの選定動作を実行する。
図10は、ストラテジ選定回路5の詳細な構成を示している。ストラテジ選定回路5は、記録条件導出回路51と、制御変数設定/記憶回路52と、高密度記録条件設定回路53と、記録条件設定回路54とを備える。記憶条件導出回路51は、上記実施形態例で示した手順に従って、記録条件を設定する。制御変数設定/記憶回路52は、判定回路4の判定に基づいて、記録を良好に行えるストラテジ制御変数の選択や、その記憶、設定を行う。高密度記録条件設定回路53は、記録密度が高く、再生信号を直接使用して記録ストラテジの各パラメータが設定できない記録マークの記録ストラテジを、推定補間を用いて設定する。記録条件設定回路54は、再生信号を使用して記録ストラテジの各パラメータが設定できる記録マークの記録ストラテジを設定する。
なお、上記実施形態例で光ディスクに記録する所定記録パターンは、全ての構成マークを含んでいる必要はなく、最短記録マークよりも2T以上長い記録マークについては、そのうちの何れかの記録マークを1以上含んでいればよい。また、記録パワー及び記録ストラテジの各パラメータの変化の組合せは、図2以外の組合せであってもよく、組合せや変化の範囲は任意に設定することができる。
以下、記録条件の設定を、光ディスク装置に搭載されたマイクロコンピュータ等により実行する実施形態について説明する。なお、ここでは、記録ストラテジの各パラメータのうち、先頭幅Ttopを選定する例について説明する。また、4Tマーク以上のマーク(≧4Tマーク)の記録ストラテジの各パラメータとしては、4Tマークのパラメータと同じ値が用いることができるため、≧4Tマークの各パラメータを4Tマークの各パラメータとして説明する。
図11は、図1に示すフローチャートに示された手順と同様な手順によって記録条件を選定するプログラムの処理手順をフローチャートで示している。光ディスク装置では、図9の判定回路4、ストラテジ選定回路5、及び、ストラテジ設定回路6に相当する機能を実現するコントローラの制御により、先頭幅Ttopが設定される。コントローラは、レーザ等を搭載する光ヘッドを、光ディスクのPCA領域に移動させ、光ディスク装置から、或いは、光ディスクから記録条件の規定値を読み出す(ステップS41)。コントローラは、読み出した規定値に基づいて、少なくとも3Tマーク及び4Tマークを含む所定記録パターンを複数の記録条件で記録する際に用いる記録条件テーブルを作成する(ステップS42)。
図12(a)及び(b)は、それぞれステップS42で作成される記録条件テーブルの例を示している。なお、同図において、相対パワーの初期値「×1」は、ステップS41で読み込んだ規定値×1の記録パワーを意味する。また、テーブルにおいて、相対パワー以外の項目の値の単位はチャネルクロックTであり、表中の「−」は、その欄の1つ上の欄と同じ値を使用することを意味する。ステップS42では、例えば、ステップS41で読み込んだ規定値を初期値とし、選定対象のパラメータについて、所定の範囲で値を変動させた記録条件テーブルが作成される。
ステップS42では、例えば図12(a)に示すような、3Tマークの先頭幅3Ttopが、初期値(0.5T)から±0.1Tの範囲、つまり、0.4T〜0.6Tの範囲内で0.05T刻みで変動し、他のパラメータとして、初期値と同じ値が使用される、条件11〜15までの5通りの記録条件を有する記録条件テーブルが作成される。また、同図(b)に示すような、4Tマーク(4Tマーク以上)の先頭幅4Ttopが、初期値(0.6T)から±0.1Tの範囲、つまり、0.5T〜0.7Tの範囲内で0.05T刻みで変動し、他のパラメータとして、初期値と同じ値が使用される、条件21〜25までの5通りの記録条件を有する記録条件テーブルが作成される。
図11に戻り、コントローラは、ステップS42で作成した記録条件テーブルを参照し、記録条件を変えながら、光ディスクに所定記録パターンを記録する(ステップS43)。ステップS42で、図12(a)及び(b)に示す記録条件テーブルが作成されているとき、ステップS43では、同図(a)のテーブル中の条件11〜15のそれぞれと、同図(b)のテーブル中の条件21〜25それぞれとを組み合わせた、25(5×5)通りの記録条件で、所定記録パターンが記録される。ステップS43では、例えば、まず、条件11と、条件21〜25のそれぞれとを組み合わせた5通りの記録条件で所定記録パターンが記録され、次いで、条件12〜15について、順次に、条件21〜25を組み合わせた各々5通りの記録条件で所定記録パターンが記録される。
コントローラは、光ディスクに記録された所定記録パターンを再生し(ステップS44)、所定記録パターンに含まれる最短マーク以外のマークを再生した際のβ値又はジッタσを計測する(ステップS45)。コントローラは、最短マーク以外のマークについて、計測したβ値又はジッタσの絶対値に基づいて、所定記録パターンの再生が最も良好に行える記録条件を、選定された記録条件として選択する(ステップS46)。ステップS46では、3Tマーク及び4Tマーク以上の記録マークを記録する際の各パラメータが、例えば図12(a)及び(b)に示す記録条件テーブルの中から選択される。
続いて、最短マークを記録する際のパラメータを、ステップS46で求められた、最短マークよりも大きな記録マークを記録する際のパラメータに基づいて導出する(ステップS47)。ステップS47では、第1実施形態例で説明したのと同様に、最短マークの先頭幅2Ttopが、3Tマークの先頭幅3Ttopと、4Tマークの先頭幅4Ttopとに基づいて導出される。コントローラは、ステップS46で選択された記録条件と、ステップS47で導出された最短マークを記録する際のパラメータとを、データの記録に用いる記録条件に設定し、光ディスクのあらかじめ定められた領域に設定した記録条件を記録する(ステップS48)。このような手順で動作するプログラムを用いることにより、第1実施形態例と同様に、光ディスク装置では、最短マークを記録する際の各パラメータを含む記録条件を、簡易に選定することができる。
なお、上記実施形態例では、記録パワーを固定して、所定記録パターンを記録したが、ステップS42において、相対パワー(図12)が異なる複数の記録条件テーブルを作成して、複数の記録パワーで所定記録パターンを記録してもよい。このとき、記録ストラテジのパラメータについて、記録パワーごとに所定記録パターンの再生が最も良好に行えるパラメータを求めると、図3に示すのと同様に、所定記録パターンの再生が最も良好に行えるパラメータが、ある範囲の領域を持つようになる。この場合には、ステップS47において、領域の中心値を最短マークよりも大きな記録マークを記録する際のパラメータとして採用し、それに基づいて最短マークを記録する際のパラメータを導出するとよい。
図13は、図11に示す処理手順を有するプログラムの一部を変更したプログラムの処理手順をフローチャートで示している。この例では、コントローラは、記録条件テーブルの一部の組合せで所定記録パターンを光ディスクに記録し、記録した所定記録パターンを読み取って、β値又はジッタσが計測される。この例では、計測したβ値又はジッタσが、所定の性能を満たさないときには、記録条件を、既に使用した組合せとは異なる記録条件の組合せに変更し、計測したβ値又はジッタσが所定の性能を満たすまで、或いは、記録条件テーブルの全ての組合せで所定記録パターンを記録するまで、所定記録パターンを、記録条件を変えつつ光ディスクに記録し、最短マークのパラメータを導出する手法が採用される。
コントローラは、図11に示す手順と同様に、ステップS41で、記録条件の規定値を読み出し、ステップS42で、記録条件テーブルを作成する。コントローラは、ステップS43において、ステップS42で作成した記録条件テーブルの記録条件の組合せの一部のみを用いて、所定記録パターンを光ディスクに記録する。例えば、ステップS42で作成された記録条件テーブルが図12に示すのもであったとき、コントローラは、計25通りの組合せのうち、条件11〜13(同図(a))の3通り記録条件と、条件21〜23(同図(b))の3通りの記録条件とを組み合わせた、計9通りの組合せの記録条件を用いて、所定記録パターンを光ディスクに記録する。
コントローラは、ステップS44で、記録した所定記録パターンを再生し、ステップS45で、再生信号のβ値又はジッタσを計測する。コントローラは、計測されたβ値又はジッタσのうち、所定記録パターンの再生が最も良好に行える記録条件でのβ値(β0)又はジッタ(σ0)が、所定の性能を満たしているか否かを判断する(ステップS51)。つまり、コントローラは、ステップS43で記録に用いられた記録条件のうち、所定記録パターンの再生が最も良好に行える記録条件を用いて記録を行った際の再生信号の性能が、所定の性能を満たすか否かを判断する。コントローラは、β0値又はσ0が所定の性能を満たすときには、ステップS47に進み、最短記録マークを記録する際のパラメータを導出して、ステップS48で、記録条件を設定する。
コントローラは、ステップS51で、β0又はσ0が所定の性能を満たしていないと判断したときには、そのβ0又はσ0の値、及び、β0又はσ0に対応する記録条件を一時記憶装置に記憶し、次のループのステップS43で所定記録パターンを記録する際に用いる記録条件を、ステップS42で作成された記録条件テーブルの組合せのうち、まだ使用されていない組合せに設定して(ステップS52)、ステップS43へ戻り、ステップS43からステップS51を繰り返し実行する。ステップS52では、次のループのステップS43で所定記録パターンを記録する際に用いる記録条件を、例えば条件11〜15(図12(a))と、条件24、25(図12(b))とを組み合わせた10通りの組合せに設定する。
コントローラは、ステップS43で、ステップS52で設定された複数の記録条件を用いて、再び所定記録パターンを記録し、その再生信号のβ値又はジッタσを計測する。コントローラは、ステップS51において、今回のループでのβ0又はσ0が、所定の性能を満たしているか否かを判断する。コントローラは、今回のループでのβ0又はσ0が所定の性能を満たすと判断すると、ステップS47へ進み、最短マークを記録する際のパラメータを導出する。
コントローラは、ステップS51で、今回のループのβ0又はσ0が所定の性能を満たしていないと判断すると、前回のループでのβ0又はσ0と、今回のループでのβ0又はσ0とを比較し、所定記録パターンの再生が良好に行える方のβ0又はσ0を記憶して、再びステップ52へ進み、次のループのステップS43で所定記録パターンを記録する際に用いられる記録条件を、まだ使用されていない組合せに設定する。コントローラは、ステップS51でβ0又はσ0が所定の性能を満たすと判断するまで、或いは、ステップS52で設定すべき記録条件の組合せがなくなるまで、つまりは、記録条件テーブルの全ての組合せで所定記録パターンを記録するまで、ステップS43からステップS51を繰り返し実行する。
図13の例では、所定記録パターンを、記録条件テーブルの全ての組合せを用いて記録する前に、所定の性能を満たす記録条件を見つけることができるため、図11に示す例に比して、記録条件の設定に要する時間を短縮できる。また、記録条件を設定するために光ディスク上に記録する所定記録パターン数を減らすことができるため、記録媒体上の所定記録パターンを記録するエリアをあまり大きくする必要がない。
また、この図13の例において、ステップS42で、図12(a)及び(b)に示す記録条件テーブルと、同図(a)及び(b)とは相対パワーのみが異なる記録条件テーブルとが作成されているときには、第1回目のループのステップS43で、同図(a)及び(b)に示す記録条件テーブルの組合せ(25通り)の記録条件で所定記録パターンの記録を行い、2回目のループのステップS43で、同図(a)及び(b)とは相対パワーのみが異なる記録条件テーブルの組合せ(25通り)の記録条件で所定記録パターンの記録を行うこともできる。この場合には、先頭幅Ttopの選定と、記録パワーの選定とを同時に行うことができる。
図14は、図5に示すフローチャートに示された手順と同様な手順によって記録条件を選定するプログラムの処理手順をフローチャートで示している。コントローラは、光ヘッドを、光ディスクのPCA領域に移動させ、光ディスク装置から、或いは、光ディスクから記録条件の規定値を読み出す(ステップS61)。光ディスク装置又は光ディスクに、複数の記録密度に対応した記録条件が記憶されているとき、ステップS61では、記録密度ごとに、記録条件の規定値が読み出す構成を採用することができる。
コントローラは、光ディスクに、少なくとも2Tマーク、3Tマーク、及び4Tマークを含む所定記録パターンを記録する際に用いられる複数の記録密度を設定する(ステップS62)。ここで設定される記録密度は、本来の記録密度よりも密度が低く、その何れの記録密度についても、2Tマークの再生信号からβ値又はジッタσが良好に計測できる記録密度である。ステップS62では、例えば、本来記録に用いられる記録密度での2Tマーク長をLminとして、2Tマーク長がLp2、Lp1、Lp0(Lp2>Lp1>Lp0>Lmin)となる記録密度が設定される。
コントローラは、読み出した規定値に基づいて、光ディスクに、複数の記録条件で所定記録パターンを記録する際に用いる記録条件テーブルを作成する(ステップS63)。図15(a)、(b)、及び、(c)は、それぞれステップS63で作成される記録条件テーブルの例を示している。ステップS63では、例えば、ステップS62で設定された複数の記録密度のそれぞれに対応して、ステップS61で読み込んだ規定値を初期値とし、選定対象のパラメータについて、所定の範囲で値を変動させた記録条件テーブルが作成される。
ステップS63では、複数の記録密度のそれぞれについて、例えば図15(a)に示すような、2Tマークの先頭幅2Ttopが、初期値(0.5T)から±0.1Tの範囲、つまり、0.4T〜0.6Tの範囲内で0.05T刻みで変動し、他のパラメータとして、初期値と同じ値が使用される、条件31〜35までの5通りの記録条件を有する記録条件テーブルが作成される。また、同図(b)に示すような、3Tマークの先頭幅3Ttopが、初期値(0.5T)から±0.1Tの範囲内で0.05T刻みで変動し、他のパラメータとして、初期値と同じ値が使用される、条件41〜45までの5通りの記録条件を有する記録条件テーブルが作成され、同図(c)に示すような、4Tマーク(4Tマーク以上)の先頭幅4Ttopが、初期値(0.6T)から±0.1Tの範囲内で0.05T刻みで変動し、他のパラメータとして、初期値と同じ値が使用される、条件51〜55までの5通りの記録条件を有する記録条件テーブルが作成される。
コントローラは、ステップS63で作成した記録条件テーブルを参照し、ステップS62で設定した複数の記録密度のそれぞれについて、記録条件を変えながら、光ディスクに所定記録パターンを記録する(ステップS64)。ステップS63で、図15(a)、(b)、及び、(c)に示す記録条件テーブルが作成されているときには、ステップS64では、各記録密度につき、同図(a)のテーブル中の条件31〜35のそれぞれと、同図(b)のテーブル中の条件41〜45のそれぞれと、同図(b)のテーブル中の条件51〜55のそれぞれとを組み合わせた5×5×5=125通りの記録条件で、所定記録パターンが記録される。
ステップS64では、例えばステップS62において、2Tマーク長がLp2、Lp1、Lp0となる3つの記録密度が設定されているとき、まず、2Tマーク長がLp2となる記録密度について、所定記録パターンが、上記した125通りの記録条件で記録される。次いで、2Tマーク長がLp1となる記録密度について、所定記録パターンが、上記した125通りの記録条件で記録され、2Tマーク長がLp0となる記録密度について、所定記録パターンが、上記した125通りの記録条件で記録される。この場合には、光ディスクには、125×3通りの所定記録パターンが記録されることになる。
コントローラは、光ディスクに記録された所定記録パターンを再生し(ステップS65)、各記録密度ごとに、再生した所定記録パターンのβ値又はジッタσを計測する(ステップS66)。コントローラは、計測したβ値又はジッタσに基づいて、記録密度ごとに、所定記録パターンの再生が最も良好に行える記録条件を、選定された記録条件として選択する(ステップS67)。ステップS67では、例えば2Tマーク長がLp2となる記録密度における2Tマークの先頭幅2Ttop(2)、3Tマークの先頭幅3top(2)、及び、4Tマークの先頭幅4Ttop(2)が選定され、2Tマーク長がLp1となる記録密度における2Tマークの先頭幅2Ttop(1)、3Tマークの先頭幅3top(1、及び、4Tマークの先頭幅4Ttop(1)が選定され、2Tマーク長がLp0となる記録密度における2Tマークの先頭幅2Ttop(0)、3Tマークの先頭幅3top(0)、及び、4Tマークの先頭幅4Ttop(0)が選定される。
続いて、ステップS64で所定記録パターンの記録に用いられた記録密度よりも密度が高い本来の記録密度における各パラメータを、ステップS66で求められた、本来の記録密度よりも密度が低い、複数の記録密度におけるパラメータに基づいて導出する(ステップS68)。ステップS68では、第2実施形態例で説明したのと同様に、本来の記録密度における4Tマークの先頭幅4Ttopが、ステップS67で求められた4Ttop(2)、4Ttop(1)、及び、4Ttop(0)から、推定補間により導出される。同様に、3Ttop(2)、3Ttop(1)、及び、3Ttop(0)から、本来の記録密度における3Tマークの先頭幅3Ttopが導出され、2Ttop(2)、2Ttop(1)、及び、2Ttop(0)から、本来の記録密度における2Tマークの先頭幅2Ttopが導出される。
コントローラは、ステップS68で導出された記録条件を、データの記録に用いる記録条件として設定し、設定した記録条件を、光ディスクのあらかじめ定められた領域に記録する(ステップS69)。このような手順で動作するプログラムを用いることにより、第2実施形態例と同様に、光ディスク装置では、密度が高い本来の記録密度における最短マークを記録する際の各パラメータを含む記録条件を、簡易に選定することができる。また、この例においても、図11の例と同様に、相対パワー(図12)が異なる複数の記録条件テーブルを作成して、複数の記録パワーで所定記録パターンを記録してもよい。この場合には、記録ストラテジのパラメータについて、記録パワーごとに所定記録パターンの再生が最も良好に行えるものを求めると、図8に示すものと同様に、所定記録パターンの再生が最も良好に行えるパラメータが、ある範囲の領域を持つようになる。この場合には、ステップS68において、領域の中心値を代表値として採用し、本来の記録密度でのパラメータを導出するとよい。
図16は、図14に示す処理手順を有するプログラムの一部を変更したプログラムの処理手順例をフローチャートで示している。この例では、図13の例と同様に、コントローラは、記録条件テーブルの一部の組合せで所定記録パターンを光ディスクに記録し、記録した所定記録パターンを読み取って、β値又はジッタσが計測される。この例では、計測したβ値又はジッタσが、所定の性能を満たさないときには、記録条件を、既に使用した組合せとは異なる記録条件の組合せに変更し、計測したβ値又はジッタσが所定の性能を満たすまで、或いは、記録条件テーブルの全ての組合せで所定記録パターンを記録するまで、所定記録パターンを、記録条件を変えつつ光ディスクに記録し、本来の記録密度でのパラメータを導出する手法が採用される。
コントローラは、図14に示す手順と同様に、ステップS61で、記録条件の規定値を読み出し、ステップS62で複数の記録密度を設定し、ステップS63で、記録条件テーブルを作成する。コントローラは、ステップS64で、ステップS62で設定された複数のうちの一つの記録密度で、所定記録パターンを光ディスクに記録する。その際、コントローラは、ステップS63で作成した記録条件テーブルの記録条件の組合せの一部のみを用いる。例えば、ステップS63で作成された記録条件テーブルが図15に示すのもであったとき、コントローラは、条件31〜13(同図(a))の3通り記録条件と、条件41〜43(同図(b))の3通りの記録条件と、条件51〜53(同図(c))の3通りの記録条件とを組み合わせた、計27通りの組合せの記録条件で、所定記録パターンを光ディスクに記録する。
コントローラは、ステップS65で、記録した所定記録パターンを再生し、ステップS66で、再生信号のβ値又はジッタσを計測する。コントローラは、計測されたβ値又はジッタσのうち、所定記録パターンの再生が最も良好に行える記録条件でのβ値(β0)又はジッタσ(σ0)が、所定の性能を満たしているか否かを判断する(ステップS71)。つまり、コントローラは、ステップS64で記録に用いられた記録条件のうち、所定記録パターンの再生が最も良好に行える記録条件を用いて記録を行った際の再生信号の性能が、所定の性能を満たすか否かを判断する。コントローラは、β0値又はσ0が所定の性能を満たさないと判断したときには、図13のステップS52と同様に、β0又はσ0の値、及び、β0又はσ0に対応する記録条件を一時記憶装置に記憶し、次のループのステップS64で所定記録パターンを記録する際に用いる記録条件を、ステップS63で作成された記録条件テーブルの組合せのうち、まだ使用されていない組合せに設定して(ステップS72)、ステップS64へ戻り、ステップS64からステップS71を繰り返し実行する。
ステップS72では、次のループのステップS64で所定記録パターンを記録する際に用いる記録条件を、例えば条件31〜35(図15(a))と、条件44、45(同図(b))と、条件54、55(同図(c))とを組み合わせた20通りの組合せに設定する。コントローラは、ステップS64で、ステップS72で設定された複数の記録条件を用いて、再び所定記録パターンを記録し、その再生信号のβ値又はジッタσ値を再び計測する。コントローラは、ステップS71において、今回のループでのβ0又はσ0が、所定の性能を満たしているか否かを判断する。
コントローラは、β0又はσ0が所定の性能を満たすと判断すると、ステップS62で設定した複数の記録密度のうち、まだ所定記録パターンが記録されていない記録密度が残っているか否かを判断する(ステップS73)。コントローラは、まだ所定記録パターンの記録に用いられていない記録密度があると判断すると、記録密度を、ステップS62で設定された複数の記録密度のうち、まだ所定記録パターンの記録に用いられていない記録密度に変更し(ステップS74)、ステップS63に戻り、ステップS63〜ステップS66及びステップS71、S72が繰り返し実行される。
ステップS73で、所定記録パターンの記録に用いられていない記録密度が残っていないと判断されると、ステップS68へ進み、本来の記録密度でのパラメータが導出される。このようにして、コントローラは、ステップS62で設定した複数の記録密度の全てで、β0又はσ0が所定の性能を満たす記録条件が得られるまで、記録条件及び記録密度を変更しつつ、ステップS63〜ステップS71までを繰り返し行う。この例では、図13の例と同様に、所定記録パターンを、記録条件テーブルの全ての組合せを用いて記録する前に、所定の性能を満たす記録条件を見つけることができるため、図14に示す例に比して、記録条件の設定に要する時間を短縮できる。また、記録条件を設定するために光ディスク上に記録する所定記録パターン数を減らすことができるため、記録媒体上の所定記録パターンを記録するエリアをあまり大きくする必要がない。
以上の、図11〜図16を参照して説明した実施形態では、先頭幅Ttopを設定する例について説明したが、これに代えて、又は、これに加えて、他のパラメータを設定することもできる。例えば、図11では、選定対象のパラメータが複数であるときには、ステップS42〜ステップS47を、選定するパラメータの数に対応して繰り返し行うとよい。具体的に、図11に示す手順に従って、先頭幅Ttop及び後端冷却幅Tclの双方を設定する例について説明する。この場合には、まず、1回目のループのステップS42で、先頭幅Ttop以外のパラメータについては、ステップS41で読み込んだ規定値を使用し、先頭幅Ttopについては値が変動する記録条件テーブルを作成して、先頭幅Ttopを選定する。次いで、2回目のループのステップS42で、先頭幅Ttopについては、1回目のループで選定された値を使用し、後端冷却幅Tclについては値が変動する記録条件テーブルを作成して、後端冷却幅Tclを選定する。このような手順により、先頭幅Ttop及び後端冷却幅Tclの双方の選定が可能となる。
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明の記録条件設定方法、それを用いた情報記録装置、及び、プログラムは、上記実施形態例にのみ限定されるものでなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。