JP2009263150A - 複合酸化物粉末、その製造方法及び製造装置、並びに排ガス浄化用触媒 - Google Patents

複合酸化物粉末、その製造方法及び製造装置、並びに排ガス浄化用触媒 Download PDF

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Abstract

【課題】優れた耐熱性を有しており、触媒担体として用いた場合に貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能な複合酸化物粉末の製造方法を提供すること。
【解決手段】2種以上の金属酸化物により構成される複合酸化物粉末の製造方法であって、
2種以上の金属化合物を含有する溶液から、塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめる工程と、
前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を、密閉容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持しつつ、1000sec-1以上の剪断速度の下で80〜250℃の温度に維持することにより前記複合酸化物前駆体に水熱処理を施す工程と、
前記水熱処理を施した複合酸化物前駆体を焼成することによって前記複合酸化物粉末を得る工程と、
を含むことを特徴とする複合酸化物粉末の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、複合酸化物粉末、その製造方法及び製造装置、並びにそれを含む排ガス浄化用触媒に関する。
従来、自動車のような内燃機関から排出される有害成分を浄化するための排ガス浄化用触媒として様々な触媒が開発されており、このような排ガス浄化用触媒としては、例えば排ガス中の一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化と窒素酸化物(NOx)の還元とを同時に行って浄化する三元触媒が用いられている。そして、このような三元触媒としては、例えばコーディエライト等からなる耐熱性ハニカム基材にアルミナ、ジルコニア、セリア等の金属酸化物からなる担体層(触媒担体)を形成し、その担体層に白金(Pt)やロジウム(Rh)といった貴金属を担持させたものが広く知られている。
しかしながら、近年の排ガス規制の強化に伴い、排ガス浄化用触媒に用いられる触媒担体として、より耐熱性が高く、高温耐久試験後においても比表面積が大きいものが要求されていた。
このような課題を解決するために、例えば、特開2002−220228号公報(特許文献1)には、セリウム化合物が溶解した水溶液又は水を含む溶液に含まれる酸基と等量以上の塩基を添加することでセリア前駆体の沈殿を析出させ、その後焼成することを特徴とする酸化物粉末の製造方法が開示され、明細書中において、前記前駆体の沈殿は、水又は水を含む溶液を分散媒とした懸濁状態又は系内に水が十分に存在する状態で熟成(水熱処理)されることが記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載のような酸化物粉末の製造方法により得られる酸化物粉末においても耐熱性の点で未だ必ずしも十分なものではなく、このような酸化物粉末を触媒担体として用いた排ガス浄化用触媒は、高温耐久試験後の触媒性能の点で未だ必ずしも十分なものではなかった。
特開2002−220228号公報
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性を有しており、触媒担体として用いた場合に貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能な複合酸化物粉末、並びにそのような複合酸化物粉末を得るための製造方法及び製造装置、更にはそのような複合酸化物粉末を含む排ガス浄化用触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、2種以上の金属化合物を含有する溶液から塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめ、水熱処理を施した後に焼成することによって複合酸化物粉末を製造する過程において、密閉容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持しつつ高剪断速度の下で、攪拌しながら水熱処理を施すことにより、驚くべきことに、優れた耐熱性を有しており、触媒担体として用いた場合に貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能な複合酸化物粉末が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の複合酸化物粉末の製造方法は、2種以上の金属酸化物により構成される複合酸化物粉末の製造方法であって、
2種以上の金属化合物を含有する溶液から、塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめる工程と、
前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を、密閉容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持しつつ、1000sec-1以上の剪断速度の下で80〜250℃の温度に維持することにより前記複合酸化物前駆体に水熱処理を施す工程と、
前記水熱処理を施した複合酸化物前駆体を焼成することによって前記複合酸化物粉末を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
また、本発明の複合酸化物粉末の製造方法においては、前記金属酸化物が少なくとも酸化セリウムを含むものであることが好ましい。
本発明の複合酸化物粉末は、前記複合酸化物粉末の製造方法により得られたものであることを特徴とするものである。また、本発明の排ガス浄化用触媒は、複合酸化物粉末を含む担体と、前記担体に担持された貴金属とを含むことを特徴とするものである。
本発明の複合酸化物粉末の製造装置は、2種以上の金属酸化物により構成される複合酸化物粉末の製造装置であって、
2種以上の金属化合物を含有する溶液から塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を80〜250℃の温度に維持し、前記複合酸化物前駆体に水熱処理を施すことができる密閉容器と、
前記水熱処理の際に、前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液に対して1000sec-1以上の剪断速度で剪断処理を施すことができる剪断装置と、
前記密閉容器内の圧力を検知する圧力検知手段と、
前記密閉容器内の圧力を調整することができる圧力調整手段と、
前記圧力検知手段及び前記圧力調整手段にそれぞれ接続され、前記圧力検知手段により検知された前記密閉容器内の圧力に基づいて前記密閉容器内の圧力が平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持されるように前記圧力調整手段を制御する圧力制御手段と、
を備えることを特徴とするものである。
なお、本発明の製造方法によって、優れた耐熱性を有しており、触媒担体として用いた場合に貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能な複合酸化物粉末が得られるようになる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を水熱処理した場合には、複合酸化物前駆体の溶解や再析出が促進され、その結果、得られる複合酸化物粉末の耐熱性が向上する。さらに、このような水熱処理を反応容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持しつつ高剪断速度の下で行うと、複合酸化物前駆体の溶解や再析出がむらなくより安定な条件下で進行し、複合酸化物前駆体の微粒子がより均質に成長するものと本発明者らは推察する。そして、本発明の複合酸化物粉末の製造方法においては、所定の圧力の下において高剪断速度の下で水熱処理が施された複合酸化物前駆体を焼成することによって、2種以上の金属酸化物により構成される複合酸化物粉末を得る。このように、複合酸化物前駆体の微粒子をより均質に成長させた後に焼成することによって、得られる複合酸化物粉末を構成する2種以上の金属酸化物の固溶が促進され、そのため、得られる複合酸化物粉末の耐熱性がより向上するものと本発明者らは推察する。
本発明によれば、優れた耐熱性を有しており、触媒担体として用いた場合に貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能な複合酸化物粉末、並びにそのような複合酸化物粉末を得るための製造方法及び製造装置、更にはそのような複合酸化物粉末を含む排ガス浄化用触媒を提供することが可能となる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
本発明の複合酸化物粉末の製造方法は、2種以上の金属酸化物により構成される複合酸化物粉末の製造方法であって、
2種以上の金属化合物を含有する溶液から、塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめる工程と、
前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を、密閉容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持しつつ、1000sec-1以上の剪断速度の下で80〜250℃の温度に維持することにより前記複合酸化物前駆体に水熱処理を施す工程と、
前記水熱処理を施した複合酸化物前駆体を焼成することによって前記複合酸化物粉末を得る工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
先ず、2種以上の金属化合物を含有する溶液から、塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめる工程について説明する。
本発明にかかる金属化合物は、複合酸化物粉末を構成する2種以上の金属酸化物の原料となるものである。このような金属化合物としては、以下説明する金属酸化物の構成元素である金属の塩が挙げられる。また、このような塩としては、例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、無機錯塩が挙げられる。
本発明にかかる金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、希土類元素酸化物、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。希土類元素酸化物としては、セリウム、ランタン、ネオジム、イットリウム、プラセオジム等の酸化物が挙げられ、アルカリ金属酸化物としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等の酸化物が挙げられ、アルカリ土類金属酸化物としては、バリウム、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム等の酸化物が挙げられる。
また、本発明においては、得られる複合酸化物粉末が排ガス浄化用触媒の触媒担体等として有用なものとなるという観点から、このような金属酸化物が少なくとも酸化セリウムを含むことが好ましい。さらに、酸化セリウムと組み合わせて用いる金属酸化物としては特に限定されないが、得られる複合酸化物粉末が排ガス浄化用触媒の触媒担体等として有用なものとなるという観点から、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジムが好ましく、酸化ジルコニウムがより好ましい。なお、本発明の複合酸化物粉末における金属酸化物の組成比は特に制限されず、前記金属化合物の配合量を調節することによって適宜調整することができる。
本発明においては、前記2種以上の金属化合物を含有する溶液を用いる。このような溶液としては、前記金属化合物を水、アルコール等の溶媒に溶解した溶液が好適に用いられる。また、このような溶液のpHは、特に限定されるものではないが、溶液中で金属イオンがより安定に存在するという観点から、溶液のpHが1.0〜6.0であることが好ましい。
そして、本発明においては、前記2種以上の金属化合物を含有する溶液から、塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめる。具体的には、このような溶液に含まれる酸基と等量以上の塩基を添加することで、複合酸化物前駆体を沈殿せしめることができる。このように等量以上の塩基で中和することにより、複合酸化物前駆体の析出反応が促進される。塩基としては、アンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等を用いることができる。これらの中でも、焼成時に揮散するという観点から、アンモニア、炭酸アンモニウムが特に好ましい。なお、これらの塩基は水、アルコール等の溶媒に溶解させて塩基性溶液として用いることが好ましい。また、このような塩基性溶液のpHは9以上であることが好ましい。
このように複合酸化物前駆体を沈殿せしめる方法としては、様々な方法があり、例えば、塩基性溶液を瞬時に添加し強撹拌して沈殿を析出させる方法、過酸化水素等を加えることで酸化物前駆体が沈殿し始めるpHを調節した後、塩基性溶液を加えて沈殿を析出させる方法、塩基性溶液を添加する際に中和にかかる時間を十分に長く(好ましくは10分以上)して徐々に沈殿を析出させる方法、塩基性溶液を添加する際にpHをモニターしながら段階的に中和する又は所定のpHに保つような緩衝溶液を添加しつつ沈殿を析出させる方法が挙げられる。また、このような複合酸化物前駆体は、前記2種以上の金属を含有する共沈殿物であり、具体的には、前記2種以上の金属の水酸化物、酸化物等からなる共沈殿物である。
次に、前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を、密閉容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持しつつ、1000sec-1以上の剪断速度の下で80〜250℃の温度に維持することにより前記複合酸化物前駆体に水熱処理を施す工程(水熱処理工程)について説明する。
本発明にかかる水熱処理工程においては、前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を、1000sec−1以上の剪断速度の下で水熱処理する。かかる剪断速度が1000sec−1未満では、複合酸化物前駆体の溶解や再析出にむらが生じ、得られる複合酸化物粉末の耐熱性が不十分となる。また、得られる複合酸化物粉末の耐熱性を更に向上させるという観点から、かかる剪断速度が5000sec−1以上であることが好ましく、10000sec−1以上であることがより好ましい。なお、かかる剪断速度の上限は特に制限されないが、用いる装置上の制約という観点から30000sec−1以下であることが好ましい。なお、剪断速度は、このような装置におけるロータとステータの速度差、及びロータとステータの間隙から、下記計算式:
(剪断速度)=(ロータとステータの速度差)/(ロータとステータの間隙)
を用いて算出することができる。
本発明にかかる水熱処理工程における水熱処理温度は、80〜250℃の範囲であることが必要である。溶液温度が80℃未満では、複合酸化物前駆体の溶解や再析出の促進効果が不十分となり、得られる複合酸化物粉末の耐熱性が不十分となる。他方、溶液温度が250℃を超える場合には、10気圧以上に耐えうる合成装置が必要となり、設備コストが高くなるため、本発明の主な用途である触媒担体の製造方法には適さない。
また、このような水熱処理工程においては、反応容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持することが必要であり、平衡水蒸気圧±5%の範囲内に維持することがより好ましい。反応容器内の圧力が平衡水蒸気圧+10%(平衡水蒸気圧×1.1の圧力)を超える圧力である場合には、複合酸化物前駆体の溶解や再析出にむらが生じ、得られる複合酸化物粉末の耐熱性が不十分となる。他方、反応容器内の圧力が平衡水蒸気圧−10%(平衡水蒸気圧×0.9の圧力)未満の圧力である場合には、溶液が沸騰して不安定な条件下での水熱処理となるため、複合酸化物前駆体の溶解や再析出にむらが生じ、得られる複合酸化物粉末の耐熱性が不十分となる。なお、平衡水蒸気圧とは、水と水蒸気とが一定の温度において平衡に共存する場合において、その温度で気相の占める空間が水蒸気により飽和状態に達したときの圧力のことをいう。
さらに、このような水熱処理工程における水熱処理時間は、剪断速度や水熱処理温度に応じて適宜調整することができるが、30〜1000分の範囲であることが好ましく、60〜300分の範囲であることがより好ましい。水熱処理時間が前記下限未満では、複合酸化物前駆体の溶解や再析出の促進効果が不十分となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、水熱処理による効果が飽和状態となり、生産性が低下することになる傾向にある。
また、このような水熱処理工程において用いる装置としては、反応容器内の圧力を制御しつつ高剪断速度で攪拌できるものであればよく特に制限されないが、本発明にかかる水熱処理工程をより効率よく且つ確実に施すことができるという観点から、本発明の複合酸化物粉末の製造装置を用いることが好ましい。以下、本発明の複合酸化物粉末の製造装置を用いて水熱処理工程を施す方法を例に挙げて、図面を参照しながら、本発明にかかる水熱処理工程についてより詳細に説明する。なお、以下の説明及び図面中、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の複合酸化物粉末の製造装置に水熱処理を施す溶液を投入した状態を示す模式図である。
図1に示す複合酸化物粉末の製造装置は、密閉容器1と、剪断装置2と、圧力検知手段4と、圧力調整手段5と、圧力制御手段6とを備えている。また、このような複合酸化物粉末の製造装置においては、圧力制御手段6は圧力検知手段4及び圧力調整手段5にそれぞれ電気的に又は機械的に接続されている。そして、このような複合酸化物粉末の製造装置の密閉容器1内に前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液(共沈殿物含有溶液3)を投入し、本発明にかかる水熱処理工程を施すことができる。
密閉容器1は、共沈殿物含有溶液3を保持することができ、しかも共沈殿物含有溶液3を80〜250℃の温度に調節できるものである。密閉容器1としては、80〜250℃の温度にて水熱処理を施した場合において反応容器内の圧力に耐えうるものが適宜使用され、具体的には特に限定されず、市販されている密閉型の反応容器を使用することができる。
剪断装置2としては、共沈殿物含有溶液3に1000sec-1以上の剪断速度で剪断処理を施すことができるものが適宜使用され、具体的には特に限定されず、例えば、ホモジナイザを使用することができる。
圧力検知手段4としては、密閉容器1内の圧力を検知することができるものが適宜使用され、具体的には特に限定されず、市販されている圧力計を使用することができる。また、圧力調整手段5としては、密閉容器1内の圧を逃がすことができるものが適宜使用され、具体的には特に限定されず、市販されている開閉弁、リリーフ弁等を使用することができる。
圧力制御手段6は、前記圧力検知手段により検知された前記密閉容器内の圧力に基づいて前記密閉容器内の圧力が平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持されるように前記圧力調整手段を制御する制御手段を備えるものである。
このような圧力制御手段6によれば、例えば、図2に示すフローチャートに記載の方法のように圧力調整手段5を制御することにより、密閉容器1内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持することができる。すなわち、図2に示すフローチャートでは、圧力調整手段5である開閉弁を閉じた状態で水熱処理を開始した後(S20)、圧力検知手段4において検知した密閉容器1内の圧力(容器内圧力:D1)を読み込み、容器内圧力(D1)が閾値を超える圧力であるか否かを判断(モニタリング)する(S21)。そして、容器内圧力(D1)が閾値以下であれば開閉弁を閉じたままにし、水熱処理を続ける間は前記モニタリングを繰り返す(S21→S25→S21)。一方、容器内圧力(D1)が閾値を超える圧力となった場合は、圧力調整手段5である開閉弁を開き(S22)、密閉容器1内の圧を逃がし、その後の容器内圧力(D2)が閾値以下の圧力であるか否かを随時判断する(S23)。そして、容器内圧力(D2)が閾値を超える圧力である限り開閉弁を開いたままにする。一方、容器内圧力(D2)が閾値以下の圧力となった場合は、開閉弁を閉じ(S24)、水熱処理を続ける間は前記モニタリングを繰り返す(S25→S21)。なお、本発明においては、容器内圧力の閾値を、平衡水蒸気圧±10%の範囲内の値とする必要があり、余裕をもって平衡水蒸気圧±5%の範囲内の値とすることがより好ましい。以上説明したフローチャートによる制御により密閉容器1内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持することができる。
次に、前記水熱処理を施した複合酸化物前駆体を焼成することによって前記複合酸化物粉末を得る工程(焼成工程)について説明する。
本発明にかかる焼成工程においては、前記水熱処理を施した複合酸化物前駆体を焼成することによって、本発明の複合酸化物粉末を得る。このような焼成工程は、大気中で行えばよく、その温度は300〜1200℃の範囲であることが好ましく、500〜1000℃の範囲であることがより好ましい。焼成温度が前記下限未満では、実質上、触媒担体としての安定性に欠ける傾向にあり、他方、前記上限を超えると、高温・酸化雰囲気により触媒担体としての性能低下を伴い易くなる傾向にある。また、焼成時間は1〜20時間の範囲であることが好ましく、3〜10時間の範囲であることがより好ましい。
以上説明した本発明の複合酸化物粉末の製造方法、並びに本発明の複合酸化物粉末の製造装置により、優れた耐熱性を有する本発明の複合酸化物粉末を得ることができる。また、このような本発明の複合酸化物粉末を触媒担体として用いた場合には、貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能となる。
さらに、本発明の複合酸化物粉末は、前記2種以上の金属酸化物同士が固溶してなるものであることが好ましいが、前記2種以上の金属酸化物の微粒子が均一に分散した状態で凝集している凝集体であってもよい。また、本発明の複合酸化物粉末の比表面積については特に制限はないが、高温耐久試験後(例えば、温度1000℃、5時間)の比表面積が30m/g以上であることが好ましい。比表面積は、吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出することができる。さらに、本発明の複合酸化物粉末の平均一次粒子径については特に制限はないが、高温耐久試験後(例えば、温度1000℃、5時間)の平均一次粒子径が5〜12nmであることが好ましい。
次に、本発明の排ガス浄化用触媒について説明する。すなわち、本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明の複合酸化物粉末を含む担体と、前記担体に担持された貴金属とを含むことを特徴とするものである。このように、本発明の排ガス浄化用触媒は、前記本発明の複合酸化物粉末を含む担体に貴金属を担持させたものであるため、高温耐久試験後においても貴金属の粒成長が十分に抑制され、優れた触媒性能を発揮することができる。
本発明にかかる貴金属としては、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)等が挙げられ、三元活性が高いという観点から、Pt、Rh、Pdが好ましい。
このような貴金属の担持量としては、前記複合酸化物粉末100質量部当たり0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜4質量部であることがより好ましい。前記貴金属の担持量が前記下限未満ではHC、CO及びNOxの浄化率が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、貴金属により得られる効果が飽和するとともにコストが増大する傾向にある。
また、本発明の排ガス浄化用触媒を製造する方法は特に制限されず、例えば、前記複合酸化物粉末に前記貴金属のイオンを含有する水溶液(例えば、ジニトロジアンミン白金水溶液、硝酸ロジウム水溶液)を所定量含浸させ、これを蒸発乾固もしくは選択担持により濾過させた後、250〜500℃程度で0.5〜5時間焼成する方法や、上記本発明の排ガス浄化用触媒担体を脱イオン水中に分散させ、これに前記貴金属のイオンを含有する水溶液を所定量添加して十分に撹拌した後、これを蒸発乾固せしめ、その後に250〜500℃程度で0.5〜5時間焼成する方法を採用することができる。
また、本発明の排ガス浄化用触媒の形態も特に制限されず、例えば、定法によりペレット化してペレット触媒としても、本発明の排ガス浄化用触媒を主成分とするスラリーをコーディエライトや金属箔からなるハニカム基材にコートし焼成してモノリス触媒としてもよい。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
先ず、硝酸セリウム水溶液(CeOとして28質量%含む)233g、オキシ硝酸ジルコニウム水溶液(ZrOとして18質量%含む)152g、硝酸イットリウム14g及びノニオン系界面活性剤(ライオン社製、商品名:レオコン)10gを含有する混合水溶液2000gに25質量%濃度のアンモニア水200gを添加し、室温で10分間攪拌して共沈殿物を析出させて共沈殿物含有溶液を得た。次に、得られた共沈殿物含有溶液を図1に示す複合酸化物粉末の製造装置の密閉容器1内に投入し、攪拌を継続しながら共沈殿物含有溶液を120℃まで加熱して維持し、圧力検知手段4(圧力計)、圧力調整手段5(開閉弁)及び圧力制御手段6によって密閉容器1内の圧力を0.19〜0.20MPaの範囲内に維持しつつ、剪断装置2(ホモジナイザ)を用いて10000sec−1の剪断速度の下で1時間の水熱処理を施した。なお、水熱処理において、密閉容器1内の圧力は120℃における平衡水蒸気圧である0.199MPaの±10%の範囲内に維持されていた。その後、ホモジナイザ攪拌を止め、水熱処理後の溶液を室温まで冷却した。そして、冷却後の溶液から遠心分離機を用いて上澄み液を除去した後に、脱脂炉中にて330℃で5時間焼成して、66質量%のCeO、28質量%のZrO及び6質量%のYからなる複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。
(実施例2)
水熱処理における処理温度を200℃とし、密閉容器1内の圧力を1.50〜1.55MPaの範囲内に維持し、剪断速度を5000sec−1となるようにした以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。なお、水熱処理において、密閉容器1内の圧力は200℃における平衡水蒸気圧である1.58MPaの±10%の範囲内に維持されていた。
(実施例3)
水熱処理における処理温度を150℃とし、密閉容器1内の圧力を0.45〜0.47MPaの範囲内に維持した以外は実施例1と同様にして複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。なお、水熱処理において、密閉容器1内の圧力は150℃における平衡水蒸気圧である0.479MPaの±10%の範囲内に維持されていた。
(比較例1)
水熱処理における密閉容器1内の圧力を0.24〜0.26MPaの範囲内に維持した以外は実施例1と同様にして比較用の複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。
(比較例2)
水熱処理における密閉容器1内の圧力を0.55〜0.65MPaの範囲内に維持した以外は実施例3と同様にして比較用の複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。
(比較例3)
水熱処理における密閉容器1内の圧力を0.55〜0.65MPaの範囲内に維持し、剪断速度を500sec−1となるようにした以外は実施例3と同様にして比較用の複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。
(比較例4)
水熱処理においてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度:10sec−1以下)するようにした以外は実施例2と同様にして比較用の複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。
(比較例5)
共沈殿物を析出させた共沈殿物含有溶液を加熱せずに、大気中で温度25℃においてプロペラによりゆるやかに攪拌(剪断速度:10sec−1以下)するようにした以外は実施例1と同様にして比較用の複合酸化物粉末(CeO−ZrO−Y)を得た。
<耐熱性及び触媒性能の評価>
(i)複合酸化物粉末の耐熱性の評価
先ず、実施例1〜3及び比較例1〜5で得られた複合酸化物粉末にそれぞれ大気中にて1000℃の温度条件で5時間熱処理して高温耐久試験を行った。そして、高温耐久試験後の複合酸化物粉末における比表面積及び平均一次粒子径を測定して、複合酸化物粉末の耐熱性を評価した。すなわち、比表面積を吸着等温線からBET等温吸着式を用いてBET比表面積として算出した。また、平均一次粒子径をX線回折(XRD)により測定した。
(ii)排ガス浄化用触媒の触媒性能の評価
先ず、実施例1〜3及び比較例1〜5で得られた複合酸化物粉末をそれぞれジニトロジアミン白金の硝酸水溶液(白金濃度:4質量%)に浸漬し、濾過及び洗浄した後に、110℃の温度条件で乾燥し、更に大気中にて500℃の温度条件で3時間焼成して、前記複合酸化物粉末にPtが担持された排ガス浄化用触媒を得た。そして、このようにして得られた粉末状の排ガス浄化用触媒を、冷間等方圧加圧法(CIP法)を採用して1t/cmの圧力で圧粉成形した後、0.5〜1mmの大きさに粉砕し、ペレット状の触媒とした。なお、得られた排ガス浄化用触媒におけるPtの担持量は1質量%であった。
次に、得られたペレット状の触媒をそれぞれ用いて高温耐久試験を行った。すなわち、反応容器に触媒を仕込み、反応容器中に触媒3gあたりの流量が500cc/分となるようにして、CO(5%)、CO(10%)、N(バランス)からなるリッチガスとO(5%)、CO(10%)、N(バランス)からなるリーンガスとを5分おきに交互に流入させて1000℃の温度条件で5時間処理することによって複合酸化物粉末(触媒担体)上の貴金属を粒成長させた。
次いで、高温耐久試験後の触媒の触媒性能を以下の方法によって評価した。すなわち、先ず、前処理として高温耐久試験後の触媒に、表1に示す定常ガスに表1に示すリッチ変動ガス及びリーン変動ガスを1秒おきに交互に導入した変動雰囲気の前処理ガスを、500℃の温度条件で15分間流通させた。次に、前処理後の触媒に、表1に示す定常ガスに表1に示すリッチ変動ガス及びリーン変動ガスを1秒おきに交互に導入した変動雰囲気の混合ガスを触媒1gあたり7000cc/分の流量で、入りガス温度を100℃から500℃まで昇温させながら(昇温速度12℃/分)流通させた。そして、触媒を流通した生成ガスに含まれる全炭化水素濃度(THC濃度)を測定し、500℃におけるTHC浄化率(%)〔(生成ガス中の全炭化水素)/(混合ガス中の全炭化水素)〕が50%となる温度、すなわちTHC50%浄化温度を測定した。
Figure 2009263150
(iii)評価結果
実施例1〜3及び比較例1〜5で得られた複合酸化物粉末における、高温耐久試験後の比表面積及び平均一次粒子径の測定値を表2に示す。また、実施例1〜3及び比較例1〜5で得られた複合酸化物粉末を用いた排ガス浄化用触媒における高温耐久試験後のTHC50%浄化温度を表2に示す。さらに、実施例1〜3及び比較例1〜5における水熱処理条件を表2に示す。
Figure 2009263150
表2に示した結果から明らかなように、本発明の複合酸化物粉末(実施例1〜3)においては、高温耐久試験後における比表面積が大きく、また平均一次粒子径が小さかった。したがって、本発明の複合酸化物粉末の製造方法によれば、優れた耐熱性を有する複合酸化物粉末が得られることが確認された。また、本発明の複合酸化物粉末(実施例1〜3)を触媒担体として用いた排ガス浄化用触媒においては、高温耐久試験後におけるTHC50%浄化温度が低かった。したがって、本発明の複合酸化物粉末の製造方法によれば、触媒担体として用いた場合に貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能な複合酸化物粉末が得られることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、優れた耐熱性を有しており、触媒担体として用いた場合に貴金属の粒成長が十分に抑制され、触媒性能を十分に維持することが可能な複合酸化物粉末、並びにそのような複合酸化物粉末を得るための製造方法及び製造装置を提供することが可能となる。
したがって、本発明の複合酸化物粉末並びにその製造方法及び製造装置は、排ガス浄化用触媒等に関する技術として特に有用である。
本発明の複合酸化物粉末の製造装置に水熱処理を施す溶液を投入した状態を示す模式図である。 本発明の複合酸化物粉末の製造方法における圧力制御方法の一例を示すフローチャートである。
符号の説明
1…密閉容器、2…剪断装置、3…共沈殿物含有溶液、4…圧力検知手段、5…圧力調整手段、6…圧力制御手段。

Claims (5)

  1. 2種以上の金属酸化物により構成される複合酸化物粉末の製造方法であって、
    2種以上の金属化合物を含有する溶液から、塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめる工程と、
    前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を、密閉容器内の圧力を平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持しつつ、1000sec-1以上の剪断速度の下で80〜250℃の温度に維持することにより前記複合酸化物前駆体に水熱処理を施す工程と、
    前記水熱処理を施した複合酸化物前駆体を焼成することによって前記複合酸化物粉末を得る工程と、
    を含むことを特徴とする複合酸化物粉末の製造方法。
  2. 前記金属酸化物が少なくとも酸化セリウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の複合酸化物粉末の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の複合酸化物粉末の製造方法により得られたものであることを特徴とする複合酸化物粉末。
  4. 請求項3に記載の複合酸化物粉末を含む担体と、該担体に担持された貴金属とを含むことを特徴とする排ガス浄化用触媒。
  5. 2種以上の金属酸化物により構成される複合酸化物粉末の製造装置であって、
    2種以上の金属化合物を含有する溶液から塩基の存在下で複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液を80〜250℃の温度に維持し、前記複合酸化物前駆体に水熱処理を施すことができる密閉容器と、
    前記水熱処理の際に、前記複合酸化物前駆体を沈殿せしめた溶液に対して1000sec-1以上の剪断速度で剪断処理を施すことができる剪断装置と、
    前記密閉容器内の圧力を検知する圧力検知手段と、
    前記密閉容器内の圧力を調整することができる圧力調整手段と、
    前記圧力検知手段及び前記圧力調整手段にそれぞれ接続され、前記圧力検知手段により検知された前記密閉容器内の圧力に基づいて前記密閉容器内の圧力が平衡水蒸気圧±10%の範囲内に維持されるように前記圧力調整手段を制御する圧力制御手段と、
    を備えることを特徴とする複合酸化物粉末の製造装置。
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