JP2009261293A - 冷解凍耐性を有する耐熱性ゲル状組成物 - Google Patents

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百合香 田中
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Abstract

【課題】冷解凍しても、離水が少なく滑らかで軟らかい食感を維持した耐熱性のゲル状組成物の提供。
【解決手段】0℃以下の温度で冷凍保存し、その後に60℃以上の温度で加熱処理することを含むことを特徴とする耐熱性ゲル状組成物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷解凍後も離水がなく滑らかで軟らかい食感を維持し、さらに耐熱性を有するゲル状組成物に関する。
ゼラチン、寒天、カラギーナンなどの一般的なゲル化剤を使用したゲルは、熱可逆性であるため、加熱によりゾル化又は溶解し、内容物の均一性を維持することができず、耐熱性がない。つまり加熱処理により、ゲル形状が保持できず、ゲル中の固形物の浮上又は沈降、タンパク質の凝集等が発生する。
そこで微小繊維状セルロースを配合する技術として、非特許文献1には微小繊維状セルロースをプリン、ゼリー類に配合して、生地に均一性を持たせる等の記載があり、特許文献1にも同様の記載がある。
また特許文献2には微小繊維状セルロースと多糖類からなる組成物についての記載があり、特許文献3には、微小繊維状セルロースと多糖類を含有する皮膚手入れ用化粧料の記載がある。
しかしながら、微小繊維状セルロースを利用した技術に関するこれらの文献は、微細繊維状セルロース/水溶性高分子/親水性物質からなる微細繊維状セルロース複合体が、単独ではゲル化しない特定の多糖類と架橋を形成しゲル化するという性質を有すること、及び生じたゲルは耐熱性に優れることについて、何ら言及するものではない。
特許文献4には、微小繊維状セルロースをコンニャク芋又はコンニャク粉と混合してスラリー状とした後、乾燥又は凍結することによって耐熱性のゲル状物が得られることが開示されている。しかしながら、このゲルは、明細書に「コンニャク」との記載があるように固いコンニャク様の食感を呈し、本発明の「滑らかで軟らかい食感を維持したゲル状組成物」とは異なる。
さらに特許文献2〜4で使用されている微小繊維状セルロースは、後述する「微細化」の程度が低いために繊維が粗く、本発明の微細繊維状セルロース複合体の構成成分である微細繊維状セルロースとは、微細化の程度が異なる。
特許文献5には、微細繊維状セルロース(水分散性セルロース)を使用した微細繊維状セルロース複合体と単独ではゲル化しない特定の多糖類からなるゲル化剤、特許文献6にはそれを利用した耐熱性ゲル、特許文献7にはそれを冷解凍して得た可食性スポンジ状ゲル、さらに特許文献8には、水分散性を改善した微細繊維状セルロース複合体からなる耐熱性ゲル(特許文献6の改良品)、及び可食性スポンジ状ゲル(特許文献7の改良品)の記載がある。特許文献5,6,8に記載された耐熱性ゲルは離水が少なく軟らかい食感を付与し、一方それを冷解凍して得られる特許文献7,8のスポンジ状ゲルは、スポンジのように水分が染みだしやすくザクザク、シャクシャクといった食感を付与することから、両者は全く異なる物性を示す。特許文献5,6,8に記載された耐熱性ゲルは、その特徴から嚥下障害者用の介護食用ゲルを始めとして様々な食品に適している。しかし冷解凍によって大きく物性が変化するために冷凍して流通ができないという問題があり、冷解凍耐性が強く望まれていた。
特開2004−344042号公報 特開昭60−260517号公報 特許第1849998号公報 特開昭63−196238号公報 特開2004−41119号公報 特開2004−248536号公報 特開2004−313058号広報 特開2006−290972号広報 福井克任、「増粘安定剤としてのMFCの利用」、ニューフードインダストリー、株式会社食品資材研究会、昭和60年6月1日、第27巻、第6号、p.1〜5
本発明は、冷解凍しても離水が少なく滑らかで軟らかい食感を維持した耐熱性のゲル状組成物を提供することにある。
本発明者は、ゲルの冷解凍後に特定条件での加熱処理を行うことで課題を解決し、本発明をなすに至った。すなわち本発明は、以下の通りである。
(1)0℃以下の温度でゲル状組成物を冷凍保存し、その後に60℃以上の温度で加熱処理することを含むことを特徴とする耐熱性ゲル状組成物の製造方法。
(2)前記ゲル状組成物が、第1成分である微細繊維状セルロース50〜95質量%と水溶性高分子、親水性物質、又はそれらの混合物5〜50質量%とを含む微細繊維状セルロース複合体と、第2成分であるグルコマンナン、ガラクトマンナン、及びアルギン酸類からなる群から選択される少なくとも1種類の多糖類を含むゲル状組成物である、(1)に記載の製造方法。
(3)第1成分である微細繊維状セルロース50〜95質量%と水溶性高分子、親水性物質、又はそれらの混合物5〜50質量%とを含む微細繊維状セルロース複合体と、第2成分であるグルコマンナン、ガラクトマンナン、及びアルギン酸類からなる群から選択される少なくとも1種類の多糖類を水性媒体に分散した後、0℃以下の温度で冷凍保存し、その後に60℃以上の温度で加熱処理することにより調製される耐熱性ゲル状組成物。
(4)第3成分としてキサンタンガムを更に含有する、(3)に記載の耐熱性ゲル状組成物。
(5)(3)又は(4)に記載の耐熱性ゲル状組成物及び食品素材を含有することを特徴とする食品。
本発明の耐熱性ゲル状組成物は、離水が少なく滑らかで軟らかい食感を維持し、加熱処理によってもゲルが溶解せずに、かつ冷解凍耐性に優れる。そのため、冷凍流通後に加熱調理でき、嚥下障害者にも好ましい物性のゲル状組成物を提供することが可能である。
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で使用される微細繊維状セルロースは、β−1,4グルカン構造を有するいわゆるセルロースを原料とする。安価な製品を安定的に供給するためには、植物細胞壁を起源としたセルロース性物質を、原料として使用するのが好ましい。この中でも特に、バガス、稲わら、麦わら、竹などを使用したイネ科植物由来のパルプが好ましい。綿花、パピルス草、こうぞ、みつまた、ガンピなども使用が可能だが、原料の安定的な確保が困難であること、セルロース以外の成分の含有量が多いこと、ハンドリングが難しいことなどの理由で好ましくない場合がある。ビートパルプや果実繊維パルプなどの柔細胞由来の原料も同様である。その他レーヨンなどの再生セルロースや、微生物が産出するセルロースを原料として使用しても良い。
本発明で使用される微細繊維状セルロースは、結晶性であることが好ましい。具体的には、X線回折法(シーゲル法)で測定される結晶化度が50%を越えており、好ましくは55%以上である。本発明は微細繊維状セルロース以外の成分を含有する。それらの成分は非晶性であり、結晶化度の測定においては非晶性としてカウントされる。したがって、本発明の結晶化度の測定の結果、結晶化度が50%であれば、微細繊維状セルロース結晶化度としては50%以上であるといえる。一方、測定の結果が50%未満の場合、微細繊維状セルロースの結晶化度が50%以上であることを確認するためには、微細繊維状セルロースを他の成分から分離し、測定しなければならない。
本発明に係る微細繊維状セルロースは、セルロース繊維の大部分、つまり90%以上が「微細な繊維状」である。本明細書中で「微細な繊維状」とは、光学顕微鏡及び電子顕微鏡で、観察・測定されるところの、長さ(長径)が5nm〜5mm、幅(短径)が1nm〜200μm、長さと幅の比(長径/短径)が5〜10000であることを意味する。中でも好ましい「微細繊維状セルロース」の形態は、長さ(長径)が0.5μm〜1mm、幅(短径)が2nm〜60μm、長さと幅の比(長径/短径)が5〜400のものである。
本発明に係る微細繊維状セルロース複合体は、微細繊維状セルロースと水溶性高分子又は親水性物質とが複合した乾燥組成物である。それぞれの量比は、微細繊維状セルロース:水溶性高分子又は親水性物質=50:50〜95:5(ただし、合計で100)である。
好ましくは、本発明に係る微細繊維状セルロース複合体は、微細繊維状セルロースと水溶性高分子と親水性物質との複合体である。この場合のそれぞれの質量比は、微細繊維状セルロースが50〜94に対して水溶性高分子が3〜47でかつ親水性物質が3〜47の範囲内である(ただし、合計で100)。この範囲で、複合体の水中での分散性がより良好となり、ゲル化性能もより良好となる。さらに好ましくは、微細繊維状セルロースが50〜70に対して、水溶性高分子が10〜30で、かつ親水性物質が5〜40の質量比率の範囲内(ただし、合計で100)である。
微細繊維状セルロース複合体の乾燥組成物の形態は、顆粒状、粒状、粉末状、鱗片状、小片状、シート状を呈するが、乾燥方法については何ら限定するものではない。また必要に応じてカッターミル、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等で粉砕して使用してもよい。
本発明に係る水溶性高分子は、乾燥時におけるセルロース同士の角質化を防止する作用を有する。微細繊維状セルロースと水溶性高分子とのスラリー液を乾燥することにより、微細繊維状セルロース複合体が形成される。水溶性高分子により、複合体を水中に投入した場合の再分散性が改善されると共に、理由は不明であるがゲル化能が向上し、強度の高いゲル状組成物が得られる。
具体的な水溶性高分子の例としては、アラビアガム、アラビノガラクタン、アルギン酸及びその塩、カードラン、ガッティーガム、カラギーナン、カラヤガム、寒天、キサンタンガム、グアーガム、酵素分解グアーガム、クインスシードガム、ジェランガム、ゼラチン、タマリンドシードガム、難消化性デキストリン、トラガントガム、ファーセルラン、プルラン、ペクチン、ローカストビーンガム、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウムなどから選ばれた1種又は2種以上の物質が使用される。
中でも、分散性が良好になるため、カルボキシメチルセルロース・ナトリウムを用いるのが好ましい。カルボキシメチルセルロース・ナトリウムとしては、カルボキシメチル基の置換度が0.5〜1.5であるのが好ましく、より好ましくは0.5〜1.0であり、さらに好ましくは0.6〜0.8である。
また、水溶性高分子の1質量%水溶液の粘度は、5〜9000mPa・s程度で用いるのが好ましく、より好ましくは1000〜8000mPa・s程度で用いることであり、さらに好ましくは2000〜6000mPa・s程度で用いることである。この範囲で、取り扱い性に問題なく、ゲル化能も良好な範囲となる。
本発明に係る親水性物質は、微細繊維状セルロース複合体を水中に投入した際に崩壊剤又は導水剤として機能する。このような親水性物質を用いることで、複合体が水中でさらに分散しやすくなる。親水性物質は、冷水への溶解性が高く、粘性を殆どもたらさず、常温で固体の物質である。例えば、デキストリン類、水溶性糖類(ブドウ糖、果糖、庶糖、乳糖、オリゴ糖、異性化糖、キシロース、トレハロース、カップリングシュガー、パラチノース、ソルボース、還元澱粉糖化飴、マルトース、ラクツロース、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖等)、糖アルコール類(キシリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール等)が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上の物質である。ところで、親水性物質の中にはデキストリン類のように、水溶性高分子としての機能も有する親水性物質が数は少ないが存在する。そのような親水性物質を用いる場合でも水溶性高分子を合わせ用いるのが望ましいが、水溶性高分子を用いないことも可能である。
低分子量の親水性物質を用いた方が、水中での粒子の崩壊・分散性は良くなる傾向にあるが、製造時の乾燥性や、製品の吸湿性、経時安定性において劣る傾向がある。例えば、ブドウ糖、蔗糖、トレハロースなどは良好な崩壊・分散性を示す、崩壊・分散性、製造時の乾燥性、製品の吸湿性、経時安定性のすべての性質のバランスに優れる物質は、DE(dextrose equivalent)が20以上のデキストリンである。
微細繊維状セルロース複合体には、その効果を損ねない限り、微細繊維状セルロース、水溶性高分子、親水性物質以外の他の成分を含めても良い。例えば、デンプン類、油脂類、蛋白質類、ペプチド、アミノ酸、界面活性剤、保存料、日持向上剤、pH調整剤、食塩、各種リン酸塩等の塩類、乳化剤、酸味料、甘味料、香料、色素、消泡剤、発泡剤、抗菌剤、崩壊剤などの成分が適宜配合されていてもよい。
微細繊維状セルロース複合体は、「水中で安定に懸濁する成分」を、全セルロース中に30質量%以上含有する。この成分の含有量が30質量%未満であると、ゲル形成機能が劣る。含有量は多いほど好ましいが、50〜100質量%であればより好ましい。ここにいう、「水中で安定に懸濁する成分」は、複合体を0.1質量%濃度の水分散液としてから1000Gで5分間遠心分離した場合でも、沈澱にならずに水中に安定に懸濁しているセルロースの全セルロース量に対する割合で示される。(「水中で安定に懸濁する成分」の測定方法は後述する。)
このような成分は、高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察及び測定される長さ(長径)が0.5〜30μm、幅(短径)が2〜600nm、長さと幅の比(長径/短径比)が20〜400であることが好ましく、より好ましくは、幅(短径)が100nm以下、より好ましくは50nm以下である。
微細繊維状セルロース複合体は、0.5質量%濃度の水分散液において、歪み10%、周波数10rad/sの条件で測定される損失正接(tanδ)が1未満である。1未満でゲル形成機能が秀でたものとなる。好ましくは0.6未満である。
微細繊維状セルロース複合体の損失正接を1未満にするためには、微細繊維状セルロース複合体の構成成分である、微細繊維状セルロース、つまりセルロースのミクロフィブリルを短く切断することなく取り出す必要がある。しかしながら、現在の技術では、「短繊維化」することなく「微細化」だけを行うことはできない(ここで言う「短繊維化」とは繊維を短く切断すること、あるいは短くなった繊維の状態を意味する。また「微細化」とは引き裂くなどの作用を与えて繊維を細くすること、又は細くなった繊維の状態を意味する)。つまり、損失正接を1未満にするためには、セルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させることが重要である。そのための好ましい方法の例を以下に示すが、これらの方法に何ら限定するものではない。
原料として植物細胞壁を起源とするセルロース性物質を選択する場合、セルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ「微細化」を進行させるためには、好ましくは、平均重合度400〜12000で、かつ、α−セルロース含量(%)が60〜100質量%のもの、より好ましくはα−セルロース含量(%)が60〜85質量%のものを選択すると良い。
またセルロース繊維の「短繊維化」を最低限に抑えつつ、「微細化」を進行させるために使用する装置としては高圧ホモジナイザーが好ましい。高圧ホモジナイザーの具体例としては、エマルジフレックス(AVESTIN,Inc.)、アルティマイザーシステム(株式会社スギノマシン)、ナノマイザーシステム(ナノマイザー株式会社)、マイクロフルイダイザー(MFIC Corp.)、バルブ式ホモジナイザー(三和機械株式会社、Invensys APV社、Niro Soavi社、株式会社イズミフードマシナリー)などがある。高圧ホモジナイザーの処理圧力としては、60〜414MPa程度が好ましい。
第2成分として使用する多糖類は、グルコマンナン、ガラクトマンナン、アルギン酸類からなる群から少なくとも1種が選択される。このような特定の多糖類を用いるのは、微細繊維状セルロース複合体と合わせて用いることで、ゲル化するようになるためである。微細繊維状セルロース複合体もこれらの多糖類も単独ではゲル化しないが、併用することで滑らかで軟らかい耐熱性ゲルを形成する。このゲルは加熱することでゲル化が大きく促進される。加熱しなくても時間が経過すればゲル化は進行するが、架橋反応速度(ゲル化反応速度)を増大させるためには80℃以上で加熱処理を行うのが好ましい。
多糖類としては、好ましくはグルコマンナンとガラクトマンナンからなる群から選択するのがよく、特に好ましいのはグルコマンナンである。またガラクトマンナンの中で好ましいのは、ローカストビーンガムである。
グルコマンナンは、D−グルコースとD−マンノースがβ−1,4結合した構造を有し、グルコースとマンノースの比率が約2:3の多糖類である。グルコマンナンは、精製度が低いと独特の刺激臭があるので、精製度の高いものを使用することが望ましい。また、用途に応じてコンニャク粉やコンニャクマンナンを使用しても差し支えない。
ガラクトマンナンは、β−D−マンノースがβ−1,4結合した主鎖と、α−D−ガラクトースがα−1,6結合した側鎖からなる構造を有する多糖類である。ガラクトマンナンの例としては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム等があり、マンノースとグルコースの比率は、グアーガムで約2:1、ローカストビーンガムで約4:1、タラガムで約3:1である。
アルギン酸類とは、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩、又はアルギン酸プロピレングリコールエステルを意味する。アルギン酸類の中でも、アルギン酸がナトリウムで中和された水溶性の多糖類であるアルギン酸ナトリウムを使用するのが好ましい。アルギン酸はβ−D−マンヌロン酸(Mと略する)とα−L−グルロン酸(Gと略する)からなる1,4結合のブロック共重合体である。Mからなるブロック(M−M−M−M)と、Gからなるブロック(G−G−G−G)と、両残基が交互に入り交じっているブロック(M−G−M−G)、という3つのセグメントから成り立っている。
第1成分である微細繊維状セルロース複合体と、第2成分の多糖類との質量比は、1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。この範囲でゲル化し、滑らかで離水のないゲルを形成する。
さらに第1成分と第2成分の合計含有量に対して、第3成分のキサンタンガムを「第1成分(微細繊維状セルロース複合体)+第2成分(多糖類)」:「第3成分(キサンタンガム)」=70:30〜99:1含有させることで、ゲル全体の強度が向上し、ゲルの離水抑制効果及び冷解凍耐性が改善される。好ましくは90:10〜98:2、さらに好ましくは95:5〜98:2である。キサンタンガム含有量が多くなると、ゲルの耐熱性が低くなり、加熱調理時に一部ゲルが溶解したり、ゲルが軟化して形状が崩れたりするので、好ましくない。また1%未満では、十分なキサンタンガム配合効果が見られないので好ましくない。
ゲル状組成物における、微細繊維状セルロース複合体と多糖類、キサンタンガムの合計配合量は、特に定めるものではないが、0.18〜5質量%程度が好ましい。この範囲で、食品などで望まれる強度のゲルが得られる。さらに好ましくは0.5〜2質量%程度である。
ゲル状組成物を製造するにあたっては、微細繊維状セルロース複合体と多糖類、キサンタンガムとを所定比率で配合し、乾燥状態のままで十分混合した後に、水性媒体中で分散させる。分散時の液温は5〜60℃、好ましくは10〜30℃である。このゲル状組成物は、高温になるほど架橋反応速度(ゲル化反応速度)が増大する。そのためゲルの製造工程途中では、できるだけゲル化を促進させないように低温で作業するのが好ましい。
微細繊維状セルロース複合体は、通常は乾燥したまま使用するのが望ましいが、水性媒体に分散して液状にしてから使用しても差し支えない。また多糖類やキサンタンガムも同様である。その場合は前述したのと同様の理由で、混合する前におのおのの液状物の液温を5〜60℃、好ましくは10〜30℃に調整しておくのが良い。
ゲル状組成物は、食品具材などのその他材料を混合したものでもよい。そのようなゲル状組成物の調製において、微細繊維状セルロース複合体と多糖類など、その他材料を加える順番は特に限定されない。ただし、その他材料の中にはゲル形成を阻害するものがあるので、まず複合体と多糖類、キサンタンガムの混合分散液を調製してから、その他材料を添加して混合する方法が望ましい。その他材料の温度、その他材料を混合する際の温度は、5〜60℃が好ましく、より好ましくは10〜30℃である。
上記のようにして、微細繊維状セルロース複合体と多糖類など、その他材料を混合した分散液を容器に充填後、0℃以下で冷凍させる。冷凍の方法は、ブライン等の冷媒に浸漬する方法、冷凍庫のような低温雰囲気に静置する方法、加圧下で氷点以下に冷却した後、常圧まで減圧して凍結させる方法などで適宜選択して使用できる。
上記の混合分散液を冷凍させる前に、必要に応じて加熱などの殺菌処理を行ってもよい。その場合は加熱によりゲル化が促進されるので、混合分散液を容器に充填した後に加熱殺菌する方法が望ましい。
冷凍したゲルは、60℃以上の温度で加熱する必要がある。そうすることで、滑らかで離水の少ないゲルが得られる。60℃より低い温度で処理した場合、組織が粗く離水の多いゲル(スポンジ状ゲル)となり、大きく異なる物性を示す。加熱条件は60℃であれば4時間〜8時間、80℃であれば20分〜3時間、100℃以上であれば10分〜30分程度を目安とする。加熱方法は湿式でも乾式でもよく、赤外線加熱、マイクロ波加熱、蒸気加熱など好きな方法で行うことができる。また好ましくは80℃以上の温度で加熱するのがよい。
ゲルを冷凍後に60℃以上の温度で加熱処理しないと、特許文献7,8に記載があるスポンジ状ゲルが得られる。このスポンジ状ゲルは冷凍しないゲルと比較して、ゲル破断強度が十数倍から数十倍高くなり、スポンジのように水分が染みだしやすくザクザク、シャクシャクとした食感を有する。一方、本発明の耐熱性ゲル状組成物は、冷凍しないゲルと比較した場合、ゲル破断強度は5倍以下であり、冷凍しないゲルと同様に滑らかで離水が少ないことを特徴とする。
微細繊維状セルロース複合体と特定の多糖類から形成されるゲルは、凍結によりセルロース繊維が結束して水分を失い、海綿状組織を有するスポンジ状ゲルを形成する。冷解凍後のゲルを加熱処理することで、滑らかで離水の少ないゲルが得られる理由は不明だが、加熱により微細繊維状セルロース複合体と特定の多糖類の架橋反応が促進されて新たなゲル組織を形成するためではないかと推測される。
本発明のゲル状組成物は、食品素材を含有すると、より冷解凍耐性が向上して好ましい。ゲル中に存在する食品素材が、凍結によるセルロース繊維の結束を阻害するためであると考えられる。食品素材の例としては、畜肉、魚肉、豆・穀類及びその粉砕物、牛乳・乳製品、はっ酵乳、野菜、果物、果汁、食用油脂等、嗜好飲料(コーヒー、茶類、ジュース、乳飲料、豆乳等)、調味料(みそ、しょうゆ、砂糖、塩、グルタミン酸ナトリウム等)、甘味料、糖類、糖アルコール類、香料、色素、香辛料、酸味料、乳化剤、界面活性剤、保存料、日持向上剤、抗菌剤、崩壊剤、消泡剤、発泡剤、pH調整剤、増粘安定剤、食物繊維、栄養強化剤(ビタミン、ミネラル、アミノ酸類等)、エキス類、タンパク質、でんぷん類、ペプチド、アルコール類、などがあげられる。
本発明のゲル状組成物は、食品だけでなく、医薬医療品、化粧品、工業製品用途へも応用できる。
本発明のゲル状組成物は耐熱性を有することを特徴とする。ここで言う耐熱性とは、加熱処理に対して「ゲルが溶解することなく、形状を維持すること」である。具体的には、200℃のホットプレートで10分加熱しても「ゲルが溶解することなく、形状を維持すること」を指標とする。
本発明の耐熱性ゲル状組成物は、離水が少なく、滑らかで、弾性や糊状感が少ない食感を有する。添加量を低くすると、非常に柔らかいゲルとなるが、やはり耐熱性に優れ、離水が少ない。そのため、一般的なデザート等に使用される場合はもちろん、近年注目されている嚥下障害者用介護食やダイエット食品のようなレトルト食品、栄養補給などの目的で使用されるチュアパック飲料などに好適である。食の多様化の観点から、温かい食事を提供できること、柔らかいゲルであっても離水が少ないこと、チュアパック飲料として吸いだせること、レトルト殺菌した場合でもゲル構造が維持されるので、固形物が配合されていても沈降・浮上することなく、殺菌前の均一な組織を維持できることなどがその理由である。
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、何らこれに限定されるものではない。なお、測定は以下の通り行った。
<セルロース性物質の平均重合度>
ASTM Designation: D 1795−90「Standerd Test Method for Intrinsic Viscosity of Cellulose」に準じて行う。
<セルロース性物質のα−セルロース含有量>
JIS P8101−1976(「溶解パルプ試験方法」5.5αセルロース)に準じて行う。
<セルロース性物質の結晶化度>
JIS K 0131−1996(「X線回折分析通則」)に規定されるX線回析装置で得られたX線回折図の回折強度値から、Segal法により算出したもので次式によって定義される。
結晶化度(%)={(Ic−Ia)/Ic}×100
ここで、Ic:X線回析図の回折角2θ=22.5度での回折強度、Ia:同じく回析角2θ=18.5度付近のベースライン強度(極小値強度)である。
<セルロース繊維(粒子)の形状(長径、短径、長径/短径比)>
セルロース繊維(粒子)のサイズの範囲が広いので、一種類の顕微鏡で全てを観察することは不可能である。そこで、繊維(粒子)の大きさに応じて光学顕微鏡、走査型顕微鏡(中分解能SEM、高分解能SEM)を適宜選択し、観察・測定する。
光学顕微鏡を使用する場合は、固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、「エクセルオートホモジナイザー」(日本精機株式会社製)で、15000rpmで15分間分散したものを、適当な濃度に調整し、それをスライドガラスにのせ、さらにカバーグラスをのせて観察する。
また、中分解能SEM(JSM−5510LV、日本電子株式会社製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約3nm蒸着して観察する。
高分解能SEM(S−5000、株式会社日立サイエンスシステムズ製)を使用する場合は、サンプル水分散液を試料台にのせ、風乾した後、Pt−Pdを約1.5nm蒸着して観察する。
セルロース繊維(粒子)の長径、短径、長径/短径比は撮影した写真から15本(個)以上を選択し、測定した。繊維はほぼまっすぐであるか、髪の毛のようにカーブしていたが、糸くずのように丸まっていることはなかった。短径(太さ)は、繊維1本の中でもバラツキがあったが、平均値を採用した。高分解能SEMは、短径が数nm〜200nm程度の繊維の観察時に使用した。繊維一本あたりの長さが長すぎて、一つの視野に収まらなかったため、視野を移動しつつ写真撮影を繰り返し、その後写真を合成して解析した。
<損失正接(=損失弾性率/貯蔵弾性率)>
(1)固形分濃度が0.5質量%の水分散液となるようにサンプルと水を量り取り、エースホモジナイザー(日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)25℃の雰囲気中に3時間静置する。
(3)動的粘弾性測定装置にサンプル液を入れてから5分間静置後、下記の条件で測定し、周波数10rad/sにおける損失正接(tanδ)を求める。
装置 :ARES(100FRTN1型)
(Rheometric Scientific,Inc.製)
ジオメトリー:Double Wall Couette
温度 :25℃
歪み :10%(固定)
周波数 :1→100rad/s(約170秒かけて上昇させる)
<「水中で安定に懸濁する成分」の含有量>
以下の(1)〜(5)及び(3’)〜(5’)より求める。
(1)セルロース濃度が0.1質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、エースホモジナイザー(日本精機株式会社製、AM−T型)で、15000rpmで15分間分散する。
(2)サンプル液20gを遠沈管に入れ、遠心分離機にて1000Gで5分間遠心分離する。
(3)上層の液体部分を取り除き、沈降成分の質量(a)を測定する。
(4)次いで、沈降成分を絶乾し、固形分の質量(b)を測定する。
(5)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2)[質量%]
但し、k1及びk2は下記の式を用いて算出して使用する。(ここで、k1:上層の液体部分に含まれる「微細繊維状セルロース」の量、k2:沈殿成分に含まれる「微細繊維状セルロース」の量、w1:上層の液体部分に含まれる水の量、w2:沈殿成分に含まれる水の量、s2:沈殿成分に含まれる「水溶性高分子+親水性物質」の量とする。)
k1=0.02−b+s2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース
=d/f[配合比率]
w1=19.98−a+b−0.02×d/f
w2=a−b
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
「水中で安定に懸濁する成分」の含有量が非常に多い場合は、沈降成分の重量が小さな値となるので、上記の方法では測定精度が低くなってしまう。その場合は(3)以降の手順を以下のようにして行う。
(3’)上層の液体部分を取得し、質量(a’)を測定する。
(4’)次いで、上層成分を絶乾し、固形分の質量(b’)を測定する。
(5’)下記の式を用いて「水中で安定に懸濁する成分」の含有量(c)を算出する。
c=5000×(k1+k2)[質量%]
但し、k1及びk2は下記の式を用いて算出して使用する。(ここで、k1:上層の液体部分に含まれる「微細繊維状セルロース」の量、k2:沈殿成分に含まれる「微細繊維状セルロース」の量、w1:上層の液体部分に含まれる水の量、w2:沈殿成分に含まれる水の量、s2:沈殿成分に含まれる「水溶性高分子+親水性物質」の量とする。)
k1=b’−s2×w1/w2
k2=k1×w2/w1
(水溶性高分子+親水性物質)/セルロース
=d/f[配合比率]
w1=a’−b’
w2=19.98−a’+b’−0.02×d/f
s2=0.02×d×w2/{f×(w1+w2)}
もし、(3)の操作で上層の液体部分と沈降成分の境界が明瞭ではなく分離が難しい場合は適宜セルロース濃度を下げて操作を行う。
<ゲル状組成物の破断強度>
ゲルを容器から取り出して底面を上にしてシャーレに乗せ、以下の条件で測定する。
装置:RHEO METER(NRM-2002J型)(不動工業株式会社製)
押し込み治具:10mmφ球状治具
押し込み速度:60mm/min
測定温度:25℃
<ゲル状組成物の耐熱性>
ゲルを容器から取り出して200℃に加熱したホットプレートに乗せ、10分間加熱し、ゲルが溶解せずに形状を維持しているか確認する。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
[実施例1]
(1)微細繊維状セルロース複合体αの製造:市販麦わらパルプ(平均重合度=930、α−セルロース含有量=68%)を、6×16mm角の矩形に裁断し、固形分濃度が77質量%になるように水を加えた。これを、水とパルプチップができるだけ分離しないよう注意して、カッターミル(インペラー回転数:3600rpm)に1回通し、セルロース濃度が2質量%、そしてカルボキシメチルセルロース・ナトリウム(以下CMC−Naと言う)の濃度が0.118質量%になるようにカッターミル処理品とCMC−Naと水を量り取り、繊維の絡みがなくなるまで撹拌した。
得られた水分散液をそのまま、高圧ホモジナイザー(処理圧力100MPa)で10パスし、セルローススラリーαを得た。このセルローススラリーαを、固形分濃度が0.25質量%の水分散液となるようにサンプルと純水を量り取り、「エクセルオートホモジナイザー」(日本精機株式会社製)で、15000rpmで15分間分散したものを、適当な濃度に調整した。光学顕微鏡及び中分解能SEMで観察したところ、長径が10〜500μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜200の微細繊維状セルロースが観察された。また結晶化度は、73%以上だった。
次いで、セルロース:CMC−Na:デキストリン:ナタネ油=64:17:18.7:0.3の質量比となるように、セルローススラリーαに、CMC−Na(1質量%水溶液粘度:約3400mPa・s)、デキストリン(DE:約28)、ナタネ油を添加し、15kgを攪拌型ホモジナイザー(プライミクス株式会社製、T.K.AUTO HOMO MIXER)で、8000rpmで10分間撹拌・混合した後、前述の高圧ホモジナイザーで20MPaで1パス処理し、これを「セルローススラリーα2」とした。これをドラムドライヤーにて乾燥し、スクレーパーで掻き取り、得られたものをカッターミル(不二パウダル株式会社製)で、目開き2mmの篩をほぼ全通する程度に粉砕し、微細繊維状セルロース複合体αを得た。微細繊維状セルロース複合体αの結晶化度は55%以上、損失正接は0.48、「水中で安定に懸濁する成分」は100質量%だった。光学顕微鏡にて観察したところ、長径が10〜800μm、短径が1〜25μm、長径/短径比が5〜200の繊維状のセルロースが観察された。また、「水中で安定に懸濁する成分」を高分解能SEMで観察したところ、長径が0.5〜10μm、短径が20〜100nm、長径/短径比が15〜200のきわめて微細な繊維状のセルロースが観察された。
上記で得られた微細繊維状セルロース複合体αを0.49質量%、グルコマンナン(清水化学株式会社製、微粒子タイプ)を0.21質量%配合して、かぼちゃゲルを試作した。
微細繊維状セルロース複合体α2.45g、グルコマンナン1.05g、水296.5g(25℃)を、約11000rpmの家庭用ミキサー(三洋電機株式会社製)に入れて5分間分散した。その中に冷凍かぼちゃを解凍して皮を取り除いたもの200gを入れて4分間分散し、得られたペースト状の液を、下部の内径45mm、上部の内径65mmのプラスチック容器に高さ約40mmになるまで約90g充填し、ヒートシール用のフィルムで蓋をした。
ゲルを容器に入れたまま80℃の熱水で30分加熱した後に、それぞれ以下の処理を行い、かぼちゃゲルを得た。ひとつは5℃で3日間冷蔵保存し、3個を家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で3日間冷凍保存した。さらに冷凍した3個を容器に入れたまま、それぞれ60℃の温水に4時間、80℃の熱水に1時間、100℃の沸騰水に15分漬ける処理をして解凍した。かぼちゃゲルを容器から出し、破断強度、離水状態、食した際の食感や味、耐熱性について評価した。結果を表1に示す。
Figure 2009261293
冷凍していないかぼちゃゲルは離水がなく、食感が滑らかで、かぼちゃの味もしっかりあり、嚥下障害者にも好ましい物性のゲルであった。しかしゲルをカットすると中が軟らかくゲル全体が崩れてしまった。冷凍後に80℃や100℃で処理したゲルは、冷凍していないゲルとほぼ変わらない良好な物性を示した。60℃で処理したゲルは、80℃や100℃で処理したゲルに比べるとやや劣るが、おおむね良好な物性を示した。これらはともに、カットしてもゲル全体が崩れずにカットした形状を維持していた。また冷凍していないかぼちゃゲルと比較して、いずれもゲル破断強度は5倍以下であった。
これらのかぼちゃゲルを200℃に加熱したホットプレートに乗せて10分焼いたところ、いずれもゲルが溶解せずにゲル形状を維持していて、耐熱性があることが分かった。
このように微細繊維状セルロース複合体とグルコマンナンから得られるゲルを冷解凍しても、60℃以上で加熱処理を行うことで、スポンジ状とならずに良好な物性を維持できた。
[比較例1]
80℃の熱水で30分加熱する工程までは実施例1と同じ方法で、かぼちゃゲルを試作した。その後、かぼちゃゲルを家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で3日間冷凍保存し、さらに冷凍したゲルを容器に入れたまま、それぞれ25℃の水中に6時間、40℃の水中に6時間漬ける処理をして解凍した。かぼちゃゲルを容器から出し、破断強度、離水状態、食した際の食感や味、耐熱性について評価した。結果を表2に示す。
Figure 2009261293
冷凍後に25℃や40℃で処理したゲルは離水が多く、シャクシャクとした粗い食感で固く、かぼちゃの味が殆どせずに水っぽかった。ゲルをさじで押すと水分を放出して体積が縮み、スポンジ状になっている様子であった。冷凍していないかぼちゃゲルと比較すると、いずれもゲル破断強度は10倍以上となった。
これらのかぼちゃゲルを200℃に加熱したホットプレートに乗せて10分焼いたところ、いずれもゲルが溶解しなかったが、離水を生じ体積が収縮してしまった。
[実施例2]
微細繊維状セルロース複合体αを0.49質量%、グルコマンナン(清水化学株式会社製、微粒子タイプ)を0.19質量%、キサンタンガム0.02質量%を配合する以外は、実施例1と同様にしてかぼちゃゲルを試作した。
つまり、微細繊維状セルロース複合体α2.45g、グルコマンナン0.95g、キサンタンガム0.1g、水296.5g(25℃)を、約11000rpmの家庭用ミキサー(三洋電機株式会社製)に入れて5分間分散した。その中に冷凍かぼちゃを解凍して皮を取り除いたもの200gを入れて4分間分散し、得られたペースト状の液を、下部の内径45mm、上部の内径65mmのプラスチック容器に高さ約40mmになるまで約90g充填し、ヒートシール用のフィルムで蓋をした。
ゲルを容器に入れたまま80℃の熱水で30分加熱した後に、それぞれ以下の処理を行い、かぼちゃゲルを得た。ひとつは5℃で3日間冷蔵保存し、3個は家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で3日間冷凍保存した。さらに冷凍した3個を容器に入れたまま、それぞれ60℃の温水に4時間、80℃の熱水に1時間、100℃の沸騰水に15分漬ける処理をして解凍した。かぼちゃゲルを容器から出し、破断強度、離水状態、食した際の食感や味、耐熱性について評価した。結果を表3に示す。
Figure 2009261293
冷凍していないかぼちゃゲルは離水がなく、食感が滑らかで、かぼちゃの味もしっかりあり、嚥下障害者にも好ましい物性のゲルであった。実施例1で試作したゲルよりも若干しっかりしているが、ゲルをカットすると中が軟らかくゲルが少し崩れてしまった。冷凍後に60℃、80℃、100℃で処理したゲルはいずれも、冷凍していないゲルとほぼ変わらない良好な物性を示した。これらはともに、カットしてもゲル全体が崩れずにカットした形状を維持していた。また冷凍していないかぼちゃゲルと比較して、いずれもゲル破断強度は5倍以下であった。
これらのかぼちゃゲルを200℃に加熱したホットプレートに乗せて10分焼いたところ、いずれもゲルが溶解せずにゲル形状を維持していて、耐熱性があることが分かった。
実施例1で得られたゲルと比較して、微細繊維状セルロース複合体とグルコマンナンにキサンタンガムを追加することで、ゲル全体の強度が向上し、離水抑制効果、冷解凍耐性が改善した。
[比較例2]
80℃の熱水で30分加熱する工程までは実施例2と同じ方法で、かぼちゃゲルを試作した。その後、かぼちゃゲルを家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で3日間冷凍保存し、さらに冷凍したゲルを容器に入れたまま、それぞれ25℃の水中に6時間、40℃の水中に6時間漬ける処理をして解凍した。かぼちゃゲルを容器から出し、破断強度、離水状態、食した際の食感や味、耐熱性について評価した。結果を表4に示す。
Figure 2009261293
冷凍後に25℃や40℃で処理したゲルは離水が多く、シャクシャクとした粗い食感で固く、かぼちゃの味が殆どせずに水っぽかった。ゲルをさじで押すと水分を放出して体積が縮み、スポンジ状になっている様子であった。冷凍していないかぼちゃゲルと比較すると、いずれもゲル破断強度は10倍以上となった。
これらのかぼちゃゲルを200℃に加熱したホットプレートに乗せて10分焼いたところ、いずれもゲルが溶解しなかったが、離水を生じ体積が収縮してしまった。
[実施例3]
微細繊維状セルロース複合体αを0.6質量%、ローカストビーンガムを0.38質量%、キサンタンガムを0.02質量%配合して、豚肉ゲルを試作した。
微細繊維状セルロース複合体α3g、ローカストビーンガム1.9g、キサンタンガム0.1g、デキストリン(DE:28)5g、水290g(25℃)を、約11000rpmの家庭用ミキサー(三洋電機株式会社製)に入れて5分間分散した。その中に缶詰の豚肉(調理済み)200gを入れて4分間分散し、得られたペースト状の液を、下部の内径45mm、上部の内径65mmのプラスチック容器に高さ約40mmになるまで約90g充填し、ヒートシール用のフィルムで蓋をした。
ゲルを容器に入れたまま80℃の熱水で30分加熱した後に、それぞれ以下の処理を行い、豚肉ゲルを得た。ひとつは5℃で3日間冷蔵保存し、3個は家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で3日間冷凍保存した。さらに冷凍した3個を容器から出して皿に乗せ、60℃の恒温槽に4時間、家庭用電子レンジの出力600Wで3分、家庭用電子オーブンの200℃で20分、の処理をして解凍した。ゲルの破断強度、離水・離油状態、食した際の食感や味、耐熱性について評価した。結果を表5に示す。
Figure 2009261293
冷凍していない豚肉ゲルは離水・離油がなく、食感が滑らかで、豚肉の味もしっかりあり、嚥下障害者にも好ましい物性のゲルであった。ゲルをカットすると中が軟らかくゲルが崩れてしまった。冷凍後に60℃、レンジ、オーブンで処理したゲルはいずれも、冷凍していないゲルとほぼ変わらない良好な物性を示した。これらはともに、カットしてもゲル全体が崩れずにカットした形状を維持していた。また冷凍していない豚肉ゲルと比較して、いずれもゲル破断強度は5倍以下であった。
これらの豚肉ゲルを200℃に加熱したホットプレートに乗せて10分焼いたところ、いずれもゲルが溶解せずにゲル形状をほぼ維持していて、耐熱性があることが分かった。
[比較例3]
80℃の熱水で30分加熱後に、家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で3日間冷凍保存する工程までは実施例3と同じ方法で、豚肉ゲルを試作した。その後、凍結したゲルを容器から出して皿に乗せ、室温に6時間、40℃の恒温槽に6時間置いて解凍した。ゲルの破断強度、離水状態、食した際の食感や味、耐熱性について評価した。結果を表6に示す。
Figure 2009261293
冷凍後に25℃や40℃で処理したゲルは離水・離油が多く、粗く不均一で食感が悪く、豚肉の味がうすく感じた。ゲルをさじで押すと水分や油分を放出して体積が縮み、スポンジ状になっている様子であった。冷凍していないかぼちゃゲルと比較すると、いずれもゲル破断強度は8倍以上であった。
これらの豚肉ゲルを200℃に加熱したホットプレートに乗せて10分焼いたところ、いずれもゲルが溶解しなかったが、離水・離油を生じ体積が収縮してしまった。
[実施例4]
微細繊維状セルロース複合体αを0.7質量%、グルコマンナン(清水化学株式会社製、微粒子タイプ)を0.25質量%、キサンタンガムを0.05質量%配合して、おかゆゲルを試作した。
微細繊維状セルロース複合体α3.5g、グルコマンナン1.25g、キサンタンガム0.25g、水295g(25℃)を、約11000rpmの家庭用ミキサー(三洋電機株式会社製)に入れて5分間分散した。その中に全がゆ(ご飯50%)200g(25℃)を入れて4分間分散し、得られたペースト状の液を、下部の内径45mm、上部の内径65mmのプラスチック容器に高さ約40mmになるまで約90g充填し、ヒートシール用のフィルムで蓋をした。
ゲルを容器に入れたままそれぞれ以下の処理を行い、おかゆゲルを得た。ひとつは80℃の熱水で30分加熱後に5℃で3日間冷蔵保存し、3個は家庭用冷凍冷蔵庫の冷凍庫(マイナス20℃)で3日間冷凍保存した。さらに冷凍した3個を容器に入れたまま、それぞれ60℃の恒温槽に4時間、100℃の沸騰水に15分、家庭用電子レンジの出力300Wで6分、の処理をして解凍した。ゲルの破断強度、離水状態、食した際の食感や味、耐熱性について評価した。結果を表7に示す。
Figure 2009261293
冷凍していないおかゆゲルは離水がなく、食感が滑らかで、おかゆの味もしっかりあり、嚥下障害者にも好ましい物性のゲルであった。ゲルをカットすると中が軟らかくゲルが崩れてしまった。冷凍後に60℃、100℃、レンジで処理したゲルはいずれも、冷凍していないゲルとほぼ変わらない良好な物性を示した。これらはともに、カットしてもゲル全体が崩れずにカットした形状を維持していた。
これらのおかゆゲルを200℃に加熱したホットプレートに乗せて10分焼いたところ、いずれもゲルが溶解せずにゲル形状を維持していて、耐熱性があることが分かった。
本発明の耐熱性ゲル状組成物は、離水が少なく滑らかで軟らかい食感を維持し、加熱処理によってもゲルが溶解せずに、かつ冷解凍耐性に優れる。そのため、冷凍流通・加熱調理ができる新しい嚥下障害者用の食品として提案することができる。
これらの性質は食品分野のみならず、医薬医療品、化粧品、工業製品等の分野においても、使用が可能である。

Claims (5)

  1. 0℃以下の温度でゲル状組成物を冷凍保存し、その後に60℃以上の温度で加熱処理することを含むことを特徴とする耐熱性ゲル状組成物の製造方法。
  2. 前記ゲル状組成物が、第1成分である微細繊維状セルロース50〜95質量%と水溶性高分子、親水性物質、又はそれらの混合物5〜50質量%とを含む微細繊維状セルロース複合体と、第2成分であるグルコマンナン、ガラクトマンナン、及びアルギン酸類からなる群から選択される少なくとも1種類の多糖類を含むゲル状組成物である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 第1成分である微細繊維状セルロース50〜95質量%と水溶性高分子、親水性物質、又はそれらの混合物5〜50質量%とを含む微細繊維状セルロース複合体と、第2成分であるグルコマンナン、ガラクトマンナン、及びアルギン酸類からなる群から選択される少なくとも1種類の多糖類を水性媒体に分散した後、0℃以下の温度で冷凍保存し、その後に60℃以上の温度で加熱処理することにより調製される耐熱性ゲル状組成物。
  4. 第3成分としてキサンタンガムを更に含有する、請求項3に記載の耐熱性ゲル状組成物。
  5. 請求項3又は4に記載の耐熱性ゲル状組成物及び食品素材を含有することを特徴とする食品。
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