JP2009258057A - 放射線像変換パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】耐湿保護膜形成後におけるパネル全面の輝度分布を任意に制御するための構造を備えた放射線像変換パネルを提供する。
【解決手段】放射線像変換パネル1は、支持体100と、放射線変換膜200と、耐湿保護膜300を備える。放射線変換膜200は、耐湿保護膜300の形成後の輝度分布変化を考慮し、予め中央エリア又は周辺エリアのいずれか一方のEu濃度を最適範囲に設定するとともに、他方のEu濃度を該最適範囲よりも低くするよう、又は高くするようEu濃度分布の勾配が与えられる。
【選択図】図1
【解決手段】放射線像変換パネル1は、支持体100と、放射線変換膜200と、耐湿保護膜300を備える。放射線変換膜200は、耐湿保護膜300の形成後の輝度分布変化を考慮し、予め中央エリア又は周辺エリアのいずれか一方のEu濃度を最適範囲に設定するとともに、他方のEu濃度を該最適範囲よりも低くするよう、又は高くするようEu濃度分布の勾配が与えられる。
【選択図】図1
Description
この発明は、入射された放射線を可視光に変換する、柱状結晶構造を有する放射線変換膜を備えた放射線像変換パネルに関するものである。
X線画像に代表される放射線画像は、従来から病気診断用などに広く用いられている。このような放射線画像を得る技術として、例えば、照射された放射線エネルギーを蓄積、記録する一方、励起光を照射することにより蓄積、記録された放射線エネルギーに応じて可視光を発する放射線変換膜を用いた放射線像の記録再生技術が広く実用化されている。
このような放射線像の記録再生技術に適用される放射線像変換パネルは、支持体と、該支持体の上に設けられた放射線変換膜を備える。放射線変換膜には、気相成長(堆積)により形成された柱状結晶構造を有する輝尽性蛍光体膜が知られている。輝尽性蛍光体層が柱状結晶構造を有する場合、輝尽励起光又は輝尽発光の横方向への拡散が効果的に抑制されるため(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができる。
例えば、特許文献1には、蛍光体層の膜厚方向に沿った、賦活剤の濃度分布を均一にすることにより、輝度ムラを低減しようとする技術が開示されている。一方、特許文献2には、蛍光体層における賦活剤の濃度分布を均一にすることにより、輝度ムラを低減しようとする技術が開示されている。
特開2003−028994号公報
特開2005−091146号公報
発明者らは、従来の放射線像変換パネルについて詳細に検討した結果、以下のような課題を発見した。
すなわち、従来の放射線像変換パネルは、支持体上に形成された蛍光体層の表面を耐湿保護膜で覆うことにより製造される。蛍光体層の成膜時には、発光に最適な濃度の賦活剤も添加されるが、耐湿保護膜形成後に輝度分布変化が生じてしまう。具体的には、蛍光体層周辺の輝度が中央付近の輝度に対して相対的に上昇してしまい、パネル全面に輝度ムラが生じてしまう。
上述の特許文献1及び特許文献2のいずれも、柱状結晶分布が均一ではないため、耐湿保護膜の形成後に輝度分布が変化してしまうという課題があった。また、耐湿保護膜形成後の放射線変換パネル全面における輝度分布を任意に制御する技術は未だ確立されていなかった。
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、耐湿保護膜の形成により生じる輝度分布変化を利用し、該耐湿保護膜形成後におけるパネル全面の輝度分布を任意に制御するための構造を備えた放射線像変換パネルを提供することを目的としている。
この発明に係る放射線像変換パネルは、発明者らが、耐湿保護膜の形成後にパネル全面の輝度分布が変化してしまうという当該放射線変換パネルの特性に着目したことにより完成されたものである。具体的に、この発明に係る放射線像変換パネルは、支持体と、該支持体上に形成された放射線変換膜と、該放射線変換膜を覆う耐湿保護膜を備える。支持体は、放射線変換膜が形成される第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する平行平板を含む。放射線変換膜は、支持体の第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に形成される。この放射線変換膜は、賦活剤としてEuが添加された輝尽性蛍光体層であり、第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成されている。耐湿保護膜は、支持体の第1主面に覆われた面を除く、放射線変換膜の露出面を覆う(透明有機膜)であるのが好ましい。
特に、この発明に係る放射線像変換パネルにおいて、放射線変換膜全域に亘って、Eu濃度は0.01wt%以上かつ0.5wt%以下の範囲、好ましくは0.01wt%以上かつ0.3wt%以下の範囲に設定されている。また、放射線変換膜におけるEu濃度分布は、重心位置上の放射線変換膜(中央エリア)から周辺エリアに向かって濃度勾配を持っている。
具体的には、第1主面における膜形成領域において、中央エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度が十分な発光が得られる最適範囲に設定されるか、周辺エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度が最適範囲に設定される。このとき、最適範囲は、0.01wt%以上かつ0.07wt%以下である。また、中央エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度が最適範囲に設定された場合、周辺エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度は、最適Eu濃度よりも高いEu濃度に設定されるか(第1濃度分布パターン)、逆に、最適Eu濃度よりも低いEu濃度に設定される(第2濃度分布パターン)ことで、放射線変換膜におけるEu濃度分布に濃度勾配を持たせる。一方、周辺エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度が最適範囲に設定された場合、中央エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度は、最適Eu濃度よりも高いEu濃度に設定されるか(第3濃度分布パターン)、逆に、最適Eu濃度よりも低いEu濃度に設定される(第4濃度分布パターン)ことで、放射線変換膜におけるEu濃度分布に濃度勾配を持たせてもよい。
なお、中央エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度よりも周辺エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度の方が相対的に低い場合、第1主面における膜形成領域において、中央エリアと周辺へリアに挟まれた中間エリア上に位置する放射線変換膜の重心から膜形成領域のエッジに向かう方向に沿ったEu濃度分布は単調減少しているのが好ましい。逆に、中央エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度よりも周辺エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度の方が相対的に高い場合、第1主面における膜形成領域において、中央エリアと周辺へリアに挟まれた中間エリア上に位置する放射線変換膜の重心から膜形成領域のエッジに向かう方向に沿ったEu濃度分布は単調増加しているのが好ましい。
上述の第1〜第4濃度分布パターンのうち、第1及び第2濃度分布パターンは、中央エリア上に位置する放射線変換膜の輝度を強調させる場合に効果的な濃度分布パターンである。一方、第3及び第4濃度分布パターンは、周辺エリア上に入りする放射線変換膜の輝度を強調する場合に効果的な濃度分布パターンである。
また、第1及び第3濃度分布パターンにおいて、周辺エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度は、中央エリア上に位置する放射線変換膜のEu濃度の0.3倍以上かつ0.8倍以下に設定されてもよい。この場合、放射線変換膜(支持体における第1表面の膜形成領域上に形成)を覆うように、耐湿保護膜が形成されることにより、製造された放射線変換パネル全面(耐湿保護膜形成後のパネル全面)の輝度分布を、パネル重心からパネルエッジに向かって平坦にすることが可能になる。
ここで、中央エリアとは、第1主面における膜形成領域において、半径が重心位置から該膜形成領域のエッジまでの最短距離の5%以下である該重心位置を中心とした領域で規定され、周辺エリアとは、半径が重心位置から膜形成領域のエッジまでの最短距離の40%以上80%以下である該重心位置を中心とした基準円の円周と膜形成領域のエッジで挟まれた領域で規定される。
なお、この発明に係る各実施例は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施例は単に例示のために示されるものであって、この発明を限定するものと考えるべきではない。
また、この発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施例を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、この発明の思想及び範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
上述のようにこの発明によれば、放射線変換膜に添加されるEu濃度分布は、該放射線変換膜の中央付近から周辺に向かって濃度勾配を持たせた種々の濃度分布パターンに設定される。このような種々のEu濃度分布パターンを用途に応じて選択することにより、放射線変換膜を覆う耐湿保護膜形成後の当該放射線変換パネル全面の輝度分布を任意に制御することが可能になる。
以下、この発明に係る放射線像変換パネルの各実施形態を、図1〜図11を参照しながら詳細に説明する。なお、図の説明において同一部位、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図1は、この発明に係る放射線像変換パネルの一実施形態の構造を示す図である。特に、図1(a)は、当該放射線像変換パネル1の平面図、図1(b)は、図1(a)中のI−I線に沿った当該放射線像変換パネル1の断面図、また、図1(c)は、図1(a)中のII−II線に沿った当該放射線像変換パネル1の断面図である。
図1において、放射線像変換パネル1は、支持体100と、該支持体100上に形成された放射線変換膜200と、支持体100及び放射線変換膜200を全体的に覆う保護膜(透明有機膜)を備える。支持体100は、放射線変換膜200が形成される第1主面100aと、該第1主面100aに対向する第2主面100bを有する平行平板である。放射線変換膜200は、支持体100の第1主面100aのうち少なくとも該第1主面100aの重心位置Gを含む膜形成領域R上に形成される。この放射線変換膜200は、第1主面100aの法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成されている。
図2は、この発明に係る放射線変換膜における各部の断面構造を示す図である。具体的に、図2(a)は、図1(c)における領域A1の断面図、図2(b)は、図1(c)における領域B1の断面図、図2(c)は、図1(c)における領域C1の断面図である。
これら図2(a)〜2(c)から分かるように、放射線変換膜200を構成する柱状結晶の結晶径D1〜D3は、いずれも略7μmであり、該放射線変換膜200全面に亘って略均一になっている。ただし、放射線変換膜200には活剤であるEuが添加されており、該放射線変換膜200の中央付近から周辺に向かって徐々にEu濃度が増加するよう該Euが添加されている。Eu濃度は、当該パネルの輝度落ち込みの抑制に寄与することが発明者らによって発見されたが、中央付近と比較して輝度落ち込みの激しい周辺においてEu濃度を高く設定しておくことにより、パネル全体として十分な蛍光寿命を維持することができる。
次に、図3を用いて、支持体100の第1主面100aにおける膜形成領域Rにおいて、該膜形成領域R上に形成される放射線変換膜200のEu濃度分布を規定するため、該膜形成領域Rの中央エリアAR1と周辺エリアAR2について説明する。図3は、支持体100の第1主面100a(膜形成領域R)における中央エリアAR1と周辺エリアAR2の特定方法を具体的に説明するための図である。
膜形成領域Rにおける中央エリアAR1は、重心位置Gを含む局所領域である。具体的には、重心位置Gからの離間距離が該重心位置Gから該膜形成領域Rのエッジまでの最短距離の5%となる重心位置Gを含む局所領域(半径が最短距離の5%となる重心位置Gを中心とした円の内側)である。一方、膜形成領域における周辺エリアAR2は、半径が重心位置Gから該膜形成領域Rのエッジまでの最短距離の40〜80%となる該重心位置Gを中心とした円の円周と、膜形成領域Rのエッジとで挟まれた局所領域である。なお、最短距離の5%となる半径はW0.05で表され、最短距離の40%となる半径はW0.4、最短距離の80%となる半径はW0.8で表される。
放射線変換膜200は、このように中央エリアAR1及び周辺エリアAR2が定義される第1主面100aの膜形成領域R上に形成されており、放射線変換膜200の中央付近と周辺は、図3で定義された中央エリアAR1及び周辺エリアAR2とそれぞれ実質的に一致した領域と考えてよい。
次に、図4は、この発明に係る放射線像変換パネルにおける放射線変換膜200を支持体100上に形成するための製造装置の構成を示すである。
この図4に示された製造装置10は、支持体100の第1主面100a上に放射線変換膜200を気相堆積法により形成する装置である。気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法等が適用可能であるが、一例として、蒸着法によりEuドープCsBrの放射線変換膜200を支持体100上に形成する場合について説明する。この製造装置10は、少なくとも、真空容器11と、支持体ホルダ14と、回転軸13aと、駆動装置13と、蛍光体蒸発源15a、15bと、真空ポンプ12を備える。支持体ホルダ14、蒸発源15、及び回転軸13aの一部は真空容器11内に配置される。支持体ホルダ14は、支持体100を加熱するためのヒータ14aを含む。駆動装置13から伸びた回転軸13aの一端は支持体ホルダ14に取り付けられており、駆動装置13が回転軸13aを介して支持体ホルダ14を回転させる。蛍光体蒸発源15a、15bは、いずれも真空容器11の中心軸AXからずれた位置に配置されており、支持体ホルダ14に設置される支持体100に蒸着される金属蒸気として供給される金属材料を保持する。真空ポンプ12は、真空容器11内を所定の真空度まで減圧する。
蛍光体蒸発源15a、15bには、いずれもCsBrとEuBrの混合材料がセットされているが、賦活剤としてのEu濃度は、蛍光体蒸発源15aよりも蛍光体蒸発源15bの方が高く設定されている。また、図4に示された製造装置10では、支持体100の中央エリアAR1から周辺エリアAR2に向かってEu濃度分布が負の濃度勾配を有するよう、蛍光体蒸発源15a、15bが配置されている(第1及び第3濃度分布パターン)。すなわち、蛍光体蒸発源15aは、軸AXから外れた位置から支持体100の周辺エリアAR2に金属蒸気流入方向が向くようセットされる一方、蛍光体蒸発源15bは、支持体100の中央エリアAR1に金属蒸気流入方向が向くようセットされている。支持体100が支持体ホルダ14にセットされる。支持体100の、蛍光体蒸発源15a、15bに対面した面上に形成される柱状結晶の結晶径は、ヒータ14aで支持体100自体の温度を調整することにより、また、真空容器11内の真空度や材料減15から支持体100への金属蒸気流入角度等を制御することにより、調整される。
まず、支持体100の第1主面100a(蛍光体蒸発源15a、15bに対面した面)にEuドープCsBrの柱状結晶を蒸着法によって成長させる。このとき、駆動装置13は、回転軸13aを介して支持体ホルダ14を回転させており、これにより支持体100も軸AXを中心に回転している。
このような蒸着法により、支持体100上に膜厚500μm±50μmの放射線変換膜200が形成される。このとき、放射線変換膜200における柱状結晶の結晶径は、3〜10μm程度である。また、中央エリアAR1上に位置する放射線変換膜200のEu濃度は周辺エリアAR2上に位置する放射線変換膜200のEu濃度よりも高くなるよう濃度勾配(負の呼応度勾配)が与えられる。このとき、放射線変換膜200全体としては、Eu濃度は0.01wt%〜0.5wt%に設定されているが、中央エリアAR1上に位置する放射線変換膜200及び周辺エリアAR2上に位置する放射線変換膜200のいずれかのEu濃度は、最適濃度範囲0.01wt%以上かつ0.07wt%以下に設定されている。また、周辺エリアAR2上に位置する放射線変換膜200のEu濃度は、中央エリアAR1上に位置する放射線変換膜200のEu濃度の0.3〜0.8倍になるよう設定されている。
上述のように支持体100上に形成された放射線像変換膜200をなすCsBrは、吸湿性が高い。この放射線変換膜200を露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまう。そこで、放射線変換膜200の蒸着法による形成工程に続いて、放射線変換膜200の露出面全体を覆うように、CVD法により耐湿保護膜300が形成される。すなわち、放射線像変換膜200が形成された支持体100をCVD装置に入れ、膜厚10μm程度の耐湿保護膜300が放射線変換膜200の露出面上に成膜される。これにより、放射線像変換膜200及び支持体100に耐湿保護膜300が形成された放射線像変換パネル1が得られる。
支持体100上に形成される放射線変換膜200におけるEu濃度制御は、図4に示されたような蛍光体蒸発源15a、15bの配置により実現される他、図5に示された配置によっても実現可能である。すなわち、図5に示された蛍光体蒸発源16a、16bによっても、上述のように中央エリアAR1から周辺エリアAR2に向かって放射線変換膜200に添加されるEu濃度分布に負の濃度勾配が与えられる。
真空容器11内には、図5に示されたように、軸AXから外れた位置に母材蒸発源16aと、賦活剤蒸発源16bが配置されてもよい。母材蒸発源16aにはCsBrがセットされ、賦活剤蒸発源16bにはEuBrがセットされる。また、母材蒸発源16aは、金属蒸気流入方向が中央エリアAR1と周辺エリアAR2に挟まれた中間エリアに向くようセットされる。賦活剤蒸発源16bは、金属蒸気流入方向が中心軸AXに一致するよう(支持体100に対して垂直になるよう)、セットされる。このように母材蒸発源16a及び賦活剤蒸発源16bが配置された場合でも、図4に示された製造装置10と同様に、Eu濃度制御が可能である(放射線変換膜200の中央から周辺に向かって負の濃度勾配が与えられる)。
一方、放射線変換膜200に対し、該放射線変換膜200の中央から周辺に向けて正の濃度勾配を与えることも可能である。この場合、図6及び図7に示されたような製造装置10により実現可能である。なお、図6に示された製造装置10は、実質的に図4に示された製造装置10と同じ構造を有するが、蛍光体蒸発源15a、15bの配置が異なる。
すなわち、蛍光体蒸発源15a、15bには、いずれもCsBrとEuBrの混合材料がセットされているが、賦活剤としてのEu濃度は、蛍光体蒸発源15aよりも蛍光体蒸発源15bの方が高く設定されている。また、図5に示された製造装置10では、支持体100の中央エリアAR1から周辺エリアAR2に向かってEu濃度分布が正の濃度勾配を有するよう、蛍光体蒸発源15a、15bが配置されている(第2及び第4濃度分布パターン)。すなわち、蛍光体蒸発源15aは、軸AXから外れた位置から支持体100の中央エリアAR1に金属蒸気流入方向が向くようセットされる一方、蛍光体蒸発源15bは、支持体100の周辺エリアAR2に金属蒸気流入方向が向くようセットされている。支持体100は支持体ホルダ14にセットされる。支持体100の、蛍光体蒸発源15a、15bに対面した面上に形成される柱状結晶の結晶径は、ヒータ14aで支持体100自体の温度を調整することにより、また、真空容器11内の真空度や材料減15から支持体100への金属蒸気流入角度等を制御することにより、調整される。
まず、支持体100の第1主面100a(蛍光体蒸発源15a、15bに対面した面)にEuドープCsBrの柱状結晶を蒸着法によって成長させる。このとき、駆動装置13は、回転軸13aを介して支持体ホルダ14を回転させており、これにより支持体100も軸AXを中心に回転している。
このような蒸着法により、支持体100上に膜厚500μm±50μmの放射線変換膜200が形成される。このとき、放射線変換膜200における柱状結晶の結晶径は、3〜10μm程度である。また、中央エリアAR1上に位置する放射線変換膜200のEu濃度は周辺エリアAR2上に位置する放射線変換膜200のEu濃度よりも低くなるよう濃度勾配(正の濃度勾配)が与えられる。このとき、放射線変換膜200全体としては、Eu濃度は0.01wt%〜0.5wt%に設定されているが、中央エリアAR1上に位置する放射線変換膜200及び周辺エリアAR2上に位置する放射線変換膜200のいずれかのEu濃度は、最適濃度範囲0.01wt%以上かつ0.07wt%以下に設定されている。
続いて、上述のように支持体100上に形成された放射線像変換膜200の露出面全体を覆うように、CVD法により耐湿保護膜300が形成される。すなわち、放射線像変換膜200が形成された支持体100をCVD装置に入れ、膜厚10μm程度の耐湿保護膜300が放射線変換膜200の露出面上に成膜される。これにより、放射線像変換膜200及び支持体100に耐湿保護膜300が形成された放射線像変換パネル1が得られる。
支持体100上に形成される放射線変換膜200におけるEu濃度制御は、図6に示されたような蛍光体蒸発源15a、15bの配置により実現される他、図7に示された配置によっても実現可能である。すなわち、図7に示された蛍光体蒸発源16a、16bによっても、上述のように中央エリアAR1から周辺エリアAR2に向かって放射線変換膜200に添加されるEu濃度分布に正の濃度勾配が与えられる。
真空容器11内には、図7に示されたように、軸AXから外れた位置に母材蒸発源16aと、賦活剤蒸発源16bが配置されてもよい。母材蒸発源16aにはCsBrがセットされ、賦活剤蒸発源16bにはEuBrがセットされる。また、母材蒸発源16aは、金属蒸気流入方向が中央エリアAR1と周辺エリアAR2に挟まれた中間エリアに向くようセットされる。賦活剤蒸発源16bは、金属蒸気流入方向が中心軸AXに平行にかつ支持体100から外れるよう、セットされる。このように母材蒸発源16a及び賦活剤蒸発源16bが配置された場合でも、図6に示された製造装置10と同様に、Eu濃度制御が可能である(放射線変換膜200の中央から周辺に向かって正の濃度勾配が与えられる)。
次に、発明者らは、放射線変換膜200の複数サンプルについて、中央からの距離に対するEu濃度(相対値)及び輝度(相対値)それぞれの関係について検討した。図8は、用意された第1サンプルの放射線像変換パネル(放射線変換膜)について、測定位置(重心位置からの離間距離)に対するEu濃度(相対値)及び輝度(相対値)それぞれの関係を示すグラフである。図9は、用意された第2サンプルの放射線像変換パネル(放射線変換膜)について、測定位置(重心位置からの離間距離)に対するEu濃度(相対値)及び輝度(相対値)それぞれの関係を示すグラフである。また、図10は、用意された第3サンプルの放射線像変換パネル(放射線変換膜)について、測定位置(重心位置からの離間距離)に対するEu濃度(相対値)及び輝度(相対値)それぞれの関係を示すグラフである。
図8(a)に示されたように、第1サンプルの放射線変換膜は、支持体の中央エリア上に位置する膜領域のEu濃度が最適範囲に設定されるとともに、該中央からから周辺に向かって負のEu濃度勾配が与えられている(第1濃度分布パターン)。このような第1サンプルの放射線変換膜は、図8(b)に示されたように、中央から周辺に向かって徐々に減少していくような輝度分布となる。このような第1濃度分布パターンを有する第1サンプルは、中央付近を強調したい場合に好適である。また、当該第1サンプルの表面に透明な耐湿保護膜が成膜された場合、パネル中央から周辺にかけてフラットな輝度分布が実現される。
第2サンプルの放射線変換膜は、図9(a)に示されたように、支持体の中央エリア上に位置する膜領域のEu濃度が最適範囲に設定されるとともに、該中央からから周辺に向かって正のEu濃度勾配が与えられている(第2濃度分布パターン)。このような第2サンプルの放射線変換膜も、図9(b)に示されたように、中央から周辺に向かって徐々に減少していくような輝度分布となる。このような第2濃度分布パターンを有する第2サンプルは、中央付近を強調したい場合に好適である。
さらに、第3サンプルの放射線変換膜は、図10(a)に示されたように、支持体の周辺エリア上に位置する膜領域のEu濃度が最適範囲に設定されるとともに、該中央からから周辺に向かって負のEu濃度勾配が与えられている(第3濃度分布パターン)。このような第3サンプルの放射線変換膜は、図10(b)に示されたように、中央から周辺に向かって徐々に減少していくような輝度分布となる。このような第3濃度分布パターンを有する第3サンプルは、パネル周辺を強調したい場合に好適である。また、当該第3サンプルの表面に透明な耐湿保護膜が成膜された場合、パネル中央から周辺にかけてフラットな輝度分布が実現される。
続いて、発明者らは賦活剤であるEuの最適範囲について検討した。図11は、図11は、Eu濃度(wt%)と輝度(相対値)との関係を示すグラフである。
この図11から分かるように、0.01wt%〜0.07wt%の範囲において、十分な輝度が得られる。このような最適範囲に設定された膜領域を基準に、正又は負の濃度勾配を放射線変換膜に与えることにより、耐湿保護膜形成後のパネル全面の輝度分布が任意に制御され得る。
以上の説明から、この発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、この発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
100…支持体、100a…第1主面、100b…第2主面、200…放射線変換膜、300…耐湿保護膜、R…膜形成領域、AR1…中央エリア、AR2…周辺エリア。
Claims (8)
- 第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する支持体と、
前記支持体の前記第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に設けられたEuが添加された放射線変換膜であって、該第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成された放射線変換膜と、
前記支持体の前記第1主面に覆われた面を除く、前記放射線変換膜の露出面を覆う耐湿保護膜とを備えた放射線像変換パネルであって、
前記放射線変換膜全域に亘って、Eu濃度は0.01wt%以上かつ0.5wt%以下の範囲内に設定されるとともに、
前記第1主面における前記膜形成領域において、半径が前記重心位置から該膜形成領域のエッジまでの最短距離の5%以下である該重心位置を中心とした中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が0.01wt%以上かつ0.07wt%以下の最適範囲内に設定される一方、半径が前記重心位置から前記膜形成領域のエッジまでの最短距離の40%以上80%以下である該重心位置を中心とした基準円の円周と前記膜形成領域のエッジで挟まれた周辺エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が前記中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度よりも低く設定された放射線変換パネル。 - 第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する支持体と、
前記支持体の前記第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に設けられたEuが添加された放射線変換膜であって、該第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成された放射線変換膜と、
前記支持体の前記第1主面に覆われた面を除く、前記放射線変換膜の露出面を覆う耐湿保護膜とを備えた放射線像変換パネルであって、
前記放射線変換膜全域に亘って、Eu濃度は0.01wt%以上かつ0.5wt%以下の範囲内に設定されるとともに、
前記第1主面における前記膜形成領域において、半径が前記重心位置から該膜形成領域のエッジまでの最短距離の5%以下である該重心位置を中心とした中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が0.01wt%以上かつ0.07wt%以下の最適範囲内に設定される一方、半径が前記重心位置から前記膜形成領域のエッジまでの最短距離の40%以上80%以下である該重心位置を中心とした基準円の円周と前記膜形成領域のエッジで挟まれた周辺エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が前記中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度よりも高く設定された放射線変換パネル。 - 第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する支持体と、
前記支持体の前記第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に設けられたEuが添加された放射線変換膜であって、該第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成された放射線変換膜と、
前記支持体の前記第1主面に覆われた面を除く、前記放射線変換膜の露出面を覆う耐湿保護膜とを備えた放射線像変換パネルであって、
前記放射線変換膜全域に亘って、Eu濃度は0.01wt%以上かつ0.5wt%以下の範囲内に設定されるとともに、
前記第1主面における前記膜形成領域において、半径が前記重心位置から前記膜形成領域のエッジまでの最短距離の40%以上80%以下である該重心位置を中心とした基準円の円周と前記膜形成領域のエッジで挟まれた周辺エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が0.01wt%以上かつ0.07wt%以下の最適範囲内に設定される一方、半径が前記重心位置から該膜形成領域のエッジまでの最短距離の5%以下である該重心位置を中心とした中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が前記周辺エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が前記中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度よりも低く設定された放射線変換パネル。 - 第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する支持体と、
前記支持体の前記第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に設けられたEuが添加された放射線変換膜であって、該第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成された放射線変換膜と、
前記支持体の前記第1主面に覆われた面を除く、前記放射線変換膜の露出面を覆う耐湿保護膜とを備えた放射線像変換パネルであって、
前記放射線変換膜全域に亘って、Eu濃度は0.01wt%以上かつ0.5wt%以下の範囲内に設定されるとともに、
前記第1主面における前記膜形成領域において、半径が前記重心位置から前記膜形成領域のエッジまでの最短距離の40%以上80%以下である該重心位置を中心とした基準円の円周と前記膜形成領域のエッジで挟まれた周辺エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が0.01wt%以上かつ0.07wt%以下の最適範囲内に設定される一方、半径が前記重心位置から該膜形成領域のエッジまでの最短距離の5%以下である該重心位置を中心とした中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が前記周辺エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度が前記中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度よりも高く設定された放射線変換パネル。 - 前記周辺エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度は、前記中央エリア上に位置する前記放射線変換膜のEu濃度の0.3倍以上かつ0.8倍以下であることを特徴とする請求項1又は3記載の放射線変換パネル。
- 前記第1主面における前記膜形成領域上に設けられた前記放射線変換膜のEu濃度は、0.01wt%以上かつ0.3wt%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載の放射線変換パネル。
- 前記第1主面における前記膜形成領域において、前記中央エリアと前記周辺へリアに挟まれた中間エリア上に位置する前記放射線変換膜の前記重心から前記膜形成領域のエッジに向かう方向に沿った前記Eu濃度分布は、単調減少していることを特徴とする1又は3記載の放射線変換パネル。
- 前記第1主面における前記膜形成領域において、前記中央エリアと前記周辺へリアに挟まれた中間エリア上に位置する前記放射線変換膜の前記重心から前記膜形成領域のエッジに向かう方向に沿った前記Eu濃度分布は、単調増加していることを特徴とする請求項2又は3記載の放射線変換パネル。
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