JP2009258056A - 放射線像変換パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】 パネル周辺の耐湿性改善を実現するための構造を備えた放射線像変換パネルを提供する。
【解決手段】 放射線像変換パネル(1)は、支持体(100)と、該支持体(100)上に形成された放射線変換膜(200)とを備える。放射線変換膜(200)は、支持体(100)の第1主面(100a)のうち少なくとも該第1主面(100a)の重心位置を含む膜形成領域(R)上に形成される。膜形成領域(R)の重心位置(G)にある中央測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径に対し、該膜形成領域(R)の周辺測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径が1.3倍以上に制御されることにより、パネル周辺の耐湿性が改善され、パネル全体として十分な蛍光寿命が維持される。
【選択図】 図1
【解決手段】 放射線像変換パネル(1)は、支持体(100)と、該支持体(100)上に形成された放射線変換膜(200)とを備える。放射線変換膜(200)は、支持体(100)の第1主面(100a)のうち少なくとも該第1主面(100a)の重心位置を含む膜形成領域(R)上に形成される。膜形成領域(R)の重心位置(G)にある中央測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径に対し、該膜形成領域(R)の周辺測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径が1.3倍以上に制御されることにより、パネル周辺の耐湿性が改善され、パネル全体として十分な蛍光寿命が維持される。
【選択図】 図1
Description
この発明は、入射された放射線を可視光に変換する、柱状結晶構造を有する放射線変換膜を備えた放射線像変換パネルに関するものである。
X線画像に代表される放射線画像は、従来から病気診断用などに広く用いられている。このような放射線画像を得る技術として、例えば、照射された放射線エネルギーを蓄積、記録する一方、励起光を照射することにより蓄積、記録された放射線エネルギーに応じて可視光を発する放射線変換膜を用いた放射線像の記録再生技術が広く実用化されている。
このような放射線像の記録再生技術に適用される放射線像変換パネルは、支持体と、該支持体の上に設けられた放射線変換膜を備える。放射線変換膜には、気相成長(堆積)により形成された柱状結晶構造を有する輝尽性蛍光体膜が知られている。輝尽性蛍光体層が柱状結晶構造を有する場合、輝尽励起光又は輝尽発光の横方向への拡散が効果的に抑制されるため(クラック(柱状結晶)界面において反射を繰り返しながら支持体面まで到達する)、輝尽発光による画像の鮮鋭性を著しく増大させることができる。
例えば、特許文献1には、気相堆積法によって支持体上に、支持体の法線方向に対し、一定の傾きを持った細長い柱状結晶を形成した輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルが提案されている。また、特許文献2には、輝尽性蛍光体層における柱状結晶径を、該輝尽性蛍光体層の中心から周辺に向けて等方的に分布させるとともに、それらの変動を抑制することで、より耐衝撃性に優れた均一な結晶径分布を実現する技術が提案されている。
特開平2−58000号公報
特開2005−98717号公報
発明者らは、従来の放射線像変換パネルについて詳細に検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、従来の放射線像変換パネルにおける放射線変換膜には、感度ムラを低減するとともにより高い解像度を得るため、柱状結晶径を小さくすることが要求されてきた。
しかしながら、支持体上に形成された放射線変換膜の周辺は、中心付近と比べて水分による影響で蛍光寿命が短い。そのため、平面的に分布する柱状結晶の結晶径自体を全面的にかつ均一に小さくすると、もともと耐湿性のよくない該放射線変換膜の周辺の耐湿性がさらに悪化するという課題があった。
この発明は上述のような課題を解決するためになされたものであり、パネル中央領域の解像度向上と該パネル周辺領域の耐湿性改善を実現するための構造を備えた放射線像変換パネルを提供することを目的としている。
この発明に係る放射線像変換パネルは、支持体と、該支持体上に形成された放射線変換膜とを備える。支持体は、放射線変換膜が形成される第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する平行平板を含む。放射線変換膜は、支持体の第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に形成される。この放射線変換膜は、Euが添加された輝尽性蛍光体層であり、第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成されている。
特に、この発明に係る放射線像変換パネルは、発明者らが、柱状結晶の結晶径が当該パネルの耐湿性に影響することを発見したことにより完成されたものである。具体的には、支持体の第1主面上に規定される膜形成領域の中央測定エリア上に存在する柱状結晶の平均結晶径に対し、該膜形成領域の周辺測定エリア上に存在する柱状結晶の平均結晶径を1.3倍以上に制御することにより、放射線変換膜周辺の耐湿性が改善される。そのため、放射線中央付近の解像度が高くなっても全体として蛍光寿命を十分に維持することが可能になる。
なお、膜形成領域における中央測定エリア及び周辺測定エリアのそれぞれは、最大幅1mm以下かつ最小幅40μm以上の電子顕微鏡の観察視野であって、少なくとも、10個以上の柱状結晶の列が5列以上存在する顕微鏡観察視野であるのが好ましい。また、この明細書において、平均結晶径とは、上記顕微鏡観察視野内に存在する柱状結晶のうち、1列が10個以上の柱状結晶で構成された3結晶列に含まれる、合計30個以上かつ1000個以下の柱状結晶の径平均を意味する。
膜形成領域における中央測定エリアは、支持体における第1主面の重心位置であるのが好ましいが、該重心位置の周辺であってもよい。すなわち、中央測定エリアは、重心位置からの離間距離が該重心位置から該膜形成領域のエッジまでの最短距離の5%以下となる膜形成領域のエリア(中央エリア)内に位置すればよい。一方、膜形成領域における周辺測定エリアは、重心位置からの離間距離が最短距離の60%となる位置に存在する。ただし、膜形成領域における周辺測定エリアも、半径が重心位置から幕形成領域のエッジまでの最短距離の60%である該重心位置を中心とした円の円周と、該膜形成領域のエッジで挟まれたエリア(周辺エリア)内に位置すればよい。
また、膜形成領域における中央測定エリアは、該膜形成領域の全面積に対して面積比が0.05以下となる重心位置を中心とする円で規定される、該膜形成領域の中央エリア内に位置してもよい。この場合、膜形成領域における周辺測定エリアは、該膜形成領域の全面積に対して面積比が0.36となる重心位置を中心とする円の円周と該該膜形成領域のエッジで挟まれた、該膜形成領域の周辺エリア内に位置してもよい。
理想的には、中央測定エリアと周辺測定エリアを結ぶ線分上に位置する1又はそれ以上の測定エリアそれぞれにおける平均結晶径は、該中央測定エリアから該周辺測定エリアに向かって単調増加している。少なくとも、中央測定エリアと周辺測定エリアを結ぶ線分の中間点に位置する測定エリアにおける平均結晶径は、該中央測定エリアにおける平均結晶径よりも大きくかつ該周辺測定エリアにおける平均結晶径よりも小さい。
この発明に係る放射線像変換パネルにおいて、膜形成領域の周辺測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径は、膜形成領域の中央測定エリア上に存在する柱状結晶の平均結晶径に対し、2.5倍以下であるのが好ましい。結晶径比が2.5倍を大きく超えると、中央測定エリアと周辺測定エリアの解像度差が大きくなりすぎ、パネル面の画像ムラや感度ムラが顕著になるからである。より好ましくは、膜形成領域の周辺測定エリア上に存在する柱状結晶の平均結晶径は、膜形成領域の中央測定エリア上に存在する柱状結晶の平均結晶径に対し、2.0倍以下、さらに好ましくは1.6倍以下である。
さらに、この発明に係る放射線像変換パネルは、支持体の第1主面に覆われた面を除く、放射線変換膜の露出面を覆う耐湿保護膜(透明有機膜)を備えてもよい。
なお、この発明に係る各実施例は、以下の詳細な説明及び添付図面によりさらに十分に理解可能となる。これら実施例は単に例示のために示されるものであって、この発明を限定するものと考えるべきではない。
また、この発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明から明らかになる。しかしながら、詳細な説明及び特定の事例はこの発明の好適な実施例を示すものではあるが、例示のためにのみ示されているものであって、この発明の思想及び範囲における様々な変形および改良はこの詳細な説明から当業者には自明であることは明らかである。
上述のようにこの発明は、柱状結晶の結晶径が支持体の膜形成領域の中央エリアよりも周辺エリアの方が大きくなるよう、該膜形成領域上に放射線変換膜が形成される。そのため、当該放射線変換パネルにおける中央付近の解像度を向上させたとしても周辺の耐湿性が改善されるので、全体として十分な蛍光寿命が維持される。
以下、この発明に係る放射線像変換パネルの各実施形態を、図1〜図7を参照しながら詳細に説明する。なお、図の説明において同一部位、同一要素には同一符号を付して重複する説明を省略する。
図1は、この発明に係る放射線像変換パネルの一実施形態の構造を示す図である。特に、図1(a)は、当該放射線像変換パネル1の平面図、図1(b)は、図1(a)中のI−I線に沿った当該放射線像変換パネル1の断面図、また、図1(c)は、図1(a)中のII−II線に沿った当該放射線像変換パネル1の断面図である。
図1において、放射線像変換パネル1は、支持体100と、該支持体100上に形成された放射線変換膜200と、支持体100及び放射線変換膜200を全体的に覆う保護膜(透明有機膜)を備える。支持体100は、放射線変換膜200が形成される第1主面100aと、該第1主面100aに対向する第2主面100bを有する平行平板である。放射線変換膜200は、支持体100の第1主面100aのうち少なくとも該第1主面100aの重心位置Gを含む膜形成領域R上に形成される。この放射線変換膜200は、第1主面100aの法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成されている。
図2は、この発明に係る放射線変換膜における各部の断面構造及び表面顕微鏡写真を示す図である。具体的に、図2(a)は、図1(c)における領域A2の断面図、図2(b)は、図1(c)における領域B2の断面図、図2(c)は、図1(c)における領域C2の断面図である。また、図2(d)は、図1(b)における領域A1の顕微鏡平面写真、図2(e)は、図1(b)における領域B1の顕微鏡平面写真、図2(f)は、図1(b)における領域C1の顕微鏡平面写真である。
これら図2(a)〜2(f)から分かるように、放射線変換膜200を構成する柱状結晶の結晶径は、該放射線変換膜200の中央付近から周辺に向かって徐々に拡大している。具体的には、第1主面100a上に規定される膜形成領域Rの重心位置Gにおける中央測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径に対し、該膜形成領域Rの周辺測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径は1.3倍以上である。このように、放射線変換膜200の中央付近よりも周辺における柱状結晶の結晶径を大きくしておくことにより、該放射線変換膜200の周辺における耐湿性が改善され、パネル全体として十分な蛍光寿命を維持することができる。
具体的に、図2(a)及び2(d)に示された柱状結晶の結晶径W1は、約4μmである。図2(b)及び2(e)に示された柱状結晶の結晶径W2は、約6μmである。図2(c)及び2(f)に示された柱状結晶の結晶径W3は、約10μm(W1に対する結晶径比は2.5倍)である。ただし、膜形成領域Rの周辺測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径は、膜形成領域Rの中央測定エリア上に存在する柱状結晶の平均結晶径に対し、2.5倍以下であるのが好ましい。より好ましくは、膜形成領域Rの周辺測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径は、膜形成領域Rの中央測定エリア上に位置する柱状結晶の平均結晶径に対し、2.0倍以下、さらに好ましくは1.6倍以下である。このように、結晶径比が放射線変換膜200の中央付近と周辺の解像度差が大きくなりすぎると、パネル面の画像ムラや感度ムラが顕著になるからである。
次に、図3を用いて、平均結晶径を比較する中央測定エリアと周辺測定エリアについて説明する。図3は、支持体100の第1主面100a上における中央測定エリアと周辺測定エリアの特定方法を具体的に説明するための図である。
具体的な特定方法としては、図3(a)及び3(b)に示されたように、2種類ある。まず、第1特定方法では、図3(a)に示されたように、膜形成領域Rにおける中央測定エリアは、支持体100における第1主面100aの重心位置Gにある。一方、膜形成領域における周辺測定エリアは、重心位置からの離間距離が重心位置Gから該膜形成領域Rのエッジまでの最短距離の60%となる位置(半径が最短距離の60%となる重心位置Gを中心とした円の円周上)に存在する。
なお、この図3(a)の第1特定方法においても、膜形成領域Rにおける中央測定エリアは、支持体100における第1主面100aの重心位置Gの周辺であってもよい。すなわち、中央測定エリアは、重心位置Gからの離間距離が該重心位置Gから該膜形成領域Rのエッジまでの最短距離の5%となる膜形成領域Rの中央エリアAR1内(半径が最短距離の5%となる重心位置Gを中心とした円の内側)に位置すればよい。一方、膜形成領域Rにおける周辺測定エリアは、半径が最短距離の60%となる重心位置Gを中心とした円の円周と、膜形成領域Rのエッジで挟まれたエリアAR2内に位置すればよい。
また、図3(b)の第2特定方法でも、膜形成領域Rにおける中央測定エリアは、重心位置Gであればよいが、該重心位置Gの周辺であってもよい。具体的に、中央測定エリアは、膜形成領域Rの全面積に対して面積比が0.05となる重心位置Gを中心とする円で規定されるエリアAR1(中央エリア)内に位置してもよい。一方、膜形成領域Rにおける周辺測定エリアは、該膜形成領域の全面積に対して面積比が0.36となる重心位置Gを中心とする円の円周と該該膜形成領域Rのエッジで挟まれた、該膜形成領域Rの周辺エリア内に存在してもよい。
図3(a)及び3(b)のいずれの特定方法においても、最小の平均結晶径を有する測定エリアは、膜形成領域Rの中央エリアAR1内に存在する。
次に、図4は、この発明に係る放射線像変換パネルにおける放射線変換膜を支持体上に形成するための製造装置の構成を示すである。
この図4に示された製造装置10は、支持体100の第1主面100a上に放射線変換膜200を気相堆積法により形成する装置である。気相堆積法としては、蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法等が適用可能であるが、一例として、蒸着法によりEuドープCsBrの放射線変換膜200を支持体100上に形成する場合について説明する。この製造装置10は、少なくとも、真空容器11と、支持体ホルダ14と、回転軸13aと、駆動装置13と、蒸発源15と、真空ポンプ12を備える。支持体ホルダ14、蒸発源15、及び回転軸13aの一部は真空容器11内に配置される。支持体ホルダ14は、支持体100を加熱するためのヒータ14aを含む。駆動装置13から伸びた回転軸13aの一端は支持体ホルダ14に取り付けられており、駆動装置13が回転軸13aを介して支持体ホルダ14を回転させる。蒸発源15は、真空容器11の中心軸AXからずれた位置に配置されており、支持体ホルダ14に設置される支持体100に蒸着される金属蒸気として供給される金属材料を保持する。真空ポンプ12は、真空容器11内を所定の真空度まで減圧する。
蒸発源15には、CsBrとEuBrの混合材料がセットされるとともに、支持体100が支持体ホルダ14にセットされる。支持体100の、蒸発源15に対面した面上に形成される柱状結晶の結晶径は、ヒータ14aで支持体100自体の温度を調整することにより、また、真空容器11内の真空度や材料減15から支持体100への金属蒸気流入角度等を制御することにより、調整される。
まず、支持体100の第1主面100a(蒸発源15に対面した面)にEuドープCsBrの柱状結晶を蒸着法によって成長させる。このとき、駆動装置13は、回転軸13aを介して支持体ホルダ14を回転させており、これにより支持体100も軸AXを中心に回転している。
このような蒸着法により、支持体100上に膜厚500μm±50μmの放射線変換膜200が形成される。このとき、放射線変換膜200の中央付近(軸AXを中心とした局所領域)における柱状結晶の結晶径は、4μm程度である。また、放射線変換膜200の周辺における柱状結晶の結晶径は、10μm程度である(図2参照)。
上述のように支持体100上に形成された放射線像変換膜200をなすCsBrは、吸湿性が高い。この放射線変換膜200を露出したままにしておくと空気中の水蒸気を吸湿して潮解してしまう。そこで、放射線変換膜200の蒸着法による形成工程に続いて、放射線変換膜200の露出面全体を覆うように、CVD法により耐湿保護膜300が形成される。すなわち、放射線像変換膜200が形成された支持体100をCVD装置に入れ、膜厚10μm程度の耐湿保護膜300が放射線変換膜200の露出面上に成膜される。これにより、放射線像変換膜200及び支持体100に耐湿保護膜300が形成された放射線像変換パネル1が得られる。
次に、上述のように蒸着法及びCVD法により得られた放射線像変換パネル1のサンプルにおける平均結晶径の測定方法について説明する。図5は、平均結晶径の測定方法を説明するための図である。また、図6は、平均結晶径の測定位置と重心位置Gからの離間距離との関係を説明するための表である。
支持体100の第1主面100aに規定される膜形成領域Rにおける測定エリアは、図5に示されたように、最大幅1mm以下かつ最小幅40μm以上の電子顕微鏡の観察視野であって、少なくとも、10個以上の柱状結晶の列が5列以上存在する柱状結晶群の電子顕微鏡観察視野から、該測定エリア上に存在する柱状結晶の平均結晶径が計算される。
具体的には、上述のようなサイズの測定エリア上に存在する柱状結晶群の電子顕微鏡写真が取得されると、この取得された電子顕微鏡写真に、図5に示されたような3本の平行線L1〜L3が引かれる。線L1〜L3ごとに、これら線L1〜L3が通る柱状結晶の数がそれぞれカウントされ、一つの線の平均結晶数が求められる。続いて、各線L1〜L3の長さが、求められた平均結晶数で割られることにより、一つの測定エリアにおける平均結晶径が得られる。
また、図6において、測定位置φ0は、重心位置G(=W0)を示す(重心位置Gからの離間距離Wが該重心位置Gから膜形成領域Rのエッジまでの最短距離Wminに対して0%)。測定位置φ150は、重心位置Gからの離間距離Wが重心位置Gから膜形成領域Rのエッジまでの最短距離Wminに対して30%(=W0.3)、測定位置φ200は、重心位置Gからの離間距離Wが重心位置Gから膜形成領域Rのエッジまでの最短距離Wminに対して40%(=W0.4)、測定位置φ250は、重心位置Gからの離間距離Wが重心位置Gから膜形成領域Rのエッジまでの最短距離Wminに対して50%(=W0.5)、測定位置φ300は、重心位置Gからの離間距離Wが重心位置Gから膜形成領域Rのエッジまでの最短距離Wminに対して60%(=W0.6)、そして、測定位置φ450は、重心位置Gからの離間距離Wが重心位置Gから膜形成領域Rのエッジまでの最短距離Wminに対して90%(=W0.9)を示す。
図7は、この発明に係る放射線像変換パネルとして用意されたサンプル(サンプルNo.1〜No.3)と、比較例に係る放射線像変換パネルとして用意されたサンプル(サンプルNo.4〜No.5)について、諸元を纏めた表である。
図7(a)〜(c)及び(e)には、サンプルNo.1〜No.3ぞれぞれの放射線変換膜について、測定位置(φ0〜φ450)ごとに測定エリアにおけるサンプリング結晶数、平均個数、平均結晶数、平均結晶径D(なお、図7では単に結晶径と表記されている)、及び結晶径比を示す。ここで、サンプリング結晶数は、図5に示されたように、取得された電子顕微鏡写真上に引かれた線L1〜L3それぞれを通る結晶数である。平均個数は、線L1〜L3それぞれを通る結晶数の平均である。平均結晶数は、線L1〜L3それぞれの長さを平均個数で割ることにより得られた値である。結晶径比は、測定位置φ0における平均結晶径を1としたときの各測定位置における平均結晶径の比率である。
また、図7(d)には、比較例のサンプルNo.4及びNo.5それぞれの放射線変換膜について、測定位置(φ0〜φ450)ごとに測定エリアにおける結晶径比を示す。
サンプルNo.1〜No.3それぞれの放射線変換膜は、いずれも測定位置φ0における測定エリアの平均結晶径に対し、測定位置φ300における測定エリアの平均結晶径比が1.3以上である。また、測定位置φ300よりも重心位置Gから離れた周辺エリア(測定位置φ450を含む)でも、測定エリアの平均結晶径比は1.3以上である。ただし、図7(e)のサンプルについては、測定位置φ300における測定エリアの平均結晶径比は1.3以上になっているが、測定位置φ450における測定エリアの平均結晶径比1.3を大きく下回っている。大面積のパネルとして使用される場合には、このように、最も外側に位置する領域では、蛍光寿命が短くなったとしても実用上問題とはならない。
一方、比較例のサンプルNo.4及びNo.5の放射線変換膜は、いずれの測定位置φ0~φ450においても、平均結晶径比は、1.3を大きく下回っている。
図8は、上述のような結晶径分布を有するサンプルNo.1〜No.5の放射線変換膜について、測定位置と平均結晶径比(図8では単に結晶径比と表記されている)の関係を示すグラフである。なお、図8において、グラフG810はサンプルNo.2の平均結晶径比の距離分布、グラフG820はサンプルNo.1の平均結晶径比の距離分布、グラフG830はサンプルNo.3の平均結晶径比の距離分布、グラフG840は比較例に係るサンプルNo.4の平均結晶径比の距離分布、グラフG850は比較例に係るサンプルNo.5の平均結晶径比の距離分布をそれぞれ示す。
また、図9は、用意されたサンプルNo.1〜No.5の放射線変換膜について、それらの蛍光寿命の評価結果を示す表である。具体的な蛍光寿命評価は、温度25℃、湿度50%の環境下で1ヶ月間(720時間)使用したサンプルの輝度値を測定することにより行われる。この際、測定された輝度値が初期の輝度値に対して80%以上維持されているサンプルが評価○、80%以下であっても実用上許容可能であるサンプルが評価△、実用上許容できない程度まで輝度値が低下したサンプルが評価×で表されている。
サンプルNo.1〜No.3の放射線変換膜では、測定位置φ300(=W0.6)の測定エリアにおける平均結晶径比が1.3以上であり、いずれも放射線変換膜周辺において蛍光寿命の劣化は見られない。逆に、比較例に係るサンプルNo.4及びNo.5の放射線変換膜では、測定位置φ300(=W0.6)の測定エリアにおける平均結晶径比が1.3を大きく下回っており、いずれも放射線変換膜周辺において蛍光寿命の劣化が見られた。このように、支持体100の第1主面100a上に規定される膜形成領域Rの中央測定エリア(測定位置φ0の測定エリア)上に存在する柱状結晶の平均結晶径に対し、該膜形成領域Rの周辺測定エリア(測定位置φ300の測定エリア)上に存在する柱状結晶の平均結晶径を1.3倍以上に制御することにより、当該放射線像変換パネルの耐湿性を改善することが可能になる。
なお、図8から分かるように、重心位置Gに相当する測定位置φ0と測定位置φ300を結ぶ線分の中間点(測定位置φ150)に位置する測定エリアにおける平均結晶径は、測定位置φ0の測定エリアにおける平均結晶径よりも大きく、かつ、測定位置φ300の測定エリアにおける平均結晶径よりも小さい。理想的には、測定位置φ0から測定位置φ250(又はφ300)までを結ぶ線分上に位置する1又はそれ以上の測定エリアそれぞれの平均結晶径は単調増加するのが好ましい。また、平均結晶径が最大となる測定エリアは、測定位置φ200(=W0.4)〜φ400(=W0.8)の間にあるのが好ましい。
一方で、膜形成領域Rの周辺測定エリア(測定位置φ300の測定エリア)上に位置する柱状結晶の平均結晶径は、膜形成領域Rの中央測定エリア(測定位置φ0の測定エリア)上に存在する柱状結晶の平均結晶径に対し、2.5倍以下であるのが好ましい。結晶径比が大きくなりすぎると、放射線変換膜の中央付近と周辺の解像度差が大きくなりすぎ、パネル面の画像ムラや感度ムラが顕著になるからである。
以上の説明から、この発明を様々に変形しうることは明らかである。そのような変形は、この発明の思想および範囲から逸脱するものとは認めることはできず、すべての当業者にとって自明である改良は、以下の請求の範囲に含まれるものである。
この発明に係る放射線変換像パネルは、He−Neレーザや光電子増倍管と組み合わされることにより放射線イメージセンサを構成することが可能であり、このような放射線イメージセンサが、医療、工業分野におけるX線撮影等へ適用される。
100…支持体、100a…第1主面、100b…第2主面、200…放射線変換膜、300…保護膜、R…膜形成領域、AR1…中央エリア、AR2…周辺エリア。
Claims (7)
- 第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する支持体と、
前記支持体の前記第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に設けられた放射線変換膜であって、該第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成された放射線変換膜とを備えた放射線像変換パネルであって、
前記第1主面における前記膜形成領域において、前記重心位置を含む最大幅1mm以下の中央測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径に対し、該重心位置からの離間距離が該重心位置から該膜形成領域のエッジまでの最短距離の60%である最大幅1mm以下の周辺測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径は、1.3倍以上である放射線像変換パネル。 - 第1主面と、該第1主面に対向する第2主面を有する支持体と、
前記支持体の前記第1主面のうち少なくとも該第1主面の重心位置を含む膜形成領域上に設けられた放射線変換膜であって、該第1主面の法線方向に一致するか、あるいは所定角度の傾きを持った柱状結晶により構成された放射線変換膜とを備えた放射線像変換パネルであって、
前記第1主面における前記膜形成領域において、前記重心位置を含む最大幅1mm以下の中央測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径に対し、該第1主面における該膜形成領域の全面積に対する面積比が0.36となる前記重心位置を中心とする円の円周上に位置する最大幅1mm以下の周辺測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径は、1.3倍以上である放射線像変換パネル。 - 前記中央測定エリアと前記周辺測定エリアを結んだ線分の中間点に位置する、最大幅1mm以下である測定エリアにおける平均結晶径は、前記中央測定エリアにおける平均結晶径よりも大きくかつ前記周辺測定エリアにおける平均結晶径よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線像変換パネル。
- 前記中央測定エリア及び前記周辺測定エリアのそれぞれは、少なくとも、10個以上の柱状結晶の列が5列以上存在する電子顕微鏡の観察視野であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の放射線像変換パネル。
- 前記周辺測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径は、前記中央測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径に対し、2.5倍以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載の放射線像変換パネル。
- 前記周辺測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径は、前記中央測定エリア上に存在する前記柱状結晶の平均結晶径に対し、2.0倍以下であることを特徴とする請求項5記載の放射線像変換パネル。
- 前記支持体の前記第1主面に覆われた面を除く、前記放射線変換膜の露出面を覆う保護膜をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載の放射線像変換パネル。
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