JP2009255567A - プレコートアルミニウム板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミニウム板2(アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板)の表面に、無機系抗菌剤5を含有する樹脂皮膜3を有するプレコートアルミニウム板1であって、無機系抗菌剤5が、リン酸ジルコニウム微粒子および/または二酸化ケイ素微粒子からなる微粒子担体6に、銀および/または亜鉛を担持してなる、平均粒子径が1μmを超える無機系抗菌剤5であり、樹脂皮膜3中の無機系抗菌剤5の含有率が、0.1質量%以上15質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
また、特許文献2の抗菌性耐熱塗装金属板に用いられるポリエーテルサルフォン樹脂は、エンジニアリングプラスチックとして使用されるものであり、塗料として皮膜化することは容易ではなく、実用化できてもコストは高いと考えられる。また抗菌剤についても複数の成分を所定比率で焼成させる必要があるため、製造方法に手間がかかりコストも上昇すると考えられる。
さらに、より望ましい形態として、高い抗菌性を有し、コスト的にも優れるとともに、絞り加工のような変形の大きい成形も可能な、より優れたプレス成形性を有するプレコートアルミニウム板を提供することにある。
さらに、無機系抗菌剤の平均粒子径および樹脂皮膜中の無機系抗菌剤の含有率を所定に規定することで、絞り加工のような変形の大きい成形も可能な、より優れたプレス成形性を有するものとなる。
図1に示す本発明のプレコートアルミニウム板1は、アルミニウム板(アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板)2の表面に形成された樹脂皮膜3を有するものである。
樹脂皮膜3は、皮膜を形成する樹脂マトリックス4中に無機系抗菌剤5が分散して含有されるものである。そして、無機系抗菌剤5は、微粒子担体6に抗菌成分(銀および/または亜鉛)7が担持されてなるものである。
このプレコートアルミニウム板1において、無機系抗菌剤5は、樹脂皮膜3を形成する樹脂マトリックス4の表面から出来るだけ多く露出していることが望ましいが、一部が埋没していても問題は無い。
また、本発明のプレコートアルミニウム板1において、無機系抗菌剤5を含む樹脂皮膜3は、アルミニウム板2の片面のみを被覆するものでもよいし、アルミニウム板2の両面を被覆するものでもよい。
本発明で用いられるアルミニウム板2は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるものである。例えば、1000系の工業用純アルミニウム、3000系のAl−Mn系合金、5000系のAl−Mg系合金が使用可能である。特に、絞り加工やしごきを行う場合にはJIS H4000に規定するA1050、A1100、A3003、A3004が推奨される。また、強度が望まれる用途に使用する場合には、A5052やA5182が推奨される。調質、板厚については特に制限はなく、目的に応じて種々の調質、板厚を選択することができる。
このアルミニウム板2は、樹脂皮膜3の接着性を向上させる下地処理をすることが望ましい。この下地処理としては、Cr、ZrまたはTiを含有する従来公知の皮膜による被覆が利用できる。例えば、リン酸クロメート皮膜、クロム酸クロメート皮膜、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型クロメート皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜等を適宜使用することができる。また必要に応じてこれらに有機成分を含有させても良い。なお、近年の環境への配慮の観点から六価クロムを含まないリン酸クロメート皮膜や、リン酸ジルコニウム皮膜、酸化ジルコニウム皮膜、リン酸チタン皮膜、塗布型ジルコニウム皮膜等を使用することが望ましい。この下地処理によるCr、ZrまたはTiのアルミニウム板2への付着量(Cr、ZrまたはTi換算値)は、例えば、従来公知の蛍光X線法を用いて比較的簡便かつ定量的に測定することができる。そのため、生産性を阻害することなくアルミニウム板2の品質管理を行うことができる。この下地処理による皮膜の付着量としては、Cr、ZrまたはTi換算値で10〜50mg/m2程度が望ましい。付着量が10mg/m2未満であると、アルミニウム板2の全面を均一に被覆することができず、耐食性が低下する。また、付着量が50mg/m2を超えると、下地処理の皮膜自体に割れが生じやすくなる。
本発明のプレコートアルミニウム板1において、樹脂皮膜3は、抗菌剤を担持する役割を担うとともに、成形性や耐食性等を付与するために設けられるものである。この樹脂皮膜3は、生産性やコストを考慮すると、ロールコーターにて連続塗装が可能であり、焼付け炉にて20〜60秒程度の短時間焼付けを行えるものが望ましい。この樹脂皮膜3の樹脂マトリックス4の具体例として、エポキシ系樹脂皮膜、ポリエステル系樹脂皮膜、ウレタン系樹脂皮膜、アクリル系樹脂皮膜、塩ビゾル系樹脂皮膜等が挙げられる。これらの中でも、変形量が大きい絞り加工やしごき加工を行う場合には、ポリエステル系の樹脂皮膜が望ましく、また、変形量が小さい加工で樹脂皮膜3とアルミニウム板2の間の高い密着性が求められる場合や、高い耐熱性が求められる場合には、エポキシ系の樹脂皮膜が望ましい。さらに、それぞれの樹脂は硬化剤と組み合わせても良く、アミノ硬化ポリエステル系樹脂、イソシアネート硬化ポリエステル系樹脂、メラミン硬化ポリエステル系樹脂、フェノール硬化エポキシ系樹脂、ユリア硬化エポキシ系樹脂等を利用すると、耐熱性と密着性が向上するのでさらに望ましい。またアクリル変性エポキシ樹脂やウレタン変性ポリエステル樹脂等の変性樹脂も好適に使用できる。
本発明のプレコートアルミニウム板1において、樹脂皮膜3に分散させて優れた抗菌性を発揮する無機系抗菌剤5は、高い成形性が得られる250℃で焼き付けても分解しない耐熱性を有するものであり、焼結等の複雑な製法を伴わない、抗菌成分と担体の組み合わせからなるシンプルな抗菌剤である。この無機系抗菌剤5は、微粒子担体6に抗菌成分7が固定化されたものである。抗菌成分7としては、銀および/または亜鉛が用いられ、銀または亜鉛が単独で微粒子担体6に固定化されていてもよいし、銀と亜鉛が微粒子担体6の表面に固定化されていてもよい。また、微粒子担体6として、リン酸ジルコニウム微粒子および/または二酸化ケイ素微粒子が用いられる。中でも、微粒子担体6として、塗料への分散性が良いリン酸ジルコニウム微粒子が望ましい。なお、銀を抗菌成分とする無機系抗菌剤5であっても担体がリン酸カルシウム(アパタイト)である場合、本発明の比較例で示したように所要の抗菌性を得ることができないため、抗菌成分7と微粒子担体6との組み合わせが重要である。また、有機系の抗菌剤を使用する場合も、本発明の比較例に示すように樹脂皮膜3の形成時の加熱によって分解して抗菌性を得ることができない。
以下の実験においては、プレコートアルミニウム板における樹脂皮膜の種類(樹脂成分)および膜厚、無機系抗菌剤の抗菌成分および微粒子担体、無機系抗菌剤の平均粒子径、ならびに樹脂皮膜中の無機系抗菌剤の含有率について検討した。そして、高いプレス成形性確保を想定し、樹脂皮膜の焼付温度は265℃とした。
第1実施例では、本発明におけるプレコートアルミニウム板について、本発明の必須の目的である抗菌性について調べた。
(アルミニウム板の下地処理)
JIS規定の5052−H34のアルミニウム合金板(厚さ0.5mm)を使用し、樹脂皮膜とアルミニウム合金板との密着性及び耐食性を向上させるための下地処理としてリン酸クロメート処理を施し、両面にCr換算で20mg/m2のリン酸クロメート皮膜を形成した。
表1に示すとおり、銀および/または亜鉛がリン酸ジルコニウム微粒子および/または二酸化ケイ素微粒子を担体として固定化された、平均粒子径1μmを超える無機系抗菌剤が所定の含有率となるように、表1に示す樹脂成分に混合して、塗料を調製した。このとき、塗料の粘度は、溶剤添加量によって調整した。
各実験No.において、ロールコーターを用いて、塗料をアルミニウム板に塗布して、焼付温度265℃、加熱時間30秒間で加熱して焼付処理して、表面に、表1に示す膜厚を有する樹脂皮膜を有するプレコートアルミニウム板を製作した。
実験No.1〜22で得られたプレコートアルミニウム板のそれぞれについて、黄色ブドウ球菌および大腸菌を用いた抗菌試験を実施した。抗菌試験は、JIS Z2801に準拠して、フィルム密着法によって行った。具体的には、菌液0.4mlを、プレコートアルミニウム板から切り出した試験片(抗菌加工試験片:50×50mm)の表面に滴下し、ポリエチレンフィルム(40×40mm)を被せ、34〜36℃、RH90%以上で24時間保存した後、生菌数を測定した。また、抗菌剤を含まない樹脂皮膜で被覆されているアルミニウム板から切り出した試験片(無加工試験片:50×50mm)についても、抗菌試験を行った。
B:無加工試験片の24時間後の生菌数
C:抗菌加工試験片の24時間後の生菌数
表1に、実験No.1〜22のプレコートアルミニウム板の抗菌成分、担体、粒子径(平均粒子径)、樹脂皮膜中への含有率、個数比率、樹脂皮膜の種類と厚さ、黄色ブドウ球菌と大腸菌に対する抗菌性評価結果を示す。なお、表1中の「−」は、個数比率を測定していないものである。
なお、粒子径は、無機系抗菌剤を水系溶媒に分散させた状態で、レーザー回折式粒度分布測定器で測定した積算体積50%粒子径である(以下、同様である)。
また、個数比率は、SEM観察において、加速電圧以外の条件(ピント、明るさ、コントラスト等)は同一条件とし、加速電圧のみを変え、倍率は、2000倍として測定した(以下、同様である)。
実験No.1〜22の対照として、実験No.23〜33のプレコートアルミニウム板を製造した。実験No.23〜33のプレコートアルミニウム板の製造は、以下に述べる点を除いて、実験No.1〜22と同様にして行った。
このように、本発明の構成を満たせば、抗菌性に優れたプレコートアルミニウム板となることがわかる。
第2実施例では、本発明におけるプレコートアルミニウム板について、さらに望ましい形態について調べるため、絞り成形性について調べた。なお、この特性は、本発明としてはあくまで望ましい特性に過ぎないため、この特性を満たさない場合でも、通常のプレス成形性に優れ、第1実施例の抗菌性を満たしているものは、本発明の最低限の目的は達するものである。
実験No.34〜44のプレコートアルミニウム板を製造し、絞り成形試験を実施した。実験No.34〜44のプレコートアルミニウム板の製造は、JIS規定の1100−Oのアルミニウム合金板(厚さ0.3mm)を使用した点を除いて、実験No.1〜22と同様にして行った。
実験No.34〜44で得られたプレコート板について、塗装面が外側になるように円筒絞り試験を行った。円筒絞り試験は1工程の単発絞り加工であり、ブランクサイズ:90×90mm角、しわ押さえ力:1t、ポンチサイズ:直径φ50mm、ポンチ肩R:5mm、ダイスサイズ:53.9mm、ダイス肩R:5mm、絞り加工高さ:25mm、潤滑油:軽質鉱物油と油性剤からなる市販の速乾性プレス油、の条件で試験実施した。
2 アルミニウム板
3 樹脂皮膜
4 樹脂マトリックス
5 無機系抗菌剤
6 微粒子担体
7 抗菌成分
Claims (3)
- アルミニウム板もしくはアルミニウム合金板の表面に、無機系抗菌剤を含有する樹脂皮膜を有するプレコートアルミニウム板であって、
前記無機系抗菌剤が、リン酸ジルコニウム微粒子および/または二酸化ケイ素微粒子からなる微粒子担体に、銀および/または亜鉛を担持してなる、平均粒子径が1μmを超える抗菌剤であり、
前記樹脂皮膜中の無機系抗菌剤の含有率が、0.1質量%以上15質量%以下であることを特徴とするプレコートアルミニウム板。 - 前記無機系抗菌剤の平均粒子径が1μmを超え8μm以下であり、前記樹脂皮膜の厚さが2μm以上14μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のプレコートアルミニウム板。
- 前記樹脂皮膜中の無機系抗菌剤の平均粒子径が1μmを超え5μm未満であり、前記樹脂皮膜中の無機系抗菌剤の含有率が0.1質量%以上8質量%未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレコートアルミニウム板。
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