ところで、図5に示す公知例の電気炊飯器では、底部発熱体35は均一厚さでかなりの面積(幅)を有しており、該底部発熱体35が底部ワークコイル41で電磁誘導加熱されたときに、底部発熱体35における幅中央部分が幅外周寄り部分より強く加熱されるようになる。即ち、底部発熱体35の発熱量は、発熱材料の量が多い場所ほど多くなり、上記のように発熱材料が均一厚さの底部発熱体35では、その中央部付近に加熱が集中しするようになる。
従って、図5に示す公知例の電気炊飯器では、内鍋3が内ケース14に対して水平方向に位置ずれしたときでも、底部ワークコイル41が底部発熱体35からはみ出ることはないが、内鍋3の底部において加熱分布が部分的に集中すると加熱ムラが発生して、その加熱集中部分(底部発熱体35の幅中央部分)に対応する米飯に焦げが発生し易くなるという問題があった。
そこで、本願発明は、内鍋に非金属材料製のもの(土鍋)を使用した電磁誘導加熱式の電気炊飯器において、内鍋の寸法や形状等にバラツキがあったり、あるいは内鍋の収容位置がずれた場合でも、該内鍋を可及的に均一加熱し得るようにすることを目的としてなされたものである。
本願発明は、上記従来の問題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、電磁誘導加熱式の電気炊飯器(いわゆるIH炊飯器)を対象にしている。
[本願請求項1の発明]
本願請求項1の発明は、炊飯器本体内に非金属材料製の内鍋を収容し、該内鍋の底部に電磁誘導により発熱する底部発熱体を設け、炊飯器本体内に底部発熱体を電磁誘導加熱する底部ワークコイルを設けた電気炊飯器において、底部発熱体には、その幅方向の所定位置に発熱材料の量が異なる部位を設けているとともに、底部ワークコイルの幅を底部発熱体に対応する位置において底部発熱体の幅より広くしていることを特徴としている。
この請求項1の電気炊飯器に使用される内鍋は、土鍋と称されている陶磁器製であり、陶磁材料で成形した後、高温で焼成して製作されている。従って、この種の土鍋では、収縮率が異なったり歪み変形したりすることにより、各個の寸法や形状にバラツキが生じることがある。
内鍋の底部に設けられる底部発熱体としては、電磁誘導により発熱する発熱材料であれば適宜のものが採用できるが、近年のものでは銀ペーストを貼設(又は塗布)したものが多用されている。又、内鍋の底部中央部には、温度センサーが当接される関係で、底部発熱体は、中心部に空間部(発熱体のない部分)を有した円形環状(ドーナツ状)に設置される。
ところで、底部発熱体の発熱量は、発熱材料の量(銀ペーストを使用した場合は銀の量)に比例するが、該発熱材料の厚さが均一であると、幅方向の中央部寄り部分が内外端部寄り部分より発熱量が多くなり、底部発熱体の幅方向の部位によって加熱ムラが生じるようになる(炊飯ムラが生じて、米飯が部分的に焦げることがある)。
そこで、本願請求項1では、底部発熱体の幅方向の所定位置に発熱材料の量(銀ペーストを使用した場合は銀の量)が異なる部位を設けて、内鍋底部を均一加熱し得るようにしている。底部発熱体における発熱材料の量を変化させる形態としては、底部発熱体の幅方向の一部(例えば幅方向中央寄り位置)の発熱材料の量を少なくしたり、あるいは部分的(例えば幅方向中央寄り位置)に発熱材料のない範囲を設けたりしたものが採用できる。尚、以下の説明では、底部発熱体における発熱材料の量が異なる部分を便宜上、凹凸部分と表現することがある。
他方、内鍋が非金属材料製(陶磁器製)であると、該内鍋に寸法や形状のバラツキが生じ易くなり、内鍋を炊飯器本体内に収容したときに、該内鍋側の底部発熱体の中心が炊飯器本体側の底部ワークコイルの中心からずれることがある。そして、このように底部発熱体の中心が炊飯器本体側の底部ワークコイルの中心から位置ずれして、該底部発熱体の一部(外周縁又は内周縁)が底部ワークコイルの外周縁又は内周縁から水平方向にはみ出すと、炊飯時の内鍋底部に対する加熱分布が片寄ってしまい、炊飯ムラの原因になる。
そこで、本願請求項1では、炊飯器本体側の底部ワークコイルの幅を底部発熱体に対応する位置において該底部発熱体の幅より広くしており、それによって内鍋側の底部発熱体の中心が炊飯器本体側の底部ワークコイルの中心に対して若干位置ずれしても、該底部発熱体が全幅に亘って底部ワークコイルの幅からはみ出ない(底部発熱体が底部ワークコイルに対して完全重合する)ようにしている。このように、底部発熱体が全幅に亘って底部ワークコイルの幅からはみ出ないようにすると、幅方向に凹凸部分を設けた底部発熱体が底部ワークコイルに対して位置ずれしても、該底部発熱体の発熱量が全周に亘って均一になる。
因に、内鍋側の底部発熱体と炊飯器本体側の底部ワークコイルとの関係において、単に上下重合関係を確保するだけであれば、底部ワークコイルの幅を底部発熱体の幅より狭くすることも考えられるが、その場合は、底部発熱体が底部ワークコイルに対して位置ずれすると、該底部発熱体が高温発熱する部分(底部ワークコイルが対向する範囲)が内鍋底部の中心から水平方向にずれてしまう。又、本願請求項1のように底部発熱体としてその幅方向に凹凸部分を設けたものでは、底部発熱体が底部ワークコイルに対して位置ずれすると、該底部発熱体の全体幅内に底部ワークコイルが完全重合している場合でも、底部発熱体の幅方向に凹凸部分(発熱材料の量が異なる部位)があることにより底部ワークコイルの単位面積当たりに対向する底部発熱体側の発熱材料の量が変化するようになる。従って、底部ワークコイルの幅を該底部発熱体の幅より狭くしたものでは、幅方向に凹凸部分がある底部発熱体を使用すると、該底部発熱体が底部ワークコイルに対して位置ずれした場合には、内鍋底部に対する加熱分布が異なる部分ができ、炊飯ムラが生じる原因になるという問題がある。
[本願請求項2の発明]
本願請求項2の発明は、上記請求項1に記載の電気炊飯器において、内鍋としてその底部と側周部との間に湾曲部を設けたものを使用し、該湾曲部に電磁誘導により発熱する湾曲部発熱体を設け、炊飯器本体内に湾曲部発熱体を電磁誘導加熱する湾曲部ワークコイルを設けているとともに、湾曲部発熱体は発熱材料が均一厚さのものを使用していることを特徴としている。
このように、内鍋の湾曲部に湾曲部発熱体を設け、炊飯器本体内に該湾曲部発熱体を電磁誘導加熱する湾曲部ワークコイルを設けると、上記請求項1のように内鍋の底部を上記底部発熱体で加熱し得るとともに、内鍋の湾曲部からも湾曲部発熱体により加熱できる。従って、土鍋のように熱伝達率の悪い内鍋であっても、内鍋の広範囲の面積部分から加熱できる。
又、上記のように陶磁器製の内鍋では、寸法や形状にバラツキが生じ易い関係で、該内鍋を炊飯器本体内に収容したときに、内鍋側の湾曲部発熱体から炊飯器本体側の湾曲部ワークコイルまでの距離が異なる部分が生じることがある。他方、湾曲部ワークコイルで発生する磁界は、十数mmまで到達することが確認されている。従って、内鍋を炊飯器本体内に収容した状態で、湾曲部発熱体から湾曲部ワークコイルまでの距離に若干差があっても(その距離の長い部分でも)、ワークコイル側からの磁界が十分に到達するとともに、湾曲部発熱体として均一厚さのものを使用しているので、該湾曲部発熱体は全周に亘って均一に加熱されるようになる。
[本願請求項3の発明]
本願請求項3の発明は、上記請求項2に記載の電気炊飯器において、湾曲部発熱体の幅を湾曲部ワークコイルの幅より広くしていることを特徴している。
この請求項3の場合は、湾曲部発熱体の幅を湾曲部ワークコイルの幅より広くしているが、このようにすると、内鍋を炊飯器本体内に収容したときに該内鍋が多少位置ずれしても、内鍋側の湾曲部発熱体に対して炊飯器本体側の湾曲部ワークコイルの全幅が完全重合するようになる。
又、湾曲部発熱体の幅を広くすると、その分、内鍋湾曲部の広面積部分を加熱することができる。
[本願請求項1の発明の効果]
本願請求項1の発明の電気炊飯器では、次のような効果がある。
まず、内鍋の底部に設けた底部発熱体として、幅方向の所定位置に発熱材料の量が異なる部位(凹凸部分)を設けたものを使用すると、該底部発熱体の凹凸部分の厚さを内鍋底部に対して均一加熱し得るように設定でき、それによって炊きムラのないおいしい米飯を炊き上げることができる。即ち、図5に示す従来例のように、底部発熱体に均一厚さのものを使用した場合には、底部発熱体の幅方向中央寄り部分が過度に加熱されて、内鍋内における過度に加熱される部分が対応する米飯部分に焦げが発生するおそれがあるが、本願のように底部発熱体の幅方向の所定位置に発熱材料の量が異なる部位(凹凸部分)を設けることにより、内鍋底部を均一加熱し得る。
又、本願請求項1では、炊飯器本体側の底部ワークコイルの幅を底部発熱体に対応する位置において該底部発熱体の幅より広くしていることにより、内鍋側の底部発熱体の中心が炊飯器本体側の底部ワークコイルの中心に対して位置ずれしても、該底部発熱体が全幅に亘って底部ワークコイルの幅からはみ出ない(底部発熱体が底部ワークコイルに対して完全重合する)。従って、上記のように、幅方向に発熱材料の量が異なる部位(凹凸部分)を設けた底部発熱体を使用したものであって、該底部発熱体が底部ワークコイルに対して若干位置ずれしても、底部発熱体の発熱量が全周に亘って均一になり、それによって内鍋底部を均一加熱できるので炊飯ムラのないおいしい米飯が炊けるという効果がある。
[本願請求項2の発明の効果]
本願請求項2の発明では、上記請求項1の電気炊飯器において、内鍋の湾曲部に湾曲部発熱体を設け、炊飯器本体内に該湾曲部発熱体に対面する湾曲部ワークコイルを設けているので、内鍋の底部を上記底部発熱体により加熱し得るとともに、内鍋の湾曲部からも湾曲部発熱体で加熱できる。従って、この請求項2のものでは、上記請求項1の効果に加えて、内鍋の広範囲の面積部分から加熱でき、炊飯ムラのないより一層おいしい米飯が炊けるという効果がある。
又、この請求項2の発明では、上記湾曲部発熱体として発熱材料が均一厚さのものを使用しているので、内鍋を炊飯器本体内に収容した状態で湾曲部発熱体から湾曲部ワークコイルまでの距離に若干差があっても、該湾曲部発熱体が均一に加熱され、内鍋の湾曲部を全周に亘って均一に加熱できるという効果がある。
[本願請求項3の発明の効果]
本願請求項3の発明は、上記請求項2に記載の電気炊飯器において、湾曲部発熱体の幅を湾曲部ワークコイルの幅より広くしているので、内鍋を炊飯器本体内に収容したときに該内鍋が多少位置ずれしても、内鍋側の湾曲部発熱体に対して炊飯器本体側の湾曲部ワークコイルの全幅が完全重合するようになる。従って、この請求項3のものでは、上記請求項2の効果に加えて、湾曲部ワークコイルからの磁界が無駄なく湾曲部発熱体に伝達されるので、電力効率が良好になるという効果がある。
又、湾曲部発熱体の幅を広くすると、その分、内鍋湾曲部の広面積部分を加熱することができるので、米飯をより均一に炊き上げることができる。
以下、図1〜図4を参照して本願実施形態を説明すると、図1〜図2には本願第1実施形態の電気炊飯器を示し、図3〜図4には同第2実施形態の電気炊飯器を示している。又、図1〜図2の第1実施形態の電気炊飯器は、本願の請求項1に対応するものであり、図3〜図4の第2実施形態の電気炊飯器は、本願の請求項1と請求項2と請求項3に対応するものである。
[図1〜図2の第1実施形態]
この第1実施形態の電気炊飯器は、図1に示すように、炊飯器本体1の上部に蓋体2を載置しているとともに、炊飯器本体1の内部に内鍋3を出し入れ自在に収納している。尚、炊飯器本体1は、外装体10と内ケース14とを有している。
外装体10は、金属製の外ケース11の下部に合成樹脂製の底部材12を組付ける一方、該外ケース11の上部に合成樹脂製の肩部材13を組付けて構成されている。尚、外ケース11と底部材12、及び外ケース11と肩部材13は、それぞれ無理嵌めして結合されている。
肩部材13の下面には肩ヒータ17が設けられている。
内ケース14は、この第1実施形態では、底壁14aと側周壁14bとを合成樹脂材料で一体成形したものを使用している。この内ケース14は、図示しない固定ビスで底部材12に固定されている。又、内ケース14の底壁14aの中央部には、内鍋3の底部の温度を検出する温度センサー15を挿通させるための穴14cが形成されている。内ケース底壁14aの外周寄り上面には、周方向の3箇所にシリコン材からなる受座18が埋め込まれている。
内鍋3は、非金属材料製で陶磁器製のもの(土鍋)が使用されている。この内鍋3は、内ケース14の側周壁14bの内径より僅かに小径の外径を有し、該内ケース14内に出し入れ自在に収容される。
この第1実施形態(図1)で使用されている内鍋3は、底部31と側周部33との間に小長さ範囲の湾曲部32を設けて構成されている。内鍋底部31の外周寄り部分には、小高さの環状突起(高台)34が形成されている。そして、この第1実施形態で使用されている内鍋3では、高台34の内方部分が内鍋底部31となり、従って該内鍋底部31はかなりの大面積を有している。
この内鍋3は、内ケース14内に収容された際に、その高台34が上記3箇所の受座18上に載置されるようになっている。
ところで、この内鍋(土鍋)3は、陶磁材料で成形した後、高温で焼成して製作されているが、この種の土鍋3では、収縮率が異なったり歪み変形したりすることにより、各個の寸法や形状にバラツキが生じることがある。
蓋体2は、外蓋21と、該外蓋21の下面部に設けた内蓋22とを有している。外蓋21には、調圧弁24付きの蒸気抜き通路23が形成されている。又、外蓋21内には蓋ヒータ25が設けられている。
そして、この蓋体2は、炊飯器本体1の後側上部において図示しないヒンジユニットで枢支されていて、前部側が弧回動開閉されるようになっている。
尚、図1において符号9は把手であり、該把手9は左右の軸部を中心にして上下に弧回動させ得るようになっている。
この第1実施形態の電気炊飯器では、炊飯器本体1内に設けた底部ワークコイル41からの磁界により、内鍋3の底部31に設けた底部発熱体35を電磁誘導加熱することで、内鍋3を底部31から加熱するようにしている。
底部発熱体35は、図2(A),(B)に詳細表示するように、内鍋底部31の下面に設置されている。尚、図2(A)は内鍋3の底部31付近の断面図であり、図2(B)は内鍋底部31の下面に設置された底部発熱体35の下面図である。
底部発熱体35は、電磁誘導により発熱する発熱材料であれば適宜のものが採用できるが、この第1実施形態では、銀ペーストをスクリーン印刷によって貼設(又は塗布)したものを使用している。尚、図2(A)においては、理解し易くするために底部発熱体35の厚さをかなり厚く表示しているが、実際には底部発熱体35として銀ペーストをスクリーン印刷する場合には極薄に設置される。
内鍋3の底部中央部には、温度センサー15(図1)が当接される関係で、底部発熱体35は、図2(A),(B)に詳細表示するように、中心部に発熱体のない空間部35cを有した円形環状(ドーナツ状)で、内鍋底部31の中心と同心位置に設置している。尚、この第1実施形態では、内鍋3は底部発熱体35のみで加熱するようにしている関係で、該底部発熱体35はかなり大面積(幅D3の環状面積)の範囲に設けており、内鍋底部31のみに発熱体を設けたものであっても、炊飯に必要な発熱量を確保できるようにしている。
底部ワークコイル41は、内ケース14の底部14aの下面側における底部発熱体35に対向する位置に円形環状(ドーナツ状)の形態で設置されている。尚、この底部ワークコイル41は、内ケース底部14aの中心と同心位置に設置している。
内ケース底部14aの上面には遮熱板19が設けられており、該遮熱板19で底部発熱体35からの輻射熱が底部ワークコイル41側に伝わるのを阻止するようにしている。
ところで、底部発熱体35の発熱量は、発熱材料の量(銀の量)に比例するが、該発熱材料の厚さが均一であると、幅方向の中央部寄り部分が内外端部寄り部分より発熱量が多くなり、底部発熱体35の幅方向の部位によって加熱ムラが生じるようになる(炊飯ムラが生じて、米飯が部分的に焦げることがある)。
そこで、この第1実施形態のものでは、図2(A),(B)に示すように、底部発熱体35の幅方向の所定位置に発熱材料の量(銀の量)が異なる部位を設けて、発熱時に内鍋底部31を均一加熱し得るようにしている。即ち、この第1実施形態では、底部発熱体35の全幅D3における中央寄りの所定幅D4の範囲を薄肉部35A(厚さT1)とする一方、該薄肉部35Aの内外両周囲部分をそれぞれ厚肉部35B,35B(厚さT2)としている。この薄肉部35Aと厚肉部35B,35Bの範囲及び厚さは、底部発熱体35の発熱時に内鍋底部31を均一加熱し得るように設定される。尚、以下の説明では、底部発熱体35における薄肉部35Aと厚肉部35B,35Bの形成部分を便宜上、凹凸部分と表現することがある。
底部発熱体35における凹凸部分(薄肉部35Aと厚肉部35B,35B)の形成は、スクリーン印刷を2回に分けて行うことで達成できる。即ち、1回目のスクリーン印刷によって全幅D3の範囲に発熱材料(銀ペースト)を薄肉部35Aの厚さT1だけ貼設した後、2回目のスクリーン印刷によって薄肉部35Aとする所定幅D4を除く内外両周囲部分に追加厚さ(T2−T1)だけ貼設することで、凹凸部分を形成できる。
尚、この第1実施形態では、底部発熱体35の幅方向に薄肉部35Aと厚肉部35B,35Bとを設けているが、他の実施形態形態では、上記薄肉部35Aを発熱材料のない部分とすることもできる。その場合は、発熱材料のない部分の幅D4を狭くしたり、発熱材料のある部分(各厚肉部35B,35Bに相当する部分)の厚さを調整して、内鍋底部31を均一加熱し得るように設定する。
他方、内鍋3が土鍋であると、その成形過程や焼成過程において該内鍋3に寸法や形状のバラツキが生じ易くなり、内鍋3を内ケース14内に収容したときに、該内鍋3側の底部発熱体35の中心が炊飯器本体1側の底部ワークコイル41の中心から位置ずれすることがある。そして、このように底部発熱体35の中心と底部ワークコイル41の中心とが位置ずれして、該底部発熱体35の一部(外周縁35a又は内周縁35b)が底部ワークコイル41の外周縁41a又は内周縁41bから水平方向にはみ出すと、炊飯時の内鍋底部31に対する加熱分布が片寄ってしまい、炊飯ムラの原因になる。
そこで、この第1実施形態では、内鍋3を内ケース14内に収容した状態で、底部ワークコイル41の幅d3を底部発熱体35の幅D3より広くしている(幅d3>幅D3)。即ち、図2(A),(B)に示すように、底部ワークコイル41の外周縁41aが底部発熱体35の外周縁35aより外側に位置する一方、底部ワークコイル41の内周縁41bが底部発熱体35の内周縁35bより内側に位置するように設計している。
この第1実施形態の電気炊飯器(特に炊飯時の加熱機構)は、次のように機能する。
炊飯時には、図1に示すように米及び水を入れた内鍋3を内ケース14内に収容して、底部ワークコイル41に通電する。すると、該底部ワークコイル41からの磁界で内鍋3側の底部発熱体35が電磁誘導により発熱し、該底部発熱体35の発熱により内鍋3をその底部31から加熱するようになる。
そのとき、底部発熱体35には、幅方向に発熱材料の量が異なる凹凸部分(薄肉部35Aと厚肉部35B,35B)を設けて、内鍋底部31を均一加熱し得るようにしているので、炊き上がり時において米飯底部が部分的に焦げることがなくなり、米飯の炊き上がり状態が良好になる。
ところで、内鍋3が土鍋の場合は、内鍋3の寸法や形状にバラツキがあって内鍋3の底部中心が内ケース底部14aの中心にうまく合致しないことがあり、その場合には、底部発熱体35の中心が底部ワークコイル41の中心から若干位置ずれすることになる。ところが、この第1実施形態の電気炊飯器では、底部ワークコイル41の幅d3を底部発熱体35に対応する位置において該底部発熱体35の幅D3より広くしており、それによって底部発熱体35の中心が底部ワークコイル41の中心に対して若干位置ずれしても、該底部発熱体35が全幅D3に亘って底部ワークコイル41の幅d3からはみ出ない(底部発熱体35が底部ワークコイル41に対して完全重合している)。このように、底部発熱体35が全幅D3に亘って底部ワークコイル41の幅d3からはみ出ないようにすると、幅方向に凹凸部分(薄肉部35Aと厚肉部35B,35B)を設けた底部発熱体35であって、該底部発熱体35が底部ワークコイル41に対して若干位置ずれした場合でも、該底部発熱体35の発熱量が全周に亘って均一になる(炊飯ムラが生じない)。
因に、内鍋3側の底部発熱体35と炊飯器本体1側の底部ワークコイル41との関係において、単に上下重合関係を確保するだけであれば、底部ワークコイル41の幅を底部発熱体35の幅より狭くすることも考えられるが、その場合は、底部発熱体35が底部ワークコイル41に対して位置ずれすると、該底部発熱体35が高温発熱する部分(底部ワークコイル41が対向する範囲)が内鍋底部31の中心から水平方向にずれてしまう。又、この第1実施形態のように底部発熱体35としてその幅方向に凹凸部分(薄肉部35Aと厚肉部35B,35B)を設けたものでは、底部発熱体35が底部ワークコイル41に対して水平方向に位置ずれすると、該底部発熱体35の全体幅内に底部ワークコイル41が完全重合している場合でも、底部発熱体35の幅方向に凹凸部分(薄肉部35Aと厚肉部35B,35B)があることにより底部ワークコイル41の単位面積当たりに対向する底部発熱体35側の発熱材料の量が変化するようになる。従って、底部ワークコイル41の幅を該底部発熱体35の幅より狭くしたものでは、幅方向に凹凸部分がある底部発熱体35を使用すると、該底部発熱体35が底部ワークコイル41に対して水平方向に位置ずれした場合には、内鍋底部31に対する加熱分布が異なる部分ができ、炊飯ムラが生じる原因になる。ところが、本願の場合は、上記のように凹凸部分を有した底部発熱体35が底部ワークコイル41に対して水平方向に位置ずれした場合でも、底部発熱体35の発熱量が全周に亘って均一になる(炊飯ムラが生じない)。
尚、この第1実施形態の電気炊飯器において、炊飯終了後は、側面ヒータ16、肩ヒータ17、蓋ヒータ25等により内鍋3内の米飯を保温できる。
[図3〜図4の第2実施形態]
この第2実施形態の電気炊飯器は、上記第1実施形態の電気炊飯器のものに次の構成を付加している。
即ち、この第2実施形態の電気炊飯器では、内鍋3として底部31と側周部33との間にかなり長さの湾曲部32を設けたものを使用し、該湾曲部32の外面に円形環状(リング状)の湾曲部発熱体36を設置しているとともに、炊飯器本体1内における上記湾曲部発熱体36に対面する位置に湾曲部ワークコイル42を設けている。
内鍋3は、陶磁器製で熱伝導性が低い関係で、底部発熱体35及び湾曲部発熱体36が設置される底部31及び湾曲部32の肉厚を比較的薄くしている一方、側周部33の肉厚を保温力向上のために比較的厚く成形している。
又、内ケース14は、合成樹脂材料製で皿状の底材14Aの上部に金属製の側壁14Bを結合させたものを使用している。
この第2実施形態の電気炊飯器では、内鍋3の底部外周付近に湾曲部32を設けている関係で、内鍋3の底部31の面積(高台34内の面積)が小さくなっており、従って内鍋底部31の下面に設けられる円形環状(リング状)の底部発熱体35も外径(外周縁35bの外径)が小さくなっている。
又、この第2実施形態の場合も、底部発熱体35と底部ワークコイル41との関係は、図4(A),(B)に詳細表示するように、底部ワークコイル41の幅d5が底部発熱体35の幅D5より広くなっている(幅d5>幅D5)とともに、底部発熱体35は、その幅方向中央付近に薄肉部35A(厚さT1)とその両側にそれぞれ厚肉部35B,35B(厚さT2)とを有した凹凸部分を設けている。尚、底部発熱体35は、その外径が小さくなっている関係で、該底部発熱体35の幅D5も上記第1実施形態のものより狭くなっており、さらに薄肉部35Aの幅D6も第1実施形態のものより狭くなっている。
内鍋湾曲部32に設けている湾曲部発熱体36は、図4(A)に示すように全幅d7に亘って厚さが均一なものを使用している。
他方、この第2実施形態のものでは、図4(A),(B)に示すように、湾曲部発熱体36の幅D7を湾曲部ワークコイル42の幅d7より広くしている(幅D7>幅d7)。又、湾曲部発熱体36と湾曲部ワークコイル42との位置関係は、湾曲部ワークコイル42の幅d7が湾曲部発熱体36の幅D7内に収まる位置で且つ湾曲部ワークコイル42が湾曲部発熱体36に対して若干内方寄りに偏位させている。即ち、湾曲部発熱体36の外周縁36aが湾曲部ワークコイル42の外周縁42aからはみ出す幅W1を、湾曲部発熱体36の内周縁36bが湾曲部ワークコイル42の内周縁42bからはみ出す幅W2よりかなり大きくなるように位置決めしており、それによって湾曲部発熱体36の外周縁36aを可及的に内鍋3の高さ方向の上方側に延出させている。
湾曲部発熱体36の外周縁36aが湾曲部ワークコイル42の外周縁42aからはみ出す幅W1は、約10mm程度に設定しているが、この程度(10mm程度)のはみ出し幅であると、湾曲部ワークコイル42からの磁界が湾曲部発熱体36の外周縁36aまで十分に到達することが確認されている。又、この第2実施形態では、内ケース14の側壁14Bに金属を使用している関係で、湾曲部ワークコイル42の外周縁42aと内ケース側壁14Bの下端との間に、湾曲部ワークコイル42からの磁界が影響しない例えば20mm程度の間隔を持たせている。
この第2実施形態の電気炊飯器において、底部発熱体35と底部ワークコイル41との関係における機能は上記第1実施形態の説明と同様である。又、この第2実施形態(図3及び図4)において、第1実施形態(図1及び図2)のものと同じ符号を付しているものは、第1実施形態のものと同じ機能をするものであり、その第1実施形態の説明を援用する。
ところで、この第2実施形態の電気炊飯器では、内鍋3の湾曲部32に湾曲部発熱体36を設け、炊飯器本体1内に該湾曲部発熱体36に対面する湾曲部ワークコイル42を設けているので、内鍋3の底部31を上記底部発熱体35により加熱し得るとともに、内鍋3の湾曲部32からも湾曲部発熱体36により加熱できる。従って、土鍋のように熱伝達率の悪い内鍋3であっても、内鍋3の広範囲の面積部分から加熱できるので、炊飯が良好に行える。
又、上記のように陶磁器製の内鍋3では、寸法や形状にバラツキが生じ易い関係で内鍋3を内ケース14内に収容したときに、内鍋3側の湾曲部発熱体36から炊飯器本体1側の湾曲部ワークコイル42までの距離が異なる部分が生じることがあるが、湾曲部発熱体36から湾曲部ワークコイル42までの距離に若干差があっても(その距離の長い部分でも)、ワークコイル側からの磁界が十分に到達する。そして、湾曲部発熱体36として均一厚さのものを使用しているので、該湾曲部発熱体36は全周に亘って均一に加熱されるようになる。
又、この第2実施形態のものでは、湾曲部発熱体36の幅D7を湾曲部ワークコイル42の幅d7より広くしているが、このようにすると、内鍋3に寸法誤差や形状誤差があったり、あるいは内鍋3を内ケース14内に収容したときに該内鍋3が多少位置ずれしても、内鍋3側の湾曲部発熱体36に対して炊飯器本体1側の湾曲部ワークコイル42の全幅が完全重合するようになる。
さらに、この第2実施形態のように、湾曲部発熱体36の外周縁36aを可及的に内鍋3の高さ方向の上方側に延出させると、熱伝導性の悪い土鍋において、内鍋3における少しでも上方位置まで加熱部(湾曲部発熱体36)を設けることができる。従って、この場合は、湾曲部発熱体36による加熱し得る範囲を広げることができて、炊飯性能を向上させることができるという機能が生じる。
1は炊飯器本体、2は蓋体、3は内鍋、10は外装体、11は外ケース、12は底部材、14は内ケース、31は内鍋の底部、32は内鍋の湾曲部、33は内鍋の側周部、35は底部発熱体、36は湾曲部発熱体、41は底部ワークコイル、42は湾曲部ワークコイルである。