JP2009254346A - 生栗色戻し方法および生栗 - Google Patents

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Abstract

【課題】短時間でクチナシ色素を用いた場合と同じくらい鮮やかな黄色にすることができる生栗色戻し方法その方法で色戻しした生栗を提供する。
【解決手段】渋皮を剥皮した生栗をアスコルビン酸水溶液に浸漬して生栗の色戻しを行うα工程(ステップS3)を有する生栗色戻し方法であって、アスコルビン酸水溶液は、濃度が0.5〜5wt%の範囲内であり、かつ、液温80〜90℃の範囲内であることを特徴とする生栗色戻し方法による。
【選択図】 図1

Description

本発明は、渋皮を剥皮した生栗の色戻し方法およびその方法により色戻しを行った生栗に関する。
従来、渋皮剥皮済み生栗の外観は白っぽく、見映えがしないため、薄いクチナシ色素水溶液に一晩程度浸漬して果肉の色が鮮やかな黄色になるよう色戻し処理を行っていた。この場合、生栗の出荷作業に時間がかかってしまうという課題があった。
また、従来、製菓等において用いられる栗の甘露煮等を製造する際には、生栗の外皮である鬼皮に加えて内皮である渋皮を剥離する必要もある。
栗の渋皮には、フェノール系化合物であるタンニンが含まれており、渋皮と果肉とを結びつける働きをしている。この渋皮は果肉の表面に密着しているので、手作業で取り除く際には1つずつナイフ等の刃物で果肉の一部とともに剥ぎ取る必要があり、渋皮を剥皮した果肉の歩留まりが低下する上、果肉の形状がいびつになったり、割れて商品価値が著しく低下してしまうという課題があった。このため、小さいサイズの栗は、費用対効果の観点から甘露煮用の生栗に加工することが難しかった。
さらに、栗の果肉にはデンプンを糖に変換する酵素の一種のアミラーゼが含まれており、収穫後に、アミラーゼの活性温度領域に栗を一定時間保持すること(糖化工程)で果肉の甘みを向上させることができる。
しかしながら、大量の生栗から鬼皮や渋皮を迅速に剥皮しなければならない加工現場においては、生栗から鬼皮や渋皮を剥皮するための作業工程に、別途時間と手間のかかる糖化工程を加えることは難しかった。
このような課題に対処する目的でいくつかの発明が開示されている。
特許文献1には「冷凍栗の製造方法」という名称で、季節による影響がなく、所望の時に簡便に調理することができる冷凍栗の製造方法に関する発明が開示されている。
特許文献1記載の発明は、鬼皮と渋皮を剥皮した生栗を、焼みょうばんを0.05%、アスコルビン酸を0.1%含有する水溶液中に5〜6時間浸漬する工程を有することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献1記載の発明においては、生栗の表面の褐変化を防止することができるという効果を有する。
特許文献2には「生栗の渋皮の剥皮方法」という名称で、生栗の渋皮(種皮)を機械的に剥く方法に関する発明が開示されている。
特許文献2記載の発明は、例えば、かんすいを溶解して0.1〜5%の濃度に調整したアルカリ溶液を50〜80℃にして、浸漬又はシャワーにより渋皮の表面温度を50〜80℃に昇温して、次いでこの栗に50〜80℃の高圧水のジェットを噴射して、渋皮を剥皮することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2記載の発明によれば、果肉表面の皺を残して完全に剥皮された栗本来の形状と風味を持った生の剥き栗を高い歩留まりで量産できるという効果を有する。
特許文献3には「栗の渋皮剥離成形方法と装置」という名称で、生栗の渋皮を剥皮する方法及び装置に関する発明が開示されている。
特許文献3に記載の方法は、濃度0.1〜1%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液の温度を40〜70℃に調整してその中に生栗を1〜10分間浸漬した後、この栗を撹拌容器内で剥離された渋皮と磨耗されたデンプンが糊状になるまで撹拌し、その後水洗いする工程からなる処理を2回以上繰り返すことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献3に記載の発明によれば、薬品の栗果への浸透をできるだけ少なくしながら、栗果の表層部を短時間になめらかに成形することができ、しかも、その歩留まりを高めることができる。
特許文献4には「クリ渋皮の剥皮方法」という名称で、生栗の渋皮を簡易に剥皮する方法に関する発明が開示されている。
特許文献4記載の方法は、濃度0.75%〜1.25%のフィチン酸水溶液を40℃以上に加温して、好ましくは50℃〜55℃に加温してその中に渋皮付の生栗を10〜25分間浸漬することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献4に記載の方法によれば、クリの果肉から渋皮を容易に剥離することができ、さらに渋皮を除去した後にクリを空気中に長期間放置しても、果肉の色を淡黄色に維持することができるという効果を有する。
特許文献5には「栗の渋皮剥離法」という名称で、生栗の渋皮を剥皮する方法に関する発明が開示されている。
特許文献5記載の発明は、エチルアルコールと濃塩酸と水をそれぞれ10:1:90の割合で混合した液体60℃に加温し、その中に渋皮の付いた生栗を10分間浸漬することを特徴とするものである。
上記構成の特許文献5に記載の方法によれば、渋皮の剥皮後も栗の原形、風味、光沢を好ましく維持することができ、しかも、経済性に優れかつ操作も容易であるという利点を有している。
特許文献6には「栗の渋皮を剥離する方法」という名称で、生栗の渋皮を剥皮する方法に関する発明が開示されている。
特許文献6に記載の方法は、5%以上の濃度を有する苛性ソーダ(NaOH)又は苛性カリ(KOH)液を適当な温度に保持したものに、渋皮の付いた生栗を適当な時間浸漬し、さらにその後、酸性液に浸漬することを特徴とするものである。
より具体的には、渋皮付の生栗を、苛性ソーダの濃度を10%とした場合は液温を80℃以上にして5分間、苛性ソーダの濃度を10%とした場合でかつ液温を常温にした場合は3時間、苛性ソーダの濃度を5%とした場合は液温を100℃以上にして10分間それぞれ浸漬し、これらの処理の後にこの栗を、例えば、1%の塩酸液に5分間浸漬して引き上げて、水洗いして塩酸を除去すればよい。
上記構成の特許文献6に記載の方法によれば、栗の渋皮の剥皮を容易にすると同時に、渋皮が剥皮された後の果肉を美黄色に保つことができる。
特公昭61−26333号公報 特開2001−238654号公報 特開昭54−80450号公報 特公昭46−42934号公報 特公昭44−776号公報 特公昭29−182号公報
しかしながら、特許文献1に開示される方法では、栗の果肉の表面の褐変化を防止することができるものの、クチナシ色素水溶液を用いて色戻し処理を行った場合のように、栗の果肉の表面を鮮やかな黄色にすることはできなかった。
また、特許文献2〜5に記載の発明における薬液の温度はいずれも栗の果肉に含まれるアミラーゼの活性温度として概ね適すると考えられるものの、薬液への浸漬時間は1〜25分と短時間であり、この時間内にアミラーゼによってデンプンを分解して十分な糖を生産することは難しかった。
つまり、特許文献2〜5に記載の発明の場合、いずれも栗の渋皮を軟化することができるものの、果肉の糖化を考慮したものではなかった。
また、特許文献6に記載の発明においては、薬液の温度を80℃以上にすると、デンプンから糖を生成する酵素(タンパク性触媒)であるアミラーゼが失活してしまい、果肉の糖化効果が期待できなかった。また、この場合、被処理対象である生栗が生煮え状態となってしまい、その後、加熱調理した際に食味が低下するという課題があった。
さらに、常温の薬液中に3時間栗を浸漬しても、アミラーゼが十分に活性化されないので、果肉の糖化効果が期待できなかった。加えて、液温が40℃よりも低い薬液中に長時間浸漬した場合、渋皮が硬化してしまい、剥皮作業の作業性を向上しにくいという課題があった。
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものでありその目的は、鬼皮と渋皮を剥皮した栗の果肉を、クチナシ色素水溶液を用いて色戻し処理を行った場合と同等かそれ以上の鮮やかな黄色にすることができる生栗色戻し方法およびその方法により色戻しした生栗を提供することにある。
請求項1に記載の発明である生栗色戻し方法は、渋皮を剥皮した生栗をアスコルビン酸水溶液に浸漬して生栗の色戻しを行うα工程を有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、渋皮が剥皮された生栗をアスコルビン酸水溶液に浸漬することで、果肉の表面を鮮やかな黄色に変化させるという作用を有する。
さらに、請求項1に記載の方法により製造した生栗と、この生栗を使用して製造した食品の黄色みを鮮やかにして製品の見映えをよくするという作用を有する。
請求項2に記載の発明である生栗色戻し方法は、請求項1に記載の生栗色戻し方法であって、アスコルビン酸水溶液は、濃度が0.5〜5wt%の範囲内であり、かつ、液温80〜90℃の範囲内であることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加えて、アスコルビン酸水溶液の濃度を0.5〜5wt%の範囲内で、かつ、液温を80〜90℃の範囲内とすることで、生栗の色戻し処理を短時間(約1〜2分間)で完了させるという作用を有する。
請求項3に記載の発明である生栗色戻し方法は、請求項1又は請求項2に記載の生栗色戻し方法であって、α工程の前に、水酸化ナトリウム水溶液を用いて生栗の渋皮を剥皮するβ工程を有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載又は請求項2記載の発明と同じ作用に加えて、β工程を有することで、渋皮を果肉に結びつけるフェノール系化合物であるタンニンを水酸化ナトリウム水溶液により分解させるという作用を有する。この結果、渋皮を流水と摩擦による除去を可能にするとともに、果肉の表面からタンニンが除去されることで果肉の表面が褐変化するのを妨げるという作用を有する。
請求項4に記載の発明である生栗色戻し方法は、請求項3に記載の生栗色戻し方法であって、β工程は、液温が55〜70℃に保たれた濃度2.5〜5wt%の水酸化ナトリウム水溶液中に,渋皮付の生栗を少なくとも1時間浸漬する第1の工程と、この第1の工程の後に、生栗の軟化した部分を流水と摩擦により除去する第2の工程とを備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項3記載の発明と同じ作用に加えて、第1の工程において水酸化ナトリウム水溶液(薬液)の濃度を略2.5〜5wt%の範囲内とした場合、使用済みの廃液を劇物として取り使う必要がないので、排水処理を容易にするという作用を有する。また、渋皮を含む生栗の表層部を軟化するのに必要な水酸化ナトリウムを供給するという作用を有する。
また、薬液の液温を55〜70℃の範囲内に保つことで、水酸化ナトリウムによる渋皮を含む果肉の一部、すなわち渋皮付き生栗の表層部の軟化を可能にするとともに、生栗に過剰な熱が作用して生煮え状態になるのを防止するという作用を有する。加えて、果肉に含まれるアミラーゼを活性化してデンプンを糖に変換する反応を促進するという作用を有する。
さらに、生栗の薬液への浸漬時間を少なくとも1時間とすることで、渋皮の剥皮を容易にするための表層部の軟化を十分にしながら、果肉の内部においてデンプンから糖が生産されるための十分な時間を確保するという作用を有する。
そして、第2の工程は、第1の工程において渋皮付き生栗の軟化した部分を流水に曝しながら摩擦することで、渋皮と可食部として適さない軟化部分を略完全に除去するという作用を有する。つまり、生栗から渋皮を除去するとともに、食べられる状態にするという作用を有する。
請求項5に記載の発明である生栗色戻し方法は、請求項4に記載の生栗色戻し方法であって、水酸化ナトリウム水溶液の重量は、生栗の重量の1.5〜2倍の範囲内であることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項4記載の発明と同じ作用に加え、水酸化ナトリウム水溶液の重量を生栗の重量の1.5〜2倍の範囲内とすることで、渋皮付き生栗を薬液中に略完全に浸漬させると同時に、生栗の表層部を軟化させるために使用する薬液の量を最小限度にするという作用を有する。
すなわち、第1の工程の後に廃棄される薬液の量を最小限度にするという作用を有する。
請求項6に記載の発明である生栗は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された発明によって色戻しされたものであることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された発明によって色戻しされることから、それらの発明と同様の作用を有する。
本発明の請求項1記載の発明によれば、着色料を用いることなしに、渋皮剥皮済み生栗の果肉の表面の色を鮮やかな黄色に変化させることができるという効果を有する。すなわち、渋皮剥皮済み生栗の果肉の表面の色を、クチナシ色素水溶液を用いて色戻し処理を行った場合と同様の鮮やかな黄色にすることができるという効果を有する。
従って、色戻し処理を行わない生栗と比較した際に、製品としての生栗の見映えを良くすることができる。また、請求項1に記載の方法により処理された生栗を加熱調理した際の果肉の表面の色をも鮮やかな黄色にすることができるという効果を有する。この結果、栗の見映えと商品価値を高めることができるという効果を有する。
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明と同じ効果に加え、生栗の色戻し処理にかかる時間を短くすることができるという効果を有する。
また、色戻しの際に生栗に作用する熱を最小限度にすることができるので、この処理によって生栗が生煮え状態となり、その後、加熱調理した際に食味が低下するのを防止することができるという効果を有する。
この結果、高品質で付加価値の高い生栗の生産性を一層向上することができる。すなわち、形と色が美しく、しかも、甘くておいしい栗を効率よく生産することができるという効果を有する。
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明と同じ効果に加え、水酸化ナトリウム水溶液を用いて渋皮の剥皮作業を行うことで、果肉の表面からタンニンを除去することができるという効果を有する。
この結果、渋皮剥皮済み生栗の果肉の表面がタンニンにより褐変化するのを防止することができる。また、果肉の形状を本来の栗の形状にすることができるという効果も有する。
この結果、渋皮剥皮済み生栗の果肉の外観を向上してその商品価値を高めることができるという効果を有する。
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項3記載の発明と同じ効果に加え、第1の工程の際に、渋皮付きの生栗の表層部の軟化処理と、果肉の糖化処理を同時に行うことができるという効果を有する。
このとき、薬液の温度を55〜70℃の範囲内とすることで、渋皮付き生栗の表層部の軟化の促進と、果肉の糖化の促進と、果肉の生煮え防止を同時に行うことができるという効果を有する。
つまり、請求項4記載の方法によれば、渋皮付き生栗から容易に渋皮を剥皮することができ、かつ、果肉の甘みが強くて美味しい栗を効率よく生産することができるという効果を有する。
また、薬液の濃度を2.5〜5wt%の範囲内とすることで、果肉の軟化に伴う損失を少なくしながら、略全ての渋皮を容易に剥皮させることができるという効果を有する。しかも、薬液を劇物として取り扱う必要がないので、作業者にとって取扱いが容易であり、かつ、使用済みの薬液の廃棄を容易にすることができるという効果も有する。
また、第1の工程を完了した後に、第2の工程において、生栗の軟化した表層部を流水に曝しながら摩擦により除去することで、生栗から渋皮と薬液を略完全に除去することができるという効果を有する。
従って、これまで費用対効果の観点から歩留まりが悪くなることを理由に、加工の対象にならなかった小さいサイズの栗も製品用に加工することができるという効果を有する。
また、請求項4記載の方法によれば、第1及び第2の工程の実施に伴う果肉の損失が少ないので、加工後でも栗本来の形状を保つことができ、加工品の見映えと付加価値を高めることができるという効果を有する。
本発明の請求項5に記載の発明は、請求項4記載の発明と同じ効果に加え、薬液の重量を生栗の重量の1.5〜2倍の範囲内とすることで、処理時に渋皮付き生栗を薬液中に略完全に浸漬させることができるという効果を有する。
また、渋皮付き生栗の表層部を軟化させるために用いる薬液の量を最小限度にすることができるという効果を有する。このため、使用済みの薬液を廃棄処理の手間を軽減するとともに、環境への負荷も軽減することができるという効果を有する。
本発明の請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5に記載の発明によって色戻しされた生栗であることから、請求項1乃至請求項5に記載の発明と同じ効果を有する。
すなわち、渋皮を剥皮した生栗をアスコルビン酸水溶液中に浸漬することで、クチナシ色素水溶液に渋皮を剥皮した生栗を一晩浸漬した場合と同程度の、あるいはそれ以上の鮮やかな黄色に色戻しされた生栗を提供することができるという効果を有する。
また、アスコルビン酸水溶液を用いることで、生栗の表面が褐変化するのを抑制することができるという効果も期待できる。さらに、アスコルビン酸水溶液により色戻しすることで、甘露煮等に加熱加工した場合であっても、加工された栗の表面を鮮やかな黄色に維持することができるという効果を有する。
本発明の最良の実施の形態に係る生栗色戻し方法及びこの方法により色戻しされた生栗について実施例を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施例に係る生栗色戻し方法の作業工程を示すフローチャートである。
本実施例に係る生栗色戻し方法は、主に前処理である渋皮の剥皮工程(ステップS1及びステップS2)と色戻し工程(ステップS3)により構成されるものである。
まず、渋皮の剥皮工程(ステップS1及びステップS2)について説明する。
本実施例に係る渋皮の剥皮工程は、従来の水酸化ナトリウム水溶液を用いた渋皮の剥皮工程を特定の条件下において実施することで、渋皮の剥皮処理と平行して果肉の糖化処理を行うことができるよう構成されるものである。
本実施例に係る渋皮の剥皮工程においては、まず、外皮である鬼皮を手剥き又は薬品処理によって剥皮した生栗を準備するとともに、濃度を約2.5〜5wt%に調整した水酸化ナトリウム水溶液(以下、薬液という。)を、渋皮付きの生栗の重量の約1.5〜2倍程度準備し、この薬液を温度55〜70℃に加熱しておく。
次いで、この薬液中に渋皮付き生栗を浸漬して、その液温を55〜70℃の範囲内に保ちながら少なくとも1時間放置して、薬液中の水酸化ナトリウムにより渋皮を含む生栗の表層部を軟化させる(ステップS1)。
このとき、薬液の濃度を2.5〜5wt%(規定度=0.625〜1.25(N))の範囲内とすることで、果肉が過度に軟化して損失が生じるのを最小限度にすることができるという効果を有する。また、この場合、薬液を劇物として取り扱う必要がないので、使用済みの廃液は水で十分に薄めて廃棄するか、あるいは、中和剤(酸)を添加してアルカリを中和した後、一般排水と同様に下水道に流すことができる。しかも、作業者にも取扱いが容易であり、作業中の事故を防止することができる。
加えて、薬液の量を、渋皮付きの生栗の重量(g)の約1.5〜2倍にすることで、薬液中に渋皮付き生栗を略完全に浸漬させることができるとともに、廃棄される薬液の量を最小限度にすることができるという効果を有する。このため、薬液の廃棄に伴う環境への負荷を低減することができるという効果を有する。
なお、渋皮付き生栗から渋皮が除去される仕組みの詳細については後述する。
一般に、栗は果肉の温度が70℃を超えた状態に保たれると、果肉のデンプン質の糊化が起こり、加熱調理がなされた状態、すなわち、生煮え状態となる。
このため、ステップS1においては、薬液の温度を55〜70℃の範囲内に保つことで、栗が生煮えになるのを防止している。
栗の実は、栗の木の種子であり、種子である栗の果肉部分は、発芽して葉芽や茎、根を形成するためのエネルギーとなるデンプンの貯蔵庫である。
また、このようなデンプンを生体内において実際にエネルギーとして用いるためには、デンプンを糖に変換する必要があるため、栗の果肉にはデンプンを糖に変換する酵素であるアミラーゼが含まれている。
そして、このアミラーゼは40〜70℃の温度領域で活性化されることが知られており、さらに、果肉の温度上昇が緩やかな場合に、デンプンから糖を生産する反応が促進される。
そこで、本実施例に係るステップS1では、55〜70℃の範囲内に保たれた薬液中に渋皮付き生栗を浸漬することで渋皮付き生栗の果肉に含まれるアミラーゼを活性化させ、デンプンから糖が生産される反応を促進している。
加えて、薬液への渋皮付き生栗の浸漬時間を少なくとも1時間とすることで、果肉の内部において十分な糖が生産されるのに必要な時間を確保しているのである。つまり、栗を糖化させているのである。
従って、本実施例に係るステップS1によれば、栗の糖度を高めることができるという効果も有する。このため、本実施例に係る生栗色戻し方法においては、ステップS1を設けることで生栗の食味を向上させることができるという効果を有する。
このように、本実施例に係るステップS1では、栗が生煮えになるのを防止しながら、渋皮を含む生栗の表層部を軟化させることができ、しかも、果肉の糖度を高めることができるという効果を有する。
そして、上述のようなステップS1を完了した後、薬液から渋皮付き生栗を取り出し、流水に曝しながら軟化した表層部に摩擦力を加えて、この部分を除去すればよい(ステップS2)。
この時、軟化した表層部には渋皮が含まれるため、栗の果肉から渋皮を略完全に除去することができる。
なお、ステップS1を完了した生栗の表層部に摩擦力を加える方法としては、例えば、ブラシや、硬質スポンジ、布等による擦り洗い等がある。
このように、ステップS2を行うことで、生栗に浸透した水酸化ナトリウムを、軟化して可食には適さなくなった果肉ごと除去することができる。また、生栗の表面に付着した薬液も同時に洗い流すことができる。
つまり、このステップS2により、生栗から渋皮と水酸化ナトリウムを略完全に除去することができるので、生栗を食べられる状態にすることができるという効果を有する。
ここで図2を参照しながら、渋皮付き生栗から渋皮が除去される仕組みについてより詳細に説明する。
一般に、渋皮に含まれるタンニンは、ロイコアントシアンが中心となったものにカテキンや、ときにはクロロゲン酸や他のフラボノイドがアセタール結合や水素結合によって会合したものであると考えられており、その構造や化学的性質については未だ十分に解明されていないが、果肉から渋皮が除去される仕組みは以下のとおりと考えられる。
図2(a)は図1に示すステップS1を完了した直後の生栗の様子を示す断面図であり、(b)は図1に示すステップS2を完了した直後の生栗の様子を示す断面図である。
図2(a)に示すように、渋皮付き生栗1は果肉3の表面全体が繊維質で焦げ茶色の渋皮2に覆われたものであり、この渋皮付き生栗1を上述のような薬液に少なくとも1時間浸漬すると、渋皮に含まれるタンニンやセルロースが水酸化ナトリウムと反応して破壊され渋皮2自体が軟化する。
そして、この作用に伴い、軟化した渋皮の隙間から薬液が徐々に果肉に浸透して、果肉に含まれるデンプンが水酸化ナトリウムに触れるとデンプンが変性して果肉の一部がその表面から軟化する。
具体的には、ステップS1においては、図2(a)中において破線で示す境界4まで軟化が進行する。
また、本願明細書中に記載される表層部とは、渋皮付き生栗1の表面から水酸化ナトリウムによって軟化した境界4まで、すなわち、図2(a)中において符号Aで示される部分を指している。
本実施例のようなアルカリを用いた渋皮2の軟化処理において、渋皮2を軟化することができるか否かは、渋皮に含まれるタンニンとそれに反応するアルカリの量との相関によって決定されるので、薬液中に含まれるアルカリの量、すなわち、水酸化ナトリウムの量が多いほど高い渋皮の軟化効果が期待できる。
他方、タンニンを主体とする渋皮は、アルカリとの強い反応性を有していることから、アルカリである水酸化ナトリウムを渋皮の剥皮に用いることは有効である。
しかしながら、薬液中におけるアルカリの濃度が高い場合や、液温が80℃を超える場合、薬液中に渋皮付き生栗1を浸漬すると、渋皮2と薬液との接触面においてのみ化学反応が激しく起こってしまい、栗の中心に向って軟化が進行しにくくなってしまう。つまり、渋皮2の下層側へ薬液が浸透しづらくなってしまう。
このため、薬液の温度を80℃以上の高温にすると、渋皮付き生栗1の表面におけるタンニンと水酸化ナトリウムとの反応速度と、この反応の下層への浸透速度にズレが生じ、果肉の表面を被覆するタンニンと果肉とが一体化してしまう。
この結果、その後のステップS2において、流水に曝しながら軟化した表層部を擦り洗いしても果肉から略完全に渋皮を除去することができなくなってしまう。
その一方で、薬液の温度を40℃以下にすると、タンニンと水酸化ナトリウムが徐々に反応して渋皮2が硬化し、外部から摩擦力が加わると渋皮2が固形状となって剥離する。
このとき、渋皮2に含まれるタンニンと水酸化ナトリウムの化学反応が完了するためには長い時間がかかり、長時間時わたり渋皮付き生栗1を薬液中に浸したままにしておくと、果肉3の内部にまで薬液が浸透してしまい、果肉3が硬化して食するのに適さなくなってしまう。しかも、作業性も向上し難い。
よって、本実施例に係るステップS1においては、薬液の濃度を2.5〜5wt%の範囲内とし、かつ、薬液の温度を55〜70℃の範囲内に保つことで、薬液に渋皮付き生栗1を浸漬した際に、渋皮2に含まれるタンニンと水酸化ナトリウムとが激しく反応するのを抑制している。
この結果、本実施例に係るステップS1では、渋皮付き生栗1の渋皮2を含む表層部Aのみを軟化させて渋皮2の略完全な剥皮を可能にするとともに、薬液が果肉3の内部の深部に浸透して果肉が食するのに適さなくなるのを防止することができる。
そして、ステップS2において渋皮付き生栗1の軟化した表層部Aを全て除去すると、図2(b)で示すような果肉3のみからなる渋皮剥皮済み生栗5となるのである。この時、軟化していない果肉3は、軟化した表層部Aよりも十分に硬いので、ステップS1を完了した渋皮付き生栗1の表面にブラシ等により摩擦力を作用させることで、表層部Aを容易に除去することができる。
また、本実施例に係るステップS1において、水酸化ナトリウムによって軟化されるのは生栗の渋皮を含むごく浅い表層部Aのみなので、ステップS2を完了した渋皮剥皮済み生栗5の形状を、渋皮付き生栗1の形状と大差がない状態にすることができるという効果を有する。
この結果、ステップS1及びステップS2を完了した後も、生栗の本来の形状を保つことができるので、従来のように手作業によって渋皮の剥皮作業を行った場合は、廃棄による果肉部分の損失が多く費用対効果の観点からこれまで加工処理対象とならなかった小さいサイズの栗も加工の対象にすることができるという効果を有する。
再び、図1の説明に戻るが、上述のようにステップS2において渋皮2を略完全に除去した渋皮剥皮済み生栗5はそのまま製品として出荷することができる。
しかしながら、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3の表面3a(図2(b)を参照。)は白色化しており、見映えがよいとはいえない。
そこで、本実施例においては、上述のようなステップS1を完了した渋皮剥皮済み生栗5をアスコルビン酸水溶液に浸漬して果肉3の表面3aの色を鮮やかな黄色に変化させる色戻し処理を行っている(ステップS3)。
このステップS3により、渋皮剥皮済み生栗5の表面3aの色をクチナシ色素で着色した場合と同程度、あるいはそれ以上の鮮やかな黄色にすることができるという効果を有する。すなわち、クチナシ色素で着色した場合と同程度、あるいはそれ以上の鮮やかな黄色を有する渋皮剥皮済み生栗5を提供することができるという効果を有する。
そして、特にこのステップS3において、アスコルビン酸水溶液の濃度を0.5〜5wt%範囲内とし、かつ、その液温を80〜90℃の範囲内とすることで、1〜2分間の浸漬処理により渋皮剥皮済み生栗5の表面3aの色を鮮やかな黄色にすることができる。
この場合、処理時の熱により渋皮剥皮済み生栗5が生煮えになるのを抑制することができる。
また、従来のようにクチナシ色素で着色する場合、渋皮剥皮済み生栗5を、一晩クチナシ色素水溶液に浸漬しておく必要があった。
これに対して、本実施例に係るステップS3によれば、色戻し処理にかかる時間を大幅に短縮することができるという効果を有する。
また、アスコルビン酸水溶液は酸性であるため、渋皮剥皮済み生栗5の表面3aに、万一、水酸化ナトリウムが残存していた場合に、この水酸化ナトリウムを中和することができるという効果も有する。
よって、渋皮剥皮済み生栗5にステップS3の色戻し工程を行うことで、渋皮剥皮済み生栗5の見映えを良くして商品価値を高めることができるという効果を有する。
さらに、ステップS3により色戻しされた渋皮剥皮済み生栗5は、その後、例えば、栗の甘露煮等に加熱調理された場合でもその表面の色を鮮やかな黄色のままに維持することができる。
よって、ステップS3を設けることで、加熱調理された渋皮剥皮済み生栗5の表面3aも鮮やかな黄色にすることができるという効果を有する。
なお、ステップS3で用いるアスコルビン酸水溶液の濃度が0.5%よりも低い場合、あるいは、液温が80℃よりも低い場合には十分な発色効果が期待できなかった。
また、アスコルビン酸水溶液は酸性であるため、その濃度が高まるにつれ渋皮剥皮済み生栗5が酸味を帯びる可能性が高まる。また、80℃を超えるアスコルビン酸水溶液中に長時間渋皮剥皮済み生栗5を浸漬しておくと、渋皮剥皮済み生栗5が生煮えになってしまう恐れもある。
このため、ステップS3において渋皮剥皮済み生栗5の表面3aが鮮やかな黄色に変化したら速やかにアスコルビン酸水溶液から渋皮剥皮済み生栗5を引き上げることが望ましい。
なお、ステップS3において用いるアスコルビン酸水溶液は、渋皮剥皮済み生栗5の重量(g)の約1.5〜2倍程度が適切である。この場合もステップS1の場合と同様に、アスコルビン酸水溶液中に渋皮剥皮済み生栗5を略完全に浸漬させることができるとともに、廃棄されるアスコルビン酸水溶液の量を最小限度にすることができる。また、アスコルビン酸水溶液を加温するために必要な熱量も最小限度にすることができる。
このように、図1に示すような本実施例に係るステップS1,S2からなる渋皮剥皮方法によれば、略完全に渋皮2が剥皮されて果肉3の甘みが強く、かつ、果肉の損失が少なくて栗の本来の形状が保たれた渋皮剥皮済み生栗5を高効率で生産することができる。
そして、図1に示すような、本実施例に係るステップS1,S2に加えて、ステップS3を行うことで渋皮剥皮済み生栗5の見映えを一層良くし、その商品価値を高めることができる。
なお、本実施例においては、ステップS3に用いる渋皮剥皮済み生栗5として、図1に示すステップS1,S2により渋皮2を剥皮した生栗を用いる場合を例に挙げて説明しているが、渋皮剥皮済み生栗5は、例えば、機械や手作業により鬼皮と渋皮2が剥皮されたものでもよい。あるいは、従来公知の薬品を用いた方法により鬼皮と渋皮2が剥皮されたものでもよい。この場合、果肉3の表面における薬品が十分に洗い流されているか、あるいは、十分に中和されていることが望ましい。
以下に本実施例に係る生栗色戻し方法に関する試験結果について詳細に説明する。
[試験I]
はじめに、試験Iにより、渋皮付き生栗1の渋皮2を軟化するのに最適な薬品の選定を行った。
試験Iでは、5種類の異なる薬品を水にそれぞれ溶解して濃度1wt%の薬液を調整し、それぞれの薬液の温度を40℃に保ち、その中に渋皮付き生栗1を2〜5時間浸漬した後、渋皮2の剥皮の容易性を調べた。
試験Iに用いた薬品と、それぞれの薬品からなる薬液を用いた場合の渋皮2の剥皮の容易性についての調査結果を下記表1に示す。
表1に示すように、薬品として炭酸ナトリウム又は水酸化ナトリウムを用いた場合に、渋皮付き生栗1の渋皮を軟化できることが確認された。
また、薬品に炭酸ナトリウムを用いた場合には、軟化した渋皮をブラシ等で擦っても果肉3の筋の部分に渋皮が残ってしまい、渋皮を完全に除去することはできなかった。
他方、薬品に水酸化ナトリウムを用いた場合には、軟化した渋皮をブラシ等で擦ることで果肉3の筋の部分の渋皮もきれいに取り除くことができた。
従って、渋皮付き生栗1の渋皮2を軟化させるための薬品としては、水酸化ナトリウムが最適であると言える。
[試験II]
次に、試験IIでは、渋皮付き生栗1からの渋皮2の剥皮を容易にするために最適な水酸化ナトリウム水溶液の濃度、液温、浸漬時間を調査した。
まず、試験II−1を行い、渋皮付き生栗1からの渋皮2の剥皮を可能にする水酸化ナトリウム水溶液の濃度、液温、浸漬時間を調査した。
試験II−1では、水酸化ナトリウムを水に溶解して濃度1wt%、2.5wt%、5wt%に調整した薬液をそれぞれ準備し、これらの液温を30℃、55℃、80℃に設定し、その中に渋皮付き生栗1を30分間、60分間、90分間浸漬した際の渋皮2の剥離容易性を調査した。
なお、試験II−1においては、薬液の量を渋皮付き生栗1の重量(g)の1.5倍とした。
上述のような試験II−1の結果を以下に示す。
(1)薬液の濃度を1wt%に調整した場合
薬液の温度が30℃の場合、長時間渋皮付き生栗1を浸漬しても渋皮2を容易に剥皮することはできなかった。
薬液の温度を55℃以上にした場合、薬液への浸漬時間が延びるにつれて渋皮2や、果肉3が軟化しやすくなる傾向が認められた。
また、糖化が可能な温度域である55℃に液温を設定した場合、処理後にブラシ等で表面を擦っても果肉3の溝に渋皮2が残ってしまい、果肉3から略完全に渋皮2を除去することができなかった。
(2)薬液の濃度を2.5wt%に調整した場合
薬液の温度が30℃の場合、長時間渋皮付き生栗1を浸漬しても渋皮2を容易に剥皮することはできなかった。
薬液の温度を55℃に設定した場合、薬液への浸漬時間を60分以上とすることで渋皮2の剥皮が容易になった。また、果肉3の溝に僅かに残った渋皮も、ブラシ等で擦り洗いすることで略完全に除去することができた。
その一方で、薬液の温度を55℃に設定した場合、薬液に90分間浸漬すると渋皮2のみならず果肉3までもが軟化する傾向が認められた。
さらに、薬液の温度を80℃に設定した場合、薬液への浸漬時間が30分であっても渋皮2と果肉3の両者が軟化する傾向が認められた。
なお、果肉の軟化は渋皮剥皮済み生栗5を製品とした場合の歩留まりを低下させるため好ましくない。
(3)薬液の濃度を5wt%に調整した場合
薬液の温度が30℃に設定した場合、60分間浸漬しても渋皮2を容易に剥皮することはできなかった。また、同じ液温で90分間薬液に浸漬した場合、渋皮2は硬化して果肉3の表面から剥がれ落ちるように取れるが、果肉3の溝に残った渋皮はブラシ等で擦っても容易に除去することができなかった。
薬液の温度を55℃に設定した場合、薬液に30分間浸漬するだけで渋皮2の大部分を容易に除去することができるものの、果肉3の溝に残った渋皮2が果肉3と一体化したような状態になってしまい、ブラシ等で擦っても渋皮2を略完全に除去することができなかった。また、同じ液温の薬液に60分以上浸漬すると渋皮2は容易に除去することができるものの、果肉3の深部にまで薬品が浸透してしまったり、あるいは、果肉3の表面に蜂の巣のような凹凸が生じてしまい、歩留まりが低下する上、果肉3見映えが著しく悪くなった。
さらに、薬液の温度を80℃に設定すると、薬液に30分間浸漬するだけで渋皮2の軟化と果肉3の変形が生じてしまうという傾向が認められた。
従って、試験II−1の結果を総括すると、水酸化ナトリウム水溶液を用いて渋皮2を軟化し剥皮を可能とするためには、薬液の濃度を1wt%以上、液温を55℃以上、薬液への浸漬時間を30分よりも長くすることが望ましいと言える。
さらに、試験II−2を行い、渋皮付き生栗1からの渋皮2の剥皮を剥皮容易にするのに最適な水酸化ナトリウム水溶液の濃度、液温、浸漬時間を調査した。
試験II−2では、水酸化ナトリウムを水に溶解して濃度2.5wt%、5wt%に調整した薬液をそれぞれ準備し、これらの液温を40℃、60℃に設定し、その中に渋皮付き生栗1を90分間、120分間浸漬した際の渋皮2の剥離容易性を調査した。
なお、試験II−2においても、薬液の量を渋皮付き生栗1の重量(g)の1.5倍とした。
上述のような試験II−2の結果を以下に示す。
(1)薬液の濃度を2.5wt%に調整した場合
液温を40℃に設定した場合、薬液中に渋皮付き生栗1を120分間浸漬しても渋皮2を容易に剥皮することはできなかった。
液温を60℃に設定した場合、薬液中に渋皮付き生栗1を60分間浸漬することで渋皮2を容易に剥皮することができた。また、120分間浸漬した場合には果肉が軟化しすぎる傾向が認められた。
(2)薬液の濃度を5wt%に調整した場合
液温を40℃に設定した場合、薬液中に渋皮付き生栗1を120分間浸漬しても渋皮2を容易に剥皮することはできなかった。
液温を60℃に設定した場合、薬液中に渋皮付き生栗1を60分間浸漬することで渋皮2を容易に剥皮することができた。また、120分間浸漬した場合には果肉が軟化しすぎる傾向が認められた。
従って、試験II−2の結果を総括すると、水酸化ナトリウム水溶液を用いて渋皮2の剥皮を容易にするには、薬液の濃度を2.5〜5wt%の範囲内、液温を55〜80℃の範囲内とし、渋皮付き生栗1を薬液に少なくとも1時間浸漬することが望ましいと言える。また、このような薬液中に1時間以上渋皮付き生栗1を浸漬した場合でも、渋皮2の剥皮容易性が低下する恐れはないが、果肉3の軟化が進行してしまい果肉の歩留まりが低下してしまう恐れがある。
このため、渋皮付き生栗1の渋皮2を含む表層部を十分に軟化させた後は、速やかに薬液から渋皮付き生栗1を取り出して薬液と渋皮付き生栗1との化学反応を停止させることが望ましい。
[試験III]
続いて、試験IIIで、渋皮付き生栗1の渋皮2を容易に剥皮するために必要な薬液の量を調査した。
試験IIIでは、濃度2.5wt%、液温60℃に調整した水酸化ナトリウム水溶液(薬液)を渋皮付き生栗(1)1kgに対して、それぞれ1倍、1.5倍、2倍準備し、それぞれの薬液中に渋皮付き生栗1を60分間浸漬した場合の渋皮2の剥皮容易性を調べ、その結果を以下の表2に示した。
上記表2に示すように、薬液の量を渋皮付き生栗1の重量の1倍にした場合、渋皮付き生栗1の一部が薬液に浸らない可能性があり、渋皮2を軟化できない可能性があった。
また、薬液の量を渋皮付き生栗1の重量の1.5倍以上にした場合には、全ての渋皮付き生栗1が略完全に薬液中に浸漬されて、渋皮2の剥皮を容易にすることができた。
他方、薬液の量が多いと、使用済みの薬液を廃棄する際の手間がかかる上、薬液を加温して所定の温度範囲内に維持するためにはコストがかかることから、薬液の使用量は少ない方が望ましい。
そこで、本実施例に係る渋皮剥皮方法においては、渋皮2の剥皮を容易にするために必要な水酸化ナトリウム水溶液(薬液)の量を、渋皮付き生栗1の重量の約1.5〜2倍の範囲内としている。
なお、同様の理由により渋皮剥皮済み生栗5の色戻し処理(ステップS3)に用いるアスコルビン酸水溶液の量も、渋皮剥皮済み生栗5の重量(g)の約1.5〜2倍程度が適切であるといえる。
[試験IV]
そして、試験IVでは、渋皮剥皮済み生栗5の色戻しに最適なアスコルビン酸水溶液の濃度、液温、浸漬時間を調査した。
試験IVでは、アスコルビン酸を水に溶解して濃度0.5wt%、1wt%、2wt%、2.5wt%、3wt%、5wt%に調整した水溶液をそれぞれ準備し、さらにそれぞれの水溶液を20〜100℃の範囲内の温度に適宜設定し、その中に渋皮剥皮済み生栗5を1〜45分間浸漬して、渋皮剥皮済み生栗5の表面3aの色を観察した。
上述のような試験IVの結果を以下に示す。
(1)アスコルビン酸水溶液の濃度を0.5wt%に調整した場合
液温を80℃にした水溶液中に、渋皮剥皮済み生栗5を1分間浸漬したところ、果肉3の表面3aが鮮やかな黄色に変化したが、一部に褐変した箇所が認められた。また、2分間浸漬した場合も同様であった。
(2)アスコルビン酸水溶液の濃度を1wt%に調整した場合
液温を30℃以下にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を45分間浸漬しても渋皮剥皮済み生栗5の表面3aに変化は認められなかった。
液温を80℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を1分間浸漬したところ、表面3a全体が黄色に変化したが、一部に褐変した箇所が認められた。また、2分間浸漬した場合も同様であった。
液温を100℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を2分以内浸漬したところ、まばらに表面3aが黄色に変化するとともに、渋皮剥皮済み生栗5の表面がもろくなった。
(3)アスコルビン酸水溶液の濃度を2wt%に調整した場合
液温を30℃以下にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を15分間浸漬しても渋皮剥皮済み生栗5の表面3aに変化は認められなかったが、45分間浸漬すると表面3aがわずかに黄色みを帯びた色になった。
液温を100℃以下にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を2分以内浸漬したところ、まばらに表面3aが黄色に変化するとともに、渋皮剥皮済み生栗5の表面が脆くなった。
(4)アスコルビン酸水溶液の濃度を2.5wt%に調整した場合
液温を30℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を45分間浸漬したところ、果肉3の表面がわずかに黄色みを帯びた色になった。
液温を40℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を1〜2分間浸漬したところ、果肉3の表面は黄色みを帯びるものの、発色が良いとはいえなかった。
液温を80℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を1分間浸漬したところ、果肉3の表面3aが鮮やかな黄色に変化したが、褐変した箇所がわずかに認められた。また、2分間浸漬したところ、やはり果肉3の表面3aが鮮やかな黄色に変化し、褐変した箇所が目立たなくなった。
(5)アスコルビン酸水溶液の濃度を3wt%に調整した場合
液温を30℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を45分間浸漬したところ、果肉3の表面がわずかに黄色みを帯びた色になった。
液温を100℃以下にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を2分以内浸漬したところ、まばらに表面3aが黄色に変化するとともに、渋皮剥皮済み生栗5の表面が脆くなった。
(6)アスコルビン酸水溶液の濃度を3wt%に調整した場合
液温を30℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を45分間浸漬したところ、果肉3の表面が黄変したものの、発色がよいといえる状態ではなかった。
液温を30℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を1〜2分間浸漬したところ、果肉3の表面がわずかに黄色みを帯びた色になった。
液温を80℃にした水溶液中に、渋皮付き生栗1を1〜2分間浸漬したところ、鮮やかな黄色に変化した。
従って、試験IVの結果を総括すると、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3表面3aを鮮やかな黄色に変化させるためには、アスコルビン酸水溶液の濃度を0.5〜5wt%の範囲内で、かつ、液温を約80〜90℃の範囲内とし、その中に1〜2分間渋皮剥皮済み生栗5を浸漬すればよい。
以下に本実施例に係る渋皮の剥皮方法に関する追加試験結果について詳細に説明する。
薬液の温度が果肉3の糖度に及ぼす影響、及び、アスコルビン酸を用いて果肉3の色戻しを行う際の最適な温度及び浸漬時間、及び、アスコルビン酸を用いて果肉3の色戻しを行った渋皮剥皮済み生栗5の加工適性についてそれぞれ追加試験を実施した。
なお、この度の追加試験に供試した栗は、平成20年に山口県農林総合技術センターの圃場栽培されたもので、「筑波」および「岸根」を使用した。また、この度の追加試験に供試した栗は、全て手作業で渋皮を傷つけないように鬼皮を剥皮した。
[追加試験I]
追加試験Iでは、薬液の温度が果肉3の糖度と硬度(N)に及ぼす影響について検証した。追加試験Iの試験方法は以下に示す通りである。
追加試験Iでは、まず、薬液として濃度2.5wt%の水酸化ナトリウム水溶液を調整し、この薬液をそれぞれ40℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、90℃に加温したものに渋皮付き生栗1を浸漬して60分間放置した。次に、薬液から渋皮付き生栗1を引き上げて水流と回転ブラシにより渋皮2を剥皮した(工程A)。
続いて、工程Aを完了した渋皮剥皮済み生栗5の糖度を測定するため、渋皮剥皮済み生栗5を任意に10個選定して細かく刻んだ後、凍結乾燥した。さらに、凍結乾燥した渋皮剥皮済み生栗5を、コーヒーミルを用いて粉末状に粉砕しものを、コルベットフラスコに0.1g量り取り、濃度80%のエタノールを20ml加えて環流抽出を行った。そして、濾過後に0.45ミクロンのフィルターを通して、液体クロマトグラフに供与した。また、標準品は、グルコース、フルクトース、スクロースを用いた。なお、液体クロマトグラフによる分析には、waters600E((株)ウォーターズ社製)の装置を用いた。分析条件は以下に示す通りである。カラム:リクロスファーNH2(4.0*250mm,(株)関東化学)、カラム温度:25℃、移動層:メタノール/水(70:30,V/V)、流速:1.0ml/min、検出器:示差屈折計。
さらに、工程Aを完了した渋皮剥皮済み生栗5を任意に5個選び、硬度(N)を測定した。渋皮剥皮済み生栗5の硬度の測定には、レオメータ((株)山電社製,RE-3305S)を用い、プランジャーNo,49を用いて渋皮剥皮済み生栗5の硬度を測定した。
上述のような追加試験Iの結果は、以下の表3に示す通りである。
表3に示すように、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3の糖度は、薬液の温度が50〜60℃の場合に高くなる傾向が認められた。また、渋皮剥皮済み生栗5の硬度(N)は、薬液の温度が65℃を超えると大幅に低下する傾向が認められた。従って、薬液の温度を50〜60℃に設定することで、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3の糖度の上昇効果と、渋皮剥皮済み生栗5の生煮え防止効果の両方が期待できる。
[追加試験II]
追加試験IIでは、薬液への浸漬時間が果肉3の糖度と硬度(N)に及ぼす影響について検証した。追加試験IIの試験方法は以下に示す通りである。
追加試験IIでは、まず、薬液として濃度2.5wt%の水酸化ナトリウム水溶液を調整し、この薬液を60℃に加温したものに渋皮付き生栗1を浸漬してそれぞれ、30分、45分、60分、75分、90分、120分、150分間放置した。次に、薬液から渋皮付き生栗1を引き上げて水流と回転ブラシにより渋皮2を剥皮した(工程B)。
続いて、工程Bを完了した渋皮剥皮済み生栗5の糖度及び硬度(N)の測定を、上記追加試験Iと同じ手順により行った。このような追加試験IIの結果は、以下の表4に示す通りである。
表4に示すように、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3の糖度は、薬液に60分間浸漬した場合が最も高くなる傾向が認められた。また、浸漬時間が60分間を超えると、薬液の温度を60℃にしたとしても渋皮剥皮済み生栗5の硬度(N)が低下する傾向が認められた。このため、薬液への浸漬時間は60分程度が望ましいと言える。
[追加試験III]
アスコルビン酸を用いて果肉3の色戻しを行う際の最適な温度を検証するために追加試験IIIを実施した。
追加試験IIIでは、前処理として濃度2.5wt%,液温60℃の水酸化ナトリウム水溶液に60分間渋皮付き生栗1を浸漬した後、流水と回転ブラシとで渋皮2を剥皮した渋皮剥皮済み生栗5を、2.5wt%に調整したアスコルビン酸水溶液をそれぞれ70℃、80℃、90℃、100℃に加温したものに、浸漬して2分間放置した。そして、それぞれの温度のアスコルビン酸水溶液中から色戻し処理が完了した渋皮剥皮済み生栗5を取り出し、それぞれの温度ごと任意に3個の渋皮剥皮済み生栗5を選んで、それらの色調及び硬度(N)を測定した。
色戻しを行った渋皮剥皮済み生栗5の色調の測定には、色差計(ミノルタ社製,RS232C)を用い、果肉3の表面(赤道面)を3箇所測定した。
また、色戻しを行った渋皮剥皮済み生栗5の硬度(N)の測定は、上記追加試験I,IIと同じ方法により行った。
さらに、色戻し処理を行った渋皮剥皮済み生栗5を目視した際の外観についても評価した。このような追加試験IIIの結果は、以下の表5に示す通りである。
表5に示すように、色戻しを行った渋皮剥皮済み生栗5の果肉3の硬度(N)は、アスコルビン酸水溶液の温度が高くなるにつれ低下する傾向が認められた。また、表5中の「色度(b方向)」の欄は、その値が大きいほど果肉3の色が黄色いことを意味しており、この度の追加試験IIIでは、アスコルビン酸水溶液の温度が80℃を超えた場合に果肉3の色戻し効果が高くなる傾向が認められた。このことは、目視によっても確認できた。
従って、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3の色戻し処理を行う場合には、アスコルビン酸水溶液の温度を80℃以上にすることで高い色戻し効果が期待できると言える。なお、果肉3の生煮えを防止するためには、渋皮剥皮済み生栗5が熱に曝される時間をできるだけ短くすることが望ましので、果肉3の色戻し処理を行う場合のアスコルビン酸水溶液の最適な温度は80℃であると言える。
[追加試験IV]
アスコルビン酸を用いて果肉3の色戻しを行う際の最適な浸漬時間を検証する目的で追加試験IVを実施した。
追加試験IVでは、濃度2.5wt%に調整したアスコルビン酸水溶液を80℃に加温しておきその中に、前処理として濃度2.5wt%,60℃の水酸化ナトリウム水溶液に60分間渋皮付き生栗1を浸漬した後、流水と回転ブラシとで渋皮2を剥皮した渋皮剥皮済み生栗5を、それぞれ30秒、60秒、90秒、120秒、180秒ずつ浸漬した。そして、アスコルビン酸水溶液中から渋皮剥皮済み生栗5を取り出し、それぞれの浸漬時間ごと任意に3個の渋皮剥皮済み生栗5を選んで、それらの色調及び硬度(N)を測定した。
なお、色戻し処理済み渋皮剥皮済み生栗5の色調及び硬度(N)の測定方法は、上記追加試験IIIと同じ方法により行った。このような追加試験IVの結果は、以下の表6に示す通りである。
表6に示すように、アスコルビン酸水溶液への浸漬時間が120秒を超えると、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3は鮮やかな黄色を呈するようになるとともに、果肉3の硬度が低下し始める傾向が認められた。
従って、渋皮剥皮済み生栗5の果肉3を鮮やかな黄色にするには、アスコルビン酸水溶液に少なくとも120秒間浸漬することが望ましく、120秒間が経過した後は、アスコルビン酸水溶液から渋皮剥皮済み生栗5を速やかに引き上げることが望ましいと言える。
[追加試験V]
アスコルビン酸水溶液を用いた色戻し処理に対する水酸化ナトリウムの影響を検証する目的で、追加試験Vを実施した。また、併せて従来のクチナシ色素による色戻し処理効果の比較も行った。
追加試験Vでは、渋皮2の剥皮方法として、「手剥き」と「薬品処理(水酸化ナトリウム)」の2種類とし、それぞれに対して、「アスコルビン酸水溶液」又は「クチナシ色素」を用いて果肉3の色戻し処理を行った。それぞれの処理区は下記表7に示すとおりである。
処理区A,Bでは、渋皮付き生栗1の渋皮2を手剥きにより剥皮した。
また、処理区C,Dでは、濃度2.5wt%、液温60℃に調整した水酸化ナトリウム水溶液中に、渋皮付き生栗1を60分間浸漬した後、流水と回転ブラシを用いて渋皮2を剥皮した。
さらに、処理区A,Cでは、濃度2.5wt%、温度80℃に調整したアスコルビン酸水溶液中に、手剥き又は薬品処理により渋皮2を剥皮した渋皮剥皮済み生栗5を120秒間浸漬して色戻し処理を行った。
そして、処理区B,Dでは、濃度0.04wt%のクチナシ色素入り水溶液(常温)中に、手剥き又は薬品処理により渋皮2を剥皮した渋皮剥皮済み生栗5を16時間浸漬して色戻し処理を行った。
さらに、上述のような処理を行った処理区A〜Dのそれぞれから任意に3個の果肉3を選び、色調及び硬度(N)を測定するとともに、その外観についても観察した。
なお、各処理区の色戻し処理済み渋皮剥皮済み生栗5の色調及び硬度(N)の測定は、上述の追加試験IIIと同じ方法により行った。このような追加試験Vの結果は、以下の表8に示す通りである。
表8に示すように、手剥きにより渋皮2を剥皮した処理区A及び処理区Bを比較した場合、アスコルビン酸水溶液を用いて色戻し処理を行った処理区Aの色度(b方向)が、クチナシ色素で色戻し処理を行った処理区Bよりも低い値を示す傾向が認められたが、目視では両者の間に顕著な差は認められなかった。
また、薬品処理により渋皮2剥皮した処理区C及び処理区Dを比較した場合、色戻し処理方法の違いによる色戻し効果には大きな差が認められなかった。これにより、アスコルビン酸水溶液はクチナシ色素水溶液と同程度の色戻し効果を有すると言える。
さらに、アスコルビン酸水溶液により色戻し処理を行った処理区A及び処理区Cを比較した場合、手剥きにより渋皮2を剥皮した処理区Aの色度(b方向)が、薬品処理により渋皮2を剥皮した処理区Cよりも、色度(b方向)が低い値を示す傾向が認められたが、目視では両者の間に顕著な差は認められなかった。これにより、渋皮2の剥皮処理に用いられる水酸化ナトリウムが色戻し効果に好ましくない影響を及ぼす恐れはないと言える。
従って、アスコルビン酸水溶液を用いた場合、手剥きにより渋皮2を剥皮した場合でも、薬品処理により渋皮2を剥皮した場合でも、外観上はクチナシ色素と同程度に色戻しすることができると言える。
[追加試験VI]
アスコルビン酸水溶液を用いて色戻し処理を行った渋皮剥皮済み生栗5の加工適性を検証する目的で追加試験VIを実施した。
追加試験VIでは、手剥きにより渋皮2を剥皮した後アスコルビン酸水溶液で色戻し処理を行った渋皮剥皮済み生栗5(処理区A)と、薬品処理により渋皮2剥皮した後アスコルビン酸水溶液で色戻し処理を行った渋皮剥皮済み生栗5(処理区C)とをそれぞれ甘露煮(栗の蜜漬)にした後、それぞれの色調及び硬度(N)を測定した。
なお、色調及び硬度(N)の測定方法は、先に述べた追加試験IIIに記載される方法と同じである。
処理区A,Cの渋皮剥皮済み生栗5を用いた甘露煮(栗の蜜漬)の作り方については、図3に示した。このような追加試験Vの結果は、以下の表9に示す通りである。
表8に示すように、アスコルビン酸水溶液により色戻し処理を行った際に、薬品処理により渋皮2の剥皮を行った場合(処理区C)の方が、手剥きにより渋皮2を剥皮した場合に比べて、黄色の色合いが高くなる傾向が認められた。また、薬品処理により渋皮2の剥皮を行った場合(処理区C)の方が、硬度(N)が若干高い傾向にあった。なお、甘露煮(栗の蜜漬)にした果肉3の硬度(N)が高いということは、加工後のビン詰め作業時などに果肉3が割れにくいということを意味している。
従って、薬品処理により渋皮2を剥皮した場合、製菓用等の加工に適した渋皮剥皮済み生栗5を提供することができると言える。
以上説明したように、本発明は短時間でクチナシ色素を用いた場合と同じくらい鮮やかな黄色にすることができる生栗色戻し方法とその方法で色戻しした生栗であり、農産物の加工に関する分野や広く食品の分野において利用可能である。
本発明の実施例に係る生栗色戻し方法の作業工程を示すフローチャートである。 (a)は図1に示すステップS1を完了した直後の生栗の様子を示す断面図であり、(b)は図1に示すステップS2を完了した直後の生栗の様子を示す断面図である。 栗の蜜漬の作り方である。
符号の説明
1…渋皮付き生栗 2…渋皮 3…果肉 4…境界 5…渋皮剥皮済み生栗

Claims (6)

  1. 渋皮を剥皮した生栗をアスコルビン酸水溶液に浸漬して前記生栗の色戻しを行うα工程を有することを特徴とする生栗色戻し方法。
  2. 前記アスコルビン酸水溶液は、濃度が0.5〜5wt%の範囲内であり、かつ、液温80〜90℃の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の生栗色戻し方法。
  3. 前記α工程の前に、水酸化ナトリウム水溶液を用いて生栗の渋皮を剥皮するβ工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の生栗色戻し方法。
  4. 前記β工程は、液温が55〜70℃に保たれた濃度2.5〜5wt%の水酸化ナトリウム水溶液中に,渋皮付の生栗を少なくとも1時間浸漬する第1の工程と、
    この第1の工程の後に、前記生栗の軟化した部分を流水と摩擦により除去する第2の工程とを備えることを特徴とする請求項3に記載の生栗色戻し方法。
  5. 前記水酸化ナトリウム水溶液の重量は、前記生栗の重量の1.5〜2倍の範囲内であることを特徴とする請求項4に記載の生栗色戻し方法。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された発明によって色戻ししたことを特徴とする生栗。
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