JP2009250187A - Egr制御方法、egr制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンに付帯するEGRシステムにおいて、運転領域の変化にかかわらずEGR量を安定的に制御する。
【解決手段】吸入空気量11、過給機前圧力12及び掃気圧13に各々目標値を設定し、これら制御量を出力、これら制御量を変動させる複数のバルブ45、42、34に対する操作を入力とした多入力多出力の適応スライディングモード制御を行う。適応スライディングモードコントローラ5は、制御入力の要素である適応項を式(数1)に則って算定する。
【選択図】図1
【解決手段】吸入空気量11、過給機前圧力12及び掃気圧13に各々目標値を設定し、これら制御量を出力、これら制御量を変動させる複数のバルブ45、42、34に対する操作を入力とした多入力多出力の適応スライディングモード制御を行う。適応スライディングモードコントローラ5は、制御入力の要素である適応項を式(数1)に則って算定する。
【選択図】図1
Description
本発明は、自動車等のエンジンに付帯する排気ガス再循環システムのEGR量を制御する方法に関する。
排気ガスの一部を吸入空気と混合することによって最高燃焼温度を低下させ、燃焼時に発生する有害物質量を抑制することが一般に知られている。下記特許文献1に開示されている排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)システムは、過給機を備えたエンジンのEGR量を制御するものである。過給圧とEGR量との間には相互干渉が存在し、1入力1出力のコントローラで過給圧、EGR量の両方を同時に制御することは難しい。加えて、エンジンの運転領域によって応答性が異なる上に、過給機にはターボラグ(むだ時間)がある。このような事情から、特許文献1に記載のシステムでは、非線形制御対象に対して有効な制御手法であるスライディングモード制御を採用し、相互作用を考慮した他入力多出力のコントローラを設計してEGR制御をしている。
特開2007−032462号公報
従前は、ある一つの運転領域について設計したコントローラで全運転領域のEGRを制御していたので、運転領域の変化に対して高い制御性を維持することが難しいという問題があった。
以上に鑑みてなされた本発明は、運転領域の変化にかかわらずEGR量を安定的に制御することを所期の目的とする。
本発明では、エンジンに付帯する排気ガス再循環システムのEGR量を制御する方法において、吸排気系における流量または流体圧に関する量であって、検出可能であり、かつそれぞれ値を定めることでEGR量を制御できるような複数の制御量に各々目標値を設定し、これら制御量を変動させる複数の操作部に対する操作を入力とした多入力多出力の適応スライディングモード制御によって各操作部を制御し、その制御入力の要素である適応項を式(数1)に則って定めることとした。
このようなものであれば、適応項を加味した適応スライディングモードコントローラを以て運転領域の変化分を補正することができる。その上、適応項における未知パラメータθの適応速度を高め、状態量を速やかに収束させることができる。ひいては、運転領域の変化にかかわらず良好な制御性能が得られ、排ガス中のNOxの抑制や燃費の向上等に資する。
本発明によれば、運転領域の変化にかかわらずEGR量を安定的に制御することが可能である。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1に示すものは、本発明の適用対象の一であるEGR(Exhaust Gas Recirculation)システムである。このEGRシステムは、吸排気系3、4における複数の流量または流体圧に関する量を計測する計測器11、12、13と、それらの制御量に目標値を設定し、各制御量を目標値に追従させるべく複数の操作部45、42、34を操作する電子制御装置5とを具備してなる。
エンジン2の吸気系3には、スーパーチャージャ31、可変容量ターボ(Variable Geometry Turbocharger)コンプレッサ32を配設するとともに、その下流に吸気冷却用のインタークーラ33を設ける。過給機より上流側には、吸入空気(新気)量を調節するDスロットルバルブ34を設ける。加えて、吸入空気量を検出する流量計11、過給圧を検出する圧力計12、スロットル下流圧を検出する圧力計13をそれぞれ設置する。
エンジン2の排気系4には、コンプレッサ32を駆動するVGTタービン41を配設し、タービン41に流入する排気ガス量を調節するノズルベーン(図示せず)やウェイストゲートバルブ42を設ける。そして、エンジン2の燃焼室より排出される排気ガスの一部を吸気系3に還流させる排気ガス再循環通路43を形成する。排気ガス再循環通路43は、吸気系3におけるスロットルバルブ34と過給機31、32との中間部に接続する。排気ガス再循環通路43には、排気冷却用のEGRクーラ44と、通過する排気ガス量を調節する外部EGRバルブ45とを設ける。
EGRには、排気ガス再循環通路43を介して吸気系3に排気ガスを還流する外部EGRと、燃焼室内に既燃ガスを残留させる内部EGRとがある。吸入空気量及び過給圧を制御すれば外部EGRを、スロットル下流圧を制御すれば内部EGRを、それぞれ制御し得る。本実施形態では、EGR量を決定する複数の制御量、即ち吸入空気量、過給圧及びスロットル下流圧にそれぞれ目標値を設定し、各制御量を一括に目標値に向かわせるべく複数の操作部、即ち外部EGRバルブ45、ウェイストゲートバルブ42(または、VGTノズルベーン)、スロットルバルブ34を制御することによって、EGR量の制御を実現する。
外部EGRバルブ45、ウェイストゲートバルブ42、スロットルバルブ34は、電子制御装置5により制御されてその開度をリニアに変化させる。各バルブ45、42、34は、駆動信号のデューティ比を増減させることで開度を変える電気式のバルブや、あるいはバキュームコントロールバルブ等と組み合わされ弁体のリフト量を制御して開度を変える機械式のバルブ等を用いてなる。
電子制御装置5は、プロセッサ、RAM、ROMまたはフラッシュメモリ、A/D変換回路、D/A変換回路等を包有するマイクロコンピュータである。電子制御装置5は、吸入空気量、過給圧及びスロットル下流圧を検出する計測器11、12、13の他、エンジン回転数、アクセルペダルの踏込量、冷却水温、吸気温、外部の気温、気圧等を検出する各種計測器(図示せず)と電気的に接続し、これら計測器から出力される信号を受け取って各値を知得することができる。並びに、電子制御装置5は、外部EGRバルブ45、ウェイストゲートバルブ42、スロットルバルブ34や燃料噴射ポンプ21等と電気的に接続しており、これらバルブ34、45、42やポンプ21等を駆動するための信号を入力することができる。
電子制御装置5で実行するべきプログラムは予めROMまたはフラッシュメモリに格納されており、その実行の際にRAMへ読み込まれ、プロセッサによって解読される。電子制御装置5は、プログラムに従いエンジン2の制御を実行する。例えば、エンジン回転数、アクセルペダルの踏込量、冷却水温等の諸条件に基づき要求される燃料噴射量(いわば、エンジン負荷)を決定し、その要求噴射量に対応する駆動信号を燃料噴射ポンプ21に入力して燃料噴射を制御する。その上で、電子制御装置5は、プログラムに従い、図2に示す目標値設定部51及び制御部52としての機能を発揮する。目標値設定部51及び制御部52は、本実施形態におけるEGR制御装置の構成要素となる。
目標値設定部51は、少なくともエンジン回転数に基づき、複数の制御量の目標値を設定する。フィードバック制御時、電子制御装置5は、各種計測器(図示せず)が出力する信号を受け取ってエンジン回転数、アクセル踏込量、冷却水温、吸気温、外部の気温及び気圧等を知得し、要求噴射量を決定する。続いて、少なくともエンジン回転数及び要求噴射量に基づき、目標吸入空気量、目標過給圧及び目標スロットル下流圧を設定する。電子制御装置5のROMまたはフラッシュメモリには予め、エンジン回転数及び要求噴射量に対応して設定するべき各目標値を示すマップデータが格納されている。マップに記述される各目標値は、エンジン回転数、要求噴射量等に応じた適切なEGR量を実現する値であって、ベンチ試験によって適合したものである。電子制御装置5は、エンジン回転数及び要求噴射量をキーとしてマップを検索し、吸入空気量、過給圧及びスロットル下流圧の目標値を得る。さらに、マップを参照して得た目標値を基本値とし、これを冷却水温、吸気温、外部の気温や気圧等に応じて補正して最終的な目標値とする。
制御部52は、複数の制御量を目標値設定部51で設定した目標値に向かわせるべく複数の操作部45、42、34をフィードバック制御する適応スライディングモードコントローラである。電子制御装置5は、計測器11、12、13が出力する信号を受け取って吸入空気量、過給圧及びスロットル下流圧の現在値を知得し、各制御量の現在値と目標値との偏差から制御入力、つまりは外部EGRバルブ45の開度、ウェイストゲートバルブ42の開度(VGTの開度)及びスロットルバルブ34の開度を演算して、各々に対応する駆動信号をバルブ34、45、42に入力、開度を操作する。
EGR量の適応スライディングモード制御に関して詳記する。本実施形態では、吸入空気量y1、過給圧y2、スロットル下流圧y3を制御出力ベクトルYとし、外部EGRバルブ45の開度u1、ウェイストゲートバルブ42の開度u2、スロットルバルブ34の開度u3を制御入力ベクトルUとした3入力3出力のフィードバック制御を行う。但し、下の状態方程式(数2)に示すように、状態量ベクトルXを出力ベクトルYから直接知得できる構造とする、換言すれば計測器11、12、13を介して検出可能な量を直接の制御対象とすることにより、状態推定オブザーバを排して推定誤差に伴う制御性能の低下を予防している。
行列A、B、Cは、それぞれ3×3行列である。行列Cは既知、本実施形態では単位行列とする。プラントのモデル化、即ち状態方程式(数2)における行列A、Bの同定にあたっては、各バルブ45、42、34に様々な周波数からなるM系列信号を入力して開度を操作し、吸入空気量、過給圧及びスロットル下流圧の値を観測して、その入出力データから行列A、Bを同定する。各バルブ45、42、34に入力するM系列信号は、互いに無相関なものとする。これにより、各制御量の相互干渉を考慮したモデルを作成することができる。
図3に、適応スライディングモード制御系のブロック線図を示す。スライディングモードコントローラの設計手順には、切換超平面の設計と、状態量を切換超平面に拘束するための非線形切換入力の設計とが含まれる。
1形のサーボ系を構成するべく、目標値ベクトルRと出力ベクトルYとの偏差の積分値ベクトルZを新たな状態量として定義すると、下式(数3)を得る。
安定余裕を考慮し、切換超平面の設計にはシステムの零点を用いた設計手法を用いる。即ち、上式(数3)の拡大系がスライディングモードを生じているときの等価制御系が安定となるように超平面を設計する。切換関数σを式(数4)で定義すると、状態が超平面に拘束されている場合にσ=0となり、式(数5)が成立する。
故に、スライディングモードが生じているときの等価制御入力は、下式(数6)となる。
上式(数6)の等価制御入力を拡大系の状態方程式(数3)に代入すると、下式(数7)の等価制御系となる。
この等価制御系が安定になるように超平面を設計することと、目標値Rを無視した系に対して設計することとは等価であるので、下式(数8)が成立する。
上式(数8)の系に対して安定度εを考慮し、最適制御理論を用いてフィードバックゲインを求め、それを超平面とすると、下式(数9)となる。
行列Psは、リカッチ方程式(数10)の正定解である。
リカッチ方程式(数10)の重みQsのうち、q1、q2、q3は偏差の積分Zに対する重みであり、制御系の周波数応答の速さの違いにより決定する。また、q4、q5、q6は出力Yに対する重みであり、ゲインの大きさの違いにより決定する。
超平面に拘束するための入力の設計には、最終スライディングモード法を用いる。ここでは、制御入力Uを、等価制御入力(線形入力)Ueqと新たな入力Unl(非線形入力)との和として、下式(数11)で表す。
切換関数σを安定させたいので、σについてのリアプノフ関数を下式(数12)のように選び、これを微分すると式(数13)となる。
式(数11)を式(数13)に代入すると、下式(数14)となる。
非線形入力Unlを下式(数15)とすると、リアプノフ関数の微分は式(数16)となる。
従って、kを正とすれば、リアプノフ関数の微分値を負とすることができ、スライディングモードが保証される。このときの制御入力Uは、下式(数17)である。
ηはチャタリング低減のために導入した平滑関数であって、η>0である。
スライディングモード制御では、状態量を超平面に拘束するために非線形ゲインを大きくする必要がある。だが、非線形ゲインを大きくすると、制御入力にチャタリングが発生する。そこで、モデルの不確かさを二つの部分に分ける。一つは、構造が既知でパラメータが未知な確定部分、もう一つは、構造が未知だがその上界値が既知な不確定部分である。状態方程式(数2)に不確かさ(f+Δf)を加え、下式(数18)で表す。
不確かさの確定部分fは、未知パラメータθを同定することで補償される。さすれば、切換ゲインは不確かさの不確定部分Δfのみにかかることとなり、切換ゲインが不確実成分全体(f+Δf)にかかる場合と比べて制御入力のチャタリングを大幅に低減できる。
制御入力Uは、式(数17)に適応項Uadを追加した下式(数19)となる。
適応スライディングモード制御では、関数hを状態量x及び/または未知パラメータθの関数とするが、本実施形態では、hをx及びθに無関係な単純式、定数とすることにより、xを速やかに収束させ、θの適応速度を高めるようにしている。特に、本実施形態では、h=1としており、推定パラメータを下式(数20)に則って同定する。
本実施形態の適応スライディングモード制御の性能を、適応しないスライディングモード制御と比較した実験結果を、図4ないし図6に示す。図4は、1550rpmの軽負荷運転条件下でのステップ応答実験であり、時刻1の時点で吸入空気量の目標値26、過給圧の目標値120、スロットル下流圧の目標値96をステップ的に与えている。適応スライディングモード制御、スライディングモード制御ともに制御量が目標値に収束しているが、適応スライディングモード制御の方が収束が速い。加えて、適応スライディングモード制御はσを0に収束できている。これは、状態が超平面に拘束されて等価制御系が成立していることを示す。
図5は、エキストラアーバンサイクル(European ECE/EUDC test cycle)における70km/hから100km/hへの加速時の追従実験である。適応スライディングモード制御、スライディングモード制御ともに制御量が目標値に収束している。図6は、制御量と目標値との偏差を示しているが、適応スライディングモード制御の方が偏差が小さく、目標値への追従性に優れていることが分かる。また、過渡運転でも、適応スライディングモード制御はσを0に収束できている。
本実施形態によれば、エンジン2に付帯する排気ガス再循環システムのEGR量を制御する方法において、吸排気系3、4における流量または流体圧に関する量であって、計測器11、12、13を介して検出可能であり、かつそれぞれ値を定めることでEGR量を制御できるような複数の制御量に各々目標値を設定し、これら制御量を変動させる複数の操作部45、42、34に対する操作を入力とした多入力多出力の適応スライディングモード制御によって各操作部45、42、34を制御し、その制御入力の要素である適応項を式(数1)に則って定めることとしたため、適応項にて運転領域の変化分を補正することができる。よって、運転領域毎にコントローラ52のゲインを個別設定する必要がなくなり、設計が容易になる。その上、適応項における未知パラメータθの適応速度を高め、状態量を速やかに収束させることができる。ひいては、運転領域の変化にかかわらず良好な制御性能が得られ、排ガス中のNOxの抑制や燃費の向上等に資する。
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。例えば、吸気系3に過給機31、32をバイパスする通路が存在している場合には、その通路上に設けられたバルブをも操作対象とすることがある。このとき、当該バイパス通路のガス流量等を出力に含め、当該バイパス通路上のバルブに対する操作を入力に含めた、4入力4出力の制御系となる。
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
11、12、13…計測器
45、42、34…操作部
5…EGR制御装置
51…目標値設定部
52…制御部
45、42、34…操作部
5…EGR制御装置
51…目標値設定部
52…制御部
Claims (2)
- エンジンに付帯する排気ガス再循環(Exhaust Gas Recirculation)システムのEGR量を制御する方法において、
吸排気系における流量または流体圧に関する量であって、検出可能であり、かつそれぞれ値を定めることでEGR量を制御できるような複数の制御量に各々目標値を設定し、
これら制御量を変動させる複数の操作部に対する操作を入力とした多入力多出力の適応スライディングモード制御によって各操作部を制御することとし、
その制御入力の要素である適応項を式(数1)に則って定めることを特徴とするEGR制御方法。
- 請求項1記載のEGR制御方法を実施するために用いられるものであって、
吸排気系における複数の流量または流体圧に関する量を計測する計測器と、
少なくともエンジン回転数に基づき前記複数の量の目標値を設定する目標値設定部と、
前記複数の量を前記目標値に向かわせるべく複数の操作部を操作する適応スライディングモード制御を行う制御部とを具備し、
前記制御部が、制御入力の要素である適応項を式(数1)に則って定めることを特徴とするEGR制御装置。
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JP2015094258A (ja) * | 2013-11-11 | 2015-05-18 | 富士通株式会社 | エンジン制御装置、方法及びプログラム |
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