JP2009249927A - 擁壁構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】ブロック本体内に充填した胴込め材が、河川により開放部を通して流出されるのを防止すること。
【解決手段】少なくとも前・後壁と、両前・後壁を連結する連結体とを具備して上面開口状態となした擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設け、複数の上記擁壁ブロックを階段状に段積みして構築した。従って、擁壁ブロックを階段状に段積みして擁壁を構築する際には、下段の擁壁ブロックの前壁と、上段に段積みした擁壁ブロックの前壁との間に、下段の擁壁ブロックの上面開口部の前部を部分的に開放させて、開放部を形成する。この際、各擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設けているため、開放部の前後幅は、従来の垂直状の前壁を具備する擁壁ブロックに比して、勾配を有する前壁の平面投影前後幅だけ小さく設定することができる。
【選択図】図1
【解決手段】少なくとも前・後壁と、両前・後壁を連結する連結体とを具備して上面開口状態となした擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設け、複数の上記擁壁ブロックを階段状に段積みして構築した。従って、擁壁ブロックを階段状に段積みして擁壁を構築する際には、下段の擁壁ブロックの前壁と、上段に段積みした擁壁ブロックの前壁との間に、下段の擁壁ブロックの上面開口部の前部を部分的に開放させて、開放部を形成する。この際、各擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設けているため、開放部の前後幅は、従来の垂直状の前壁を具備する擁壁ブロックに比して、勾配を有する前壁の平面投影前後幅だけ小さく設定することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、所要の擁壁勾配を確保したまま胴込め材の流出防止が量れる擁壁構造に関する。
従来、擁壁構造の一形態として、垂直状に立ち上げて形成した前・後壁と左・右側壁とから上面開口に形成した擁壁ブロックを、背後地面に沿わせて階段状に段積みして構築したものがある(例えば、特許文献1参照)。
この際、階段状に段積みされた下段の擁壁ブロックの前壁と、直上段に段積みした擁壁ブロックの前壁との間で、下段の擁壁ブロックの上面開口部の前部が部分的に開放されて、開放部が形成されることになるが、この開放部の前後幅が擁壁ブロック内に充填した胴込め材の外径よりも大きくなることがある。
そのために、河川護岸として擁壁を構築した場合には、擁壁ブロック内に充填した胴込め材が上記開放部から流出されるおそれがあり、この開放部に位置する擁壁ブロックの左・右側壁間に、胴込め材流出防止体を介設して、胴込め材が開放部から流出されるのを防止している。
特許第3923449号公報
ところが、上記の擁壁構造では、擁壁ブロックの左・右側壁間に、胴込め材流出防止体を設置するため、同流出防止体の製造コスト及び設置手間を要していた。本発明は、胴込め材流出防止体等の付帯部材を用いずに、胴込め材の流出を防止しようとするものである。
そこで、本発明では、階段状に段積みしする擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設け、開放部を狭めることにより、胴込め材流出防止体を設けることなく、胴込め材の流出を防止するものである。
また、本発明は、以下の構成にも特徴を有する。
(1)擁壁ブロックは、前・後壁間に、連結体として左右一対の側壁を介設し、各側壁の外側面後部には外側方に膨出する左右間隔保持片を形成して、左右方向に隣接する両擁壁ブロックの左右間隔保持片を相互に当接させて配置して、両左右間隔保持片の前方に空間を形成したこと。
(2)左右間隔保持片に、前記空間と連通する連通路を形成したこと。
(1)擁壁ブロックは、前・後壁間に、連結体として左右一対の側壁を介設し、各側壁の外側面後部には外側方に膨出する左右間隔保持片を形成して、左右方向に隣接する両擁壁ブロックの左右間隔保持片を相互に当接させて配置して、両左右間隔保持片の前方に空間を形成したこと。
(2)左右間隔保持片に、前記空間と連通する連通路を形成したこと。
(1)請求項1記載の本発明は、少なくとも前・後壁と、両前・後壁を連結する連結体とを具備して上面開口状態となした擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設け、複数の上記擁壁ブロックを階段状に段積みして構築している。
従って、擁壁ブロックを階段状に段積みして擁壁を構築する際は、下段の擁壁ブロックの前壁と、上段に段積みした擁壁ブロックの前壁との間に、下段の擁壁ブロックの上面開口部の前側を一部開放して、小さな開放部を形成する。この際、各擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設けているため、開放部の前後幅は、従来の垂直状の前壁を具備する擁壁ブロックに比して、勾配を有する前壁の平面投影前後幅だけ小さくできる。
そのため、河川護岸の水域部においては、開放部の前後幅を各擁壁ブロック内に充填する胴込め材(例えば、栗石)の外径よりも小さく設定することにより、胴込め材の流出が防止できる。しかも、擁壁ブロック内に充填した胴込め材の間隙は、開放部を通して河川と連通させることができるため、子魚や甲殻類の生息空間となる。また陸域部では、開放部に充填材(客土)を充填して、植生のための客土部を形成すると共に、各段の客土部を前低後高の後傾状となした各段の前壁により接続状態となすことにより、小動物や昆虫達の擁壁上での移動を容易にさせることができる。
このように、本発明に係る擁壁構造は、河川や陸上の生きもの達への生息環境を向上させることができる。
また、胴込め材Dの転圧に関しては、前壁の傾斜角とその高さに影響を受ける。なぜなら、擁壁勾配を5分に形成する際において、擁壁ブロックの前壁の傾斜角を擁壁勾配と同一の5分とすると、胴込め材を転圧機で転圧できない領域(5分傾斜の前壁内側の平面投影面積部分)が大きくなるため、転圧効果が低減する。その点、本発明は、擁壁ブロックの前壁の傾斜角を、例えば2分とすることにより、転圧機で転圧できない領域を2分傾斜の平面投影面積部分に縮小できるため、堅実な締め固めが可能となる。しかも、擁壁勾配は5分に確保することができる。ここで、擁壁勾配とは、段積みした各擁壁ブロックの前壁の上端を結んで形成される仮想傾斜線が、仮想水平線との間になす勾配をいう。
(2)請求項2記載の本発明では、擁壁ブロックは、前・後壁間に、連結体として左右一対の側壁を介設し、各側壁の外側面後部には外側方に膨出する左右間隔保持片を形成して、左右方向に隣接する両擁壁ブロックの左右間隔保持片を相互に当接させて配置して、両左右間隔保持片の前方に空間が形成されるようにしている。
このように、両左右間隔保持片の前方に空間が形成されるため、河川の護岸として擁壁を構築した場合には、空間内に河川の流れが一部滞留してよどみが形成されて、魚等の水生動物に生息空間を提供することができる。
(3)請求項3記載の本発明では、左右間隔保持片に、前記空間と連通する連通路を形成している。
このように、魚巣空間として機能する空間と、河川で生育する魚等の遊路として機能する連通路とを連通させているため、河川護岸として擁壁を構築した場合には、水生動物の生息環境をさらに向上させることができる。
図1は、本発明に係る魚巣用の擁壁ブロックA1と植生用の擁壁ブロックA2とを、基礎部B上に段積みすることにより構築した護岸用の擁壁Yの側面断面説明図であり、また、図2(a)は、同擁壁Yの平面説明図、図2(b)は、同擁壁Yの断面正面説明図である。
すなわち、擁壁Yは、図1及び図2に示すように、河床K1の地盤中に基礎部Bを配設し、基礎部Bの一部を形成する最下段の魚巣用の擁壁ブロックA1を基礎固めのために敷設し、この擁壁ブロックA1の上に平常水位以下の河川K2中及び河床K1の下に一段ないしは複数段(本実施の形態では二段)の魚巣用の擁壁ブロックA1を段積みし、さらにその上に複数段の植生用の擁壁ブロックA2を階段状に段積みして構築している。
そして、魚巣用の擁壁ブロックA1内には、例えば、50mm〜150mmの栗石を胴込め材Dとして充填すると共に、これらの魚巣用の擁壁ブロックA1の背後に同じ栗石を裏込め材Uとして充填し、また、植生用の擁壁ブロックA2内には、例えば、0.01mm〜40mmの砕石を胴込め材Dとして充填すると共に、同擁壁ブロックA2の背後に同じ砕石を裏込め材Uとして充填して空積擁壁を構築している。
ここで空積(擁壁)とは、各擁壁ブロックの内部に胴込め材Dとして塊状物を充填したものであり、一方、練積(擁壁)とは、胴込め材Dとして半固形状の充填材(生コンクリート)を充填したものである。
魚巣用の擁壁ブロックA1と植生用の擁壁ブロックA2は、図3にも示すように、それぞれ共通形態のブロック本体1に、魚巣用の魚巣空間保持体2ないしは植生用の客土空間保持体3を組み付けて構成している。すなわち、ブロック本体1に魚巣空間保持体2を組み付けたものが魚巣用の擁壁ブロックA1であり、また、ブロック本体1に客土空間保持体3を組み付けたものが植生用の擁壁ブロックA2である。
また、通常水位レベルより上位のブロックA1に魚巣空間保持体2を配設した場合は、魚類等の出水時の非難場としての空間(シェルター)となる。なお、最下段の擁壁ブロックA1に魚巣空間保持体2を配設した場合には、たとえば、河床K1の位置が河川K2の水流等により掘り下げられて最下段の擁壁ブロックA1の位置まで下がった際に、この最下段の擁壁ブロックA1を、魚巣空間を保持した魚巣用の擁壁ブロックA1として用いることができる。
そして、本実施形態では、上記基礎部Bとその上に載設される最下段の擁壁ブロックA1との間に、滑動抵抗体(後述する基礎部用滑動抵抗体23)を配設して、同滑動抵抗体により最下段の擁壁ブロックA1の滑動を防止し、そして、その擁壁ブロックA1の上に段積みする擁壁ブロックA1との間に、滑動抵抗体(後述する境界部用滑動抵抗体30)配設して、同滑動抵抗体により上段の擁壁ブロックA1の滑動を防止している。同様に、その上に段積みする各擁壁ブロックA1,A1との間、及び、各擁壁ブロックA1,A2との間、及び、各擁壁ブロックA2,A2との間に、それぞれ滑動抵抗体(後述する境界部用滑動抵抗体30)配設して、各滑動抵抗体により上段の擁壁ブロックの滑動を防止している。
以下に、説明の便宜上、まず、ブロック本体1の構成を説明し、その後に、滑動防止構造を具備する擁壁Yの構築方法を説明する。
〔ブロック本体1の構成〕
ブロック本体1は、図1〜図3(平面説明図(a)と背面説明図(b)と側面説明図(c))に示すように、前・後壁4,5と左・右側壁6,7とから上・下面開口の四角形筒状に形成しており、後壁5は、前壁4の高さの半分よりも低く形成している。12は上面開口部、13は下面開口部である。なお、18は、水生動物が出入り可能な孔であり、魚巣用のブロック本体1の前壁4に適宜形成して、魚巣機能を向上させるようにしている。
ブロック本体1は、図1〜図3(平面説明図(a)と背面説明図(b)と側面説明図(c))に示すように、前・後壁4,5と左・右側壁6,7とから上・下面開口の四角形筒状に形成しており、後壁5は、前壁4の高さの半分よりも低く形成している。12は上面開口部、13は下面開口部である。なお、18は、水生動物が出入り可能な孔であり、魚巣用のブロック本体1の前壁4に適宜形成して、魚巣機能を向上させるようにしている。
しかも、ブロック本体1の下端面は、水平積みすべく水平面に形成し、前壁4(少なくとも前面)に、ブロック本体1の下端面に対して、前低後高の後傾状となした傾斜角θ1を設けている(本実施形態では、2部勾配)。そして、後壁5も前壁4に略平行させて前低後高の後傾状となしている。
そして、左・右側壁6,7は、後壁5の後面下端から垂直上方に立ち上げた仮想線位置まで前壁4と同一高さの前部天端面6a,7aを形成すると共に、同仮想線位置にて垂直後端面6b,7bを形成し、同垂直後端面6b,7bの下端を後壁5より少し高い位置に配置して、同位置に後壁5と連続する後部天端面6c,7cを後壁5の後面の仮想延長位置まで形成して、後壁5上方に、垂直後端面6b,7bと後部天端面6c,7cとから切り欠き状の段付き凹部6d,7dを形成している。
従って、図1及び図2にも示すように、ブロック本体1を背後地面に沿わせて階段状に段積みして擁壁Yを構築する際には、下段のブロック本体1の前壁4と、上段に段積みしたブロック本体1の前壁4との間に、下段のブロック本体1の上面開口部12の前部を部分的に開放させて、開放部14を形成する。この際、各ブロック本体1の前壁4に、前低後高の後傾状となした勾配θ1を設けているため、開放部14の前後幅は、従来の垂直状の前壁を具備する擁壁ブロックに比して、勾配θ1を有する前壁4の平面投影前後幅だけ小さく設定することができる。
そのため、河川護岸の水域部においては、開放部14の前後幅を各ブロック本体1内に充填する胴込め材(例えば、栗石)Dの外径よりも小さく設定することにより、胴込め材Dが流出されるのを防止することができる。しかも、ブロック本体1内に充填した胴込め材Dの間隙は、開放部14を通して河川K2と連通させることができるため、子魚や甲殻類の生息空間となる。また、陸域部では、客土空間保持体3を介して保持される客土空間内に客土(充填材)を充填して、植生のための客土部15を開放部14に位置させて形成すると共に、各段の客土部15を前低後高の後傾状となした各段の前壁4により接続状態となすことにより、小動物や昆虫達の擁壁Y上での移動を容易にさせることができる。
このように、本実施形態に係る擁壁構造は、河川や陸上の生きもの達への生息環境を向上させることができる。
また、胴込め材Dの転圧に関しては、前壁4の傾斜角(θ1)とその高さに影響を受ける。なぜなら、擁壁勾配(θ2)を5分に形成する際において、ブロック本体の前壁の傾斜角(θ1)を擁壁勾配(θ2)と同一の5分とすると、胴込め材Dを転圧機で転圧できない領域(5分傾斜の前壁内側の平面投影面積部分)が大きくなるため、転圧効果が低減する。その点、本発明は、ブロック本体1の前壁4の傾斜角(θ1)を、例えば2分とすることにより、転圧機で転圧できない領域を2分傾斜の平面投影面積部分に縮小できるため、堅実な締め固めが可能となる。しかも、擁壁勾配は5分に確保することができる。
左・右側壁6,7の外側面の後部には、図3(a)(b)に示すように、左右間隔保持片としての接合部8,9を外側方へ膨出させかつ上下方向に伸延させて形成しており、各接合部8,9の前側と後側には、それぞれテーパー面8a,8b,9a,9bを形成している。しかも、各接合部8,9の先端部の上下部には、前後方向に貫通状に伸延する円弧状の連通部形成凹部8c,8d,9c,9dを上下平行状態に形成している。
このようにして、複数のブロック本体1,1は、図2に示すように、左右方向に伸延する略同一直線上にて接続状態に配置することができ、この際、左側のブロック本体1の接合部9と右側のブロック本体1の接合部8とを突き合わせ状態に接合させるようにしている。
この際、接合した接合部8,9と左側のブロック本体1の右側壁7と右側のブロック本体1の左側壁6とにより、前方と上・下方向に開口した空間Sが形成されるようにしている。そして、接合した接合部8,9には、連通部形成凹部8c,8d,9c,9dが符合して、前後方向に貫通する横方向の連通路10,11が形成されると共に、両連通路10,11は、前方の空間Sと後方の裏込め材Uの間隙とを連通させる。
また、ブロック本体1を階段状に段積みする際に、下段のブロック本体1に設けた接合部8,9の後側のテーパー面8b,9bの直後方位置に、上段のブロック本体1に設けた接合部8,9の前側のテーパー面8a,9aを符合させて配置することにより、上下方向に伸延して上記連通路10,11と連通する縦方向の連通路を形成することができる。
従って、左右に隣接する魚巣用の擁壁ブロックA1,A1の空間S内には、河川K2の流れが一部滞留してよどみが形成されて、魚等の水生動物に生息空間を提供することができる。しかも、魚巣空間として機能する空間Sと裏込め材Uの間隙とを、河川K2で生育する魚等の遊路として機能する横方向の連通路10,11さらには縦方向の連通路が連通させて、擁壁Yに網目状の連通路を形成することができるため、水生動物の生態系をより豊かなものにすることができる。
また、ブロック本体1の左・右側壁6,7の内側面には、図3(a)の平面説明図と図3(b)の背面説明図に示すように、前上部位置において、上方と内方とが開口する支持部としての段付き嵌合用凹部16,17を形成しており、両段付き嵌合用凹部16,17に、魚巣用の魚巣空間保持体2ないしは植生用の客土空間保持体3の左右側端部を上方から嵌合させて、魚巣空間保持体2ないしは客土空間保持体3を着脱自在に横架することができるようにしている。
ここで、各段付き嵌合用凹部16,17の前後幅及び上下幅は、それぞれ魚巣空間保持体2ないしは客土空間保持体3の前後幅及び上下幅と略同一幅に形成して、各段付き嵌合用凹部16,17に魚巣空間保持体2ないしは客土空間保持体3の左右側端部を嵌合して横架した状態においては、同魚巣空間保持体2ないしは客土空間保持体3の前面がブロック本体1の前壁4の後面(内面)に当接させて、同魚巣空間保持体2ないしは客土空間保持体3の前方向への滑動を規制するようにしている。そして、魚巣空間保持体2の上面は、ブロック本体1の上面よりもわずかに下方に位置させて、直上段に段積みしたブロック本体1の前壁4の下端面との間に小幅の侵入路を形成して、同侵入路を介して小魚等が胴込め材Dの間隙に侵入できるようにしている。また、客土空間保持体3の後部上面は、ブロック本体1の上面と面一状態となして、直上段に段積みしたブロック本体1の前壁4の下端面がほぼ当接するようにしている。その結果、客土空間保持体3内の客土がたとえ洗堀・流出されても、直上段の擁壁ブロック本体1内の胴込め材Dが、下段のブロック本体1の客土部15内に落下するのを防止することができる。
〔滑動防止構造を具備する擁壁Yの構築方法〕
次に、図1及び図2を参照しながら、滑動防止構造を具備する擁壁Yの構築方法について説明する。
次に、図1及び図2を参照しながら、滑動防止構造を具備する擁壁Yの構築方法について説明する。
図1及び図2に示すように、基礎地盤である河床K1に、凹部として擁壁延設方向に伸延する凹条部19を形成して、同凹条部19内に基礎部Bを配設している。そして、凹条部19の底部には、底部支持材を敷設すると共に転圧して底部層20を形成している。ここで、底部支持材としては、内部摩擦角が前記河床K1を成形する地盤材と同等ないしはそれよりも大きい粒径材(例えば、砕石)を使用する。
また、底部層20上には、端面縦長四角形で擁壁延設方向に伸延する板状の基礎部用滑動防止体23を配置している。
このように、基礎部用滑動抵抗体23は、粒径材である砕石等の底部支持材を敷設して形成した底部層20上に配置するため、同底部層20の層厚さを調整することにより、基礎部用滑動抵抗体23のレベル調整(上下方向の位置調整)を簡単に行うことができる。
基礎部用滑動抵抗体23は、図2に示すように、端面縦長四角形で擁壁延設方向に伸延する板状に形成すると共に、下半部を形成する被拘束部23aと、同被拘束部23aの上端縁部から上方へ延設して形成した拘束部23bとから形成している。そして、拘束部23bは、左右幅を被拘束部23aよりも幅狭に形成して、同拘束部23bの左右側方でかつ被拘束部23aの左右側端部上方に干渉回避用空間21,22を形成している。
具体的には、基礎部用滑動抵抗体23の被拘束部23aは、図2に示すように、その上に最下段の擁壁ブロックA1であるブロック本体1の左・右側壁6,7を直接載置することができる左右幅、さらには、できるだけ大きい受働土圧が発揮されるようにそれよりも幅広の左右幅に形成する一方、基礎部用滑動抵抗体23の拘束部23bは、上記ブロック本体1の左・右側壁6,7間に配置することができる左右内面幅、さらには、上記干渉回避用空間21,22を確保して、各干渉回避用空間21,22内に拘束層形成材としての胴込め材Dを充填することにより左・右側拘束層26,27を形成可能な左右内面幅に形成している。
上記のように形成した基礎部用滑動抵抗体23を底部層20上に載置し、同基礎部用滑動抵抗体23の被拘束部23aの前面側に粒径材を充填・転圧して前部粒径材層24を形成する一方、同基礎部用滑動防止体23の後方に形成される凹条部19内の空間に、上記粒径材を充填・転圧して後部粒径材層25を形成して、前・後部粒径材層24,25を介して上記基礎部用滑動抵抗体23の前後方向への滑動を拘束するように構成している。ここで、前・後部粒径材層24,25を形成する粒径材としては、内部摩擦角が前記河床K1を成形する地盤材と同等ないしはそれよりも大きい粒径材(例えば、砂混じりの礫、砕石、栗石、コンクリート破砕片等)を使用する。
そして、前・後部粒径材層24,25の上に、最下段の擁壁ブロックA1であるブロック本体1を載置し、同ブロック本体1の前・後壁4,5間に、前・後部粒径材層24,25の上面から上方に突出している上記基礎部用滑動抵抗体23の拘束部23bを配置し、同ブロック本体1の前壁4と同拘束部23bとの間に形成される空間に、拘束層形成材を充填して前部拘束層28を形成すると共に、同拘束部23bと同擁壁ブロック32の後壁5との間に形成される空間に、拘束層形成材を充填して後部拘束層29を形成している。
従って、前・後部粒径材層24,25の上に載置したブロック本体1に、主働土圧等により滑動力が生じた際には、その滑動力がブロック本体1の後壁5と基礎部用滑動抵抗体23の拘束部23bとの間に形成した後部拘束層29に作用し、同作用力が後部拘束層29を介して基礎部用滑動抵抗体23に伝播されると、この伝播とほぼ同時に、同基礎部用滑動防止体23の前面側の拘束層形成材が同基礎部用滑動抵抗体23に受働土圧を発揮して、前・後部粒径材層24,25の上に載置したブロック本体1の滑動に対する抵抗力を増強することができる。
また、地震等により滑動力として前・後部粒径材層24,25の上に載置したブロック本体1の前壁4に前方から外力が作用したと仮定すると、その外力はブロック本体1の前壁4→前部拘束層28を形成する拘束層形成材→基礎部用滑動防止体23に伝播され、同基礎部用滑動抵抗体23が後方へごく僅かに移動することにより、同基礎部用滑動抵抗体23からその後面側の拘束層形成材に伝播され、この伝播とほぼ同時に、同基礎部用滑動抵抗体23の後面側の拘束層形成材が、基礎部用滑動抵抗体23に反力としての受働土圧を発揮して、擁壁ブロック32が後方向に滑動するのを堅実に防止する。
このように、ブロック本体1内に、基礎部用滑動抵抗体23の拘束部23bを介して拘束層形成材を充填して、前部拘束層29と後部拘束層29とをそれぞれ形成し、両前・後部拘束層28,29の拘束層形成材が相互に連動して、ブロック本体1が前後方向に滑動するのを堅実に防止する。
また、地震等によりブロック本体1に左(右)方向の滑動力が作用した際には、基礎部用滑動抵抗体23を介して同基礎部用滑動抵抗体23の左・右側拘束層26,27を形成する拘束層形成材が互いに連動して、左右方向に作用する滑動力に対して反力を発揮する。
すなわち、滑動力は、ブロック本体1の左(右)側壁6,7→左・右側拘束層26,27の拘束層形成材→基礎部用滑動抵抗体23に作用力として伝播する。
このようにして、上記凹条部19内に配設した、底部層20と、基礎部用滑動抵抗体23と、前・後部粒径材層24,25と、最下段の擁壁ブロックA1であるブロック本体1と、前・後部拘束層28,29と、左・右側拘束層26,27とから基礎部Bを構成している。
上記のように構成した基礎部Bの最下段の擁壁ブロックA1上に、魚巣用の擁壁ブロックA1を数段(本実施の形態では2段)さらにその上に植生用の擁壁ブロックA2を数段(本実施の形態では3段)を、背後地面としての川岸K3の法面に沿わせて階段状に段積みしている。
そして、上下方向に隣接する各ブロックA1,A2の境界部の間に、それぞれ境界部用滑動抵抗体30を配設して、各ブロックA1,A2の滑動防止機能を良好に確保している。
ここで、擁壁ブロックA1,A2であるブロック本体1に充填する胴込め材Dとその背後に充填する裏込め材Uの転圧作業について説明する。
まず、第1段階の転圧作業として、左右方向に並設させて敷設した各ブロック本体1内に胴込め材Dを左・右側壁6,7の各段付き嵌合用凹部16,17の下端縁部と同一の第1レベルL1まで充填すると共に、同ブロック本体1と切土面Jとの間の空間内に裏込め材Uを左・右側壁6,7の各段付き嵌合用凹部16,17の下端縁部と同一の第1レベルL1まで充填して、これらの充填材の表面を転圧機により転圧することによって、ブロック本体1内、さらには、同ブロック本体1と切土面Jとの間も、十分に転圧することができる。
この際、切り欠き状の段付き凹部6d,7dを形成する左・右側壁6,7の後端面を垂直面となしているため、転圧機による第1レベルL1における胴込め材Dの安定した締め固めを可能とすることができる。また、後壁5の上面は、第1レベルL1よりも下方に位置しているため、左右方向への横移動時に支障とならず、その結果、各ブロック本体1の転圧作業を順次横移動しながら効率良く行うことができる。
このように第1段階の転圧作業を行った後に所定の位置に境界部用滑動抵抗体30を配置し、また、魚巣空間保持体2ないしは客土空間保持体3を配置して、その後に、充填材である胴込め材Dや裏込め材Uを充填して、第2段階の転圧作業を行うようにしている。
第2段階の転圧作業としては、ブロック本体1の残余の空間内に胴込め材Dを前壁3の高さと同じ第2レベルL2まで充填すると共に、その背後に裏込め材Uを充填して、これら充填材の表面を転圧することにより、ブロック本体1内、さらには、ブロック本体1と切土面Jとの間も、十分に転圧することができる。
この際、左右方向に隣接するブロック本体1の左・右側壁6,7の前部天端面6a,7aは、第2レベルL2と同一レベル(同一地上高)であるため、左右方向への横移動時に支障とならず、その結果、各ブロック本体1の転圧作業を順次横移動しながら効率良く行うことができる。
このように、後壁5よりも高い第1レベルL1と上端レベルである第2レベルL2を基準にして、二段階に分けて転圧作業を行うようにしているため、ブロック本体1内に充填した充填材の転圧作業時に左・右側壁6,7と後壁5とが支障とならず、しかも、ブロック本体1内、さらには、ブロック本体1と切土面Jとの間に充填した充填材も楽にかつ十分に転圧することができて、擁壁構築作業能率を向上させることができる。
そして、最下段のブロック列の転圧作業が終了した後に、その上に二段目のブロック本体1を段積みしてブロック列を形成すると共に、同様に転圧作業を行い、順次所要の段数だけ同様の作業を繰り返し行う。
上記第1レベルL1の上に載置した境界部用滑動抵抗体30は、拘束層形成材としての胴込め材Dを充填・転圧して形成した前部拘束層28と後部拘束層29とで前後方向への滑動を拘束するようにしている。
そして、段積みして形成される各上・下段のブロック本体1の上下境界面位置に、下段ブロック本体1側と上段ブロック本体1側に跨がるよう境界部用滑動抵抗体30を配置している。
すなわち、境界部用滑動抵抗体30は、第1レベルL1まで転圧した拘束層形成材としての胴込め材Dの上に載置し、その後、第2レベルL2であるブロック本体1の上端面まで胴込め材Dを充填・転圧して、同ブロック本体1の前壁4と境界部用滑動抵抗体30の被拘束部30aとの間に前部拘束層28を形成すると共に、同境界部用滑動抵抗体30の被拘束部30aと後壁5との間に後部拘束層29を形成し、これら前部拘束層28と後部拘束層29とで同境界部用滑動抵抗体30の前後方向への滑動を拘束するようにしている。
そして、境界部用滑動抵抗体30の拘束部30bは、上段に載置されたブロック本体1の前壁4と後壁5との間に配置されるようにして、同拘束部30bの前側に胴込め材Dによる前部拘束層28が形成されると共に、後側に胴込め材Dによる後部拘束層29が形成されるようにしている。
このように、上・下段のブロック本体1,1の上下境界面位置にて、上・下段の前部拘束層28,28を上下方向に連続させると共に、上・下段の後部拘束層29,29を上下方向に連続させているため、上下方向に連続する前部拘束層28,28と上下方向に連続する後部拘束層29,29が、上記境界部用滑動抵抗体30を介して反力(受働)を発揮して、上下境界面におけるブロック本体1の滑動抵抗力を強化するようにしている。
従って、主働土圧等が上段のブロック本体1の後壁5に作用すると、上段のブロック本体1の後壁5→後部拘束層29を形成する胴込め材D→境界部用滑動抵抗体30に伝播され、同境界部用滑動抵抗体30が前方へごく僅かに移動することにより、同境界部用滑動抵抗体30からその前面側の胴込め材D(上下方向に連続する前部拘束層28,28を形成する拘束層形成材)に伝播され、この伝播とほぼ同時に、同境界部用滑動抵抗体30の前面側の胴込め材Dが、境界部用滑動抵抗体30に反力としての受働土圧を発揮して、上段のブロック本体1が前方向に滑動するのを堅実に防止する。
また、地震等により滑動力として上段のブロック本体1の前壁4に前方から外力が作用したと仮定すると、上段のブロック本体1の前壁4→前部拘束層28を形成する胴込め材D→境界部用滑動抵抗体30に伝播され、同境界部用滑動抵抗体30が後方へごく僅かに移動することにより、同境界部用滑動抵抗体30からその後面側の胴込め材D(上下方向に連続する後部拘束層29,29を形成する拘束層形成材)に伝播され、この伝播とほぼ同時に、同境界部用滑動抵抗体30の後面側の胴込め材Dが、境界部用滑動抵抗体30に反力としての受働土圧を発揮して、上段のブロック本体1が後方向に滑動するのを堅実に防止する。
このように、上下段のブロック本体1,1の境界部においては、境界部用滑動抵抗体30の被拘束部30aの前後面側に前部拘束層28と後部拘束層29とをそれぞれ形成すると共に、境界部用滑動抵抗体30の拘束部30bの前後面側に前部拘束層28と後部拘束層29とをそれぞれ形成して、上段の前・後部拘束層28,29及び下段の前・後部拘束層28,29の胴込め材Dが相互に連動して、上段のブロック本体1が下段のブロック本体1に対して前後方向に滑動するのを堅実に防止する。
また、下段のブロック本体1に境界部用滑動抵抗体30の被拘束部30aを連結せずに、下段の拘束層を形成する胴込め材Dによって境界部用滑動抵抗体30の被拘束部30aが拘束されるようにしているため、上・下段境界部に形成する上段の前記左・右側拘束層26,27及び下段の前記左・右側拘束層26,27の胴込め材Dが相互に連動し、左(右)方向へ反力としての受働土圧を発揮して、上段のブロック本体1が下段のブロック本体1に対して左(右)方向に滑動するのを堅実に防止する。
なお、境界部用滑動抵抗体30は、下段のブロック本体1の背後において、第1レベルL1まで転圧した裏込め材Uの上に載置する場合もある。その場合は、第2レベルL2であるブロック本体1の上端面の位置まで、同ブロック本体1内に胴込め材Dを、その背後には拘束層形成材としての裏込め材Uを一括に充填・転圧して、境界部用滑動抵抗体30の拘束部30aの前後左右側に裏込め材Uによる前部・後部・左側・右側拘束層28,29,26,27が形成されるようにして、その上に上段のブロック本体1を載置すると共に、同ブロック本体1の前壁4と後壁5との間に同境界部用滑動抵抗体30の拘束部30bが配置されるようにする。
そして、拘束部30bの前後左右側に胴込め材Dによる前部・後部・左側・右側拘束層28,29,26,27が形成されるようにして、上・下段境界部の両前・後部拘束層28,29及び両左・右側拘束層26,27の胴込め材Dが相互に連動し、前後左右方向へ反力としての受働土圧を発揮して、上段のブロック本体1が前後方向及び左右方向に滑動するのを堅実に防止する。
A1 魚巣用の擁壁ブロック
A2 植生用の擁壁ブロック
B 基礎部
Y 擁壁
S 空間
1 ブロック本体
4 前壁
5 後壁
6 左側壁
7 右側壁
A2 植生用の擁壁ブロック
B 基礎部
Y 擁壁
S 空間
1 ブロック本体
4 前壁
5 後壁
6 左側壁
7 右側壁
Claims (3)
- 少なくとも前・後壁と、両前・後壁を連結する連結体とを具備して上面開口状態となした擁壁ブロックの前壁に、前低後高の後傾状となした勾配を設け、複数の上記擁壁ブロックを階段状に段積みして構築したことを特徴とする擁壁構造。
- 擁壁ブロックは、前・後壁間に、連結体として左右一対の側壁を介設し、各側壁の外側面後部には外側方に膨出する左右間隔保持片を形成して、
左右方向に隣接する両擁壁ブロックの左右間隔保持片を相互に当接させて配置して、両左右間隔保持片の前方に空間が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1記載の擁壁構造。 - 左右間隔保持片に、前記空間と連通する連通路を形成したことを特徴とする請求項2記載の擁壁構造。
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