JPWO2007049773A1 - 擁壁ブロック - Google Patents
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Abstract
ブロック本体内に充填した胴込め材が、増水した河川により前側上部空間を通して洗掘されるのを防止すること。少なくとも前壁と左・右側壁とを具備して、上面を開口状態に形成した複数のブロック本体を、階段状に段積みすると共に、各ブロック本体内に胴込め材を充填して擁壁を築造する擁壁ブロックにおいて、ブロック本体内の前側上部空間に、同ブロック本体内の胴込め材が増水した河川により上記前側上部空間を通して洗掘されるのを防止するための胴込め材流出防止体を配設すると共に、同胴込め材流出防止体には、客土充填用空間ないしは魚巣用空間を形成した。
Description
本発明は、川岸に敷設して植生用ブロックとしても、また、魚巣用ブロックとしても使用することができる擁壁ブロックに関する。
従来、擁壁ブロックの一形態として、後記する特許文献1に開示されたものがある。
すなわち、図8に示すように、かかる擁壁ブロック100は、擁壁を構築するためのものであり、ブロック本体120を備えている。
そして、ブロック本体120は、擁壁の表面側に配置される前壁123と、施工地の法面側に配置される後壁124との間を図示しない2つの側壁で連結した四角形筒状をしており、後壁124の高さ寸法は前壁123の高さ寸法より低い。
また、各側壁はそれぞれ、前壁123から後壁124側へ、前壁123の高さ寸法と同じ高さ寸法で所定距離だけ延設した後、後壁124の高さ寸法と同じ高さにした段差部を経て後壁124に連結させてある。
前壁123と後壁124との間には、ブロック本体120内を前後に仕切る複数の仕切り壁130が、相隣る側壁上に載置してあり、仕切り壁130の底部近傍には、仕切り壁130と前壁123との間の客土空間に充填した客土200を受けるベース板140が配置してある。
かかるブロック本体120、仕切り壁130及びベース板140等によって構成された擁壁ブロック100を用いて擁壁を施工する際には、基準面上に載置したブロック本体120の内部及びブロック本体120の後壁124と法面との間に、栗石又は砕石等の胴込め材及び裏込め材を側壁の下段より低い位置まで敷置した後、ブロック本体120内の前述した客土領域には客土200を、ブロック本体120内の他の領域及びブロック本体120の後壁124と法面との間には胴込め材及び裏込め材を、それぞれ前壁123上面の位置まで投入し、表面を基準面に整地する。
そして、この栗石又は砕石による基準面上に次段のブロック本体120を階段状に載置し、前同様の操作を行って次段の擁壁ブロック100を段積みする。このような操作を所要段数繰り返すことによって、擁壁を構築している。
特開平8−120693号公報(図4)
しかしながら、上記した擁壁ブロック100は、客土空間内に客土200を充填しているため、河川が増水した場合、客土200が洗掘・流出されてベース板140が変位し、擁壁の一部を構成すべくブロック本体120内に投入した胴込め材が流出して、擁壁の強度が低下する虞がある。更に、胴込め材の流出量が多い場合には、擁壁が崩壊する虞もある。
そこで、本発明では、階段状の擁壁を築造するときに階段状に段積みされるブロック本体を有する擁壁ブロックであって、前記ブロック本体は、少なくとも前壁、左側壁および右側壁を備え、かつ上面に開口を備えており、当該ブロック本体の内部に胴込め材が空積みされており、出水時に、空積みされた当該胴込め材が段積みされた前記ブロック本体の上面の開口から流出することを防止する胴込め材流出防止体が設置されており、当該胴込め材流出防止体と前記ブロック本体の前壁との間に、魚巣用空間または客土充填用空間のうちの少なくともいずれか一方として用いられる空間が形成されていることを特徴とする擁壁ブロックを提供するものである。
また、本発明は、以下の構成にも特徴を有する。
(1)前記ブロック本体は、その前壁に、前記魚巣用空間と擁壁ブロックの外部とを連通する穴を備えていること。
(2)前記胴込め材流出防止体は、前記ブロック本体内の空間を前後に仕切る前後仕切り片と、当該前後仕切り片と前記ブロック本体の前壁との間隔を保持する前後間隔保持片とを備えるものであり、前記前後仕切り片および前後間隔保持片と、前記ブロック本体の前壁および左右側壁とにより、擁壁ブロックの外部に連通する魚巣用連通部が形成されていること。
(3)前記胴込め材流出防止体の前後仕切り片と前記ブロック本体の前壁との間の前記空間は、前記前後間隔保持片によって複数の分割空間に区画されており、当該複数の分割空間のうちの少なくともいずれか一つは、前記魚巣用空間であり、前記ブロック本体は、その前壁に、前記分割空間と擁壁ブロックの外部とを連通する穴を備えていること。
(4)前記胴込め材流出防止体は、段積みされた上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁前面が、胴込め材流出防止体の後端と前端との間に位置するように配置されており、当該胴込め材流出防止体の前後仕切り片と前記上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁との間に隙間が形成されるように配置されていること。
(5)前記胴込め材流出防止体の前後仕切り片は、前記上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁に当接する上端面を備えると共に、前記隙間を形成するための凹部を備えていること。
(6)前記ブロック本体は、その左右側壁に、前記胴込め材流出防止体を横架状に支持する支持部を備えていること。
(7)前記胴込め材流出防止体の前後仕切り片は、その下部に、前記ブロック本体の前壁側に突出する前後仕切り片脚部を備えており、前記ブロック本体の前後仕切り片支持部は、前記前後仕切り片の下部の下面が当接する下部支持面と、前記前後仕切り片脚部の下面が当接する脚部支持面と、前記前後仕切り片脚部の前面が当接する脚部前面保持面とを備えていること。
(8)前記前後仕切り片脚部は、前記ブロック本体の前壁との間に空隙が形成される状態で突出していること。
(9)前記胴込め材流出防止体は、少なくとも、上下仕切り片と前後仕切り片とにより、客土充填用空間が形成されるようにすると共に、これら仕切り片とブロック本体の前壁と左右側壁とにより、客土を充填するための客土充填部が形成されるようにしたこと。
(10)胴込め材流出防止体の上下仕切り片に、上下方向に連通する上下連通孔を形成し、当該上下連通孔を客土充填用空間の一部となしたこと。
(11)上下連通孔の底部に胴込め材流出防止用網体を配置したこと。
(12)前記ブロック本体の左右側壁には、胴込め材流出防止体を横架状に支持する支持部を設けたこと。
(1)請求項1記載の本発明では、階段状の擁壁を築造するときに階段状に段積みされるブロック本体を有する擁壁ブロックであって、ブロック本体は、少なくとも前壁、左側壁および右側壁を備え、かつ上面に開口を備えており、当該ブロック本体の内部に胴込め材が空積みされており、出水時に、空積みされた当該胴込め材が段積みされたブロック本体の上面の開口から流出することを防止する胴込め材流出防止体が設置されており、当該胴込め材流出防止体とブロック本体の前壁との間に、魚巣用空間または客土充填用空間のうちの少なくともいずれか一方として用いられる空間が形成されている。
このようにして、ブロック本体内の前側上部空間に胴込め材流出防止体を配設しているため、ブロック本体内に充填した胴込め材が、増水した河川の水流により上記前側上部空間を通して流出するのを防止することができる。
しかも、同胴込め材流出防止体には、魚巣用空間または客土充填用空間のうちの少なくともいずれか一方として用いられる空間を形成しているため、客土充填用空間内に客土を充填して、同客土に植物を植生させた場合には、植物を成育させることができ、また、魚類等の水生動物が魚巣用空間を通してブロック本体内に出入り自由にした場合には、同ブロック本体内を水生動物の隠れ家として利用することができて、同水生動物を育成することができる。
(2)請求項2記載の本発明では、ブロック本体は、その前壁に、魚巣用空間と擁壁ブロックの外部とを連通する穴を備えている。
したがって、河川に擁壁ブロックを配設した場合、ブロック本体の前壁よりも水位が高い状態で、魚巣用空間に入った魚等の水生生物が、水位の減少に伴ってブロック本体内部に取り残されてしまうことを防止することができる。
(3)請求項3記載の本発明では、胴込め材流出防止体は、ブロック本体内の空間を前後に仕切る前後仕切り片と、当該前後仕切り片とブロック本体の前壁との間隔を保持する前後間隔保持片とを備えるものであり、前後仕切り片および前後間隔保持片と、ブロック本体の前壁および左右側壁とにより、擁壁ブロックの外部に連通する魚巣用連通部が形成されている。
したがって、水生動物が、外部から魚巣用連通部を通してブロック本体内へ移動することも、また、ブロック本体内から魚巣用連通部を通して外部へ移動することもでき、水生動物の育成を図ることができる。
(4)請求項4に記載の本発明では、胴込め材流出防止体の前後仕切り片とブロック本体の前壁との間の前記空間は、前後間隔保持片によって複数の分割空間に区画されており、当該複数の分割空間のうちの少なくともいずれか一つは、魚巣用空間であり、ブロック本体は、その前壁に、分割空間と擁壁ブロックの外部とを連通する穴を備えている。
したがって、河川の水位がブロック本体の前壁上部よりも低下した場合、魚巣用空間に生息する水生動物が、ブロック本体の前壁上部を越えて河川に戻ることができない状態であっても、水生動物は外部と連通する穴を介して河川に戻ることができる。
(5)請求項5に記載の本発明では、胴込め材流出防止体は、段積みされた上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁前面が、胴込め材流出防止体の後端と前端との間に位置するように配置されており、当該胴込め材流出防止体の前後仕切り片と上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁との間に隙間が形成されるように配置されている。
したがって、河川が増水し、水流で胴込め材流出防止体がブロック本体から離脱しそうになった場合であっても、胴込め材流出防止体の前後仕切り片の上部と、上段のブロック本体の前壁の下部とが当接することとなり、胴込め材流出防止体がブロック本体から離脱するのを防止することができる。
また、胴込め材流出防止体の前後仕切り片と上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁との間に形成した隙間を介して、魚が、前後仕切り片の背部に配設した胴込め材の間隙に入り込むことができるため、ブロック本体内における水生動物の生態系をより豊かなものとすることができる。
(6)請求項6に記載の本発明では、胴込め材流出防止体の前後仕切り片は、上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁に当接する上端面を備えると共に、隙間を形成するための凹部を備えていることとしている。
したがって、河川が増水し、水流により胴込め材流出防止体を持ち上げる力が働いた場合であっても、胴込め材流出防止体をブロック本体内に固定しておくことができる。
しかも、凹部により形成された隙間を介して、魚が、前後仕切り片の背部に配設した胴込め材の間隙に入り込むことができるため、ブロック本体内における水生動物の生態系をより豊かなものとすることができる。
(7)請求項7に記載の本発明では、ブロック本体は、その左右側壁に、胴込め材流出防止体を横架状に支持する支持部を備えている。
このようにして、ブロック本体の左・右側壁に設けた支持部に、胴込め材流出防止体を横架状に支持させることができるため、同胴込め材流出防止体を安定状態に保持させることができて、胴込め材の流出防止機能と、ブロック本体を介した魚巣機能を良好に確保することができる。
また、ブロック本体内に胴込め材流出防止体を挿入する際の位置決めを容易に行うことができるとともに、胴込め材流出防止体がブロック本体内部に落下するのを防止することができる。
(8)請求項8に記載の本発明では、胴込め材流出防止体の前後仕切り片は、その下部に、ブロック本体の前壁側に突出する前後仕切り片脚部を備えており、ブロック本体の前後仕切り片支持部は、前後仕切り片の下部の下面が当接する下部支持面と、前後仕切り片脚部の下面が当接する脚部支持面と、前後仕切り片脚部の前面が当接する脚部前面保持面とを備えている。
したがって、胴込め材流出防止体の下方に空間を設けることができ、遊魚スペースを確保することができる。しかも、胴込め材流出防止体と、ブロック本体の前壁との間に形成される魚巣用空間を広く保つことができ、水生動物の成育の場を広く確保することができる。
(9)請求項9に記載の本発明では、前後仕切り片脚部は、ブロック本体の前壁との間に空隙が形成される状態で突出して突出している。
したがって、前後仕切り片脚部とブロック本体の前壁との間に空隙が形成され、胴込め材流出防止体の下部へ水生動物が移動することを容易にすることができる。
(10)請求項10に記載の本発明では、胴込め材流出防止体は、少なくとも、上下仕切り片と前後仕切り片とにより、客土充填用空間が形成されるようにすると共に、これら仕切り片とブロック本体の前壁と左右側壁とにより、客土を充填するための客土充填部が形成されるようにしている。
このようにして、客土充填部を広く確保して、同客土充填部内に客土を充填して、同客土に植物を植生することにより、擁壁の緑化を図ることができる。
(11)請求項11に記載の本発明では、胴込め材流出防止体の上下仕切り片に、上下方向に連通する上下連通孔を形成し、当該上下連通孔を客土充填用空間の一部となしている。
このようにして、胴込め材流出防止体の上下仕切り片に上下連通孔を形成することにより、同上下連通孔を客土充填用空間の一部となして、同客土充填用空間を増設しているため、上下仕切り片上に形成される客土充填用空間と、上下連通孔中に形成される客土充填用空間の両方に客土を充填して植物を植生することができる。
この際、雨水等は、両客土充填用空間内に充填した客土を通してブロック本体内に確実に排出することができて、植生機能を良好に確保することができる。
しかも、上下仕切り片上に形成される客土充填用空間内に充填した客土が、増水した河川により洗掘された場合でも、上下連通孔中に形成される客土充填用空間内に充填した客土は確保することができて、ブロック本体内に充填した胴込め材が流出するのを防止することができると共に、再度、上下仕切り片上に形成される客土充填用空間内に客土を充填するだけで、植生機能を良好に回復させることができる。
(12)請求項12に記載の本発明では、上下連通孔の底部に胴込め材流出防止用網体を配置している。
したがって、上下連通孔の底部に胴込め材流出防止用網体を配置しているため、万一、上下連通孔中に形成される客土充填用空間内に充填した客土が洗掘された場合でも、上記胴込め材流出防止用網体により、ブロック本体内に充填した胴込め材が流出するのを防止することができる。
(13)請求項13に記載の本発明では、ブロック本体の左右側壁には、胴込め材流出防止体を横架状に支持する支持部を設けている。
このようにして、ブロック本体の左・右側壁に設けた支持部に、胴込め材流出防止体を横架状に支持させることができるため、同胴込め材流出防止体を安定状態に保持させることができて、胴込め材の流出防止機能と、客土を介した植生機能を良好に確保することができる。
また、ブロック本体内に胴込め材流出防止体を挿入する際の位置決めを容易に行うことができるとともに、胴込め材流出防止体がブロック本体内部に落下するのを防止することができる。
図1は、本発明に係る魚巣用の擁壁ブロックA1と植生用の擁壁ブロックA2とを、基礎ブロックB上に段積みすることにより構築した護岸用の擁壁Yの側面断面説明図であり、また、図2は、同擁壁Yの平面説明図である。
すなわち、擁壁Yは、図1及び図2に示すように、河床K1の地盤中に基礎ブロックBを根入れブロックとして敷設し、その上に安定化ブロックCを基礎固めのために敷設し、この安定化ブロックCの上に平常水位以下の河川K2中及び河床K1の下に一段ないしは複数段(本実施の形態では二段)の魚巣用の擁壁ブロックA1を段積みし、さらにその上に複数段の植生用の擁壁ブロックA2を川岸K3の法面に沿わせて階段状に段積みして構築している。
そして、基礎ブロックB内と魚巣用の擁壁ブロックA1内には、例えば、50mm〜150mmの栗石を胴込め材Dとして充填すると共に、これらのブロックB,C,A1の背後に同じ栗石を裏込め材Uとして充填し、また、植生用の擁壁ブロックA2内には、例えば、0.01mm〜50mmの砕石を胴込め材Dとして充填すると共に、同擁壁ブロックA2の背後に同じ砕石を裏込め材Uとして充填して空積擁壁を構築している。
ここで空積(擁壁)とは、各擁壁ブロックの内部に充填した胴込め材Dが栗石、廃コンクリートブロック、スラグ塊などの不規則な形状をした固形物や、規則的で一定形状のものであっても、乱雑に積み重ねることで空隙を生じるブロック体であるものをいい、半固形状の充填材を隙間無く充填する、いわゆる練積(擁壁)と対義のものである。
なお、図1中、Mは、川岸K3の土が裏込め材U側に吸い出されるのを防止するための吸出防止マットである。
ここで、魚巣用の擁壁ブロックA1と植生用の擁壁ブロックA2は、図3〜図5にも示すように、それぞれ共通形態のブロック本体1に、魚巣用の胴込め材流出防止体2ないしは植生用の胴込め材流出防止体3を組み付けて構成している。
また、安定化ブロックCはブロック本体1と同じものとしている。それゆえ、安定化ブロックCには、魚巣用の胴込め材流出防止体2を組み付けることもできる。安定化ブロックCに魚巣用の胴込め材流出防止体2を配設した場合には、たとえば、河床K1の位置が河川K2の水流等により掘り下げられて安定化ブロックCの位置まで下がった際に、この安定化ブロックCを魚巣用の擁壁ブロックA1として用いることができる。
以下に、説明の便宜上、まず、ブロック本体1の構成を説明し、その次に植生用の胴込め材流出防止体3の構成を説明し、それに続いて魚巣用の胴込め材流出防止体2の構成を説明する。
〔ブロック本体1の構成〕
ブロック本体1は、図1〜図3(平面説明図(a)と背面説明図(b))に示すように、前・後壁4,5と左・右側壁6,7とから上・下面開口の筒状に形成しており、後壁5は、前壁4の高さの半分よりも低く形成している。
ブロック本体1は、図1〜図3(平面説明図(a)と背面説明図(b))に示すように、前・後壁4,5と左・右側壁6,7とから上・下面開口の筒状に形成しており、後壁5は、前壁4の高さの半分よりも低く形成している。
このようにして、ブロック本体1をコンパクトにしてかつ軽量に形成している。
また、ブロック本体1を上・下面開口の筒状に形成することで、各擁壁ブロックの内部空間を連続させて、各擁壁ブロックの内部空間同士の環境の遮断を防ぐことができる。
そして、左・右側壁6,7は、前壁4側が高く後壁5側が低い階段状に形成して、前部天端面6a,7aと後部天端面6b,7bとを形成すると共に、左・右側壁6,7の後壁5と連続する後部天端面6b,7bの部分は、後壁5より少し高く形成している。
しかも、左・右側壁6,7の前部の外側面には、図3(a)(b)に示すように、左右間隔保持片としての接合部8,9を外側方へ膨出させかつ上下方向に伸延させて形成しており、左側の接合部8には、上下方向に伸延しかつ断面半円弧状の接合用凹条部8aを形成し、同接合用凹条部8aの前側と後側にそれぞれテーパー面8b,8cを形成する一方、右側の接合部9には、上下方向に伸延しかつ断面半円弧状の接合用凸条部9aを形成し、同接合用凸条部9aの前側と後側にそれぞれテーパー面9b,9cを形成している。
このようにして、複数のブロック本体1,1は、図2に示すように、左右方向に伸延する略同一直線上にて接続状態に配置することができ、この際、左側のブロック本体1の接合用凸条部9aと右側のブロック本体1の接合用凹条部8aとを嵌合させるようにしている。
そして、複数のブロック本体1,1は、前方へ凸状に湾曲する円弧線状に配置すると共に、左右方向に接続することができ、この際、両ブロック本体1,1には後側のテーパー面8c,9cを形成しているため、両テーパー面8c,9cが当接するまで曲率半径を小さく設定することができ、両ブロック本体1,1同士を干渉させることなく曲線施工を行うことができる。
また、複数のブロック本体1,1は、後方へ凹状に湾曲する円弧線状に配置すると共に、左右方向に接続することができ、この際、両ブロック本体1,1には前側のテーパー面8b,9bを形成しているため、両テーパー面8b,9bが当接するまで曲率半径を小さく設定することができ、両ブロック本体1,1同士を干渉させることなく曲線施工を行うことができる。
ブロック本体1の接合部8,9の天端面8d,9dには、図3(a)に示すように、略鉛直方向に伸延する差込孔10,10を形成して、各差込孔10,10中に滑動防止片11,11(図1参照)と吊上用連結片(図示せず)のいずれかの下部を選択的に差し込み可能としている。
このようにして、図1に示すように、ブロック本体1の左右側前部の天端面8d,9dに形成した差込孔10,10中に、滑動防止片11,11の下部を差し込んで、同滑動防止片11,11を天端面8d,9dより上方へ突出させ、同滑動防止片11,11にブロック本体1の直上方に段積みするブロック本体1の前面下部を当接させることにより、上段のブロック本体1の前方への滑動を防止することができる。
そして、滑動防止片11,11により上段に段積みしたブロック本体1の滑動を防止することにより、下段のブロック本体1に前記滑動抵抗力を付加することができる。
また、ブロック本体1の左右側前部の天端面8d,9dに形成した差込孔10,10中に、前記吊上用連結片の下部を差し込んで、同吊上用連結片を天端面8d,9dより上方へ突出させ、同吊上用連結片を吊上用ワイヤ等を介して吊上作業機に連結することにより、同吊上作業機にて擁壁ブロックA1,A2を容易に吊り上げることができる。
従って、擁壁ブロックA1,A2を吊上用連結片を介して吊上作業機により吊り上げて段積みすることにより、擁壁構築作業を効率良く行うことができる。
〔植生用の胴込め材流出防止体3の構成〕
植生用の胴込め材流出防止体3は、図1〜図3に示すように、ブロック本体1内の前側上部空間Sに配設して、同ブロック本体1内に充填した胴込め材Dが増水した河川K2により上記前側上部空間Sを通して流出するのを防止するようにしており、同胴込め材流出防止体3には、客土充填用空間としての客土充填用凹部20を形成している。
植生用の胴込め材流出防止体3は、図1〜図3に示すように、ブロック本体1内の前側上部空間Sに配設して、同ブロック本体1内に充填した胴込め材Dが増水した河川K2により上記前側上部空間Sを通して流出するのを防止するようにしており、同胴込め材流出防止体3には、客土充填用空間としての客土充填用凹部20を形成している。
すなわち、胴込め材流出防止体3は、図4(a)の平面図と図4(b)の正面図と図4(c)のI-I線断面図に示すように、左右幅方向に伸延する板状の上下仕切り片21と、同上下仕切り片21の後端縁部より上方に立ち上がる板状の前後仕切り片22と、同前後仕切り壁22より上下仕切り片21上にて前方へ突出する板状の左右仕切り片23とから形成しており、左右仕切り片23は、左右方向に一定の間隔を開けて左右側端部と中間部の二個所に複数(本実施の形態では四個)設けている。
このようにして、上下仕切り片21と前後仕切り片22と左右方向に隣接する左右仕切り片23,23とから、上方と前方とが開口する客土充填用凹部20を、左右方向に間隔を開けて複数(本実施の形態では三個)形成している。
すなわち、客土充填用凹部20は、左右仕切り片23,23により複数に区画されている。したがって、左右仕切り片23,23で区画しない場合に比して、客土充填用凹部20の長手方向の長さを比較的短くすることができる。これにより、たとえば出水時に河川K2の水位が上昇して客土充填用凹部20に充填されていた客土が洗掘された場合であっても、客土の洗掘量をできるだけ少なくすることができる。左右仕切り片23,23は客土流出防止効果を生起する役割も担っている。
なお、ここで洗掘とは、客土充填用凹部20に充填した客土が、河川K2の水流によって、流されながら掘られる現象のことである。
そして、各客土充填用凹部20内において、上下仕切り片21には、上下方向に連通する逆円錐台形状の上下連通孔24を、客土充填用空間の一部として、左右方向に間隔を開けて複数(本実施の形態では二個)形成すると共に、図1及び図2に示すように、各上下連通孔24の底部に胴込め材流出防止用網体25を配置して、同上下連通孔24と胴込め材流出防止用網体25とにより客土充填用補助凹部26を形成している。27は、胴込め材流出防止体3を吊り上げる吊上具を挿入するための吊上用孔である。
ここで、胴込め材流出防止用網体25としては、通水性(排水性)を有すると共に、ブロック本体内に充填した胴込め材が洗掘されるのを防止することができるものを使用している。
このようにして、客土充填用凹部20内と客土充填用補助凹部26内に充填した客土Gの排水を、胴込め材流出防止用網体25を通して胴込め材Dを充填したブロック本体1内に排出することができるようにしている。
その結果、客土Gの排水性を適度に確保することができて、植物の生育(植生)環境を良好に確保することができ、植生ブロックとして機能させることができる。
また、ブロック本体1の左・右側壁6,7の内側面には、図3(a)の平面説明図と図3(b)の背面説明図に示すように、前上部位置(接合部8,9の内側上部位置)において、上方と内方とが開口する支持部としての段付き凹部28,29を形成しており、両段付き凹部28,29に胴込め材流出防止体3の左右側端部を上方から嵌合させて、同胴込め材流出防止体3を着脱自在に横架することができるようにしている。
ここで、各段付き凹部28,29の前後幅及び上下幅は、それぞれ胴込め材流出防止体3の前後幅及び上下幅と略同一に形成して、各段付き凹部28,29に胴込め材流出防止体3の左右側端部を嵌合して横架した状態においては、同胴込め材流出防止体3の前面(上下仕切り片21の前面と左右仕切り片23の前面)がブロック本体1の前壁4の後面(内面)に当接すると共に、同胴込め材流出防止体3の後面(前後仕切り片22の後面)が各段付き凹部28,29の後面に当接して、同胴込め材流出防止体3の前後方向の移動が規制されると共に、胴込め材流出防止体3の上面(左右仕切り片23の上面)と各接合部8,9の上面とが面一状態となるようにしている。
そして、各段付き凹部28,29に胴込め材流出防止体3の左右側端部を嵌合して横架した状態においては、胴込め材流出防止体3の上下仕切り片21と前後仕切り片22とブロック本体1の前壁4と左・右側壁6,7とにより、図2及び図3に示すように、客土Gを充填するための客土充填部30が左右方向に間隔を開けて複数(本実施の形態では三個)形成されるようにしている。
〔魚巣用の胴込め材流出防止体2の構成〕
魚巣用の胴込め材流出防止体2は、図1に示すように、ブロック本体1内の前側上部空間Sに配設して、同ブロック本体1内に充填した胴込め材Dが河川K2により上記前側上部空間Sを通して流出するのを防止するようにしており、同胴込め材流出防止体2には、魚巣用空間としての魚巣用連通路35を形成している。
魚巣用の胴込め材流出防止体2は、図1に示すように、ブロック本体1内の前側上部空間Sに配設して、同ブロック本体1内に充填した胴込め材Dが河川K2により上記前側上部空間Sを通して流出するのを防止するようにしており、同胴込め材流出防止体2には、魚巣用空間としての魚巣用連通路35を形成している。
すなわち、胴込め材流出防止体2は、図5(a)の平面図と図4(b)の正面図と図5(c)のII-II線断面図に示すように、左右幅方向に伸延する板状の前後仕切り片36と、同前後仕切り片36より前方へ突出する板状の前後間隔保持片37とから形成しており、前後間隔保持片37は、左右方向に一定の間隔を開けて左右側端部と中間部の二個所に複数(本実施の形態では四個)設けている。
このようにして、前後仕切り片36と前後間隔保持片37とで区画して分割空間を形成し、上下方向と前方とが開口する魚巣用連通路35を、左右方向に間隔を開けて複数(本実施の形態では三個)形成している。
そして、胴込め材流出防止体2は、胴込め材流出防止体3と同様に、ブロック本体1の段付き凹部28,29に左右側端部を上方から嵌合させて、同胴込め材流出防止体2を着脱自在に横架することができるようにしている。
ここで、胴込め材流出防止体2の上下幅は、植生用の胴込め材流出防止体3の上下幅や段付き凹部28,29の上下幅と略同一に形成すると共に、胴込め材流出防止体2の前後幅は、植生用の胴込め材流出防止体3の前後幅や段付き凹部28,29の前後幅よりも幅狭に形成して、各段付き凹部28,29に胴込め材流出防止体2の左右側端部を嵌合して横架した状態においては、同胴込め材流出防止体2の前面(前後間隔保持片37の前面)がブロック本体1の前壁4の後面(内面)に当接すると共に、同胴込め材流出防止体3の後面(前後仕切り片36の後面)が背後に充填した胴込め材Dに押圧されて、同胴込め材流出防止体3の前後方向の移動が規制されると共に、胴込め材流出防止体2の上面(前後仕切り片36と前後間隔保持片37の上面)と各接合部8,9の上面とが面一状態となるようにしている。
そして、各段付き凹部28,29に胴込め材流出防止体2の左右側端部を嵌合して横架した状態においては、胴込め材流出防止体2の前後仕切り片36と前後間隔保持片37とブロック本体1の前壁4と左・右側壁6,7とにより、図1に示すように、外部とブロック本体1内とを連通する魚巣用連通部38が左右方向に間隔を開けて形成した分割空間に、複数(本実施の形態では三個)形成されるようにしている。
この際、魚巣用連通路35の前後幅は、ブロック本体1内に充填されている胴込め材Dの最大径よりも小さく形成して、魚巣用連通部38を通して胴込め材Dが洗掘されてブロック本体1の外部へ流出されることがないようにしている。
また、胴込め材流出防止体2の前後仕切り片36とブロック本体1の前壁4との間の空間は、前記前後間隔保持片によって複数の分割空間に区画されており、水生生物が遊泳可能となるように構成している。
また、本実施の形態に係る胴込め材流出防止体2は、前後仕切り片36より前方へ突出する板状の前後間隔保持片37を、左右方向に一定の間隔を開けて左右側端部と中間部の二個所に設けているため、前後仕切り片36に背後から胴込め材Dによる押圧力が作用した場合に、左右方向に隣接する前後間隔保持片37,37間毎のスパンで曲げモーメントが発生することになり、各曲げモーメントを低減させることができて、胴込め材流出防止体2の強度を良好に確保することができる。
その結果、胴込め材流出防止体2は、例えば、鉄筋を配筋することなくコンクリートだけで、安価に成形することができる。なお、胴込め材流出防止体2は、外部とブロック本体1内とを連通する魚巣用空間が形成されていればよく、例えば、内前後一対の前後仕切り片36,36の間に、複数の前後間隔保持片37を左右方向に間隔を開けて介設することにより、上下方向に連通する魚巣用連通路35を形成することもできる。
また、魚巣用のブロック本体1の前壁4には、水生動物が出入り可能な孔を適宜形成して、魚巣機能を向上させることができる。
本発明に係る擁壁ブロックA1,A2は上記のように構成しているものであり、これらの擁壁ブロックA1,A2を段積みして護岸用の擁壁Yを構築した際に、増水により植生用の擁壁ブロックA2に設けた客土充填部30内の客土Gが洗掘された場合にも、胴込め材流出防止体3が胴込め材Dの上面を覆っているため、同胴込め材流出防止体3により擁壁構造体の一部を構成する胴込め材Dが洗掘・流出されるのを防止することができる。
ここで、下段のブロック本体1内に充填した胴込め材Dが洗掘・流出されると、その直上方に段積みした上・下面開口のブロック本体1内の胴込め材Dが、下段のブロック本体1内に落下し、さらに、その落下した胴込め材Dも洗掘・流出されると、最終的に上方に段積みした上・下面開口の全てのブロック本体1内の胴込め材Dが洗掘・流出されるという結果に至ることも考えられ、その場合には、護岸用の擁壁Yが崩壊するおそれもあるが、本実施の形態では、前記したように擁壁構造体の一部を構成する胴込め材Dが洗掘・流出されるのを防止することができるため、護岸用の擁壁Yの強度を良好に確保することができる。
また、本実施の形態では、魚巣用の擁壁ブロックA1のブロック本体1と植生用の擁壁ブロックA2のブロック本体1は、同一形状に形成して共通化することにより、施工性を向上させることができると共に、擁壁ブロックA1,A2の製造コストを低減させることができる。
また、擁壁ブロックA1,A2に充填する胴込め材Dとその背後に充填する裏込め材Uの転圧作業について説明すると、まず、第1段階の転圧作業として、左右方向に並設させて敷設した各ブロック本体1内に胴込め材Dを左・右側壁6,7の各段付き凹部28,29の下端縁部と同一の第1レベルL1まで充填すると共に、同ブロック本体1と切土面Jとの間の空間内に裏込め材Uを左・右側壁6,7の各段付き凹部28,29の下端縁部と同一の第1レベルL1まで充填して、これらの充填材の表面を転圧機により転圧することにより、ブロック本体1内、さらには、同ブロック本体1と切土面Jとの間も、十分に転圧することができる。
この際、左右方向に隣接するブロック本体1の左・右側壁6,7の後部天端面6b,7b、さらには、厚壁5の上面は、第1レベルL1よりも下方に位置しているため、左右方向への横移動時に支障とならず、その結果、各ブロック本体1の転圧作業を順次横移動しながら効率良く行うことができる。
その後、第2段階の転圧作業として、ブロック本体1の残余の空間内に胴込め材Dを前壁3の高さと同じ第2レベルL2まで充填すると共に、その背後に裏込め材Uを充填して、これら充填材の表面を転圧することにより、ブロック本体1内、さらには、ブロック本体1と切土面Jとの間も、十分に転圧することができる。
この際、左右方向に隣接するブロック本体1の左・右側壁6,7の前部天端面6a,7aは、第2レベルL2と同一レベル(同一地上高)であるため、左右方向への横移動時に支障とならず、その結果、各ブロック本体1の転圧作業を順次横移動しながら効率良く行うことができる。
このように、後壁5よりも高い第1レベルL1と上端レベルである第2レベルL2を基準にして、二段階に分けて転圧作業を行うようにしているため、ブロック本体1内に充填した充填材の転圧作業時に左・右側壁6,7と後壁5とが支障とならず、しかも、ブロック本体1内、さらには、ブロック本体1と切土面Jとの間に充填した充填材も楽にかつ十分に転圧することができて、擁壁構築作業能率を向上させることができる。
そして、最下段のブロック列の転圧作業が終了した後に、その上に二段目のブロック本体1を段積みしてブロック列を形成すると共に、同様に転圧作業を行い、順次所要の段数だけ同様の作業を繰り返し行う。
ここで、胴込め材流出防止体2,3は、それぞれ第1段階の転圧作業を行った後に所定の位置に配置し、その後に、これらの胴込め材流出防止体2,3の背後に充填材を充填して、第2段階の転圧作業を行うようにしている。
図6は、他の実施形態としての擁壁ブロックA1,A2を使用した擁壁Yの一部の断面側面図であり、本実施の形態では、ブロック本体1に段付き凹部28,29を形成することなく、胴込め材流出防止体2,3を第1レベルL1まで転圧した胴込め材Dの上に直接載置して、その状態にて第2レベルL2まで充填材を充填した後に、第2段階の転圧作業を行うようにしている。
このようにして、胴込め材流出防止体2,3を、ブロック本体1の前壁4に背後に充填した胴込め材Dの押圧力により押圧して固定することができるようにしている。
ここで、植生用の擁壁ブロックA2では、ブロック本体1の前壁4の後面(内面)下縁部から下段のブロック本体1の第2レベルL2まで充填した胴込め材Dの上面までにわたって、シート状の胴込め材流出防止体40を敷設している。
このようにして、胴込め材Dの上に直接載置した胴込め材流出防止体3が、同胴込め材Dの沈下等により下方に変位した際に、同胴込め材流出防止体3の上端面と、上段に段積みしたブロック本体1の下端面との間に間隙が発生した場合でも、胴込め材流出防止体40により、上段に段積みしたブロック本体1内の胴込め材Dが、上記間隙を通して洗掘されて流出するのを防止することができるようにしている。
図7は、他の実施形態としての植生用の胴込め材流出防止体3の平面説明図(a)と背面説明図(b)とIII-III線断面図(c)とIV-IV線断面図(d)である。
本実施の形態に係る胴込め材流出防止体3は、基本的構造を前記した胴込め材流出防止体3と同じくしているが、前後一対の前後仕切り壁22,22を設けて、客土充填用空間としての客土充填用凹部20が、上面のみが開口する凹状となるように形成している点において異なる。
このようにして、客土充填部30を胴込め材流出防止体3の客土充填用凹部20単独で形成して、同客土充填用凹部20内に客土Gを充填・確保することができるようにしている。
また、図9及び図10は、更なる他の実施形態を示している。特に、本実施形態の擁壁ブロックA3は、胴込め材流出防止体2の魚巣用連通部38をより広くすることにより、魚巣用空間を拡張して、水生動物が営巣しやすいようにしている点に特徴がある。
図9に示すように、擁壁ブロックA3のブロック本体1内の前側上部空間Sに、胴込め材流出防止体2を配設して、同ブロック本体1内に充填した胴込め材Dが河川K2により前側上部空間Sを通して洗掘されるのを防止するようにしている。
この胴込め材流出防止体2は、図10に示すように、左右幅方向に伸延する板状の前後仕切り片36と、同前後仕切り片36より前方へ突出する平面視略台形状の前後間隔保持片37とから形成しており、前後間隔保持片37は、左右方向に一定の間隔を開けて中途部の二個所に複数設けている。
前後間隔保持片37の平面視略台形の形状は、ブロック本体1の内部に充填する胴込め材Dの前壁方向への荷重によって生じる曲げモーメントを軽減する役割を果たす。
また、胴込め材流出防止体2の前後仕切り片36は、図10及び図11に示すように、その下部に、ブロック本体1の前壁4側に突出する前後仕切り片脚部53を備えており、この前後仕切り片脚部53と前壁4との間に間隔Wを設けて魚巣用連通路35を形成している。
換言すれば、前後仕切り片脚部53の前壁4方向への突出長さを、前後間隔保持片37の前壁4方向への突出長さよりも短く形成することにより、間隔Wを設けて魚巣用連通路35を形成している。
したがって、ブロック本体1に胴込め材流出防止体2を配設した際に、ブロック本体1に充填した胴込め材Dが河川K2の流れによって流出するのを、胴込め材流出防止体2が効果的に防止するとともに、魚巣用空間をより拡張することができ、水生生物の生活の場を広く確保することができる。
また、胴込め材流出防止体2は、ブロック本体1の段付き凹部28,29に左右側端部を上方から嵌合させて、同胴込め材流出防止体2を着脱自在に横架できるようにしている。すなわち、段付き凹部28,29は前後仕切り片支持部として機能するようにしている。
ここで、図12に示すように、段付き凹部28,29には、前後仕切り片の下部の下面が当接する下部支持面56と、前後仕切り片脚部53の下面が当接する脚部支持面57とを備えており、胴込め材流出防止体2の底面を下方から支えるように、ブロック本体1の内部に胴込め材Dを充填せずとも、架橋できる状態としている。なお、図12は説明の便宜上、段付き凹部29を拡大図示しているが、段付き凹部28についても掌対照ではあるものの同様である。
したがって、図9に示したように、胴込め材流出防止体2の下方に営巣空間Eを設けることができて、水生動物の成育場所を広く確保することができるとともに、水生動物の隠れ場所を形成することができる。
また、下部支持面56と脚部支持面57とは、ブロック本体1に胴込め材流出防止体2を配設した際に、図13に示すように、更に上段の前壁4の下端面との間に隙間Hが形成される位置としている。
したがって、隙間Hの間隙を水生生物が通り抜けることができて、胴込め材流出防止体2の背面58側の胴込め材Dにも水生生物を生育させることができる。
また、隙間Hは、河川K2の水流を通すことで、胴込め材Dの背面58側に新鮮な河川水を供給する役割も担っている。
また、段付き凹部28,29には、前後仕切り片脚部53の前面が当接する脚部前面保持面59を備えている。
この脚部前面保持面59は、ブロック本体1の内部に充填した胴込め材Dによって胴込め材流出防止体2を前壁4側に押圧する荷重(圧力)を前後間隔保持片37,37と同様に受け止める役割を担っている。
次に、ブロック本体1の構成に目を転じると、ブロック本体1は、図9及び図10に示すように、前・後壁4,5と左・右側壁6,7とから上・下面開口の筒状に形成しており、後壁5は、前壁4の高さの半分よりも低く形成して、ブロック本体1をコンパクトにしてかつ軽量に形成している。
ここで、前壁4には、魚巣用空間と擁壁ブロックの外部とを連通するように正面視略正方形状の逃げ穴50をテーパー状に穿設しており、この逃げ穴50は、胴込め材流出防止体2をブロック本体1に配設した際に、前後仕切り片脚部53の先端部と対向する位置に設けている。
逃げ穴50は、河川K2を遊泳する水生生物がブロック本体1の内部に入るための経路として機能するとともに、河川K2の水量が減少した際に、ブロック本体1内に生息する水生生物を河川K2側へ逃がすための穴としても機能するものである。
また、前壁4には、前記逃げ穴50よりも更に下方に前面通水穴51をテーパー状に穿設している。この前面通水穴51は、ブロック本体1内の水の循環を助長するために設けているものであるが、逃げ穴50と同様に、河川K2の水量が減少して際にブロック本体1内に生息する水生生物を河川K2側へ逃がすための穴としても機能する。
なお、この逃げ穴50は、図1に示したように、梁状の胴込め材流出防止体2を適用した擁壁のブロック本体1に穿設しても良いことは勿論である。
すなわち、この逃げ穴50は、胴込め材流出防止体の形状にかかわらず、ブロック本体1の前壁に穿設することで、水生生物がブロック本体1と河川K2との間を自由に行き交うことができる。
左・右側壁6,7には、矩形状の側面通水穴52を穿設している。この側面通水穴52は、擁壁ブロックA3の左右方向への水循環を良好に保つために設けており、胴込め材D中の水の淀みを減少させ、水生生物の生育環境を改善することができる。
ところで、図9において、擁壁ブロックA4は、擁壁ブロックA3と同様の構成を有しているが、河床K1に埋没された状態で配設している。
このように擁壁ブロックA4を河床K1に埋没した場合には、擁壁ブロックA4の胴込め材流出防止体2とブロック本体1の前壁4との間に形成される空間に、河床K1の土壌を流入させて、水生植物を繁茂させることができる。
したがって、河川K2の水生植物の量を増やすことができ、河川K2の自然環境をより豊かなものとすることができる。
そして、河川K2の水流等により、擁壁ブロックA4の前記空間から土壌が除かれた場合には、河川水で満たされることとなり、前記空間を魚巣用空間とすることができる。
また、河川K2の水位が極度に低下して河床K1付近まで降下した場合であっても、擁壁ブロックA4の前記空間に河川水が貯留されている状態であれば、同空間を魚巣用空間と兼ねて、水たまりを求める水生生物の待避場所とすることができる。
また、この魚巣用空間には、比較的大きめの栗石等を入れることで、より水生生物の生息環境を整えるようにしても良い。この際、栗石間は水生生物が通り抜け可能となるように十分な間隙を設けるようにする。
また、前述の営巣空間Eは、必ずしも設ける必要はなく、胴込め材Dで満たすようにしても良い。この場合もまた、胴込め材D間は、水生生物が通り抜け可能となるように十分な間隙を設け、併せて、逃げ穴50を介して水生生物が本体ブロックの外へ逃げることが可能となるようにしておくのが好ましい。
換言すれば、逃げ穴50を完全に閉塞するように胴込め材Dを配設するのではなく、この擁壁ブロックA4を配設する周辺水域の水生生物が通り抜け可能となる程度の隙間が空くように胴込め材Dを充填するのである。
次に、擁壁ブロックA3の実施態様について図14に示す。図14は、階段状に形成した擁壁Yの擁壁ブロックA3を拡大し一部を切り欠いて示した模式図である。
擁壁ブロックA3によれば、ブロック本体1の内部に様々な水生生物を生息させることができる。
すなわち、本実施形態に係る胴込め材流出防止体2は、前後仕切り片36と前壁4との間を広げながらも、前後仕切り片36の下部に前後仕切り片脚部53を設けているため、魚巣空間を広くすることができ、例えば水生生物M1のように余裕を持って魚巣空間を遊泳することができ、同時に、胴込め材Dがブロック本体1から魚巣用連通路35を介して流出してしまうのを防止することができる。
また、胴込め材流出防止体2の上面(前後仕切り片36の上面)と、さらに上段のブロック本体1の前壁4の下端面との間には隙間Hを形成しているため、たとえば水生生物M2や水生生物M3のように、魚巣用空間と胴込め材流出防止体2の背面側との間で往来させることができる。
また、胴込め材流出防止体2の下面近傍には、胴込め材Dの量を減らして営巣空間Eを形成しているため、たとえば水生生物M4のように、水生生物に成育や営巣の場を提供することができる。
また、ブロック本体1の前壁4には、胴込め材流出防止体2の前後仕切り片脚部53の先端部と対向する位置の近傍に逃げ穴50を穿設している。それゆえ、水生生物M5のように、河川K2とブロック本体1の内部との間で、水生生物が前壁4を越えることなく往来するための経路とすることができる。また、河川K2の水量が減少し、前壁4の高さよりも水位が下回った場合でも、水生生物M5のように、ブロック本体1の内部から河川K2へ前壁4を越えることなく逃がすことができる。
このようにして、擁壁ブロックA3を水生生物のビオトープとして活用することができ、河川K2の周辺水域における水生生物の生育環境の向上を図ることができる。
次に、図15に擁壁ブロックA3の他の実施態様について示す。図15は、擁壁ブロックA3の平面図を示しているが、胴込め材流出防止体2の前後仕切り片36とブロック本体1の前壁4との間の空間を前後間隔保持片37によって区画して形成した3つの分割空間のうち、中央の分割空間に客土Gを充填して植物を植生可能としている。
すなわち、擁壁ブロックA3の分割空間は、前述したように魚巣用空間として使用できるとともに、客土充填空間としても利用できるようにしている。
このように中央の分割空間に客土Gを充填して構成した擁壁ブロックA3は、平水位(河川が通常の水量の時の水位)から低水位(河川の水量が少ない時の水位)までの間に配設する擁壁ブロックに適用すると良い。
すなわち、河川が平水位である場合には、客土が水面下に没して水生植物の生育の場を提供することができ、また、河川が低水位となった場合には、客土が水面上に露出して、陸生植物の生育の場を提供することができるため、河川環境の向上を図ることができる。
また、客土が水面下に没している場合において、充填した客土が河川の流水によって流出した場合は、この分割空間が水中空間となり、水生生物の避難場として活用されることとなる。
したがって、図9に示したように、河川K2の水位がL3の状態にある場合には、分割空間は魚巣用空間として使用することができ、一方、河川K2の水位がL4の状態にある場合には、分割空間を客土充填空間として客土Gを充填し、植物を植えることができて擁壁Yの外観を良好にすることができる。
なお、前記分割空間を魚巣用空間として使用する場合には、前壁4の魚巣用空間と対向する位置に逃げ穴50を穿設するのが好ましい。一方、客土Gの流出を防ぐために、前壁4の客土充填空間として利用した分割空間に対向する位置には、前述の逃げ穴50を穿設しないようにしても良い。
次に、胴込め材流出防止体2の変容例を図16に示す。この胴込め材流出防止体2は、前後仕切り片36の高さを、同前後仕切り片36の上端面が、更に上段のブロック本体1の前壁4の下端面に当接する高さとしている。
そして、前後仕切り片36の上端面の一部に凹部59を形成し、この凹部59を介して魚巣空間と胴込め材流出防止体2の背面58との間で、隙間Hを形成して水生生物が往来できるようにしている。
この胴込め材流出防止体2によれば、上端面が更に上段のブロック本体1の前壁4の下端面に当接しているため、河川K2の水流により胴込め材流出防止体2を持ち上げる力が加わった場合でも、胴込め材流出防止体2が浮き上がるのを防止することができる。それゆえ、胴込め材流出防止体2が浮き上がることにより、同胴込め材流出防止体2とブロック本体1とが接触を繰り返して起こる双方の損傷等を防止することができる。
A1 擁壁ブロック
A2 擁壁ブロック
B 基礎ブロック
Y 擁壁
S 前側上部空間
1 ブロック本体
2 胴込め材流出防止体
3 胴込め材流出防止体
4 前壁
5 後壁
6 左側壁
7 右側壁
20 客土充填用凹部
21 上下仕切り片
22 前後仕切り片
23 左右仕切り片
24 上下連通孔
25 胴込め材流出防止用網体
26 客土充填用補助凹部
30 客土充填部
35 魚巣用連通路
36 前後仕切り片
37 前後間隔保持片
38 魚巣用連通部
A2 擁壁ブロック
B 基礎ブロック
Y 擁壁
S 前側上部空間
1 ブロック本体
2 胴込め材流出防止体
3 胴込め材流出防止体
4 前壁
5 後壁
6 左側壁
7 右側壁
20 客土充填用凹部
21 上下仕切り片
22 前後仕切り片
23 左右仕切り片
24 上下連通孔
25 胴込め材流出防止用網体
26 客土充填用補助凹部
30 客土充填部
35 魚巣用連通路
36 前後仕切り片
37 前後間隔保持片
38 魚巣用連通部
Claims (13)
- 階段状の擁壁を築造するときに階段状に段積みされるブロック本体を有する擁壁ブロックであって、
前記ブロック本体は、少なくとも前壁、左側壁および右側壁を備え、かつ上面に開口を備えており、
当該ブロック本体の内部に胴込め材が空積みされており、
出水時に、空積みされた当該胴込め材が段積みされた前記ブロック本体の上面の開口から流出することを防止する胴込め材流出防止体が設置されており、
当該胴込め材流出防止体と前記ブロック本体の前壁との間に、魚巣用空間または客土充填用空間のうちの少なくともいずれか一方として用いられる空間が形成されていることを特徴とする擁壁ブロック。 - 前記ブロック本体は、その前壁に、前記魚巣用空間と擁壁ブロックの外部とを連通する穴を備えていることを特徴とする請求項1に記載の擁壁ブロック。
- 前記胴込め材流出防止体は、前記ブロック本体内の空間を前後に仕切る前後仕切り片と、当該前後仕切り片と前記ブロック本体の前壁との間隔を保持する前後間隔保持片とを備えるものであり、
前記前後仕切り片および前後間隔保持片と、前記ブロック本体の前壁および左右側壁とにより、擁壁ブロックの外部に連通する魚巣用連通部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の擁壁ブロック。 - 前記胴込め材流出防止体の前後仕切り片と前記ブロック本体の前壁との間の前記空間は、前記前後間隔保持片によって複数の分割空間に区画されており、
当該複数の分割空間のうちの少なくともいずれか一つは、前記魚巣用空間であり、
前記ブロック本体は、その前壁に、前記分割空間と擁壁ブロックの外部とを連通する穴を備えていることを特徴とする請求項3に記載の擁壁ブロック。 - 前記胴込め材流出防止体は、段積みされた上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁前面が、胴込め材流出防止体の後端と前端との間に位置するように配置されており、当該胴込め材流出防止体の前後仕切り片と前記上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁との間に隙間が形成されるように配置されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の擁壁ブロック。
- 前記胴込め材流出防止体の前後仕切り片は、前記上段擁壁ブロックのブロック本体の前壁に当接する上端面を備えると共に、前記隙間を形成するための凹部を備えていることを特徴とする請求項5に記載の擁壁ブロック。
- 前記ブロック本体は、その左右側壁に、前記胴込め材流出防止体を横架状に支持する支持部を備えている請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の擁壁ブロック。
- 前記胴込め材流出防止体の前後仕切り片は、その下部に、前記ブロック本体の前壁側に突出する前後仕切り片脚部を備えており、
前記ブロック本体の前後仕切り片支持部は、前記前後仕切り片の下部の下面が当接する下部支持面と、前記前後仕切り片脚部の下面が当接する脚部支持面と、前記前後仕切り片脚部の前面が当接する脚部前面保持面とを備えていることを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の擁壁ブロック。 - 前記前後仕切り片脚部は、前記ブロック本体の前壁との間に空隙が形成される状態で突出していることを特徴とする請求項8に記載の擁壁ブロック。
- 前記胴込め材流出防止体は、少なくとも、上下仕切り片と前後仕切り片とにより、客土充填用空間が形成されるようにすると共に、これら仕切り片とブロック本体の前壁と左右側壁とにより、客土を充填するための客土充填部が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の擁壁ブロック。
- 胴込め材流出防止体の上下仕切り片に、上下方向に連通する上下連通孔を形成し、当該上下連通孔を客土充填用空間の一部となしたことを特徴とする請求項10に記載の擁壁ブロック。
- 上下連通孔の底部に胴込め材流出防止用網体を配置したことを特徴とする請求項11に記載の擁壁ブロック。
- 前記ブロック本体の左右側壁には、胴込め材流出防止体を横架状に支持する支持部を設けたことを特徴とする請求項1および請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の擁壁ブロック。
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