JP2009249644A - プリメルト滓化促進剤の投入方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】上底吹き機能を有する転炉1で精錬を行う際に、蛍石の代わりにプリメルト滓化促進剤を投入することでスラグを生成させるプリメルト滓化促進剤の投入方法において、プリメルト滓化促進剤を投入するに際し、プリメルト滓化促進剤に含まれるフッ素含有量が1.0%以下とし、各種条件の範囲でプリメルト滓化促進剤を投入する。
【選択図】図1
Description
従来より、スラグを滓化させるものとしては、蛍石が広く使用されていたが、環境問題に伴い、フッ素を多量に含む蛍石を産業的に使用することは控えられているのが実情である。そのため、蛍石の代替の滓化促進剤として、プリメルト滓化促進剤が使用されている(例えば、特許文献1〜特許文献3)。
特許文献2では、吹錬初期に塩基度が1.0〜2.0の合成フラックスを炉内に投入し、次いでCaOを追加添加することによってスラグの滓化を促進している。
特許文献3では、転炉内に10%以上の配合比でマグネシアクリンカ−を、スラグのマグネシア飽和溶解度を超え、最大10%過剰となるように添加することによってスラグの滓化を促進している。
特許文献2では、合成フラックスの投入時期を吹錬初期としているのみで、その投入時期は曖昧に示しているだけでなく、投入量に関する規定が明確にされておらず、実際の操業に適用することは困難である。
特許文献3では、溶鋼温度より融点の高いマグネシアを添加するものである。
即ち、特許文献1〜3の技術を用いたとしても、転炉における脱りん処理時にプリメルト滓化促進剤を投入してスラグを生成するにあたって安定的にスラグを滓化させることが困難であった。
即ち、上底吹き機能を有する転炉で精錬を行う際に、蛍石の代わりにプリメルト滓化促進剤を投入することでスラグを生成させるプリメルト滓化促進剤の投入方法において、
前記プリメルト滓化促進剤を投入するに際し、当該プリメルト滓化促進剤に含まれるフッ素含有量を1.0%以下とし、式(1)及び式(2)を満たす範囲でプリメルト滓化促進剤を投入する点にある。
脱りん処理の際に生成したスラグは、路盤材や土木工事用資材等としてリサイクルされるのが一般的であることから、まずは、リサイクルされるスラグが環境基準に満たすものとなるように、環境についても配慮を行った。特に、スラグに含まれるフッ素の含有量は環境に配慮する上でも非常に重要なことであるため、様々な検証の結果、プリメルト滓化促進剤でスラグを滓化した際でも、スラグから溶け出すフッ素のフッ素溶出量が環境基準を満たすように、プリメルト滓化促進剤に含まれるフッ素含有量は1.0%以下とした。
図1は、上底吹き機能を有する転炉1であって、この転炉1は脱りん処理を行うことができるものである。転炉1は、上方に向かって開口する炉口2を備えている。転炉1には、転炉1内の溶鋼3(脱りん処理が行われている溶銑)に対して酸素を吹き込む上吹ランス4が炉口2から挿入自在に設けられている。また、転炉1には、副原料を投入するホッパー5が配備されている。転炉1の炉壁には炉体の傾動により溶鋼3を出鋼できるように出鋼口6が形成され、転炉1の炉底には溶鋼3内へ撹拌用ガスを供給できるように羽口7が形成されている。
転炉1で脱りん処理を行うには、溶銑を転炉1に装入し、その後に、焼石灰(CaO)などの造滓剤をホッパー5等を介して転炉1に投入する。そして、転炉1に上吹きランスを装入して、上吹きランスによって溶鋼3に酸素ガスを吹き付けると共に、転炉1の炉底の羽口7からアルゴンなどの不活性ガスを吹き込んで溶鋼3を攪拌しながら吹錬を行う。
脱りん処理において、プリメルト滓化促進剤のフッ素含有量は1.0%以下とし、当該プリメルト滓化促進剤を投入するに際には、式(1)及び式(2)を満たす範囲でプリメルト滓化促進剤を投入している。
プリメルト滓化促進剤のフッ素含有量を1.0%以下としたのは以下の理由による。
脱りん処理の際に生成したスラグ8は、路盤材や土木工事用資材としてリサイクルされるのが一般的であり、リサイクル品として使用する場合にはフッ素含有量の環境基準を満足することが必要である。
スラグ8に含まれるフッ素の含有量は、スラグ8を滓化させるプリメルト滓化促進剤に含まれるフッ素の含有量に依存することから、スラグ8に含まれるフッ素の含有量、即ち、スラグ8のフッ素溶出値が環境基準以上とならないように、プリメルト滓化促進剤のフッ素含有量の上限を予め規定しておく必要がある。
表1は、脱りん処理後のスラグ8からのフッ素溶出量をまとめたもので、図2はプリメルト滓化促進剤のフッ素含有量とスラグ8からのフッ素溶出量との関係をグラフ化したものである。
しかしながら、実験4〜5及び図2に示すように、スラグ原単位が少ない場合、プリメルト滓化促進剤のフッ素含有量が1.0%よりも大きくなると、スラグ8のフッ素溶出量は基準値(0.8mg/L)よりも大きくなった。
したがって、スラグ8のフッ素溶出量が基準値以下となるように、プリメルト滓化促進剤のフッ素含有量は1.0%以下としている。
プリメルト滓化促進剤の投入は、式(2)に示すように、溶鋼温度がプリメルト滓化促進剤の融点以上となった時点で開始している(投入時溶鋼温度≧プリメルト滓化促進剤の融点)。
溶鋼温度が融点以下の時点でプリメルト滓化促進剤を投入した場合でも、一定温度以上であればプリメルト滓化促進剤は固液共存状態となるため粒の周囲から徐々に液相が生成して溶融することになる。
投入時期を判断するために溶鋼温度を知見する方法は、上吹き酸素ランスに装着した温度センサ−を用いる方法、底吹き羽口7に装着した温度センサ−を用いる方法などを用いることができる(例えば、特開2006−126062号公報、特開平11−326061号公報)。なお、溶鋼温度を知見する方法は、上記に限定されず、他の方法で溶鋼の温度を測定してもよいし、溶鋼の温度が測定できない場合は、一般に使用されているスタティック計算に基づいた溶鋼温度推定値を使用してもよい。
「プリメルト滓化促進剤の投入量の下限について」
脱りんを十分に行わせるためには、脱りん処理に適したスラグ量を確保する必要があるため、十分にスラグ8を滓化させるためのプリメルト滓化促進剤の下限値が存在する。その下限値を示したものが式(1)に示したα×Wslag≦Wfluxである。
また、スラグ8中のCaO濃度も脱りん処理後、即ち、吹錬後でないと分からないことから、予め塩基度の異なる様々な造滓剤生成条件で吹錬を行った後のスラグ8を採取し、そのスラグ8の成分分析を行って各塩基度毎の平均CaO濃度をデータ化しておく。そして、脱りんを行う際、塩基度と平均CaO濃度とのデータから同一の塩基度における平均CaO濃度を選択して、その値を式(3)に代入するスラグ中のCaO濃度として適用する。様々な実験の結果、α=0.08となった。
[プリメルト滓化促進剤の投入量の下限について]
脱りん処理において、プリメルト滓化促進剤の投入を開始してから吹錬完了するまでの時間は限られているため、吹錬が完了するまでの間にスラグ8の滓化が十分に進みプリメルト滓化促進剤が溶融する必要があるため、プリメルト滓化促進剤の上限値を式(1)に示すように、規定した。言い換えれば、プリメルト滓化促進剤を投入してから吹錬が完了するまでの間に与えられる熱で溶けるプリメルト滓化促進剤の量が上限値であり、式(1)の右辺に示したWflux≦β×Tmeで示すことができる。
プリメルト滓化促進剤を投入してから吹錬終了時間(tme)は、式(4)で示される吹止目標温度、投入時溶鋼温度、溶鋼昇降温度から求めた。
スラグ8の滓化性は、処理後に転炉1内のスラグ8を目視で観察し、固体物がない場合を滓化したもの「○」と評価し、固体物があるものを滓化していないもの「×」と評価した。吹錬における酸素積算量は、一般的なスタティックモデルにて計算した。スラグ8中CaO濃度については、予め塩基度2.5で吹錬を実施したチャ−ジの処理後スラグ分析値に基づき、当該スラグ8中CaO濃度を45%とした。
一方で、実験3及び実験4に示すように、溶鋼温度がプリメルト滓化促進剤の融点よりも高い時点でプリメルト滓化促進剤を添加した場合は、滓化性は良好で、脱りん処理後のP濃度も非常に低かった(0.020%未満)。
実験13〜実験20に示すように、プリメルト滓化促進剤の原単位を一定とし、昇熱速度を変更して、プリメルト滓化促進剤投入完了から吹錬終了までの時間を2.9〜6.7minの変化をさせてプリメルト滓化促進剤をそれぞれ添加した。
実験21〜実験22に示すように、プリメルト滓化促進剤原単位を増加させて吹錬時間を延長した場合(β>1.4)したところ、滓化性は悪く、脱りん処理後のP濃度も高くなった(0.020%以上)。特に、この場合は、吹錬終了時における溶鋼の吹止温度が1640℃に対して、吹錬時間を延長したため吹止実績温度が1665℃や1690℃と非常に高いものとなった。
実験23〜実験24では、プリメルト滓化促進剤の融点が異なる種類Dと種類Eとを用いた実験を行った。いずれの場合でも、滓化性は良好であった。
本発明は上記の実施形態に限定されない。
2 炉口
3 溶鋼
5 ホッパー
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