毛髪は、各種の外的要因によって損傷・劣化を起こしている。上記外的要因としては、環境的要因、物理的要因、または化学的要因などを挙げることができる。環境的要因としては紫外線、物理的要因としてはブラッシング、ドライヤー等の熱、摩擦および乾燥等、化学的要因としてはヘアパーマ、ヘアダイまたはヘアブリーチ等に用いる酸、アルカリ、酸化剤、還元剤等を挙げることができる。また、これら外的要因が同時に重なって起こった場合には、更に毛髪の損傷が大きくなる。
例えば、パーマネントウェーブ剤(パーマ液)は、毛髪を還元・酸化させることによって、毛髪へウェーブを付与したり、または、縮毛・くせ毛等を矯正して直毛化するものである。パーマネントウェーブ剤による処理によって、毛髪は還元・酸化といった苛酷な条件下に曝されるために、毛髪強度および感触の低下が生じるとともに、さらに進行した場合には毛髪上のキューティクルの剥離、枝毛または切れ毛といった損傷が生じる。
また、ブリーチ剤は、主として過酸化水素のような酸化剤が有する酸化作用によって毛髪のメラニン色素を脱色するものである。また、染毛剤は、毛髪中に浸透させた色素が酸化・重合することによって発色するものである。その作用が温和であるものの、染毛剤も毛髪表面に対して損傷を与える。このように毛髪が損傷を受けた場合には、ごわごわしたヘアスタイルとなり、毛髪強度が低下して切れ毛、枝毛になり易くなるという問題点がある。また、パーマの効果を十分に得るため、または、むら無く染毛を行うためには、多量の薬剤を用いるより外に方法が無く、これもまた毛髪の損傷をもたらす原因となっている。
従来から、損傷した毛髪を保護するための毛髪処理剤として、油分(例えば、シリコーン油またはパラフィン系オイルなど)、保湿剤(例えば、グリセリンなど)、各種界面活性剤、天然物からの動植物抽出エキス、蛋白質、アミノ酸、多糖類、および天然高分子等が配合・利用されている。
ところで、近年、様々な分野で両親媒性物質が利用されている。
両親媒性物質とは親水性と親油性との二つの異なる性質を併せ持つ物質のことであって、このような性質を有する物質は界面活性物質と呼ばれている。例えば、糖脂質は、糖の性質に由来する親水性と脂質の性質に由来する親油性との二つの性質を併せ持ったものであり、界面活性物質の一例である。
生体成分由来界面活性物質としては、レシチン、サポニン等が知られている。しかしながら、石油化学工業の発展によって合成界面活性剤が開発され、生体成分由来の界面活性物質に比べて合成界面活性剤の生産量は飛躍的に増加し、今や日常生活には無くてはならない物質となった。
しかしながら、合成界面活性剤は生分解性が低いので、合成界面活性剤の使用量の拡大に伴って環境汚染が深刻な問題になりつつある。そこで、環境に対する負荷を低減するために、安全性が高いとともに生分解性が高いバイオサーファクタントが再び見直されており、様々な種類のバイオサーファクタントの開発が望まれるようになった。
上記バイオサーファクタントとしては、糖脂質系、アシルペプタイド系、リン脂質系、脂肪酸系および高分子化合物系の5種類のバイオサーファクタントを挙げることができる。
上記バイオサーファクタントのうち、リン脂質系バイオサーファクタントは、古くから乳化剤として用いられているばかりでなく、水に懸濁させると、当該リン脂質が会合して二重膜を形成し、水相を閉じこめたベシクルを形成することが知られている。このベシクルはリポソームとも呼ばれ、生体膜のモデルまたは化粧品や薬物の担体として利用されている。なお、リン脂質系以外のバイオサーファクタントにおいてベシクルを形成するものは、ほとんど知られていないのが現状である。
一方、糖脂質系のバイオサーファクタントとしては、細菌または酵母によって生産される、多くの種類のバイオサーファクタントが報告されている。糖脂質系のバイオサーファクタントは、生分解性が高く、低毒性であって環境に優しいばかりでなく、優れた生理機能を有している。例えば、糖脂質系のバイオサーファクタントは、それ自体が保湿効果が高いことが知られており、化粧品等の成分として用いることが期待されている。
代表的な糖脂質系バイオサーファクタントの一つにマンノシルエリスリトールリピッド(MEL)がある。MELは、Ustilago nuda(ウスチラゴ ヌーダ)およびShizonella melanogramma(シゾネラ メラノグラマ)から発見された物質である(例えば、非特許文献1および2参照)。その後、イタコン酸を生産するための変異株であるCandida属酵母(例えば、特許文献1および非特許文献3参照)、Candida antarctica(キャンデダ アンタークチカ)(現在はPseudozyma antarctica(シュードザイマ アンタークチカ))(例えば、非特許文献4および5参照)、Kurtzmanomyces(クルツマノマイセス)属(例えば、非特許文献6参照)等の酵母らによっても、マンノシルエリスリトールリピッドが生産されることが報告されている。現在では、これらの酵母を長時間、連続培養することによって、300g/L以上のマンノシルエリスリトールリピッドを生産することが可能となっている。
上記マンノシルエリスリトールリピッドが有する糖骨格には複数の不斉炭素原子が存在しており、当該不斉炭素原子の数をnとすると、当該マンノシルエリスリトールリピッドには2n個の光学異性体が存在することになる。しかし、これまで報告されてきたMELは全て、その糖骨格が以下の一般式(3)に示されるような4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造であった。
β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造には、もう一つ、1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造(下記一般式(4)参照)を有する異性体が想定される。
この1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELの1種を合成して当該合成物質と従来のMELとを比較することによって、従来のMELの糖骨格が上記一般式(2)にて示される構造であることが証明されている(例えば、非特許文献7参照)。ごく最近、従来の4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELの光学異性体である、上記一般式(2)にて示される1−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELを、シュードザイマ・ツクバエンシス(Pseudozyma tsukubaensis)等の微生物を用いて生産することが可能であるとともに、当該MELを量産できることが判明した。
従来の4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトール構造を有するMELについては、抗菌作用、抗腫瘍作用、糖タンパク結合作用をはじめ、様々な生理活性を有することが報告されている(例えば、非特許文献8参照)。また、上記従来のMELは極めて特異的な自己集合特性を示すことが報告されている。具体的には、上記従来のMELの分子構造の僅かな違いが自己集合体の形成に多大な影響を与え、その結果、当該MELを用いてベシクルを形成しようとすると、希薄溶液(6.3×10
−2WT%以下)においてのみベシクルを形成することが報告されている(例えば、非特許文献9参照)。さらに、従来のMELの両連続スポンジ構造を利用した液晶乳化技術についても報告されている(例えば、非特許文献6参照)。
特開2002−308729号公報(平成14年10月23日公開)
特開2008−019230号公報(平成20年1月31日公開)
特開2006−089420号公報(平成18年4月6日公開)
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〔1.マンノシルエリスリトールリピッド(MEL)〕
本発明の毛髪処理剤の理解の一助とすべく、まず、MELについて概説する。
MELは、マンノースとエリスリトールとの結合様式に基づいて、大きく二種類に分けられる。従来型のMELは、MEL生産菌を培養することによって得られ、その化学構造の代表例は以下の一般式(5)に示すように、4−O−β−D−マンノピラノシル−meso−エリスリトールをその基本構造とするものである。
上記一般式(5)中、置換基Rは、炭化水素基(例えば、アルキル基またはアルケニル基)である。上記従来型MELは、マンノースの4位および6位のアセチル基の有無に基づいて、MEL−A、MEL−B、MEL−CまたはMEL−Dの4種類に分類される。
具体的には、MEL−Aは、上記一般式(5)中、置換基R1およびR2がともにアセチル基である。MEL−Bは、上記一般式(5)中、置換基R1はアセチル基であり、置換基R2は水素である。MEL−Cは、上記一般式(5)中、置換基R1は水素であり、置換基R2はアセチル基である。MEL−Dは、上記一般式(5)中、置換基R1およびR2がともに水素である。
上記MEL−A〜MEL−Dにおける置換基Rの炭素数は、MEL生産培地に含有させる油脂類であるトリグリセリドを構成する脂肪酸の炭素数、および、使用するMEL生産菌の脂肪酸の資化の程度によって変化する。また、上記トリグリセリドが不飽和脂肪酸残基を有する場合、MEL生産菌が上記不飽和脂肪酸の二重結合部分まで資化しなければ、置換基Rとして不飽和脂肪酸残基を含ませることも可能である。以上の説明から明らかなように、得られる各MELは、通常、置換基Rの脂肪酸残基部分が異なる化合物の混合物の形態である。
従来から、MELは様々な生理活性作用を有することが知られている。例えば、ヒト急性前骨髄性白血病細胞性HL60株にMELを作用させると、顆粒系細胞を白血病細胞へと分化させる分化誘導作用があることが知られている。またラット副腎髄質褐色細胞腫由来のPC12細胞にMELを作用させると、神経系細胞へと分化して神経突起が伸長する分化誘導作用があることが知られている。さらに、MELは、微生物が生産する糖脂質として初めて、メラノーマ細胞のアポトーシスを誘導することによって癌細胞の増殖を抑制する作用があること、等が報告されている(例えば、X. Zhao et. al., Cancer Research,59, 482-486(1999)参照)。しかしながら、現在まで、MELが毛髪処理剤として用いられることはなかった。
以下に、本発明の毛髪処理剤に用いることができるMELについて説明する。
本発明の毛髪処理剤には一般式(1)または一般式(2)にて示される構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドが含まれている。なお、一般式(1)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基であり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基であり、置換基R3は水素または炭素数2〜24の脂肪族アシル基である。また、一般式(2)中、置換基R1は同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基であり、置換基R2は同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基であり、置換基R3は水素または炭素数2〜24の脂肪族アシル基である。
一般式(1)および一般式(2)における置換基R1は、同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基である。置換基R1の炭素数は上記範囲内であれば特に限定されないが、8個〜14個であることが更に好ましい。上記構成によれば、より安定にベシクルを形成することができる。
また、上記一般式(1)および一般式(2)中の置換基R1は、飽和脂肪族アシル基であっても不飽和脂肪族アシル基であってもよく、特に限定されるものではない。不飽和結合を有している場合、例えば複数の二重結合を有していてもよい。炭素鎖は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、酸素原子含有炭化水素基の場合、含まれる酸素原子の数および位置は特に限定されない。
また、本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、上記一般式(1)または一般式(2)中、置換基R2のいずれか一方がアセチル基であり、置換基R2の他方が水素であることが好ましい。この場合、置換基R2のうち、マンノースの4位の炭素に結合した置換基R2が水素であって、マンノースの6位の炭素に結合した置換基R2がアセチル基であることが、より好ましい。上記構成によれば、より安定にベシクルを形成することができるとともに、毛髪処理剤としての効果が高い。
また、本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、上記一般式(1)または一般式(2)中、置換基R2が共にアセチル基であることが好ましい。上記構成によれば、より安定にベシクルを形成することができるとともに、毛髪処理剤としての効果が高い。
また、本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、上記一般式(1)または一般式(2)中、置換基R3が炭素数2〜24の脂肪族アシル基であることが好ましい。また、上記一般式(1)または一般式(2)中、置換基R3が炭素数8個〜14個の脂肪族アシル基であることが更に好ましい。上記構成によれば、より安定にベシクルを形成することができる。
また、上記一般式(1)および一般式(2)中の置換基R3は、飽和脂肪族アシル基であっても不飽和脂肪族アシル基であってもよく、特に限定されるものではない。不飽和結合を有している場合、例えば複数の二重結合を有していてもよい。炭素鎖は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、酸素原子含有炭化水素基の場合、含まれる酸素原子の数および位置は特に限定されない。上記構成によれば、より安定にベシクルを形成することができる。
本発明の毛髪処理剤に用いるMELには、従来のMELおよびその光学異性体が含まれ、当該MELは、脂肪酸鎖長に多様性を有するものである。そして、当該MELを用いれば幅広い濃度範囲および温度範囲においてベシクルを形成可能となり、その結果、各種エマルション・マイクロエマルションなどの乳化組成物を容易に得ることができるとともに、優れた特性を持つ毛髪処理剤(毛髪化粧料)を作製することができる。
例えば、MEL−BおよびMEL−C(アセチル基が1個)の極性は、MEL−A(アセチル基が2個)の極性に比べて高く、その結果、これらのMELの水中での自己組織化の挙動は、MEL−Aとは異なるとともに、形成される液晶の形態も異なる。更に詳細には、MEL−Aは幅広い濃度領域でスポンジ相(L3相)を作るのに対して、MEL−BおよびMEL−Cはラメラ相(Lα)を作りやすい。ラメラ相は肌の角質層と非常に近い形態を有しているために、肌浸透性が良く、スキンケア素材として有用である。さらに、MEL−Bは2重膜からなるカプセル化したベシクル(リポソーム)を形成しやすく、当該カプセル内に例えば薬剤を内包できることから、リポソーム化粧品、医薬品への応用が容易になると期待される。
一般式(1)および一般式(2)中、置換基R1およびR3がいずれも脂肪族アシル基であれば、トリアシルMELとなる。トリアシルMELは、ジアシルMELとは異なった性質を示す。
具体的には、トリアシルMELは従来のジアシルMELと比べてHLB(親水−疎水バランス)が低く、より親油性の高い界面活性剤である。このため、トリアシルMELは、ジアシルMELとは異なる用途にも用いることが可能となる。例えば、トリアシルMELは、W/Oエマルジョンや分散剤等への利用が可能となる。
本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、基本的には上記一般式(1)または一般式(2)における置換基R1の脂肪族アシル基の炭素数または二重結合の有無等において異なる各化合物の混合物の形態で得られるが、当該混合物をさらにHPLC等によって精製すれば、単一のMELを得ることができる。なお、精製方法の詳細については、後述することにする。
本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、幅広い濃度・温度範囲においてベシクルを形成可能であるとともに、各種エマルション・マイクロエマルションなどの乳化組成物を容易に形成することが可能である。さらに本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、生分解性があり、高い安全性を有する点でも非常に意義ある物質である。つまり、生分解性が高く、低毒性で環境に優しいバイオサーファクタントであるといえる。
〔2.マンノシルエリスリトールリピッドの製造方法〕
本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、基本的には特許文献2に記載の方法に従って製造することができる。つまり、MELの生産能を有する微生物を用いて、本発明の毛髪処理剤に用いるMELを製造することができる。
上記微生物はMELの生産能を有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、シュードザイマ属(Pseudozyma)またはウシチラゴ属(Ustilago)に属する微生物であって、かつMELを生産する能力を有する微生物であることが好ましい。当該微生物を培養することによって、上記一般式(1)または一般式(2)にて示される構造を有するマンノシルエリスリトールリピッドを製造することが可能である。なお、上記一般式(1)および一般式(2)中、置換基R1は、同一でも異なっていてもよい炭素数4〜24の脂肪族アシル基であり、置換基R2は、同一でも異なっていてもよい水素またはアセチル基である。また、置換基R3は、水素または炭素数2〜24の脂肪族アシル基である。
以下に、本発明の毛髪処理剤に用いるMELの製造方法について、更に詳細に説明する。
〔2−1:使用微生物〕
本発明の毛髪処理剤に用いるMELの製造に使用する微生物は、MELの生産能を有するものであればよく特に限定されないが、シュードザイマ属またはウシチラゴ属に属する微生物であることが好ましい。上記微生物を用いれば、一般式(1)または一般式(2)にて示されるMEL光学異性体を効率よく生産することができる。
更に具体的には、上記シュードザイマ属に属する微生物としては、シュードザイマ・ツクバエンシス、シュードザイマ・ルギュローサ、シュードザイマ・パラアンタクティカ、シュードザイマ・グラミニコーラ、シュードザイマ・フベイエンシス、シュードザイマ・シャンキシエンシス、シュードザイマ・シアメンシスまたはシュードザイマ・フジホルメイタを用いることが好ましい。また、上記ウシチラゴ属に属する微生物としては、ウシチラゴ・メイデスを用いることが好ましい。
上記微生物の中では、シュードザイマ・ツクバエンシスに属する微生物が最も好ましい。シュードザイマ・ツクバエンシスに属する微生物は、例えば25〜35℃で培養した場合に、MELの生産性が高く、特にシュードザイマ・ツクバエンシスJCM 10324株の場合、27〜33℃で培養した場合に、MELの生産性が高い。また、シュードザイマ・ツクバエンシスJCM 10324株では、培養温度30℃の場合に最も良好なMELの生産性が得られる。
〔2−2:培地および培養方法〕
上記微生物を培養するための培地は、一般的な微生物用培地または酵母用培地を用いることが可能であって、特に限定されない。用いる微生物に応じて、培地を適宜選択すればよい。上記培地としては、酵母用培地を用いることが好ましい。上記酵母用培地としては特に限定されないが、例えばYPD培地(イーストエクストラクト10g、ポリペプトン20g、およびグルコース100g)であることが好ましい。なお、上述したYPD培地の各成分の含有量は単なる一例であって、当該含有量に限定されない。
例えば、上記微生物としてシュードザイマ・ツクバエンシスJCM 10324株を用いる場合に好適な培地の組成は、以下のとおりである。つまり、当該培地には0.1〜2g/Lのイーストエクストラクトが含まれていることが好ましく、1g/Lのイーストエクストラクトが含まれていることが更に好ましい。また、当該培地には、0.1〜1g/Lの硝酸ナトリウムが含まれていることが好ましく、0.3g/Lの硝酸ナトリウムが含まれていることが更に好ましい。また、当該培地には、0.1〜1g/Lのリン酸二水素カリウムが含まれていることが好ましく、0.3g/Lのリン酸二水素カリウムが含まれていることが更に好ましい。また、当該培地には、0.1〜1g/Lの硫酸マグネシウムが含まれていることが好ましく、0.3g/Lの硫酸マグネシウムが含まれていることが更に好ましい。また、当該培地には、40g/L以上の油脂類が含まれていることが好ましく、80g/L以上の油脂類が含まれていることが更に好ましい。また、当該培地には、炭素源が添加されていることが好ましい。上記炭素源としては特に限定しないが、例えば、油脂類、脂肪酸、脂肪酸誘導体(例えば、脂肪酸トリグリセリド等の脂肪酸エステル類)、または合成エステルのうちの少なくとも1種であることが好ましく、これらの複数種類を同時に炭素源として用いれば更に好ましい。
上記油脂類としては特に限定しないが、植物油、動物油、鉱物油またはこれらの硬化油であることが好ましい。更に具体的に上記油脂類としては、アボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油(コーン油)、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、ピーナッツ油、ベニバナ油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、キリ油、ホホバ油、カカオ脂、ヤシ油、馬油、パーム油、パーム核油、牛脂、羊脂、豚脂、ラノリン、鯨ロウ、ミツロウ、カルナウバロウ、モクロウ、キャンデリラロウ、スクワラン等の動植物油およびその硬化油、流動パラフィン、ワセリン等の鉱物油、またはトリパルミチン酸グリセリン等の合成トリグリセリンを用いることが好ましい。これらの中でも、アボカド油、オリーブ油、ゴマ油、ツバキ油、月見草油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油またはコメヌカ油を上記油脂類として用いることが更に好ましく、オリーブ油または大豆油を上記油脂類として用いることが最も好ましい。
上記脂肪酸または上記脂肪酸誘導体としても特に限定しないが、高級脂肪酸または高級脂肪酸由来の誘導体であることが好ましい。例えば、上記脂肪酸または上記脂肪酸誘導体としては、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸、ウンデシン酸、トール酸、エイコサペンタエン酸、またはドコサヘキサエン酸などを用いることが好ましい。これらの中でも、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、またはウンデシレン酸を上記脂肪酸または上記脂肪酸誘導体として用いることが更に好ましく、オレイン酸、リノール酸、またはウンデシレン酸を上記脂肪酸または上記脂肪酸誘導体として用いることが最も好ましい。
上記合成エステルとしても特に限定されないが、例えば、カプロン酸メチル、カプリル酸メチル、カプリン酸メチル、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、ウンデシン酸メチル、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、カプリン酸エチル、ラウリン酸エチル、ミリスチン酸エチル、パルミチン酸エチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノレン酸エチル、ステアリン酸エチル、ウンデシン酸エチル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ウンデシン酸ビニル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、オレンイ酸デシル、ジメチルオクタン酸、乳酸セチル、または乳酸ミリスチル等を用いることが好ましい。これらの中でも、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、リノレン酸メチル、ステアリン酸メチル、またはウンデシレン酸メチルを上記合成エステルとして用いることが更に好ましく、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、またはウンデシレン酸メチルを上記合成エステルとして用いることが最も好ましい。
本発明の毛髪処理剤に用いるMELの製造方法の具体的な工程については、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜選定することができる。例えば、回分培養法または連続培養法にて上記MELを製造することができるが、これらに限定されない。上記製造方法として回分培養法を用いる場合には、例えば、培養工程を種培養、本培養およびMEL生産培養の3つの工程に分けるとともに、各培養スケールを順次スケールアップしていくことが好ましい。当該培養における、培地並びに培養条件を例示すると以下のa)〜c)とおりであるが、これに限定されるものではない。
a)種培養:グルコース40g/L、イーストエキストラクト1g/L、硝酸ナトリウム0.3g/L、リン酸二水素カリウム0.3g/L、および硫酸マグネシウム0.3g/Lの組成を有する液体培地5mLが入った試験管に、1白金耳の微生物を接種し、30℃で1日間の振とう培養を行う。
b)本培養:所定量の油脂類(例えば、植物性油脂など)、イーストエキストラクト1g/L、硝酸ナトリウム0.3g/L、リン酸二水素カリウム0.3g/L、および硫酸マグネシウム0.3g/Lの組成を有する液体培地100mLの入った坂口フラスコに、a)の培養液を接種して、30℃で2日間培養を行う。
c)マンノシルエリスリトールリピッド生産培養:所定量の油脂類(例えば、植物性油脂など)、イーストエキストラクト1g/L、硝酸ナトリウム0.3g/L、リン酸二水素カリウム0.3g/L、および硫酸マグネシウム0.3g/Lの組成を有する液体培地1.4Lが入ったジャーファメンターに、b)の培養液を接種して、30℃で800rpmの撹拌速度で培養を行う。なお、当該培養においては、培養途中から油脂類(例えば、植物性油脂など)を培養容器中に流下させて、培地中の油脂類濃度を20〜200g/Lに維持することが好ましい。これによって、所望のMELをより多く製造することができる。
〔2−3:MELの精製方法〕
本発明の毛髪処理剤に用いるMELの精製方法は特に限定されず、適宜公知の脂質精製方法を用いることができる。例えば、培養終了後、培養液の1〜4倍の容積の酢酸エチルを用いて当該培養液中の脂質成分を抽出した後、酢酸エチルをエバポレーターによって除去し、これによって脂質および糖脂質成分を回収することによって、所望のMELを精製することができる。
また、上記抽出法によって得られたMELは、更なる精製工程(二次精製工程)によって精製されることも可能である。当該二次精製工程としては特に限定されないが、例えば、各種カラムを用いた精製方法を用いることが好ましい。例えば、上記カラムとしてはシリカゲルカラムを用いることが好ましい。具体的には、上記抽出法によって得られたMELをクロロホルムに溶解して当該溶解液をシリカゲルカラムにかける。その後、当該シリカゲルカラムを、クロロホルム、クロロホルム:アセトン(80:20)、クロロホルム:アセトン(70:30)、クロロホルム:アセトン(60:40)、クロロホルム:アセトン(50:50)、クロロホルム:アセトン(30:70)、アセトンの順で溶出させれば、更に精製が進んだMELを得ることができる。なお、各種溶出液にて溶出された溶出サンプルの一部を薄層クロマトグラフィー(TLC)プレートにチャージした後、クロロホルム:メタノール:アンモニア水=65:15:2(容積比)の展開液にて展開する。そして、展開終了後、アンスロン硫酸試薬を用いて糖脂質の存在を確認すれば、所望のMELが含まれる溶出サンプルを特定することができる。そして、所望のMELの含まれる溶出サンプルを集めた後、溶媒を除去すれば、所望のMELを得ることができる。
〔2−4:本願発明の毛髪処理剤に用いられるMELの物性〕
一方、本発明の毛髪処理剤に用いるMELは、W/O型、両連続型、O/W型の各種マイクロエマルジョンを形成することができる。なお、本発明では、特有の構造を有するMELを用いることによって、複数の界面活性剤やコーサーファクタントを用いることなく、わずかな機械的外力によって低コストかつ効率的に、W/O型、両連続型、O/W型の各種マイクロエマルジョンを提供することができる。なお、当該マイクロエマルジョンは、少なくとも一年以上は熱力学的に安定である。
本明細書において、マイクロエマルジョンとは、少なくとも油性成分、水性成分および界面活性剤の3成分から成る、熱力学的に安定な等方性一液相を意味する。マイクロエマルジョンとは、透明または半透明の外観であるとともに、配合する全ての成分が均一に溶解している一相状態の溶液である。したがって、マイクロエマルジョンとは、熱力学的に不安定な通常のエマルジョンであって、液滴粒子径が小さいために透明あるいは半透明な外観を有する通常のエマルジョンとは本質的に異なっている。
本願発明のMELを用いれば、マイクロエマルジョンの組成およびマイクロエマルジョンの形成温度が同一であれば、その製法にかかわらず同一の状態のマイクロエマルジョンを得ることができる。このため、上記の3成分(油性成分、水性成分および界面活性剤)の各成分およびその他の成分は、任意の順番で混合することが可能である。そして、当該混合液を非常に弱い機械的外力によって攪拌すれば(例えば、高速ミキサー等によって攪拌)、同一状態のマイクロエマルジョンを得ることができる。これによって、製造プロセスが煩雑とならないので、エマルジョンの製造上極めて有利である。
上記マイクロエマルジョンは、各種成分と共存され得る。そして、当該成分によって、損傷毛に対して様々な効果を与えることが可能である。当該成分としては特に限定されないが、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類、流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類、オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等、イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等の必須成分に分類されないカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2 ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、グアガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸、キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等の増粘剤、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2またはその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類を用いることが好ましい。また、上記有効成分として、植物由来のタンパク質(例えば、小麦タンパク質、大豆タンパク質、または大豆イソフラボンなど)、または動物由来のタンパク質(例えば、ケラチン、ケラチン加水分解物、スルホン系のケラチン、ラクトフェリン、コラーゲン、エラスチン、およびこれらの誘導体並びにその塩類等のタンパク質など)を用いることが好ましい。また、上記有効成分として、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオリピン、卵黄レシチン、水添卵黄レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質類、スフィンゴエミリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロールから選ばれるスフィンゴリン脂質類、プラスマローゲン類、糖脂質がジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステル等であるグリセロ脂質類、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4等のスフィンゴ糖脂質類、および/またはこれらの混合物、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、スフィンゴ脂質、テルペン、ステロイド、プロスタグランジン等の脂質などを用いることも好ましい。
MELの毛髪処理剤への配合量は特に限定されず、目的に応じて調節することができるが、0.001〜50質量%とするのが好ましい。MELが50質量%以下であれば、毛髪の損傷を防止する効果が十分発揮できる、こし、まとまり、なめらかさといった効果を毛髪へ付与することが容易になる。また、0.001質量%以上であれば、べたつき等の感触が生じにくくなる。より好ましくは0.001〜30質量%である。毛髪処理剤がその使用時に洗い流すタイプの場合であれば、0.01〜20質量%であることが更に好ましく、毛髪処理剤がその使用時に洗い流さないタイプの場合であれば、0.01〜5質量%であることが更に好ましい。
また、本発明の毛髪処理剤は、中和剤によってpHが適宜調節されていることが好ましい。上記pHの範囲としては特に限定されないが、例えば、pH3〜12の範囲に調節されていることが好ましい。また、pH4.5〜11の範囲に調節されていることが更に好ましい。また、pH5〜8の範囲に調節されていることが最も好ましい。
MELを含む毛髪処理剤は、用いる材料成分を適宜選択し、それらの材料成分を所定の比率で通常の攪拌機、混合機、分散機等に投入し、均一に混合することによって製造することができる。また、MELを含む毛髪処理剤には、本発明の目的が損なわれない限り、パーマ液、ブリーチ剤、染毛料、染毛剤、パーマ前処理剤、パーマ後処理剤、染毛前処理剤、染毛後処理剤等の用途・目的に応じ、各種の基材(例えば、各種界面活性剤など)を加えることも可能である。当該基材を加えることによって、毛髪処理効果を更に高めることができる。
上記基材としては特に限定されないが、例えば、アルカンスルホン酸塩、アルファ−オレフィンスルホン酸塩(AOS)、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩(SAS)、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、アルファースルホン化脂肪酸塩、高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、N−アシル−N−アルキルタウリン塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、硫酸化油脂、アルキル硫酸エステル塩(AS)、アルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸塩、高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩(AES)、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ナフタリンスルフォン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩等のアニオン性界面活性剤などを用いることが好ましい。
また、上記基材としては、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤を用いることも可能である。例えば、アニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、アルキルポリグルコシド、(ポリ)グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ等脂肪酸エステル等の多価アルコールエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、等の酸化エチレン縮合型、脂肪酸アルカノールアミド、糖アミンアシル化物、トリエタノールアミン脂肪酸部分エステル、アルキルアミンオキサイド、等のノニオン性界面活性剤を用いることが可能である。
また、上記基材としては、両性界面活性剤を用いることも可能である。例えば、両性界面活性剤としては、アルキルベタイン類、アルキルアミドベタイン類、アルキルスルホベタイン類、イミダゾリニウムベタイン類、レシチン類などを用いることが好ましい。更に具体低には、ラウリン酸アミドプロピルベタインなどの両性界面活性剤を用いることが好ましい。
また、上記基材としては、分散剤を用いることも可能である。当該分散剤としては特に限定されないが、例えば、第1〜第3級脂肪アミン塩、塩化アルキルアンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、ジアルキルモルフォリニウム塩、アルキルイソキノリウム塩、ベンゼトニウム塩、ベンザルコニウム塩などのカチオン性界面活性剤や、カチオン化セルロース誘導体、カチオン性澱粉、カチオン化グアーガム誘導体、ジアリル第4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合体、4級化ポリビニルピロリドン誘導体、4級化ビニルピロリドン/ビニルイミダゾールポリマー、ポリグリコール/アミン縮合物、4級化コラーゲンポリペプチド、ポリエチレンイミン、カチオン性シリコーンポリマー、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルジエチレントリアミンコポリマー、ポリアミノポリアミド、カチオン性キチン誘導体、4級化ポリマー等のカチオン性ポリマー等のカチオン性化合物や、アラビアゴム、トラガントゴム等の天然ゴム類、サポニン等のグルコシド類、メチルセルロース、カルボキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、リグニンスルホン酸塩、セラック等の天然高分子、ポリアクリル酸塩、スチレン−アクリル酸共重合物の塩、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合物の塩、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩、リン酸塩などの陰イオン性高分子やポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等のノニオン性高分子等であることが好ましい。
また、上記基材としては、以下の物質を用いることも可能である。例えば、上記基材としては、アルギン酸ナトリウム、デンプン誘導体、トラガントゴムなどの高分子界面活性剤、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニンなどの天然界面活性剤、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、サフラワー油、大豆油、椿油、パーシック油、ひまし油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、卵黄油、パーム油、パーム核油、合成トリグリセライド、ホホバ油等の油脂、流動パラフィン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、イソパラフィン等の炭化水素、ミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナバロウ、キャンデリラロウおよびその誘導体等のロウ、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、ラノリン脂肪酸、硬質ラノリン脂肪酸、軟質ラノリン脂肪酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラノリンアルコール、水添ラノリンアルコール、へキシルデカノール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のその他のエステル油、金属石鹸、ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、メチルフェニルポリシロキサン、エポキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アコキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、揮発性シリコーン等のシリコーン類等の揮発性および不揮発性の油分、トリメチルグリシン、ソルビトール、ラフィノース、ピロリドンカルボン酸塩類、乳酸塩類、ヒアルロン酸塩類、セラミド類などの保湿剤、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸塩、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体、両性メタクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム、ポリアクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、シリコーンレジン等の水溶性および油溶性高分子、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルメチルグリコシド、テトラデセンスルホン酸塩等の増粘・増泡成分、エチレンジアミン四酢酸およびその塩類、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸およびその塩類、リン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルコン酸、ポリリン酸塩類、メタリン酸塩、ヒノキチール類などの金属イオン封鎖剤、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸およびその塩類、フェノキシエタノール、ヒノキチール等の防腐剤、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等のpH調整剤、その他トリクロロルカルバニリド、サリチル酸、ジンクピリチオン、イソプロピルメチルフェノールなどのふけ・かゆみ防止剤、ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、パラメトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体その他の紫外線吸収剤、アルブチン、コウジ酸、アスコルビン酸、ヒノキチールおよびその誘導体などの美白剤、センブリエキス、セファランチン、ビタミンEおよびその誘導体、ガンマーオリザノールなどの血行促進剤、トウガラシチンキ、ショオウキョウチンキ、カンタリスチンキ、ニコチン酸ベンジルエステルなどの局所刺激剤、各種ビタミンやアミノ酸などの栄養剤、女性ホルモン剤、毛根賦活剤、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸誘導体、アラントイン、アズレン、アミノカプロン酸、ヒドロコルチゾンなどの抗炎症剤、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、アラントインヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛、タンニン酸などの収斂剤、メントール、カンフルなどの清涼剤、抗ヒスタミン剤、高分子シリコーン、環状シリコーン等のシリコーン系物質、トコフェロール類、BHA、BHT、没食子酸、NDGAなどの酸化防止剤、エストラジオール、エストロン、エチニルエストラジオールなどの皮脂抑制剤、イオウ、サリチル酸、レゾルシンなどの角質剥離・溶解剤を用いることも可能である。
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、これら実施例は単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
〔1.損傷毛の作製〕
日本人女性(同一人)より採取した化学的処理を行っていない毛髪の根元を揃え、約15cm(約2g)の毛束を作成した。次いで、毛束5本を0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液にて洗浄した(健常毛)。次いで、上記毛束をブリーチ処理、パーマ処理および超音波洗浄処理からなる処理工程を2サイクル行い、当該処理後、毛束を精製水で良くすすいだ後自然乾燥して損傷毛とした。
当該毛束を一定環境下に3時間放置した後、初期重量を測定した。さらに、毛束を200gの試験溶液に10分間浸漬し、次いで10秒間水道水で濯いだ後自然乾燥した。乾燥後、毛束を3時間放置し、処理後重量を測定した。より詳細な処理方法は次の通りである。
1)毛束の処理方法
未処理の健常毛束を0.5%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液(40℃)にて3分間洗浄し、水道水(40℃)で30秒間すすぎ、タオルを用いて乾燥させた。次に毛束をブリーチ液に30分浸漬(室温)した後、温かい水道水で良くすすぎ、タオルを用いて乾燥させた。さらに、毛束を第1パーマ液に15分浸漬(室温)した後、温かい水道水で良くすすぎ、タオルを用いて乾燥させた。最後に第2パーマ液に15分浸漬(室温)した後、温かい水道水で良くすすぎ、タオルを用いて乾燥させた。超音波洗浄器(プランソニック1510:ヤマト科学)を用いて、40℃の精製水にて10分間42kHzで上記毛束を洗浄した後、タオルを用いて乾燥させた。この工程を2回繰り返し、最後に精製水ですすぎ、自然乾燥して損傷毛とした。なお、以下に、ブリーチ液、第1パーマ液、および第2パーマ液の各組成を示す。
a)ブリーチ液 :4.0%過酸化水素水溶液が、50%
2.5%アンモニア水溶液が、50%
b)第1パーマ液:50%チオグリコール酸アンモニウム水溶液が、13.0%
28%アンモニア水溶液が、3.0%
精製水が、84.0%
c)第2パーマ液:6.0%臭素酸ナトリウム水溶液。
2)試験溶液の作製
MEL(MEL−AまたはMEL−B)を含む各種試験溶液を調製した。まず、MEL−AまたはMEL−Bを含むとともに、ラウリルグルコシド(マイドール12)を含むMEL分散・可溶化液AおよびMEL分散・可溶化液Bを作製した。なお、MEL分散・可溶化液AおよびMEL分散・可溶化液Bの組成の詳細を、表1に示す。
次いで、MEL分散・可溶化液A、MEL分散・可溶化液B、マイドール12またはCosmoferm MixH(セラミド:ラウリルグルコシド=10:90)を含む試験溶液1〜試験溶液4を作製した。なお、試験溶液1〜試験溶液4の組成の詳細を、表2に示す。
〔2.毛束の重量変化の測定〕
損傷毛を上記試験溶液1〜4に浸し恒温・高湿の環境下に3時間放置した後、精密上皿天秤(SHIMADZU AY−220)にて重量を測定した(初期重量=a)。次に、その毛束を試料(試験溶液1〜4)にて処理した後、一晩自然乾燥してから同様の環境下(恒温・高湿)に3時間放置した後、同様に重量を測定した(吸着重量=b)。そして、下記式に基づいて損傷毛に吸着したMEL等の量を算出した。
吸着量=吸着重量b−初期重量a
図1に示すように、試験溶液3または試験溶液4を用いた場合には、損傷毛のキューティクルが痛んでいるために毛髪の内容物が流出し、これによって毛髪の重量が減少した。一方、試験溶液1または試験溶液2を用いた場合には、MELが毛髪表面に吸着することによって、毛髪の重量が減少することを抑制することができた。
〔3.毛束の引張り強度の測定〕
全長10cm以上の毛髪10本を採取して試料とした。毛髪の横断面の直径を直角方向に2ヵ所ずつマイクロメータ−を用いて測定した。それぞれを縦径または横径とし、その平均値を直径とする円として、毛髪の断面積を算出した。
具体的には引張り強度の測定では、簡易毛髪引張り試験機(カト−テック社)を用いて、毛髪1本を引っ張ったときの当該毛髪が切断するまでの最大荷重と変位量(換言すれば、毛髪の長さの変化)とを測定した。なお、具体的な測定条件は、SPEEDが1.0mm/sec、CHUCKが20.00mm、最大荷重が400g、測定場所が23〜25℃であるとともに49〜52RH%の室内、であった。
1検体につき毛髪10本を測定して、最大荷重および変位量のそれぞれの平均値を算出した。最大荷重を毛髪の単位面積あたりで算出して破断強度とし、変位量を引張り伸び率とした。
図2に示すように、試験溶液1または試験溶液2を用いた場合は、破断強度が上昇することが明らかになった。
〔4.毛束の引張り強度の測定〕
KES−SE−DC摩擦感テスタ−(KES−SE−DC:カト−テック社)を用いて、毛髪表面特性である毛髪のすべりやすさ、すべりにくさ、なめらかさ、ざらつき感について測定した。
具体的な測定方法としては、毛髪20本をスライドガラスの上に1.0mm間隔で並べ、当該毛髪の上で摩擦センサ−を滑らせながら、摩擦係数を下記条件にて測定した。つまり、SENSがH(力計20g/V)、滑らせるスピードが1.0mm/sec、摩擦静荷重が25g、摩擦センサーがシリコンセンサー、測定場所が23〜24℃であるとともに47〜53RH%の室内、であった。
上記条件下にて摩擦係数(μ)を計測した後、スライドガラス上の20mm間における摩擦係数の平均値を平均摩擦係数(MIU)として算出した。
図3に示すように、試験溶液1または試験溶液2を用いた場合は、平均摩擦係数(MIU)を低く抑えることが可能であることが明らかになった。つまり、試験溶液1または試験溶液2を用いた場合には、損傷毛が滑らかになっていることが明らかになった。
〔5.毛束の曲がり特性の測定〕
KES−FB2−S−DC毛髪こし感テスタ−(KES−FB2−S−DC:カト−テック社)を用いて、毛髪を曲げたときのかたさ、やわらかさ、回復性の有無について測定した。測定方法、条件は次の通りである。
具体的な測定方法としては、毛髪50本を5cm間隔に並べ、曲げて測定した。なお、具体的な測定条件は、SENSがフルスケール20g、曲げ曲率が1.0、サンプルサイズが5cm、測定場所が22〜24℃であるとともに49〜52RH%の室内、であった。
図4に示すように、試験溶液2は試験溶液1を用いた場合と比較して、損傷毛が剛直になった。
〔6.毛束の引張り強度の測定〕
電子顕微鏡を用いて、毛髪表面のキューティクルの状態を観察した。
試験溶液1または試験溶液2を用いた場合には、セラミドを用いた場合と同様に、毛髪表面のキューティクルが改善されることが明らかになった。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。