JP2009243025A - 苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムのスラリーの製造方法及び前記スラリーを含有する塗工液を塗工した紙 - Google Patents

苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムのスラリーの製造方法及び前記スラリーを含有する塗工液を塗工した紙 Download PDF

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Abstract


【課題】粒度分布がシャープな粉砕後の苛性化軽質炭酸カルシウムスラリーの提供、及び前記スラリーを含有した塗工液を塗工した紙を提供すること。
【解決手段】パルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムを湿式粉砕して塗工紙に配合するための塗工用顔料を得るためのスラリーの製造方法であって、
湿式粉砕に使用する粉砕機の攪拌部材ががダブルローターとなるように構成された媒体撹拌型粉砕装置にパルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムを含有するスラリーを供給して粉砕処理することを特徴とする、前記スラリーの製造方法。
【選択図】 なし

Description

この発明は、パルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムを湿式粉砕して塗工紙に配合するための塗工用顔料を得るためのスラリーの製造方法に関する。
近年、高白色、高不透明度、高光沢度を有する高品位な軽量塗工紙の需要が高い。これらの要求に応えるために高品質軽量塗工紙の塗工顔料には、カオリン、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどの無機顔料以外に、高価な二酸化チタンやプラスチックピグメントなどが配合される。
塗工用顔料に用いられる炭酸カルシウムは非常に安価であり、塗料中の配合率を高くすることで塗工紙の白色度や不透明度を向上できるが、白紙光沢度が著しく低下する。このため、高配合化するためには、白紙光沢度発現性を向上させるために、湿式粉砕により微粒化するのが一般的である。しかし、微粒化するには分散剤の添加量を増やし、長時間粉砕しなくてはならないため、顔料製造コストが高くなる。
一般的な重質炭酸カルシウムの粉砕方法として、粉砕容器内部に粉砕媒体(ビーズ)と、被粉砕物を液体に混ぜたスラリーを充填し、粉砕容器中央の回転軸を回転させることによりビーズと被粉砕物を衝突させることによって微粉砕を行う装置(ビーズミル)がある。従来はビーズミルで処理されたスラリーを別のタンクで受けるパス方式の横型ビーズミルを用いていたが、粗粒子及び過粉砕による超微粒子が多くなり粉砕後の粒度分布がシャープにならなかった。
このため現在は、ビーズミルと循環タンクの間でスラリーを循環させるマルチパス方式のビーズミルが多く使用されている。マルチパス方式の粉砕機のメリットとして、粗粒子が少なくなり粒度分布がシャープになる特徴を持つ。なかでも、特にL/D比が0.5以下とするマルチパス方式の媒体撹拌型湿式粉砕機(特許文献1)は、粉砕室を工夫しビーズの充填率を低く抑えることが出来るため、大流量循環運転が可能となる特徴を持つ。
前述のパス方式とマルチパス方式の粉砕方法について粉砕性能を比較するため、両方法にて重質炭酸カルシウムを同一条件下で粉砕したところ、マルチパス方式の粉砕方法は粒度分布がシャープになり、良好な結果が得られた。
一方、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程で、生石灰を水または弱液で消和した後、緑液で苛性化反応することによって製造(苛性化法)される苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウム(以下、苛性化軽質炭酸カルシウムという。)がある。この炭酸カルシウムは主産物である白液を製造する際の副産物であるため、従来の石灰乳と炭酸ガスとの反応による方法で得られる軽質炭酸カルシウムに比べて既にある設備を利用でき、設備投資額が最小ですむ利点がある。しかし、苛性化軽質炭酸カルシウムを塗工用顔料として高配合すると、前述のとおり白紙光沢度が著しく低下するため、粉砕によって微粒化する必要がある。
これらのことから、前述のL/D比が0.5以下となるマルチパス方式の媒体撹拌型湿式粉砕機を用いて、苛性化軽質炭酸カルシウムのスラリーの粉砕を行った。しかし、粉砕後のスラリーの粘度が高くなり高価な分散剤の使用量が増加し、また、重質炭酸カルシウムの粉砕時と比較して動力原単位も高くなり、コスト高となった。
したがって、電力コストが安価となり、高価な分散剤使用量の使用を抑えることが出来る高品質な苛性化軽質炭酸カルシウムのスラリー製造技術を開発できれば、その苛性化軽質炭酸カルシウムを塗料中に高配合化することで、白紙光沢度が劣ることなく、高品質塗工紙を製造できる。
苛性化法によって製造された苛性化軽質炭酸カルシウムの粉砕においては、前記粉砕機を用いても良好な結果を得ることが出来ない。軽質炭酸カルシウムを粉砕する既存技術としては、特許文献2、特許文献3、特許文献4などが挙げられる。しかし、特許文献2は炭酸ガス法で得られる軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの混合粉砕、特許文献3は軽質炭酸カルシウムとカオリンの混合粉砕であり、苛性化軽質炭酸カルシウム単独の粉砕および苛性化軽質炭酸カルシウムと重質炭酸カルシウムの混合粉砕には適応できない。また、特許文献4は軽質炭酸カルシウムの粉砕時にスラリーpHが8〜12になるよう炭酸ガスを直接吹き込むことで高効率な軽質炭酸カルシウムの粉砕方法を提案している。一般に苛性化軽質炭酸カルシウムの粉砕後に得られるスラリーpHは13以上あり、しかもスラリー濃度が高いため、炭酸ガスでpH12以下まで中和するには長時間を要する。従って、スラリー粉砕機と循環タンクの間でスラリーを大流量循環させながら目的粒子径まで粉砕するマルチパスの粉砕方式では、炭酸ガス中和が不十分あるいは不可能となり、期待する効果を発揮できない。
また、微粒化すると流動性が低下するため、分散剤の添加量を増やす必要があり、また、長時間の粉砕を要するため、顔料の製造コストが高くなる。さらには、粉砕時に0.2μm以下の超微粒子が同時に生成するため、不透明度を低下させるのみならず、印刷表面強度を維持するために高価なラテックスを増添する必要があり、また、印刷光沢度が低下するといった問題がある。
これまでに、粒径分布のシャープな炭酸カルシウムの製造技術が開発されている。粒度分布のシャープな炭酸カルシウムの製造方法としては湿式粉砕で増大した超微粒子を湿式分級によって除去する方法や超微粒子が発生しないような粉砕方法が提案されている。例えば、特定粒子径範囲の重質炭酸カルシウム水性スラリーの固形分濃度が74〜80重量%で、ビーズミル等の湿式粉砕で得られたB型粘度が300 mPa・s以下である水性スラリーを、デカンタータイプの遠心分離装置を用い軽液(装置外に排出された水性スラリー)を回収し、得られた軽液を固形分濃度30〜70重量%に希釈し、B型粘度を100 mPa・s以下に調整後、遠心分離して重液(装置内壁に沈降した粗粒子を含むスラリー)を回収することにより、粗粒子分と微粒子分が少なく、粒度分布がシャープでBET比表面積が6 〜12 m2/gである重質炭酸カルシウムスラリーの製造方法が提案されている(特許文献5参照)。また、ビーズミル等の湿式粉砕で得られた特定粒子径範囲の重質炭酸カルシウムの固形分濃度が63〜72重量%で、B型粘度が160〜700 mPa・s以下である水性スラリーを遠心分離装置に供給し、供給した重質炭酸カルシウムの5〜35重量%が重液に分配されるように分離して軽液を回収し、この軽液を固形分濃度10〜29重量%に希釈し、B型粘度を30〜700 mPa・s以下に調整後、遠心分離装置に供給し、供給した重質炭酸カルシウムの50〜95重量%が重液に分配されるように分離して重液を回収することにより、粗粒子分と微粒子分が少ない粒度分布がシャープな重質炭酸カルシウムスラリーの製造方法が提案されている(特許文献6参照)。これらの方法では、湿式粉砕後の炭酸カルシウムスラリーを、遠心分離装置を用いて湿式分級することで、低比表面積でシャープな粒度分布を達成している。しかしながら、この製造方法では分級後の粗粒子分は粉砕・分級することで、塗工用顔料に使用できるが、超微粒子分は、現状、塗工紙の製造に適さないため、炭酸カルシウムの歩留まり低下、および製造効率の悪化で塗工紙のコスト高を招く問題がある。その他に、炭酸カルシウムの固形分濃度を50重量%以下に調製した炭酸カルシウムスラリーを湿式粉砕することにより、粒径分布がシャープな炭酸カルシウムスラリーの製造方法が提案されている(特許文献7参照)。しかしながら、この製造方法で製造された炭酸カルシウムスラリーは、製紙用塗工顔料としては固形分濃度が低いため、製造後にスラリーを濃縮する必要があるため製造工程が煩雑となり、塗工紙のコスト高を招く問題がある。
特開平10−230182 特開平6−41463 特開2000−110096 特開2000−239017 特開2000−34120号公報 特開2003−286027号公報 特願2004−537269号公報 特開2006−327914号公報 特開2007−72507号公報 特開2007−307522号公報
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は上記のごとき課題を解決し、粒度分布がシャープな粉砕後の苛性化軽質炭酸カルシウムスラリーを含有した塗工液を塗工した紙を提供することである。
上記課題を解決するため、本発明では、パルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムを湿式粉砕して塗工紙に配合するための塗工用顔料を得るためのスラリーの製造方法であって、
湿式粉砕に使用する粉砕機の攪拌部材ががダブルローターとなるように構成された媒体撹拌型粉砕装置にパルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムを含有するスラリーを供給して粉砕処理することを特徴とする、前記スラリーの製造方法を用いることで、本発明の課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の媒体撹拌型粉砕装置には、円筒状の容器と、該容器内を径方向に内側室と外側室に区画すると共に両室間を連通する複数のスリットが形成される筒状のセパレータと、前記容器の一端を挿通して回転自在に設けられる回転軸と、前記回転軸に固定されて回転するローターと、前記容器の他端に設けられ前記内側室内外を連通する処理物の供給口と、前記容器の外周に設けられ前記外側室内外を連通する処理物の排出口を備えたダブルローターの媒体攪拌型湿式粉砕機が使用できる。前記ロータは、円筒状の攪拌部と円板状の保持部を備える複数(2つ)の小ロータからなり、かつ、前記攪拌部が内外を連通する複数の貫通孔を備えていることができる。前記粉砕容器の軸線方向の長さ(L)と直径(D)との比(L/D比)が0.6より大きく1.2以下のダブルローターとなるように構成した媒体撹拌型粉砕装置を使用することで、流動性が良好な状態で効率良く微粒化し、粒度分布がシャープな苛性化軽質炭酸カルシウムのスラリーを得ることができる事を可能にする。前記L/D比は、好ましくは、0.8より大きく1.0以下である。筒状をなすとともに両端が閉塞した粉砕容器と、該粉砕容器の内部に、軸線をほぼ一致させた状態で設けられ、内部を径方向に2区画して内側室と外側室とを形成するとともに、両室間を連通する複数のスリットが周面の少なくとも一部に設けられている筒状のセパレータと、前記内側室の内部に粉砕容器と軸線をほぼ一致させた状態で回転可能に設けられた撹拌部材と、前記内側室に処理物を供給させるための供給口とを具えたことを特徴とする。
本発明によれば、苛性化軽質炭酸カルシウム高濃度スラリーを微粒化する際に、ダブルローターにすることによって、従来技術と比較して粉砕媒体の動きが良くなり、低速回転でも粉砕効率の高い処理を行うことが可能となるために、動力原単位を少なくする事が出来る。また、粉砕後の苛性化軽質炭酸カルシウムの物性についても、比表面積が小さくなり、粘度が下がるために高価な分散剤の使用量を減らすことが出来、さらには粒度分布がシャープとなる。これを塗工した紙は不透明度向上、低密度化、被覆性の向上による面感の向上、光沢発現性の向上、顔料の比表面積低下による強度向上とインキ落ちの軽減に優れる。
以下、本発明の方法を具体的に説明する。本発明の軽質炭酸カルシウムは、硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程の苛性化工程で製造されたものを使用する。
[軽質炭酸カルシウムの製造方法]
軽質炭酸カルシウムの製造方法としては、(1)石灰の焼成装置その他から得られる二酸化炭素を含有したガスと石灰乳との反応、(2)アンモニアソーダ法における炭酸アンモニウムと塩化カルシウムとの反応、(3)炭酸ナトリウムの苛性化によって水酸化ナトリウムを製造する石灰乳と炭酸ナトリウムとの反応等が知られている。これらの方法のうち、(2)(3)においては、その主生産物を得る製造法が新たな方法に転換されたり、炭酸カルシウムが副産物であることから不純物含量が多いなど、その利用方法についてはあまり検討されていない。
[炭酸ガス法]
一方(1)は、反応系が比較的単純(水、消石灰、炭酸ガス)であり、様々な用途毎に目的に合った炭酸カルシウムを製造する方法等について広く研究が進み、石灰メーカーから市販されている商品もいくつか見られる。しかしながら、メーカーからの直接購入では輸送費コストがかさみ、トータルコストが高くなる欠点がある。また、オンサイト炭酸ガス法ではキルン排ガスを利用すれば、安価に高品質な炭酸カルシウムを製造できるが、設備投資に巨額の費用がかかる問題がある。
[苛性化法]
そこで考えられるのが、硫酸塩法又はソーダ法によるパルプ製造工程において、蒸解薬品を回収・再生する苛性化工程で白液を製造する際に副生する炭酸カルシウムを製紙用原料として使用する方法である。この方法であれば、既にある設備を利用でき、設備投資額が最小ですむ利点がある。
[苛性化工程]
硫酸塩法またはソーダ法によるパルプ製造工程においては、木材の繊維素を単離するために水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムとを混合した薬液を用いて高温、高圧下で蒸解する。そして、繊維素は固層として分離精製されてパルプとなり、薬液および木材からの繊維素以外の溶出成分はパルプ廃液(黒液)として回収され、回収ボイラーで燃焼可能な濃度まで濃縮される。さらに、一連の過程で失われたナトリウム分と硫黄分を補給するために硫酸ナトリウムが添加された後、回収ボイラーで燃焼される。その際、黒液中の有機物質は熱源として、無機物質は主として炭酸ナトリウムおよび硫化ナトリウムとして回収されるが、これらの無機物はスメルトと呼ばれ溶融状態で回収ボイラーから取り出される。回収ボイラーから取り出されたスメルトは、水または弱液(炭酸カルシウムを水洗浄した後に得られる、白液成分を微量含んだ液)で溶解されて緑液となる。
[苛性化反応]
苛性化工程とは、緑液中の炭酸ナトリウムを蒸解薬品である水酸化ナトリウムに変えるための工程であり、生石灰を消石灰に変える消和反応(1)と、消石灰と緑液を混合し水酸化ナトリウムと炭酸カルシウムを生成する苛性化反応(2)よりなる。苛性化反応によって得られた液は白液と呼ばれ、炭酸カルシウムと分離、清澄化されて蒸解工程へ送られる。本発明では分離回収し、十分洗浄された炭酸カルシウムを使用する。
CaO + H2O → Ca(OH)2 (1):消和反応
Ca(OH)2+ Na2CO3 → CaCO3 + 2NaOH (2):苛性化反応
[苛性化反応の特徴]
この炭酸カルシウムは主産物である白液を製造する際の副産物であるため、従来の石灰乳と炭酸ガスとの反応による方法で得られる軽質炭酸カルシウムに比べて既にある設備を利用でき、設備投資額が最小ですむ利点がある。また、従来閉鎖系にある苛性化工程のカルシウム(生石灰、消石灰、炭酸カルシウム)循環サイクルから炭酸カルシウムを系外に抜き取ることによって、系内の清浄および循環石灰の高純度化が達成され、上記(1)(2)の反応性向上や白液の清澄性の向上、さらには廃棄物の低減が期待できる。
[脱水濃縮、平均粒子径]
本発明で使用される軽質炭酸カルシウムは圧搾、吸引、遠心分離方式などの脱水装置によって脱水濃縮されたケーキ状、スラッジ状のものが使用される。また、苛性化工程で得られる塊状の軽質炭酸カルシウムの平均粒子径は、顔料用途で使用できる73%濃度以上まで濃縮できれば特に限定されないが、レーザー透過式粒度分布測定装置(マスターサイザー2000、マルバーン社製)の値で10〜30μmが好ましく、更に好ましくは10〜20μmが好ましい。
[スラリー化]
このようにして得られた苛性化軽質炭酸カルシウム湿り粉体をスラリー化する方法として、円筒形の容器と棒状の攪拌アームからなり、3〜10ミリのボールを充填、攪拌して分散と粉砕を同時に行えるアトライターや高速攪拌羽を装備した高濃度分散装置等を適宜使用できる。
[分散剤]
また、分散剤と希釈水は一括または分割しながら添加することで、スラリー粘度や濃度を調整できる。顔料分散液中に使用する分散剤としては、一般に製紙用として使用されているポリアクリル酸塩、リグニンスルホン酸塩等が挙げられ、これらのうち1種類以上を必要に応じて選択して使用する。このスラリー化での軽質炭酸カルシウムの平均粒子径はビーズ径、処理時間などで任意に調整でき、この粗粉砕後の平均粒子径は、レーザー透過式粒度分布測定装置(マスターサイザー2000、マルバーン社製)の値で1〜30μmが好ましく、さらに好ましくは1〜10μmが好ましい。粗粉砕後のスラリー濃度は65〜80%が好ましい。
また、不定形状の苛性化軽質炭酸カルシム以外、例えば針状や柱状の苛性化軽質炭酸カルシウムに対しても、粉砕処理を必要とする場合には本発明を適用することが出来る。
また、顔料分散液中に使用する分散剤としては、一般に製紙用として使用されるポリアクリル酸ソーダ、リグニンスルホン酸ソーダ、リン酸塩およびそれらの変性物等が挙げられ、これらのうち一種類以上を必要に応じて選択して使用することができ、分散剤の使用量は、顔料100重量部に対して0.7〜2.0重量部が好ましく、さらに好ましくは顔料100重量部に対して0.9〜1.8重量部が好ましい。苛性化軽質炭酸カルシウムは重質炭酸カルシウムと比較して高アルカリ性であり、凝集性、疎水性が極めて高いために顔料分散液の粘度が非常に高く、粉砕時の粉砕機の粉砕機負荷が大きくなり過ぎるばかりか、場合によっては粉砕機中に充填されている媒体の割れや磨耗が著しくなるなどの問題を生じてしまう。また、粉砕が進行するに従って顔料分散液粘度が急上昇するため、重質炭酸カルシウム粉砕時と比較してより多くの分散剤使用量が必要となる。
なお、重質炭酸カルシウムと苛性化軽質炭酸カルシウムの混合顔料分散液中の苛性化軽質炭酸カルシウム含有率が50重量%以下であれば、本発明の粉砕機を使用しなくても粉砕可能である。
[粉砕機]
図1は本発明に使用する媒体攪拌型湿式粉砕機の実施の一例を示す概略断面図である。この媒体攪拌型湿式粉砕機1は、処理物の供給口6及び排出口7を備える円筒状の容器2の内部に、筒状のセパレータ3と、回転軸4に固定されて回転するローター5を備え、ローター5は複数の小ローター50からなっている。
[容器]
容器2は、筒状のセパレータ3により、径方向に内側室21と外側室22とに区画されている。そして、粉砕処理及び分散処理は内側室21で行われるので、内側室21の内部形状は重要である。すなわち、容器2の内側両端間の長さをLとし、セパレータ3の内径をDとすると、これらは、円筒状の内側室21についての両端間の長さL及び直径Dとなる。そして、小ローター50の数は2個であり、長さLと直径Dとの比は、0.6<L/D<1.2の範囲とすることが好ましい。L/Dを1.2よりも小さくすることにより、直径の小さな媒体を使用した場合でも、媒体の偏析現象及び共回り現象の発生を抑制することができる。また、0.6よりも大きくすることにより、ローター5の作用範囲を十分に確保することができる。
[セパレータ]
セパレータ3は、複数のスリット31が形成されたスクリーンタイプであり、スリット31により内側室21と外側室22とが連通している。内側室21内で媒体と共に攪拌され、粉砕処理及び分散処理を受けた処理物は、セパレータ3で媒体と分離され、外側室22に移動することができる。スリット31の幅は、媒体の直径により設定され、その総面積は、処理物の性状や流量により設定される。
[ローター]
容器2の一端を挿通して回転軸4が回転自在に設けられ、この回転軸4に複数の小ローター50からなるローター5が固定されている。回転軸4はシール部材8により密封され、図示しない駆動源により回転軸4を回転することにより、内側室21内の処理物及び媒体を攪拌することができる。また、容器2の他端には、内側室21内外を連通する処理物の供給口6が設けられ、容器2の外周には、外側室22内外を連通する処理物の排出口7が設けられている。
ローター5は、循環流を発生するような形状となっている。すなわち、ローター5は2個の小ローター50からなり、小ローター50は、各々円筒状の攪拌部51と円板状の保持部52を備えている。小ローター50は、攪拌部51の端部に保持部52を設けている。遠心力を受けた媒体は、貫通孔53を通って内側から外側に流動することになる。ローター5の回転により、攪拌部51の周囲にある媒体は、剪断力と遠心力が与えられる。そして、攪拌部51の外周に突起55を設けることにより、この剪断力及び遠心力を強力にすることができる。さらに、周上に貫通孔53と突起55を交互に配置することにより、循環流の形成が一層促進されることになる。攪拌部51の内側は、良好な混合状態に保持されることが好ましく、保持部52で分離されることのないように、保持部52に開口54を設けることが好ましい。
セパレータ3の内壁とローター5の攪拌部51の外周との間において、媒体間に大きな速度差を与えて強力な剪断力を発生させる。これと同時に、各小ローター50の攪拌部51に循環流を発生させる。循環流による流れの向きは、ローター5の回転による流れの向きに対して直交する方向である。このため、媒体は攪拌部51と共に動くことができず、偏析現象及び共回り現象が解消されることになる。
[処理物の流れ]
媒体攪拌型湿式粉砕機1は、供給口6から容器2内に処理物を供給してローター5を回転させると、処理物は内側室21内に位置している媒体と共に攪拌され、粉砕処理及び分散処理を受ける。そして、容器2の中心から外方向に向かって流動し、セパレータ3のスリット31によって媒体が分離され、外側室22から排出口7を介して粉砕容器2外に排出される。内側室21の周面付近では、媒体間の強力な剪断力により効率の高い粉砕処理及び分散処理を行うことができる。同時に、共回り現象の解消によりセパレータ3付近での媒体の流速が遅くなり、セパレータ3等の摩耗を防止することができる。また、内側室21の中心付近では、処理部物と媒体とが均一な混合状態を保持して、処理物の短絡を起こすことなく処理することができる。したがって、内側室21の全体を活用した処理を行うことができる。
[媒体充填率]
なお、粉砕媒体の充填率は出来る限り高いほうが好ましいが、充填率が高すぎる場合は粉砕室内での媒体の動きが制限されるため粉砕効率を低下させることがある。そのため、粉砕媒体の充填率は70〜90%が好ましく、さらに好ましくは、75〜85%が好ましい。
[ローター回転数]
また、ローター(撹拌部材)回転数についても出来る限り高いほうが好ましいが、ローター回転数が高すぎる場合は粉砕機の粉砕機負荷が大きくなり過ぎるばかりか、場合によっては粉砕機中に充填されている媒体の割れや磨耗が著しくなることがある。よってローター回転数は700〜1200回/minが好ましく、さらに好ましくは800〜1000回/minが好ましい。
[塗工紙の製造]
このようにして得られた苛性化軽質炭酸カルシウムスラリーは塗料中に配合される。塗料には本発明で得られた顔料に加えて、本発明で得られる苛性化軽質炭酸カルシウム以外の炭酸カルシウム、カオリン、クレー、焼成カオリン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸カルシウム、サチンホワイト、タルク、シリカ等の無機顔料を主体に、さらに必要に応じてプラスチックピグメントと称される有機顔料の1種あるいは2種以上を適宜混合して使用することができる。白紙光沢度等を向上させるためには、カオリンあるいはプラスチックピグメントを併用することが好ましい。本発明の特定の物性を有する炭酸カルシウムの配合量は特に限定されるものではないが、特に顔料100重量部当たり50重量部以上含有することにより、白紙光沢発現性、不透明度をより向上させることができる。また、顔料に加えて、澱粉、ポリビニルアルコール、合成高分子ラテックス等の接着剤を適宜配合することができる。接着剤の配合量としては、顔料100重量部に対して5〜35重量部が好ましい。また、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤等の通常用いられている各種助剤も適宜使用できる。塗料の固形分濃度は20〜70重量%程度であり、好ましくは45〜70重量%である。
本発明に用いられる原紙は、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGP等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等のパルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン等の各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留まり剤、カチオン化剤、紙力増強剤等の各種添加剤を含み、酸性、中性、アルカリ性で抄造される。本発明の原紙にはノーサイズプレス原紙、澱粉、ポリビニルアルコール等でサイズプレスされた原紙等が用いられる。
本発明により得られた顔料を含む塗料を原紙に塗工して塗工層を設ける方法は特に限定されるものではなく、従来から良く知られているゲートロールコーター、ブレードコーター等を適宜用いることができ、塗工層は一層以上設けることができる。
本発明の顔料を配合した塗料を塗工して得られる塗工紙は、必要に応じてスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の仕上げ装置を用いることにより、白紙光沢度に優れた塗工紙を得ることができる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、もちろん本発明はそれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」および「%」は特に断らない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
日本製紙株式会社A工場の苛性化工程で製造された固形分濃度73%の塊状軽質炭酸カルシウムを用いた。この湿り粉体50部と重質炭酸カルシウム50部を混合した顔料分散液、または塊状軽質炭酸カルシウム100部の顔料分散液に、それぞれポリアクリル酸系分散剤を1.6〜3.6部と水を一括添加し、アトライター(三井鉱山社製)にて濃度73%、平均粒子径7μmなるよう粗粉砕した。この処理で得られた粗スラリーを7.4Lの粉砕室を有するダブルローター型SCミルLSC220(三井鉱山社製)に定量ポンプで一定量送液し湿式粉砕した。
媒体として直径0.5ミリのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)を使用し、ビーズ充填率(粉砕室中の空隙容積に対する、最密充填した時の粉砕媒体の容積)は85%、ローター回転数を800min−1とし、本発明の粉砕機または横型ビーズミル粉砕機(三井鉱山社製)を用いて平均粒子径が0.4μmとなるまで粉砕した。粉砕後、スラリー濃度を60%にして25℃でのB型粘度(60rpm、東京計器社製)を測定した。また、マスターサイザー2000(マルバーン社製)を用いて、重量累積分布の50%点を平均粒子径として算出し、また、セディグラフ(マイクロメリテックス製)を用いて粒度分布についても測定し、粒度分布測定曲線の90重量%の粒子径と粒度分布測定曲線の30重量%の粒子径の比をD90/D30として求めた。また、マイクロメリティックス・ジェミニ2360(島津社製)を用いてBET比表面積を測定した。
[紙質評価方法]
(い)白紙光沢度 JIS P−8142に従い、角度75度で測定した。
(ろ)不透明度 JIS P−8138に従い、角度75度で測定した。
(は)表面強度 グロス品についてはローランド製オフセット枚葉印刷機(2色)にてオフセット枚葉用インキ(東洋インキ製 ハイユニティーM)を用いて印刷した後に、藍単色ベタ部の表面剥け状態を目視で評価した。
◎:きわめて良好、○:良好、△:若干劣る、×:劣る
(に)インキ落ち マット品についてはRI-II型印刷機を用い、東洋インキ製造株式会社製枚葉プロセスインキ(商品名:TKハイエコー墨 MZ)を0.50〜0.70cc使用してマクベス濃度計で測定した濃度が2.0±0.1になるように印刷を行い、一昼夜放置後、堅牢度試験機(スガ試験機製)を用い、印刷したサンプルと白紙を荷重400gで3往復摩擦を行い、印刷した紙から白紙へ転移したインキ濃度を目視で評価した。インキの転移が少ないほどインキ落ち防止効果が高い。
◎:インキ転移の問題が無いもの、○:ほとんどインキ転移の問題が無いもの、
△:若干インキ転移の問題があるもの、×:インキ転移の問題があるもの
(ほ)被覆性 白紙面感や微小光沢度ムラを目視評価した。
◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る

〔実施例1〕
苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウム(以下、苛性化軽カルという。)を100部配合した顔料分散液にポリアクリル酸系分散剤を1.6部添加したものを平均粒子径7μmまで粗スラリー化した後、ダブルローター型SCミルLSC220でビーズ充填率85%、ローター回転数800min−1で平均粒子径が0.4μmとなるまで湿式粉砕した。そのときのB型粘度は4600mPa・sであり、比表面積は11.1m/g、D90/D30は5.8であった。このようにして得られた苛性化軽質炭酸カルシウム75部にカオリン25部、接着剤としてスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスを10部、尿素りん酸エステル化でんぷんを3.5部配合して、固形分濃度65重量%の塗料を調成した。この塗料を坪量45g/m2の上質原紙に対して、ブレードコーターを用いて塗工量が片面あたり10g/m2となるように両面塗工した。塗工後、スーパーカレンダー処理(温度65℃、線圧100kg/cm)を行い、塗工紙を得た。
〔実施例2〕
実施例1と同様に塗工後、スーパーカレンダー処理を行なわずに塗工紙を得た。
〔比較例1〕
苛性化軽カルを100部配合した顔料分散液にポリアクリル酸系分散剤を2.6部添加したものを平均粒子径7μmまで粗スラリー化した後、シングルローター型SCミルSC220(三井鉱山社製)でビーズ充填率85%、ローター回転数800min−1で平均粒子径が0.4μmとなるまで湿式粉砕した。そのときのB型粘度は8700mPa・sであり、比表面積は13.1m/g、D90/D30は6.3であった。このようにして得られた苛性化軽質炭酸カルシウム75部にカオリン25部、接着剤としてスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスを10部、尿素りん酸エステル化でんぷんを3.5部配合して、固形分濃度65重量%の塗料を調成した。この塗料を坪量45g/m2の上質原紙に対して、ブレードコーターを用いて塗工量が片面あたり10g/m2となるように両面塗工した。塗工後、スーパーカレンダー処理(温度65℃、線圧100kg/cm)を行い、塗工紙を得た。
〔比較例2〕
苛性化軽カルを100部配合した顔料分散液にポリアクリル酸系分散剤を3.6部添加したものを平均粒子径7μmまで粗スラリー化した後、横型サンドグラインダー(三井鉱山社製)でビーズ充填率90%、ローター回転数800min−1で平均粒子径が0.4μmとなるまで湿式粉砕した。そのときのB型粘度は7100mPa・sであり、比表面積は17.1m/g、D90/D30は6.3であった。このようにして得られた苛性化軽質炭酸カルシウム75部にカオリン25部、接着剤としてスチレン・ブタジエン系共重合ラテックスを10部、尿素りん酸エステル化でんぷんを3.5部配合して、固形分濃度65重量%の塗料を調成した。この塗料を坪量45g/m2の上質原紙に対して、ブレードコーターを用いて塗工量が片面あたり10g/m2となるように両面塗工した。塗工後、スーパーカレンダー処理(温度65℃、線圧100kg/cm)を行い、塗工紙を得た。
〔比較例3〕
比較例1と同様に塗工後、スーパーカレンダー処理を行なわずに塗工紙を得た。

得られた苛性化軽質炭酸カルシウムについて表1、苛性化軽質炭酸カルシウムの粒度分布について図2、塗工紙の紙質については表2に示した。
Figure 2009243025
Figure 2009243025
本発明の媒体攪拌型湿式粉砕機の実施の一例を示す概略断面図である。 本発明の実施例1と比較例1及び2における、粒子径(μm)と粒子の存在比率(%)の関係を示すグラフである。
符号の説明
1 媒体攪拌型湿式粉砕機
2 容器
3 セパレータ
4 回転軸
5 ローター
6 供給口
7 排出口
8 シール部材
21 内側室
22 外側室
31 スリット
50 小ローター
51 攪拌部
52 保持部
53 貫通孔
54 開口
55 突起

Claims (3)

  1. パルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムを湿式粉砕して塗工紙に配合するための塗工用顔料を得るためのスラリーの製造方法であって、
    湿式粉砕に使用する粉砕機の攪拌部材がダブルローターとなるように構成された媒体撹拌型粉砕装置にパルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムを含有するスラリーを供給して粉砕処理することを特徴とする、前記スラリーの製造方法。
  2. 前記パルプ製造工程の苛性化工程で製造された軽質炭酸カルシウムが、顔料中に全顔料の重量基準で50重量%以上含有されていることを特徴とする請求項1に記載のスラリーの製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の方法で製造されたスラリーを含有する塗工液を塗工した紙。
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