JP2009242463A - 熱可塑性エラストマー組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】TPUの利点である機械的強度、耐摩耗性及び透明性を維持し、かつ、加工性、硬度、耐候性及び耐湿性が改善された熱可塑性エラストマー組成物を提供すること。
【解決手段】
(A)熱可塑性ポリウレタンと、
(B)1種以上の官能基を有する水添変性共重合体であって、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)を少なくとも1つ以上含む水添変性共重合体と、
を含む、熱可塑性エラストマー組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、熱可塑性ポリウレタン(以下、TPUとも言う。)と、水添変性共重合体と、を含む熱可塑性エラストマー組成物に関するものである。
TPUは機械的強度、耐摩耗性、耐油性に優れ、一部のものは透明性にも優れた材料である。その反面、溶融粘度の温度依存性が強く、150〜180℃近辺で急激に粘度低下が起こるため加工性に難がある。また、硬度が高い、耐候性、耐湿性が低い等の問題も有する。
これらの問題を解決すべく、近年TPUとスチレン系エラストマーを含む組成物が種々提案されているが、これらは透明性が不充分であり、仮に屈折率を合わせてある程度透明性を出しても、強度、耐摩耗性が不充分である、相剥離が起きる等の問題あった。
例えば、特許文献1には、官能基含有ブロック共重合体と官能基含有熱可塑性樹脂或いは官能基含有ゴム状重合体とからなる組成物が提案されており、特許文献2には、変性共重合体と官能基含有熱可塑性樹脂とからなる組成物が提案されている。
さらに、特許文献3には、共役ジエンと芳香族ビニルの水添共重合体と官能基含有熱可塑性重合体とからなる組成物が提案されている。
特開2003−201312号公報 WO2003/085010号パンフレット 特開2005−232304号公報
しかしながら、特許文献1及び2の実施例にはTPUを含む組成物の例が記載されておらず、実施例で着目している物性効果に関しても、耐摩耗性、透明性等が示されていない。
また、特許文献3のTPUを含む組成物の実施例には、耐摩耗性、透明性等が示されておらず、破断強度も充分とは言えない。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、TPUの利点である機械的強度、耐摩耗性及び透明性を維持し、かつ、加工性、硬度、耐候性及び耐湿性が改善された熱可塑性エラストマー組成物を提供することである。
そこで本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、熱可塑性ポリウレタンと、特定の構造を有する水添変性共重合体とを含む熱可塑性エラストマー組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
(A)熱可塑性ポリウレタンと、
(B)1種以上の官能基を有する水添変性共重合体であって、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)を少なくとも1つ以上含む水添変性共重合体と、
を含む、熱可塑性エラストマー組成物。
[2]
前記(A)熱可塑性ポリウレタンを10質量%以上90質量%以下、前記(B)水添変性共重合体を10質量%以上90質量%以下含有する、上記[1]記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[3]
前記(A)熱可塑性ポリウレタンは、数平均分子量が500〜10000の高分子ポリオール、有機ジイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られる樹脂である、上記[1]又は[2]記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[4]
前記(B)水添変性共重合体が、以下の(1)〜(5)を満たす、上記[1]〜[3]のいずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物;
(1)ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%以上80質量%以下、
(2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)の含有量が10質量%以上40質量%以下、
(3)前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が60質量%以上90質量%以下、
(4)重量平均分子量が7万以上50万以下、
(5)共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率が50%以上。
[5]
前記(B)水添変性共重合体が、以下の(1)〜(6)を満たす、上記[1]〜[3]のいずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物;
(1)ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%以上80質量%以下、
(2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)の含有量が10質量%以上40質量%以下、
(3)前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が30質量%以上80質量%以下、
(4)共役ジエンを主体とする水添重合体ブロック(c)の含有量が10質量%以上50質量%以下、
(5)重量平均分子量が7万以上50万以下、
(6)共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率が50%以上。
[6]
前記(B)水添変性共重合体は、共重合体末端に前記官能基が共重合体に対し平均で20モル%以上含む、上記[1]〜[5]のいずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[7]
前記(B)水添変性共重合体は、2〜4級アミンを少なくとも1つ以上含む官能基を有する、上記[1]〜[6]のいずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[8]
前記(A)熱可塑性ポリウレタンと(B)水添変性共重合体の屈折率の差が、0.005以下である上記[1]〜[7]のいずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物。
[9]
上記[1]〜[8]のいずれか記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品。
本発明により、TPUの利点である機械的強度、耐摩耗性及び透明性を維持し、かつ、加工性、硬度、耐候性及び耐湿性が改善された熱可塑性エラストマー組成物を提供することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記の優れた特性を有しているため、自動車内外装材、建築材料、玩具、家電部品、医療器具、工業部品、その他雑貨等の用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態の熱可塑性エラストマー組成物は、(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)1種以上の官能基を有する水添変性共重合体であって、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)を少なくとも1つ以上含む水添変性共重合体(以下、単に(B)水添変性共重合体とも言う。)と、を含む。
[(A)熱可塑性ポリウレタン]
本実施の形態の(A)熱可塑性ポリウレタンは、ジイソシアネート,高分子ポリオール及び鎖伸長剤(短鎖ジオール)から合成され、分子中にウレタン結合(−NH−COO−)を有する樹脂である。(A)熱可塑性ポリウレタンは、ハードセグメントがジイソシアネートと鎖伸長剤、ソフトセグメントが高分子ポリオールから形成されゴム弾性を有する。
熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは、数平均分子量が500〜10000の高分子ポリオール、有機ジイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られる樹脂である。数平均分子量が500〜10000の高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルエーテルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエステルカーボネートジオール等が挙げられる。有機ジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等が挙げられる。鎖伸長剤としては、芳香族ジオール、脂環式ジオール等が挙げられる。
ここで、高分子ポリオールの数平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量から、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
[(B)水添変性共重合体]
本実施の形態の(B)水添変性共重合体は、1種以上の官能基を有し、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)を少なくとも1つ以上含む。
本実施の形態において「主体とする」とは、共重合体又は共重合体ブロック中のモノマー割合が70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上であることを意味する。例えば、「ビニル芳香族化合物及び共役ジエンを主体とする共重合体ブロック」とは、共重合体ブロック中のビニル芳香族化合物と共役ジエンの合計割合が70質量%以上であることを示す。
本実施の形態におけるビニル芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン等が挙げられ、中でも、価格と機械強度のバランスの観点から、スチレンが好ましい。これらの化合物は一種のみならず二種以上を使用してもよい。
本実施の形態における共役ジエンとは、1対の共役二重結合を有するジオレフィンであり、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられ、中でも、成形加工性と機械強度のバランスの観点から、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらの化合物は一種のみならず二種以上を使用してもよい。
本実施の形態の(B)水添変性共重合体は、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)を少なくとも1つ以上含む。
水添共重合体ブロック(b)は、ビニル芳香族化合物の含有量が、好ましくは5質量%以上95質量%以下、より好ましくは15質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは25質量%以上75質量%以下であり、共役ジエンの含有量が好ましくは95質量%以下5質量%以上、より好ましくは85質量%以下15質量%以上、さらに好ましくは75質量%以下25質量%以上である。ビニル芳香族化合物の含有量が95質量%を超えると柔軟性が損なわれる傾向にあり、5質量%未満であると耐摩耗性が悪化する傾向にある。
(B)水添変性共重合体中の水添共重合体ブロック(b)の含有量は、耐磨耗性や柔軟性の観点から、(B)水添変性共重合体がブロック(b)と後述するブロック(a)からなる場合、好ましくは60質量%以上90質量%以下、より好ましくは62質量%以上88質量%以下、さらに好ましくは65質量%以上85質量%以下である。また、(B)水添変性共重合体がブロック(b)と後述するブロック(a)及びブロック(c)からなる場合、好ましくは30質量%以上80質量%以下、より好ましくは35質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上70質量%以下である。
ここで、水添共重合体ブロック(b)の含有量は、核磁気共鳴装置(NMR)により測定することができる。
水添共重合体ブロック(b)の水素添加前の重合体ブロックにおける共役ジエン部分のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、後述する第3級アミン化合物又はエーテル化合物の使用により任意に変えることができる。共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量は好ましくは5〜60%であり、より好ましくは10〜50%である。共役ジエンとしてイソプレンを使用した場合又は1,3−ブタジエンとイソプレンを併用した場合には、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量は好ましくは3〜75%であり、より好ましくは5〜60%である。特に本実施の形態においては、耐磨耗性の観点から、ビニル結合量は好ましくは5〜45%、より好ましくは8〜35%、さらに好ましくは10〜30%である。なお、本実施の形態においては、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合の合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を、以下ビニル結合量と呼ぶ。ビニル結合量は、水素添加前の共重合体を検体とした赤外分光光度計による測定(例えば、ハンプトン法)により測定することができる。
また、本実施の形態の(B)水添変性共重合体は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)を含んでもよい。
(B)水添変性共重合体中の重合体ブロック(a)の含有量としては、好ましくは10質量%以上40質量%以下、より好ましくは12質量%以上38質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上35質量%である。重合体ブロック(a)の含有量が10質量%未満であると耐熱性に劣る傾向にあり、40質量%を超えると柔軟性を損なうおそれがある。
重合体ブロック(a)の含有量は、四酸化オスミウムを触媒として水素添加前の共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法。以後「四酸化オスミウム法」と呼ぶ。)で測定できる。また、重合体ブロック(a)の含有量は、水素添加前の共重合体や水素添加後の共重合体を検体として、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて(Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法。以後「NMR法」と呼ぶ。)測定してもよい。なお、この場合、四酸化オスミウム酸法により水素添加前の共重合体を用いて測定したビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)の含有量(Osとする)と、NMR法により水添後の共重合体を用いて測定したビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)の含有量(Nsとする)には、下記の相関関係がある。
(Os)=−0.012(Ns)2+1.8(Ns)−13.0・・・・式(F)
従って、本実施の形態においてNMR法で水添後の共重合体のビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)の含有量を求める場合、上式(F)で求められた(Os)の値を本実施の形態で規定するビニル芳香族化合物重合体ブロック(a)の含有量とする。
また、本実施の形態の(B)水添変性共重合体は、共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(c)を含んでいてもよい
(B)水添変性共重合体において、共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(c)の水添前の共役ジエンのビニル結合量は、柔軟性と流動性の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜70%である。
(B)水添変性共重合体における水添共重合体ブロック(c)の含有量は、柔軟性、耐磨耗性及び粘着感の無い表面感触を得る観点から、好ましくは10質量%以上50質量%以下、より好ましくは13質量%以上45質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上40質量%以下である。
(B)水添変性共重合体中のビニル芳香族化合物の含有量は、好ましくは40質量%以上80質量%以下、より好ましくは42質量%以上75質量%以下、さらに好ましくは45質量%以上70質量%以下である。全ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%未満であると、耐摩耗性が悪化する傾向にあり、80質量%を超えると、柔軟性が損なわれる傾向にある。
(B)水添変性共重合体中のビニル芳香族化合物の含有量は、水素添加前の共重合体や水素添加後の共重合体を検体として、紫外線分光光度計を用いて測定することができる。
(B)水添変性共重合体の重量平均分子量は、耐熱性、機械的強度、耐磨耗性等と流動性(成形加工性)とのバランスの観点から、好ましくは7万以上50万以下、より好ましくは9万以上45万以下、さらに好ましくは11万以上40万以下である。ここで(B)水添変性共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定を行い、クロマトグラムのピークの分子量から、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めることができる。
(B)水添変性共重合体の分子量分布は、好ましくは10以下、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1.05〜5.0である。(B)水添変性共重合体の分子量分布は、上記と同様にGPCによる測定から求めることができ、重量平均分子量と数平均分子量の比率により算出される。
(B)水添変性共重合体の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率は、耐熱性、耐候性の観点から、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。なお、(B)水添変性共重合体のビニル芳香族化合物単位の芳香族二重結合の水添添加率については特に制限はないが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下である。ここで、(B)水添変性共重合体の水添添加率は、核磁気共鳴装置(NMR)等を用いて測定することができる。
(B)水添変性共重合体のビニル結合量は、好ましくは5重量%以上95重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上90重量%以下であり、さらに好ましくは15重量%以上85重量%以下である。ビニル結合量が5重量%未満であると、柔軟性が損なわれる傾向にあり、95重量%を超えると、機械強度が悪化する傾向にある。
(B)水添変性共重合体は、粘弾性測定チャートにおいて、tanδ(損失正接)のピークが、好ましくは−20〜50℃、より好ましくは0〜48℃、さらに好ましくは5〜45℃に少なくとも1つ存在する。tanδのピークは、(B)水添変性共重合体における水添共重合体ブロック(b)に起因するピークである。このピークの存在が−20〜50℃の範囲に少なくとも1つ存在することは、耐磨耗性と柔軟性とのバランスの観点から好ましい。ここで、tanδは、粘弾性測定装置(ティーエイインストゥルメント株式会社製、ARES)により測定することができる。
(B)水添変性共重合体は、示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20〜80℃の範囲に水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない水素添加物であるのが好ましい。ここで、「−20〜80℃の範囲に水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない」とは、この温度範囲において水添共重合体ブロック(b)部分の結晶化に起因するピークが現れないか、もしくは結晶化に起因するピークが認められる場合においても、その結晶化による結晶化ピーク熱量が3J/g未満、好ましくは2J/g未満、より好ましくは1J/g未満であり、さらに好ましくは結晶化ピーク熱量が無いことを意味する。
−20〜80℃の範囲に水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない共重合体は柔軟性が良好であり、TPUの軟質化に好適である。上記のような−20〜80℃の範囲に水添共重合体ブロック(b)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない共重合体を得るためには、ビニル結合量の調整やビニル芳香族化合物と共役ジエンとの共重合性を調整する調整剤を用いて、後述するような条件下で重合反応を行うことによって得られる共重合体を用いて水素添加反応を行えばよい。
(B)水添変性共重合体の構造は本実施の形態における条件を満たすものであれば特に制限はなく、いかなる構造のものでも使用できる。ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)と、ビニル芳香族化合物と共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)とをそれぞれ少なくとも1個有する水添変性共重合体の一例としては、下記の一般式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
a−(b−a)n、b−(a−b)n、(a−b)n、(a−b)m−X、(b−a)m−X
また、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)と、共役ジエンとビニル芳香族化合物を主体とする水添共重合体ブロック(b)と、共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(c)とをそれぞれ少なくとも1個有する水添変性共重合体の一例としては、下記の一般式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
c−(b−a)n、c−(a−b)n、c−(a−b−a)n、c−(b−a−b)n、c−(b−c−a)n、a−(c−b−c−a)n、a−c−(b−a)n、a−c−(a−b)n、a−c−(b−a)n−b、[(a−b−c)nm−X、[a−(b−c)nm−X、[(a−b)n−c]m−X、[(a−b−a)n−c]m−X、[(b−a−b)n−c]m−X、[(c−b−a)nm−X、[c−(b−a)nm−X、[c−(a−b−a)nm−X、[c−(b−a−b)nm−X
上記一般式において、aはビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)、bはビニル芳香族化合物と共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)、cは共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(c)を示す。各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別される必要はない。水添共重合体ブロック(b)中のビニル芳香族化合物は均一に分布していても、又はテーパー状に分布していてもよい。また、水添共重合体ブロック(b)には、ビニル芳香族化合物が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。さらに、水添共重合体ブロック(b)には、ビニル芳香族化合物含有量が異なるセグメントが複数個共存していてもよい。nは1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。mは2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。Xはカップリング剤の残基又は多官能開始剤の残基を示す。共重合体中にブロック(a)、ブロック(b)又はブロック(c)がそれぞれ複数存在する場合、それらの分子量や組成等の構造は同一でも、異なっていてもよい。
上記構造の中でも、両末端に重合体ブロック(a)を有する構造が、耐熱性、機械的強度の観点から好ましく、a−b−a構造、a−c−b−a構造がより好ましい。(B)水添変性共重合体は、上記一般式で表される構造を有する共重合体の任意の混合物でもよい。
本実施の形態における(B)水添変性共重合体の水素添加前の共重合体は、例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の開始剤を用いてアニオンリビング重合を行うことにより得ることができる。炭化水素溶媒としては、例えば、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。
開始剤としては、一般的に、ビニル芳香族化合物及び共役ジエン化合物に対しアニオン重合活性があることが知られている脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物等の有機アルカリ金属化合物を用いることができる。
有機アルカリ金属化合物としては、炭素数1〜20の脂肪族及び芳香族炭化水素リチウム化合物が好ましく、1分子中に1個のリチウムを含む化合物、1分子中に複数のリチウムを含むジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物を用いることができる。具体的には、n−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムの反応生成物、ジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンの反応生成物等が挙げられる。
さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
本実施の形態において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物を共重合する際には、重合体に組み込まれる共役ジエン化合物に起因するビニル結合(1,2又は3,4結合)の含有量の調整や、ビニル芳香族化合物と共役ジエン化合物とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として第3級アミン化合物又はエーテル化合物を添加することができる。
第3級アミン化合物としては、一般式R123N(ここで、R1、R2、R3は炭素数1〜20の炭化水素基又は第3級アミノ基を有する炭化水素基を示す)で表される化合物を挙げることができる。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等を用いることができる。
エーテル化合物としては、直鎖状エーテル化合物及び環状エーテル化合物等が挙げられる。直鎖状エーテル化合物としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。また、環状エーテル化合物としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテル等が挙げられる。
本実施の形態において有機アルカリ金属化合物を重合開始剤としてビニル芳香族化合物及び/又は共役ジエン化合物を重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であっても、或いはそれらの組み合わせであってもよい。特に、耐熱性に優れた共重合体を得るにはバッチ重合が好ましい。重合温度は、好ましくは0℃〜180℃、より好ましくは30℃〜150℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1〜10時間である。また、重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲でモノマー及び溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されるものではない。さらに、重合系内は触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば、水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意する必要がある。
また、重合終了時に2官能以上のカップリング剤を必要量添加してカップリング反応を行ってもよい。2官能カップリング剤としては、限定されず、例えば、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類等が挙げられる。また、3官能以上の多官能カップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3価以上のポリアルコール類、エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物、一般式R4-nSiXn(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えば、メチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素及びこれらの臭素化物等、一般式R4-nnn(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基、Xはハロゲン、nは3〜4の整数を示す)で表されるハロゲン化錫化合物、例えば、メチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等を使用してもよい。
また、本実施の形態の(B)水添変性共重合体は、1種以上の官能基を有する(官能基を含有する原子団が結合した)重合体である。官能基を含有する原子団としては、例えば、アミノ基やアミド基等の2〜4級アミンを1つ以上含む官能基を含有する原子団が好ましく、例えば、下記(1)〜(11)の構造のものが挙げられる。
Figure 2009242463
ここで、上記式中のR1及びR4〜R6は、水素、炭素数1〜24の炭化水素基又は水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜24の炭化水素基を示し、R2は炭素数1〜30の炭化水素鎖又は水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する炭素数1〜30の炭化水素鎖を示す(ここで、R1及びR4〜R6の炭化水素基及びR2の炭化水素鎖中には、水酸基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基以外の結合様式で、酸素、窒素、シリコン等の元素が結合していてもよい)。R3は水素又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
(B)水添変性共重合体は、共重合体末端に官能基が共重合体に対し平均で20モル%以上含むのが好ましい。官能基の含有量が上記範囲であると、(A)熱可塑性ポリウレタンとの親和性及び反応性が良好となる傾向にある。
非水添の変性共重合体は、例えば、上述のアニオンリビング重合により、官能基を有する重合開始剤や官能基を有する不飽和単量体を用いて重合したり、リビング末端に官能基を形成もしくは含有する変性剤を付加反応することにより得ることができる。変性共重合体を得る他の方法としては、共重合体に有機リチウム化合物等の有機アルカリ金属化合物を反応(メタレーション反応)させ、有機アルカリ金属が付加した重合体に官能基を有する変性剤を付加反応させる方法が挙げられる。後者の場合、共重合体の水添物を得た後にメタレーション反応させてから、変性剤を反応させて水添変性共重合体を得ることもできる。
上記いずれの変性方法においても、反応温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜120℃である。変性反応に要する時間は他の条件によって異なるが、好ましくは24時間以内であり、より好ましくは0.1〜10時間である。変性剤の種類により、変性剤を反応させた段階で一般にアミノ基等は有機金属塩となっていることもあるが、その場合には水やアルコール等活性水素を有する化合物で処理することにより、アミノ基等にすることができる。なお、このような変性共重合体においては、変性共重合体に、一部変性されていない共重合体が混在してもよい。
官能基を有する変性剤の例としては、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ε−カプロラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、N,N’−ジメチルプロピレンウレア、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
また、本実施の形態で用いる(B)水添変性共重合体は、上記の変性共重合体に、該変性共重合体の官能基と反応性を有する二次変性剤を反応させた二次変性共重合体とすることができる。二次変性剤は、上記変性共重合体の官能基と反応性を有する官能基を有する二次変性剤であり、好ましくはカルボキシル基、酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基から選ばれる官能基を有する二次変性剤である。二次変性剤は、これらの官能基から選ばれる官能基を少なくとも2個有する二次変性剤である。ただし、官能基が酸無水物基の場合、酸無水物基が1個の二次変性剤であってもよい。変性共重合体に二次変性剤を反応させる場合、変性共重合体に結合されている官能基1当量あたり、二次変性剤0.3〜10モル、好ましくは0.4〜5モル、より好ましくは0.5〜4モルである。変性共重合体と二次変性剤を反応させる方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、後述する溶融混練方法や各成分を溶媒等に溶解又は分散混合して反応させる方法等が挙げられる。
特に好ましい二次変性剤としては、カルボキシル基を2個以上有するカルボン酸又はその酸無水物、或いは酸無水物基、イソシアネート基、エポキシ基、シラノール基、アルコキシシラン基を2個以上有する2次変性剤が挙げられ、例えば、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、トルイレンジイソシアナート、テトラグリジジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)−テトラスルファン等を好適に用いることができる。
また、変性共重合体は、α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体、例えば、その無水物、エステル化物、アミド化物、イミド化物でグラフト変性した変性共重合体とすることができる。α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の具体例としては、無水マレイン酸、無水マレイン酸イミド、アクリル酸又はそのエステル、メタアクリル酸又はそのエステル、エンド−シス−ビシクロ〔2,2,1〕−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸又はその無水物等が挙げられる。α、β−不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、重合体100質量部当たり、通常0.01〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部である。グラフト変性する場合の反応温度は、好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜280℃である。グラフト変性する方法の詳細については、例えば、特開昭62−79211号公報を参照できる。
本実施の形態の(B)水添変性共重合体は、上記で得られた非水添の変性共重合体を水添触媒を用いて水添反応に供することにより得ることができる。水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系水添触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニュウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒としてはチタノセン化合物及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用でき、具体例には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格或いはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。また、還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物或いは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
本実施の形態において、水添反応は一般的に0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は0.1〜15MPa、より好ましくは0.2〜10MPa、さらに好ましくは0.3〜5MPaである。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、或いはそれらの組み合わせのいずれでもよい。
上記のようにして得られた水添変性共重合体の溶液は、必要に応じて触媒残査を除去し、水添変性共重合体を溶液から分離する。溶媒の分離の方法としては、例えば水添後の反応液にアセトン又はアルコール等の水添変性共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法、反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法、又は直接重合体溶液を加熱して溶媒を留去する方法等を挙げることができる。なお、本実施の形態の(B)水添変性共重合体には、各種フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤、アミン系安定剤等の安定剤を添加することができる。
本実施の形態の熱可塑性エラストマー組成物は、上記(A)熱可塑性ポリウレタンと、(B)水添変性共重合体とを含む。各成分の含有量としては、(A)熱可塑性ポリウレタンを好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上70質量%以下含有し、(B)水添変性共重合体を好ましくは10質量%以上90質量%以下、より好ましくは20質量%以上80質量%以下、さらに好ましくは30質量%以上70質量%以下含有する。
(A)熱可塑性ポリウレタンの含有量が10質量%よりも少ないと、耐摩耗性が悪化する傾向にあり、90質量%を超えると、耐候性、加工性が悪化する傾向にある。また、(B)水添変性共重合体の含有量が10質量%よりも少ないと耐候性、加工性が悪化する傾向にあり、90質量%を超えると、耐摩耗性が悪化する傾向にある。
また、熱可塑性エラストマー中に含まれる(A)熱可塑性ポリウレタンと(B)水添変性共重合体の屈折率の差は、好ましくは0.005以下、より好ましくは0.003以下である。屈折率の差が0.005以下であると、透明性が良好となる傾向にある。
本実施の形態の熱可塑性エラストマー組成物は、上記(A)成分及び(B)成分以外に、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。
添加剤の種類は、熱可塑性樹脂やゴム状重合体の配合に一般的に用いられるものであれば特に制限はない。例えば、シリカ、タルク、マイカ、ケイ酸カルシウム、ハドロタルサイト、カオリン、珪藻土、グラファイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機充填剤、カーボンブラック等の有機充填材が挙げられる。
また、ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤、離型剤、有機ポリシロキサン、ミネラルオイル等の可塑剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、りん系、硫黄系及びアミン系熱安定剤等の酸化防止剤、ヒンダードアミン系光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラックなどの着色剤、その他「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)などに記載されたものが挙げられる。
本実施に形態の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いて、各成分を溶融混練する方法、各成分を溶解又は分散混合後、溶剤を加熱除去する方法等が用いられる。本実施の形態においては押出機による溶融混練法が生産性、良混練性の点から好ましい。得られる組成物の形状に特に制限はないが、ペレット状、シート状、ストランド状、チップ状等を挙げることができる。また、溶融混練後、直接成形品とすることもできる。
本実施の形態の熱可塑性エラストマー組成物は、従来公知の方法、例えば、押出成形、射出成形、二色射出成形、サンドイッチ成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、回転成形、パウダースラッシュ成形、発泡成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等によって、実用上有用な成形品に加工することができる。また、必要に応じて、発泡、粉末、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工をしてもよい。かかる成形方法により、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成型品、真空成形品、押出成形品、発泡成形品、不織布や繊維状の成形品、合成皮革等多種多様の成形品として活用でき、これらの成形品は、自動車内外装材、建築材料、玩具、家電部品、医療器具、工業部品、その他雑貨等に利用することができる。
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって制限されるものではない。
以下の実施例及び比較例において、重合体の構造及び物性の測定は、以下のとおりに行った。
(1)水添変性共重合体のスチレン含有量
水添前の共重合体を用い、紫外分光光度計(島津製作所製、UV−2450)を用いて測定した。
(2)水添変性共重合体のポリスチレンブロック含有量
水添前の共重合体を用い、I.M.Kolthoff,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の四酸化オスミウム酸法で測定した。共重合体の分解にはオスミウム酸0.1g/125ml第三級ブタノール溶液を用いた。
(3)水添変性共重合体のビニル結合量
水添前の共重合体を用い、赤外分光光度計(日本分光社製、FT/IR−230)を用いて測定した。共重合体のビニル結合量はハンプトン法により算出した。
(4)水添変性共重合体の重量平均分子量及び分子量分布
GPC〔装置:LC−10(島津製作所製)、カラム:TSKgelGMHXL(4.6mm×30cm)〕で測定した。溶媒にはテトラヒドロフランを用い、測定条件は、温度35℃で行った。重量平均分子量は、クロマトグラムのピークの分子量から、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線(標準ポリスチレンのピーク分子量を使用して作成)を使用して求めた。なお、クロマトグラム中にピークが複数有る場合の分子量は、各ピークの分子量と各ピークの組成比(クロマトグラムのそれぞれのピークの面積比より求める)から重量平均分子量を求めた。
分子量分布は、得られた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比から算出した。
(5)未変性共重合体の割合
シリカゲルを充填剤としたGPCカラムに変性した成分が吸着する特性を応用し、変性共重合体と低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液について、上記(4)で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性共重合体の割合と、シリカ系カラムGPC〔装置:LC−10(島津製作所製)、カラム:Zorbax(デュポン社製)〕で測定したクロマトグラム中の標準ポリスチレンに対する変性共重合体の割合を比較し、それらの差分よりシリカカラムへの吸着量を測定した。シリカカラムへ吸着しなかったものの割合を未変性共重合体の割合とした。
(6)水添変性共重合体の共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率
水添後の変性共重合体を用い、核磁気共鳴装置(BRUKER社製、DPX−400)を用いて測定した。
(7)比重
JIS K7112 A法に従い、23℃での比重を測定した。
(8)硬さ(HS)
JIS K6253に従い、デュロメータタイプAで瞬間値及び10秒後の値を測定した。
(9)引張応力(100,200,300Mo)、引張強度(Tb)、破断伸び(Eb)
JIS K6251に従い、3号ダンベル、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。
(10)耐摩耗性(テーバー摩耗試験)
テーバー摩耗試験器(テスター産業株式会社製、AB−101型)を用い、摩耗輪H−22、荷重1kg、1000回転での減少質量を測定した。
(11)屈折率の差
アッベの屈折率計(ATAGO製)を用い、各成分の屈折率を測定しその差を算出した。
(12)透明性
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH−1001DP)を用い、ヘイズ値(曇り度)を測定した。
(13)ドローダウン性
加工性の指標として、押出し機ダイス部より出るストランドのたれと表面状態を目視で観察し、下記の評価を行った。
◎;たれが無く、表面光沢が良好
○;たれは無いが、表面が荒れている
△;ややたれる
×;たれが激しい
(14)剥離性(引張破断面の状態)
上記(9)における引張強度測定後のサンプル破断面を目視にて観察、その剥離状態を調べた。
(15)耐候性
耐候性の指標としてサンシャインウエザオメーター(スガ試験機株式会社製)を用い、63℃×150時間後の色目変化(黄変度)を目視にて観察し、下記の評価を行った。
○;色目変化殆ど無し
△;やや色目変化が見られる
×;色目変化が顕著に見られる。
(16)耐湿性
耐湿性の指標として恒温恒湿層(TABAI ESPEC CORP製)を用い、80℃×85RH%×5日間後のサンプルの色目変化を目視にて観察し、下記の評価を行った。
○;色目変化殆ど無し。
△;やや色目変化が見られる。
×;色目変化が顕著に見られる。
(水添触媒の調製)
以下の実施例及び比較例における水添反応に用いた水添触媒は、下記の方法により調製した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5−シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
[(A)熱可塑性ポリウレタン]
熱可塑性ポリウレタンとしては、TPU:YJ8085(MDI系/JOOWON社製)を用いた。
[(B)水添変性共重合体]
<水添変性共重合体(B)−1>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。始めに、スチレン9質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いで、n−ブチルリチウムを全モノマ−100質量部に対して0.065質量部とN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」とも略記される。)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、70℃で30分間重合した。次にスチレン38質量部を含むシクロヘキサン溶液とブタジエン49質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。最後にスチレン4質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量51質量%、ポリスチレンブロック含有量19質量%、ビニル結合量20質量%、重量平均分子量16.0万、分子量分布1.1であった。
次に、得られたポリマーに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下「DMI」とも略記される。)をn−ブチルリチウム1モルに対して等モル添加し、70℃で10分反応させた。
さらに、得られたポリマーに、上記水添触媒をポリマー100質量部当たりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後、メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体100質量部に対して0.3質量部添加した。
得られた水添変性共重合体(B)−1の水素添加率は85%、変性率は61%であった。
<水添変性共重合体(B)−2>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。始めに、スチレン9質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いで、n−ブチルリチウムを全モノマ−100質量部に対して0.065質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、70℃で30分間重合した。次にスチレン30質量部を含むシクロヘキサン溶液とブタジエン57質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。最後にスチレン4質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量43質量%、ポリスチレンブロック含有量17質量%、ビニル結合量22質量%、重量平均分子量15.8万、分子量分布1.1であった。
次に、得られたポリマーにDMIをn−ブチルリチウム1モルに対して等モル添加し、70℃で10分反応させた。
次に、得られたポリマーを上記(B)−1と同様の方法により水添反応を行った。得られた水添変性共重合体(B)−2の水素添加率は65%、変性率は72%であった。
<水添未変性共重合体(C)−1>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。始めに、スチレン9質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いで、n−ブチルリチウムを全モノマ−100質量部に対して0.065質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、70℃で30分間重合した。次にスチレン38質量部を含むシクロヘキサン溶液とブタジエン49質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。最後にスチレン4質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で30分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量51質量%、ポリスチレンブロック含有量16質量%、ビニル結合量21質量%、重量平均分子量15.9万、分子量分布1.2であった。
次に、得られたポリマーを上記(B)−1と同様の方法により水添反応を行った。得られた水添未変性共重合体(C)−1の水素添加率は98%であった。
<水添未変性共重合体(C)−2>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。始めに、スチレン17質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いで、n−ブチルリチウムを全モノマ−100質量部に対して0.13質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、70℃で45分重合した。次にブタジエン68質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。最後にスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で45分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量32質量%、ブタジエン部のビニル結合量35質量%、重量平均分子量7.5万、分子量分布1.2であった。
次に、得られたポリマーを上記(B)−1と同様の方法で水添反応を行った。得られた未変性水添共重合体(C)−2の水素添加率は99%であった。
<水添変性共重合体(C)−3>
内容積が10Lの攪拌装置及びジャケット付き槽型反応器を使用してバッチ重合を行った。始めに、スチレン17質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を投入した。次いで、n−ブチルリチウムを全モノマー100質量部に対して0.13質量部とTMEDAをn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し、70℃で45分重合した。次にブタジエン68質量部を含むシクロヘキサン溶液(濃度20質量%)を加えて70℃で1時間重合した。最後にスチレン15質量部を含むシクロヘキサン溶液を投入して、70℃で45分間重合した。
得られたポリマーは、スチレン含有量31質量%、ブタジエン部のビニル結合量36質量%、重量平均分子量7.7万、分子量分布1.2であった。
次に、得られたポリマーにDMIをn−ブチルリチウム1モルに対して等モル添加し、70℃で10分反応させた。
次に、得られたポリマーを上記(B)−1と同様の方法により水添反応を行った。得られた水添変性共重合体(C)−3の水素添加率は83%、変性率は68%であった。
(実施例1〜3)
水添変性共重合体(B)−1を粉体状にした後、表1に示す各成分を、3.5インチロールにて160℃でロールだしを行い、その後油圧プレスにて180℃、100kg/cm2でプレス成形を行い、2mm厚の成形シートを作製した。得られた成形シートの物性を表1に示す。
(実施例4〜6)
水添変性共重合体(B)−2を粉体状にした後、表1に示す各成分を、実施例1〜3と同様の方法により成形し、2mm厚の成形シートを作製した。得られた成形シートの物性を表1に示す。
(比較例1及び2)
水添未変性共重合体(C)−1及び(C)−2を粉体状にした後、表1に示す各成分を実施例1〜3と同様の方法により成形し、2mm厚の成形シートを作製した。得られた成形シートの物性を表1に示す。
(比較例3)
水添変性共重合体(C)−3を粉体状にした後、表1に示す各成分を実施例1〜3と同様の方法により成形し、2mm厚の成形シートを作製した。得られた成形シートの物性を表1に示す。
(実施例7及び8)
水添変性共重合体(B)−1及び(B)−2を粉体状にした後、表2に示す各成分をヘンシェルミキサーで混合後、30mm径の二軸押出機にて180℃の条件で溶融混練し、ストランドのドローダウン性を観察した。さらに、表2に示す各成分を、実施例1〜3と同様の方法により成形し、2mm厚の成形シートを作製した。得られた成形シートの物性を表2に示す。
(比較例4及び5)
水添未変性共重合体として成分(C)−1及び(C)−2を粉体状にした後、表2に示す各成分を実施例7及び8と同様の方法により溶融混練し、ストランドのドローダウン性を観察した。さらに、表2に示す各成分を、実施例1〜3と同様の方法により成形し、2mm厚の成形シートを作製した。得られた成形シートの物性を表2に示す。
(比較例6)
TPUとして成分(A)を実施例7及び8と同様の方法で溶融混練し、ストランドのドローダウン性を観察した。さらに、成分(A)を実施例1〜3と同様の方法により成形し、2mm厚の成形シートを作製した。得られた成形シートの物性を表2に示す。
Figure 2009242463
Figure 2009242463
表1及び表2の結果から明らかなように、本実施の形態の熱可塑性エラストマー組成物(実施例1〜8)は良好な加工性を有し、それらを用いて得られた成形体は、TPUの利点である機械的強度、耐摩耗性及び透明性を維持すると共に耐候性及び耐湿性が顕著に改善されていた。
これに対して、比較例1、2、4及び5の組成物は、水添共重合体が変性されていないため、耐摩耗性及び透明性に劣り、耐湿性も不良であった。
また、比較例3の組成物は、水添変性共重合体中に、スチレンと1,3−ブタジエンを主体とする共重合体ブロックを含まないため、耐摩耗性及び透明性に顕著に劣っていた。
また、比較例6は、TPUのみを用いて成形シートを作製しているため、加工性に難があると共に、耐候性及び耐湿性に劣っていた。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、TPUの利点である機械的強度、耐摩耗性、及び透明性を維持し、かつ、加工性、硬度、耐候性及び耐湿性が改善されたものである。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、上記の優れた特性を有しているため、自動車内外装材、建築材料、玩具、家電部品、医療器具、工業部品、その他雑貨等の用途としての産業上利用可能性を有する。

Claims (9)

  1. (A)熱可塑性ポリウレタンと、
    (B)1種以上の官能基を有する水添変性共重合体であって、ビニル芳香族化合物及び共役ジエンを主体とする水添共重合体ブロック(b)を少なくとも1つ以上含む水添変性共重合体と、
    を含む、熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 前記(A)熱可塑性ポリウレタンを10質量%以上90質量%以下、前記(B)水添変性共重合体を10質量%以上90質量%以下含有する、請求項1記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 前記(A)熱可塑性ポリウレタンは、数平均分子量が500〜10000の高分子ポリオール、有機ジイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られる樹脂である、請求項1又は2記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 前記(B)水添変性共重合体が、以下の(1)〜(5)を満たす、請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物;
    (1)ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%以上80質量%以下、
    (2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)の含有量が10質量%以上40質量%以下、
    (3)前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が60質量%以上90質量%以下、
    (4)重量平均分子量が7万以上50万以下、
    (5)共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率が50%以上。
  5. 前記(B)水添変性共重合体が、以下の(1)〜(6)を満たす、請求項1〜3のいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物;
    (1)ビニル芳香族化合物の含有量が40質量%以上80質量%以下、
    (2)ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック(a)の含有量が10質量%以上40質量%以下、
    (3)前記水添共重合体ブロック(b)の含有量が30質量%以上80質量%以下、
    (4)共役ジエンを主体とする水添重合体ブロック(c)の含有量が10質量%以上50質量%以下、
    (5)重量平均分子量が7万以上50万以下、
    (6)共役ジエン単量体単位の二重結合の水素添加率が50%以上。
  6. 前記(B)水添変性共重合体は、共重合体末端に前記官能基が共重合体に対し平均で20モル%以上含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  7. 前記(B)水添変性共重合体は、2〜4級アミンを少なくとも1つ以上含む官能基を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  8. 前記(A)熱可塑性ポリウレタンと(B)水添変性共重合体の屈折率の差が、0.005以下である請求項1〜7のいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項記載の熱可塑性エラストマー組成物からなる成形品。
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