JP4610167B2 - 熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料 - Google Patents

熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的特性や耐熱特性に優れた熱可塑性エラストマーと無機物との複合材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、ゴム的な軟質材料であって加硫工程を必要とせず、熱可塑性樹脂と同様な成形加工性を有する熱可塑性エラストマーが、自動車部品、家電製品、電線被覆、医療用部品、雑貨、履き物等の分野で使用されている。このような熱可塑性エラストマーの中で、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体の水素添加物(以下「水添ブロック共重合体」という)を用いたエラストマー状組成物に対し、いくつかの提案がなされている。例えば特開昭50−14742号公報、特開昭52−65551号公報、特開昭58−206644号公報には、水添ブロック共重合体に、炭化水素油及びオレフィン系重合体を配合したエラストマー状組成物が開示されている。特開昭59−131613号公報には、水添ブロック共重合体に、炭化水素油、オレフィン系重合体、及び無機充填剤を配合したエラストマー状組成物を有機過酸化物と架橋助剤により部分架橋し、高温時のゴム弾性(圧縮永久歪み)を改良する旨の提案がなされている。
【0003】
また特公平2−62584号公報、特公平5−78582号公報、特開平3−174463号公報、特開平3−185058号公報、特公昭57−56941号公報には、水添ブロック共重合体とポリフェニレンエーテル、非芳香族系ゴム用軟化剤を必須成分とする水添ブロック共重合体組成物が開示されている。
しかしながら、これらの提案で得られる水添ブロック共重合体組成物は機械的強度、耐熱性が不十分であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機械的特性や耐熱特性に優れた熱可塑性エラストマーと無機物との複合材料を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の研究を重ねた結果、熱可塑性エラストマーと、シリカ系無機充填剤を含む組成物からなり特殊なモロフォロジを有する材料の存在を確認し、本発明を完成するに至ったものである。
即ち、本発明は下記の通りである。
1.熱可塑性エラストマーである成分(a)100質量部に、一次粒子の平均径が、1nm以上50nm以下の乾式シリカ成分(b)1〜1900質量部が分散された熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料であって、
該熱可塑性エラストマーである成分(a)が少なくとも2個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が5〜95wt%であるブロック共重合体或いはその水添物であって、乾式シリカの粒子或いは凝集体において、該粒子或いは凝集体と最隣接する乾式シリカの粒子或いは凝集体との距離Lが0.1μm以上である独立した乾式シリカ粒子或いは凝集体が、材料内に分散された乾式シリカの50質量%以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
2.成分(b)の少なくとも一部の乾式シリカが網目状の構造形態をとって連続層を形成していることを特徴とする1.に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
.成分(b)の乾式シリカが親水性シリカ又は疎水性シリカのいずれか或いはそれらの混合物であることを特徴とする1.又は2.に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
.成分(a)の熱可塑性エラストマーと成分(b)の乾式シリカからなる複合材料の剛性低下変曲点温度T1とガラス転移温度Tg1との差ΔT1(℃)が、該複合材料を構成する熱可塑性エラストマーの剛性低下変曲点温度T2とガラス転移温度Tg2との差ΔT2(℃)の1.5倍以上であることを特徴とする1.〜3.のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
.成分(a)の熱可塑性エラストマーと成分(b)の乾式シリカからなる複合材料の引き裂き強度が該複合材料を構成する熱可塑性エラストマーの引き裂き強度の2倍以上であり、かつ複合材料の引っ張り強度が該複合材料を構成する熱可塑性エラストマーの引き裂き強度の1.1倍以上であることを特徴とする1.〜4.のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
.熱可塑性エラストマーである成分(a)100質量部と、乾式シリカである成分(b)1〜1900質量部を含んでなる1.〜5.のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料の製造方法であって、
乾式シリカの粒子或いは凝集体において、該粒子或いは凝集体と最隣接する乾式シリカの粒子或いは凝集体との距離Lが0.1μm以上である独立した乾式シリカ粒子或いは凝集体が、材料内に存在する乾式シリカの50質量%以下となるように混合、分散することを特徴とする熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料の製造方法。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、熱可塑性エラストマーとシリカ系無機充填材が特殊な構造形態を有するときに機械的物性、熱的性質に優れた機能を発現する材料を見いだした。
すなわち本発明は、シリカ系無機充填材粒子或いは凝集体の少なくとも一部が熱可塑性エラストマー内で連続層を形成し、更に好ましくは網目状連続層を形成することにより、熱可塑性エラストマー単独では達成することが困難であった機械的特性、特に引き裂き強度に優れ、熱的特性に優れた材料を提供できる。ここで、シリカ系無機充填材の一次粒子或いは凝集体において、最隣接するシリカの一次粒子或いはシリカ凝集体との距離が0.1μm以上であるものを独立したシリカ系無機充填材粒子或いは凝集体(以後、シリカ系無機充填材粒子或いは凝集体の独立層という)と定義し、本発明においては該シリカ系無機充填材粒子或いは凝集体の独立層が材料内に存在するシリカ系無機充填材の50質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10%以下、最も好ましくは1%以下である。本発明においてはシリカ系無機充填材粒子或いは凝集体の少なくとも一部が熱可塑性エラストマー内で連続層を成して網目状構造を有しているものが好ましい。ここで、凝集体の大きさに制限はないが、より少ないシリカ量で網目状連続層を形成するには凝集体は小さい方が好ましく、最も好ましくは、材料内に存在するシリカ系無機充填材が一次粒子で連続層を形成して網目状構造を有する熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料である。
(凝集体の定義)
凝集体とは、0.03μm以内に接近した粒子あるいは凝集体同士の集まりを指す。但し、0.03μm以上離れていてもその距離が0.1μm以内に隣接する凝集体が1個以内の場合、それらを併せて1つの独立した凝集体と見なす。(すなわちそれらは、凝集体間での相互作用の可能性はあっても、ベースポリマーに相互作用を及ぼすと考えられない。)
【0007】
本発明で使用される熱可塑性エラストマーは、常温でゴム弾性を有する熱可塑性材料であれば特に制限はない。熱可塑性エラストマーの具体例としては、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(TPU)、熱可塑性スチレンブタジエン(及び/又イソプレン)系エラストマー(TSBC)、熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー(TPO)、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(TPEE)、熱可塑性塩化ビニル系エラストマー(TPVC)、熱可塑性ポリアミド系エラストマー(TPAE)等が挙げられる。上記の中でも特にビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体又はその水添物である熱可塑性スチレンブタジエン(及び/又はイソプレン)系エラストマーが好ましい例として用いられる。
【0008】
本発明で使用されるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンからなるブロック共重合体の好例としては、少なくとも2個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体又はその水添物である。水添前のブロック共重合体は、例えば下記一般式で表せるような構造を有する。
(H−S)n+1 、H−(S−H)n 、S−(H−S)n+1
[(S−H)n m −X、[(H−S)n m −X、
[(S−H)n −S]m −X、[(H−S)n −H]m −X
(上式において、Hはビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックであり、Sは共役ジエンを主体とする重合体ブロックである。またnは1以上の整数、一般には1〜5の整数であり、mは2以上の整数、一般には2〜10の整数である。Xはカップリング剤残基を示す。)
【0009】
なお上記において、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックHとはビニル芳香族炭化水素を好ましくは50wt%以上、より好ましくは70wt%以上含有するビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの共重合体ブロック、及び/又はビニル芳香族炭化水素単独重合体ブロックを示し、共役ジエンを主体とする重合体ブロックSとは共役ジエンを好ましくは50wt%を超える量で、より好ましくは60wt%以上含有する共役ジエンとビニル芳香族炭化水素との共重合体ブロック、及び/又は共役ジエン単独重合体ブロックを示す。共重合体ブロック中のビニル芳香族炭化水素は均一に分布していても、またはテーパー状に分布していてもよい。また該共重合体ブロックには、ビニル芳香族炭化水素が均一に分布している部分及び/又はテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個共存していてもよい。また、本発明で使用するブロック共重合体は、上記一般式で表されるブロック共重合体の任意の混合物でもよい。またカップリング剤としては、例えばアジピン酸ジエチル、ジビニルベンゼン、テトラクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、ジメチルジクロロシラン、テトラクロロゲルマニウム、1,2−ジブロムエタン、ビス(トリクロスシリル)エタン、エポキシ化アマニ油、トリレンジイソシアネート、1,2,4−ベンゼントリイソシアネート等が挙げられる。
【0010】
ブロック共重合体の製造方法としては、例えば特公昭36−19286号公報、特公昭43−17979号公報、特公昭46−32415号公報、特公昭49−36957号公報、特公昭48−2423号公報、特公昭48−4106号公報、特公昭56−28925号公報、特公昭51−49567号公報、特開昭59−166518号公報、特開昭60−186577号公報等に記載された方法が挙げられる。
本発明で用いるビニル芳香族炭化水素としては、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等の中から1種又は2種以上が使用でき、一般的にはスチレンが挙げられる。また共役ジエンとしては、例えば1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の中から1種又は2種以上が使用でき、一般的には1,3−ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0011】
本発明において、ブロック共重合体の製造に用いられる溶媒としては、例えばブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、へプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、あるいはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上を混合して使用してもよい。
また本発明において、ブロック共重合体の製造に重合触媒として用いられる有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子を結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウム等が使用できる。これらは1種のみならず2種以上を混合して使用してもよい。また有機リチウム化合物は、ブロック共重合体の製造において重合途中で1回以上分割添加してもよい。
【0012】
本発明において、ブロック共重合体製造時の重合速度の制御、重合した共役ジエン部分のミクロ構造の制御、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンの反応性比の制御等の目的で、極性化合物やランダム化剤を使用することができる。極性化合物やランダム化剤としては、エーテル類、アミン類、チオエーテル類、ホスフィン、ホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩、カリウム又はナトリウムのアルコキシド等が挙げられる。具体的な例としては、エーテル類としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルが挙げられる。アミン類としては第3級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、その他環状第3級アミン等が挙げられる。ホスフィン及びホスホルアミドとしては、トリフェニルホスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド等が挙げられる。
【0013】
本発明において、ブロック共重合体を製造する際の重合温度は、好ましくは−10〜150℃、より好ましくは30〜120℃である。重合時間は条件によって異なるが、好ましくは48時間以内であり、特に0.5〜10時間が好ましい。また重合系の雰囲気は窒素ガス等の不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲内でモノマー及び溶媒を液相に維持するに十分な範囲の圧力であればよく、特に限定されるものではない。さらに重合系内は、触媒及びリビングポリマーを不活性化させるような不純物、例えば水、酸素、炭酸ガス等が混入しないように留意することが好ましい。
【0014】
本発明において、上記で得られたブロック共重合体を水添するのに用いる水添触媒としては、特に制限されず、従来から公知である(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持させた担持型不均一系触媒、(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩又はアセチルアセトン塩等の遷移金属塩と有機アルミニウム等の還元剤とを用いる、いわゆるチーグラー系水添触媒、(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等の、いわゆる有機金属錯体等の、均一系水添触媒が用いられる。具体的な水添触媒としては、例えば特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を用いることができる。好ましい水添触媒としては、チタノセン化合物、及び/又は還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
【0015】
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できるが、具体例としてはビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格、あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1個以上有する化合物が挙げられる。また還元性有機金属化合物としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、あるいは有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0016】
水添反応は好ましくは0〜200℃、より好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施される。水添反応に使用される水素の圧力は、好ましくは0.1〜15MPa、より好ましくは0.2〜10MPa、さらに好ましくは0.3〜5MPaが推奨される。また、水添反応時間は好ましくは3分〜10時間、より好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、あるいはそれらの組み合わせのいずれも用いることができる。
本発明で成分(a)として用いるブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素含有量は、5〜95wt%、より好ましくは8〜80wt%、さらに好ましくは10〜70wt%である。5wt%未満では圧縮永久歪み及び引張強度が劣り、95wt%を超えると耐衝撃性が低下するため好ましくない。
【0017】
本発明に使用される成分(a)のブロック共重合体の水添物において、共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合のトータル水素添加率は目的に合わせて任意に選択でき、特に限定されない。ブロック共重合体中の共役ジエン化合物に基づく不飽和二重結合の70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上が水添されていても良いし、一部のみが水添されていても良い。一部のみを水添する場合には、水添率が10%以上、70%未満、或いは15%以上、65%未満、所望によっては20%以上、60%未満にすることが好ましい。
【0018】
本発明において、成分(a)のブロック共重合体の水添物として特に好ましいものは、共役ジエン単位を水添することにより得られる構成単位が下記式(A)〜(E)によって表され、(A)〜(E)の構成単位数比は下記式(1)〜(3)で表されるものである。
【式1】
Figure 0004610167
(ここでR1 〜R8 はそれぞれ水素、ハロゲン、炭素原子数1〜20の脂肪族炭化水素、炭素原子数1〜20の芳香族炭化水素から選択される置換基を表し、互いに同一でも異なっていても良い。また(A)はシス構造を示し、(B)はトランス構造を示す。)
【0019】
【式2】
Figure 0004610167
【0020】
上記式(1)で、中央の式の価が0.1〜0.85、好ましくは0.3〜0.75、更に好ましくは0.35〜0.7であることが柔軟性とブロック共重合体の生産性とのバランスの点で推奨される。また、上記式(2)で、中央の式の価が0.1〜1、好ましくは0.3〜1、更に好ましくは0.5〜1であることが熱安定性の点で推奨される。更に、上記式(3)で、中央の式の価が0〜0.15、好ましくは0〜0.07、更に好ましくは0〜0.03であることが熱安定性の点で推奨される。
本発明において、ブロック共重合体中のビニル芳香族炭化水素含有量は、紫外分光光度計を用いて求めることができる。また共役ジエン化合物に基づくビニル結合含量、及び水添率は、核磁気共鳴装置(NMR)を用いることにより求めることができる。
【0021】
次に本発明で成分(b)として用いられるシリカ系無機充填剤とは、化学式SiO2 又はSi3 Alを構成単位の主成分とする固体粒子のことをいい、例えばシリカ、クレイ、タルク、マイカ、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、ガラス繊維等の無機繊維状物質などを用いることができるが、本発明においてはシリカが好ましい。シリカとしては乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩系ホワイトカーボン、コロイダルシリカと呼ばれているもの等が使用できる。また表面を疎水化したシリカや、シリカとシリカ以外の無機充填剤の混合物も使用できるが、粒径の小さい乾式シリカが好ましい。
乾式シリカの一次粒子の平均径としては、好ましくは0.5nm以上100nm以下、更に好ましくは1nm以上50nm以下、最も好ましくは2nm以上20nm以下である。
【0022】
本発明におけるシリカ系無機充填剤(b)の配合量は、熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対し1〜1900質量部、好ましくは10〜100質量部、更に好ましくは15〜40質量部である。1質量部未満の場合はシリカ系無機充填剤(b)が熱可塑性エラストマー(a)の内部に独立して点在してしまい、網目構造をとる事が極めて困難であり、結果として引っ張り強度、引き裂き強度等の機械的特性、熱的特性の大きな向上が見られない。更に1900重量部を超えると成形性が極めて困難となるため好ましくない。またシリカは組成物中に分散し、シリカの添加効果を十分に発揮するためには、平均粒径の小さい乾式シリカが好ましい。好ましい乾式シリカの一次粒子の平均径は、1次粒子が0.5nm以上100nm以下、更に好ましくは1nm以上50nm以下、最も好ましくは2nm以上20nm以下である。
【0023】
更に乾式シリカとしては、1次粒子の表面に水酸基を有する親水性シリカでも水酸基を一部或いは全てをメチル基のような炭化水素基で置換した疎水性シリカのいずれも用いることが可能であるが、シリカ間が水素結合を作って網目構造を形成しやすい親水性シリカの方が好ましい。
本発明の材料は、成分(a)、成分(b)の他に、さらに必要に応じて、ゴム用軟化剤、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することも可能である。
【0024】
本発明で配合可能なゴム用軟化剤は、得られる組成物を柔軟なゴム状組成物とするための成分であり、非芳香族系の鉱物油、又は液状もしくは低分子量の合成軟化剤が適している。なかでも、一般にゴムの軟化、増容、加工性向上に用いられるプロセスオイル、又はエクステンダーオイルと呼ばれる鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族環、ナフテン環、及びパラフィン鎖の混合物であり、パラフィン鎖の炭素数が全炭素中50%以上を占めるものがパラフィン系と呼ばれ、ナフテン環炭素数が30〜45%のものがナフテン系、また芳香族炭素数が30%を超えるものが芳香族系と呼ばれる。本発明で用いるゴム用軟化剤は、ナフテン系及び/又はパラフィン系のものが好ましい。合成軟化剤としては、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン等が使用可能であるが、上記鉱物油系ゴム用軟化剤の方が良好な結果を与える。ゴム用軟化剤の配合量は、ブリードアウト抑制という点から、熱可塑性エラストマー(a)100質量部に対して1質量部以上300質量部以下が好ましい。
【0025】
本発明では上記の成分の他に、更に各種目的に応じて任意の配合成分を配合する事ができる。具体的には、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、着色剤、難燃剤、耐電防止剤、導電性付与剤等の各種添加物、前期必須成分以外の熱可塑性樹脂、ゴム状重合体が挙げられる。用いることができる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリプロピレンーエチレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、ポリアクリレート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート系重合体などが挙げられる。ゴム状重合体としては、ブタジエンゴム、及びその水添物、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、及びその水素添加物、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エチレンーブテンージエンゴム、ブチルゴム、エチレン−ブテンゴム、エチレン−ヘキセンゴム、エチレン−オクテンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、α、β−不飽和ニトリル−アクリル酸エステル−共役ジエン共重合ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0026】
本発明の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の方法が利用できる。即ち、
(1)熱可塑性エラストマーである成分(a)を製造する工程(重合工程、及び/又は水添工程)でシリカ系無機充填材である成分(b)と任意の成分を添加して製造することができるし、また、
(2)熱可塑性エラストマーである成分(a)を製造した後のいずれかの工程でシリカ系無機充填材である成分(b)と任意の成分を添加して製造することができる。この場合には、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加熱ロール、ブラベンダー、各種ニーダー等の溶融混練機を単独、或いは組み合わせて用いて製造する事ができる。この際各成分の添加順序には制限がなく、例えば全成分を一括して混練しても、また任意の成分を混練した後、残りの成分を一括又は逐次添加して混練しても良い。
本発明の複合材料組成物は、一般に使用される熱可塑性樹脂成形機で成形することが可能であり、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形等の各種成形法が適用可能である。これらの成形方法によって得られた成形品は、電気・電子部品、各種電線被覆(絶縁、シース)、家電製品及びその部品、包装材料、自動車部品・工業用品用素材等に利用できる。
【0027】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例において、ブロック共重合体の特性の測定は次のようにして行った。
1.ブロック共重合体の特性
(1)スチレン含有量
紫外線分光光度計(日立UV200)を用いて、262nmの吸収強度より算出した。
(2)1,2−ビニル結合量及び水素添加率
核磁気共鳴装置(BRUCKER社製DPX−400)を用いて測定した。
【0028】
(3)スチレン単独重合体ブロックの分子量
四塩化オスミウムを触媒としてジ・ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF.et−al.,J.Polym.Sci.1,429(1946))により、水添前のブロック共重合体を分解して得たビニル芳香族炭化水素単独重合体部分(ただし重合度30以下の部分は除去されている)のGPC測定により求めた。
溶媒にはテトラヒドロフランを用い、35℃で測定した。分子量は、クロマトグラムのピークの分子量を、市販の標準ポリスチレンの測定から求めた検量線を使用して求めた。
(4)スチレン単独重合体ブロックの含有量(ブロック率)
上記の酸化分解により得たスチレン単独重合体ブロックの紫外線分光光度計による分析を行い、下記式を用いて求めた。
ブロック率(%)=(ブロック共重合体中のスチレン単独重合体ブロックの重量%)/(ブロック共重合体中の全スチレン重量%)×100
【0029】
2.ブロック共重合体の製造
本発明で用いた水添触媒は下記の方法で調整した。
窒素置換した反応容器に乾燥、精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5 −シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に撹拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn−ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させた。
【0030】
本発明で用いたブロック共重合体は、次のようにして製造した。
撹拌機及びジャケット付きのオートクレーブを洗浄、乾燥、窒素置換し、あらかじめ精製した6.5質量部のスチレンを含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を投入した。次いでn−ブチルリチウムとテトラメチルエチレンジアミンを添加し、50℃で60分間重合した後、あらかじめ精製した87質量部のブタジエンを含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を加えて50℃で90分間重合し、さらに6.5質量部のスチレンを含むシクロヘキサン溶液(濃度20重量%)を加えて、50℃で60分間重合した。
【0031】
得られたブロック共重合体にメタノールを添加してリビング末端を失活した後、水添触媒をポリマー100重量部あたりTiとして100ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。その後メタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートをブロック共重合体100重量部に対して0.25重量部添加した。その後、得られたブロック共重合体のシクロヘキサン溶液からシクロヘキサンを加熱除去した。
【0032】
得られた水添ブロック共重合体(以下、「ポリマー1」と略記する。)は、スチレン含有量13質量%、スチレンのブロック率が98%、ポリスチレンブロックの数平均分子量が8000、水添ブロック共重合体の重量平均分子量が13万であり、
【式3】
Figure 0004610167
の水添ブロック共重合体であった。
【0033】
3.成分(b)として使用した乾式シリカ
親水性乾式シリカ、 アエロジル製 AEROSIL #200;1次粒子の平均粒径は、約12nm
疎水性乾式シリカ、 アエロジル製 AEROSIL R972;1次粒子の平均粒径は、約16nm
4.組成物の物性評価法
物性評価法は、機械的強度測定として引っ張り試験により、引っ張り強度と引き裂き強度を測定した。以下に試験片の作製法及び試験法を記す。
【0034】
(1)試験片の作製;試験片は、圧縮成形(温度230℃、圧力150kgf/cm2 )にて、100×200mm、厚み100〜200μmのフィルムを作製した。
(2)引っ張り強度の測定(JIS K6251に準拠);引っ張り強度は、上記(1)にて作製したフィルムからタンザク形状試験片(巾10mm×長さ100mm)を切り出して、引っ張り試験機(TCM製500型)にて 引っ張り速度500mm/sec、チャック間50mmで引っ張り強度、破壊伸び、100%応力を測定した。
(3)引き裂き強度の測定(JIS K6252参考);引き裂き強度は、上記(1)にて作製したフィルムから巾20mm×長さ100mmの試験片を切り出して、カッターナイフで巾20mmの中央に長さ40mmの切り込みを入れたトラウザ型試験片を用いた。この試験片を引っ張り試験機(TCM製500型)にて 引っ張り速度100mm/secで引き裂き強度を測定した。
【0035】
また、熱的性質の評価法としては、粘弾性挙動をレオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イ株式会社製ARESにて測定し、剛性とエネルギー損失の温度依存性を評価した。測定条件は、試験片( 肉厚3mm、巾12.70mm、長さ30mm、チャック間12mm) に1%のねじりが発生するように10Hzの往復振動を与え、−50℃から200℃まで昇温速度3℃/minで測定した。
更に複合材料の形態観察は、透過型電子顕微鏡(TEM)にてモロフォロジを観察した。
【0036】
【実施例1】
成分(a)として、ポリマー1を100重量部に対して、成分(b)としてAEROSIL#200 を22部と31部別々に混合して2種類の複合材料(実施例1−1、実施例1−2)を作製した。
混合方法としては、3.5インチロールにて混練(ロール温度170℃、回転数20rpm)後、更にブラベンダー(東洋精機製 ラボプラストミル)にて、混練(温度190℃、回転数50rpm)した。ロール混練時の初期段階ではロール間のピッチを1.6mmと比較的低シェアでシリカを取り込んだ。次いでロール間のピッチを0.5mmと間を狭めた高シェアにて材料を混練した。上記ロール間ピッチ1.6mmでは20分間混練し、次いでロール間0.5mmではシリカが分散して白濁が目視にて完全に消失するように10分間混練した。
【0037】
得られた複合材料を前述の方法にて試験片を作製し、評価した。結果の詳細は他の実施例、比較例1と共に表1に示す。
またAEROSIL#200 を31部入れた複合材料(実施例1−2)のTEM観察の結果を図1に示す。
また、AEROSIL#200 を31部入れた複合材料(実施例1−2)の粘弾性挙動測定の結果を比較例1と共に図2に示す。
【0038】
【実施例2】
成分(a)として、ポリマー1を100重量部に対して、成分(b)として36部のAEROSIL R972 を混合して複合材料を作製した。
混合方法としては、3.5インチロールにて混練(ロール温度170℃、回転数20rpm)後、更にブラベンダー(東洋精機製 ラボプラストミル)にて、混練(温度190℃、回転数50rpm)した。ロール混練時の初期段階ではロール間のピッチを1.6mmと比較的低シェアでシリカを取り込んだ。次いでロール間のピッチを0.5mmと間を狭めた高シェアにて材料を混練した。上記ロール間ピッチ1.6mmでは20分間混練し、次いでロール間0.5mmではシリカが分散して白濁が目視にて完全に消失するように10分間混練した。
得られた複合材料を前述の方法にて試験片を作製し、評価した。結果の詳細は他の実施例、比較例1と共に表1に示す。
また、得られた複合材料のTEM観察の結果を図3に示す。
【0039】
【実施例3】
成分(a)として、ポリマー1を100重量部に対して、成分(b)としてAEROSIL#200 を7部を混合して複合材料を作製した。混合方法としては、3.5インチロールにて混練(ロール温度170℃、回転数20rpm)後、更にブラベンダー(東洋精機製 ラボプラストミル)にて、混練(温度190℃、回転数50rpm)した。ロール混練時の初期段階ではロール間のピッチを1.6mmと比較的低シェアでシリカを取り込んだ。次いでロール間のピッチを0.5mmと間を狭めた高シェアにて材料を混練した。上記ロール間ピッチ1.6mmでは20分間混練し、次いでロール間0.5mmではシリカが分散して白濁が目視にて完全に消失するように10分間混練した。
得られた複合材料を前述の方法にて試験片を作製し、評価した。結果の詳細は他の実施例、比較例1と共に表1に示す。
また、得られた複合材料のTEM観察の結果を図4に示す。
【0040】
【比較例1】
ポリマー1のペレットを用いて前述の方法にて試験片を作製し、機械的特性を評価した。結果の詳細は他の実施例と共に表1に示す。
また、ポリマー1のTEM観察の結果を図5に示す。
図1、3の観察結果より、ブロック共重合体内にシリカは網目構造状に存在していることが判る。
また図4の観察結果より、隣接するシリカとの距離が0.1μm以上である独立したシリカ粒子或いは凝集体は殆どなく、比較例1の材料に比べて引っ張り強度、引き裂き強度に優れることが表1に示されている。
【0041】
図2中曲線(A)は、実施例1−2にて作製した材料の剛性の温度依存性を、(B)は比較例1にて作製した材料の剛性の温度依存性を示す。この結果より、比較例1の(B)は、約100℃で剛性の低下が大きくなる剛性低下変曲点T2=100℃を有している。これに対して実施例1の材料は、200℃でも剛性低下変曲点T1は見られず、T1>200℃である。また、曲線(C)、(D)は、エネルギー損失を示し、(C)は実施例1にて作製した材料のエネルギー損失、(D)は、比較例1にて作製した材料のエネルギー損失を示す。ここでの極大値を示す温度は材料のガラス転移温度(Tg)を示し、この図より実施例1の材料のTg1=−23℃、比較例1の材料のTg2=−16℃である。これより、ΔT1>223℃、ΔT2=116℃より、ΔT1/ΔT2>1.9である。
【比較例2】
成分(a)として、ポリマー1を100重量部に対して、成分(b)としてAEROSIL♯200を0.5部を混合して複合材料を作製した。
混合方法としては、3.5インチロールにて混練(ロール温度170℃、回転数20rpm)した。ロール混練時の初期段階ではロールのピッチを1.6mmと比較的低シェアでシリカを取り込んだ。次いでロール間を0.5mmと間を狭めた高シェアにて材料を混練した。
得られた複合材料を前述の方法にて試験片を作製した。評価した結果の詳細は、表1に示すが、シリカを充填しないポリマー1と引き裂き強度、伸びとも殆ど変わらなかった。また、得られた複合材料のTEM観察の結果を図6に示す。
図6より、多くのシリカは独立した凝集体あるいは粒子としてポリマー内に存在している。
【0042】
これらの結果より、本発明の複合材料はエラストマー材料としての使用温度が高温側にも低温側にも広がり、極めて実用特性上好ましい材料であることがわかる。
表1,図2の結果より本発明の複合材料は、機械的強度に優れ、特に引き裂き強度が格段に改良された材料を得ることができた。また、熱的性質としては、耐熱性が、かなり改善され200℃でも大きな剛性低下が見られない材料が得られると同時に比較例1に比べてガラス転移温度が下がった複合材料が得られた。これは、エラストマー材料としての使用温度が高温側にも低温側にも広がり、極めて実用特性上好ましい材料であることがわかる。
【0043】
【表1】
Figure 0004610167
【0044】
【発明の効果】
本発明の熱可塑性エラストマーと無機物との複合材料は、破壊強度、特に引き裂き強度や耐熱性に優れる。これらの特長を生かして、射出成形、押出成形等によって各種形状の成形品に加工でき、自動車部品、工業用品、家電部品、電線被覆等に用いることが出来る。また、引き裂き強度特性を活かしたコンドーム等の薄肉フィルム、シート成形品としても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1−2で得られた複合材料中におけるAEROSIL#200 の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真(×50,000)である。
【図2】実施例1−2で得られた複合材料及び比較例1のポリマー1の粘弾性挙動測定の結果を示すグラフである。
【図3】実施例2で得られた複合材料中におけるAEROSIL#200 の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真(×50,000)である。
【図4】実施例3で得られた複合材料中におけるAEROSIL#200 の粒子構造を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真(×50,000)である。
【図5】比較例1の材料の組織を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真(×50,000)である。
【図6】比較例2の材料の組織を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真(×100,000)である。

Claims (6)

  1. 熱可塑性エラストマーである成分(a)100質量部に、一次粒子の平均径が、1nm以上50nm以下の乾式シリカ成分(b)1〜1900質量部が分散された熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料であって、
    該熱可塑性エラストマーである成分(a)が少なくとも2個のビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエンを主体とする重合体ブロックからなり、ビニル芳香族炭化水素含有量が5〜95wt%であるブロック共重合体或いはその水添物であって、乾式シリカの粒子或いは凝集体において、該粒子或いは凝集体と最隣接する乾式シリカの粒子或いは凝集体との距離Lが0.1μm以上である独立した乾式シリカ粒子或いは凝集体が、材料内に分散された乾式シリカの50質量%以下であることを特徴とする熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
  2. 成分(b)の少なくとも一部の乾式シリカが網目状の構造形態をとって連続層を形成していることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
  3. 成分(b)の乾式シリカが親水性シリカ又は疎水性シリカのいずれか或いはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
  4. 成分(a)の熱可塑性エラストマーと成分(b)の乾式シリカからなる複合材料の剛性低下変曲点温度T1とガラス転移温度Tg1との差ΔT1(℃)が、該複合材料を構成する熱可塑性エラストマーの剛性低下変曲点温度T2とガラス転移温度Tg2との差ΔT2(℃)の1.5倍以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
  5. 成分(a)の熱可塑性エラストマーと成分(b)の乾式シリカからなる複合材料の引き裂き強度が該複合材料を構成する熱可塑性エラストマーの引き裂き強度の2倍以上であり、かつ複合材料の引っ張り強度が該複合材料を構成する熱可塑性エラストマーの引き裂き強度の1.1倍以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料。
  6. 熱可塑性エラストマーである成分(a)100質量部と、乾式シリカである成分(b)1〜1900質量部を含んでなる請求項1〜のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料の製造方法であって、
    乾式シリカの粒子或いは凝集体において、該粒子或いは凝集体と最隣接する乾式シリカの粒子或いは凝集体との距離Lが0.1μm以上である独立した乾式シリカ粒子或いは凝集体が、材料内に存在する乾式シリカの50質量%以下となるように混合、分散することを特徴とする熱可塑性エラストマーと無機物の複合材料の製造方法。
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