JP2009242183A - スライディングノズルプレート用の耐火物及びその製造方法 - Google Patents

スライディングノズルプレート用の耐火物及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】金属Siを添加したSNプレート用の炭素含有耐火物の製造方法において、作業能率の向上、熱処理時間の短縮等による省エネルギー化、製造コストの削減を図ること。
【解決手段】炭素含有耐火物の熱処理前の成形体中に、金属Siと、Ni、Fe、Co、Pt、Rhの特定遷移金属及びこれらの特定遷移金属の化合物の群から選択する1種又は複数種とを併存させ、この成形体に、酸素濃度5ppm以上2000ppm以下の窒素ガス雰囲気中、最高温度が1000℃以上、トータルの時間が10時間以上の熱処理を施す。
【選択図】なし

Description

本発明は容器からノズルを経由して溶融金属を排出する際の、溶融金属の排出開始及び停止を含む流量制御のために使用されるスライディングノズルプレート(以下、単に「SNプレート」という。)用の耐火物の製造方法、及びその製造方法により得られる耐火物に関する。
SNプレートは、上部プレートと下部プレートの2枚のプレート、あるいは上部プレートと下部プレートの間にさらに中間プレートを設置した3枚のプレートから構成される。SN装置システムでは、このプレートをスライドさせることにより、溶鋼の流量制御を行う。このスライド操作は、溶融金属流のヘッド圧により、プレートの面間の隙間から、溶鋼が漏れてトラブルを生じさせないように、プレートの摺動面間を強く加圧した状態で行われる。
また、SNプレートは、SN装置内部に組み込まれた構造体の一部として使用されており、鋳造中は、金物等による拘束に起因した応力に晒される。
また、SNプレートは、その使用中、通過する溶融金属中の非金属介在物やスラグ等による摩耗やそれらとの化学反応にも曝される。さらに、使用前の予熱時から使用中には高温度下で酸化雰囲気に曝され、また溶融金属中の酸化性成分によって、プレートの摺動面は酸化され、摺動面の表面が脆弱化し、隙間やエッジ損傷の増大等をも生じる。
このような過酷な条件に曝されるSNプレート用の耐火物には、高いレベルの強度、耐摩耗性、耐酸化性、耐食性、耐スポール性等が要求される。
このため、従来、SNプレート用の耐火物にはアルミナ−カーボン系、ジルコニア含有のアルミナ−カーボン系、スピネル含有のアルミナ−カーボン系等を主とする材料が広く使用されている。さらに、とくに耐スポーリング性を確保する、摺動抵抗を低減する等の目的から、これらの材料系には、カーボンボンドを主体として、金属Siやアルミニウム等を適用した材質系が適用されてきた。
さらに近年においては、高級鋼へのシフト等により使用条件が過酷化しており、とくに長時間の使用に伴う酸化や侵食の増大、流量制御のための摺動頻度の増加による摩耗の増大等が問題となってきた。このような使用環境の変化に長寿命化の要望の高まり等も加わって、さらなる前記諸特性の向上等を図ったSNプレート用の耐火物が提案されている。
例えば、特許文献1には、金属Siを3〜10重量%含ませて、炭素結合にSi化合物によるセラミック結合をも加えると共に、セラミック結合に伴う耐スポーリング性の低下を抑制し改善するため、さらにジルコニア質原料を使用したSNプレート用の耐火物が提案されている。また特許文献2には、炭素質粉末2〜10重量%、ファイバー状金属Alを0.1〜0.5重量%、フレーク状金属Alを1〜5重量%及び金属Si粉末を金属Al総量に対し0.2倍〜2倍含み、非酸化雰囲気下にて800〜1350℃で焼成してSi化合物及びAl化合物によるセラミック結合をも加えたSNプレート用の耐火物が提案されている。
このように、炭素結合とその強化によるSNプレート用の耐火物の耐酸化性、摺動特性等のさらなる改善のため、いわゆるセラミックボンドを形成させたSNプレート用の耐火物が提案されている。
ここで、これらの炭素含有耐火物の熱処理工程の条件は「非酸化雰囲気下」とされているものの、約700℃以下の酸化を生じることがない温度での熱処理を前提とするいわゆる軽焼品を除き、その実態は、周囲を炭素質材料で充填したCOガスを主体とする還元雰囲気下の間接加熱による熱処理である。
これは、被加熱物を、比較的熱伝導性の良い炭化珪素などの匣内に詰め、匣内をコークスで充填して、酸化を防ぎつつ熱処理するものであるが、周囲のコークス及び匣の占める部分が大きいこととコークスの熱伝導性が低いこともあり、とくに溶融金属の流量制御に使用するスライディングノズルプレート用の耐火物では、1200℃以上の温度で3〜10日程の熱処理時間を要する。
このコークス詰め還元焼成方法には、トンネルキルンを用いた連続焼成方式と、単独窯を用いたバッチ方法などがある。いずれにしてもコークス詰め還元焼成方法によれば、容易に低酸素・低二酸化炭素・低水蒸気の還元雰囲気を作りだせることは知られている。このような雰囲気下では、耐火物に含有されるカーボンは、その殆どが酸化せず、強度、耐食性、耐スポール性などの物性をある程度満足することができ、安定した焼成雰囲気が得られることから実用性が高く、炭素含有耐火物の還元熱処理方法として広く採用されている。
また、コークス詰め還元焼成方法によりもたらされる、極低濃度の酸素、高濃度の一酸化炭素雰囲気は、添加された金属Siの反応を促進し、炭化珪素や、酸窒化珪素、シリカなど、セラミックボンドに寄与する反応生成物の形成を促すと共に、耐酸化性、強度などの特性を向上させる効果が高い。
しかしながら、コークス詰め還元焼成方法には次に示すような問題がある。
1.焼成前後にコークスの充填・除去作業が必要となり、作業面では極めて非効率的であり、さらに単位容積当たりの生産性も極めて低いものとなる。
2.本来熱処理すべき炭素含有耐火物だけでなく、コークスや匣れんがも加熱しなければならず、熱利用率が低く、その匣を介した伝熱という性質上、昇温及び冷却にかなりの時間が必要になる。
3.匣の大きさや加熱方法により、匣内の温度分布、匣内熱履歴に差が生じること、また、コークス中の水分、匣及びコークスのシール性によって匣内の雰囲気に有意差が生じることから、焼成体である炭素含有耐火物の品質のばらつきを生じやすく、そのばらつきも大きい等。
その反面、コークス詰め焼成でもたらされる、酸素・二酸化炭素・水蒸気などの超低量雰囲気下での焼成は、混練時に添加した有機バインダーの焼成後の残留カーボン(以下ボンドカーボンと言う)の収率(残炭率)を高める効果があり、炭素含有耐火物の組織を緻密化し、耐食性や強度を向上させる点で好ましい。しかしながら、一方で、ボンドカーボンの残炭率アップは、気孔率を微細化し、密閉気孔化を進め、過度に組織を緻密化し炭素含有耐火物の耐スポーリング性を著しく損ねる結果を招く。この問題を解決するために、特性の異なる有機バインダーの適用によるボンドカーボンの残炭率の適正化が検討されているが、十分な制御ができているとはいい難く、安定した効果が得られていないのが実情である。
そこで、本発明者らは、特許文献3において中低温域に間接加熱ヒーターを設け、高温域に還元燃焼ガスの供給手段を設け、冷却域に不活性ガスを吹き込むことにより酸素や二酸化炭素の量をコントロールし、耐火物表面の酸化層の生成を抑制できる耐火物焼成雰囲気炉を示した。さらに、特許文献4において、バーナーの不完全燃焼、不活性ガスの吹き込みにより調整された、酸素濃度0.001〜0.5%、二酸化炭素濃度0.1〜6%、水蒸気濃度0.1〜6%、の雰囲気下で弱酸化焼成することにより、作業能率の改善と熱効率の向上、さらにはれんがのタール含浸性が向上することを示した。
しかしこれらは、燃焼バーナーにより生じる燃料燃焼ガスにより焼成雰囲気をコントロールすることから、燃料ガスと空気比により雰囲気が決定され、不完全燃焼のためガスの成分等の制御に困難性を含んでおり、雰囲気の安定性に関しても十分とはいい難い。また、燃焼するために必要な燃焼ガス空気比には下限があることから、雰囲気の範囲も自ずと狭い範囲に制限されてくる。
作業環境や地球環境、さらにはエネルギー効率、リードタイムなどの生産性を考慮した裸焼成(コークス詰め匣内ではない焼成)とするためには、焼成雰囲気として比較的安価で、安全性の高い窒素などの不活性ガスを炉内へ供給することが望ましい。
しかし、コークス詰め匣内ではなく窒素雰囲気中で焼成する場合は、約1300℃以上の温度で3日〜10日程度の長時間の焼成、即ちコークス詰め匣内で焼成を行う場合に比較してさらに高温度かつ長時間の焼成を行わなければ金属Siを十分に炭化させることができない。
さらに窒素雰囲気では、コークス内への埋め込みによる雰囲気と同等の、低酸素濃度、高一酸化炭素濃度の還元雰囲気とは異なり、耐火物中のボンドカーボンの酸化による組織劣化に加え、さらには添加された金属Siなどの金属の反応も阻害されることから、十分な強度や耐酸化性などの特性を得ることができず、また強度等の品質のばらつきも大きくなるという問題があった。しかもSiC生成量の変動が大きく、品質の不安定さも顕著で、産業上実用的ではなかった。
特開昭58−99161号公報 特開平11−199313号公報 特開2003−207274号公報 特開2003−277129号公報
本発明の課題は、金属Siを添加したSNプレート用の炭素含有耐火物の製造方法において、作業能率の向上、熱処理時間の短縮等による省エネルギー化、製造コストの削減を図ることにある。
他の課題は、品質のばらつきを、匣内での周囲を炭素材質で充填した従来の製造方法で生じる程度より低減することにある。
金属Siは、前述のようにコークス等の炭素材質で周囲を充填したCOガス等の還元雰囲気中で約1200℃以上かつ72時間以上の熱処理をすることにより炭化物即ちSiCや、酸化物即ちSiOや窒素酸化物即ちSiONなどを生成してSNプレート用の炭素含有耐火物の強度を増大させる。
この金属Siは単に炭素と共存させても、炭素材質の中など一酸化炭素雰囲気以外の、とくに窒素ガス雰囲気では反応し難く、また、焼成温度を高くし、高温度でのキープ時間を長くする等の条件にしても、微妙な雰囲気等の変動により反応状態が変動しやすく、個体により又は部位により品質のばらつき等も生じやすい。
これに対して、本発明者は、金属Siの反応の触媒機能は、Ni、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Pt、Rhの金属につき得られることを発見した。さらに本発明者らは、焼成前の炭素含有耐火物の成形体中に、金属SiとNi、Fe、Co、Pt、Rhの特定遷移金属及びこれらの特定遷移金属の化合物の群から選択する1種又は複数種(以下「特定遷移金属類」という。)を併存させ、前記成形体を、酸素濃度5ppm以上2000ppm以下の窒素ガス雰囲気中で最高温度が1000℃以上、トータルの時間が10時間以上の熱処理をする工程を含む製造方法により、従来の匣れんが内コークス詰めによる間接加熱の熱処理を行うことなく、従来の匣れんが内コークス詰めによる熱処理工程によって得た耐火物と同等の炭素含有耐火物を得ることができることを見出した。
これら特定遷移金属類が金属Siの反応促進に及ぼす効果を調査した結果を、図1に示す。なお、この図に示す値は、金属Si粉末100質量部に対して、各特定遷移金属類を各金属のみに換算した値が5質量部(外掛け)になるように配合して、酸素濃度100ppmの窒素ガス雰囲気中で24時間の熱処理を行い、未反応のSi量に着目し、熱処理前の金属Siの量と残留Siの差を、熱処理前の金属Siの量で除した値(金属Siが全て反応し、SiCやSiO、SiON等を生成した場合を100とする指数に換算した値)を示す。
金属Siの反応に対する触媒機能が見出された前記の金属のうち、Cu、Cr、Mnは図1に示すとおり、これら以外の金属よりも触媒効果が小さく、とくにCrについては環境問題等もあって、耐火物に使用することは好ましくない。そこで本発明では、前記の特定遷移金属類を金属Siと併存させて使用することとした。ただし、Co、Pt、Rhは高価であって供給の安定性や採算性等の問題があるのでこれらの選択も妥当でない場合もある。したがって、Ni系又はFe系を使用することが最も好ましい。
以下、本発明を具体的に説明する。
前記の特定遷移金属類は金属Siに対し、窒素ガス雰囲気でも金属Siの反応の触媒として機能し、SiCの生成を促進し、強度、耐摩耗性等の発現に寄与する。そもそもSNプレートの具備特性は、その形状や構造、対象とする溶鋼の温度、種類、成分、熱衝撃の程度、使用(摺動)時間や回数、使用時の雰囲気や面圧等の、個別の設備や操業に応じて異なり、それらに応じて決定される具備特性(即ち、諸物性の具体的な値、範囲等)は任意の設計事項でもある。必要とする曲げ強さや耐摩耗性等の物性は、目標値の程度に応じて炭素含有耐火物内の金属Siの量を任意の範囲で増減させることで得ることができる。したがって、本発明においても金属Si量の範囲はその任意の設計範囲に応じて変動させる性質のものであって、絶対値としての含有量の特定に馴染まない。
なお、一般的なSNプレート用の炭素含有耐火物では、金属Siの総量が約10質量%を超えると大幅な耐食性の低下や耐熱衝撃性の低下等を来すので、金属Siの総量の上限は10質量%以下であることが好ましい。
また、金属Siの添加量が少ない領域、例えば金属Siの総量が1質量%未満程度では、金属Siの絶対量が少ないことから、金属Siの反応生成物も少なく、特定遷移金属類を添加しても十分な効果は得られないことがある。
特定遷移金属類は金属Siに対し、極微量の併存でも触媒効果を発現する。特定遷移金属類は、コストの面、耐火物への耐食性の低下等の弊害を抑制する等の観点から、できるだけ低含有量とすることが好ましい。また基本的に、特定遷移金属類は金属Si量に対し一定の割合であればよい。
しかし、金属Si単体のみで構成される基材中に特定遷移金属類を併存させる場合とは異なって、金属Si以外の耐火骨材・原料等を主体に構成する、SNプレートをはじめとする実際の耐火物の場合においては、金属Siと特定遷移金属類とが接触する確率が、それら含有量が小さくなるにしたがって小さくなる。そこで、特定遷移金属類の金属のみに換算した総量(以下、単に「特定遷移金属類の量」ともいう。)の金属Si量に対する割合も、金属Siの添加量に応じて変動させることが望ましい。
例えば、金属Siの絶対量が少ない領域では、金属Siの絶対量が少ないことに加え、特定遷移金属類の絶対量はさらに少なくなることから、熱処理前の成形体の中に分散した状態では相互の接触確率が大幅に小さくなり、触媒としての機能を十分に発揮できないことがある。したがって、金属Si量が少ない場合の特定遷移金属類の金属Si量に対する割合は、それら単体又は高純度において確認した必要最低割合よりも大きくすることが好ましい。
SNプレート用の耐火物の熱処理前の成形体にて実験的に確認した金属Si量(成形体中の質量%)とその金属Si量に対する特定遷移金属類の最小必要割合(成形体中の質量%)との関係を図2に示す。
この特定遷移金属類の最小必要割合を式で表すと、
M ≧ 0.0098 × S + 0.0294 ・・・式1
(1≦S≦10)
となる。
ここで、 Mは成形体中の特定遷移金属類の総量(金属のみに換算した総量)(質量%)、Sは成形体中の金属Siの総量(質量%)を表す。なお、この場合の成形体は樹脂の炭化後の質量を含み、揮発分を除く総質量を100とする。
前記の式1は、金属Si量が1質量%ないし10質量%における特定遷移金属類の最小必要割合であって、かつ分散による金属Siとの接触確率を上昇させるための好ましい量から算出した値であって、実際の耐火物の成形用のはい土及び成形体にて実験的に確認して得た値を基に作成したものである。
一方、特定遷移金属類の金属Si量に対する上限の割合は、個別の操業又は設備に固有の条件に応じて、対象の炭素含有耐火物の耐食性、強度、耐酸化摩耗性、耐熱衝撃性等の物性の低下が所定の範囲内に収まるように(許容される低下・劣化の限度を超えない程度の範囲で)決定すればよい。しかし、耐食性等の大幅な低下を来さないためには、特定遷移金属類はその金属のみに換算した量で、金属Siを100質量部とするときに、50質量部、即ち金属Siの最大量が10質量%の場合、絶対量で5質量%以下であることが望ましい。
金属Si及び特定遷移金属類を前述の特定割合で併用して製造した本発明のスライディングノズルプレート用の耐火物では、金属Siは反応して、炭化珪素やシリカ、酸窒化珪素等を生成する。また、炭化珪素についてはβ型のSiCとして存在する。
これらの反応生成物はいずれも強度の発現や、耐酸化摩耗性の付与に寄与するが、とくにβ型のSiCは、強度だけでなく、耐酸化摩耗性の向上効果が高い。Siの反応生成物の生成比率をコントロールすることは困難であるが、β型のSiCの生成量は多いほど好ましく、本発明者は、特定遷移金属類を使用することにより、添加したSiの2割以上が、β型のSiCを生成することを見出した。
即ち、本発明のスライディングノズルプレート用の耐火物は、耐火物中の特定遷移金属類の総量(前述と同様に金属のみに換算した総量である)が、下記の式2により算出された値以上、前記耐火物中のβ−SiCの総量を100質量部とするときにそれに対し35質量部以下であることを特徴とする。
Mc ≧ (0.0098×Sc+0.0294)×0.7÷0.2・・・式2
(1.4≦Sc≦14.3)
ここで、Mcは耐火物中の特定遷移金属類の総量(金属のみに換算した総量(質量%)、Scは耐火物中のβ−SiCの総量(質量%)を表す。
式2中の係数0.7はSiの原子量28をSiCの分子量40で除した値であり、Scの最小量1.4及び最大量14.3は、SiCの生成量の最小値と最大値を炭化反応前の金属Siの添加量に換算するための値である(式1での金属Siの量に対応)。
最大値としての35質量部は、金属Si全量がSiCとなった場合の、特定遷移金属類の量をSiC(金属Siの1/0.7)量に対する値に換算したものである。
なお、β−SiCの総量の定量は、耐火物中に含まれる成分の構成等に応じて、X線回折、湿式分析等の方法を適宜組み合わせて、直接的に又は間接的に行うことができる。
ここで、特定遷移金属類は、より効率的な触媒効果を得るため、及び製造コスト、原料の安定的な入手等の現実的な産業上の利用の点からは、1000℃において金属の状態であることがより好ましい。
また、金属Si及び特定遷移金属類の粒子径は、30μm以下であることが好ましい。触媒としての十分な効果を引き出すためには、金属Siと特定遷移金属類が偏在することなく均一に分散されて、相互に接触して存在することが好ましい。そのためには、触媒としての特定遷移金属類及びそれと反応する金属Siの粒子径は微細であること、とくに急激に比表面積が大きくなると共に粒子数も増加する20μm以下がさらに好ましい(図3参照)。粒子径が30μmを超えると、触媒としての効果が小さく、反応の進行が抑制されて所定の物性を得ることが困難となる。
なお、本発明における炭素含有耐火物の炭素量は、金属Siの量に対する等モル量を基準として炭素自体による結合強度等とのバランスにおいて適宜決定すればよい。
次に、本発明の熱処理工程について述べる。
炭素質の耐火物において、その組織中に添加された金属Siは、従来の匣れんがによるコークス詰めや一酸化炭素などの還元雰囲気中で熱処理を行うことにより、炭化物であるSiCのほかに、雰囲気中のNと反応して、SiON、Siなどの窒素化合物やSiOなどの酸化物を生成する。
しかし、例えば一般的な燃焼ガスに窒素を付加するようなラフな窒素雰囲気での焼成の場合は、約1200℃以上の高温で長時間焼成しても金属Siの炭化物や窒化物の生成反応が進行せず、その多くが金属として残留した状態で存在する。
これは、このような窒素雰囲気下で焼成する場合には、炭素質の物質で充填した一酸化炭素雰囲気等の中と比較して、不純物として存在するO濃度が高いことから、金属Si粒子の表面にSiOの皮膜を形成し、その皮膜より内側の耐火物組織内の金属Siの反応を抑制する、いわゆる保護酸化とよばれる現象によるものと考えられる。
このように不純物として存在するO濃度が高い状態は金属Siの炭化等の反応にとっては好ましくない。
しかし、一方で金属Siの炭化等の反応を抑制する程度に強固なSiOの皮膜を形成しない程度の低い酸素濃度の窒素雰囲気中では、気相であるSiO(g)を生成し、このSiO(g)は金属Si粒子の表面から散逸・拡散し、この反応が進行し続ける。散逸・拡散したSiO(g)は、カーボンと反応して主としてSiCを形成したり、気相中のガスと反応してSiOやSiONを生成すると考えられる。
金属Siの炭化反応等を十分に行うためには、前述のように、適度な量の酸素の介在が必要である。このような酸素源としては、焼成前の耐火物の組織中に必然的に含まれる空気があり、この空気中の酸素と焼成前の耐火物の中に含まれるフェノールレジン等の有機バインダーや、炭素が反応して生じた一酸化炭素、二酸化炭素等がある。
しかしこのような焼成前の耐火物の組織中に必然的に含まれる空気等だけでは、酸素の量は少なすぎ、またその量の変動により金属Siの炭化反応等の程度が左右されて品質等のばらつきを生じる。
そこで、金属Siの炭化反応等を安定的に行わせ、ばらつきの小さい目標とする品質等を得るためにはこのような酸素の量を制御する必要がある。
本発明者は、最高温度が1000℃以上1350℃以下の温度で、トータルの熱処理時間(昇温開始時点から加熱終了時点=約250℃までの冷却時点まで)が10時間以上72時間以下の条件で熱処理する工程において、窒素ガス雰囲気の酸素濃度が5ppm以上2000ppm以下であることが必要であることを見出した。
この窒素ガス雰囲気の酸素濃度が5ppm未満であると、金属Siの酸化によるSiOガスの生成が不十分であり、Siの炭化反応が十分に進まない。また表面のみ、或る一部のみ等で反応が進んで金属Siの炭化反応等にばらつきを生じたり、強度、耐摩耗性等の十分な向上を得にくい。
なお、ここで窒素ガス雰囲気中の酸素濃度は、炉内の熱処理対象の耐火物に接する前の状態をいうので、炉内に投入される窒素ガスの酸素濃度で代替することができる。
炉内に投入された窒素ガスに含まれる微量の酸素は、被焼成体である炭素含有耐火物中のカーボン、あるいは、金属Si等と反応することから、さらに著しく減少する。例えば最高焼成温度が1300℃では、カーボンと酸素が共存する場合、酸素濃度logPOは、10−17〜−18と炉内での酸素濃度は著しく低下する。このことから、投入される窒素ガスに含まれる微量の酸素濃度は、耐火物内部のSiOの生成を継続するに相当な程度の酸素濃度、即ち実験的に確認した5ppm以上であることが必要となる。
一方で、2000ppmを超える酸素濃度雰囲気では過剰な酸化が生じ、金属Siの反応が進行しないだけでなく、炭素含有耐火物に含まれるカーボンもが酸化され、著しく組織を劣化する。
本発明の窒素ガス雰囲気における酸素の残部は主として窒素ガスであるが、市販の供給ガスに含まれる不可避の他の成分、及び燃焼ガス由来の炭酸ガスや炭化水素系のガスも含まれ得る。
高温度の窒素ガス雰囲気は、窒素ガスを注入しながら熱源により加熱することで得られる。しかし、熱源に各種燃料ガスや燃料油等を使用したバーナー燃焼方式を適用する場合には、燃焼状態の変動等により酸素濃度の変動幅が大きくなったり、窒素以外の諸成分のガスの量が増加する等で、炉内の場所や時間によって、ガス成分や温度の分布の変動が大きくなる。
このような酸素に関するガス成分のばらつきや温度のばらつきが品質のばらつきの原因ともなり、また制御しようとすると過大な設備、労力や費用等を要することとなり、産業上採用が困難となる。
そこで熱源としては、可燃性燃料を燃焼させてそのガスを流通させるバーナー燃焼方式ではなく、ガスの発生を伴わず、変動も少ない電気式等が好ましい。電気式とは、通電により発熱する発熱体により加熱する方法をいう。
本発明は、前述の窒素ガス雰囲気下、最高温度が1000℃以上の温度で熱処理することを特徴とする。前述の特定遷移金属類を併存させた窒素ガス雰囲気下の本発明では、金属Siは1000℃以上の温度でも反応を開始し、SiCやSiO、SiONなどの反応生成物を得ることができる。1000℃未満では金属Siは十分に反応しない。
本発明では焼成時の最高温度の上限はとくに制限する必要はない。しかし、生産性、省エネルギー、耐火物の過剰な高強度化等を抑制するためには、1300℃以下であることが好ましい。
トータルの熱処理時間は、本発明では10時間以上であればよい。このトータルの熱処理時間とは、昇温開始時点から加熱終了時点(=約250℃までの冷却時点)までをいう。10時間未満であると、最高温度域での保持時間が短すぎて金属Siの反応が不十分となったり、昇温速度や冷却速度が大きすぎて表面又は内部に亀裂等を生じる危険性が高くなる。なお、最高温度域での保持時間、昇温速度や冷却速度等は、個別の形状や材料の成分、耐火物の組織(気孔率その他)等々複数の要因により変動させることは可能である。
トータルの熱処理時間の上限はとくに制限する必要はない。しかし、工程の短縮、省エネ等の観点からは、従来技術の匣内コークス詰め焼成での最小時間である約72時間以下であることが望ましい。
本発明では、前述の熱処理工程の後に、タール又はピッチを含浸し、また300℃以上の温度で熱処理して含浸したタール又はピッチの揮発成分を除去する工程を含むことができる。
本発明によれば、従来の一般的な熱処理方法(匣内をコークスで充填して熱処理する方法)より、低温度(1000℃以上)かつ短時間(10時間以上)でも、従来と同等程度以上の金属Siの反応性を得ることが可能となり、従来の熱処理方法により得られた耐火物と同等以上の耐摩耗性、強度等の特性を得ることができる。
また、匣内間接加熱ではなく被熱処理耐火物を直接焼成するいわゆる裸焼成化、焼成時間の大幅な短縮、作業・資材コストの低減、エネルギーコストの削減などの大幅な生産性の向上に加えて、有害な一酸化炭素、二酸化炭素などの発生を抑制できることから、作業環境、地球環境の改善にも寄与することができる。
本発明の耐火物の原料としては、耐火性骨材の粗粒子、金属Si及び熱処理を経て炭素系の結合を生ずる結合材に加えて、特定遷移金属類(特定遷移金属の粉末、特定遷移金属の塩の溶液等)を使用する。金属Siの炭化反応を均一且つ容易にするための炭素源としてカーボンブラック等の炭素質原料を加えることもできる。さらに金属Alやその合金を加えることもできる。
はい土に配合する出発原料としての金属Siは、一般に耐火物の酸化防止等の目的に使用されている金属Siを使用できる。熱処理前の耐火原料配合物であるはい土中に均一に分散させるため、粉末状の金属Si、具体的には粒径30μm以下の微粒子を使用することが好ましく、粒径20μm以下がさらに好ましい。
前述の通り、金属Siの含有量は個別の設計条件に応じて変動するものである。以下は成形体中に5質量%の金属Siを含有し、特定遷移金属類として酸化Niを使用する場合を例に述べる。
特定遷移金属類としての酸化Niの好ましい含有量の範囲は、前述の式1等にしたがって、成形体中に最小0.10〜最大3.18質量%となる。比較的容易に品質(強度、耐摩耗性等の物性)の均一性を確保し、かつ耐食性の低下とコスト上昇を抑制するためには、最小量の1.5倍(0.15質量%)〜2.5倍(0.25質量%)程度が好ましい。
はい土に配合する出発原料としての特定遷移金属類は、金属単体、特定遷移金属を単独若しくは複数含む合金、有機化合物などの粉末状、サスペンジョン、溶液等のいずれの形態であっても構わないが、溶液等を使用する場合には結合材との相溶性がある、例えばカルボン酸等の有機塩とすることが最も好ましい。粉末の場合、その粒子の大きさは前記の通り反応性を高めると共にはい土中へのより均一な分散性を得るため、できるだけ小さいものがよく、20μm以下の微粒子であることが好ましい。はい土の成分構成を成形体の成分構成に換算するには、フェノール樹脂等の結合材、その他の助剤に含まれる揮発分を除き、残炭素等の固形物である成分を含めればよい。
耐火性骨材の粗粒子としては、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、マグネシア(MgO)、シリカ(SiO)などの成分からなる、一般的に耐火物の原料として使用されている耐火原料を単独若しくはその化合物として含む耐火原料、例えば、コランダム、ムライト、スピネル、ジルコニア−ムライト等を使用することが可能である。
また、金属Siの炭化反応の原料として、後記の結合材由来の炭素とは別に、炭素質粒子を含有させてもよい。この炭素質粒子としては、反応性及び分散性を高めるためにできるだけ小さい粒子がよく、カーボンブラックが好ましい。その他黒鉛も使用できる。
なお、酸化防止機能等の強化のために、炭化硼素、窒化硼素、硼砂等の硼化物等を含有させても構わない。ただし、これらの含有量が成形体中で3質量%を超えると耐食性の低下や耐摩耗性の低下等を招来する虞があるので、3質量%以下で含有させることが好ましい。
結合材は、はい土を均一かつ成形可能な状態にし、さらには成形後の耐火原料配合物の保形性及び製品としてのSNプレートの基本的な保形性と強度を付与する目的で使用する。その例としては、フェノール樹脂、ピッチ、タール等が挙げられる。結合材の量は、成形性、保形性等を考慮して、また個別の具備特性に応じたはい土の粒度、構成原料等の構成によって調製する。はい土の粉体部分100質量部に対し外掛けで、概ね1.0質量部以上10.0質量部以下程度加えることが望ましい。
本発明の製造工程を以下に詳細に述べる。
第1工程として、前述の各粉体(骨材粒子を含む)原料を各々が均一な分散状態になるようにミキサーで混和する。
第2工程として、前記第1工程で混和した粉体に、樹脂等の結合材を添加して均一な分散状態になるように例えば加圧しながら混練する。
第3工程として、前記第2工程で得られた混練物を成形する。成形は、フリクション・プレス(衝撃力による加圧)又は50〜1000MPa程度の圧力で静圧プレス等による方法を採ることができる。
第4工程として、前記第3工程で得られた成形体を、熱処理即ち焼成する。この熱処理工程においては、従来技術のように成形体を匣内に詰めたり、炭素質等の道具で覆う必要はなく、成形体が雰囲気に直接曝されるように台車等に配置することができる。
この熱処理工程では、雰囲気として酸素濃度5ppm以上2000ppm以下の窒素ガスを用い、この雰囲気を安定的に得るために、加熱のための熱源は電気式とすることが好ましい。各種ガス、各種油等の燃焼方式でも雰囲気を前述の範囲に安定的に得ることができれば、そのような燃焼方式の設備でも使用できる。
しかし、燃焼方式においてそのような制御を行うことは極めて困難であって、またそのような制御を行えるようなシステムを構築するには膨大なコストを伴うので産業上好ましくない。
この熱処理工程では最高温度が1000℃以上、トータルの時間が10時間以上の熱処理を行う。このトータルの時間は、昇温開始から約250℃の冷却までの時間をいう。最高温度は、品質上は上限を設ける必要はない(例えば1400℃でもよい)が、過剰に高い熱処理温度によるエネルギー、コスト等の無駄等を抑制するためには1300℃程度以下であることが好ましい。
一方、トータルの熱処理時間が10時間未満の場合、昇温速度又は冷却速度が大きすぎて、耐火物に亀裂を生じる可能性が高くなる。耐火物に亀裂を生じる可能性を安定的に殆どゼロとするためには15時間以上、さらには20時間以上が好ましい。
この熱処理時間には品質上の理由で上限を定める必要はない。しかし、時間、エネルギー、コスト等の無駄を排除するためには72時間以内、さらには30時間以内が好ましく、またそれでSNプレート用の耐火物としては十分な品質が得られる。
なお、この熱処理温度と時間は、1350℃以上の温度で、かつ72時間以上を要していた従来技術の熱処理に比較して、最も顕著な効果を示す本発明の特徴的部分である。
前述の1000℃以上の熱処理工程の前に、成形体の強度発現等を目的として例えば結合材がフェノール樹脂の場合には約250℃以上約350℃以下程度の温度等で乾燥や予備的な焼成をしても構わない。
また、前記の熱処理工程の後に、さらにタール、ピッチ等の含浸及びその後の揮発分の調整のための約300℃以上の温度での乾燥・焼成(軽焼)等をしてもよい。この乾燥・焼成(軽焼)温度約300℃は、使用するタール、ピッチ等の軟化温度等の性状によって適宜変動させることができる。SNプレートの摺動抵抗をさらに低減する、摺動面を中心とする酸化を防止する等のためには、タール、ピッチ等で含浸することが好ましい。
第5工程として、前記第4工程で得られた焼成体(タール、ピッチ等の含浸をする場合は含浸・軽焼後を含む)を研磨、メタルケース設置、ガス導入経路の設置等の加工を必要に応じて行う。
以上の要領で本発明の製造方法を実施することができ、また本発明の耐火物が得られる。
以下に本発明の実施例を示す。
[実施例A]
実施例Aは、特定遷移金属類として酸化Niを使用して、本発明の窒素ガス雰囲気中にて熱処理をした場合の効果を、熱処理温度(最高温度)を変化させて調査した結果である。
表1に実施例、比較例の各試験条件と結果を示す。
実施例において、金属Siは、フェノール樹脂を除く粉体部に外掛けで5質量%、特定遷移金属類(酸化Ni)は同様に外掛けで、かつ、酸化物としての量で0.2質量%とした(成形体中の金属Si量は4.9質量%、酸化NiのNiのみの換算量は0.15質量%)。これは、酸化Niを金属のみ即ちNiのみに換算した場合の前述の本発明の最小割合(0.077質量%)と最大割合(2.45質量%)の範囲中にある。
試料は、幅230mm×長さ100mm×厚み45mmの形状に100MPaの一軸プレスにて成形し、乾燥を行った。
熱処理は、比較例5〜7を除き、電気炉内に酸素ガス濃度100ppmの窒素ガスを注入し、所定の温度及び時間焼成する方法とした。比較例5〜7は、通常のコークス詰め焼成にて熱処理を行った。
ここでの本発明の効果の評価は、第一次的な基準として、同量の金属Siを含み特定遷移金属類を含まない、かつ従来の方法であるコークス詰め雰囲気中にて熱処理を行った比較例の特性を基準とした。即ち本実施例Aでは比較例6の曲げ強さ若しくは耐酸化摩耗性と同等レベル以上であることとした。また、SiCの生成割合を目安として用いた。
SiCの生成割合は、JIS−R2011による湿式分析及びX線回折による内部標準法による方法にて得た。曲げ強さは、JIS−R2213による方法、耐酸化摩耗性は、BS摩耗試験法(B.S.1902:Part1A:APPENDIX C)による方法で、試料を800℃で2時間大気雰囲気中で焼成した後に、摩耗試験を実施した。
また、耐食性の評価については、高周波誘導炉で低炭鋼を溶解し、浸食材として酸化鉄粉を使用して実施した。
表1に示すように、特定遷移金属類を使用して最高温度1200℃で熱処理をした実施例3では、特定遷移金属類無添加かつコークス詰めによる最高温度1200℃の従来熱処理方法である比較例6レベル以上の強度、耐酸化摩耗性を得ることができた。また、SiCの生成割合も比較例6レベル以上であった。
特定遷移金属類を使用して最高温度1100℃で熱処理をした実施例2でも、特定遷移金属類無添加の比較例6とほぼ同等レベルの曲げ強さ、耐酸化摩耗性及びSiCの生成割合を得ることができた。
また、特定遷移金属類を使用して最高温度1000℃で熱処理をした実施例1でも、比較例6のレベルは下回ったものの、同じ窒素ガス雰囲気の熱処理であって特定遷移金属類無添加の比較例2よりも高いレベルの曲げ強さ、耐酸化摩耗性及びSiCの生成割合を得ることができた。
なお、特定遷移金属類を使用して最高温度1300℃で熱処理をした実施例4についても比較例6レベルより高い曲げ強さ、耐酸化摩耗性及びSiCの生成割合を得ることができた。
しかし熱処理の最高温度が1000℃未満である比較例1では比較例6よりも曲げ強さ、耐酸化摩耗性が著しく低下した。
また、特定遷移金属類を添加せずに同様の窒素ガス雰囲気にて熱処理を行った比較例2〜4では、最高温度を1350℃と高くしても、曲げ強さ、耐酸化摩耗性及びSiCの生成割合いずれも、実施例1〜4に比較して大幅に劣る結果となった。
[実施例B]
実施例Bは、熱処理時間の影響を調査した結果である。
本実施例の金属Si量、酸化Ni量、試料の作製方法、熱処理の方法、評価基準及びその方法等は前述の実施例Aと同様である。
ここでは、最高温度の下限温度である1000℃における時間を基本にし、さらにそれよりも高温度の熱処理条件でも調査した。
表2に実施例、比較例の各試験条件と結果を示す。
特定遷移金属類を使用して最高温度1000℃以上で10時間以上の熱処理をした実施例5〜7は、いずれも比較例6とほぼ同等の曲げ強さ、耐酸化摩耗性を得ることができた。また、目安であるSiCの生成割合も同等であった。より高温度での処理を行った実施例8〜10ではさらに良好な結果が得られた。
しかし熱処理の時間が10時間未満である比較例8及び比較例9では試料に亀裂が生じた。この場合、最高温度が1300℃での比較例9では最高温度が1000℃である比較例8よりも亀裂が多かった。これは、昇温速度及び冷却速度の何れか又は両方が当該耐火物の組織にとっては大きすぎたことが原因と考えられる。実形状、実設備でも耐火物の組織自体は大差がないので、熱処理における最高温度にかかわらずトータル時間は10時間以上必要であることがわかる。
[実施例C]
実施例Cは、本発明の金属Siと特定遷移金属類を併用した系の耐火物の熱処理における、窒素ガス中の酸素濃度の影響を調査したものである。
本実施例の金属Si量、酸化Ni量、試料の作製方法、熱処理の方法、評価基準及びその方法等は前述の実施例A、Bと同様である。
ここでは、最高温度1200℃、トータル時間を20時間とし、炉内へ投入する窒素ガスの酸素濃度を変化させた。
表3に実施例、比較例の各試験条件と結果を示す。
酸素濃度が0ppmの比較例10では、比較例6と同等の曲げ強さ、耐酸化摩耗性を得ることができなかった。
酸素濃度が5ppm以上2000ppm以下の実施例11〜14ではいずれも比較例6とほぼ同等又はそれ以上の曲げ強さ、耐酸化摩耗性を得ることができた。また、目安であるSiCの生成割合も同等又はそれ以上であった。
しかし、酸素濃度が3000ppmの比較例11では、試料表面が酸化していた。この結果から窒素ガス中(窒素ガス雰囲気中)の酸素濃度は5ppm以上2000ppm以下である必要があることがわかる。
[実施例D]
実施例Dは、金属Siの量に対する特定遷移金属類の量の影響を、SNプレート用耐火物において調査したものである。
本実施例の金属Si量、酸化Ni量、試料の作製方法、熱処理の方法、評価基準及びその方法等は前述の実施例A、B、Cと同様である。
表4に実施例、比較例の各試験条件と結果を示す。
表4において酸化Niは、酸化Niを金属のみ即ちNiのみに換算した場合の前述の本発明の最小割合と最大割合を各例ごとに算出し、その量に相当する酸化物としての含有量を外掛けで示している。
なお、曲げ強さ、耐酸化摩耗性は、金属Si量が1質量%である実施例15〜17は比較例5を、金属Si量が5質量%である実施例18〜21は比較例6を、金属Si量が10質量%である実施例22〜26は比較例7を基準として評価した。
酸化Niが最小必要量以上である実施例(後述の実施例15、18、22以外)では、いずれも前記の各対象とする比較例とほぼ同等以上の曲げ強さ、耐酸化摩耗性を得ることができた。また目安であるSiCの生成割合も同等以上であった。
これに対し、酸化Niが好ましい最小必要量未満である実施例15、18、22では、それぞれの金属Si量に対応する特定遷移金属類を含有していないコークス詰め雰囲気内での熱処理による比較例の曲げ強さ、耐酸化摩耗性を下回った。しかし、実施例18は、特定遷移金属類を含有していない点を除き窒素雰囲気での同熱処理条件である比較例3を上回る曲げ強さ、耐酸化摩耗性及びSiCの生成割合を得ることができ、窒素雰囲気での熱処理における特定遷移金属類の効果が確認できた。
なお、酸化Niが好ましい最大許容量を超えた実施例26では、金属Si量が同じ10質量%で特定遷移金属類を含んでいない比較例7に比較して、耐食性が低下しており、耐食性を具備特性とする使用条件の操業には、このような特定遷移金属類を多量に含有した耐火物は不向きであることがわかる。
[実施例E]
実施例Eは、本発明の製造方法によって製造した、SNプレート用耐火物を連続鋳造用取鍋の実製品に適用して、操業に供した結果である。
供試料は、摺動方向の最大長さ550mm、摺動方向に直角の方向の最大幅350mm、ダボ部を除く厚さ45mmで、上下2枚を摺動させる構造である。
表5に実施例、比較例の各試験条件と結果を示す。
実施例において、その成形体中の金属Si量の含有量は5.0質量%、特定遷移金属類として酸化Niを0.3質量%含有させた。
この製造においては、前述の方法で配合、混和及び混練したはい土をフリクション・プレスで成形し、乾燥後、密閉可能なバッチ式を用いて熱処理を行った。
熱処理は、酸素濃度が約100ppmの窒素ガスを焼成炉に投入して行った。また、加熱は電気式の加熱により行い、最高温度は1250℃、トータルの熱処理時間は24時間とした。そして、熱処理後、ピッチを含浸し、300℃以上の温度でコーキング処理を行い、揮発分を除去した。
比較例においては、その成形体の金属Si量の含有量は6.0質量%で、特定遷移金属類を含有せず、従来のコークス粉に埋め込む方法、即ち、炭化珪素製の匣内に試料を入れ、その周囲の空間をコークスで充填し、連続式のトンネルキルンを用いて最高温度1250℃で、トータル約170時間の熱処理を行った。そして実施例と同様に、熱処理後、ピッチを含浸し、300℃以上の温度でコーキング処理を行い、揮発分を除去した。
表5に示すとおり、特定遷移金属を添加した実施例27は、特定遷移金属を含有せずかつ従来の焼成法による比較例12と比較して、約5%の耐酸化摩耗性の向上が認められ、さらに実機においてもほぼ同等の損耗速度の改善が認められた。
また、鋳造の際に内孔に溜まる地金を除去するための酸素洗浄時に生じるFeOによる溶損に起因する孔径拡大も、約10%改善された。
[実施例F]
実施例Fは、SNプレート用耐火物につき、本発明の製造方法と従来のコークス詰めによる製造方法の、耐火物単位重量当たりの工数、資材費、エネルギー費、総コスト及び耐火物の品質のばらつきを、比較例を100とする指数で比較した結果である。
その結果を表6に示す。
工数は、成形後(又は乾燥を含む)熱処理前の耐火物を熱処理準備場に搬入した時点から、熱処理終了後に次の工程に以降する段階までとし、コークス詰め込み及び除去作業、台車への設置等の作業を含む。
資材費は、上記工数の同じ工程の段階内に要した匣その他の道具煉瓦その他の道具類等の作製、維持等を含む総費用である。
エネルギー費は、上記工数の同じ工程の段階内に要した燃料、ガス、電気等の熱源として要した総費用である。
総コストは、上記合計に設備上、時間上の製造方法の違いに伴う生産性の変動要素等を加えた、費用の総額である。
耐火物の品質のばらつきは、比較例では匣内の位置、耐火物個体内の場所での品質の最大値と最小値の差、実施例は同じ台車上の位置、耐火物個体内の場所での品質の最大値と最小値の差である。
実施例では、工数、資材費、エネルギー費、総コストいずれも比較例を大きく下回っている。とくに総合的な生産性の指標としての総コストでは、熱処理自体の時間短縮に加え、熱処理前後の作業時間が削減されたこと、設備改善等により、実施例では大幅に改善効果を得ることができた。
品質のばらつきに関しても、曲げ強さ(最大−最小)、耐酸化摩耗性(最大−最小)のいずれも実施例では比較例を大きく下回っており、改善効果が観られた。
本発明の製造方法及び耐火物は、SNプレートの周辺に使用する、上ノズル、下ノズル、中間ノズル、羽口等々に用いる耐火物にも適用することができる。
特定遷移金属類の種類と金属Siの反応割合との関係を示す。 炭素含有耐火物における、金属Si量とその金属Si量に対する特定遷移金属類の最小必要割合との関係を示す。 粒子径(球形状とみなした場合)と比表面積の逆数(反応速度の指標とみなす)との関係を示す。

Claims (4)

  1. 炭素含有耐火物の熱処理前の成形体中に、金属Siと、Ni、Fe、Co、Pt、Rhの特定遷移金属及びこれらの特定遷移金属の化合物の群から選択する1種又は複数種(以下「特定遷移金属類」という。)とを併存させ、
    前記成形体を、酸素濃度5ppm以上2000ppm以下の窒素ガス雰囲気中、最高温度が1000℃以上、トータルの時間が10時間以上の熱処理をする工程を含むスライディングノズルプレート用の耐火物の製造方法。
  2. 前記熱処理において窒素ガス雰囲気中の熱源は、ガスの発生を伴わないものである請求項1に記載のスライディングノズルプレート用の耐火物の製造方法。
  3. 前記成形体中の特定遷移金属類の総量(金属のみに換算した総量)が、下記の式1により算出された値以上、前記成形体中の金属Siの総量を100質量部とするときにそれに対し50質量部以下である請求項1又は請求項2に記載のスライディングノズルプレート用の耐火物の製造方法。
    M ≧ 0.0098× S + 0.0294 ・・・式1
    (1≦S≦10)
    ここで、
    Mは成形体中の特定遷移金属類の総量(金属のみに換算した総量)(質量%)
    Sは成形体中の金属Siの総量(質量%)
    を表す。
  4. 耐火物中の特定遷移金属類の総量(金属のみに換算した総量)が、下記の式2により算出された値以上、前記耐火物中のβ−SiCの総量を100質量部とするときにそれに対し35質量部以下であるスライディングノズルプレート用の耐火物。
    Mc ≧ (0.0098×Sc+0.0294)×0.7÷0.2・・・式2
    (1.4≦Sc≦14.3)
    ここで、
    Mcは耐火物中の特定遷移金属類の総量(金属のみに換算した総量)(質量%)
    Scは耐火物中のβ−SiCの総量(質量%)
    を表す。
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