JP2009237306A - 光学物品およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチック基材の上にハードコート層が形成され、前記ハードコート層の上に反射防止層が形成された光学物品であって、前記反射防止層は、ハードコート層側より、酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体からなる高屈折率層と、酸化ケイ素を含有する低屈折率層とを含んで構成される。
【選択図】なし
Description
また、プラスチックレンズの耐擦傷性を向上させるために、レンズ基材の上にハードコート層を形成することも多い。一方、レンズ基材の屈折率を高くした場合、干渉縞の発生を防ぐために、ハードコート層についてもレンズ基材と同等の屈折率を持たせる必要がある。例えば、種々の金属酸化物をフィラーとしてハードコート層に含有させ、高屈折率化することが一般的である。
しかしながら、ハードコート層の屈折率が高くなると、必然的にレンズ表面における光線反射率も高くなり、プラスチックレンズとしての実用性に乏しくなる。
そこで、ハードコート層の表面に、有機ケイ素化合物と中空シリカからなる低屈折率層を設け反射防止層とする技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。さらに、反射防止効果をより向上させるため、基材表面に酸化チタンからなる高屈折率層を形成し、その上に低屈折率層を積層することによって、広い波長領域の光の反射を効果的に防止する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
そこで本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、十分な反射防止効果を有するとともに、反射防止層にクラックの生じない光学物品およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明の光学物品によれば、ハードコート層の屈折率自体を高くすることができなくても、酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体からなる高屈折率層を別途、ハードコート層の上に形成するので、さらにその上に形成される低屈折率層との屈折率差を大きくすることができ、反射防止効果を高めることが可能となる。
そして、高屈折率層が酸化チタンと少なくとも部分的に化学結合して有機高分子複合体となった構造を有するため、高屈折率層自体が柔軟性に富む。それ故、例えば、高屈折率層形成時に高温で焼成され、プラスチック基材が熱で膨張しても高屈折率層にクラックが生じにくい。
この発明によれば、前記高屈折率層における有機高分子化合物複合体が、チタン化合物と、該チタン化合物と反応しうる有機化合物とから形成されるので、高屈折率を容易に発現できるとともに、柔軟性に富む高屈折率層の形成が容易である。特に、チタン化合物がチタンアルコキシドであると、加水分解により容易に酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体を得ることができる。
また、前記チタンアルコキシドが、チタンテトラアルコキシドであると、加水分解により容易に3次元構造となりやすく有機高分子化合物複合体をさらに容易に得ることができるので好ましい。
この発明によれば、ポリアルキレングリコールやポリビニルピロリドンあるいはポリビニルアルコールのような反応性の有機化合物を用いるので、アルコキシチタン等のチタン化合物と容易に反応して酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体とすることができる。そして、ポリアルキレングリコールやポリビニルピロリドンあるいはポリビニルアルコールを含んだ有機高分子化合物複合体は柔軟性に非常に優れており、クラックが極めて生じにくい高屈折率層を提供する。
また、前記ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコールであることが好ましい。
(A)下記式(1)で示される有機ケイ素化合物。
R1R2 nSiX1 3−n (1)
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
(B)シリカ系微粒子
また、本発明では、前記(B)成分が、内部空洞を有するシリカ系微粒子であることが好ましい。
この発明によれば、シリカ系微粒子は、内部空洞を有するので、シリカよりも屈折率の低い気体、溶媒を包含することができる。これにより、内部空洞を有するシリカ系微粒子は、内部空洞を有しないシリカ系微粒子よりも屈折率が低くなり、低屈折率層の屈折率がより低くなる。そして、低屈折率層の屈折率を低くすることで、それより下層との屈折率の差が大きくなり、反射防止機能をより向上させることができる。
本実施形態の光学物品は、眼鏡用のプラスチックレンズであって、プラスチックレンズ基材(以下、単に「レンズ基材」ともいう)と、レンズ基材の上にハードコート層が形成され、前記ハードコート層の上に反射防止層が形成されている。また。この反射防止層は、ハードコート層側より、酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体からなる高屈折率層と、酸化ケイ素を含有する低屈折率層とを含んで構成されている。
以下、本実施形態の光学物品について詳細に説明する。
レンズ基材としては、プラスチック樹脂であれば特に限定されないが、眼鏡レンズの薄型化の観点より、レンズ基材の屈折率が1.60以上であることが好ましい。また、レンズの強度や耐熱性等の品質面を考慮すると、チオウレタン系プラスチックや、チオエポキシ系プラスチックが、本発明に対しては好ましい。
−3,6,9トリチアウンデカンなどが挙げられる。
チオウレタン系プラスチックを重合する際の、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の混合割合は、イソシアネート基とチオール基の官能基の割合がNCO/SH(モル比)=0.5〜3.0、特に0.5〜1.5の範囲が好ましい。
上述のチオウレタン系プラスチックを用いたレンズ基材としては、セイコーエプソン(株)製「セイコースーパールーシャス(SLU、屈折率 1.60)」やセイコーエプソン(株)製「セイコースーパーソブリン(SSV、屈折率 1.67)」などがある。
−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン等が挙げられる。
ハードコート層は、金属酸化物微粒子を含むコーティング組成物から形成される。金属酸化物微粒子としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化スズ(SnO2)あるいは、酸化ジルコニウム(ZnO2)等である。これらは単体で用いてもよく、あるいは複合微粒子として用いてもよい。
また、ハードコート層における金属酸化物微粒子は、有機ケイ素化合物などを原料とする樹脂バインダー中に分散されることが好ましい。例えば、金属酸化物微粒子と有機ケイ素化合物とを含んだコーティング組成物を、前記したレンズ基材の上に塗布することでハードコート層が形成される。有機ケイ素化合物としては、たとえば前記した式(1)で示される化合物を好適に用いることができる。
反射防止層は、ハードコート層上に形成される薄層である。本実施形態における反射防止層は、ハードコート層側より、酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体からなる高屈折率層と、酸化ケイ素を含有する有機高分子化合物複合体からなる低屈折率層との2層から構成される。以下、これら高屈折率層と低屈折率層について説明する。
高屈折率層は、酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体からなる薄層である。以下、この薄層を酸化チタン薄層ともいう。
本実施形態における酸化チタン薄層は、湿式法により形成される。具体的には、チタンアルコキシドを含水アルコール溶媒中で加水分解させ、縮合重合させてゾルを得るゾル化工程と、そのゾルに特定の有機化合物を混合して混合ゾルを得る混合工程と、混合ゾルを薄層状に形成する薄層化工程と、そして該ゾル薄層を加熱焼成する焼成工程により形成される。
ゾル化工程では、チタンアルコキシド(アルコキシチタン)として、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン(チタンn−ブトキシド)、テトライソブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン、あるいはその誘導体が好適に用いられる。また、アルコール溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどの低級脂肪族アルコール溶媒が使用可能である。
混合工程では、チタンアルコキシドの加水分解と縮合重合により得られたゾルに対して特定の有機化合物が混合される。具体的には、前記したゾル化工程で生成した酸化チタンゾルに対して、縮合重合の進展が充分でない状態で、特定の有機化合物を混合して、酸化ケイ素を含有する有機高分子化合物複合体ゾルを生成させる。
このような有機化合物としては、例えば、ポリアルキレングリコールやポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールが挙げられる。またポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール(PEG)やポリプロピレングリコール(PPG)が挙げられるが、PEGが好ましい。
また、前記した有機化合物として、分子量は好ましくは100〜100000であり、より好ましくは200〜50000であり、さらに好ましくは300〜10000であり、最も好ましくは300〜5000である。
前記した混合工程で得られた組成物は、基材上に薄層状に形成される。ゾル薄層の形成は、例えば、ゾルを基材上に、スピンコートなどの方法で均一に塗布するか、あるいはゾル中に基材を浸漬した後、引き上げるディップコート法などの公知の方法を利用して行なうことができる。なお、用いる基材は、酸素ガス存在下のプラズマ処理などの表面処理を施しておくことが望ましい。
前記の工程で得られたゾル薄層は次いで、加熱焼成されて、酸化チタン薄層とされる。加熱焼成は、通常、80〜150℃の範囲の温度で行なわれる。なお、先のゾル形成時に加える水の量を変えることにより、最終的な酸化チタン薄層(高屈折率層)の屈折率を調整できる。例えば、水の量を増やすと屈折率、粒子径が増加し架橋度が向上する。
ここで、高屈折率層の屈折率は、1.65〜2.1とすることが好ましい。屈折率が1.65以上であると、後述する低屈折率層との屈折率差を大きくすることができ反射防止効果を向上させることが可能となる。ただし、屈折率が2.1を超えると、反射防止効果がむしろ低下するおそれがある。
また、高屈折率層の厚みは、100〜300nmが好ましく、140〜220nmがより好ましい。高屈折率層の厚みが100nm未満であるか、または300nmを超えると反射防止効果に悪影響を与える。
低屈折率層は、前記した高屈折率層上に形成され、酸化ケイ素を含有する薄層である。この低屈折率層は、反射防止の観点より前記した高屈折率層との屈折率差が0.1以上あることが好ましい。
低屈折率層としては、耐熱性、耐薬品性、耐擦傷性、などの諸特性を考慮した場合に、シリコーン系樹脂を含む低屈折率層とすることが好ましく、この際に、表面硬度の向上や、屈折率の調整のため、微粒子状無機物などを添加することがより好ましい。この微粒子状無機物としては、コロイド状に分散したゾルなどが挙げられ、具体的には、シリカゾル、フッ化マグネシウムゾル、フッ化カルシウムゾルなどが挙げられる。
(A)下記式(1)で示される有機ケイ素化合物。
R1R2 nSiX1 3−n (1)
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
(B)シリカ系微粒子
ここで、上記(A)成分におけるR1は重合可能な反応基をもつ有機基であり、ここでの重合可能な反応基の具体例としては、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、シアノ基、アミノ基等が挙げられる。R2の具体例としては、メチル基、エチル基、ブチル基、ビニル基、フェニル基等が挙げられる。また、X1は加水分解可能な官能基であり、その具体例は、メトキシ基、エトキシ基、メトキシエトキシ基等のアルコキシ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲン基、アシルオキシ基等が挙げられる。上記(A)のシラン化合物の具体例としては、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトシキ)シラン、アリルトリアルコキシシラン、アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、メタクリルオキシプロピルジアルコキシメチルシラン、γ−グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン等が挙げられる。
この成分(A)は2種以上を混合して用いてもかまわない。また、加水分解を行ってから用いた方が、より有効である。
%の分率で有機溶剤中にコロイド状に分散した品を添加する。その後、必要に応じ、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加し、十分に撹拌した後にコーティング液として用いる。このとき、硬化後の固形分に対して、コーティング液の希釈する濃度は、好ましくは固形分濃度として1〜15質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。固形分濃度が15質量%を越えた場合には、ディッピング法で引き上げ速度を遅くしたり、スピンナー法で回転数を早くしたりしても、所定の層厚を得ることが困難であり、層厚が必要以上に厚くなってしまう。
そして、高屈折率層形成時に高温で焼成され、プラスチック基材やハードコート層が熱で膨張しても高屈折率層にはクラックが生じにくい。従って、眼鏡レンズの外観上も非常に優れる。
このような効果の発現機構は、必ずしも明確ではないが、以下のように考えられる。上述した高屈折率層は、酸化チタンと少なくとも部分的に化学結合して有機高分子複合体となった構造を有する。そのため、高屈折率層自体が非常に柔軟性に富み、緩衝作用を発揮しやすくなる。それ故、例えば、高屈折率層形成時に高温で焼成され、プラスチック基材やハードコート層が熱で膨張しても高屈折率層にはクラックが生じにくくなるものと推定される。
含フッ素シラン化合物は、有機溶剤に溶解し、所定濃度に調整した撥水処理液を用いて有機系反射防止層上に塗布する方法を採用することができる。塗布方法としては、ディッピング法、スピンコート法等を用いることができる。なお、撥水処理液を金属ペレットに充填した後、真空蒸着法などの乾式法を用いて防汚層を形成することも可能である。
防汚層の層厚は、特に限定されないが、0.001〜0.5μmが好ましい。より好ましくは0.001〜0.03μmである。防汚層の層厚が薄すぎると撥水撥油効果が乏しくなり、厚すぎると表面がべたつくので好ましくない。また、防汚層の厚さが0.03μmより厚くなると反射防止効果が低下するため好ましくない。
(1)プラスチックレンズ基材(チオウレタン系レンズ基材)の作成
ポリイソシアネート化合物としてm−キシリレンジイソシアネート103gと4,8or4,7or5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン(混合物)100g、内部離型剤0.15g、紫外線吸収剤として2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール3.0gを混合し、1時間ほど十分に攪拌した。この後、重合触媒としてジブチルスズジクロライド0.06gを添加し、撹拌して溶解させた後、5mmHgの真空下で60分脱気を行った。
その後、中心厚1.2mmのレンズ成形用のガラス型とテープよりなるモールド中に注入した。これを大気重合炉中で40℃から120℃まで10時間かけて昇温し、重合硬化させた。その後、モールドより離型し、120℃で2時間加熱してアニール処理を行い、
チオウレタン系プラスチックレンズ基材を得た。
このレンズ基材は、屈折率1.66、アッベ数32であり、TgをTMAペネトレーション法(荷重50gf(490mN)、先端0.5mmφ、昇温10℃/min)で測定したところ、101℃であった。
また、上述のレンズ基材に対して、セイコースーパーソブリン(セイコーエプソン(株)製)用ハードコート加工(セイコーエプソン(株)製、1層タイプ、屈折率約1.66、層厚約2μm)を行い、ハードコート層付きレンズ基材を得た。
(2.1)高屈折率層の形成
<酸化チタン−PEGゾルの調製>
チタンn−ブトキシドの濃度が0.69mol/L(後述する2液混合後の濃度、他の実施例・比較例も同様)になるように溶媒(n−ブタノール)6.27gに混合して撹拌した。並行して、触媒のヒドラジン−塩酸塩0.88mmolと加水分解用の蒸留水を溶媒(n−ブタノール)24.36gに混合して、蒸留水の濃度が1.46mol/L(後述する2液混合後の濃度、他の実施例・比較例も同様)になるようにした。次に、前記した2種の混合溶液を混ぜ合わせて、常温(25℃)で2時間撹拌し、さらに1時間氷冷して混合物ゾルを得た。
この混合物ゾルに対して、数平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を混合し、30分間攪拌して酸化チタン−PEGゾル(コーティング組成物)とした。
ここで、実施例1〜4では、PEGの添加量を各々3.5、4.0、4.5、5.0vol%とし、比較例1では、PEGを添加しなかった。また、参考例では、高屈折率層自体を形成しなかった。
次に、スピンコーターを用いて、前記したこの酸化チタン−PEGゾルを、(1)で得られたチオウレタン系レンズ基材(ハードコート層)の上に塗布した。次いで、塗布後のレンズ基材を125℃で2時間焼成して、PEGが分散した酸化チタン薄層(高屈折率層:有機高分子化合物複合体)を得た。
用いた各試薬の量や濃度等について表1に示す。併せて、高屈折率層の層厚および屈折率も表1に示す。
<コーティング組成物の調製>
プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGME)18.8g、γ−グリシドキシトリメトキシシラン8.1gを混合した後、0.1規定塩酸水溶液2.2gを撹拌しながら滴下し、5時間撹拌した。この液にイソプロパノール分散中空シリカゾル(固形分濃度20wt%)20.7gを加えて十分に混合した後、硬化触媒としてAl(C5H7O2)3を0.04g、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー製 L7604)を0.015g添加して撹拌、溶解することにより、固形分濃度が20質量%のコーティング原液を得た。このコーティング液を希釈するために、300質量ppm濃度のシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー製 L7604)入りPGME溶液を準備し、コーティング原液を35.3g、希釈用界面活性剤入りPGME溶液114.7gを混合して十分に撹拌し、固形分濃度が約4.7質量%の低屈折率層用のコーティング組成物を調製した。
次に、スピンコーターを用いて、上述のコーティング組成物を、(2.1)で得られたレンズ基材(高屈折率層)の上に塗布した。次いで、塗布後のレンズ基材を125℃で90分間焼成して、低屈折率層付きのプラスチックレンズを得た。低屈折率層の層厚は90nmであり、低屈折率層の屈折率は、1.44であった。
高屈折率層の形成時に、酸化チタン−PEGゾルの調製を以下のようにして行った以外は、実施例1と同様である。
チタンn−ブトキシドの濃度が0.60mol/Lになるように溶媒(n−ブタノール)2.089gに混合して撹拌した。並行して、触媒のヒドラジン−塩酸塩1.05mmolと加水分解用の蒸留水を溶媒(n−ブタノール)4.06gに混合して、蒸留水の濃度が1.27mol/Lになるようにした。次に、前記した2種の混合溶液を混ぜ合わせて、常温(25℃)で2時間撹拌し、さらに1時間氷冷して混合物ゾルを得た。
この混合物ゾルに対して、数平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を添加し、30分間攪拌して酸化チタン−PEGゾル(コーティング組成物)とした。
ここで、実施例5〜7では、PEGの添加量を各々2.5、3.0、5.0vol%とし、比較例2では、PEGを添加しなかった。
用いた各試薬の量や濃度等について表2に示す。併せて、高屈折率層の層厚および屈折率も表2に示す。
高屈折率層の形成時に、酸化チタン−PEGゾルの調製を以下のようにして行った以外は、実施例1と同様である。
チタンn−ブトキシドの濃度が0.54mol/Lになるように溶媒(n−ブタノール)16.08gに混合して撹拌した。平行して、触媒のヒドラジン−塩酸塩0.80mmolと加水分解用の蒸留水を溶媒(n−ブタノール)22.33gに混合して、蒸留水の濃度が1.15mol/Lになるようにした。次に、前記した2種の混合溶液を混ぜ合わせて、常温(25℃)で2時間撹拌し、さらに1時間氷冷して混合物ゾルを得た。
この混合物ゾルに対して、数平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を添加し、30分間攪拌して酸化チタン−PEGゾル(コーティング組成物)とした。
ここで、実施例8〜10では、PEGの添加量を各々2.0、2.5、3.0vol%とし、比較例2では、PEGを添加しなかった。
用いた各試薬の量や濃度等について表3に示す。併せて、高屈折率層の層厚および屈折率も表3に示す。
高屈折率層の形成時に、酸化チタン−PEGゾルの調製を以下のようにして行った以外は、実施例1と同様である。
チタンn−ブトキシドの濃度が0.50mol/Lになるように溶媒(n−ブタノール)7.52gに混合して撹拌した。平行して、触媒のヒドラジン−塩酸塩0.29mmolと加水分解用の蒸留水を溶媒(n−ブタノール)8.12gに混合して、蒸留水の濃度が1.05mol/Lになるようにした。次に、前記した2種の混合溶液を混ぜ合わせて、常温(25℃)で2時間撹拌し、さらに1時間氷冷して混合物ゾルを得た。
この混合物ゾルに対して、数平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG)を添加し、30分間攪拌して酸化チタン−PEGゾル(コーティング組成物)とした。
ここで、実施例11〜17では、PEGの添加量を各々1.5、2.0、2.5、3.0、5.0、15.0、30.0vol%とし、比較例4では、PEGを添加しなかった。
用いた各試薬の量や濃度等について表4に示す。併せて、高屈折率層の層厚および屈折率も表4に示す。
得られた各プラスチックレンズについて、下記の各方法により評価を行った。評価項目は、視感反射率およびクラック発生の有無である。結果を表1〜4に示す。
(a)視感反射率:
可視領域全域における入射光束強度に対する反射光束強度の比率であり、視感度の重み付けがなされたものである。反射率の測定には、反射率分光膜厚計「大塚電子株式会社製FE-3000」を用いた。
(b)クラック:
蛍光灯からの光をプラスチックレンズを通して目視で観察し、レンズ表面におけるクラック発生の有無を判断した。参考までに、実施例1および比較例1における各レンズの光学顕微鏡写真をそれぞれ図1および図2に示す。
2)蒸留水と触媒を混合する際に用いるn−ブタノールの量。
表1〜4より、実施例1〜17では、高屈折率層が酸化チタンとPEGとからなる高分子複合体により形成されているので、レンズにはクラックの発生が認められない。しかも視感反射率は、参考例のレンズ(高屈折率層なし)よりも優れる。一方、比較例1〜4は、ハードコート層の上に高屈折率層が形成されているものの、高屈折率層形成時にPEGが配合されておらず、いずれもクラックの発生が認められ、実用上問題がある。
ここで、クラックの発生機構については必ずしも明確ではないが、高屈折率層形成時に行う焼成工程でレンズ基材やハードコート層が熱膨張を生じ、一方、酸化チタン薄層が熱収縮を起こすために発生するものと推定される。それに対して、各実施例では、酸化チタン薄層中にPEGが存在して、しかも酸化チタンと化学的に結合しているので、焼成工程における熱収縮の際に、酸化チタン−PEG複合体が緩衝作用を発揮してクラックの発生を抑制しているものと考えられる。
Claims (10)
- プラスチック基材の上にハードコート層が形成され、前記ハードコート層の上に反射防止層が形成された光学物品であって、
前記反射防止層は、ハードコート層側より、酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体からなる高屈折率層と、酸化ケイ素を含有する低屈折率層とを含んで構成される
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項1に記載の光学物品において、
前記高屈折率層における有機高分子化合物複合体が、チタン化合物と、該チタン化合物と反応しうる有機化合物とから形成される
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項2に記載の光学物品において、
前記チタン化合物がチタンアルコキシドである
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項3に記載の光学物品において、
前記チタンアルコキシドが、チタンテトラアルコキシドである
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項2〜請求項4のいずれかに記載の光学物品において、
前記有機化合物がポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルアルコールのうち少なくともいずれかである
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項5に記載の光学物品において、
前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項1〜請求項6のいずれかに記載の光学物品において、
前記低屈折率層が、下記の(A)および(B)成分から形成される
ことを特徴とする光学物品。
(A)下記式(1)で示される有機ケイ素化合物
R1R2 nSiX1 3−n (1)
(式中、R1は重合可能な反応基を有する有機基であり、R2は炭素数1〜6の炭化水素基であり、X1は加水分解基であり、nは0または1である。)
(B)シリカ系微粒子 - 請求項7に記載の光学物品において、
前記(B)成分が、内部空洞を有するシリカ系微粒子である
ことを特徴とする光学物品。 - 請求項1〜請求項8のいずれかに記載の光学物品がプラスチックレンズであることを特徴とする光学物品。
- プラスチック基材の上にハードコート層を形成するハードコート層形成工程と、前記ハードコート層の上に反射防止層を形成する反射防止層形成工程とを含む光学物品の製造方法であって、
前記反射防止層形成工程は、
チタン化合物と、該チタン化合物と反応しうる有機化合物とから、酸化チタンを含有する有機高分子化合物複合体からなる高屈折率層を湿式法により形成する高屈折率層形成工程と、
前記高屈折率層の上に、酸化ケイ素を含有する有機高分子化合物複合体からなる低屈折率層を形成する低屈折率層形成工程と、を含む
ことを特徴とする光学物品の製造方法。
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