JP2009236066A - 内燃機関 - Google Patents

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Abstract

【課題】 セミ沿面放電型接地電極の寿命低下を回避すると共に耐折損性等を確保しつつ、火花放電ギャップの位置を燃焼室内壁面に近づけるられる内燃機関を提供すること。
【解決手段】 内燃機関200は、内機関本体210とスパークプラグ100とを備える。この内燃機関200は、燃焼室内壁面231からスパークプラグ100の主体金具110の金具先端面110scまでの距離A(mm)を、A≧1.0としている。また、セミ沿面放電型接地電極140の接地電極引込部140hにおける所定の第1ズレ量B(mm)を、B≦0.2としている。その一方で、セミ沿面放電型接地電極140の接地電極突出部140tにおける所定の第2ズレ量C(mm)を、C>0.2としている。
【選択図】 図2

Description

本発明は、中心電極及び接地電極を有するスパークプラグを、燃焼室内壁面に開口するプラグ取付孔に取り付けた内燃機関に関する。
内燃機関を構成するスパークプラグのうち、中心電極の先端面に対向するように接地電極の延伸方向の先端部側面を配置した、いわゆる「平行電極型接地電極」と呼称される最も一般的な形態の接地電極を有するスパークプラグでは、接地電極(平行電極型接地電極)の軸線方向(プラグ軸方向)の長さが十分に長い。このため、その製造時に主体金具の金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際、溶接面やその近傍に掛かる曲げ応力は小さい。これは、接地電極が十分に長いため、屈曲させる際の曲げ応力が、溶接面やその近傍に伝わるまでの間に十分に緩和されるからと考えられる。
これに対し、くすぶり汚損等に効果を発揮するスパークプラグとして、いわゆる「セミ沿面放電型接地電極」と呼称される接地電極を有するスパークプラグや、「セミ沿面放電型接地電極」と他の形態の接地電極とを有するハイブリッドタイプのスパークプラグも知られている。セミ沿面放電型接地電極は、主として、中心電極との間の火花放電の一部が気中放電、他が絶縁体の絶縁体先端面に沿った沿面放電となる、いわゆる「セミ沿面放電」が生じるように、主体金具の金具先端面に接合した棒状の接地電極を屈曲させて形成している。このため、セミ沿面放電型接地電極は、平行電極型接地電極と比較すると、軸線方向長さが短くなりがちである。接地電極の軸線方向長さが短くなると、その製造時に主体金具の金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際、溶接面やその近傍に掛かる曲げ応力が大きくなる。このため、セミ沿面放電型接地電極の場合には、特に、接地電極と主体金具との溶接部分の強度が低下して、使用時等に接地電極に折損等の不具合が生じるおそれがあった。
しかしながら、一般的には、セミ沿面放電型接地電極でも、火花放電ギャップを燃焼室の中心へ向けて突き出して形成するほど着火性が優れるため、その軸線方向長さも十分に確保されていた。従って、その製造時に主体金具の金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際に前述の不具合が生じるおそれも少なかった実情がある。
またその一方で、特許文献1の図3等に開示されているように、セミ沿面放電型接地電極に屈曲加工を施さないことで、前述の不具合を回避し得るスパークプラグも提案されている。
特開2006−85997号公報
近年の内燃機関では、燃費改善と出力向上を両立させるため、筒内噴射エンジンの開発が盛んに行われており、くすぶり汚損対策として、セミ沿面タイプやハイブリッドタイプのスパークプラグの利用が増加している。こうした中、燃焼室内の燃焼噴霧領域やスワール及びタンブル流は、各内燃機関毎に非常に細かく制御されており、スパークプラグの最適発火位置についても、燃焼室の中心へ向けて突き出せば着火性が向上するという一般的な考え方から、逆に、発火位置を燃焼室内壁面に近づける方が、着火性が優れる場合も出てきた。発火位置を燃焼室内壁面に近づけると、接地電極の軸線方向長さがそれだけ短くなる。このため、特にセミ沿面放電型接地電極の場合には、軸線方向長さが短くなるため、製造時に主体金具の金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際、溶接部分の強度が低下しやすくなり、使用時等に接地電極に折損等の不具合が生じるおそれがある。
一方、特許文献1で開示された形態のセミ沿面放電型接地電極は、その製造過程で屈曲加工を必要としないものの、火花放電を発生する箇所が、電極の先端面ではなく、電極の角部(エッジ部)となることから、耐久性に問題がある。即ち、電極の角部は、電極の先端面を含む部分に比して体積が小さい。このため、火花放電により同じ体積だけ電極が消耗すると考えると、電極の角部で火花放電が生じる特許文献1のセミ沿面放電型接地電極の方が、電極の先端面で火花放電が生じるセミ沿面放電型接地電極よりも、火花放電ギャップが増大する。従って、特許文献1のセミ沿面放電型接地電極は、電極の先端面で火花放電が生じるセミ沿面放電型接地電極よりも、寿命が短い。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、セミ沿面放電型接地電極の寿命が低下するのを回避すると共に耐折損性及び耐剥離性を確保しつつ、火花放電ギャップの位置を燃焼室内壁面に近づけることにも対応した内燃機関を提供することを目的とする。
その解決手段は、軸線を有し、自身の軸線方向先端に位置して軸線と直交する平面をなす金具先端面を有する筒状の主体金具と、前記主体金具の径方向内側に挿通した筒状の絶縁体と、前記絶縁体の径方向内側に挿通してなり、前記絶縁体の軸線方向先端に位置する絶縁体先端面よりも軸線方向先端側に突出する中心電極突出部を有する中心電極と、前記主体金具の前記金具先端面から延び、自身の延伸方向の先端面である接地電極先端面が、径方向内側を向いて、前記中心電極突出部の外周面と火花放電ギャップを隔てて離間してなり、接地電極先端面と前記外周面との間に生じる火花放電の放電形式が、前記接地電極先端面から前記絶縁体先端面までの気中放電と、前記絶縁体先端面に沿った沿面放電とからなるセミ沿面放電を生じる一又は複数のセミ沿面放電型接地電極であって、前記金具先端面に溶接した後に径方向内側に向けて屈曲させてなるセミ沿面放電型接地電極と、を備えるスパークプラグを、燃焼室内壁面に開口するプラグ取付孔内に取り付けてなる内燃機関であって、前記主体金具の前記金具先端面を、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向基端側に後退させて前記プラグ取付孔内に配置し、前記燃焼室内壁面から前記金具先端面までの軸線方向の距離A(mm)を、A≧1.0としてなり、前記金具先端面に沿う平面状の第1仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第1仮想断面の中心を第1中心K1とし、前記第1仮想面から軸線方向先端側に1.0mm離れた位置で、前記第1仮想面と平行な平面状の第2仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第2仮想断面の中心を第2中心K2とし、前記燃焼室内壁面に沿って前記プラグ取付孔内まで延ばした第3仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第3仮想断面の中心を第3中心K3とし、前記第3仮想面から軸線方向先端側に1.0mm離れた位置で、前記第3仮想面と平行な第4仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第4仮想断面の中心を第4中心K4としたとき、前記第1中心K1から前記第2中心K2までの、前記軸線に直交する方向についての第1ズレ量B(mm)を、B≦0.2としてなり、前記第3中心K3から前記第4中心K4までの径方向内側への第2ズレ量C(mm)を、C>0.2としてなる内燃機関である。
本発明の内燃機関では、スパークプラグの接地電極として、接地電極先端面が、径方向内側を向いて、中心電極突出部の外周面と火花放電ギャップを隔てて離間した形態をなし、火花放電の放電形式が、接地電極先端面から絶縁体先端面までの気中放電と、絶縁体先端面に沿った沿面放電とからなるセミ沿面放電を生じるセミ沿面放電型接地電極を有する。このようなセミ沿面放電型接地電極は、接地電極先端面が径方向内側を向いているため、火花放電は、従来技術で示した特許文献1の接地電極のように電極角部で生じるのではなく、この接地電極先端面を起点として生じる。このため、火花放電が接地電極角部に集中して生じることがないので、接地電極の寿命が低下することを回避できる。
更に、この内燃機関では、主体金具の金具先端面を燃焼室内壁面よりも後退させてプラグ取付孔内に配置し、その後退させた軸線方向の距離A(mm)を、A≧1.0としている。このため、主体金具が燃焼ガスから受ける熱量を大幅に低減でき、耐プレイグニション性能を大幅に向上させることができる。
また、主体金具の金具先端面を燃焼室内壁面よりも後退させた上で、プラグ取付孔内に配置されるセミ沿面放電型接地電極の部位(以下、この部位を接地電極引込部とも言う。)について、上記第1ズレ量B(mm)を、B≦0.2としているので、接地電極引込部のうち少なくとも金具先端面に近い部分は、直棒状またはそれに近い小さな曲げ量を有する形状となる。これにより、製造時に主体金具の金具先端面に溶接したセミ沿面放電型接地電極を所定形状に屈曲させる際に、この接地電極引込部で曲げ加工時に生じ得る応力の伝達を緩和できているので、溶接面やその近傍に掛けられる曲げ応力が少なくなっている。従って、この溶接面付近の残留応力が小さく、セミ沿面放電型接地電極と主体金具との溶接部分の強度を十分に確保できているので、使用時等にセミ沿面放電型接地電極に折損等の不具合が発生することを防止できる。
その一方で、セミ沿面放電型接地電極のうち、燃焼室内壁面よりも軸線方向先端側の燃焼室内に配置される部位(以下、この部位を接地電極突出部とも言う。)では、上記第2ズレ量C(mm)を、C>0.2としている。つまり、接地電極突出部を燃焼室内壁面近傍から径方向内側に大きく屈曲させている。従って、接地電極突出部の軸線方向長さを短くして、火花放電ギャップの位置を燃焼室内壁面に近づけることができる。
このように本発明の内燃機関では、セミ沿面放電型接地電極の寿命が低下するのを回避すると共に耐折損性及び耐剥離性を確保しつつ、火花放電ギャップの位置を燃焼室内壁面に近づけることにも対応できる。
なお、「中心電極」は、上記の要件を満たすものであればよく、一体的に形成したものでもよいし、例えば、基材である中心電極基材に柱状の中心電極チップを溶接して形成したものでもよい。また、「セミ沿面放電型接地電極」は、上記の要件を満たすものであればよく、一体的に形成したものでもよいし、例えば、基材である接地電極基材に柱状の接地電極チップを溶接して形成したものでもよい。なお、「セミ沿面放電型接地電極」が複数ある場合には、少なくともいずれかのセミ沿面放電型接地電極に対して本発明を適用すればよい。少なくとも本発明の要件を満たすセミ沿面放電型接地電極については、上述の作用効果を得ることができるからである。
また、他の解決手段は、軸線を有し、自身の軸線方向先端に位置して軸線と直交する平面をなす金具先端面を有する筒状の主体金具と、前記主体金具の径方向内側に挿通した筒状の絶縁体と、前記絶縁体の径方向内側に挿通してなり、前記絶縁体の軸線方向先端に位置する絶縁体先端面よりも軸線方向先端側に突出する中心電極突出部を有する中心電極と、前記主体金具の前記金具先端面から延び、自身の延伸方向の先端面である接地電極先端面が、径方向内側を向いて、前記中心電極突出部の外周面と火花放電ギャップを隔てて離間してなり、接地電極先端面と前記外周面との間に生じる火花放電の放電形式が、前記接地電極先端面から前記絶縁体先端面までの気中放電と、前記絶縁体先端面に沿った沿面放電とからなるセミ沿面放電を生じる一又は複数のセミ沿面放電型接地電極であって、前記金具先端面に溶接した後に径方向内側に向けて屈曲させてなるセミ沿面放電型接地電極と、を備えるスパークプラグを、燃焼室内壁面に開口するプラグ取付孔内に取り付けてなる内燃機関であって、前記主体金具の前記金具先端面を、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向基端側に後退させて前記プラグ取付孔内に配置し、前記燃焼室内壁面から前記金具先端面までの軸線方向の距離A(mm)を、A≧1.0としてなり、前記セミ沿面放電型接地電極のうち、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向基端側の前記プラグ取付孔内に位置する部位を接地電極引込部とし、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向先端側の燃焼室内に位置する部位を接地電極突出部としたとき、前記接地電極引込部を、軸線方向先端側に向かって延びる直棒状としてなり、前記接地電極突出部を、径方向内側に屈曲する形態としてなる内燃機関である。
本発明の内燃機関では、スパークプラグの接地電極として、接地電極先端面が、径方向内側を向いて、中心電極突出部の外周面と火花放電ギャップを隔てて離間した形態をなし、火花放電の放電形式が、接地電極先端面から絶縁体先端面までの気中放電と、絶縁体先端面に沿った沿面放電とからなるセミ沿面放電を生じるセミ沿面放電型接地電極を有する。このようなセミ沿面放電型接地電極は、接地電極先端面が径方向内側を向いているため、火花放電は、従来技術で示した特許文献1の接地電極のように電極角部で生じるのではなく、この接地電極先端面を起点として生じる。このため、火花放電が接地電極角部に集中して生じることがないので、接地電極の寿命が低下することを回避できる。
更に、この内燃機関では、主体金具の金具先端面を燃焼室内壁面よりも後退させてプラグ取付孔内に配置し、その後退させた軸線方向の距離A(mm)を、A≧1.0としている。このため、主体金具が燃焼ガスから受ける熱量を大幅に低減でき、耐プレイグニション性能を大幅に向上させることができる。
また、主体金具の金具先端面を燃焼室内壁面よりも後退させた上で、プラグ取付孔内に配置されるセミ沿面放電型接地電極の部位(以下、この部位を接地電極引込部とも言う。)について、軸線方向先端側に向かって延びる直棒状としている。このため、製造時に主体金具の金具先端面に溶接したセミ沿面放電型接地電極を所定形状に屈曲させる際に、この接地電極引込部で曲げ加工時に生じ得る応力の伝達を緩和できているので、溶接面やその近傍に掛けられる曲げ応力が少なくなっている。従って、この溶接面付近の残留応力が小さく、セミ沿面放電型接地電極と主体金具との溶接部分の強度を十分に確保できているので、使用時等にセミ沿面放電型接地電極に折損等の不具合が発生することを防止できる。
その一方で、セミ沿面放電型接地電極のうち、燃焼室内壁面よりも軸線方向先端側の燃焼室内に配置される部位(以下、この部位を接地電極突出部とも言う。)では、径方向内側に屈曲する形態としている。つまり、接地電極突出部を燃焼室内壁面近傍から径方向内側に大きく屈曲させている。従って、接地電極突出部の軸線方向長さを短くして、火花放電ギャップの位置を更に燃焼室内壁面に近づけることができる。
このように本発明の内燃機関では、セミ沿面放電型接地電極の寿命が低下するのを回避すると共に耐折損性及び耐剥離性を確保しつつ、火花放電ギャップの位置を燃焼室内壁面に近づけることにも対応することができる。
更に、上記のいずれかに記載の内燃機関であって、前記中心電極の前記中心電極突出部は、基材である中心電極基材の軸線方向先端に溶融部を介して柱状の中心電極チップが溶接されてなり、前記主体金具の前記金具先端面から延び、自身の延伸方向の先端面である接地電極先端面が、径方向内側を向いて、前記中心電極チップの外周面と火花放電ギャップを隔てて離間してなり、前記接地電極先端面と前記外周面との間に生じる火花放電の放電形式が、径方向の気中放電である一又は複数の径方向放電型接地電極をも備える内燃機関とするのが好ましい。
火花放電の放電形式が、沿面放電を含まない、径方向の気中放電である径方向放電型接地電極は、一般的に着火性に優れるため、前述のセミ沿面放電型接地電極に、径方向放電型接地電極を加えることで、着火性の優れた内燃機関とすることができる。
径方向放電型接地電極では、火花放電が中心電極チップの外周面に対してだけでなく、中心電極チップと中心電極基材との溶融部に対しても生じることがある。溶融部の仕事関数が中心電極チップの仕事関数よりも小さいためである。溶融部への火花放電の頻度が高いと、中心電極チップよりも溶融部の方が早く消耗し、溶融部が大きく抉り取られて、中心電極チップが剥離し脱落するおそれがある。そうすると、スパークプラグが本来の寿命を全うできないだけでなく、脱落した中心電極チップにより内燃機関が損傷するおそれすらある。
これを回避するためには、中心電極チップの軸線方向長さをある程度長くして、径方向放電型接地電極の接地電極先端面を溶融部から遠ざけることにより、溶融部への火花放電の頻度を減らすことが考えられる。しかしながら、単に中心電極チップを長くしただけでは、中心電極チップが燃焼室の中心側に突出し過ぎてしまうため、中心電極の耐熱性やエンジン設計の観点から好ましくない。
そこで、中心電極チップの軸線方向長さをある程度長くする一方で、絶縁体の軸線方向長さを短くすることが考えられる。このようにすれば、中心電極チップが燃焼室の中心側に突出し過ぎるのを防止できるので、中心電極の耐熱性やエンジン設計の問題を回避できる。しかしながら、絶縁体の軸線方向長さを短くすると、それに応じてセミ沿面放電型接地電極の軸線方向長さも短くせざるを得ない。そうすると、従来技術で述べたように、製造時に主体金具の金具先端面に溶接したセミ沿面放電型接地電極を所定形状に屈曲させる際、溶接面やその近傍に掛かる曲げ応力が大きくなり、溶接部分の強度が低下する問題が生じる。
そこで、前述の発明を採用することにより、製造時に主体金具の金具先端面に溶接したセミ沿面放電型接地電極を所定形状に屈曲させる際に、前述の不具合が生じることを防止できる。このように、上記構成の内燃機関では、高い着火性を有すると共に、くすぶり汚損にも強いスパークプラグを実現しつつ、セミ沿面放電型接地電極の寿命が低下するのを回避すると共に耐折損性及び耐剥離性を確保することができる。
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1に係る内燃機関200を構成するスパークプラグ100を示す。また、図2に、本実施形態1に係る内燃機関200のうち、スパークプラグ100の先端部付近を示す。また、図3に、スパークプラグ100の接地電極(セミ沿面放電型接地電極)140及び中心電極130の一部を示す。
本実施形態1の内燃機関200は、内燃機関本体210と、これに取り付けたスパークプラグ100とを備える(図2参照)。
このうちスパークプラグ100は、図1に示すように、筒状の主体金具110と、筒状の絶縁体120と、棒状の中心電極130と、所定形状に屈曲させた4つの接地電極140,140,…(紙面裏側に位置する接地電極140は不図示。)とを有する。
主体金具110は、低炭素鋼からなり、軸線AX方向に延びる筒状をなす。この主体金具110は、径大なフランジ部110fと、これより軸線方向基端側AK(以下、単に基端側AKとも言う。図1中、上方。)に位置し、スパークプラグ100を内燃機関本体210に取り付ける際に工具を係合させる横断面六角形状の工具係合部110hを有する。また、主体金具110は、更にその基端側AKに、絶縁体120を主体金具110に加締め固定するための加締部110jを有する。
また、主体金具110は、フランジ部110fの軸線方向先端側AS(以下、単に先端側ASとも言う。図1中、下方。)に、フランジ部110fより細径で、外周にスパークプラグ100を内燃機関本体210にネジ止めするための取り付け用の雄ネジが形成されたネジ部110mを有する。また、主体金具110は、更に先端側ASに、主体金具110の先端に位置して軸線AXと直交する平面をなすリング状の金具先端面110scを含む金具先端部110sを有する。
絶縁体120は、アルミナ系セラミックからなり、軸線AX方向に延びる筒状をなす。この絶縁体120は、主体金具110の径方向内側に挿通してなり、先端側ASに位置する絶縁体突出部120sが、主体金具110の金具先端面110scよりも先端側ASに突出すると共に、基端側AKに位置する絶縁体基端部120kが、主体金具110の加締部110jよりも基端側AKに突出した状態で、主体金具110に保持されている。
また、この絶縁体120の先端側の径方向内側には、中心電極130が挿入されている。一方、絶縁体120の基端側の径方向内側には、高電圧を中心電極130に導くための端子金具150が挿入されている。
中心電極130は、Niを主成分とするNi合金から一体的に形成されている。この中心電極130は、絶縁体120の径方向内側に挿通してなり、先端側ASに位置する中心電極突出部130sが絶縁体120の絶縁体先端面120scよりも先端側ASに突出した状態で、絶縁体120に保持されている(図1の他、図2及び図3も参照)。中心電極突出部130sは、軸線AXと同軸で軸線AX方向に延びる円柱形状をなす。
本実施形態1の4つの接地電極140,140,…は、いずれも、その接地電極先端面140scと中心電極130の外周面130snとの間に生じる火花放電の放電形式が、接地電極先端面140scから絶縁体先端面120scまでの気中放電と、絶縁体先端面120scに沿った沿面放電とからなるセミ沿面放電を生じるセミ沿面放電型接地電極である。各接地電極140,140,…は、それぞれNiを主成分とするNi合金から一体的に形成されており、四角柱を径方向内側に向けて所定形状に屈曲させた形状を有する。具体的には、各々の接地電極基端部140k,140k,…が主体金具110の金具先端面110scに接合される一方、各々の接地電極先端部140s,140s,…が径方向内側に向けて所定形状に屈曲され、その接地電極先端面140sc,140sc,…が軸線AXと平行となって径方向内側を向いている。そして、各々の接地電極先端面140sc,140sc,…が、中心電極突出部130sの外周面130snと火花放電を生じさせる火花放電ギャップGを隔てて離間している。これら4つの接地電極140,140,…は、リング状をなす金具先端面110scに、その周方向に等間隔(90度毎の間隔)に配設されている。従って、2つの接地電極140,140が互いに対向すると共に、残り2つの接地電極140,140も互いに対向している。
次に、内燃機関本体210について説明する(図2参照)。内燃機関本体210は、内部に燃焼室NS(図2中、下方)を形成する燃焼室内壁面231を有するシリンダヘッド230を備える。このシリンダヘッド230は、燃焼室内壁面231に開口すると共に内燃機関200外部に繋がるプラグ取付孔240を有する。このプラグ取付孔240の燃焼室内壁面231近傍の内周面は、スパークプラグ100を取り付けるための雌ネジが形成されたネジ部241とされている。
このプラグ取付孔240内には、前述のスパークプラグ100が取り付けられている。具体的には、スパークプラグ100の先端側を燃焼室NS内に向けると共に、基端側を内燃機関200外部に向けた状態で、スパークプラグ100がプラグ取付孔240に挿入されている。そして、スパークプラグ100のネジ部110mがプラグ取付孔240のネジ部241に螺合して、スパークプラグ100がプラグ取付孔240に固定されている。
このようにスパークプラグ100を内燃機関本体210に取り付けた内燃機関200では、図2に示すように、主体金具110の金具先端面110scを、燃焼室内壁面231(プラグ取付孔240の開口端240c)よりも基端側AKに後退させたプラグ取付孔240内に配置している。具体的には、燃焼室内壁面231(燃焼室内壁面231の軸線AX方向の位置NM1)から、金具先端面110sc(金具先端面110scの軸線AX方向の位置CM1)までの軸線AX方向の距離A(mm)を、A≧1.0としている。本実施形態1では、この距離A(mm)を、A=2.0(mm)としている。
このように金具先端面110scを燃焼室内壁面231よりも後退させることにより、この金具先端面110scに接合された各々の接地電極140,140,…は、燃焼室内壁面231よりも基端側AKのプラグ取付孔240内に位置する接地電極引込部140h,140h,…と、燃焼室内壁面231よりも先端側ASの燃焼室NS内に位置する接地電極突出部140t,140t,…とを有することになる。
次に、この内燃機関200における接地電極140,140,…について更に詳細を説明する(図3参照)。
各接地電極140の接地電極引込部140hのうち、金具先端面110scに沿う平面状の第1仮想平面Z1によりこれを仮想的に切断した場合の(軸線AX方向の位置CM1で軸線AXに直交する方向に仮想的に切断した場合の)、この接地電極引込部140hの第1仮想横断面Y1の中心を第1中心K1とする。
また、この接地電極引込部140hのうち、第1仮想平面Z1(金具先端面110sc)から先端側ASに1.0mm離れた位置CM2で、第1仮想平面Z1と平行な平面上の第2仮想平面Z2により、軸線AXに直交する方向にこれを切断した場合の、この接地電極引込部140hの第2仮想横断面Y2の中心を第2中心K2とする。
そして、第1中心K1から第2中心K2までの、軸線AXに直交する方向についてのズレ量を第1ズレ量B(mm)とする。本実施形態1では、この軸線AXに直交する方向については、径方向にのみズレているので、径方向内側へのズレ量(図3中、右側へのズレ量)が第1ズレ量B(mm)に該当する。そして、この第1ズレ量B(mm)を、B≦0.2としている。具体的には、第1ズレ量B(mm)が、B=0.1(mm)となっており、接地電極引込部140hは、先端側ASに向かって延びる直棒状をなしている。
一方、各接地電極140の接地電極突出部140tのうち、燃焼室内壁面231に沿ってプラグ取付孔240内までの延ばした平面状の第3仮想平面Z3によりこれを仮想的に切断した場合の(軸線AX方向の位置NM1で軸線AXに直交する方向に仮想的に切断した場合の)、この接地電極突出部140tの第3仮想横断面Y3の中心を第3中心K3とする。
また、この接地電極突出部140tのうち、第3仮想平面Z3から先端側ASに1.0mm離れた位置NM2で、第3仮想平面Z3と平行な平面状の第4仮想平面Z4により、軸線AXに直交する方向にこれを切断した場合の、この接地電極突出部140tの第4仮想横断面Y4の中心を第4中心K4とする。
そして、第3中心K3から第4中心K4までの径方向内側へのズレ量(図3中、右側へのズレ量)を第2ズレ量C(mm)とする。本実施形態1では、この第2ズレ量C(mm)を、C>0.2としている。具体的には、第2ズレ量C(mm)が、C=0.4(mm)となっており、接地電極突出部140tは、燃焼室内壁面231近傍から径方向内側に大きく屈曲している。
以上で説明したように、この内燃機関200は、スパークプラグ100の接地電極として、接地電極先端面140scが、径方向内側を向いて、中心電極突出部130sの外周面130snと火花放電ギャップGを隔てて離間した形態をなし、火花放電の一部が気中放電、残りが絶縁体先端面120scに沿った沿面放電であるセミ沿面放電を生じるセミ沿面放電型接地電極140,140,…を有する。このようなセミ沿面放電型接地電極140,140,…は、接地電極先端面140sc,140sc,…が径方向内側を向いているので、火花放電は、接地電極角部で生じるのではなく、この接地電極先端面140sc,140sc,…を起点として生じる。このため、火花放電が接地電極角部に集中して生じることがないので、セミ沿面放電型接地電極140,140,…の寿命が低下することを回避できる。
更に、この内燃機関200では、主体金具110の金具先端面110scを燃焼室内壁面231よりも基端側AKに後退させて、この後退させた軸線AX方向の距離A(mm)を、A≧1.0としている。これにより、主体金具110が燃焼ガスから受ける熱量を大幅に低減でき、耐プレイグニション性能を大幅に向上させることができる。
また、主体金具110の金具先端面110scを基端側AKに後退させた上で、プラグ取付孔240内に配置される接地電極140のうちの接地電極引込部140hについて、前述の第1ズレ量B(mm)が、B≦0.2となっている。そして、接地電極引込部140hが、先端側ASに向かって延びる直棒状となっている。このため、製造時に主体金具110の金具先端面110scに溶接した棒状の接地電極140を所定形状に屈曲させる際に、溶接面149やその近傍に掛けられる曲げ応力が少なくなっている。従って、この溶接面149付近の残留応力が小さく、接地電極140と主体金具110との溶接部分の強度を十分に確保できているので、使用時等に接地電極140に折損等の不具合が発生することを防止できる。
またその一方で、接地電極140のうち、燃焼室内壁面231よりも突出して燃焼室NS内に配置される接地電極突出部140tについては、前述の径方向内側への第2ズレ量C(mm)が、C>0.2となっている。つまり、接地電極突出部140tが、燃焼室内壁面231近傍から径方向内側に大きく屈曲している。従って、接地電極突出部140tの軸線AX方向長さが短く、火花放電ギャップGの位置が燃焼室内壁面231に近づいている。
このように本実施形態1の内燃機関200は、セミ沿面放電型接地電極140,140,…の寿命が低下するのを回避すると共に、その耐折損性及び耐剥離性を確保しつつ、火花放電ギャップGの位置を燃焼室内壁面231に近づけることにも対応できる。
なお、この内燃機関200は、内燃機関本体210とスパークプラグ100を別途製造した後、内燃機関本体210のプラグ取付孔240にスパークプラグ100を取り付けることにより製造できる。
このうちスパークプラグ100は、次の方法により製造できる。即ち、中心電極130を絶縁体120に組み付けると共に、端子金具150等も絶縁体120に組み付け、ガラスシールを行う。
次に、主体金具110を用意し、この主体金具110の金具先端面110scに棒状の各接地電極140,140,…(屈曲加工がされていない状態の接地電極140,140,…)を抵抗溶接する。なお、この溶接はレーザ溶接でもよい。その後、これらの接地電極140,140,…を接合した主体金具110に、中心電極130等を組み付けた絶縁体120を組み付け、加締め等を行う。
次に、主体金具110に接合された各接地電極140,140,…を径方向内側に屈曲させて所定形状とし、中心電極130との間に火花放電ギャップGを形成する。その際、各接地電極140,140,…は、軸線AX方向に十分な長さを有するので、溶接面149,149,…やその近傍に掛かる曲げ応力を少なくできる。従って、各接地電極140,140,…と主体金具110との溶接部分の強度を十分に確保できる。
その後は、このスパークプラグ100を、別途用意した内燃機関本体210に取り付ければ、内燃機関200が完成する。
(実施形態2)
次いで、第2の実施形態について説明する。本実施形態2の内燃機関400では、中心電極330の形態が上記実施形態1の中心電極130の形態と異なる。また、接地電極140,140,340を全部で3つ設けてあり、このうち互いに対向する2つの接地電極140,140は、上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140,140と同様であるが、残りの接地電極340の形態が、上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140の形態と異なる。それ以外は、上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図4に、本実施形態2に係る内燃機関400のうち、スパークプラグ300の先端部付近を示す。
この内燃機関400を構成するスパークプラグ300の中心電極330は、先端側AS(図4中、下方)に位置する中心電極突出部330sが絶縁体120の絶縁体先端面120scよりも先端側ASに突出した状態で、絶縁体120に内挿され保持されている。この中心電極330は、基材である棒状の中心電極基材331の先端に、これよりも細径で円柱状をなす中心電極チップ333を同軸にレーザ溶接して形成したものである。中心電極基材331と中心電極チップ333との間には、これらが互いに溶融して固化した溶融部332が形成されている。このうち中心電極基材331は、Niを主成分とするNi合金からなる。一方、中心電極チップ333は、Ptを70重量%以上含むPt合金からなる。
接地電極140,140,340のうち、互いに対向する2つの接地電極140,140は、前述したように上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140,140と同様であり、中心電極突出部330sの外周面330snと火花放電ギャップGを隔てて離間している。
一方、残りの接地電極340は、いわゆる平行電極タイプの接地電極であり、Niを主成分とするNi合金からなり、四角柱を所定形状に屈曲させた形状を有する。具体的には、その接地電極基端部340kが主体金具110の金具先端面110scに接合される一方、接地電極先端部340sが他の接地電極140よりも更に先端側ASまで延び、中心電極突出部330sを超えて、径方向内側に向けて所定形状に屈曲されている。そして、この接地電極先端部340sのうち、基端側AKを向く基端側側面340sd(図4中、上側の側面)が、中心電極突出部330sの円状の先端面330ssと対向して火花放電を生じさせる火花放電ギャップJを形成している。
このようなスパークプラグ300を有する内燃機関400も、上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140,140,…と同様な形態のセミ沿面放電型接地電極140,140を有する。従って、少なくともこれらのセミ沿面放電型接地電極140,140については、上記実施形態1の内燃機関200と同様に、セミ沿面放電型接地電極140,140の寿命が低下するのを回避すると共に、その耐折損性及び耐剥離性を確保しつつ、火花放電ギャップGの位置を燃焼室内壁面231に近づけることにも対応できる。また、その他、上記実施形態1と同様な部分は、上記実施形態1と同様な作用・効果を奏する。
(実施形態3)
次いで、第3の実施形態について説明する。本実施形態3の内燃機関600では、中心電極530の形態が上記実施形態1の中心電極130の形態と異なる。また、接地電極140,140,540を全部で3つ設けてあり、このうち互いに対向する2つの接地電極140,140は、上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140,140と同様であるが、残りの接地電極540の形態が、上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140の形態と異なる。それ以外は、上記実施形態1と同様であるので、上記実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。図5に、本実施形態3に係る内燃機関600のうち、スパークプラグ500の先端部付近を示す。
この内燃機関600を構成するスパークプラグ500の中心電極530は、先端側AS(図5中、下方)に位置する中心電極突出部530sが絶縁体120の絶縁体先端面120scよりも先端側ASに突出した状態で、絶縁体120に内挿され保持されている。この中心電極530は、基材である棒状の中心電極基材531の先端に、これよりも細径で円柱状をなす中心電極チップ533を同軸にレーザ溶接して形成したものである。中心電極基材531と中心電極チップ533との間には、これらが互いに溶融して固化した溶融部532が形成されている。このうち中心電極基材531は、Niを主成分とするNi合金からなる。一方、中心電極チップ533は、Ptを70重量%以上含むPt合金からなる。
接地電極140,140,540のうち、互いに対向する2つの接地電極140,140は、前述したように上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140,140と同様であり、中心電極突出部530sの外周面530snと火花放電ギャップGを隔てて離間している。
一方、残りの接地電極540は、火花放電として、沿面放電を含まずに、径方向の気中放電を生じる径方向放電型接地電極である。この接地電極540は、その接地電極基端部540kが主体金具110の金具先端面110scに接合されて金具先端面110scから延び、自身の延伸方向の先端面である接地電極先端面540scが、軸線AXと平行となって径方向内側を向いている。そして、この接地電極先端面540scが、中心電極突出部530sの外周面530sn(具体的には中心電極チップ533の外周面533n)と火花放電を生じさせる火花放電ギャップLを隔てて離間している。
この接地電極540は、基材である接地電極基材541の先端部541sの基端側側面541sd(図5中、上方の側面)に、これよりも細い四角柱をなす接地電極チップ543を溶接して形成したものである。接地電極基材541は、Niを主成分とするNi合金からなり、四角柱を径方向内側に向けて所定形状に屈曲させた形状を有する。一方、接地電極チップ543は、Ptを70重量%以上含むPt合金からなる。
このように本実施形態3では、径方向の気中放電を生じる径方向放電型接地電極540を設けているので、セミ沿面放電型接地電極140,140のみを有する場合よりも、着火性に優れる。
径方向放電型接地電極540では、火花放電が中心電極チップ533の外周面533nに対してだけでなく、中心電極チップ533と中心電極基材531との間の溶融部532に対しても生じることがある。溶融部532の仕事関数が中心電極チップ533の仕事関数よりも小さいためである。
溶融部532への火花放電の頻度が高いと、中心電極チップ533よりも溶融部532の方が早く消耗し、溶融部532が大きく抉り取られて、中心電極チップ533が剥離し脱落するおそれがある。そうすると、スパークプラグ500の本来の寿命を全うできないだけでなく、脱落した中心電極チップ533により内燃機関600が損傷するおそれすらある。
これを回避するためには、中心電極チップ533の軸線AX方向長さをある程度長くして、径方向放電型接地電極540の接地電極先端面540scを溶融部532から遠ざけることにより、溶融部532への火花放電の頻度を減らすことが考えられる。しかしながら、単に中心電極チップ533を長くしただけでは、中心電極チップ533が燃焼室NSの中心側に突出し過ぎてしまうため、中心電極530の耐熱性やエンジン設計の観点から好ましくない。
そこで、中心電極チップ533の軸線AX方向長さをある程度長くする一方で、絶縁体120の軸線AX方向長さを短くすることが考えられる。このようにすれば、中心電極チップ533が燃焼室NSの中心側に突出し過ぎるのを防止できるので、中心電極530の耐熱性やエンジン設計の問題を回避できる。しかしながら、絶縁体120の軸線AX方向長さを短くすると、それに応じてセミ沿面放電型接地電極140,140の軸線AX方向長さも短くせざるを得ない。そうすると、従来技術で述べたように、製造時に主体金具110の金具先端面110scに溶接したセミ沿面放電型接地電極140,140を所定形状に屈曲させる際、溶接面付近に掛かる曲げ応力が大きくなり、この溶接部分の強度が低下する問題が生じる。
これに対し、本実施形態3では、上記実施形態1のセミ沿面放電型接地電極140,140,…と同様な形態のセミ沿面放電型接地電極140,140を有する。従って、少なくともこれらのセミ沿面放電型接地電極140,140については、上記実施形態1と同様に、セミ沿面放電型接地電極140,140の寿命が低下するのを回避すると共に、その耐折損性及び耐剥離性を確保しつつ、火花放電ギャップGの位置を燃焼室内壁面231に近づけることにも対応できる。
このように、本実施形態3の内燃機関600では、高い着火性を有すると共に、くすぶり汚損にも強いスパークプラグ500を実現しつつ、セミ沿面放電型接地電極140,140の寿命が低下するのを回避すると共に、その耐折損性及び耐剥離性を確保することができる。また、その他、上記実施形態1または2と同様な部分は、上記実施形態1または2と同様な作用・効果を奏する。
次いで、本発明の効果を検証するために行った様々な試験の結果について説明する。
(試験1)
この試験1では、上記実施形態1で説明したスパークプラグ100において、各接地電極140,140,…の前記第2ズレ量C(mm)(図3参照)を、0mm〜0.5mmの範囲で様々に変更したスパークプラグを用意した。
なお、これらのスパークプラグは、内燃機関本体210に取り付けたときに、主体金具の金具先端面の軸線AX方向の位置CM1と、燃焼室内壁面の位置NM1とが一致する形態にした。即ち、前述の距離A(mm)をA=0(mm)に変更した(図2及び図3参照)。それ以外は、上記実施形態1で説明したスパークプラグ100と同じである。従って、接地電極に燃焼室内壁面よりも後退した接地電極引込部が存在しないので(接地電極全体が接地電極突出部であるので)、前記第2ズレ量C(mm)は、前記第1ズレ量B(mm)にも相当すると考えることができる。
これらのスパークプラグに対して、接地電極の衝撃試験を行い、接地電極の前記第1ズレ量B(mm)と、接地電極の衝撃に対する耐久時間との関係を調査した。この試験1は、JIS B8031(2006年)に準拠し、JIS型衝撃試験器を用いて行った。試験条件は、毎分400回の衝撃を与え、接地電極が破損して折れるまで最大10時間行った。これらの結果を図6のグラフに示す。
この結果によると、前記第1ズレ量Bが0.3mm以上のスパークプラグでは、衝撃試験開始から5時間以内に、主体金具との溶接面付近にて接地電極に折れが発生した。一方、前記第1ズレ量Bが0.2mm以下のスパークプラグでは、衝撃試験を10時間行っても、接地電極に折れ等の破損が認められなかった。
前記第1ズレ量Bが0.3mm以上のスパークプラグでは、接地電極が主体金具の金具先端面に近い部分から大きく屈曲しているので、製造時に金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際に、溶接面付近に掛けられる曲げ応力が大きくなっている。このため、接地電極と主体金具との溶接部分の強度が低下し、その結果、上記衝撃試験で早期に接地電極に折れが生じたと考えられる。
これに対し、前記第1ズレ量Bが0.2mm以下のスパークプラグでは、接地電極のうち金具先端面に近い部分が、直棒状またはそれに近い小さな曲げ量を有する形状である。このため、製造時に金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際に、溶接面付近に掛けられる曲げ応力が小さくなっている。従って、接地電極と主体金具との溶接部分の強度を十分に確保できているため、上記衝撃試験を長時間行っても、接地電極に折れ等の破損が生じなかったと考えられる。
このことから、接地電極の前記第1ズレ量B(mm)を、B≦0.2とすることにより、使用時等に接地電極に折損等の不具合が生じるのを効果的に防止できることが判る。
(試験2)
この試験2では、上記実施形態1で説明したスパークプラグ100において、前記距離A(mm)を、A=1.0(mm)とすると共に、各接地電極140,140,…の接地電極突出部140t,140tの前記第2ズレ量C(mm)と、各接地電極140,140,…の接地電極引込部140h,140hの前記第1ズレ量B(mm)とを様々に変更したスパークプラグを用意した。
そして、これらのスパークプラグに対して、上記試験1と同様の衝撃試験を行い、接地電極の前記第2ズレ量C(mm)と、接地電極の衝撃に対する耐久時間との関係を調査した。これらの結果を図7のグラフに示す。
この結果によると、前記第1ズレ量Bが0.3mm及び0.5mmのスパークプラグでは、前記第2ズレ量Cの値に関わらず、溶接面付近にて接地電極に折れが生じた。一方、前記第1ズレ量Bが0.2mmのスパークプラグでは、前記第2ズレ量Cの値に関わらず、衝撃試験を10時間行っても、接地電極に折れ等の破損が認められなかった。
前述したように、前記第1ズレ量Bが0.3mm以上のスパークプラグでは、接地電極が主体金具の金具先端面に近い部分から大きく屈曲しているので、製造時に金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際、溶接面付近に掛けられる曲げ応力が大きくなっている。このため、接地電極と主体金具との溶接部分の強度が低下し、その結果、上記衝撃試験で接地電極に折れが生じたと考えられる。
これに対し、前記第1ズレ量Bが0.2mmのスパークプラグでは、接地電極のうち金具先端面に近い部分が、直棒状に近い小さな曲げ量を有する形状である。このため、製造時に金具先端面に溶接した棒状の接地電極を所定形状に屈曲させる際に、溶接面付近に掛けられる曲げ応力が小さくなっている。従って、接地電極と主体金具との溶接部分の強度を十分に確保できているため、上記衝撃試験を長時間行っても、接地電極に折れ等の破損が生じなかったと考えられる。
このことから、接地電極の前記第1ズレ量B(mm)を、B≦0.2とすることにより、使用時等に接地電極に折損等の不具合が生じるのを効果的に防止できることが判る。また、接地電極の前記第2ズレ量C(mm)は、接地電極と主体金具との溶接部分の強度に依存しないので、前記第2ズレ量C(mm)を大きくしてもよいことが判る。つまり、接地電極突出部の範囲では、接地電極を燃焼室内壁面231近傍から大きく屈曲させて、火花放電ギャップGの位置を燃焼室内壁面に近づけることが可能であることが判る。
以上において、本発明を実施形態1〜3に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜3に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、上記実施形態1〜3では、セミ沿面放電型接地電極140を複数設けたものを例示したが、セミ沿面放電型接地電極140を単数とすることもできる。
また、上記実施形態1〜3では、セミ沿面放電型接地電極140として、一体的に形成したもの例示したが、例えば、基材である接地電極基材に柱状の接地電極チップを溶接して形成したものでもよい。
実施形態1に係る内燃機関を構成するスパークプラグの側面図である。 実施形態1に係る内燃機関のうち、スパークプラグの先端部付近を示す説明図である。 実施形態1に係る内燃機関を構成するスパークプラグの接地電極及び中心電極の一部を示す説明図である。 実施形態2に係る内燃機関のうち、スパークプラグの先端部付近を示す説明図である。 実施形態3に係る内燃機関のうち、スパークプラグの先端部付近を示す説明図である。 接地電極の第2ズレ量C(第1ズレ量B)と、接地電極の衝撃に対する耐久時間との関係を示したグラフである。 接地電極の第1ズレ量Bが異なるスパークプラグについて、接地電極の第2ズレ量Cと、接地電極の衝撃に対する耐久時間との関係を示したグラフである。
符号の説明
100,300,500 スパークプラグ
110 主体金具
110s 金具先端部
110sc 金具先端面
120 絶縁体
130,330,530 中心電極
130s,330s,530s 中心電極突出部
130sn,330sn,530sn 外周面
140,340,540 接地電極
140s,340s,540s 接地電極先端部
140sc,540sc 接地電極先端面
140t 接地電極突出部
140h 接地電極引込部
200,400,600 内燃機関
210 内燃機関本体
231 燃焼室内壁面
240 プラグ取付孔
240c 開口端
A 距離
B 第1ズレ量
C 第2ズレ量
G,J,L 火花放電ギャップ
AX 軸線
AS 先端側(軸線方向先端側)
AK 基端側(軸線方向基端側)
K1 第1中心
K2 第2中心
K3 第3中心
K4 第4中心
Y1 第1仮想横断面
Y2 第2仮想横断面
Y3 第3仮想横断面
Y4 第4仮想横断面
Z1 第1仮想平面
Z2 第2仮想平面
Z3 第3仮想平面
Z4 第4仮想平面
NS 燃焼室
CM1,CM2,NM1,NM2, 位置

Claims (2)

  1. 軸線を有し、自身の軸線方向先端に位置して軸線と直交する平面をなす金具先端面を有する筒状の主体金具と、
    前記主体金具の径方向内側に挿通した筒状の絶縁体と、
    前記絶縁体の径方向内側に挿通してなり、前記絶縁体の軸線方向先端に位置する絶縁体先端面よりも軸線方向先端側に突出する中心電極突出部を有する中心電極と、
    前記主体金具の前記金具先端面から延び、自身の延伸方向の先端面である接地電極先端面が、径方向内側を向いて、前記中心電極突出部の外周面と火花放電ギャップを隔てて離間してなり、接地電極先端面と前記外周面との間に生じる火花放電の放電形式が、前記接地電極先端面から前記絶縁体先端面までの気中放電と、前記絶縁体先端面に沿った沿面放電とからなるセミ沿面放電を生じる一又は複数のセミ沿面放電型接地電極であって、前記金具先端面に溶接した後に径方向内側に向けて屈曲させてなるセミ沿面放電型接地電極と、
    を備えるスパークプラグを、燃焼室内壁面に開口するプラグ取付孔内に取り付けてなる内燃機関であって、
    前記主体金具の前記金具先端面を、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向基端側に後退させて前記プラグ取付孔内に配置し、
    前記燃焼室内壁面から前記金具先端面までの軸線方向の距離A(mm)を、A≧1.0としてなり、
    前記金具先端面に沿う平面状の第1仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第1仮想断面の中心を第1中心K1とし、
    前記第1仮想面から軸線方向先端側に1.0mm離れた位置で、前記第1仮想面と平行な平面状の第2仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第2仮想断面の中心を第2中心K2とし、
    前記燃焼室内壁面に沿って前記プラグ取付孔内まで延ばした第3仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第3仮想断面の中心を第3中心K3とし、
    前記第3仮想面から軸線方向先端側に1.0mm離れた位置で、前記第3仮想面と平行な第4仮想面により前記セミ沿面放電型接地電極を仮想的に切断した場合の、このセミ沿面放電型接地電極の第4仮想断面の中心を第4中心K4としたとき、
    前記第1中心K1から前記第2中心K2までの、前記軸線に直交する方向についての第1ズレ量B(mm)を、B≦0.2としてなり、
    前記第3中心K3から前記第4中心K4までの径方向内側への第2ズレ量C(mm)を、C>0.2としてなる
    内燃機関。
  2. 軸線を有し、自身の軸線方向先端に位置して軸線と直交する平面をなす金具先端面を有する筒状の主体金具と、
    前記主体金具の径方向内側に挿通した筒状の絶縁体と、
    前記絶縁体の径方向内側に挿通してなり、前記絶縁体の軸線方向先端に位置する絶縁体先端面よりも軸線方向先端側に突出する中心電極突出部を有する中心電極と、
    前記主体金具の前記金具先端面から延び、自身の延伸方向の先端面である接地電極先端面が、径方向内側を向いて、前記中心電極突出部の外周面と火花放電ギャップを隔てて離間してなり、接地電極先端面と前記外周面との間に生じる火花放電の放電形式が、前記接地電極先端面から前記絶縁体先端面までの気中放電と、前記絶縁体先端面に沿った沿面放電とからなるセミ沿面放電を生じる一又は複数のセミ沿面放電型接地電極であって、前記金具先端面に溶接した後に径方向内側に向けて屈曲させてなるセミ沿面放電型接地電極と、
    を備えるスパークプラグを、燃焼室内壁面に開口するプラグ取付孔内に取り付けてなる内燃機関であって、
    前記主体金具の前記金具先端面を、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向基端側に後退させて前記プラグ取付孔内に配置し、
    前記燃焼室内壁面から前記金具先端面までの軸線方向の距離A(mm)を、A≧1.0としてなり、
    前記セミ沿面放電型接地電極のうち、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向基端側の前記プラグ取付孔内に位置する部位を接地電極引込部とし、前記燃焼室内壁面よりも軸線方向先端側の燃焼室内に位置する部位を接地電極突出部としたとき、
    前記接地電極引込部を、軸線方向先端側に向かって延びる直棒状としてなり、
    前記接地電極突出部を、径方向内側に屈曲する形態としてなる
    内燃機関。
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