JP2009235466A - フェライト系耐熱鋼の製造方法 - Google Patents

フェライト系耐熱鋼の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Ni基合金と比較して安価かつ対熱膨張性及び熱伝導性に優れたフェライト耐熱鋼の耐用温度(高温強度)を現在よりも高めることの可能な、フェライト系耐熱鋼の製造方法を提供する。
【解決手段】本製造方法における熱処理は、下記の工程を有する。
・加熱工程:Feを主成分とし、Crを含有する鋼材料を、AC3変態点以上の温度に加熱する。
・冷却工程:加熱工程で加熱した鋼材料を、パーライト変態が起こらない速度で、マルテンサイト変態開始温度以下で室温よりも高い所定温度範囲まで冷却する。
・焼き戻し工程:冷却工程で冷却した鋼材料を室温まで冷却せずに焼戻し処理を行なう。
【選択図】図1

Description

本発明は、例えば耐熱金属材料として用いられるフェライト系耐熱鋼の製造方法に関するものである。
ボイラやタービン、エンジン、化学反応器材、燃料電池部材などの各種高温器材で使用される耐熱材料としては、引張応力に対する信頼性の観点から金属材料以外はほとんど使われていない。また、耐熱金属材料は経済性の観点から鋼かNi基合金に限られている。その中でも、熱伝導性に優れかつ熱膨張率が低いという理由からフェライト系耐熱鋼に大きな期待が寄せられており、現在でもフェライト系耐熱鋼の性能向上に多大な努力がなされている。
歴史的に言えば、かなり長い間2.25Cr−1Mo鋼とステンレス鋼がボイラの最高温部を構成してきた。1990年代の初めに改良9Cr鋼が発明され、それまでに研究・実用化されてきたフェライト鋼に取って代わり、現在ではボイラの最高温部に改良9Cr鋼が使用されているといっても過言ではない。さらに、地球の温暖化対策の一環として、蒸気条件の高温高圧化を目指した高クロムフェライト鋼の研究が現在でもなされている。しかし、これらの材料の耐用温度は620℃強にとどまっているので、更なる蒸気条件の向上のために高価なNi基合金(例えばオーステナイトステンレス鋼)の検討も開始されている。
フェライト系耐熱鋼はNi基合金と比較して安価であり、耐熱膨張性や熱伝導性の面でも優れている。反面、フェライト系耐熱鋼は室温でbcc構造(体心立方格子構造)をとるため、室温でfcc構造(面心立方格子構造)をとるNi基合金と比較して一般に高温強度が小さいという課題がある。
そこで本発明は、Ni基合金と比較して安価かつ対熱膨張性及び熱伝導性に優れたフェライト耐熱鋼の耐用温度(高温強度)を現在よりも高めることの可能な、フェライト系耐熱鋼の製造方法を提供することを目的とする。
本発明のある態様は、フェライト系耐熱鋼の製造方法である。この製造方法は、
Feを主成分とし、Crを含有する鋼材料を、AC3変態点以上の温度に加熱する加熱工程と、
前記加熱工程で加熱した前記鋼材料を、パーライト変態が起こらない速度で、マルテンサイト変態開始温度以下で室温よりも高い所定温度範囲まで冷却する冷却工程と、
前記冷却工程で冷却した前記鋼材料を室温まで冷却せずに焼戻し処理を行なう焼き戻し工程とを有する。
ある態様の製造方法において、前記所定温度範囲をTとし、マルテンサイト変態開始温度をMsとしたとき、前記Tが 50℃≦T≦Ms−20℃ であるとよい。
ある態様の製造方法において、前記鋼材料が質量%で0<C≦0.5;0<Si≦2;0<Mn≦2;5≦Cr≦13;0<N≦0.1;0<Al≦0.05を含有するものであるとよい。
ある態様の製造方法において、前記鋼材料がMo、W又はMo+Wを質量%で0.2以上4以下含有するものであるとよい。
ある態様の製造方法において、前記鋼材料がV、Nb、Ta又はこれらの複合添加物を質量%で0.02以上0.6以下含有するものであるとよい。
ある態様の製造方法において、前記鋼材料がBを質量%で0.002以上0.02以下含有するものであるとよい。
ある態様の製造方法において、前記鋼材料がNi、Co、Cu又はこれらの複合添加物を質量%で0.05以上4以下含有するものであるとよい。
ある態様の製造方法において、この方法によって製造されるフェライト系耐熱鋼は、前記所定温度範囲で出来たマルテンサイトが焼戻された組織と、未変態のオーステナイトが焼戻し温度から冷却されるときに形成される組織とを含むものであるとよい。
なお、以上の構成要素の任意の組合せもまた、本発明の態様として有効である。
従来のフェライト鋼の製法では、焼き入れ・焼きならしと焼戻し・焼鈍を組み合わせた熱処理が行われてきた。本発明によれば、加熱工程で加熱した鋼材料をマルテンサイト変態開始温度以下で室温よりも高い所定温度範囲まで冷却した後、室温まで冷却せずに焼戻し処理を行なうという新たな熱処理によって、Ni基合金と比較して安価かつ対熱膨張性及び熱伝導性に優れたフェライト耐熱鋼の耐用温度(高温強度)を現在よりも高めることが可能となる。
以下、本発明の好適な実施の形態を詳述するが、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
(基本鋼の組成)
本実施の形態で最も基本となる鋼は、主成分のFeの他に、下記のものを含有する。なお、下記以外に製鋼上不可避の不純物元素も含有する。
・C(炭素):質量%で0<C≦0.5。炭素はマルテンサイト組織を作るために質量%で通常0.05以上0.2以下程度添加される。ただし、0.5質量%を超えると炭化物の多量析出により靭性が低下する。なお、炭素無添加の材料でもマルテンサイトに似た組織が形成されるので、変形例では炭素は0としてもよい。
・Si(ケイ素):質量%で0<Si≦2。ケイ素は耐食性の向上および脱酸剤として必要である。ただし、2質量%を超えると靭性を害する。
・Mn(マンガン):質量%で0<Mn≦2。マンガンは脱硫剤および脱酸剤として必要であるが、2質量%を超えると組織が不安定に成る。
・Cr(クロム):質量%で5≦Cr≦13。クロムは耐酸化性を確保するために5質量%以上の添加は必要であるが、13質量%を超えると、マルテンサイト組織を形成することが困難になる。
・N(窒素):質量%で0<N≦0.1。窒素は炭素と同じくマルテンサイトを安定化させるために必要な元素であるが、真空溶解や大気溶解では0.1質量%を超える添加は困難となり、経済性を損なう。
・Al(アルミニウム):質量%で0<Al≦0.05。アルミニウムは脱酸剤として添加することも出来るが、高温強度を害するので0.05%を上限とする。
(熱処理の説明)
図1は、本発明の実施の形態に係るフェライト系耐熱鋼の製造方法における熱処理の説明図である。本図において、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示している。本実施の形態の熱処理は下記の工程を有するものである。
・加熱工程:鋼材料をAC3変態点以上の温度に加熱する。なお、加熱後は所定時間(例えば30分〜2時間程度)だけその温度を保持する(均熱する)。
・冷却工程:加熱工程で加熱した鋼材料を、パーライト変態が起こらない速度で、マルテンサイト変態開始温度以下で室温よりも高い所定温度範囲まで冷却する。所定温度範囲については後述する。
・焼き戻し工程:冷却工程で冷却した鋼材料を室温まで冷却せずに焼戻し処理を行なう。すなわち、前記所定温度範囲からAC1変態点以下の所定温度まで加熱し、所定時間(例えば30分〜2時間程度)だけその温度を保持した後、室温まで冷却する。
従来の鋼の熱処理の基本は、一旦オーステナイト域に保持した後急冷、空冷によってマルテンサイト化する処理、すなわち、焼き入れまたは焼きならしを施した後、強度と靭性のバランスを採るために、焼戻しを行なうことである。本実施の形態でもこの基本的な考えを踏襲している。しかし、焼き入れ又は焼戻しはオーステナイト化した後室温近くまで冷却してマルテンサイト化することを基本としている。これに対し本実施の形態の熱処理は、オーステナイト化した後室温までは冷却せず、ある程度マルテンサイトが形成された時点(鋼種によっては一部ベイナイトが形成されることがある)でその温度(以下「マルテンサイト処理温度」ともいう)に保持し、その温度で形成されたマルテンサイトを軟化させるために、室温まで冷却することなく、直接昇温して、通常の焼戻し温度に保持して空冷を行い、優れた高温強度の確保を行なうものである。
マルテンサイト処理温度は、当然マルテンサイト変態開始温度(以下「Ms点」ともいう)以下であり、適量のマルテンサイトを確保するためにはMs点の下20℃が上限である。より好ましくは、マルテンサイト処理温度はMs点の下50℃を上限とする。なお、Ms点は便覧に記載されている場合もあるが、実測によって容易に求めることが出来る。また、マルテンサイト処理温度が十分低いと、ほとんどがマルテンサイト変態を起こし、通常の焼き入れ・焼きならしと変わらなくなるので、マルテンサイト化処理温度の下限は50℃とする。より好ましくは、マルテンサイト処理温度の下限は70℃とする。
マルテンサイト温度に至る冷却速度は、炉の構造、素材の大きさなどに依存するので特に定めないが、冷却速度が十分小さいとパーライト変態を起こすので、冷却速度はパーライト変態を起こさない速度以上とする。また、マルテンサイト温度に到達したあとの保持時間は、ミクロ組織の微細な変化などが起こると考えられるが、マルテンサイト変態の性格上、マルテンサイト温度に到達してから、直ちに昇温しても、その温度に保持しても、基本的なマルテンサイトの形成反応に差が出ることはないので、マルテンサイト処理温度の保持時間は特に定めない。ただし、好ましくはマルテンサイト処理温度の保持時間を5分以上とする。
鋼の製法における熱処理については歴史的に多くの研究がある。しかし、その多くは高温から冷却してマルテンサイト化するときに成品の温度が不均一になって曲がりや割れが発生する可能性があるので、これを防止する目的で、焼き入れ温度(室温から300℃程度)に達してから、しばらくその温度に保持するか、その温度から徐冷する方法がある。たとえば、引き上げ焼き入れ、マルテンパーなどがそれにあたる。特殊な例として、マルテンサイトではなく、ベイナイトを作る目的で、オーステンパーという処理もある。これらの処理はいずれも焼き入れ・焼きならし温度から降下するか、保持されることはあっても、降温の途中から昇温(室温まで降温せずに昇温)することは無い。また、フェライト鋼では恒温焼鈍といって、焼きならしと焼戻しを組み合わせた熱処理もあるが、これも降温の途中で昇温(室温まで降温せずに昇温)することは無く、かつ、この処理はフェライトパーライト組織の形成を促進するためのものであって、本実施の形態のようなマルテンサイトを対象にしたものではない。
本実施の形態の熱処理によって出来る組織はマルテンサイト処理温度で出来たマルテンサイト(一部ベイナイトを含む)が焼戻された組織(焼戻しマルテンサイト)と、未変態のオーステナイトが焼戻し温度から冷却されるときに形成される組織(潜伏マルテンサイトと呼ぶ)が混合した組織となる。しかし、潜伏マルテンサイトは焼き入れ・焼きならし温度から冷却中に形成されるマルテンサイトと違って、焼戻し温度で一部炭・窒化物を析出するので、過飽和の炭素をそれほど多く固溶せず、その量も限られているのでこの潜伏マルテンサイトのために材料が脆くなることは無い。また、高温から焼き入れ・焼きならしによって形成されたマルテンサイト組織のままでも十分高い強度が得られるが、高温で使用する場合、極めて短時間にマルテンサイト組織は回復軟化し、実用耐熱材料として適さないことは周知の事実である。すなわち、本実施の形態の組織は従来の熱処理によって得られる組織とはまったく別のものである。なお、組成と製造方法によってはデルタフェライトが若干含まれることがあるが、20質量%以下であれば高温強度の改善効果は失われない。
(添加物の説明)
上記の基本鋼の組成に加えて、下記の添加物を含有させてもよい。
・Mo(モリブデン)およびW(タングステン):通常MoおよびWは高温強度を高める目的で単独または組み合わせて質量%で0.2以上4以下添加される。これらの元素は多量に添加するとデルタフェライトを生成するが、デルタフェライトの量が20質量%を超えない範囲であれば、本実施の形態の熱処理の効果は消失しない。
・V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル):通常V、Nb、Taは炭素および窒素と化合して微細な析出物を形成し、高温強度を高めるので、これらの元素は単独または組み合わせて質量%で0.02以上0.6以下添加される。これらの元素は多量に添加するとデルタフェライトを生成するが、基本鋼にこれらの元素が含まれていても、デルタフェライトの量が20質量%を超えない範囲であれば、本実施の形態の熱処理の効果は消失しない。
・B(ホウ素):Bは0.002質量%以上添加しないと高温強度を高める効果は期待できず、また0.02%を超えて添加すると化合物を形成して靭性を害する。
・Ni(ニッケル)、Co(コバルト)およびCu(銅):通常Ni、CoおよびCuはオーステナイトを安定化させ、靭性を確保する目的のために、これらの元素は単独または組み合わせて質量%で0.05以上4以下添加される。
(クリープ試験)
ここでは、いくつかの鋼についてクリープ試験を行った結果について説明する。下記表1に、試験に用いた鋼(♯1〜♯8)の化学組成を示す。
Figure 2009235466
下記表2は、上記表1に示されたそれぞれの鋼の焼きならし温度、マルテンサイト処理温度、時間、HV(ビッカス硬さ)、650℃110MPaでクリープ試験を行ったときのクリープ速度(%/h)、および比クリープ速度(後述)を示す。
Figure 2009235466
表2において、クリープ速度は最小クリープ速度であるが、ほとんど変形せず最小クリープ速度に達していない場合は、1000hにおけるクリープ速度を示している(♯2,♯3,♯5のマルテンサイト処理温度200℃のもの)。焼戻し条件はすべて750℃2hである。なお、表2には各材料の強度を比較するために、通常の焼ならし・焼戻し処理を行なった材料(マルテンサイト処理温度25℃のもの)のクリープ速度を対象とする材料のクリープ速度で除した値(比クリープ速度)を示している。また、表2には目標とするステンレス鋼(♯7、♯8)のクリープ速度をあわせて示している。
♯1鋼は、上述の基本鋼である。室温から350℃までマルテンサイト処理温度を変化させても、焼戻した後はHV(ビッカス硬さ)は225〜245とあまり大きな変化は無い。しかし、クリープ速度には著しい差が認められる。特に、マルテンサイト処理温度が200℃の場合の効果は顕著である。マルテンサイト化温度が450℃の場合、硬さは大きいがクリープ強さの改善効果は無い。
♯2鋼は、上述の基本鋼にW、VおよびTaを添加した鋼である。マルテンサイト処理温度を変化させても硬さには大きな変化は認められない。200℃でマルテンサイト化処理を行なった場合、クリープ速度に著しい改善効果が認められる。
♯3鋼は、上述の基本鋼にMo、V、Nb、Nを添加した鋼であり、基本鋼に比べると強炭化物生成元素の添加によってクリープ速度の大幅な改善が認められる。マルテンサイト処理温度を100〜350℃まで変化させても硬さには大きな変化は認められないが、200℃のマルテンサイト化処理を行なうと著しいクリープ速度の改善効果が認められる。また、表2にはC鋼を焼きならしたままの硬さとクリープ速度を示した。マルテンサイト化温度が450℃の場合、硬さは大きいがクリープ強さの改善効果は無い。また、C鋼の硬さは焼きならしままでは極めて大きいが、クリープ速度は通常の焼きならし・焼戻し材より大きくなる(劣化する)。
♯4鋼は、上述の基本鋼にMo、W、V、Ni、Cu、Co、Nを添加したものであるが、200℃でマルテンサイト処理することによって、著しいクリープ速度の改善効果が確認できる。
♯5鋼は、基本鋼にMo、W、V、Nb、Co、N、Bを添加したものであるが、200℃でマルテンサイト処理することによって、著しいクリープ速度の改善効果が確認できる。
♯6鋼は、炭素を減じて意図的に15%のデルタフェライトを生成させたものであるが、200℃でマルテンサイト処理することによって、著しいクリープ速度の改善効果が確認でき、本実施の形態の効果は失われない。
♯7および♯8鋼は、オーステナイトステンレス鋼であり、標準の溶体化処理をしたままのクリープ速度を示した。これらと、♯1〜♯6鋼を200℃でマルテンサイト処理した材料のクリープ速度を比較すると、本実施の形態鋼のクリープ速度は、オーステナイト鋼なみであり、一部の鋼種、♯3、♯4、♯5鋼ではオーステナイト鋼より優れていることが分かる。
鋼のクリープ速度は組成、基本的な熱処理温度によって変化するので直接比較すると、説明が煩雑になるので、それぞれの鋼の改善効果を比較する目的で、前述した比クリープ速度を定義し、各鋼の比クリープ速度とマルテンサイト処理温度の関係を図2に示した。図示したとおり、本実施の形態で得られた熱処理によって、各鋼のクリープ速度は著しく改善されることがわかる。その効果は70℃から350℃の間で効果が顕著であり、とくに200℃の処理ではその効果が著しい。一方、50℃から380℃でも一定の改善効果があるといえる。なお、これらの鋼のマルテンサイト変態開始温度はおよそ400℃といわれている。
このように、本実施の形態のフェライト系耐熱鋼の製造方法によれば、従来と異なる新しい熱処理によって、フェライト系耐熱鋼の高温強度を飛躍的に改善されることが可能となる。これらの技術は、ボイラ、タービン、エンジン、化学反応器材、燃料電池部材などの各種高温器材およびそれにかかわる締結部材、鋳鍛鋼部品に適用される。
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各工程には請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。
本発明の実施の形態に係るフェライト系耐熱鋼の製造方法における熱処理の説明図である。 表1に示される各鋼の比クリープ速度とマルテンサイト処理温度の関係を示す説明図である。

Claims (8)

  1. Feを主成分とし、Crを含有する鋼材料を、AC3変態点以上の温度に加熱する加熱工程と、
    前記加熱工程で加熱した前記鋼材料を、パーライト変態が起こらない速度で、マルテンサイト変態開始温度以下で室温よりも高い所定温度範囲まで冷却する冷却工程と、
    前記冷却工程で冷却した前記鋼材料を室温まで冷却せずに焼戻し処理を行なう焼き戻し工程とを有する、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  2. 請求項1に記載の製造方法において、前記所定温度範囲をTとし、マルテンサイト変態開始温度をMsとしたとき、前記Tが 50℃≦T≦Ms−20℃ である、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法において、前記鋼材料が質量%で0<C≦0.5;0<Si≦2;0<Mn≦2;5≦Cr≦13;0<N≦0.1;0<Al≦0.05を含有するものである、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載の製造方法において、前記鋼材料がMo、W又はMo+Wを質量%で0.2以上4以下含有するものである、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の製造方法において、前記鋼材料がV、Nb、Ta又はこれらの複合添加物を質量%で0.02以上0.6以下含有するものである、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の製造方法において、前記鋼材料がBを質量%で0.002以上0.02以下含有するものである、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  7. 請求項1から6のいずれかに記載の製造方法において、前記鋼材料がNi、Co、Cu又はこれらの複合添加物を質量%で0.05以上4以下含有するものである、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の製造方法において、この方法によって製造されるフェライト系耐熱鋼は、前記所定温度範囲で出来たマルテンサイトが焼戻された組織と、未変態のオーステナイトが焼戻し温度から冷却されるときに形成される組織とを含むものである、フェライト系耐熱鋼の製造方法。
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