JP5463675B2 - 軸受鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、産業機械部品などに使用される軸受鋼に関し、特に熱処理が困難な大型部品に好適な転動疲労と耐摩耗性に優れた軸受鋼およびその製造方法に関する。
軸受部品は、例えばJIS G 4805に規定されているSUJ2やSUJ3などの鋼を用いて、冷間鍛造や熱間鍛造により所定の形状に成型した後、焼入焼もどし処理により硬質な焼もどしマルテンサイト組織として使用されるのが通例である。近年では風力発電機の普及にともない大型の軸受部品のニーズが高まっている。部品の大型化にともない、焼入時の熱処理歪みの問題が従来よりも顕著となり、焼入歪みの少ない軸受鋼およびその製造方法の開発が望まれていた。また、上記焼入時の熱処理歪みの問題を解決する一般的な手段として、マルテンサイトに次ぐ高強度組織であるベイナイトが利用されているが、軸受鋼に用いられる低温焼もどしマルテンサイト並の強度を得ることが困難であり、軸受部品としての利用は困難であった。
最近、従来のベイナイトと比較して極めて低温でベイナイトを生成させることにより従来のベイナイトでは得られなかった高強度の達成が可能となった(特許文献1)。この改良ベイナイト鋼は、炭素含有量が0.6〜1.1%である鋼を1150℃で24時間均質化した後、空冷し、さらに900〜1000℃の間の温度に加熱するステップを経て、190〜260℃の温度で1〜3週間高温変態させることで得られる少なくとも50%のベイナイト構造を持つ鋼である。ところが、この改良ベイナイト鋼は高強度を得ることに主眼が置かれているため、軸受鋼に要求される耐摩耗性に劣り、軸受部品として利用出来なかった。
特許第3751250号公報
本発明は、上記現状に鑑みて開発されたもので、大型部品への適用に好適な熱処理歪みの発生しないベイナイト組織を有する軸受鋼およびその製造方法を提案することを目的とする。ここで、本発明の軸受鋼を用いる軸受部品とは、ベアリング内外輪、軸受ボール、軸受コロおよびニードルなどの軸受を構成する部品である。
発明者らは、前述したような軸受部品に必要な転動疲労を達成し、かつ耐摩耗性にも優れ、熱処理歪みの発生しないベイナイト組織を有する軸受鋼を得ることを目的として種々の検討を行った結果、軸受鋼の組織を最適化することにより上記目的を達成しうることを見出し,本発明に至った。
本発明の要旨構成は次の通りである。
(1)質量%で
C:0.6%以上1.4%以下、
Si:0.8%以上2.0%以下、
Mn:0.5%以上3.5%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Al:0.005%以上0.050%以下、
Cr:0.1%以上2%以下および
O:0.0012%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を有し、
さらに、平均幅が60nm以下であって、体積分率が50%以上であるプレート状のフェライトおよび体積分率が3〜20%である球状セメンタイトを含有し、残部がフェライト間に層状に生成した残留オーステナイトで構成される組織を有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼。
)前記()に記載の軸受鋼において、さらに
Mo:1.0%以下、
Cu:1.0%以下および
Ni:1.0%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼。
)前記()または()に記載の軸受鋼において、さらに
Ti:0.2%以下、
Nb:0.2%以下および
V:0.25%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼。
)質量%で
C:0.6%以上1.4%以下、
Si:0.8%以上2.0%以下、
Mn:0.5%以上3.5%以下、
P:0.030%以下、
S:0.030%以下、
Al:0.005%以上0.050%以下、
Cr:0.1%以上2%以下および
O:0.0012%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分の鋼を、球状化焼なまし処理を施した後、800〜950℃の温度範囲に加熱した後、冷却速度V(℃/s)と下記(1)式によって得られる臨界冷却速度Vcr(℃/s)との関係が、V>Vcrとなるように恒温変態処理温度まで冷却を施し、その後、下記(2)式によって得られるマルテンサイト変態開始温度(Ms)に対して(Ms+10)〜250℃で1段もしくは複数段の恒温変態処理を20ksec以上行うことを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼の製造方法。

Vcr(℃/s)=0.32-0.54C%+0.018Si%+1.29Mn%+0.61Ni%+0.85Cr%+0.69Cu%+4.9Mo% ・・・(1)
Ms=561-474C%-33Mn%-17Cr%-17Ni%-21Mo% ・・・(2)
)前記()において、さらに
Mo:1.0%以下、
Cu:1.0%以下および
Ni:1.0%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼の製造方法。
)前記()または()において、さらに
Ti:0.2%以下、
Nb:0.2%以下および
V:0.25%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼の製造方法。
本発明によれば、転動疲労特性、耐摩耗性に優れたベイナイト組織を有する軸受部品を安定して得ることが可能である。
プレート状フェライトの平均幅とフェライト分率とがB10寿命に与える影響を示すグラフである。 耐摩耗性試験方法の説明図である。 球状セメンタイト分率が耐摩耗性に与える影響を示すグラフである。 加熱温度が球状セメンタイト分率に与える影響を示すグラフである。
以下、本発明を具体的に説明する。
マルテンサイト組織を形成するためには、オーステナイト域からフェライト、パーライトおよびベイナイトを生成しない冷却速度でマルテンサイト変態開始温度(Ms点)以下まで急冷することを要するが、大型部品の場合、部材を均一に冷却することが難しい。そのため、 Ms点以下となる時間が部位によって異なり、熱膨張に起因した熱処理歪みが発生する。また、マルテンサイト変態は大きな体積膨張がともなうため、部位ごとのMs点以下となる時間の時間差に起因した割れが発生しやすくなる問題がある。一方、ベイナイト組織はMs点以上の温度域で恒温変態処理によって得ることができるため、部材の温度が均一で部位ごとの温度差に起因した歪みに起因する割れは発生しない。そこで、マルテンサイト組織を大型部品で造り込む場合に発生する問題を解決する方法としてベイナイト組織に着目することにした。
ベイナイト変態では、Cの過飽和なフェライトが生成し、その後周囲のオーステナイトにCが拡散し、オーステナイトが安定化する。したがって、ベイナイト変態直後には、フェライトと残留オーステナイトの混合組織が得られる。フェライトを微細化させて軸受部品用の素材として十分な強度を得るためには、(1)恒温変態温度を低下させる (2)ベイナイト変態後の炭化物の生成を抑制して残留オーステナイトとフェライトの混合組織とすることが必要である。その理由は、残留オーステナイトからの炭化物生成を抑制することで、フェライトの粒成長を抑制し、高強度が維持できるからである。
上記の如き組織を形成させるためにはベイナイト変態後の炭化物の生成を抑制することが必要である。これを達成するためには、0.8%以上のSi添加が上記炭化物の抑制に有効であることがわかった。しかしながら、Siを2.0%以上添加すると後述する球状化焼なまし処理で炭化物の球状化が困難となるため、0.8%以上2.0%以下が好適な範囲であることが明らかとなった。
次に,軸受鋼としての条件を具備する組織形態について実験的に検討した結果を示す。表1に示す範囲の鋼および比較鋼であるSUJ2を100kg真空溶解炉にて溶製し、これを熱間鍛造にて30mmφの棒鋼とした。さらに、790℃で8時間保持した後、600℃まで10時間かけて冷却する球状化焼なまし処理を施した。この棒鋼の1/4直径部より12.5mmφ×22mmのラジアル型転動疲試験片に粗加工した。供試鋼は800〜1050℃に30分間加熱保持した後、170〜350℃で20ksec以上保持する恒温変態処理を行った。その後、室温に冷却し、仕上げ加工により12mmφ×22mmの試験片とした。比較鋼であるSUJ2鋼は、12.5mmφ×22mmのラジアル型転動疲労試験片に加工し、850℃,30分加熱保持した後、60℃の油焼入処理を行い、ひきつづき170℃,30分の焼もどし処理を行い,仕上げ加工を行った。
Figure 0005463675
転動寿命の評価は、ラジアル試験で評価した。ラジアル試験は、ヘルツ応力5884MPa,回転数46,000cpmで20本試験を行い、B10寿命を求めて評価した。供試鋼のフェライトプレート幅は透過型電子顕微鏡を用いて、3万倍の倍率で3視野の平均的な幅を測定した。また、フェライト分率はX線法により測定した。図1に結果を示す。図1より、平均幅が60nm以下であるプレート状のフェライトの体積分率が50%以上である場合には、組織が焼もどしマルテンサイトでないにもかかわらず、SUJ2と同等以上のB10寿命が得られることが明らかとなった。
次に、耐摩耗性について評価した。耐摩耗性の評価は西原式摩耗試験機を用いて行った。耐摩耗性試験に用いるサンプルは図2に示すように外径30mmのリング状試験片であり、図1でSUJ2と同等以上のB10寿命が得られたサンプルと同条件のものを作製し試験に供した。標準材として用いるSUJ2もラジアル試験片と同じ熱処理条件で作製した。耐摩耗性試験は、接触圧力1GPa,滑り率40%,回転速度650rpm,油潤滑環境下で10万回転後の摩耗量(試験片直径)を測定し、
(試験材の摩耗量−SUJ2の摩耗量)×100/(SUJ2の摩耗量)
が5%以下となる場合を○とし、5%を超える場合に×と判定した。
また、上記耐摩耗性試験に用いたサンプルの組織中の球状セメンタイト量を測定し、球状セメンタイト量と耐磨耗性の関係を調査した。組織中の球状セメンタイト量は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、2000倍の倍率で3視野観察し、3視野中のセメンタイト面積率を測定し、これを体積分率とした。なお、本発明において「球状化」とは、ラメラ構造を有するパーライトを、球状化セメンタイトとフェライトの混合組織に変化させる処理のことである。図3にセメンタイト分率が耐摩耗性に及ぼす影響を示す。図3から明らかであるように、セメンタイト分率が3〜20%であれば,耐摩耗性が良好(○)となる。また、図4に加熱温度と球状セメンタイト分率の関係を示すが、加熱温度が800〜950℃の範囲で最適なセメンタイト分率を得られることが確認できる。800℃未満では十分にオーステナイト化されず、また、950℃を超えると炭化物の未固溶炭化物量が3%未満となるため良好な耐摩耗性が得られない。したがって、球状化焼なまし後の好適な加熱温度範囲は800〜950℃の範囲であることが解る。なお、図1中の「○」のデータは、後述する最適な成分組成を満足する鋼のデータである。
次に、球状セメンタイト以外の組織が微細なプレート状フェライトと残留オーステナイトである組織を得るための条件について検討した。これらの組織を得るためには、前述したように冷却中のフェライトやパーライトの生成を抑制する必要があり、これを達成できる臨界冷却速度は、次式で表されるVcrに対して、V>Vcrとなる場合であることが明らかになった。
Vcr(℃/s)=0.32-0.54C%+0.018Si%+1.29Mn%
+0.61Ni%+0.85Cr%+0.69Cu%+4.9Mo%・・・(1)
上記(1)式は、冷却中のフェライト生成を抑制するための臨界冷却速度により導出された式である。
また、プレート幅60nm以下の微細フェライトをベイナイト変態によって得るためには恒温変態温度が、(Ms点+10)℃以上250℃以下の温度範囲であることも明らかになった。
次に、前記の組織とするために好適な成分組成について、詳しく説明する。
C:0.6%以上1.4%以下
CはBs点を低下させる効果があり、0.6%以上の含有が必要である。また、Cはベイナイト変態後にオーステナイトに農化し、オーステナイトを安定化させる効果があるが、1.4%を超えると組織が硬化しすぎるため、0.6〜1.4%の範囲とすることが好ましい。
Si:0.8%以上2.0%以下
Siは炭化物の生成を抑制し、残留オーステナイトを安定化させる働きがある。この硬化を得るためには0.8%以上の含有が必要であるが、過剰に添加すると脆弱となるため0.8%以上2.0%以下が好ましい。
Mn:0.5%以上3.5%以下
MnはB s点を低下させる効果がある。0.5%未満ではその効果が乏しく、3.5%を超えると脆弱となるため、0.5%以上3.5%以下の範囲とすることが好ましい。
P:0.030%以下
Pは不純物元素であり、0.030%を超えると転動寿命が低下するため、0.030%以下とすることが好ましい。
S:0.030%以下
Sは、不純物元素であり、0.030%を超えると転動寿命が低下するため、0.030%以下とすることが好ましい。
Al:0.005%以上0.050%以下
Alは、脱酸元素として必要な元素である。0.005%未満ではその効果に乏しく、0.050%を超えるとその効果は飽和するため0.005%以上0.050%以下の範囲とした。
Cr:0.1%以上2.0%以下
C rは、Mn同様にB s点を低下させる効果がある。0.1%未満ではその効果に乏しく、2.0%を超えると残留オーステナイトを不安定化させるため0.1%以上2.0%以下とすることが好ましい。
O:0.0012%以下
Oは、非金属介在物として転動寿命を低下させるため、0.0012%以下とすることが好ましい。
さらに、上記基本成分に加えて、以下の元素を添加することができる。
Mo:1.0%以下
Moは、Bs点を低下させる効果があり、好ましくは0.1%以上添加するが、1.0%を超えるとBs点が低下しすぎてベイナイト変態に長時間を要するため1.0%以下が好ましい。
Cu:1.0%以下
Cuは、固溶強化元素としてベイナイトを強化する働きがあり、好ましくは0.2%以上添加するが、1.0%を超えて添加すると熱間加工時に割れが発生するため、1.0%以下とすることが好ましい。
Ni:1.0%以下
Niは、Bs点を低下させる効果があり、好ましくは0.1%以上添加するが、1.0%を超えるとBs点が低下しすぎてベイナイト変態に長時間を要するため1.0%以下が好ましい。
Ti:0.2%以下
Tiは、酸化物や窒化物として加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する効果があり、また、C,Nと結合し析出強化元素としても作用する。この効果を得るためには0.005%以上、より好ましくは0.05%以上添加すると良い。しかしながら0.2%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.2%以下とすることが好ましい。
V:0.25%以下
Vは、鋼中でC,Nと結合し、析出強化元素として作用するため、好ましくは0.05%以上添加する。しかしながら、0.25%を超えて添加してもその効果は飽和するため0.25%以下とすることが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbは、鋼中でC,Nと結合し、析出強化元素として作用するため、好ましくは0.05%以上添加する。しかしながら、0.1%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.1%以下とすることが好ましい。
次に、50%以上の微細なフェライトと3〜20%の球状セメンタイトからなり、残部が主として残留オーステナイトである組織を得るための条件について検討した。この組織を得るためには一般的に行われている球状化焼なまし処理を行った後、前述したように800〜950℃の温度範囲で加熱する必要がある。すなわち、800℃未満ではオーステナイト化が不十分であり、950℃を超えると球状セメンタイトが固溶して3%未満となり、耐摩耗性が低下するためである。なお、該温度範囲における保持時間は通常行われる処理時間でよく、保持温度に昇温後、15分〜2時間以内であることが好ましい。オーステナイト化後の冷却では、フェライトやパーライトの生成を抑制するために、冷却速度Vが、(1)式で表される臨界冷却速度Vcrに対して、V>Vcrの範囲で冷却する必要がある。なお、上記冷却速度Vの上限値はおおよそ50℃/sである。
Vcr(℃/s)=0.32-0.54C%+0.018Si%+1.29Mn%
+0.61Ni%+0.85Cr%+0.69Cu%+4.9Mo%・・・(1)
冷却速度Vが、V>Vcrとなる条件で冷却後は、(2)式にて求められるマルテンサイト変態開始温度(Ms点)に対して、(Ms+10)〜250℃の温度範囲に保持して、この温度範囲にて変態が停止するまで1段もしくは複数段の恒温変態処理を行う必要がある。

Ms=561-474C%-33Mn%-17Cr%-17Ni%-21Mo%・・・(2)
恒温変態処理温度がMs点以下となると、マルテンサイトが生成し焼割れの問題が発生するため、特に大型部品に好適な軸受鋼を提供しようとする本発明においては、マルテンサイトの生成を回避し焼割れを防止することが重要となる。このためマルテンサイトが生成することがないように(Ms+10)℃を恒温変態処理温度の下限とする必要がある。また、恒温変態温度が250℃を超えると、フェライトプレートの平均幅が60nmを超えてしまうため、転動疲労寿命の向上効果が得られなくなる。よって,等温変態処理は(Ms+10)〜250℃の範囲で行う。また、恒温変態処理は20ksec(20×103 sec)以上行う。恒温変態処理時間が短いと、マルテンサイトが生成してしまう。なお、恒温変態処理を2段以上で行う場合には、合計の処理時間を20ksec以上とすればよい。
表2に示す成分組成を有する、100kg真空鋼塊を溶製し,1250℃で24時間、均質化処理を行った後、900℃以上の温度で熱間鍛造し、30mmφの丸棒に加工した。得られた棒鋼は、(AC1−10)℃に7時間保持した後、10℃/h rで500℃まで徐冷する球状化焼なまし処理を行った。球状化焼なまし処理した棒鋼の1/4直径部から12.5mmφ×22mmのラジアル型転動疲労試験片を粗加工し、表3に示す温度に30分加熱した後、表3に示す冷却速度で恒温変態処理温度まで冷却し、さらに表3に示す種々の温度、保持時間で恒温変態処理を行った。恒温変態処理が終了した供試鋼は、仕上げ加工により12mmφ×22mmの試験片に仕上げ、ラジアル型疲労試験に供した。一方、SUJ2は850℃で30分加熱保持した後、60℃の油で焼入処理を行ってから、170℃で30分の焼もどし処理を行った後、仕上げ加工を行いラジアル型転動疲労試験に供した。転動寿命の評価は、ラジアル試験によるB10寿命をSUJ2のB10寿命との比率で評価した。なお、ラジアル試験は、ヘルツ応力5884MPa,回転数46000cpmで20本試験を行ってB10寿命を求めた。
Figure 0005463675
さらに、耐摩耗性の評価は西原式摩耗試験機を用いて行った。耐摩耗性試験に用いるサンプルは図2に示すように外径30mmのリング状試験片であり、ラジアル型試験片と同様にして試験片を作製した。耐摩耗性試験は、接触圧力1GPa,滑り率40%,回転速度650rpm,油潤滑環境下で10万回転後の摩耗呈(試験片直径)を測定し、
(試験材の摩耗量−SUJ2の摩耗量)×100/(SUJ2の摩耗量)が5%以下となる場合を○とし、5%を超える場合を×として評価した。
評価結果を表3に併記する。
Figure 0005463675
表3の評価結果より明らかであるように、本実施例の試験片はB10寿命比,耐摩耗性ともに良好な結果が得られた。一方、比較例1の試験片は、好ましい組成を有するが、球状化焼なまし後の加熱温度が本発明範囲よりも高いため、球状セメンタイト分率が低くなり、耐摩耗性に劣る。比較例2の試験片は、好ましい組成を有するが、球状化焼なまし後の加熱温度が本発明範囲よりも低いため、フェライト分率が低くなり、B10寿命に劣る。
比較例3の試験片は、恒温変態処理時の保持時間が短いため、鋼組織にマルテンサイトが生成し、割れが生じた。比較例4の試験片は、恒温変態処理時の保持温度が高すぎるため、平均フェライト幅が大きくなり、B10寿命比が低い。比較例5の試験片は、オーステナイト化後の冷却速度Vが臨界冷却速度Vcrよりも小さいため、組織中にパーライトが生成しており、B10寿命比が低い。
比較例6の試験片は、C含有量が好ましい範囲より低く、また、恒温変態処理時の保持温度が高いため、球状セメンタイト分率が低く、耐摩耗性に劣る。また、C含有量が低いため、硬さも十分でなく、B10寿命比が低い。比較例7の試験片は、C含有量が好ましい範囲よりも高いため、フェライト分率が低くなり、B10寿命比が低い。
比較例8の試験片は、Si含有量が好ましい範囲よりも低く、P含有量が好ましい範囲よりも高いため、残留オーステナイトが生成しなくなり、B10寿命および耐摩耗性に劣る。比較例9の試験片は、Si含有量およびS含有量が好ましい範囲よりも高いため、球状セメンタイト分率が低くなり、耐摩耗性に劣る。
比較例10の試験片は、Mn含有量が好ましい範囲よりも低く、Al含有量が好ましい範囲よりも高い。そのため、平均フェライト幅が大きくなり、B10寿命および耐摩耗性に劣る。比較例11の試験片は、Mn含有量が好ましい範囲よりも高く、フェライト分率は低いため、B10寿命および耐摩耗性に劣る。
比較例12の試験片は、Cr含有量が好ましい範囲よりも低いので、平均フェライト幅が大きくなり、フェライト分率も低いため、B10寿命比が低く耐摩耗性にも劣る。比較例13の試験片は、Cr含有量が好ましい範囲よりも高いため、平均フェライト幅が大きくなり、B10寿命および耐摩耗性に劣る。比較例14の試験片は、O含有量が好ましい範囲よりも高く、また、恒温変態処理時の保持時間も高いため、平均フェライト幅が大きく、フェライト分率が低くなり、B10寿命および耐摩耗性に劣る。
本発明によると、転動疲労特性、耐摩耗性に優れたベイナイト組織を有する軸受部品を安定して製造することが可能となる。

Claims (6)

  1. 質量%で
    C:0.6%以上1.4%以下、
    Si:0.8%以上2.0%以下、
    Mn:0.5%以上3.5%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    Al:0.005%以上0.050%以下、
    Cr:0.1%以上2%以下および
    O:0.0012%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を有し、
    さらに、平均幅が60nm以下であって、体積分率が50%以上であるプレート状のフェライトおよび体積分率が3〜20%である球状セメンタイトを含有し、残部がフェライト間に層状に生成した残留オーステナイトで構成される組織を有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼。
  2. 請求項1に記載の軸受鋼において、さらに
    Mo:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下および
    Ni:1.0%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼。
  3. 請求項1または2に記載の軸受鋼において、さらに
    Ti:0.2%以下、
    Nb:0.2%以下および
    V:0.25%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼。
  4. 質量%で
    C:0.6%以上1.4%以下、
    Si:0.8%以上2.0%以下、
    Mn:0.5%以上3.5%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.030%以下、
    Al:0.005%以上0.050%以下、
    Cr:0.1%以上2%以下および
    O:0.0012%以下
    を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分の鋼を、球状化焼なまし処理を施した後、800〜950℃の温度範囲に加熱した後、冷却速度V(℃/s)と下記(1)式によって得られる臨界冷却速度Vcr(℃/s)との関係が、V>Vcrとなるように恒温変態処理温度まで冷却を施し、その後、下記(2)式によって得られるマルテンサイト変態温度(Ms)に対して(Ms+10)〜250℃で1段もしくは複数段の恒温変態処理を20ksec以上行うことを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼の製造方法

    Vcr=0.32−0.54C%+0.018Si%+1.29Mn%+0.61Ni%+0.85Cr%+0.69Cu%+4.9Mo%・・・(1)
    Ms(℃)=561−474C%−33Mn%−17Cr%−17Ni%−21Mo%・・・(2)
  5. 請求項4において、さらに、
    Mo:1.0%以下、
    Cu:1.0%以下および
    Ni:1.0%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼の製造方法。
  6. 請求項4または5において、さらに、
    Ti:0.2%以下、
    Nb:0.2%以下および
    V:0.25%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする転動疲労性および耐摩耗性に優れた軸受鋼の製造方法。
JP2009020989A 2009-01-30 2009-01-30 軸受鋼およびその製造方法 Active JP5463675B2 (ja)

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