JP2009234453A - サスペンション特性制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 輪荷重の分布変化に起因して発生する車体の運動状態量の変化を抑制することができるサスペンション特性制御装置を提供する。
【解決手段】 車体1と各車輪3との間に設けられたダンパ6の減衰力を制御することによってサスペンション特性を変化させる減衰力制御装置50において、路面の傾斜を検出する路面傾斜判定部56と、各車輪3の輪荷重Leを検出する輪荷重算出部63と、路面傾斜判定部56によって路面の傾斜が検出された場合、輪荷重算出部63の検出結果に基づいて車体1の振動が小さくなるようダンパ6の減衰力を制御する減衰力設定部52とを備えるように構成する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、サスペンション特性を変化させるサスペンション特性制御装置に係り、詳しくは、走行路の傾斜に起因する荷重分布の変化に応じて車体振動の低減を実現するサスペンション特性制御装置に関する。
近年、自動車のサスペンションに用いられる筒型ダンパとして、減衰力の変更が可能な減衰力可変型のものが種々開発されている。減衰力可変ダンパ(以下、単にダンパと記す)を装着した車両では、車両の走行状態に応じてダンパの減衰力を可変制御することによって操縦安定性や乗り心地の向上が図られている。例えば、旋回走行時には横方向運動に伴う慣性力(横加速度)によって車体が左右方向にロールするが、この際の過大なロールを抑制すべく、横加速度の微分値に基づいてダンパの目標減衰力を高める制御(ロール制御)が行われている。また、直進走行時には路面の凹凸によって車輪が上下移動するが、車輪上下動の車体への伝達抑制(車体制振)と乗り心地の向上とを図るべく、ばね上速度に応じて目標減衰力を高める制御(スカイフック制御)が行われている(特許文献1参照)。
スカイフック制御においては、道路からの励振に応じて、すなわち路面状態に応じて減衰力を変化させ、走行快適性を向上させるようにする技術が提案されている(特許文献2参照)。このような発明においては、道路からの励振状態をばね上加速度等に基づいて推定することにより、スカイフック制御が行われている。
特開2006−69527号公報 特開平5−69716号公報
しかしながら、従来技術におけるスカイフック制御では、各車輪に対応するばね上加速度に基づいて車輪ごとに独立した制御を行うため、例えば傾斜路走行時における輪荷重の変化に起因するピッチおよびロール等を抑制することはできなかった。
例えば、進行方向へ向かって下り勾配の傾斜路を自動車が定速走行する場合、水平路走行時に比べ、前輪に加わる輪荷重は増加し、後輪に加わる輪荷重は減少する。したがって、下り傾斜路走行時には、水平路走行時に比べ、前輪の固有振動数が小さくなる一方、後輪の固有振動数が大きくなるため、前輪側と後輪側との間でばね上速度にも差が生じる。そのため、ばね上速度に基づくスカイフック制御を前輪および後輪についてそれぞれ独立して行った場合、図15に示すように、制御後においても、前輪ばね上速度および後輪ばね上速度には依然として差が存在し、このばね上速度の差に起因するピッチが発生してしまう。このピッチを抑制するためには、後輪のばね上速度が大きくなるようにピッチ制御する必要がある。
しかしながら、特許文献1に記載の制御装置では、ピッチ制御は車体の前後加速度に基づいて行われ、上記したピッチは傾斜路を加速または減速を伴わずに走行している場合にも生じるため、傾斜路走行時にはピッチを適切に抑制することができなかった。同様に、路面が車幅方向に傾斜している場合には、輪荷重の分布変化に起因するロールが発生するが、従来の制御装置ではこのロールを適切に抑制することができなかった。
本発明は以上の問題を鑑みてなされたものであり、輪荷重の分布変化に起因して発生する車体の運動状態量の変化を抑制することのできるサスペンション特性制御装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、車体と各車輪との間に設けられたサスペンション要素を駆動制御することによってサスペンション特性を変化させるサスペンション特性制御装置であって、路面の傾斜を検出する路面傾斜検出手段と、各車輪の輪荷重を検出する輪荷重検出手段と、前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記輪荷重検出手段の検出結果に基づいて車体の振動が小さくなるように前記サスペンション要素を駆動制御する駆動制御手段とを備えるように構成する(請求項1)。
これによれば、傾斜路走行時の輪荷重の分布変化に起因して発生する車体の振動を抑制し、乗り心地を向上させることができる。
上記構成を備えたサスペンション特性制御装置においては、前記駆動制御手段が、車体の運動量に基づいて制御パラメータを設定し、該制御パラメータに基づいて車輪ごとに前記サスペンション要素を制御し、更に、前記輪荷重検出手段の検出結果に基づいて前記制御パラメータを補正するように構成するとよい(請求項2)。
このように構成することにより、従来のスカイフック制御の基礎となる車体運動量に基づくパラメータに対し、輪荷重に応じた補正を行うため、従来のスカイフック制御では傾斜路走行時に発生してしまう車体の振動を抑制することができる。
また、上記したサスペンション特性制御装置においては、前記輪荷重検出手段の検出結果に基づいて、前記サスペンション要素が設けられた各車体部位の固有振動数を算出する固有振動数算出手段を更に備え、前記駆動制御手段が、前記固有振動数算出手段の算出結果に基づいて前記サスペンション要素を駆動制御するように構成するとよい(請求項3)。
これによれば、輪荷重の変化によって異なった各サスペンションの固有振動数に応じてサスペンション要素を駆動制御するため、傾斜路走行時においても、固有振動数の値やその振幅によって定まる車両の振動を抑制することができる。
更に、固有振動数に基づくサスペンション要素駆動制御を行うサスペンション特性制御装置においては、前記サスペンション要素を減衰力可変ダンパとし、前記駆動制御手段が、前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記各車体部位のうち、上側に位置する少なくとも1つの車体部位の固有振動数の振幅が小さくなるように前記減衰力可変ダンパの減衰力を制御するように構成するとよい(請求項4)。
乗り心地に影響するとされる周波数領域は一般に2〜8Hz程度であるが、上記構成を採ることにより、傾斜路走行時に異なる固有振動数となった車体部位のうち、上側の車体部位、すなわち輪荷重が小さくなって水平路走行時に比べて固有振動数が高くなった車体部位の振幅が小さくなるため、傾斜路走行時においても、乗り心地に影響する振動を低減することができる。ここで、水平路走行時とは、車両進行方向および車幅方向について路面が共に水平とされており、自動車Vが加減速または旋回することなく、一定速度で直進走行している走行状態と定義する。
或いは、固有振動数に基づくサスペンション要素駆動制御を行うサスペンション特性制御装置においては、前記サスペンション要素を減衰力可変ダンパとし、前記駆動制御手段が、前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記各車体部位のうち、下側に位置する少なくとも1つの車体部位の固有振動数の振幅が大きくなるように前記減衰力可変ダンパの減衰力を制御するように構成するとよい(請求項5)。
これによれば、傾斜路走行時に異なる固有振動数となった車体部位のうち、下側の車体部位、すなわち輪荷重が大きくなって水平路走行時に比べて固有振動数が低くなった車体部位の振幅が大きくなることにより、乗り心地に影響する周波数領域の振幅を小さくして傾斜路走行時の乗り心地を向上させることができる。
また、固有振動数に基づくサスペンション要素駆動制御を行うサスペンション特性制御装置においては、前記駆動制御手段が、前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記各車体部位の固有振動数を、水平路走行時の固有振動数に近づけるように前記サスペンション要素を駆動制御するように構成するとよい(請求項6)。
例えばエアサスペンション等のアクティブサスペンションは、エアスプリングのばね定数を変更することにより、輪荷重に拘わらず各車体部位の固有振動数を変更することができるため、上記構成を採ることにより、傾斜路走行時においても水平路走行時と同様の乗り心地を実現することができる。
いずれの構成のサスペンション特性制御装置においても、前記駆動制御手段が、前記路面傾斜検出手段によって検出された路面の傾斜が所定量以上の場合、車体の姿勢変化を抑制する制御に切り替えるように構成するとよい(請求項7)。
このように構成することにより、路面の傾斜が大きい場合には、振動抑制による乗り心地向上に優先して車両の姿勢変化を抑制して傾斜路走行時の乗り心地を向上させることができる。
本発明によれば、傾斜路の走行時等においても、各車輪で相違する輪荷重に起因する振動を抑制し、上質な乗り心地を実現することができる。
≪第1実施形態の構成≫
以下、本発明を4輪自動車に適用した第1実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は第1実施形態に係る4輪自動車の概略構成図であり、図2は第1実施形態に係るダンパの縦断面図であり、図3は第1実施形態に係る減衰力制御装置の概略構成を示すブロック図であり、図4は第1実施形態に係るスカイフック演算制御部の要部構成を示すブロック図であり、図5は第1実施形態に係るスカイフックゲイン設定部の要部構成を示すブロック図である。なお、説明にあたり、4本の車輪やそれらに対して配置された部材、すなわち、タイヤやサスペンション等については、それぞれ数字の符号に前後左右を示す添字を付して、例えば、車輪3fl(左前)、車輪3fr(右前)、車輪3rl(左後)、車輪3rr(右後)と記すとともに、総称する場合には、例えば、車輪3と記す。
<自動車の概略構成>
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る自動車の概略構成について説明する。同図
に示すように、自動車(車両)Vの車体1にはタイヤ2が装着された車輪3が前後左右に設置されており、これら各車輪3がサスペンションアーム4や、コイルスプリング5、減衰力可変式ダンパ(以下、単にダンパと記す)6等からなるサスペンション7によって車体1に懸架されている。自動車Vには、各種の制御に供されるECU(Electronic Control Unit)8の他、車速センサ9や横Gセンサ10、前後Gセンサ11、ヨーレイトセンサ12等が車体1の適所に設置されている。また、自動車Vには各車輪3fl〜3rrごとに、上下Gセンサ13がダンパ6の車体1側連結部近傍の車体部位に設置され、ストロークセンサ14がダンパ6に対して設置されている。
ECU8は、マイクロコンピュータやROM、RAM、周辺回路、入出力インタフェース、各種ドライバ等から構成されており、通信回線(本実施形態では、CAN(Controller Area Network))を介して、各車輪3のダンパ6や各センサ9〜14と接続されている。
サスペンション7は、図9に示すように、水平路走行時、すなわち車体重量が所定の割合で各車輪3に分配されている時に、前後左右すべての車輪3に対応する車体部位の固有振動数Fnが同一となるように設定されている。なお、図9,10,11,14は、路面振動に対するばね上の振幅比と周波数との関係を示しており、振幅比は対数(20*log10x)の値をとるため、振幅比が小さいほど路面の振幅に対してばね上の振幅が小さいことを示している。
<ダンパ>
図2に示すように、本実施形態のダンパ6は、モノチューブ式(ド・カルボン式)であり、MRF(Magneto-Rheological Fluid:磁気粘性流体)が充填された円筒状のシリンダ22と、このシリンダ22に対して軸方向に摺動するピストンロッド23と、ピストンロッド23の先端に装着されてシリンダ22内を上部油室24と下部油室25とに区画するピストン26と、シリンダ22の下部に高圧ガス室27を画成するフリーピストン28と、ピストンロッド23等への塵埃の付着を防ぐカバー29と、フルバウンド時における緩衝を行うバンプストップ30とを主要構成要素としている。
シリンダ22は、下端のアイピース22aに嵌挿されたボルト31を介して、車輪側部材であるサスペンションアーム4の上面に連結されている。また、ピストンロッド23は、上下一対のラバーブッシュ32とナット33とを介して、その上端のスタッド23aが車体側部材であるダンパベース(ホイールハウス上部)34に連結されている。
ピストン26には、上部油室24と下部油室25とを連通する連通路41と、この連通路41の内側に位置するMLVコイル42とが設けられている。ECU8からMLVコイル42に電流が供給されると、連通路41を流通するMRFに磁界が印可されて強磁性微粒子が鎖状のクラスタを形成する。これにより、連通路41を通過するMRFの見かけ上の粘度(以下、単に粘度と記す)が上昇し、ダンパ6の減衰力が増大する。
<減衰力制御装置の概略構成>
図3に示すように、ECU8には、ダンパ6の制御を行う減衰力制御装置50(サスペンション特性制御装置)が内装されている。減衰力制御装置50は、上記した各センサ9〜14が接続する入力インタフェース51と、各センサ9〜13の検出信号から得られたロールモーメントやピッチモーメント、ばね上速度等に基づき各ダンパ6の目標減衰力を設定する減衰力設定部52(駆動制御手段)と、減衰力設定部52から入力した目標減衰力とストロークセンサ14から入力したストローク速度Ssとに応じて各ダンパ6(MLVコイル42)への駆動電流を生成する駆動電流生成部53と、駆動電流生成部53が生成した駆動電流を各ダンパ6に出力する出力インタフェース54とから構成されている。
減衰力設定部52には、スカイフック制御に供されるスカイフック演算制御部55や、路面の傾斜を判定する路面傾斜判定部56、ロール制御に供されるロール演算制御部57、ピッチ制御に供されるピッチ演算制御部58等が収容されている。
<スカイフック演算制御部>
図4にその概略構成を示すように、スカイフック演算制御部55は、車速センサ9から入力した車速信号v、上下Gセンサ13から入力した上下加速度信号Gl(ばね上速度加速度検出値Gld)に基づいてスカイフック制御ベース値Dsb(制御パラメータ)を設定するスカイフック制御ベース値設定部60と、スカイフックゲイン設定部59で設定されたスカイフックゲインGshをスカイフック制御ベース値Dsbに乗じてスカイフック制御目標値Dshを算出するスカイフック制御目標値算出部61とを各車輪3ごとに備えている。
<スカイフックゲイン設定部>
図5にその概略構成を示すように、スカイフックゲイン設定部59は、車速センサ9から入力した車速Vsと、ストロークセンサ14から入力したストローク速度Ssと、ヨーレイトセンサ12から入力したヨーレイトγとに基づき、各車輪3の輪荷重Leを算出する輪荷重算出部63と、輪荷重算出部63の算出結果に基づいて各車体部位の固有振動数Fnを算出する固有振動数算出部64と、固有振動数算出部64の算出結果に基づいてスカイフックゲインGshを設定する制御ゲイン設定部65を備えている。
<路面傾斜判定部>
路面傾斜判定部56は、車速センサ9から入力する車速Vsと、前後Gセンサ11から入力する前後加速度Gxとに基づいて、車体前後方向についての路面の傾斜を判定するとともに、前後方向傾斜角度θxを算出する。また、路面傾斜判定部56は、横Gセンサ10から入力する横加速度Gyと、ヨーレイトセンサ12から入力するヨーレイγとに基づいて、車幅方向についての路面の傾斜を判定するとともに、車幅方向傾斜角度θyを算出する。
≪第1実施形態の作用≫
<減衰力制御>
自動車が走行を開始すると、減衰力制御装置50は、所定の処理インターバル(例えば、10ms)をもって、図6のフローチャートにその手順を示す減衰力制御を車輪ごとに実行する。減衰力制御を開始すると、減衰力設定部52は、路面傾斜判定部56において、路面の傾斜を判定するとともに、路面の傾斜角度θx,θyを算出する(ステップ1)。ステップ1で路面に傾斜なしと判定された場合(No)、減衰力設定部52は、スカイフック演算制御部55において、後に詳説する姿勢変化抑制制御を行う(ステップ4)。なお、この姿勢変化抑制制御においては、各ダンパ6の目標減衰力であるスカイフック制御目標値Dshが設定される。
一方、ステップ1で路面に傾斜ありと判定された場合(Yes)、減衰力設定部52は、スカイフック演算制御部55において、ステップ1で算出された路面の傾斜角度が所定角度未満であるか否か判定する(ステップ2)。路面の傾斜角度が所定角度以上である場合(No)、減衰力設定部52は、同じくスカイフック演算制御部55において姿勢変化抑制制御処理を行う(ステップ4)。一方、路面の傾斜角度が所定角度未満である場合(Yes)、減衰力設定部52は、スカイフック演算制御部55において、後に詳説する傾斜路振動抑制制御を行う(ステップ3)。この傾斜路振動抑制制御においては、姿勢変化抑制制御と同様に各ダンパ6の目標減衰力であるスカイフック制御目標値Dshが設定される。
次に、ステップ3の傾斜路振動抑制制御またはステップ4の姿勢変化抑制制御によって設定された目標減衰力に基づいて、減衰力制御装置50は、駆動電流生成部53において、所定の目標電流マップを参照して目標電流を検索/設定し(ステップ5)、ステップ5で設定された目標電流に基づき、各ダンパ6のMLVコイル42に駆動電流を出力し(ステップ6)、上記手順を繰り返す。
<傾斜路振動抑制制御>
次に、図7を参照して上記した傾斜路振動抑制制御について説明する。同図に示すように、減衰力設定部52は、先ず、スカイフック制御ベース値設定部60において、スカイフック制御ベース値Dsbを設定する(ステップ11)。次に、減衰力設定部52は、スカイフックゲイン設定部59内の輪荷重算出部63において、各車輪3の輪荷重Leを算出し(ステップ12)、同じく固有振動数算出部64において、ステップ12で算出した輪荷重Leに基づいて各車体部位の固有振動数Fnを算出し(ステップ13)、同じく制御ゲイン設定部65において、ステップ13で算出した固有振動数Fnに基づいて各車輪3のスカイフックゲインGshを設定する(ステップ14)。
ステップ14でスカイフックゲインGshを各車輪3について設定する際には、路面傾斜判定部56によって判定された路面傾斜の上側に位置する車体部位については、その固有振動数Fnの振幅が小さくなるようにスカイフックゲインGshを補正し、同じく路面傾斜の下側に位置する車体部位については、その固有振動数Fnの振幅が大きくなるようにスカイフックゲインGshを補正する。
そして、減衰力設定部52は、スカイフック制御目標値算出部61において、ステップ11で設定されたスカイフック制御ベース値Dsbに、ステップ13で算出された固有振動数Fnを乗算することにより、各ダンパ6のスカイフック制御目標値Dshを算出し(ステップ15)し、処理を完了する。
<姿勢変化抑制制御>
図8を参照して上記した姿勢変化抑制制御について説明する。同図に示すように、減衰力設定部52は、先ず、スカイフック演算制御部55において、横Gセンサ10、前後Gセンサ11、および上下Gセンサ13から得られた車体1の加速度や、車速センサ9から入力した車体速度、操舵角センサ(図示せず)から入力した操舵速度等に基づいて自動車Vの運動状態(各車輪3におけるばね上速度等)を判定する(ステップ21)。
次に、減衰力設定部52は、スカイフック演算制御部55において、ステップ21で判定した自動車Vの運動状態に基づいて各ダンパ6のスカイフック制御目標値Dshを算出し(ステップ22)、ロール演算制御部57において、各ダンパ6のロール制御目標値Drを算出し(ステップ23)、ピッチ演算制御部58において、各ダンパ6のピッチ制御目標値Dpを算出する(ステップ24)。そして、減衰力設定部52は、各ダンパ6のスカイフック制御目標値Dshを算出し(ステップ25)し、処理を完了する。
≪第1実施形態の効果≫
上記したように、サスペンション7の固有振動数Fnは、水平路走行時に前後左右すべてについて同一となるように設定されているが、傾斜路走行時には、各車輪3の輪荷重Leが変化して傾斜路の下側で大きくなり、傾斜路の上側で小さくなる。ところが、本実施形態では図10に示すように、傾斜路走行時の輪荷重Leの変化に起因して下側および上側(例えば、フロント側およびリア側)で異なる固有振動数となった車体部位のうち、固有振動数が高くなった傾斜路上側の車体部位の振幅が小さくなるように、スカイフックゲインGshを補正しているため、乗り心地に影響するとされる2〜8Hzの周波数領域の振動が低減され、傾斜路走行時の乗り心地が改善される。
また、図11に示すように、傾斜路走行時の輪荷重Leの変化に起因して下側および上側で異なる固有振動数となった車体部位のうち、下側の車体部位の振幅が大きくなるように、スカイフックゲインGshを補正しているため、乗り心地に影響する2〜8Hzの周波数領域の振幅が小さくなり、傾斜路走行時の乗り心地が改善される。
このように、輪荷重Leの変化に起因して変化した各サスペンションの固有振動数Fnに応じたゲインを乗じ、従来のスカイフック制御の基礎となるスカイフック制御ベース値Dsbに対して補正を行ってダンパ6の減衰力を制御するため、従来のスカイフック制御では傾斜路走行時に抑制できなかった車体振動が抑制され、傾斜路走行時の乗り心地が改善される。
そして、路面の傾斜が大きい場合には、傾斜路振動抑制制御から姿勢変化抑制制御に切り替えることにより、傾斜路によって発生する振動抑制による乗り心地向上と、車体1の姿勢変化の抑制による乗り心地向上との両立を実現し、傾斜路走行時の総括的な乗り心地改善が図られる。
≪第2実施形態≫
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、説明にあたっては第1実施形態と本質的に異なる点を重点的に説明し、構成や作用が同様の事項についてはその説明を省略する。図12は、第2実施形態に係る四輪自動車の概略構成図であり、図13は第2実施形態に係るエアサスペンション特性制御装置の概略構成を示すブロック図である。
先ず、図12を参照して、第2実施形態に係る自動車Vの概略構成について説明する。説明にあたり、第1実施形態と技術的思想が同一と認められる部材や構成要素については、第1実施形態と同一の符号を付して説明する。図12に示すように、自動車(車両)Vの車体1に設置された各車輪3は、サスペンションアーム4や、エアスプリング105、減衰力可変式のダンパ6等からなるエアサスペンション107によって車体1に懸架されている。エアサスペンション107は、第1実施形態と同様に図9に示すように、水平路走行時に、前後左右すべての車輪3に対応する車体部位の固有振動数Fnが同一に設定されている。
<エアスプリング>
本実施形態のエアスプリング105は、公知の構成を有しるものであるため、詳細な図示は省略するが、その主要構成要素として、ダンパ6のシリンダ22の外周に結合される筒状のエアピストンや、ダンパ6のピストンロッド23に連結され、エアピストンより大径な筒状のエアチャンバ、エアピストンとエアチャンバとに連結されるとともに、エアピストンとエアチャンバとの軸方向相対移動を許容する可撓性のダイヤフラム、エアチャンバの下端に連結され、ダイヤフラムを収容する筒状のカバー等を有している。そして、エアピストン、エアチャンバおよびダイヤフラムによって画成されたエア室には、その一端がエアコンプレッサまたはエアタンクに接続された送気管の他端が接続されており、エア室にエアを供給またはエア室からエアを排出することによってエア室内の圧力を可変制御し、エアスプリング105のばね定数を調整できるようになっている。
<減衰力制御装置の概略構成>
図13に示すように、ECU8には、ダンパ6の制御を行うサスペンション特性制御装置150が内装されている。サスペンション特性制御装置150は、各センサ9〜13の検出信号に基づき各ダンパ6の目標減衰力を設定する減衰力設定部52(駆動制御手段)と、同じく各センサ9〜13の検出信号に基づき各エアスプリング105の目標ばね定数を設定するばね定数制御部101(駆動制御手段)と、減衰力設定部52から入力した目標減衰力に応じて各ダンパ6への駆動電流を生成する駆動電流生成部53と、ばね定数制御部101から入力した目標ばね定数に応じて、各エアスプリング105に対する圧力を制御するエアコンプレッサまたは圧力制御バルブへの駆動電流を生成する駆動電流生成部102と、駆動電流生成部53および駆動電流生成部102が生成した駆動電流を各ダンパ6に出力する出力インタフェース54とから構成されている。
<ばね定数制御部>
ばね定数制御部101は、減衰力設定部52と共に協調制御され、路面傾斜判定部56によって路面の傾斜が検出された場合に、輪荷重Leの変化に伴って変化した各車体部位の固有振動数Fnが水平路走行時の固有振動数Fnに近づくように、各エアスプリング105のばね定数を可変制御する。
<ばね定数制御手順>
次に、ばね定数制御手順について説明する。図6のフローチャートにおいて、サスペンション特性制御装置150は、ステップ2で路面の傾斜角度が所定角度以上である場合(No)、スカイフック演算制御部55における姿勢変化抑制制御(ステップ3)と平行して、ばね定数制御部101において、各センサ9〜13の検出信号に基づいて各エアスプリング105の目標ばね定数を設定することにより、輪荷重Leの変化と共に変化した各車体部位の固有振動数Fnが水平路走行時の固有振動数に近づくように、各エアスプリング105のばね定数制御を行う。
<第2実施形態の効果>
第1実施形態の構成では、ダンパ6の減衰力を補正することによって各車体部位の振幅を変化させて乗り乗り心地を向上させることができたが、コイルスプリング5自体の固有振動数Fnを変更することはできないため、傾斜路走行によって輪荷重Leの分布が変化した際に、車体部位の固有振動数Fnを制御することはできなかった。ところが、本実施形態では、エアスプリング105のばね定数を変更することによって輪荷重Leに拘わらず各車体部位の固有振動数Fnを変更することができるため、図14に示すように、各車体部位の固有振動数を、水平路走行時の固有振動数に近づけるようにエアスプリング105を駆動制御することで、傾斜路走行時においても、水平路走行時と同様の乗り心地が実現される。
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限られないことは云うまでもなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。
第1実施形態に係る4輪自動車の概略構成図 第1実施形態に係るダンパの縦断面図 第1実施形態に係る減衰力制御装置の概略構成を示すブロック図 第1実施形態に係るスカイフック演算制御部の要部構成を示すブロック図 第1実施形態に係るスカイフックゲイン設定部の要部構成を示すブロック図 第1実施形態に係る減衰力制御の手順を示すフローチャート 第1実施形態に係る傾斜路振動抑制制御の手順を示すフローチャート 第1実施形態に係る姿勢変化抑制制御の手順を示すフローチャート 第1実施形態に係る水平路走行時の各車体部位の固有振動数を示すグラフ 第1実施形態に係る、傾斜路走行時にダンパ減衰力を制御した際の各車体部位の固有振動数を示すグラフ 第1実施形態に係る、傾斜路走行時にダンパ減衰力を制御した際の各車体部位の固有振動数を示すグラフ 第2実施形態に係る四輪自動車の概略構成図 第2実施形態に係るエアサスペンション特性制御装置の概略構成を示すブロック図 第2実施形態に係る、傾斜路走行時にダンパ減衰力を制御した際の各車体部位の固有振動数を示すグラフ 従来技術における減衰力制御を実施した際のばね上速度を示すグラフ
符号の説明
1 車体
3 車輪
5 コイルスプリング
6 ダンパ
7 サスペンション
50 減衰力制御装置(サスペンション特性制御装置)
52 減衰力設定部(駆動制御手段)
55 スカイフック演算制御部
56 路面傾斜判定部
57 ロール演算制御部
58 ピッチ演算制御部
59 スカイフックゲイン設定部
60 スカイフック制御ベース値設定部
62 スカイフック制御目標値算出部
63 輪荷重算出部
64 固有振動数算出部
65 制御ゲイン設定部
105 エアスプリング
107 エアサスペンション
Dsb スカイフック制御ベース値(制御パラメータ)

Claims (7)

  1. 車体と各車輪との間に設けられたサスペンション要素を駆動制御することによってサスペンション特性を変化させるサスペンション特性制御装置であって、
    路面の傾斜を検出する路面傾斜検出手段と、
    各車輪の輪荷重を検出する輪荷重検出手段と、
    前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記輪荷重検出手段の検出結果に基づいて車体の振動が小さくなるように前記サスペンション要素を駆動制御する駆動制御手段と
    を備えたことを特徴とするサスペンション特性制御装置。
  2. 前記駆動制御手段は、車体の運動量に基づいて制御パラメータを設定し、該制御パラメータに基づいて車輪ごとに前記サスペンション要素を制御し、更に、前記輪荷重検出手段の検出結果に基づいて前記制御パラメータを補正することを特徴とする、請求項1に記載のサスペンション特性制御装置。
  3. 前記輪荷重検出手段の検出結果に基づいて、前記サスペンション要素が設けられた各車体部位の固有振動数を算出する固有振動数算出手段を更に備え、
    前記駆動制御手段は、前記固有振動数算出手段の算出結果に基づいて前記サスペンション要素を駆動制御することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のサスペンション特性制御装置。
  4. 前記サスペンション要素は減衰力可変ダンパであり、
    前記駆動制御手段は、前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記各車体部位のうち、上側に位置する少なくとも1つの車体部位の固有振動数の振幅が小さくなるように前記減衰力可変ダンパの減衰力を制御することを特徴とする、請求項3に記載のサスペンション特性制御装置。
  5. 前記サスペンション要素は減衰力可変ダンパであり、
    前記駆動制御手段は、前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記各車体部位のうち、下側に位置する少なくとも1つの車体部位の固有振動数の振幅が大きくなるように前記減衰力可変ダンパの減衰力を制御することを特徴とする、請求項3または請求項4に記載のサスペンション特性制御装置。
  6. 前記駆動制御手段は、前記路面傾斜検出手段によって路面の傾斜が検出された場合、前記各車体部位の固有振動数を、水平路走行時の固有振動数に近づけるように前記サスペンション要素を駆動制御することを特徴とする、請求項3に記載のサスペンション特性制御装置。
  7. 前記駆動制御手段は、前記路面傾斜検出手段によって検出された路面の傾斜が所定量以上の場合、車体の姿勢変化を抑制する制御に切り替えることを特徴とする、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載のサスペンション特性制御装置。
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