JP2009229622A - 自立型バンドパスフィルタ及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】遠赤外光や中赤外光を透過光とするように高周波化することができ、しかも、透過率が高く良好なフィルタ特性を備えた自立型バンドパスフィルタを提供する。
【解決手段】複数個の円形の孔2が一定間隔で2次元配列に形成されたメッシュ状のフィルタ用金属板1を備え、その厚みt(μm)を、透過光の中心波長λ0(μm)に対して、t≧λ0にすることにより、従来は困難であった遠赤外光や中赤外光を透過光とする微細構造に形成して高周波化し、かつ、透過率を高くして良好なフィルタ特性を備える。
【選択図】図1

Description

この発明は、テラヘルツ光(遠赤外光及び中赤外光を含む)の自立型バンドパスフィルタ及びその製造方法に関し、詳しくは、特性の高周波化に関する。
従来、主にテラヘルツ光(ほぼ0.1THz〜10THzの電磁波)を対象とするバンドパスフィルタには種々の構造のものがあるが、その1つとして、基板のない自立型バンドパスフィルタがある。
この自立型バンドパスフィルタとして、従来、複数個の孔を一定間隔で正方格子状に2次元配列したメッシュ構造の金属フォトニック結晶を用いたものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。なお、前記非特許文献1には、具体的に、前記孔の径(孔径)を0.68mm、間隔を1.13mmとした金属フォトニック結晶のバンドパスフィルタが示されている。
また、自立型バンドパスフィルタとして、メッシュ状の金属板を使用したものも提案されている。このメッシュ状の金属板を使用した従来の自立型バンドパスフィルタは、金属板の打ち抜き加工やエッチング加工の金属加工(ブレークダウン)によって形成される。
テラヘルツテクノロジーフォーラム編、「テラヘルツ技術総覧」、第1版、p.527−531、(有)エヌジーティー、2007年11月29日
前記従来の自立型バンドパスフィルタは前記孔の径や間隔等で定まるバンドパス特性(フィルタ特性)の高周波化が容易でなく、遠赤外光や中赤外光(以下、遠・中赤外光という)を透過光とする透過率の高い自立型バンドパスフィルタは実現されていない。
すなわち、金属フォトニック結晶を使用した前記非特許文献1の自立型バンドパスフィルタは、孔の径(孔径)が0.68mm、間隔が1.13mmであり、高々0.3THz(波長で約1mm)付近を透過光の中心周波数とするバンドパス特性である。そして、例えば波長で100μm以下(周波数で3THz以上)の遠・中赤外光を透過光とするには、前記孔の径及び間隔をいっそう小さくして微細化する必要があるが、微細化して孔の径や間隔等を小さくする程、金属フォトニック結晶は厚みが薄くなり、平坦性を維持することが困難になる。同様に、前記打ち抜き加工やエッチング加工の金属加工によって形成される従来の自立型バンドパスフィルタの場合も、波長30μm以下の遠・中赤外光を透過する微細構造に形成しようとすると、金属板の厚みが極めて薄くなり、取り扱いが困難になる。
さらに、前記従来の自立型バンドパスフィルタにおいて、遠・中赤外光を透過光とするように高周波化したときに高い透過率(良好なフィルタ特性)が得られる構造は何ら提案されていない。
そのため、この種の自立型バンドパスフィルタにおいて、波長30μm以下(10THz以上)の遠・中赤外光を透過するように高周波化することは、前記厚みやフィルタ特性の点から困難であり、とくに波長10μm以下(30THz以上)の遠・中赤外光を透過光とする自立型バンドパスフィルタは実現されていない。
本発明は、遠赤外光や中赤外光を透過光とするように高周波化することができ、しかも、透過率が高く良好なフィルタ特性を備えた自立型バンドパスフィルタを提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明の自立型バンドパスフィルタは、複数個の円形の孔が一定間隔で2次元配列に形成されたメッシュ状のフィルタ用金属板を備え、前記フィルタ用金属板の厚みが、透過光の中心波長に対して、t≧λ0(t:フィルタ用金属板の厚み(μm)、λ0:透過光の中心波長(μm))であることを特徴としている(請求項1)。
そして、前記透過光の中心波長は30μm以下(遠赤外光)であることが高周波化の点から好ましい(請求項2)。また、自立性及びフィルタ特性の両面から、前記フィルタ用金属板の厚みは、10μmを最小値とすることが好ましい(請求項3)。さらに、前記孔は、前記フィルタ用金属板に三角格子配列に形成されることが実用的で好ましい(請求項4)。
つぎに、本発明の自立型バンドパスフィルタの製造方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の自立型バンドパスフィルタの製造方法であって、エレクトロフォーミングにより、導電性の基板上に、前記フィルタ用金属板の形状に金属を析出し、前記基板から金属パターンを剥離して前記フィルタ用金属板を製造することを特徴としている(請求項5)。
この場合、前記基板の表面にフォトレジストを形成する工程と、前記フォトレジストの表面をマスクパターンを通して露光する工程と、前記フォトレジストの露光されなかった部分を除去して前記フィルタ用金属板の形状に前記基板の表面を露出する工程と、前記基板をめっき液に浸漬して電解を施し、前記基板上に前記フィルタ用金属板の形状に金属を析出して前記金属パターンを形成する工程と、前記基板から前記金属パターンを剥離する工程とを具備することが、実用的で好ましい(請求項6)。
請求項1の発明によれば、メッシュ状のフィルタ用金属板は、複数個の円形の孔が一定間隔で2次元配列に形成されるため、エレクトロフォーミングの金属析出(グロウアップ)により、従来は困難であった遠・中赤外光を透過光とする微細構造に形成して高周波化することが可能になる。
すなわち、前記フィルタ用金属板をエレクトロフォーミングにより形成する場合、略図6に示すように、導電性の基板Mの表面に前記孔のフォトレジストRのパターン(レジストパターン)RPが形成され、この状態で基板Mがめっき液に浸漬されて電解が施される。そして、レジストパターンRPの基板面が露出した凹部にフィルタ用金属板の金属パターンが析出し、この金属パターンを基板Mから引き剥がすことによってフィルタ用金属板が形成される。
このとき、基板Mに析出した金属パターンを引き剥がす等する際に破れたりしないようにするとともに、形成後の自立性を確保するため、前記金属パターンはある程度の厚みに形成する必要があるが、前記金属パターンの厚みを厚くする程、レジストパターンRPの前記凹部は深くなる。
そして、図7(a)の基板MのレジストパターンRPと、同図(b)の孔を正方格子配列に形成した場合の導電性の基板M*のレジストパターンRP*との比較からも明らかなように、前記孔を円形に形成すると、図7(a)の矢印線に示すようにめっき液がレジストパターンRPのフォトレジストRの円形外周に沿って浸透するので、図7(b)の矢印線のめっき液のようにレジストパターンRP*のフォトレジストR*の矩形外周に沿って浸透する場合に比して、めっき液の流路が広い。そのため、前記金属パターンが厚くてもレジストパターンRPのフォトレジストR間の幅の狭い部分に確実にめっき液が浸透し、エレクトロフォーミングにより、メッシュ状に金属を析出して前記フィルタ用金属板を高周波化に好適な微細構造に形成できる。
そして、フィルタ用金属板の厚みtを、透過光の中心波長λ0に対して、t≧λ0にすることで、高周波化したときのフィルタ用金属板の自立性を確保できるとともに、高い透過率が得られることが実験により判明した。なお、フィルタ用金属板が厚くなると、入射光に対してフィルタ用金属板の開口部が導波管モードで作用し、狭帯域化できる利点もある。
したがって、このメッシュ状のフィルタ用金属板を備えることで、従来は困難であった遠・中赤外光を透過光とするように高周波化することができ、しかも、透過率が高く良好なフィルタ特性を備えた自立型バンドパスフィルタを提供することができる。
請求項2の発明によれば、透過光の前記中心波長が30μm以下の遠赤外光や中赤外光に適用して請求項1の効果を奏することができる従来にない自立型バンドパスフィルタを提供できる。
請求項3の発明によれば、前記フィルタ用金属板が10μm以上の厚みに形成されるので、とくに波長10μm以下の遠赤外光や中赤外光を透過光とする場合に、フィルタ用金属板が自立に十分な平坦性を備える。しかも、フィルタ用金属板は透過率か高く極めて良好なフィルタ特性を備える。そのため、従来は実現されていなかった波長10μm以下の遠赤外光や中赤外光を透過光とする良好なフィルタ特性の自立型バンドパスフィルタを提供できる。
請求項4の発明によれば、フィルタ用金属板の円形の各孔がバンドパスフィルタの特性設定に好適な三角格子配列で形成され、フィルタ特性がいっそう向上する。
請求項5の発明によれば、金属板の打ち抜き加工やエッチング加工のような金属加工(ブレークダウン)より優れたエレクトロフォーミングの微細加工(グロウアップ)により、上述したフィルタ用金属板を形成することができ、このフィルタ用金属板を備えて高周波化した自立型のバンドパスフィルタを製造することができる。
請求項6の発明によれば、請求項5のエレクトロフォーミングによるフィルタ用金属板の実用的な製造方法を提供できる。
つぎに、本発明をより詳細に説明するため、その一実施形態について、図1〜図8にしたがって詳述する。
図1は本実施形態のフィルタ用金属板1を示し、(a)は孔2が格子状に散在した平面図、(b)はその正面図である。図2はフィルタ用金属板1の一部の拡大平面図、図3はフィルタ用金属板1を備えた自立型バンドパスフィルタ3の正面図である。
図4、図5はフィルタ用金属板1のエレクトロフォーミングによる製造過程を示す。図6はレジストパターンRPが形成された状態の導電性の基板Mの一部の拡大斜視図、図7はフィルタ用金属板1の孔2の形状によるめっき液の浸透の違いの説明図であり、(a)は孔2が円形である本実施形態の場合の説明図、(b)は比較のための孔2が矩形(正方形)の場合の説明図である。図8は自立型バンドパスフィルタ3の光の透過率の実測特性図である。
(構成)
まず、フィルタ用金属板1について、主に図1、図2を参照して説明する。
フィルタ用金属板1は例えばニッケル(Ni)の直径20mm〜100mm程度の円板形状であり、後述するエレクトロフォーミングにより、図1及び図2に示すように、複数個の円形の孔2が一定間隔で2次元配列されたメッシュ状に形成され、フランジ部11には複数個の取り付け孔12が開けられている。
孔2の径、間隔及び配列はフィルタ用金属板1の性能を決定するバラメータであり、透過光の周波数や選択度(Q値)等に応じて定まる。
そして、本実施形態においては、透過光の中心波長λ0で4μm〜100μm程度の遠・中赤外光を対象とし、好ましくは、従来は実現困難であった30μm以下とする。そのため、孔2の間隔も透過光の中心波長λ0と同程度の微細間隔になり、各孔2は透過光の中心波長λ0に応じた一定間隔でフィルタ用金属板1に2次元配列される。
前記2次元配列は、正方格子配列等であってもよいが、本実施形態においては、図2に拡大して示したように正三角格子配列であり、各孔2は正三角形の各格子の頂点の位置に形成される(請求項4対応)。このとき、図2に示すように、各孔2の径をa、各孔2の中心間の間隔(ピッチ)をdとすると、よく知られているように、透過光の強度は径aで定まり、d≒(3/2)×aにすることにより、理論上は100%の強度が得られる。したがって、径aとピッチdとを適当に設定すると、所望のQ特性に形成できる。
つぎに、フィルタ用金属板1の第一の特徴的な構造は、各孔2が円形に形成される点である(請求項1対応)。このように構成するのは、エレクトロフォーミングによりフィルタ用金属板1を後述する厚みtの条件で良好に形成可能にするためである。
すなわち、エレクトロフォーミング技術は電解めっき技術であり、めっき浴を用いるので、めっき液が図6に示した基板MのパターニングしたレジストパターンRPの凹部のフォトレジストR間の幅が狭い部分に十分に入り込まなければ、フィルタ用金属板1は形成できない。そして、フィルタ用金属板1の各孔2間の狭い部分にめっき液が十分に入り込むか否かについてはフォトレジストRの濡れ性等が問題となる。
一方、基板Mに析出した金属パターンを引き剥がす等する際に破れたりしないようにするとともに、形成後の自立性を確保するため、前記金属パターンはある程度の厚みに形成する必要があるが、前記金属パターンの厚みを厚くする程、レジストパターンRPの前記凹部は深くなる。
そして、図7(a)の基板MのレジストパターンRPと、同図(b)の孔を正方格子配列にした場合の導電性の基板M*のレジストパターンRP*との比較からも明らかなように、孔を円形にすると、図7(a)の矢印線に示すようにめっき液がレジストパターンRPのフォトレジストRの円形外周に沿って浸透するので、図7(b)の矢印線のめっき液のようにレジストパターンRP*のフォトレジストR*の矩形外周に沿って浸透する場合に比して、めっき液の流路が広い。そのため、前記金属パターンが厚くてもレジストパターンRPのフォトレジストR間の幅が狭い部分に確実にめっき液が浸透し、エレクトロフォーミングにより、メッシュ状に金属を析出してフィルタ用金属板1を高周波化に好適な微細構造に形成(グロウアップ)できる。
したがって、フィルタ用金属板1の各孔2は円形に形成される。
つぎに、フィルタ用金属板1の第二の特徴的な構造は、図1(b)に示すフィルタ用金属板1の厚みt(μm)が、少なくとも、透過光の中心波長λ0(μm)に対して、t≧λ0に形成される点である(請求項1対応)。
すなわち、フィルタ用金属板1の厚みtを、透過光の中心波長λ0に対して、t≧λ0にすると、フィルタ用金属板1は、厚みtが中心波長λ0以上に厚くなり、高周波化したときの自立性を確保できる。また、種々の実験から、t≧λ0にすると、中心波長λ0が30μm以下の遠・中赤外光を透過光とするように高周波化した場合にも高い透過率が得られることが判明した。
なお、フィルタ用金属板1が厚くなると、入射光に対してフィルタ用金属板1の開口部が導波管モードで作用し、狭帯域化できる利点もあり、また、フィルタ用金属板1が薄い場合に必要となる緊張処理が不要になる利点もある。
したがって、フィルタ用金属板1の厚みtは、少なくとも、透過光の中心波長λ0に対してt≧λ0に形成される。このようにすると、透過光の中心波長λ0が30μm以下の遠・中赤外光に対しても高い透過率になる(請求項1、2対応)。
さらに、本実施形態においては、フィルタ用金属板1の厚みtの最小値を、10μmとする。このようにすると、透過光の中心波長λ0が10μmより短くなる従来は適用不可能であった遠・中赤外光を透過光とする場合に、フィルタ用金属板1の厚みtを中心波長λ0より十分に大きな10μmに形成し、フィルタ用金属板1が自立に十分な平坦性を備えるようにする(請求項3対応)。このとき、フィルタ用金属板1は透過率か高く極めて良好なフィルタ特性も備える。そのため、従来は実現されていなかった波長10μm以下の遠・中赤外光を透過光とする良好なフィルタ特性を実現できる。
そして、フィルタ用金属板1を備えた自立型バンドパスフィルタ3は、例えば図3に示すように形成される。すなわち、フィルタ用金属板1を、例えばリング状の金属又は合成樹脂の枠体4で表面側と裏面側とから挟み、両枠体4の所要個所を例えば合わせネジによって締結して、自立型バンドパスフィルタ3が形成される。なお、自立型バンドパスフィルタ3は、一例としてスタンド5に支持されているが、用途等によっては、スタンド5を省いた状態で形成される。
以上説明したように、フィルタ用金属板1は、複数個の円形の孔2が一定間隔で2次元配列に形成され、その厚みtが、透過光の中心波長λ0に対して、少なくとも10μm以上であってt≧λ0である。このような構造であるため、エレクトロフォーミングにより、従来は実現不可能な中心波長λ0が10μmより短くなる遠・中赤外光を透過光とするようにまで高周波化することが可能であり、実験等により、中心波長λ0が約4μmの中赤外光まで適用可能である。
したがって、フィルタ用金属板1を備えた自立型バンドパスフィルタ3は、中心波長λ0が30μm以下の遠・中赤外光を透過光とするように高周波化することができる。さらには、従来は実現不可能な中心波長λ0が10μmより短い遠・中赤外光の自立型のバンドパスフィルタ3を提供できる。
そして、フィルタ用金属板1が金属板に孔2を開けただけの構成であり、後述するエレクトロフォーミングにより大量生産が可能であるため、自立型バンドパスフィルタ3は、低コストに提供できる利点もある。さらに、一般的な透過光型の誘電体フィルタは、より低周波の電磁波に対しては透過率が高いために電磁誘導ノイズも透過し、透過光の検出器側において、別途低周波ノイズ対策を施すことが必要となるが、自立型バンドパスフィルタ3は低周波の電磁波を完全に遮断できる利点もあり、検出器側の低周波ノイズ対策が省ける。
(製造方法)
つぎに、フィルタ用金属板1の製造方法について、主に図4、図5を参照して説明する。
フィルタ用金属板1は、エレクトロフォーミングにより、導電性の基板M上にフィルタ用金属板1の形状に金属を析出し、基板Mからその金属パターンを剥離して製造される(請求項5対応)。
エレクトロフォーミングによるフィルタ用金属板1の好適な製造方法の一例は、図4、図5に示すように、図4(a)の感光性樹脂塗布工程、同図(b)の露光工程、同図(c)の現像工程及び、図5(a)の金属電着工程、同図(b)の引き剥がし工程、同図(c)のレジスト除去工程からなる(請求項6対応)。
前記感光性樹脂塗布工程は、導電性の基板Mの表面にフォトレジストRを形成する工程であり、基板M上に、フォトレジストRを、製造するフィルタ用金属板1の厚みt以上の厚さに塗布する。
なお、基板Mは、例えば、100mm角、厚み1mmの鏡面研磨ステンレス板であり、その表面を、アセトンとアルコール系の有機溶剤で洗浄し、また、形成したフィルタ用金属板1が剥離しやすいように、表面に導電性剥離液を薄く塗布している。
また、フォトレジストRは、例えば、エポキシ系フォトレジストであり、スピンコート法により、基板Mの表面にエポキシ系フォトレジストを均一に塗布し、約100℃で90分間乾燥して形成されている。
前記露光工程は、フォトレジストRの表面をマスクパターンを通して露光する工程であり、光源Lの紫外光を、フィルタ用金属板1のバターンを書き込んだホトマスクのマスクパターンMPを通して基板M上のフォトレジストRに照射し、紫外線露光によりパターニングする。なお、マスクパターンMPは、例えば、ガラス基板上に、クロム金属でフィルタ用金属板1のパターンを等倍に形成したものである。また、露光は、マスクパターンMPをフォトレジストRの膜表面に密着させ、水銀I線の紫外線を1分間照射して行われる。
前記現像工程は、フォトレジストRの露光されなかった部分を除去してフィルタ用金属板1の形状に基板Mの表面を露出し、基板M上にフィルタ用金属板1の形状の凹部を有するレジストパターンRPを形成する工程であり、前記パターニングによって未現像部分のフォトレジストRを除去し、基板M上にレジストパターンRPを定着させる。具体的には、例えば、未露光領域のフォトレジストRの膜を現像液(PMシンナー等)を用いて除去し、前記レジストパターンRPを形成する。
金属電着工程は、レジストパターンRPが形成された基板Mをめっき液に浸漬して電解を施し、レジストパターンRPの凹部に金属を析出して金属パターンを形成する工程であり、レジストパターンRRが定着した基板Mをめっき槽100のめっき液101に浸し、電源200の直流電圧を基板Mとめっき液101との間にかけて電解を施し、レジストパターンRPの凹部に金属を成長させて析出する。
このとき、各孔2を円形にするため、上述したように、前記金属パターンが厚くてもレジストパターンRPのフォトレジストR間の幅が狭い部分にも確実にめっき液が浸透し、エレクトロフォーミングにより、メッシュ状に金属を析出してフィルタ用金属板1が高周波化に好適な微細構造に確実に形成(グロウアップ)される。
そして、基板M上に析出した金属の厚みが所定の値になったところで電解を停止して金属の成長を止め、基板Mをめっき槽100から取り出して洗浄する。なお、フォトレジストRには電流が流れないため、この部分にはめっきは成長しない。
具体的には、めっき液101は例えばスルファミン酸ニッケルのめっき液であり、前記パターンが形成された基板Mをスルファミン酸ニッケルのめっき液に浸漬した状態で、導電性基板Mを陰極として、30V程度の直流電界を導電性基板Mとめっき液101との間に印加し、ニッケルのめっきを導電性基板M上に析出する。このとき、フォトレジストRの部分は、電気を通さないため、めっきが成長せず、フィルタ用金属板1を形成できる。
なお、めっきの膜厚は、めっき時間で調整される。また、例えば50μmの厚みのめっきを析出させるのには60分程度を要する。
引き剥がし工程は、基板Mから金属パターンを剥離する工程であり、めっき槽100から取り出した基板Mを純水で洗浄した後、アセトンやアルコール系の有機溶剤に浸漬して基板Mからめっき部分(析出した金属パターン)をフォトレジストRとともに剥離する。
レジスト除去工程は、剥離した金属パターンからフォトレジストRを除去する工程であり、例えば、剥離した金属パターンをアセトン溶液に浸漬して超音波洗浄を行い、フォトレジストRの膜を除去して各孔2を三角格子配列したフィルタ用金属板1を得る。
(実測結果)
つぎに、実測結果について、下記の表1及び図8を参照して説明する。
前記のエレクトロフォーミングにより、種々の条件でフィルタ用金属板1を形成し、それを用いて製造した自立型バンドパスフィルタ3について透過率等を測定したところ、つぎの表1の実測結果が得られた。
Figure 2009229622
なお、表1において、「No.」は使用したフィルタ用金属板1のサンプル番号である。また、「孔の間隔」は孔2の中心距離(=d)、「中心波長λ0」は、最大透過率を示す波長、「透過率」はその最大透過率、「半値幅」は最大透過率の1/2のスペクトル幅、「(3/2)×a」は各孔2の径aに対して最大強度になる間隔(ピッチ)d、「(3/2)×aとdの比」は(3/2)×aと各孔2の実際の間隔(ピッチ)dとの比を表す。
そして、表1からも明らかなように、各孔2を円形にしたことにより、フィルタ用金属板1の厚みtが透過光の中心波長λ0以上であるサンプル番号1、2、3、6、8、10では透過率が95%以上となり、中心波長λ0が9μm〜24μmの透過光に対して、十分な透過率のフィルタ特性が得られ、自立型バンドパスフィルタ3を遠赤外光や中赤外光にも適用できることが確かめられた。
つぎに、前記表1のサンプル番号5、4、2の厚みtが3μm、8μm、15μmのフィルタ用金属板1の波長に対する透過率の測定グラフを図8に示す。
なお、図8の測定においては、フィルタ用金属板1を透過光の中心波長λ0が10.6μmのものとするため、各孔2の孔径aが6.5μm、間隔(ピッチ)が10.6μmのTEモードの正三角格子配列になるように形成したマスクパターンMPを用意し、基板M上にフォトレジストRを50μmの厚さで均一に塗布した後、紫外線でマスクパターンMPを転写して現像し、その後、基板Mをニッケルのめっき浴に浸し、30Vの直流電界を印加して電解を施し、基板Mにニッケルめっきを析出して各厚みtのフィルタ用金属板1を形成した。
そして、図8は透過特性を赤外分光(FTIR)で測定したものであり、図8の実線α3、α8、α15が3μm、8μm、15μmの厚みtの特性である。この図8から明らかなように、厚みtが光の透過率に影響し、厚みtは透過率の面からも中心波長λ0以上に厚くすることが好ましいことが分かる。
そして、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能であり、例えば、フィルタ用金属板1は、エレクトロフォーミングと同等或いはそれ以上の精度で金属パターンの形成が可能な他の方法で製造してもよい。
また、フィルタ用金属板1及び自立型バンドパスフィルタ3の大きさや、形状、材質等は、前記実施形態のものに限るものではない。
さらに、フィルタ用金属板1をエレクトロフォーミングによって製造する際、基板M、フォトレジストRの大きさや、形状、材質等は、前記実施形態のものに限るものではなく、めっき液の種類も前記実施形態のものに限るものではない。
そして、本発明は、種々の用途の自立型バンドパスフィルタ及びその製造方法に適用することができる。
一実施形態のフィルタ用金属板を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。 図1の一部の拡大平面図である。 図1のフィルタ用金属板を使用した自立型バンドパスフィルタの正面図である。 図1のフィルタ用金属板のエレクトロフォーミングによる製造過程の一部の説明図である。 図1のフィルタ用金属板のエレクトロフォーミングによる製造過程の他の一部の説明図である。 レジストパターンが形成された状態の導電性の基板の一部の拡大斜視図である。 フィルタ用金属板の孔の形状によるエレクトロフォーミングのめっき液の浸透の違いを示し、(a)は孔が円形の場合の説明図、(b)は孔が矩形の場合の説明図である。 フィルタ用金属板の透過率特性の実測波形図である。
符号の説明
1 フィルタ用金属板
2 孔
3 自立型バンドパスフィルタ
101 めっき液
M 基板
MP マスクパターン
R フォトレジスト

Claims (6)

  1. 複数個の円形の孔が一定間隔で2次元配列に形成されたメッシュ状のフィルタ用金属板を備え、 前記フィルタ用金属板の厚みが、透過光の中心波長に対して、t≧λ0(t:フィルタ用金属板の厚み(μm)、λ0:透過光の中心波長(μm))であることを特徴とする自立型バンドパスフィルタ。
  2. 前記透過光の中心波長は、30μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の自立型バンドパスフィルタ。
  3. 前記フィルタ用金属板の厚みは、10μmを最小値とすることを特徴とする請求項1または2に記載の自立型バンドパスフィルタ。
  4. 前記孔は、前記フィルタ用金属板に三角格子配列に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の自立型バンドパスフィルタ。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の自立型バンドパスフィルタの製造方法であって、
    エレクトロフォーミングにより、導電性の基板上に、前記フィルタ用金属板の形状に金属を析出し、前記基板から金属パターンを剥離して前記フィルタ用金属板を製造することを特徴とする自立型バンドパスフィルタの製造方法。
  6. 請求項5に記載の自立型バンドパスフィルタの製造方法であって、
    前記基板の表面にフォトレジストを形成する工程と、
    前記フォトレジストの表面をマスクパターンを通して露光する工程と、
    前記フォトレジストの露光されなかった部分を除去して前記フィルタ用金属板の形状に前記基板の表面を露出する工程と、
    前記基板をめっき液に浸漬して電解を施し、前記基板上に前記フィルタ用金属板の形状に金属を析出して前記金属パターンを形成する工程と、
    前記基板から前記金属パターンを剥離する工程とを具備することを特徴とする自立型バンドパスフィルタの製造方法。
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