JP2009229528A - 薄膜製造方法および薄膜製造システム - Google Patents
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Abstract
【課題】画素部の形成とその修正を含めた一連の工程において、薄膜が抜けることなく修正される薄膜製造方法と、その薄膜製造システムを提供する。
【解決手段】カラーフィルタの製造フローには、初期インクジェット工程、修正インクジェット工程およびITO電極膜形成工程がある。初期インクジェット工程11には、インク充填部に親液処理を施す工程S2が含まれ、修正インクジェット工程12には、不良箇所のインク充填部に親液処理を施す工程S7が含まれる。初期インクジェット工程におけるプラズマ処理量は、修正インクジェット工程におけるプラズマ処理量以上に設定される。
【選択図】図1
【解決手段】カラーフィルタの製造フローには、初期インクジェット工程、修正インクジェット工程およびITO電極膜形成工程がある。初期インクジェット工程11には、インク充填部に親液処理を施す工程S2が含まれ、修正インクジェット工程12には、不良箇所のインク充填部に親液処理を施す工程S7が含まれる。初期インクジェット工程におけるプラズマ処理量は、修正インクジェット工程におけるプラズマ処理量以上に設定される。
【選択図】図1
Description
本発明は、薄膜製造方法および薄膜製造システムに関し、特に、液晶ディスプレイ等に使用される薄膜の製造方法と、そのような薄膜製造方法に適用される薄膜製造システムに関するものである。
近年、薄型のディスプレイが発達するのに伴って、液晶ディスプレイに使用されているカラーフィルタの需要も増加傾向にある。このカラーフィルタは、カラー表示を行うためのフィルタであり、通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の画素が配置されている。その画素に応じた電極をON、OFFすることによって液晶がシャッターとして機能し、光が透過することで所望のカラーが表示されることになる。
この画素が形成される画素部をインクジェット方式により形成する技術が開発されてきている。たとえば特許文献1では、無機材料の部分を有するバンク形成面およびその上に形成された有機材料を含むバンクに対して、有機材料が無機材料に比べて薄膜材料液に対する非親和性の程度がより高くなる条件下でプラズマ処理を施す表面処理工程と、表面処理がされたバンクで囲まれる領域に薄膜材料液を充填して薄膜層を形成する薄膜層形成工程とを備えた表示装置の製造方法が提案されている。
ところで、このように形成されたカラーフィルタの膜中に数〜数十ミクロン程度の大きさのゴミ等の異物が混入すると、液晶ディスプレイの表示品質が低下するなどの不具合が生じるおそれがある。さらに、この異物が導電性のものであったり、高い誘電率を有するものであったりした場合には、液晶ディスプレイの駆動用の電極が短絡してしまうおそれがある。そのため、カラーフィルタの製造にあたっては、このような異物を製造時に混入させないようにすることが望ましい。しかしながら、現実問題として、クリーンルーム等の異物の少ない環境で製造する場合でも、異物を全く付着させず、また、異物を内包させないようにカラーフィルタを製造することは極めて困難である。
一方、このような異物により不良となったカラーフィルタを修正する方法が開発されている。たとえば、特許文献2では、カラーフィルタに存在する欠陥を検出する欠陥検出工程と、その欠陥検出工程により検出された欠陥が存在する領域にレーザ光を照射し、欠陥をカラーフィルタ膜と共に除去する欠陥除去工程と、その欠陥除去工程によりカラーフィルタ膜が除去された欠陥除去箇所の濡れ性を向上させる濡れ性向上処理工程と、その濡れ性向上処理工程により濡れ性が向上したカラーフィルタ膜の欠陥除去箇所に、カラーフィルタ膜用組成物を塗布し、硬化させることにより欠陥除去箇所を修正する修正工程とを備えたカラーフィルタの製造方法が提案されている。
特願平11−546858
特開2004−77904号公報
しかしながら、従来のカラーフィルタの製造方法等では次のような問題点があった。特許文献1では画素部に薄膜を形成する手法を開示し、特許文献2では、異物によって不良となった画素部を修正する手法を開示するものの、画素部の形成とその不良箇所の修正を含めた一連の工程については何ら言及されていない。
リソグラフィー法等によってパターニングされてプラズマ処理が施された表面に画素部を形成し、その画素部に不良箇所が検出された場合を想定すると、その不良箇所の画素部を修正した後にインクの塗布を行う際には、レーザ光を照射することによって不良箇所を十分に取り除くことは可能である。ところが、リソグラフィ法等によりパターニングを行った部分にインクの塗布を行おうとすると、パターンの形状によっては残渣が比較的多く発生しやすく、インクが十分に広がらないことがあった。その結果、色抜けが発生してカラーフィルタの歩留まりが低下する要因の一つになった。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、一つの目的は、画素部の形成とその修正を含めた一連の工程において、薄膜が抜けることなく修正される薄膜製造方法を提供することであり、他の目的は、そのような薄膜製造方法に適用される薄膜製造システムを提供することである。
本発明に係る薄膜製造方法は、所定の材料を溶解した溶剤を塗布することにより、基板に薄膜を形成する薄膜製造方法であって、以下の工程を備えている。所定の基板の表面を複数の領域に仕切るように、表面上に仕切り部を形成する。仕切り部によって仕切られた複数の領域に位置する基板の表面部分に第1プラズマ処理を施す。第1プラズマ処理の後、薄膜となる所定の材料を溶解した溶剤を複数の領域のそれぞれに塗布する(第1塗布工程)。溶剤が塗布された基板を検査し、溶剤が塗布された複数の領域のうち、所望の塗布状態が得られていない不良の領域を検出する(検査工程)。不良の領域に塗布された溶剤を除去する。溶剤が除去された不良の領域に位置する基板の表面部分に第2プラズマ処理を施す。第2プラズマ処理が施された基板の表面部分に溶剤を塗布する(第2塗布工程)。第1プラズマ処理を施す工程におけるプラズマ処理量は、第2プラズマ処理を施す工程におけるプラズマ処理量以上となるように設定されている。
この製造方法によれば、第1プラズマ処理量を第2プラズマ処理量以上とすることで、第1塗布工程において溶剤の広がり不良によって白抜けが生じた部分等を、第2塗布工程において確実に修正(修復)することができる。
具体的には、第1塗布工程および第2塗布工程のそれぞれでは、インクジェットにより溶剤が塗布される。また、第1塗布工程および第2塗布工程のそれぞれでは、溶剤として所定の色のインクが塗布される。さらに、第1プラズマ処理を施す工程および第2プラズマ処理を施す工程のそれぞれでは、大気圧のもとで生成したプラズマに基板を晒すことによってプラズマ処理が施される。
本発明に係る薄膜製造システムは、所定の材料を溶解した溶剤を塗布することにより、基板に薄膜を形成する薄膜製造システムであって、第1プラズマ処理部と第1塗布部と検査部と除去部と第2プラズマ処理部と第2塗布部と制御部とを備えている。第1プラズマ処理部は、所定の仕切り部材によって複数の領域に仕切られた基板の表面に第1プラズマ処理を施す。第1塗布部は、第1プラズマ処理が施された基板の複数の領域のそれぞれに、薄膜となる所定の材料を溶解した溶剤を塗布する。検査部は、溶剤が塗布された複数の領域のうち、所望の塗布状態が得られていない不良の領域を検出する。除去部は、不良の領域に塗布された溶剤を除去する。第2プラズマ処理部は、溶剤が除去された不良の領域に位置する基板の表面部分に第2プラズマ処理を施す。第2塗布部は、第2プラズマ処理が施された基板の表面部分に溶剤を塗布する。制御部は、第1プラズマ処理部および第2プラズマ処理部のそれぞれのプラズマ処理量を制御する。その制御部は、第1プラズマ処理におけるプラズマ処理量が、第2プラズマ処理におけるプラズマ処理量以上となるように制御する機能を備えている。
この構成によれば、第1プラズマ処理の処理量を第2プラズマ処理の処理量以上とすることで、第1塗布部において溶剤の広がり不良によって白抜けが生じた部分等を、第2塗布部において確実に修正(修復)することができる。
具体的には、第1塗布部および第2塗布部では、溶剤として所定の色のインクがインクジェットにより塗布される。また、第1プラズマ処理部および第2プラズマ処理部では、大気圧のもとでプラズマが生成される。
(カラーフィルタの製造方法)
ここでは、薄膜製造方法として、インクジェットによりインクを塗布することによってカラーフィルタを製造する製造方法について説明する。カラーフィルタの製造フローには、初期インクジェット工程、修正インクジェット工程およびITO(Indium Tin Oxide)電極膜形成工程がある。初期インクジェット工程では、所定の基板上に形成されたブラックマトリックスパターンのバンク内にインクジェットを用いてインクが充填(塗布)される。修正インクジェット工程では、異物などが発見された不良箇所のインクが所定のレーザによって取り除かれた後に、その部分にインクジェットを用いてインクを充填(塗布)することによって不良箇所が修正(修復)される。ITO電極膜形成工程では、基板上に所定パターンのITO電極膜が形成される。
ここでは、薄膜製造方法として、インクジェットによりインクを塗布することによってカラーフィルタを製造する製造方法について説明する。カラーフィルタの製造フローには、初期インクジェット工程、修正インクジェット工程およびITO(Indium Tin Oxide)電極膜形成工程がある。初期インクジェット工程では、所定の基板上に形成されたブラックマトリックスパターンのバンク内にインクジェットを用いてインクが充填(塗布)される。修正インクジェット工程では、異物などが発見された不良箇所のインクが所定のレーザによって取り除かれた後に、その部分にインクジェットを用いてインクを充填(塗布)することによって不良箇所が修正(修復)される。ITO電極膜形成工程では、基板上に所定パターンのITO電極膜が形成される。
初期インクジェット工程と修正インクジェット工程について、より詳しく説明する。図1に初期インクジェット工程11および修正インクジェット工程の製造フローを示す。まず、初期インクジェット工程11について説明する。初期インクジェット工程11には、ブラックマトリックスパターン(BMパターン)を形成する工程(工程S1)と、インク充填部に親液処理を施す工程(工程S2)と、BMパターン表面に撥液処理を施す工程(工程S3)と、画素部へ画素パターンを形成する工程(工程S4)とが含まれる。
図2に示すように、BMパターンを形成する工程(工程S1)では、ガラス基板などの所定の基板1の上に、たとえば、カーボンを主成分とする有機系の材料を用い、リソグラフィ法、印刷法等によって、ブラックマトリックスパターン2が形成される。ブラックマトリックスパターン2によって取り囲まれた領域にインク(図示せず)が充填(塗布)されて画素部3となる。ブラックマトリックスパターン2は、塗布されたインクが流れ出ないようにバンク状に形成される。
次に、図3に示すように、インク充填部の親液処理を施す工程(工程S2)では、ブラックマトリックスパターン2が形成された基板1の表面に所定の処理量をもってプラズマ4を照射することによって、ブラックマトリックスパターン2を形成する際に画素部3に残った残渣が除去される。このプラズマ4を基板1へ照射することによって、インクに対する基板1の親液性が向上する。
次に、図4に示すように、BMパターン表面に撥液処理を施す工程(工程S3)では、インクがバンク(ブラックマトリックスパターン2)を乗り越えて混色等が発生しないように、基板の表面に、たとえば、CF4などのフッ素系のガスを使用した大気圧のもとで生成したプラズマ7に基板1を晒してブラックマトリックス2の表面にC−F結合を形成することによって、ブラックマトリックス2の表面が撥液性とされる。
次に、図5に示すように、画素部3へ画素パターンを形成する工程(工程S4)では、インクジェット(IJ)によって、画素部3にインク5が塗布される。こうして、画素部3を備えたカラーフィルタが形成される。
次に、修正インクジェット工程12について説明する。図1に示すように、修正インクジェット工程12には、不良箇所を検査する工程(工程S5)と、不良箇所のインクを除去する工程(工程S6)と、不良箇所のインク充填部に親液処理を施す工程(工程S7)と、BMパターン表面に撥液処理を施す工程(工程S8)と、不良箇所へ画素パターン形成を行なう工程(工程S9)とが含まれる。
まず、図6に示すように、不良箇所を検査する工程(工程S5)では、たとえば、可視光線を基板1に照射し、その反射光あるいは透過光をCCD(Charge Coupled Device)などのセンサにて受光し、受光した信号を画像処理することによって、異物等の存在する不良箇所6が検出される。なお、工程S5では、異物等が存在する不良箇所を検出できる方法であれば、上述した方法に限られない。
次に、図7に示すように、不良箇所6のインクを除去する工程(工程S6)では、たとえばエキシマレーザあるいはYAGレーザを用いて、不良箇所6を検査する工程において検出された不良箇所6にレーザ光線を照射することによって、不良箇所6に位置するインク5と異物(図示せず)が除去される。
次に、図8に示すように、不良箇所6のインク充填部6aに親液処理を施す工程(工程S7)では、インク5が除去された基板1の表面に所定の処理量をもってプラズマ4を照射することによって、インク5が除去された基板1の表面に残った残渣が除去される。このプラズマの照射によって、インクに対する基板1の親液性が向上する。
次に、図9に示すように、BMパターン表面に撥液処理を施す工程(工程S8)では、インクがバンク(ブラックマトリックスパターン2)を乗り越えて混色等が発生しないように、基板の表面に、たとえば、CF4などのフッ素系のガスを使用した大気圧のもとで生成したプラズマ7に基板1を晒してブラックマトリックス2の表面にC−F結合を形成することによって、ブラックマトリックス2の表面が撥液性とされる。
次に、図10に示すように、不良箇所へのパターン形成を行なう工程(工程S9)では、インクジェットにより不良箇所6のインク充填部6aにインク5が塗布される。以上の工程を経てカラーフィルタが修正(修復)されて、カラーフィルタとして完成する。上述した製造方法では、後述するように、工程S2におけるプラズマ処理量は、工程S7におけるプラズマ処理量以上となるように設定される。
(カラーフィルタの製造システム)
ここでは、上述したカラーフィルタの製造に適用されるカラーフィルタ製造システムについて説明する。図11に示すように、カラーフィルタ製造システム30は、システムに含まれる各装置の制御を行なう制御部31と、システムの動作に必要な情報を記憶する記憶装置32と、プラズマ処理装置33と、インクジェット装置34と、不良箇所を検出する検査装置35と、レーザ36とを備えて構成される。
ここでは、上述したカラーフィルタの製造に適用されるカラーフィルタ製造システムについて説明する。図11に示すように、カラーフィルタ製造システム30は、システムに含まれる各装置の制御を行なう制御部31と、システムの動作に必要な情報を記憶する記憶装置32と、プラズマ処理装置33と、インクジェット装置34と、不良箇所を検出する検査装置35と、レーザ36とを備えて構成される。
制御装置31は、記憶装置32に記憶されている情報に基づいて、プラズマ処理装置33、インクジェット装置34、検査装置35およびレーザ36の動作をそれぞれ制御する。記憶装置32には、基板1を識別する情報、基板1上に形成されたブラックマトリックス2についての情報、検査装置35による検査結果等が互いに関連付けて記憶される。
プラズマ処理装置33では、制御装置31からの信号に基づいて、ブラックマトリックスパターン2が形成された基板1(図2に示す状態の基板)をプラズマの雰囲気に晒すことによって、基板1にプラズマ処理が施される(工程S2)。なお、プラズマ処理装置33の具体的な構造については後述する。インクジェット装置34では、制御装置31からの信号に基づいて、プラズマ処理が施された基板1の画素部3にインク5が充填(塗布)される。
検査装置35では、インク5が充填された基板1(図5に示す状態の基板)の不良箇所6、すなわち、インク5に異物が混入等している画素部3が検出される。検査装置35が不良箇所6を検出する方法としては、上述したように、可視光線等を使用した光学的な手法が適用される。検査装置35によって、不良箇所が見つからなかった基板1(検査結果OK)については、次の処理に向けて次工程へ搬送される。
一方、検査装置35によって、不良箇所が見つかった基板1(検査結果NG)については、不良箇所が存在する基板であることを示す情報と基板において不良箇所の存在する位置に関する情報とが、基板1を識別するための情報とともに、検査装置35から記憶装置32に送られて記憶装置32に記憶される。
制御装置31は、記憶装置32に記憶された不良箇所6の位置に関する情報に基づいてレーザ36を制御し、不良箇所6に存在するインク5にレーザ光線を照射することによって、不良箇所6のインク5が除去される。
インク5が除去された後、再び、プラズマ処理装置33により基板1をプラズマの雰囲気に晒すことによって、基板1にプラズマ処理が施される(工程S7)。このとき、検査結果がNGの基板であるという情報に基づいて、工程S7において施されるプラズマ処理のプラズマ処理量は、工程S2において施されるプラズマ処理のプラズマ処理量と同じか、それよりも少ないプラズマ処理量に設定される。
すなわち、制御装置31によって、工程S7におけるプラズマ処理量が、工程S2におけるプラズマ処理量以下となるように、プラズマ処理装置33の動作が制御されることになる。なお、プラズマ処理量は、たとえば、レジスト膜をプラズマに晒すことによって減少したレジストの膜厚を指標とすることができる。本カラーフィルタ製造システム30では、上述した基板1の処理が繰り返して行われることになる。
(大気圧プラズマ処理装置)
初期インクジェット工程と修正インクジェット工程とにおいて、基板のインクに対する親液性を向上させるプラズマ処理には、たとえば、大気圧プラズマ処理装置を使用することができる。そこで、大気圧プラズマ処理装置の一例について説明する。
初期インクジェット工程と修正インクジェット工程とにおいて、基板のインクに対する親液性を向上させるプラズマ処理には、たとえば、大気圧プラズマ処理装置を使用することができる。そこで、大気圧プラズマ処理装置の一例について説明する。
図12に示すように、大気圧プラズマ処理装置20は、互いに対向するように配設された1対の電極21、マスフロー部22、電源23、搬送部24を備えて構成される。1対の電極21は、幅約1500mmの基板1を処理することができる寸法(紙面奥行方向)に設定されている。その電極21へは、マスフロー部22によって所定のガスが供給され、また、電源23によって所定の電力(電圧)が供給される。搬送部24は、複数の搬送ローラーからなる。搬送ローラーが回転することによって、基板は一方から他方へ搬送される。
図13に示すように、この大気圧プラズマ処理装置20では、1対の電極21に電源23にて所定の電圧が印加されることによって、1対の電極23間にプラズマ4が生成される。基板1は、1対の電極21によって挟まれた空間(隙間)を通過しながらプラズマ4の雰囲気に晒されることによって、基板1に所定のプラズマ処理が施されることになる。
次に、上述した大気圧プラズマ処理装置による基板の親液性の評価について説明する。まず、大気圧プラズマ処理装置の条件について説明する。処理用のガスとして、希ガスに添加ガスを混合したガスを使用した。希ガスとしてはHe,Ne,Ar,Kr,Xeを用い、添加ガスとしては、N2、O2、CF4、SF6、CO2、H2O、CHF3等を用いることができる。
今回の評価では、希ガスとしてHe(15L/min)を用い、添加ガスとしてN2(7.5L/min)を用い、さらに、これらのガスに空気(Air:0.6L/min)を混合したガスを用いた。なお、ガス種およびその流量比は、上述したガス種とその流量比に限られるものではなく、プラズマ処理の対象物に応じて、適切なガス種とその流量比が設定されることになる。
また、電源23により電極21に印加する電圧を約14kVとし、繰り返し周波数が30kHzのAC電源とした。なお、電源の繰り返し周波数については上述した周波数に限られるものではなく、たとえば、10kHz〜数百kHzの範囲内の周波数が好ましいが、この範囲以外の周波数を用いても差し支えない。また、処理タクトを考慮して、基板の搬送速度を4,504mm/minとした。
次に、初期インクジェット工程におけるプラズマ処理による基板の親液性についての評価とその結果について説明する。まず、基板としてガラス基板に、ブラックマトリックスパターンを形成した。次に、ブラックマトリックスパターンが形成されたガラス基板に、上述した条件のもとでガラス基板の表面にプラズマ処理を施した。
この評価では、ガラス基板を8回搬送させることによって、ガラス基板に8回のプラズマ処理を施した。次に、そのガラス基板におけるブラックマトリックスパターンによって囲まれた領域(画素部)に、インクジェットにより所定のカラーのインクを塗布した。そして、塗布されたインクの広がり具合を観察した。
その結果を図14に示す。図14に示すように、複数の画素部の中には、インク5が画素部の外周(ブラックマトリックスパターン2)にまで十分に広がっていない画素部(丸枠N内)が存在していることが確認された。
次に、修正インクジェット工程におけるプラズマ処理による基板の親液性についての評価とその結果について説明する。まず、上述の初期インクジェット工程においてインクが塗布されたガラス基板を検査し、インクが所望の塗布状態となっていない不良の画素部を検出した。次に、その不良の画素部に位置するインクを、たとえば、エキシマレーザによって除去した。次に、そのガラス基板の表面にプラズマ処理を施した。
このとき、ガラス基板を搬送させる回数を振り分けることによって、ガラス基板にプラズマ処理を4回施したもの、6回施したもの、8回施したものの3条件のガラス基板を作成した。次に、不良の画素部にインクジェットにより所定のカラーのインクを塗布した。そして、塗布されたインクの広がり具合を観察した。
その結果を図15に示す。図15に示すように、プラズマ処理回数が4回のものと6回のものとでは、インク5が画素部の外周(ブラックマトリックスパターン2)にまで十分に広がっていない画素部(丸枠N内)が依然として存在していることが確認された。これに対して、プラズマ処理を8回施したものでは、インクが画素部の外周にまで十分に広がっており、不良であった画素部が確実に修正(修復)されていることが確認された。
この評価結果から次のことがわかる。初期インクジェット工程において、インクの広がりが不十分な不良の画素部が生じるプラズマ処理と同じ条件のプラズマ処理であっても、修正インクジェット工程では、インクが十分に広がっており、初期インクジェット工程のプラズマ処理量よりも少ないプラズマ処理量によって不良の画素部を修復できることがわかった。
言い換えると、初期インクジェット工程におけるプラズマ処理量(プラズマ処理量A)を、修正インクジェット工程におけるプラズマ処理量(プラズマ処理量B)と同じ処理量にするか、それよりも多い処理量とすること、すなわち、プラズマ処理量Aをプラズマ処理量B以上に設定することで、初期インクジェット工程においてインクの広がり不良によって白抜けが生じた画素部や、異物の混入した画素部などの不良の画素部を、修正インクジェット工程において修復できることがわかった。
このように、初期インクジェット工程と修正インクジェット工程とで、プラズマ処理量に差が生じるのは次のように考えられる。まず、初期インクジェット工程では、リソグラフィ法、印刷法等によって形成されたブラックマトリックスパターンの画素部に対してインクジェットによってインクが塗布される。一方、修正インクジェット工程では、レーザによってインクが除去された不良の画素部に対してインクジェットによってインクが塗布される。
ブラックマトリックスパターンを形成する場合では、ブラックマトリックスとなる材料がパターンのエッジ部分にまで十分に浸透せず、残渣が生じやすい。一方、不良の画素部の領域のインクをレーザによって除去する場合には、有機物がほぼ完全に除去されて残渣が少なくなる。このため、初期インクジェット工程においてインクを塗布する領域内の残渣の量が、修正インクジェット工程においてインクを塗布する領域内の残渣の量に比べて多く、また、残渣の分布も不均一になる場合が多い。したがって、このような不均一な残渣を除去するために、初期インクジェット工程におけるプラズマ処理量を、修正インクジェット工程におけるプラズマ処理量と同じ処理量にするか、それよりも多い処理量とすることになると考えられる。
初期インクジェット工程と修正インクジェット工程とでプラズマ処理量に差を設ける手法としては、たとえば、搬送速度を変化させる手法、処理回数を変える手法、複数の電極を配置し、処理工程により使用する電極を限定する手法、処理ガスの混合比を変える手法、投入電力を変化させる手法などが考えられるが、いずれの手法でもよく、また、プラズマ処理量に差を設けることができればこれらの手法に限定されるものではない。さらにプラズマを生成する条件についても、上述した条件に限られず、プロセスに応じて、それぞれ適切な、ガス種、ガスの流量比、電源の周波数、印加電圧等が設定される。
なお、プラズマ処理量は、前述したように、レジスト膜の膜減り量(膜厚)を指標とすることができ、たとえば、当初のレジスト膜の膜厚を約2000nmとして、ある条件のもとで施したプラズマ処理後のレジスト膜の膜厚が約1800nmであるとすると、プラズマ処理量は約200nm/処理と定量的に表すことができる。
以上説明したように、上述したカラーフィルタの製造方法およびその製造システムでは、初期インクジェット工程におけるプラズマ処理量を、修正インクジェット工程におけるプラズマ処理量以上に設定することで、初期インクジェット工程においてインクの広がり不良によって白抜けが生じた画素部や、異物の混入した画素部などの不良の画素部を、修正インクジェット工程において修復することができる。
なお、上述した実施の形態では、薄膜製造方法としてカラーフィルタの製造方法を例に挙げて説明したが、薄膜製造方法とその製造システムは、カラーフィルタの製造の他に、たとえば、有機EL素子、パターン配線、電子放出素子などの薄型ディスプレイの製造におけるパターニングに適用することができる。
今回開示された実施の形態および実施例は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 基板、2 ブラックマトリックスパターン、3 画素部、4 プラズマ、5 インク、6 不良箇所、11 初期インクジェット工程、12 修正インクジェット工程、13 ITO電極膜形成工程、20 大気圧プラズマ処理装置、21 電極、22 マスフロー、23 電源、24 搬送部、30 カラーフィルタ製造システム、31 制御装置、32 記憶装置、33 プラズマ処理装置、34 インクジェット装置、35 検査装置、36 レーザ、S1〜S9 工程。
Claims (7)
- 所定の材料を溶解した溶剤を塗布することにより、基板に薄膜を形成する薄膜製造方法であって、
所定の基板の表面を複数の領域に仕切るように、前記表面上に仕切り部を形成する工程と、
前記仕切り部によって仕切られた複数の前記領域に位置する前記基板の表面部分に第1プラズマ処理を施す工程と、
前記第1プラズマ処理の後、薄膜となる所定の材料を溶解した溶剤を複数の前記領域のそれぞれに塗布する第1塗布工程と、
前記溶剤が塗布された前記基板を検査し、前記溶剤が塗布された複数の前記領域のうち、所望の塗布状態が得られていない不良の領域を検出する検査工程と、
前記不良の領域に塗布された前記溶剤を除去する工程と、
前記溶剤が除去された前記不良の領域に位置する前記基板の表面部分に第2プラズマ処理を施す工程と、
前記第2プラズマ処理が施された前記基板の表面部分に、前記溶剤を塗布する第2塗布工程と
を備え、
前記第1プラズマ処理を施す工程におけるプラズマ処理量は、前記第2プラズマ処理を施す工程におけるプラズマ処理量以上となるように設定された、薄膜製造方法。 - 前記第1塗布工程および前記第2塗布工程のそれぞれでは、インクジェットにより前記溶剤が塗布される、請求項1記載の薄膜製造方法。
- 前記第1塗布工程および前記第2塗布工程のそれぞれでは、前記溶剤として所定の色のインクが塗布される、請求項1または2に記載の薄膜製造方法。
- 前記第1プラズマ処理を施す工程および前記第2プラズマ処理を施す工程のそれぞれでは、大気圧のもとで生成したプラズマに前記基板を晒すことによってプラズマ処理が施される、請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜製造方法。
- 所定の材料を溶解した溶剤を塗布することにより、基板に薄膜を形成する薄膜製造システムであって、
所定の仕切り部材によって複数の領域に仕切られた基板の表面に第1プラズマ処理を施す第1プラズマ処理部と、
前記第1プラズマ処理が施された前記基板の複数の前記領域のそれぞれに、薄膜となる所定の材料を溶解した溶剤を塗布する第1塗布部と、
前記溶剤が塗布された複数の前記領域のうち、所望の塗布状態が得られていない不良の領域を検出する検査部と、
前記不良の領域に塗布された前記溶剤を除去する除去部と、
前記溶剤が除去された前記不良の領域に位置する前記基板の表面部分に第2プラズマ処理を施す第2プラズマ処理部と、
前記第2プラズマ処理が施された前記基板の表面部分に前記溶剤を塗布する第2塗布部と、
前記第1プラズマ処理部および前記第2プラズマ処理部のそれぞれのプラズマ処理量を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、前記第1プラズマ処理におけるプラズマ処理量が、第2プラズマ処理におけるプラズマ処理量以上となるように制御する機能を備えた、薄膜製造システム。 - 前記第1塗布部および前記第2塗布部では、前記溶剤として所定の色のインクがインクジェットにより塗布される、請求項5記載の薄膜製造システム。
- 前記第1プラズマ処理部および前記第2プラズマ処理部では、大気圧のもとでプラズマが生成される、請求項5または6に記載の薄膜製造システム。
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JP2004077904A (ja) * | 2002-08-20 | 2004-03-11 | Dainippon Printing Co Ltd | カラーフィルタの製造方法 |
JP2005118752A (ja) * | 2003-10-20 | 2005-05-12 | Seiko Epson Corp | 薄膜形成方法及び液滴吐出装置 |
JP2005199230A (ja) * | 2004-01-19 | 2005-07-28 | Seiko Epson Corp | 吐出装置、材料塗布方法、カラーフィルタ基板の製造方法、エレクトロルミネッセンス表示装置の製造方法、プラズマ表示装置の製造方法、および配線製造方法 |
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- 2008-03-19 JP JP2008071564A patent/JP2009229528A/ja active Pending
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