JP2009226804A - 装飾品およびその製造方法 - Google Patents

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耕資 大野
Koichi Naoi
直井  孝一
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Abstract

【課題】長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ高硬度、高耐傷性の金色色調を呈する、仕上げ加工された装飾品およびその製造方法の提供を目的としている。
【解決手段】本発明の装飾品は、装飾品用基材と、この装飾品用基材上に被覆されている第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆されている第2の窒化物層と、この第2の窒化物層上に被覆されている、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜と、から構成されてなり、かつ、装飾品用基材が、JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)であり、かつ、基材の一部が、仕上げ加工されており、第1の窒化物層が、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含み、かつ、第1の窒化物層の膜厚が、0.3〜2.0μmであり、第2の窒化物層が、第1の窒化物層と異なり、かつ、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含むことを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、装飾品およびその製造方法に関する。より詳しくは、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ高硬度、高耐傷性の金色色調を呈する、仕上げ加工された装飾品およびその製造方法に関する。
時計バンド、時計ケ−ス、べゼル、裏蓋、中留、尾錠、リューズなどの時計外装部品や、ピアス、イヤリング、指輪、メガネフレーム、ペンダント、ブローチ、ネックレス、ブレスレットなどの装飾品は、種々の材料を用いた層構成をなしている。
たとえば、基材としては、部品加工が容易な軟質基材であるステンレス鋼が広く採用されている。
しかしながら、この基材の一部を加工した(特に、ヘアーライン(サークルヘアーラインを含む)加工、ホーニング加工等の微細な溝、凹凸を有する加工を施した)金色色調を呈する装飾品では、特に装飾品の腐食が発生しやすく、長期にわたる金色色調を維持することは難しいという問題がある。また、装飾品の耐蝕性や硬度などを維持するために、軟質基材表面に窒化チタン被膜などが被覆されるが、窒化チタン被膜は、内部応力が高いため、基材からの剥離が発生しやすい。そのため、軟質基材そのものが露出してしまい、この部分から腐蝕が発生し、装飾品としての価値を著しく低下させるという問題がある。
さらに、金色色調を呈する装飾品には、一般的に、Auメッキ、Au−Niメッキ、Au−Pdメッキなどの被膜が被覆されているが、これらのメッキ被膜は、軟らかくキズが発生しやすいため、装飾品の美観を損ねやすいとの問題がある
金色色調を呈する装飾品としては、基材、チタン被膜、窒化チタン被膜、金-窒化チタ
ン混合被膜を含む金色装飾品が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この装飾品では、所望の金色色調(スイス金色規格1N−14)を得ることはできず、また、耐蝕性および生産性に改良の余地がある。
特開2007−262472公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、高硬度、高耐傷性であり、かつ、長期に渡り金色の美観が維持され得る、仕上げ加工された装飾品およびその製造方法の提供を目的としている。
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、装飾品が、仕上げ加工された特定の装飾品用基材上に、特定の第1の窒化物層、特定の第2の窒化物層および特定の金色色調を呈する金色最外被膜とから構成されると、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、かつ高硬度、高耐傷性で、金色色調を呈する装飾品の美観を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、たとえば、以下の(1)〜(8)に記載した事項により特定される。
(1)本発明の装飾品は、装飾品用基材と、この装飾品用基材上に被覆されている第1の窒化物層と、この第1の窒化物層上に被覆されている第2の窒化物層と、この第2の窒
化物層上に被覆されている、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜と、から構成されてなり、かつ、装飾品用基材が、JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)であり、かつ、基材の一部が、仕上げ加工されており、第1の窒化物層が、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含み、かつ、第1の窒化物層の膜厚が、0.3〜2.0μmであり、第2の窒化物層が、第1の窒化物層と異なり、かつ、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含むことを特徴とする。
(2)本発明の装飾品は、前記装飾品用基材と前記第1の窒化物層との間に、下地層がさらに被覆されており、かつ、下地層が、ハフニウム、チタンおよびジルコニウムの群から選ばれる少なくとも1つを主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分)として含むことも好ましい。
(3)また、前記下地層が、前記第1の窒化物層に含まれる金属元素と同一の金属元素を主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分)として含むことも好ましい。
(4)また、前記第2の窒化物層と金色最外被膜との間に、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物と、金または金合金との混合層が、さらに被覆されていることも好ましい。
(5)さらに、前記金合金が、金−ニッケル合金、金−パラジウム合金、金−プラチナ合金、金−鉄合金、金−銅合金および金−ロジウム合金の群から選ばれる少なくとも1つを主成分として含むことも好ましい。
(6)本発明の装飾品の製造方法は、[1]JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)である装飾品用基材の表面の一部を、仕上げ加工する工程と、[2]加工後の装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第1の窒化物層を形成する工程と、[3]第1の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、第1の窒化物層と異なり、かつ、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第2の窒化物層を形成する工程と、[4]第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜を形成する工程とを含むことを特徴とする。
(7)本発明の装飾品の製造方法は、前記工程[2]が、前記加工後の装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム、チタンおよびジルコニウムの群から選ばれる少なくとも1つを主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分)として含む下地層を形成し、下地層表面に、乾式めっき法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第1の窒化物層を形成する工程を含む、ことも好ましい。
(8)また、前記工程[4]が、前記第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物と、金または金合金との混合層を形成し、混合層表面に、乾式メッキ法により、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜を形成する工程を含むことも好ましい。
本発明によれば、本発明の装飾品は、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、高硬度、高耐傷性であり、かつ、明るさがあり高級感のある金色色調を呈するため、長期にわたり装飾品の美観を維持することができる。さらに、装飾品の生産性も向上させることができる。
本発明の金色色調を呈する装飾品は、仕上げ加工された特定の装飾品用基材上に、第1の窒化物層、第2の窒化物層および金色色調を呈する金色最外被膜とから構成される。
以下、本発明の装飾品およびその製造方法について、具体的に説明する。
〔装飾品用基材〕
本発明の装飾品で用いられる装飾品用基材は、JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)であり、そして、この基材の一部が仕上げ加工されている。
JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)は、一般的なステンレス鋼(たとえば、SUS316L)に比べて、モリブデン(Mo)量が多い。
また、本発明に記載の仕上げ加工とは、鏡面、梨地、ヘアーライン模様、ホーニング模様、型打ち模様、エッチング模様などの加工方法の総称である。また、基材の一部が仕上げ加工されているとは、これらの加工法の少なくとも1つで、基材が表面仕上げされていることを意味する。なお、このような仕上げ加工は、たとえば、ヘアーライン模様であれば公知の機械加工、具体的には、ワイヤーブラシや研磨紙、研磨布を使用して微細な溝を作ることにより模様付けを行う。その他の方法も、従来公知の機械加工によりなされる。
本発明では、JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)を、後述する第1の窒化物層、第2の窒化物層および金色最外被膜を有する装飾品の装飾品用基材に用いることで、装飾品は、より優れた耐蝕性を得ることができ、長期に渡って金色の美観を維持できる。特に、装飾品用基材の一部が仕上げ加工された装飾品では、顕著に優れた耐蝕性を得ることができる。これは、通常、仕上げ加工されると、基材表面上にある被膜(たとえば、窒化チタン被膜、チタンメッキ被膜)との密着性が顕著に悪くなるため、基材そのものが露出してしまい、この部分から腐食が発生するためと考えられる。この点において、本発明に係るSUS317L(ステンレス鋼)は、基材自体も耐蝕性に優れるが、特に、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物からなる被膜、あるいはチタンメッキ被膜との密着性が良好であるため、仕上げ加工された装飾品においても、腐食が発生せず、長期にわたる美観を維持できる。また、基材表面の被膜が、窒化チタン被膜、あるいはチタンメッキ被膜であるとき、より高い密着性を得ることができるため、耐蝕性に優れるばかりでなく、より高硬度で、優れた耐傷性を有する装飾品を得ることができる。
さらに、装飾品用基材に、本発明に係るSUS317L(ステンレス鋼)を用いることで、基材表面に、耐蝕性を付与するためのバリア層(特に湿式メッキ、例えば金メッキ層など)を形成する必要がない。そのため、製品の歩留まりの発生を抑制でき、さらに、バリア層作製のための製造ラインを削減できるため、環境に配慮した装飾品を得ることができる。
以下、本発明に係るSUS317L(ステンレス鋼)を用いた仕上げ加工法について具体的に説明する。
仕上げ加工、例えばヘアーライン加工された腕時計用バンドなどは、SUS317Lを用いて、所定の形状に鍛造等でバンドの形状を作成した後、この腕時計用バンドにワイヤーブラシにより微細な溝を作ることでヘアーライン模様が出来上がる。
〔第1の窒化物層〕
本発明の装飾品を構成している第1の窒化物層は、装飾品用基材と第2の窒化物層との間、または下地層と第2の窒化物層との間に、乾式メッキ法により被膜される金属窒化物被膜からなる。
このような金属窒化物被膜は、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む。また、第1の窒化物層には、不可避成分として、酸素、炭素を含有していても良い。なお、不可避成分とは、たとえば乾式メッキ装置のチャンバー内に不可避的に残留する、酸素や炭素などの成分を言う。
本発明に係る第1の窒化物層は、装飾品に係る積層被膜全体の硬度を維持する、または決定するための硬質付与被膜としての機能と、本発明に係る装飾品用基材(JIS G 4303に準拠して得たSUS317L)および後述する第2の窒化物層との密着性を得るための機能とを有する。すなわち、第1の窒化物層を被膜すると、特に本発明に係るSUS317L(ステンレス鋼)との密着性が良好であるため、装飾品を構成している積層被膜全体の硬度を向上させ、優れた耐蝕性を得ることができる。なお、第1の窒化物層の表面硬度(HV、(株)フィッシャーインストルメンツ製 硬度計(フィッシャースコープ(登録商標)H100)を用いて、荷重5mN 10秒間保持で測定)は、通常1000、好ましくは1500、さらに好ましくは1800である。
第1の窒化物層の厚みや組成は、これら積層被膜全体の硬度、密着性や生産性などを考慮して決定される。
第1の窒化物層の厚みは、0.3〜2.0μm、好ましくは0.6〜1.5μm、さらに好ましくは0.7〜1.0μmである。
第1の窒化物層の厚みが薄すぎると、第1の窒化物層そのものの硬度が小さくなるため、装飾品全体の硬度が小さくなり、装飾品の耐傷性が悪くなるので好ましくない。また、装飾品用基材との密着性が悪くなるので好ましくない。
また、第1の窒化物層の厚みが厚すぎると、成膜時間が長くなって生産性が悪くなり、結果として成膜コストが必要以上に高価になるので好ましくない。
さらに、第1の窒化物層の厚みが、第2の窒化物層の厚みより厚く被覆されると、装飾品全体の硬度が顕著に向上する。
乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が、特に好ましく用いられる。
第2の窒化物層が部分的に磨耗しても、その下層の第1の窒化物層の金色色調が露出するため、結果として長期にわたり美観が維持される金色色調を呈する装飾品を提供できる。このような装飾品においては、第2の窒化物層として、窒化ジルコニウム(ZrN)または窒化ハフニウム(HfN)を用い、第1の窒化物層として、暗い黄色色調を呈する窒化チタン(TiN)、または金色色調を呈する窒化ハフニウム(HfN)を用いることが好ましい。ただし、第1の窒化物層と第2の窒化物層とが、共に窒化ハフニウム(HfN)ではない。
特に、第2の窒化物層として窒化ハフニウム(HfN)を用いることは、明るさや高級
感の他に、暖かみを呈する金色色調が、装飾品の外観色調に付与できるため、第1の窒化物層としての窒化チタン(TiN)と共に用いることが、より好ましい。また、第1の窒化物層として、窒化チタン(TiN)を採用した場合、上記の色調の利点の他に、本発明に係る装飾品用基材(JIS G 4303に準拠して得たSUS317L)との密着性が極めて良好であるため、顕著に優れた耐蝕性を得ることができ、また、窒化チタンは安価であるため、経済的な効果も得ることができるため、特に好ましい。さらに、第2の窒化物層として、窒化ハフニウム(HfN)を採用した場合、上記の金色色調の利点の他に、窒化ハフニウムの硬度は高いので、薄膜でも、装飾品全体として充分な硬度を得ることができる。
〔第2の窒化物層〕
本発明の装飾品を構成している第2の窒化物層は、第1の窒化物層と金色最外被膜との間、または第1の窒化物層と混合層との間に、乾式メッキ法により被膜され、第1の金属窒化物被膜とは異なる金属窒化物被膜である。
第2の窒化物層の金属窒化物被膜は、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む。また、第2の窒化物層には、不可避成分として、酸素、炭素を含有していても良い。
第2の窒化物層は、金色最外被膜に比べて、硬度が高く、傷つきにくいことが望ましい。なお、第2の窒化物層の表面硬度(HV、(株)フィッシャーインストルメンツ製 硬度計(フィッシャースコープ(登録商標)H100)を用いて、荷重5mN 10秒間保持で測定)は、通常1500、好ましくは1800、さらに好ましくは2000以上である。
第2の窒化物層の厚みや組成は、これら積層被膜全体の硬度、密着性や生産性などを考慮して決定される。
第2の窒化物層の厚みは、0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μm、さらに好ましくは0.15〜0.25μmである。
第2の窒化物層の厚みが薄すぎると、装飾品の表面硬度が小さくなって、装飾品の表面が傷つきやすくなるため好ましくない。さらに、第1の窒化物層の厚みを反映してしまうため、明るさがあり高級感のある金色色調を得ることができないため好ましくない。
また、第2の窒化物層の厚みが厚すぎると、成膜時間が長くなって生産性が悪くなり、結果として成膜コストが必要以上に高価になるので好ましくない。特に、明るい淡黄色調(レモンイエロー色調)を得るために、第2の窒化物層として、窒化ジルコニウム(ZrN)または窒化ハフニウム(HfN)が採用された場合、ジルコニウムやハフニウムの材料が高価なので、第2の窒化物層の厚みが厚すぎると、経済的な不利益が大きくなる。
第2の窒化物層の金色色調が、金色最外被膜の色調に反映されることで、装飾品が呈する外観色調は、明るさがあり高級感のある金色色調を得ることができる。
好ましい第2の窒化物層としては、金色最外被膜に比べて硬度が高く、かつ、明るい淡黄色調(レモンイエロー色調)を呈する、窒化ジルコニウム(ZrN)または窒化ハフニウム(HfN)である。これらの金属窒化物を第2の窒化物層として用いることで、装飾品が呈する外観色調は、さらに、明るさがあって高級感のある金色色調を呈し、かつ、より傷が肉眼で視認されにくい。さらに、第2の窒化物層として窒化ハフニウム(HfN)を用いることは、明るさや高級感の他に、暖かみを呈する金色色調が装飾品の外観色調に付与されるため、より好ましい。
また、金色最外被膜が部分的に磨耗することがあっても、その磨耗した部分では、金色
最外被膜と同様の金色色調を呈する第2の窒化物層が露出するため、金色最外被膜の磨耗は目立たない。よって、長期にわたり美観を維持できる装飾品が提供され得る。
これら金属窒化物において、含有する元素の比率を変えることで、第2の窒化物層の色調、例えば金色色調の明暗などを容易に制御でき、装飾品が呈する外観色調を自由に変えることができる。
乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が、特に好ましく用いられる。
〔金色最外被膜〕
本発明に係る装飾品を構成している金色最外被膜は、金色色調を呈する、金(Au)または金合金からなり、乾式メッキ法により第2の窒化物層、または混合層の表面に被膜される。
金色最外被膜に用いられる金合金としては、金と全率固溶する元素を選択することが望ましく、得られた金合金は、薄膜にしても緻密な膜となるため、耐蝕性に優れ、変色などを起しにくく、信頼性が高い。ただし、全率固溶する元素でなくても適宜選択可能である。
このような金合金としては、金-ニッケル(Au-Ni)合金、金-パラジウム(Au-Pd)合金、金-プラチナ(Au-Pt)合金、金-鉄(Au-Fe)合金、金-銅(Au-Cu)合金または金-ロジウム(Au-Rh)合金が挙げられる。これらの金合金は、第2の窒化物層の色調が反映されたときに、装飾品に対して、明るさがあり高級感のある金色色調を呈することができる。なお、これらの金合金は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
金色最外被膜として、よりスイス金色規格1N-14色に近い色調を得ることができる
金-ニッケル(Au-Ni)合金を用いることが好ましい。
金色最外被膜の厚みは、0.005μm以上0.06μm以下の範囲であることが望ましい。金または金合金からなる金色最外被膜は、硬度が低く、傷つきやすいため、装飾品の美観を損ねやすい。しかしながら、金色最外被膜の厚みを0.06μm以下とすることで、金色最外被膜に生じる傷そのものが、0.06μmを超える深さに達し得ない浅い傷となり肉眼で確認されにくくなるため、金色色調の装飾品の美観を損ねることがなくなる。
また、金色最外被膜が0.06μm以下と薄膜になれば、第2の窒化物層の色調がより強く反映されるため、金色最外被膜の色調のみでは決して得られない、明るさがあって、高級感のある金色色調を得ることができる。
なお、0.005μm未満の膜は、被膜として成膜することが困難となる。
さらに、金色最外被膜の厚みが、0.02μm以上0.06μm以下のときは、傷が視認され難いだけでなく、充分に信頼性のある耐蝕性を得ることができるため、好ましい。さらに、0.02μm以上0.04μm以下のときは、傷が視認され難く、かつ充分な耐蝕性を得られるだけでなく、色彩色(明るさ)、耐磨耗性も向上するため、より好ましい。
乾式メッキ法としては、スパッタリング法、アーク法またはイオンプレーティング法を
用いることができる。
以下、本発明の装飾品における各々の被膜、特にスパッタリング法による金色最外被膜の形成についてより具体的に説明する。
腕時計用バンドなどの基材は、予め有機溶剤等で洗浄しておくことが好ましい。また、スパッタリング装置内を10-3Pa台まで排気した後、雰囲気ガスを10-1Pa台まで導入する。
均一な金色色調を有する最外層被膜を得るには、成膜前の装置内部の圧力は低く排気することが望ましい。すなわち、装置内部の圧力が低くなるにしたがって、装置内部の不可避成分の存在する量が減少し、金色色調が均一化するからである。
<金色最外被膜と第2の窒化物層について>
本発明の装飾品の外観色調は、外光より、金色最外被膜で反射された反射光と、金色最外被膜を通過して第2の窒化物層で反射された反射光とが共に視認されることにより得られる。
これにより、装飾品が呈する外観色調は、最外被膜の金色色調に、第2の窒化物層の色調を反映した色調となり、最外被膜のみでは決して得られない、明るさがあり高級感のある金色色調を呈することができる。
このような金色最外被膜と第2の窒化物層において、金属最外被膜として、金-ニッケ
ル(Au-Ni)合金、金-パラジウム(Au-Pd)合金、金-プラチナ(Au-Pt)合
金、金-鉄(Au-Fe)合金、金-銅(Au-Cu)合金または金-ロジウム(Au-Rh)合金を、第2の窒化物層としては、窒化ジルコニウム(ZrN)または窒化ハフニウム(HfN)を用いることで、より明るさがあって高級感のある金色色調を呈し、かつ、より傷が肉眼で視認されにくい装飾品を得ることができるため、好ましい。
さらに、金色最外被膜としては金-ニッケル(Au-Ni)合金を、第2の窒化物層としては窒化ハフニウム(HfN)を用いると、明るさや高級感、傷の非視認性の他に、暖かみのある色調を呈し、スイス金色規格1N−14の金色色調を装飾品の外観色調に付与できるため、より好ましい。
なお、金色最外被膜の厚みが、0.2μm以下であれば、第2の窒化物層の色調が反映されるが、0.2μmを超えると、第2の窒化物層の色調が反映されにくくなり、明るさがあって高級感のある金色色調が得られにくい場合がある。
なお、この場合、金色最外被膜の厚みは、通常0.005〜0.06μm、好ましくは0.02〜0.06μm未満、さらに好ましくは0.02〜0.04μmであり、第2の窒化物層の厚みは、通常0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μm、さらに好ましくは0.15〜0.25μmであり、第1の窒化物層の厚みは、0.3〜2.0μm、好ましくは0.6〜1.5μm、さらに好ましくは0.7〜1.0μmである。
金色最外被膜として金-ニッケル(Au-Ni)合金が採用される場合、この金色最外被膜におけるAu原子含有量は、好ましくは70から90原子%、さらに好ましくは75から85原子%である。また、この最外被膜におけるNi原子含有量は、好ましくは10から30原子%、さらに好ましくは15から25原子%である。このような原子含有量でAuとNiを含有する金色最外被膜は、第2の窒化物層の色調が反映されたときに、明るさがあり高級感のある金色色調を呈することができる。
金色最外被膜として、このような金-ニッケル(Au-Ni)合金が採用され、かつ第2の窒化物層として窒化ハフニウム(HfN)が採用される場合、この第2の窒化物層におけるハフニウム(Hf)の原子含有量は、少なくとも化学量論的組成と同等、あるいは化学量論的組成より多いことが好ましい。このような第2の窒化物層は、金色最外被膜にその色調を反映させたとき、明るさ、高級感、および暖かみを呈する金色色調を装飾品の外観色調に付与できる。具体的には、この第2の窒化物層におけるハフニウム(Hf)原子含有量は、好ましくは50から70原子%、さらに好ましくは55から65原子%である。また、この第2の窒化物層における窒素(N)原子含有量は、好ましくは30から50原子%、さらに好ましくは35から45原子%である。
金色最外被膜、および第2の窒化物層に含まれる原子、およびその含有量を測定すると、実際は、1から5原子%程度の不可避的成分が測定されることが多い。特に、金色最外被膜における表層近傍部分では、不可避的成分が5原子パーセント程度も取り込まれることがあり、この場合、この金色最外被膜の表層近傍部分におけるAu原子含有量は、数原子パーセント少なく測定される。
<ツートーン処理について>
本発明の装飾品は、上記金色最外被膜と異なる色調を有する被膜(たとえば、銀色、ステンレス鋼色、プラチナ色、黒色等の色調を有する被膜)で被覆され、金色最外被膜と金色以外の異色最外層被膜が並列する外観を有することもできる。
〔下地層〕
下地層は、装飾品用基材と第1の窒化物層との間に被膜でき、装飾品全体の密着性を向上させる層として機能することができる。なお、装飾品用基材の表面に下地層を形成する場合、予め装飾品用基材表面を従来公知の有機溶剤(たとえば、アセトン、メタノール)等で洗浄・脱脂しておくことが好ましい。
下地層としては、乾式メッキ法により形成された、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、タングステン(W)の元素を主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分。以下、同じ)として含む金属被膜であり、これらの金属被膜は、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。また、金属被膜としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)の群から選ばれる少なくとも1つの元素を主成分として含むことが好ましく、さらに好ましくは、この元素が第1の窒化物層に含まれる元素と同一の元素を主成分として含む金属被膜であると、装飾品は、装飾品全体の密着性をさらに向上させることができるため、高硬度で、優れた耐蝕性を得ることができる。このような下地層(金属被膜)と第1の窒化物層の組み合わせとしては、例えば、チタン(下地層)-窒化チタン(第1の窒化物層)、ジルコニウム(下地層)-窒化ジルコニウム(第1の窒化物層)、またはハフニウム(下地層)-窒化ハフニウム(第1の
窒化物層)などが挙げられる。特に、装飾品が、下地層として、チタン(Ti)、第1の窒化物層として、窒化チタン(TiN)、第2の窒化物層として、窒化ハフニウム(HfN)であるとき、例えば、第2の窒化物層が磨耗しても、その下層の暗い黄色を呈する窒化チタンの色調が表面化するため、磨耗箇所が識別し難く、かつ、装飾品全体の密着性、および装飾品用基材と第1の窒化物層との密着性、装飾品の耐蝕性をさらに向上させることができるため、最も好ましい積層体(装飾品)を得ることができる。
下地層の厚みは、装飾品全体の硬度、密着性や生産性などを考慮して決定される。
下地層の厚みは、0.05〜0.5μm、好ましくは0.1〜0.3μm、さらに好ましくは0.15〜0.25μmである。被膜の厚みが薄すぎると、装飾品用基材および第1の窒化物層との密着性が低下する。また、厚すぎると、成膜コストが高価になるので経
済的な観点から好ましくない。下地層の膜厚を、この範囲以上に厚くしても、基材との密着は良くならないので、意義は無い。
乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が、特に好ましく用いられる。
なお、下地層は、乾式メッキ法により形成された、炭素原子含有量が5〜15原子%の炭化チタン、炭化クロム、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化ニオブまたは炭化タンタルからなる金属炭化物であることも、装飾品用基材と第1の窒化物層との密着性を更に高めることができるため好ましい。この金属炭化物において、装飾品用基材表面に近づくに従って、上記金属化合物の炭素原子含有量が徐々に少なくなっており、この金属炭化物は、いわゆる傾斜膜と呼ばれている。
〔混合層〕
本発明の装飾品を構成している混合層は、第2の窒化物層と金色最外被膜との間に、乾式メッキ法により形成され、装飾品全体の密着性をさらに向上させる層として機能することができる。
混合層としては、乾式メッキ法により形成された、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物と、金または金合金との層である。また、混合層が、第2の窒化物層と同じ金属窒化物と、金または金合金との層であるとき、装飾品全体の密着性をさらに向上させることができ、かつ明るさがあり高級感のある金色色調を得ることができるため望ましい。
混合層の厚みは、装飾品全体の硬度、密着性や生産性などを考慮して決定される。
混合層の厚みは、0.01〜0.5μm、好ましくは0.02〜0.3μm、さらに好ましくは0.1〜0.2μmである。被膜の厚みが薄すぎると、基材との密着性が低下するので好ましくなく、厚すぎると、成膜コストが高価になるので経済的な観点から好ましくない。
乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が、特に好ましく用いられる。
〔装飾品〕
本発明の金色色調を呈する装飾品は、仕上げ加工された装飾品用基材上に、第1の窒化物層、第2の窒化物層および金色色調を呈する金色最外被膜を有する。
また、装飾品は、装飾品用基材と第1の窒化物層との間に、下地層を有していてもよい。さらに、第2の窒化物層と金色最外被膜との間に、混合層を有していてもよい。
このように特定の層構成から形成されている本発明の装飾品は、長期に渡って腐食が発生せず(耐蝕性に優れ)、高硬度、高耐傷性であり、かつ、明るさがあり高級感のある金色色調を呈する。そのため、たとえば腕時計ケース、腕時計バンド、腕時計のリューズ、腕時計の裏蓋等の時計外装部品、さらにはベルトのバックル、指輪、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、ペンダント、ブローチ、カフスボタン、ネクタイ止め、バッジ、メダル、眼鏡のフレーム、カメラのボディ、ドアノブなどに好適に用いられる。
本発明の装飾品は、表面硬度(HV、(株)フィッシャーインストルメンツ製 硬度計(フィッシャースコープ(登録商標)H100)を用いて、荷重5mN 10秒間保持で測定)が、通常1000〜2500、好ましくは1200〜2500、さらに好ましくは1500〜2500である。この範囲であれば、装飾品は耐傷付き性に優れる。なお、表面硬度が小さすぎると、装飾品の表面に傷がつきやすくなるので好ましくない。
本発明の装飾品の金色色調は、スイス金色規格で1N−14〜2N−18の範囲であることが望ましい。また、この範囲にある装飾品は、鏡面光沢でL*(10.0〜90.0
)a*(6.0)b*(3.0)〜L*(10.0〜90.0)a*(1.0)b*(15.
0)の範囲の金色色調を示している。ここに、L*は国際照明委員会(CIE)のCIE 1976 (L***)色空間における明度指数であり、a*、b*はクロマティクネス指数を表わす。上記金色色調のL*、a*およびb*の測定は、CIEの規格で定められてい
る0度視野XYZ系による物体色の測定方法に従って、鏡面光沢の試験片について、ミノルタ社製スペクトロフォトメータCM503dを用いて行なわれる。
なお、上記の各層は、通常、乾式メッキ法により形成される。乾式メッキ法としては、具体的には、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法、イオンビーム等の物理的蒸着法(PVD)、化学的蒸着法(CVD)などが挙げられる。中でも、スパッタリング法、アーク法、イオンプレーティング法が特に好ましく用いられる。
また、本発明の装飾品は、
[1]JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)である装飾品用基材の表面の一部を、仕上げ加工する工程と、
[2]加工後の装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第1の窒化物層を形成する工程と、
[3]第1の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、第1の窒化物層と異なり、かつ、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第2の窒化物層を形成する工程と、
[4]第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜を形成する工程とを含む方法により製造される。
また、前記製造方法において、前記工程[2]が、
前記加工後の装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム、チタンおよびジルコニウムの群から選ばれる少なくとも1つを主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分)として含む下地層を形成し、
下地層表面に、乾式めっき法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第1の窒化物層を形成する工程を含むことも好ましい。
さらに、前記製造方法において、前記工程[4]が、
前記第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物と、金または金合金との混合層を形成し、
混合層表面に、乾式メッキ法により、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜を形成する工程を含むことも好ましい。
以上、窒化物について説明した。前述の各層は、前述したとおり、窒化物であることが最も望ましいが、炭窒化物、炭酸化物、窒酸化物、窒炭酸化物でも同様の効果が得られる。
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。
[実施例1〜2、比較例1〜4]
(実施例1)
ステンレス鋼(SUS317L)をヘアーライン加工して得られた腕時計ケース用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付けた。
この腕時計ケース用基材表面に、厚み0.8μmの窒化チタンメッキ被膜(第1の窒化物層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
スパッタリングターゲット:チタン
スパッタリング電力:5kW
ガス:アルゴン、窒素
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
次いで、窒化チタンメッキ表面に、厚み0.2μmの窒化ハフニウムメッキ被膜(第2の窒化物層)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成した。
<成膜条件>
スパッタリングターゲット:ハフニウム
スパッタリング電力:5kW
ガス:アルゴン、窒素
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
次いで、この窒化ハフニウムメッキ被膜表面に、厚み0.03μmの金色色調を有する金とニッケルとの合金メッキ被膜(金色最外被膜)をスパッタリング法により下記の成膜条件で形成し、スイス金色規格で1N−14の色調を有する金色の腕時計ケースを得た。
<成膜条件>
スパッタリングターゲット:金、ニッケル合金
スパッタリング電力:1kW
ガス:アルゴン
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
(評価)
(1)傷評価
得られた金色色調を有する装飾品(金色装飾品)の表面上に、スガ試験機(株)製の摩耗試験機[商品名 NUS−ISO−2]を用い、下記の方法に従って傷をつけた。
すわなち、摩耗輪に貼り付ける研磨紙としては、ラッピングフィルム(フィルム表面に粒子径0.5μmのCr23粒子があるもの)を用い、この研磨紙と試験片との接触荷重は500gとし、研磨紙と試験片との相対的な往復運動回数は50回として、研磨紙の圧接により試験片に傷をつけた。
この傷と、基準サンプル(実施例16〜17の試験片に傷を付けたサンプルを基準サンプルとして採用した)の傷とを5人の判定人によって目視により比較し、前記金色装飾品
の表面上に付けられた傷について下記の基準にて評価した。結果を表1に示す。
◎:傷が目立たない (傷がきわめて視認されにくい)
○:傷がほとんど目立たない(傷が視認されにくい)
▲:傷がわずかに目立つ (傷がわずかに視認される)
×:傷が目立つ (傷が視認される)
(2)耐蝕性試験
得られた金色装飾品の表面に、JIS H 8502 に記載のめっきの耐蝕性試験方法
(CASS試験)に準拠して、酢酸と少量の塩化第二銅を加えた食塩水を噴霧し、表面の耐蝕性を下記の基準にて評価した。結果を表1に示す。
○: 変化無し
▲: 僅かに一部分変色有り
×: 全体的に変色有り
(3)色彩色試験
得られた金色装飾品の表面の色彩色を、ミノルタ社製スペクトロフォトメータCM503dにより、下記の基準にて評価した。結果を表1に示す。
◎:L* 81.0以上
○:L* 80.0〜81.0未満
▲:L* 79.0〜80.0未満
×:L* 79.0未満
(4)硬度
得られた金色装飾品の表面硬度(HV)を、硬度計((株)フィッシャーインストルメンツ社製 フィッシャースコープ(R) H100)を用いて、荷重5mN 10秒間保持
で測定し、下記の基準にて評価した。結果を表1に示す。
◎:硬度 2000(HV)以上
○:硬度 1500〜2000(HV)未満
▲:硬度 1000〜1500(HV)未満
×:硬度 1000(HV)未満
(5)密着性試験
得られた金色装飾品の表面に、市販の粘着テープを一定面積(2.3cm×5.0cm)貼り付け、引き剥がすことにより、テープ粘着面の状態を下記の基準にて評価した。結果を表1に示す。
○:金色装飾品表面由来の被膜が、きわめて付着していない
▲:金色装飾品表面由来の被膜が、付着していない
×:金色装飾品表面由来の被膜が、付着している
なお、膜厚の測定は、表面粗さ計を用いて行った。
(実施例2、比較例1〜4)
ステンレス鋼各種(SUS317L、SUS304、SUS316L)をヘアーライン加工またはホーニング加工して得られた腕時計ケース用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付けた。その後、実施例1と同様の条件、膜厚で成膜を行った。なお、SUS317L、SUS304およびSUS316Lは、JIS G 4303に準拠したステンレス鋼である(以下、同じ)。
得られた金色装飾品(実施例2、比較例1〜4)について、実施例1と同様にして、前述の(1)傷評価、(2)耐蝕性試験、(3)色彩色試験、(4)硬度および(5)密着
性試験の評価を行った。
実施例1〜2および比較例1〜4の結果を表1に示す。
Figure 2009226804
[実施例3〜4、比較例5〜8]
(実施例3)
実施例1と同様の条件により作製した腕時計ケース用基材表面に、実施例1と同様の成膜条件、膜厚にて、チタンメッキ層(下地層)を形成した。なお、下地層中、チタンの含有量は、50原子%以上であった。
<成膜条件>
スパッタリングターゲット:チタン
スパッタリング電力:5kW
ガス:アルゴン
成膜圧力:0.2Pa
加速電圧(バイアス電圧):Ground〜−100V
次いで、チタンメッキ表面に、実施例1と同様の条件で、厚み0.8μmの窒化チタンメッキ被膜(第1の窒化物層)を作製した。
次いで、窒化チタンメッキ表面に、実施例1と同様の条件で、厚み0.2μmの窒化ハフニウムメッキ被膜(第2の窒化物層)を作製した。
次いで、窒化ハフニウムメッキ被膜表面に、実施例1と同様の条件で、厚み0.03μmの金色色調を有する金とニッケルの合金メッキ被膜(金色最外被膜)を作製した。
(実施例4、比較例5〜8)
ステンレス鋼各種(SUS317L、SUS304、SUS316L)をヘアーライン加工またはホーニング加工して得られた腕時計ケース用基材を有機溶剤で洗浄・脱脂した。次いで、これらの基材をスパッタリング装置内に取り付けた。その後、実施例1および3と同様の条件、膜厚で成膜を行った。
得られた金色装飾品(実施例3、4、比較例5〜8)について、実施例1などと同様に
して、(1)傷評価、(2)耐蝕性試験、(3)色彩色試験、(4)硬度および(5)密着性試験の評価を行った。結果を表2に示す。
Figure 2009226804
[実施例5〜8、比較例9〜10]
実施例1と同様の条件により作製した腕時計ケース用基材表面に、実施例1と同様の成膜条件で、膜厚を下記表3のように変化させた窒化チタンメッキ被膜(第1の窒化物層)をスパッタリング法により形成した。なお、第1の窒化物層より上層の成膜条件、膜厚は、実施例1と同様である。
得られた金色装飾品(実施例5〜8、比較例9〜10)について、実施例1などと同様にして、(1)傷評価、(2)耐蝕性試験、(3)色彩色試験、(4)硬度および(5)密着性試験の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 2009226804
[実施例9〜14]
実施例1と同様の条件により作製した腕時計ケース用基材表面に、実施例3と同様の成膜条件で、膜厚が表4の記載になるように、ジルコニウムメッキ被膜(下地層)をスパッタリング法により形成した。つまり、ターゲットをチタンからジルコニウムに変更した点のみが実施例3と異なる。下地層より上層の成膜条件、膜厚は実施例1と同様である。
得られた金色装飾品(実施例9〜14)について、実施例1などと同様にして、(1)傷評価、(2)耐蝕性試験、(3)色彩色試験、(4)硬度および(5)密着性試験の評価を行った。結果を表4に示す。
Figure 2009226804
[実施例15〜20]
実施例1と同様の条件により作製した腕時計ケース用基材表面に、実施例3と同様の成膜条件で、チタンメッキ被膜(下地層)をスパッタリング法により形成した。下地層より上層である、第1の窒化物層、第2の窒化物層の成膜条件、膜厚は実施例1と同様である。
さらに、第2の窒化物層である窒化ハフニウムメッキ被膜表面に、膜厚が表5の記載になるように、金色色調を有する金とニッケルとの合金メッキ被膜(金色最外被膜)を、実施例1と同様の成膜条件で形成し、金色色調を呈する腕時計ケースを得た。
得られた金色装飾品(実施例15〜20)について、実施例1などと同様にして、(1)傷評価、(2)耐蝕性試験、(3)色彩色試験、(4)硬度および(5)密着性試験の評価を行った。結果を表5に示す。
Figure 2009226804
本発明の装飾品は、特に長期に渡って腐食が発生せずに(耐蝕性に優れ)、高硬度、高耐傷性であり、かつ、明るさがあり高級感のある金色色調を維持できるため、たとえば腕時計ケース、腕時計バンド、腕時計のリューズ、腕時計の裏蓋等の時計外装部品、ベルトのバックル、指輪、ネックレス、ブレスレット、イヤリング、ペンダント、ブローチ、カフスボタン、ネクタイ止め、バッジ、メダル、眼鏡のフレーム、カメラのボディ、ドアノブなどに好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 装飾品用基材と、
    この装飾品用基材上に被覆されている第1の窒化物層と、
    この第1の窒化物層上に被覆されている第2の窒化物層と、
    この第2の窒化物層上に被覆されている、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜と、
    から構成されてなり、かつ、
    装飾品用基材が、JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)であり、かつ、基材の一部が、仕上げ加工されており、
    第1の窒化物層が、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含み、かつ、第1の窒化物層の膜厚が、0.3〜2.0μmであり、
    第2の窒化物層が、第1の窒化物層と異なり、かつ、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含むことを特徴とする装飾品。
  2. 前記装飾品用基材と前記第1の窒化物層との間に、下地層がさらに被覆されており、かつ、
    下地層が、ハフニウム、チタンおよびジルコニウムの群から選ばれる少なくとも1つを主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分)として含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の装飾品。
  3. 前記下地層が、前記第1の窒化物層に含まれる金属元素と同一の金属元素を主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分)として含む
    ことを特徴とする請求項2に記載の装飾品。
  4. 前記第2の窒化物層と金色最外被膜との間に、
    ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物と、金または金合金との混合層が、さらに被覆されている、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の装飾品。
  5. 前記金合金が、金−ニッケル合金、金−パラジウム合金、金−プラチナ合金、金−鉄合金、金−銅合金および金−ロジウム合金の群から選ばれる少なくとも1つを主成分として含む
    ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の装飾品。
  6. [1]JIS G 4303に準拠して得たSUS317L(ステンレス鋼)である装飾品用基材の表面の一部を、仕上げ加工する工程と、
    [2]加工後の装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第1の窒化物層を形成する工程と、
    [3]第1の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、第1の窒化物層と異なり、かつ、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第2の窒化物層を形成する工程と、
    [4]第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜を形成する工程とを含む
    ことを特徴とする装飾品の製造方法。
  7. 前記工程[2]が、
    前記加工後の装飾品用基材の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム、チタンおよびジルコニウムの群から選ばれる少なくとも1つを主成分(下地層中、50〜100原子%含有している成分)として含む下地層を形成し、
    下地層表面に、乾式めっき法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物を含む、第1の窒化物層を形成する工程を含む、
    ことを特徴とする請求項6に記載の装飾品の製造方法。
  8. 前記工程[4]が、
    前記第2の窒化物層の表面に、乾式メッキ法により、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)の群から選ばれる少なくとも1つの元素の窒化物と、金または金合金との混合層を形成し、
    混合層表面に、乾式メッキ法により、金または金合金からなる、金色色調を呈する金色最外被膜を形成する工程を含む
    ことを特徴とする請求項6または7に記載の装飾品の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN114457312A (zh) * 2022-01-13 2022-05-10 厦门建霖健康家居股份有限公司 一种射频和直流共溅射灰色装饰膜层及其方法和应用

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