JP2009225558A - 鉄心及び鉄心の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】形状精度が良好で磁気特性の劣化が少ない鉄心を提供する。
【解決手段】磁極ティース単位毎に分割されたコアシート12を複数枚積層して成る分割積層コア11を複数個連結して構成される鉄心10であり、分割積層コア11はヨーク部11aとティース部11bを備え、糸状の熱可塑性樹脂15が、少なくとも隣り合う分割積層コア11の接合されるヨーク部端面を通るように巻線され、糸状の熱可塑性樹脂15が溶融固化されることにより隣り合う分割積層コア11が連結されている。
【選択図】図1

Description

この発明は、分割積層コアを複数個連結して構成される鉄心及び鉄心の製造方法に係り、例えば回転電機の固定子、リニアモータの電機子に使用される鉄心に関するものである。
従来、回転電機の固定子として、極歯単位毎に分割された積層鉄心と、積層鉄心の極歯部に直交する巻線部を備え、積層鉄心を所定数量組み合わせて円筒形状とした後、積層鉄心の分割面の外周端部を積層方向に溶着することにより一体構造とするものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、外周に環状のヨーク部を、環状のヨーク部から内側に突出する複数の磁極部をそれぞれ備え、環状ヨーク部を磁極部単位で分割してかしめ積層された分割積層体を形成し、分割積層体の上下方向に隣り合う第1、第2の分割ヨーク片に左右交互に第1、第2の連結部を設け、噛合接続した隣の分割積層体と第1、第2の分割ヨーク片の第1、第2の連結部を部分的に挿通するピンにより回動可能に連結した積層ヨーク鉄心が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、固定子鉄心が分割されたティース鉄心部とコアバック鉄心部とからなる複数の分割鉄心体で構成され、分割鉄心体のティース鉄心部を取り囲むように固定子巻線を巻装した回転電機の固定子において、分割鉄心体のコアバック鉄心部の外周側近傍の側面の一方に周方向に伸びた延長部、もう一方に段差部を設け、延長部の内周側に係止用凸部、延長部の先端に傾斜部を設け、段差部の外周側に係止用凹部を設けるとともに、コアバック鉄心部の外周側に折曲部を設け、分割鉄心体に巻線を施した後、係止用凸部と係止用凹部を嵌合するとともに、コアバック鉄心部の折曲部を傾斜部の方向に折り曲げることによって構成する固定子が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
特開平6−105487号公報(課題を解決する手段、図1、図2) 特開2003−52138号公報(請求項1、図1〜図6) 特開2000−209793号公報(課題を解決するための手段、図1、図2)
しかしながら、特許文献1の回転電機の固定子は、その製造において専用の溶接機を必要とし、作業工程数が増加し、コスト高になるという問題があった。また、溶接を積層鉄心の連結部ごとに行った場合、溶接の歪みによる応力が発生しやすく、固定子の形状精度悪化の原因となったり、積層鉄心同士の導通による磁気特性の劣化という問題があった。
また、特許文献2のように、隣り合う分割積層体の連結部をピンで結合させた固定子では、ピンを貫通孔の上から下までの距離を挿入しなければならない。この場合、ピンを挿入している途中でピンにかじり(摺動部表面に傷が付くこと)等が発生する可能性があるため、ピンの表面仕上げや外径寸法は高精度に保持しなければならないという問題があった。また、隣接する分割積層体間の位置精度など、固定子の形状精度が必要な場合では、ピンと貫通孔とのクリアランスを高精度にする必要があり、その結果コスト高になるという問題があった。
さらに、特許文献3の固定子では、分割鉄心体を製造する場合、嵌合用の継ぎ手を設けなければならず、複雑な形状の打ち抜き工程等が必要となり、コスト高になることや、分割鉄心体の嵌合部分では、鉄心材を塑性変形させる必要があることや、隣り合う分割鉄心体同士の導通により磁気特性の劣化が発生するという問題があった。
この発明は、上記のような課題を解消するためになされたものであり、溶接やピンあるいは嵌合等によらないで積層方向に隣り合う分割積層コアを導通させることなく連結させることができ、形状精度が良好で磁気特性の劣化が少ない鉄心を提供することを目的とする。
この発明による鉄心は、磁極ティース単位毎に分割されたコアシートを複数枚積層して成る分割積層コアを複数個連結して構成される鉄心である。分割積層コアはヨーク部とこのヨーク部から突出するティース部を備え、糸状の熱可塑性樹脂が、少なくとも隣り合う分割積層コアの接合されるヨーク部端面を通るように巻線され、糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより隣り合う分割積層コアが連結されている。
また、この発明による鉄心は、ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを薄肉部を介して連結したものを円環状に丸めて両端の積層コアを突き合わせて固定される鉄心である。両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に複数本の溝が設けられ、糸状の熱可塑性樹脂がこれらの溝に巻線され、糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより両端の積層コアが連結されている。
また、この発明による鉄心は、ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを関節部を介して連結したものを円環状に丸めて両端の積層コアを突き合わせて固定される鉄心である。両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に複数本の溝が設けられ、糸状の熱可塑性樹脂がこれらの溝に巻線され、糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより両端の積層コアが連結されている。
また、この発明による鉄心の製造方法は、磁極ティース単位毎に分割されたコアシートを複数枚積層して成る分割積層コアを複数個連結して構成する鉄心の製造方法である。分割積層コアはヨーク部とこのヨーク部から突出するティース部を備え、糸状の熱可塑性樹脂を、少なくとも隣り合う分割積層コアの当接するヨーク部端面を通るように巻線する工程と、糸状の熱可塑性樹脂を溶融固化することにより隣り合う分割積層コアを連結する工程を備えた。
また、この発明による鉄心の製造方法は、ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを薄肉部を介して連結したものを円環状に丸めて両端の積層コアを突き合わせて固定する鉄心の製造方法である。そして、両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に設けた複数本の溝に糸状の熱可塑性樹脂を巻線する工程と、薄肉部を介して連結した複数個の積層コアを円環状に丸めて両端の積層コアを突き合わせる工程と、糸状の熱可塑性樹脂を溶融固化することにより両端の積層コアを連結する工程を備えた。
また、この発明による鉄心の製造方法は、ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを関節部を介して連結したものを円環状に丸めて両端の積層コアを突き合わせて固定する鉄心の製造方法である。そして、両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に設けた複数本の溝に糸状の熱可塑性樹脂を巻線する工程と、関節部を介して連結した複数個の積層コアを円環状に丸めて両端の積層コアを突き合わせる工程と、糸状の熱可塑性樹脂を溶融固化することにより両端の積層コアを連結する工程を備えた。
この発明の鉄心によれば、溶接やピン挿入又は嵌合等によらないで、隣り合う分割積層コア同士を連結させることができ、溶接や嵌合により分割積層コアに発生する歪みによる応力やピンの挿入によるかじりを解消することができるため、形状精度が良好な鉄心を得ることができる。
また、隣り合う分割積層コア同士は熱可塑性樹脂で連結されているため、分割積層コアの形状偏差により連結時に発生する応力の緩和や、分割積層コア間の導通を防止することができ、磁気特性の劣化が少ない鉄心を得ることができる。
さらに、固化された熱可塑性樹脂を再び溶融することにより、連結された分割積層コアを容易に解体することができる。
また、隣り合う分割積層コアの間で熱可塑性樹脂が溶融固化され、積層するコアシート間に熱可塑性樹脂が浸透することにより、積層方向に隣り合うコアシート同士を固定することができる。
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1による鉄心の構造を示す斜視図である。図1に示す鉄心10は、回転電機の固定子に使用される円環状の鉄心10の実施例を示している。図1(a)に示すように、鉄心10は、磁極ティース単位毎に分割された、例えば厚さが約1mm以下の鉄板や電磁鋼板等の磁性板材であるコアシート12を複数枚積層固定してなる分割積層コア11からなり、当該分割積層コア11を複数個用意して、円環状に連結させることで構成されている。分割積層コア11は、図1(b)に示すように、ヨーク部11aと、このヨーク部11aの延在方向から略直交方向に突出するティース部11bとを備え、ヨーク部11aの延在方向の両端面11cには、その積層方向全長にわたり凹状の溝14が1列または2列以上設けられている。そして、図1(c)に示すように、糸状の熱可塑性樹脂15は、ヨーク部11aの延在方向を通り、かつヨーク部11aの両端面の溝14を通って、分割積層コア11を取り囲むように巻線されている。
このとき、糸状の熱可塑性樹脂15の太さ及び巻線回数を調整することにより、ヨーク部11aの両端面の溝14のヨーク部延在方向の断面積よりも熱可塑性樹脂15の断面積(等価径)を大きくすることが好ましい。また、ヨーク部11aの両端面11cに溝14を設け、この溝14に糸状の熱可塑性樹脂15を巻線することにより、分割積層コア11の所望の位置に局部的に熱可塑性樹脂15を巻線させることができる。そのため、隣り合う分割積層コア11を連結させるときの力学的バランスが良好になるように調整することができ、耐モーメント力が増す。また、溝を設けることにより、巻線中における熱可塑性樹脂15の位置ズレや、巻線後の解れを防止できる。なお、ヨーク部11aの両端面に溝14が無い場合においても、例えば、糸状の熱可塑性樹脂15の巻線位置に、位置ズレ防止用のブロック(図示せず)を用意して熱可塑性樹脂15を誘導することで、所定の位置への巻線が可能となる。巻線の方法としては、例えば、ノズルの先端から糸状の熱可塑性樹脂15が出てくる巻線機を使用し、当該ノズルを分割積層コア11の周りを周回することで熱可塑性樹脂15の巻線ができる。
次に、熱可塑性樹脂15が巻線された分割積層コア11を複数個用意して、ティース部11bが同じ円中心方向に向くように揃えて円環状に配置し、隣り合う分割積層コア11のヨーク部11aの端面同士を当接する。ヨーク部11aの端面同士を当接した状態で、例えば、これらを加熱炉に入れて、熱可塑性樹脂15が融点以上になるまで加熱し溶融させて、その後、冷却させる。冷却させることで、溶融した熱可塑性樹脂15は固化して、ヨーク部11aの端面同士が固着され、隣り合う分割積層コア11を連結させることができ、図1(a)に示すような、回転電機の固定子に使用される円環状の鉄心10を得ることができる。また、加熱した状態で、隣り合う分割積層コア11のヨーク部11aの端面同士を加圧することにより、溶融された熱可塑性樹脂15が広がるため、より強く固着させることができる。このとき、ヨーク部11aの両端面の溝14の断面積よりも熱可塑性樹脂15の断面積を大きくすることにより、隣り合う分割積層コア11のヨーク部端面同士の間に溶融した熱可塑性樹脂15が広く浸透するため、確実に固着できる。
熱可塑性樹脂15として、ナイロン、塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン等の材料を用いることができる。熱可塑性樹脂15の融点は、鉄心へのフレームの焼き嵌めや運転時の温度上昇に耐えることができ、且つ、熱可塑性樹脂15の加熱および冷却時間短縮のため、概ね70℃〜200℃であることが望ましい。本例では、糸状の熱可塑性樹脂15として、融点が125℃から145℃の低融点ナイロン6の樹脂糸を使用し、当該樹脂糸を12本束ねて1本とした等価直径が0.11mmのものを使用した。因みにその重量は10000mで約110gとなる。
従来の溶接やピンの挿入あるいは嵌合で分割積層コアを連結させた構成した鉄心では、例えば、専用の溶接機を導入する必要があることや、分割積層コアに嵌合用の継ぎ手を設けなければならず、複雑な形状の打ち抜き工程が必要となることで、コスト高になるという問題がある。
また、溶接や嵌合で発生する歪みやピン等の挿入によるかじりが発生する可能性があるため、分割積層コアの形状精度が劣化することがあったが、本実施の形態のように、糸状の熱可塑性樹脂15により分割積層コア11同士が連結されているため、分割積層コア11に歪みを発生させることなく、かつ、傷を付けることなく連結させることができ、形状精度が良好な鉄心10を得ることができる。
さらに、分割積層コア11自身に形状偏差がある場合、分割積層コア11を複数個連結した場合、連結部分に大きな応力が生じ、形状精度および磁気特性の劣化が増大する。これに対して、本実施の形態では、連結の際に薄く均一に広がった熱可塑性樹脂15の樹脂膜がクッションとなり、分割積層コア11の形状偏差を吸収し、連結部分の応力集中を緩和できるため、形状精度が良好で、且つ、磁気特性の劣化が少ない鉄心10を得ることができる。
また、溶接やピン挿入あるいは嵌合による連結では、積層方向に隣り合うコアシート同士が導通する可能性があり、磁気特性を劣化させる要因となるのに対して、本実施の形態では、熱可塑性樹脂15で連結されるので、コアシート間の磁気的導通を防止することができ、磁気特性の劣化の少ないステータを得ることができる。
さらに、分割積層コア11に形成した溝14への熱可塑性樹脂15の巻線回数を変えることで、固着力の調整や溶融後の樹脂膜の厚み調整を容易に行うことができ、必要とされる形状精度の確保や搬送時に外力を受けても分裂しないための固着力の確保などが容易に行える。
図2は、本実施の形態による糸状の熱可塑性樹脂の巻線状態及び加熱溶融状態の詳細を示す図である。図2(a)に示すように、ヨーク部11aの両端面11cに溝14が形成された分割積層コア11を用意する。次に、図2(b)に示すように、糸状の熱可塑性樹脂15が、溝14に入るようにかつ分割積層コア11を取り囲むように巻線を行う。そして、糸状の熱可塑性樹脂15が巻線された複数の分割積層コア11を、そのティース部が同じ円中心方向に向くように円環状に配置する。この状態で、例えば、ヨーク部11aの内周側及び外周側の両方から、ヒータを内蔵したブロック(図示せず)を接触させて、隣り合う分割積層コア11同士の連結位置を合わせながら、熱可塑性樹脂15を融点以上の温度に加熱し、溶融させる。それにより、図2(c)に示すように、巻線された糸状の熱可塑性樹脂15は、隣り合う分割積層コア11間のヨーク部端面間に薄く広がる。その後、熱可塑性樹脂5を融点以下に冷却させることで固化し、隣り合う分割積層コア11同士を連結させることができる。
隣り合う分割積層コア11同士の位置合わせについては、上述のようなブロックを用いて合わせるだけではなく、例えば、図3に示すような方法により容易に行うことができる。すなわち、図3(a)に示すように、隣り合う一方の分割積層コア11のヨーク部両端面にV字形状の溝16を設け、隣り合う他方の分割積層コア11のヨーク部両端面に溝16の断面積よりも小さなV字形状の突起17を設ける。次に、前者の分割積層コア11のヨーク部両端面の溝16に糸状の熱可塑性樹脂15を巻線する。そして、隣り合う分割積層コア11の溝16と突起17を合わせた状態で加熱することで、突起17の先端が溝16に当接し、隣り合う分割積層コア11同士を精度良く連結することができる。
また、図3(b)に示すように、隣り合う一方の分割積層コア11のヨーク部両端面に半円状の溝18を設け、隣り合う他方の分割積層コア11のヨーク部両端面に溝18の断面積よりも小さな半円状の突起19を設ける。次に、前者の分割積層コア11のヨーク部両端面の溝18に糸状の熱可塑性樹脂15を巻線する。そして、隣り合う分割積層コア11の溝18と突起19を合わせた状態で加熱することで、突起19の先端が溝18に当接し、隣り合う分割積層コア11同士を精度良く連結することができる。
図3(a)、(b)に示すような方法で隣り合う分割積層コア11同士を連結させることで、鉄心10を構成する分割積層コア11の全数に熱可塑性樹脂15を巻線する必要がないため、熱可塑性樹脂15の使用量を低減できるといった効果がある。
また、図4(a)に示すように、分割積層コア11のヨーク部両端面11cに溝14を設けるだけでなく、ヨーク部11aのティース部側端面に溝20を設けるとともに、ティース部11bの突出側でない両端面に溝21を設ける。そして、糸状の熱可塑性樹脂15を、ヨーク部の両端面11cの溝14とヨーク部のティース部側端面の溝20の間、及び、ティース部両端面の溝21の間で巻線させる。そして、糸状の熱可塑性樹脂15を巻線した状態で、図4(b)に示すように、スロットセル30をティース部両端面に重ね合わせ、熱可塑性樹脂15を溶融させる。それにより、ヨーク部両端面の熱可塑性樹脂15により隣り合う分割積層コア11同士を連結させるとともに、ヨーク部のティース部側端面およびティース部両端面の熱可塑性樹脂15によりスロットセル30と分割積層コア11を接着させることができる。ただし、この場合、熱可塑性樹脂5の融点より高い融点のスロットセル30を用いる必要がある。本例では、スロットセル30としてポリエステル(PET)を使用しその融点は約260度である。スロットセル30は、分割積層コア11に強固に接着することができるので、分割積層コア11のティース部11bにコイル線を巻線する際のズレや剥がれを防止することができ、コイル線と分割積層コア11の間に発生する絶縁不良を低減させる効果を得ることができる。
さらに、図5(a)に示すように、分割積層コア11のヨーク部両端面に溝14を、ティース部11bの両端面に溝21を設け、ヨーク部両端面の溝14の間、及び、ティース部両端面の溝21の間で糸状熱可塑性樹脂15を巻線させる。そして、図5(b)に示すように、分割積層コア11の上面側及び下面側から、巻線された糸状の熱可塑性樹脂15をはさみ込むようにインシュレータ31を装着して加熱する。それにより、分割積層コア11に巻線された熱可塑性樹脂15が溶融し、インシュレータ31と分割積層コア11を接着させることができる。ただし、この場合、スロットセル30と同様、熱可塑性樹脂11の融点よりも高い融点のインシュレータ31を用いる必要がある。本例では、インシュレータ31として液晶ポリエステル樹脂を使用し0.46MPaの低荷重下での荷重たわみ温度が約230度である。インシュレータ31は、分割積層コア11に強固に接着することができるので、分割積層コア11のティース部11bにコイル線を巻線する際に発生するズレや、結線作業中や搬送中の外れといった不良を低減させることができる。なお、図5に示すインシュレータ31は、一般に、図4に示すスロットセル30と共に用いられることが多く、その場合はインシュレータ31の側面内側にスロットセル30が配置される。
次に、分割積層コア11を構成するコアシート12の固定について説明する。図6(a)に示すように、コアシート12を複数枚積層して分割積層コア11を構成し、この分割積層コア11を取り囲むように糸状の熱可塑性樹脂15を巻線させ、溶融固化させることにより、積層方向に隣り合うコアシート12同士を固定することができる。これは、分割積層コア11のヨーク部11a両端面に巻線された熱可塑性樹脂15が、加熱溶融時に、積層方向に隣り合うコアシート12の間に浸透して、冷却の際に熱可塑性樹脂15が固化してコアシート12同士を固定することができるからである。積層方向に隣り合うコアシート12をバランス良く確実に固定するためには、図6(a)に示すように、ヨーク部及びティース部を取り囲むように糸状の熱可塑性樹脂15を巻線して溶融固化させると良い。図6(b)に示すように、従来の抜きカシメによるコアシート12の積層固定方法では、コアシート12に抜きカシメ用の凹部40と凹部40に嵌合する凸部41を設ける必要があるため、打ち抜き工程数が増大し、コスト高になる。また、凹凸部の嵌合によってコアシート12間の導通が発生し、磁気特性の劣化の可能性がある。本実施の形態では、抜きカシメの代わりに熱可塑性樹脂15により積層するコアシート12同士を固着させることができるので、コアシートの打ち抜き工程が不必要となりコストを低減させることができ、また、コアシート12間の導通がない分割積層コア11を製作することができ、磁気特性の劣化の少ない鉄心10を提供することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、溶接やピン挿入又は嵌合等によらないで、隣り合う分割積層コア同士を連結させることができ、溶接や嵌合により分割積層コアに発生する歪みによる応力やピンの挿入によるかじりを解消することができるため、形状精度が良好な鉄心を得ることができる。
また、隣り合う分割積層コア同士は熱可塑性樹脂で連結されているため、分割積層コアの形状偏差により連結時に発生する応力の緩和や、分割積層コア間の導通を防止することができ、磁気特性の劣化が少ない鉄心を得ることができる。
さらに、固化された熱可塑性樹脂を再び溶融することにより、連結された分割積層コアを容易に解体することができる。
また、隣り合う分割積層コアの間で熱可塑性樹脂が溶融固化され、積層するコアシート間に熱可塑性樹脂が浸透することにより、積層方向に隣り合うコアシート同士を固定することができる。
さらに、鉄心を分解するときには、連結部分を加熱することにより、熱可塑性樹脂は再度溶融され、溶融した状態で分割積層コアへと容易に分解することができ、リサイクル性にも優れている。
なお、上記実施の形態では、回転電機の固定子に使用される円環状の鉄心の例について説明したが、リニアモータの電機子の鉄心に適用しても同様の効果が得られる。
実施の形態2.
図7はこの発明の実施の形態2による鉄心の構造及び連結方法を示す図である。図7の鉄心10は、ヨーク部およびティース部を有するコアシートを複数枚積層した積層コア11を複数個備え、これら複数個の積層コア11のうち隣り合う積層コア11同士が薄肉部50により連結されており、これら複数個の積層コア11を円環状に丸めて両端の積層コア11A及び11B同士を突き合わせて固定するものである。図7(a)及び(b)に示すように、両端の積層コア11A及び11Bの突き合わせ部であるヨーク部端面11A−a及び11B−aには複数本(偶数本が好ましい)の溝14が設けられ、糸状の熱可塑性樹脂15をヨーク部端面11A−a及び11B−aの溝14を通すように巻線する。そして、糸状の熱可塑性樹脂15を巻線した状態で、鉄心10を円環状に丸めて、両端の積層コア11A及び11Bのヨーク部端面11A−a及び11B−aを突き合わせる。そして、突き合わせた状態で加熱・冷却することにより、熱可塑性樹脂15が溶融固化し、両端の積層コア11A及び11B(ヨーク部端面11A−a及び11B−a)を固着・連結することができ、円環状の固定子の鉄心10を得ることができる。
従来の溶接やピンの挿入あるいは嵌合等による積層コアの連結では、鉄心に歪みが発生し、鉄心の形状精度の劣化や磁気特性の劣化が発生する可能性があるが、本実施の形態のように、糸状の熱可塑性樹脂15による固着を行うことで、鉄心の形状精度の劣化や磁気特性の劣化を低減することができる。
また、図8はこの発明の実施の形態2の他の例による鉄心の構造及び連結方法を示す図である。図8の鉄心10は、ヨーク部およびティース部を有するコアシートを複数枚積層した積層コア11を複数個備え、これら複数個の積層コア11のうち隣り合う積層コア11同士がピン又は抜きカシメによる関節部60により連結されており、これら複数個の積層コア11を円環状に丸めて両端の積層コア11A及び11B同士を突き合わせて固定するものである。そして、両端の積層コア11A及び11Bの突き合わせ部であるヨーク部端面には複数本(偶数本が好ましい)の溝14が設けられ、この溝14に糸状の熱可塑性樹脂15を通すように巻線する。そして、糸状の熱可塑性樹脂15を巻線した状態で、鉄心10を円環状に丸めて、両端の積層コア11A及び11Bのヨーク部端面を突き合わせる。そして、突き合わせた状態で加熱・冷却することにより、熱可塑性樹脂15が溶融固化し、両端の積層コア11A及び11Bを固着・連結することができ、円環状の鉄心10を得ることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、両端の積層コア11A及び11Bの突き合わせ部の溶接や嵌合などが不要となり、突き合わせ部に発生する歪みや塑性変形による磁気特性の劣化や形状精度の劣化を低減することができ、良好な鉄心10を容易に得ることができる。
また、固着させた鉄心10の突き合わせ部を再度加熱することで、突き合わせ部を容易に引き剥がすことができ、再度連結することができるため、連結ミスによる不良を無くすことができ、歩留まり向上が計れる。また、加熱による分解が容易であるため、リサイクル性にも優れている。
この発明の実施の形態1による鉄心の構造を示す図である。 この発明の実施の形態1による鉄心の製造過程を示す図である。 この発明の実施の形態1による鉄心の溝および突起の形状を示す図である。 この発明の実施の形態1によるスロットセルの装着を示す図である。 この発明の実施の形態1によるインシュレータの装着を示す図である。 この発明の実施の形態1によるコアシートの積層固定を示す図である。 この発明の実施の形態2による鉄心の連結を示す図である。 この発明の実施の形態2による鉄心の連結を示す図である。
符号の説明
10 鉄心、11 分割積層コア、12 コアシート、14 溝、
15 糸状の熱可塑性樹脂、16 V字形状の溝、17 V字形状の突起、
18 半円状の溝、19 半円状の突起、30 スロットセル、31 インシュレータ、
50 薄肉部、60 関節部。

Claims (15)

  1. 磁極ティース単位毎に分割されたコアシートを複数枚積層して成る分割積層コアを複数個連結して構成される鉄心であって、上記分割積層コアはヨーク部とこのヨーク部から突出するティース部を備えており、糸状の熱可塑性樹脂が、少なくとも隣り合う上記分割積層コアの当接するヨーク部端面を通るように巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより上記隣り合う分割積層コアが連結されている鉄心。
  2. 上記糸状の熱可塑性樹脂は、上記分割積層コアのヨーク部の両端面を通って上記分割積層コアを取り囲むように巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより、上記隣り合う分割積層コアが連結されている請求項1に記載の鉄心。
  3. 上記糸状の熱可塑性樹脂は、上記分割積層コアのティース部を取り囲むように巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されていることを特徴とする請求項2に記載の鉄心。
  4. 上記分割積層コアのヨーク部端面の積層方向の全長にわたり溝が設けられ、上記糸状の熱可塑性樹脂が溝の中に巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより、上記分割積層コアが連結されている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の鉄心。
  5. 上記隣り合う一方の分割積層コアのヨーク部両端面にV字形状の溝が設けられ、上記隣り合う他方の分割積層コアのヨーク部両端面に上記溝の断面積よりも小さなV字形状の突起が設けられ、上記隣り合う一方の分割積層コアの上記溝を通して分割積層コアを取り囲むようにして上記糸状の熱可塑性樹脂が巻線され、上記隣り合う分割積層コアの上記溝と上記突起部が合わされて連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄心。
  6. 上記隣り合う一方の分割積層コアのヨーク部両端面に半円状の溝が設けられ、上記隣り合う他方の分割積層コアのヨーク部両端面に上記溝の断面積よりも小さな半円状の突起が設けられ、上記隣り合う一方の分割積層コアの上記溝を通して分割積層コアを取り囲むようにして上記糸状の熱可塑性樹脂が巻線され、上記隣り合う分割積層コアの上記溝と上記突起部が合わされて連結されていることを特徴とする請求項1に記載の鉄心。
  7. 上記糸状の熱可塑性樹脂は、上記分割積層コアのヨーク部の両端面とヨーク部のティース側端面の間、及びティース部の両端面の間で巻線され、スロットセルを上記ティース部両端面に重ね合わせた状態で、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより、上記隣り合う分割積層コアが連結されると共に、上記スロットセルが上記分割積層コアに固着されている請求項1に記載の鉄心。
  8. 上記分割積層コアのヨーク部の両端面、ヨーク部のティース側端面、及びティース部の両端面の積層方向の全長にわたり溝が設けられ、上記糸状の熱可塑性樹脂が上記溝の中に巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されている請求項7に記載の鉄心。
  9. 上記糸状の熱可塑性樹脂は、上記分割積層コアのヨーク部の両端面の間、及びティース部の両端面の間で巻線され、インシュレータを上記分割積層コアの積層方向両面に重ね合わせた状態で、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより、上記隣り合う分割積層コアが連結されると共に、上記インシュレータが上記分割積層コアに固着されている請求項1に記載の鉄心。
  10. 上記分割積層コアのヨーク部の両端面、及びティース部の両端面の積層方向の全長にわたり溝が設けられ、上記糸状の熱可塑性樹脂が上記溝の中に巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されている請求項9に記載の鉄心。
  11. ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを薄肉部を介して連結したものを円環状に丸めて上記両端の積層コアを突き合わせて固定される鉄心であって、上記両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に複数本の溝が設けられ、糸状の熱可塑性樹脂が上記溝に巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより上記両端の積層コアが連結されている鉄心。
  12. ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを関節部を介して連結したものを円環状に丸めて上記両端の積層コアを突き合わせて固定される鉄心であって、上記両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に複数本の溝が設けられ、糸状の熱可塑性樹脂が上記溝に巻線され、上記糸状の熱可塑性樹脂が溶融固化されることにより上記両端の積層コアが連結されている鉄心。
  13. 磁極ティース単位毎に分割されたコアシートを複数枚積層して成る分割積層コアを複数個連結して構成する鉄心の製造方法であって、上記分割積層コアはヨーク部とこのヨーク部から突出するティース部を備え、糸状の熱可塑性樹脂を、少なくとも隣り合う上記分割積層コアの当接するヨーク部端面を通るように巻線する工程と、上記糸状の熱可塑性樹脂を溶融固化することにより上記隣り合う分割積層コアを連結する工程を備えた鉄心の製造方法。
  14. ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを薄肉部を介して連結したものを円環状に丸めて上記両端の積層コアを突き合わせて固定する鉄心の製造方法であって、上記両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に設けた複数本の溝に糸状の熱可塑性樹脂を巻線する工程と、上記薄肉部を介して連結した複数個の積層コアを円環状に丸めて上記両端の積層コアを突き合わせる工程と、上記糸状の熱可塑性樹脂を溶融固化することにより上記両端の積層コアを連結する工程を備えた鉄心の製造方法。
  15. ヨーク部及びティース部を有するコアシートを複数枚積層して成る積層コアを関節部を介して連結したものを円環状に丸めて上記両端の積層コアを突き合わせて固定する鉄心の製造方法であって、上記両端の積層コアの突き合わせ部であるヨーク部端面に設けた複数本の溝に糸状の熱可塑性樹脂を巻線する工程と、上記関節部を介して連結した複数個の積層コアを円環状に丸めて上記両端の積層コアを突き合わせる工程と、上記糸状の熱可塑性樹脂を溶融固化することにより上記両端の積層コアを連結する工程を備えた鉄心の製造方法。
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