JP2009223310A - 無端状パターンの作製方法、樹脂パターン成形品の製造方法、無端状モールド、樹脂パターン成形品、及び光学素子 - Google Patents

無端状パターンの作製方法、樹脂パターン成形品の製造方法、無端状モールド、樹脂パターン成形品、及び光学素子 Download PDF

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Abstract

【課題】無端状モールド等に適用し得る無端状パターンを電子ビーム又はイオンビームの照射により作製する方法の提供。無端状モールドを用いる樹脂パターン成形品の製造方法の提供。無端状モールド、樹脂パターン成形品及び光学素子の提供。
【解決手段】本発明の無端状パターン作製方法は、電子ビーム又はイオンビームの照射により硬化又は可溶化する感応性基板を用いる場合には、円周方向で無端の感応性基板を回転方向に回転させる工程と、前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、前記照射により又は前記照射後の現像により前記基板の一部を除去する工程とを有する。基板が感応性基板ではない場合、円周方向で無端の基板上に感応性膜を付与する。ビーム照射は、基板を回転方向に回転させながら行なっても、前記基板を回転させずに行なってもよい。但し後者の場合には照射していないときに基板を回転させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、無端状モールドを形成できる無端状パターンの作製方法、無端状モールドを用いる樹脂パターン成形品の製造方法、これら製造方法によって得られる無端状モールド、樹脂パターン成形品、及び光学素子に関する。
ナノインプリント技術において、より一層の効率化、低コスト化、大面積化をはかる技術展開としてローラ転写方式が注目されている。
ローラ転写方式で用いられるモールドの従来の作製方法としては、めっきや樹脂などの微細パターンを有する膜を円筒状基板に巻き付ける方法や、機械加工による方法、レーザー加工による方法などが存在する。
しかし、前記巻き付けの方法では、つなぎ目が発生するという問題点がある。前記機械加工による方法では、加工工具が摩耗するため長時間加工すると形状が変化し、また溝状のパターンしか形成できない。前記レーザー加工の方法では、ビーム径をナノオーダーまで絞ることができず、ナノオーダーのパターンを有する無端状モールドの作製は困難である。
一方、電子ビームの照射方法としては、ディスクを回転させながら電子ビームを照射する方法(例えば、非特許文献1参照)や、曲面上に電子ビームを照射する方法(例えば、非特許文献2参照)が提案されている。
M. KATSUMURA, M. SATO, K. HASHIMOTO, Y. HOSODA, O. KASONO, H. KITAHARA, M. KOBAYASHI, T. IIDA and K. KURIYAMA, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 44, No. 5B, 2005, pp. 3578−3582. K. YAMAZAKI, T. YAMAGUCHI and H. NAMATSU, Jpn. J. Appl..Phys., Vol. 43, No. 8B, 2004, pp. L 1111−L 1113.
本発明の第一の課題は、無端状モールドなどに適用し得る無端状パターンを電子ビーム又はイオンビームの照射によって作製する方法を提供することである。
また、本発明の第二の課題は、前記無端状モールドをナノインプリントの型として用いる樹脂パターン成形品の製造方法を提供することである。
更に、本発明の第三の課題は、これらの製造方法によって得られる無端状モールド、樹脂パターン成形品、及び光学素子を提供することである。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により課題解決に至った。
<1> 円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する基板を、回転方向に回転させる工程と、
前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
前記照射により又は前記照射後の現像により、前記基板の一部を除去する工程と、
を有する無端状パターンの作製方法である。
<2> 円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する膜が付与された基板を、回転方向に回転させる工程と、
前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
前記照射により又は前記照射後の現像により、前記膜の一部を除去する工程と、
を有する無端状パターンの作製方法である。
<3> 前記基板を回転方向に回転させながら、前記電子ビーム又はイオンビームを照射することを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の無端状パターンの作製方法である。
<4> 前記電子ビーム又はイオンビームの走査方向及び走査速度、前記基板の移動方向及び移動速度、並びに前記基板の回転方向及び回転速度のうち少なくとも1つを調節して、パターンを描画することを特徴とする前記<3>に記載の無端状パターンの作製方法。
である。
<5> 前記電子ビーム又はイオンビームの照射時に前記基板を回転させないことを特徴とする前記<1>又は<2>に記載の無端状パターンの作製方法である。
<6> 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角が、0°以上90°以下であることを特徴とする前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の無端状パターンの作製方法である。
<7> 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角が、0°以上60°以下であることを特徴とする前記<6>に記載の無端状パターンの作製方法である。
<8> 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角を、基板の回転方向でプラス、逆回転方向でマイナスとしたとき、前記入射角が、−60°以上+40°以下であることを特徴とする前記<7>に記載の無端状パターンの作製方法である。
<9> 前記<1>〜<8>のいずれか1項に記載の方法により形成された無端状モールドである。
<10> 更に、表面に保護層を形成してなることを特徴とする前記<9>に記載の無端状モールドである。
<11> 前記<9>又は<10>に記載の無端状モールドを成形用の型として用い、該無端状モールドに樹脂を押し付けて型を転写する工程と、
押し付けた前記無端状モールドと前記樹脂とを剥離する工程と、
を有することを特徴とする樹脂パターン成形品の製造方法である。
<12> 前記<11>に記載の方法により形成された樹脂パターン成形品である。
<13> 前記<9>又は<10>に記載の無端状モールドを有する光学素子である。
<14> 前記<12>に記載の樹脂パターン成形品を有する光学素子である。
本発明によれば、ロールナノインプリント等に用いることのできる無端状パターン(無端状モールド)を提供することができる。また、無端状モールドをナノインプリントの型として用いる樹脂パターン成形品の製造方法を提供できる。更に、無端状モールド、樹脂パターン成形品、及び光学素子を提供できる。
連続照射方法における電子ビーム又はイオンビームの照射方法を説明する図である。 ビームの入射角度を説明する図であり、(a)は、ビームBを円筒状基板の中心Oに向かって照射するときの図であり、(b)は、ビームの照射位置を、中心から半径方向(±Y)に平行にずらして照射するときの図である。 円筒状基板に対して斜めからビームを照射するときの図である。 連続照射方法においてL&Sパターンの描画方法を説明する図であり、(a)は、ビットマップパターン、(b)は回転させながら照射する様子を表す図、(c)は得られたパターンの断面図である。 3次元形状のパターンを形成するための照射方法を説明する図であり、(a)は照射パターンを示す図であり、(b)は得られる3次元形状を示す図である。 螺旋状パターンを作製するときの照射方法を説明する図である。 (a)〜(e)は、継ぎ照射方法の一連の操作を説明する図である。 樹脂パターン成形品の作製工程を説明する図である。 実施例1で得られたパターンのSEM写真であり、(a)は、回転数10rpm、(b)は回転数100rpm、(c)は回転数500rpm、(d)は回転数1000rpm、(e)は回転数2000rpm、(f)は回転数3000rpmで回転させながら照射したときのSEM写真である。 実施例1で得られたパターンの加工線幅と基板の回転数との関係を示すグラフである。 実施例2における照射パターンを説明する図である。 実施例2で得られたパターンの加工線幅と、ドーズ量との関係を示すグラフである。 実施例3における、照射時の回転数2rpmで得られたパターンのSEM写真である。 実施例3における、照射時の回転数1500rpmで得られたパターンのSEM写真である。 実施例3で得られたパターンの平均線幅と電子ビーム入射角度との関係を示すグラフである。 実施例4における照射パターンを説明する図である。 実施例4において、倍率100倍、ドーズ量250μC/cmで照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例4において、倍率300倍、ドーズ量250μC/cmで照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例4において、倍率600倍、ドーズ量250μC/cmで照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例4において、倍率600倍で、ドーズ量100μC/cmで照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例4において、倍率600倍で、ドーズ量400μC/cmで照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例5において、表6の条件1で照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例5において、表6の条件2で照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例5において、表6の条件3で照射したときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例6における照射パターンを説明する図である。 実施例6で得られたL&SパターンのSEM写真である。 実施例7で得られたL&SパターンのSEM写真である。 実施例7で得られたパターンの加工線幅と回転数との関係を示すグラフである。 実施例7で得られたパターンの加工線幅と、照射時の回転数50rpm付近における回転数との関係を示すグラフである。 実施例8のドーズ量200μC/cmで得られた、各電子ビーム入射角度でのL&SパターンのSEM写真を示す。 実施例8のドーズ量200μC/cmで得られた、各電子ビーム入射角度でのL&SパターンのSEM写真を示す。 実施例8のドーズ量200μC/cmで得られたパターンの加工線幅と、電子ビーム入射角度との関係を示すグラフである。 実施例8のドーズ量100μC/cmで得られた、各電子ビーム入射角度でのL&SパターンのSEM写真である。 実施例8のドーズ量150μC/cmで得られた、各電子ビーム入射角度でのL&SパターンのSEM写真である。 実施例8のドーズ量150μC/cmにおける、電子ビーム入射角度と加工線幅の関係を表すグラフである。 実施例9の各ドーズ量における、電子ビーム入射角度と加工線幅の関係を表すグラフである。 実施例10における照射パターンを説明する図である。 実施例10における照射パターンを説明する図である。 実施例10のドーズ量200μC/cmで得られたL&SパターンのSEM写真である。 実施例11でライン0.5μm、スペース1.0μmの設計寸法における、各ドーズ量で得られたパターンの加工線幅と、電子ビーム入射角度との関係を示すグラフである。 実施例11で電子ビーム入射角度を変えたときの、ドーズ量200μC/cm、ライン0.3μm、スペース0.6μmの設計寸法で得られたパターンのSEM写真である。 実施例11でライン0.3μm、スペース0.6μmの設計寸法で得られた各ドーズ量でのパターンの加工線幅と、電子ビーム入射角度との関係を示すグラフである。 参考例1で、試料を回転させずに固定したとき(0rpm)の、各ドーズ量での得られたパターンの加工線幅と電子ビーム入射角度との関係を示すグラフである。
1. 無端状パターン(無端状モールド)の作製
本発明の無端状パターンの第一の作製方法は、少なくとも以下の工程を有する。
(1A)電子ビーム又はイオンビームの照射により硬化又は可溶化する基板(以下「感応性基板」と称する場合がある)を、回転方向に回転させる工程、
(2)電子ビーム又はイオンビームを照射する工程、
(3)前記照射により又は前記照射後の現像により、前記基板の一部を除去する工程。
本発明の無端状パターンの第二の作製方法は、前記基板が電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化及び可溶化しない材料で形成されている場合(以下「無感応性基板」と称する場合がある)の方法であり、前記(1A)の工程に変えて、(1B)円周方向に無端の無感応性基板上に電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する膜(以下「感応性膜」と称する場合がある)が付与された、前記基板を回転方向に回転させる工程を有する。
即ち、本発明の無端状パターンの第二の作製方法は、少なくとも以下の工程を有する。
(1B)円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する膜(以下「感応性膜」と称する場合がある)が付与された、前記基板を、回転方向に回転させる工程、
(2)電子ビーム又はイオンビームを照射する工程、
(3)前記照射により又は前記照射後の現像により、前記膜の一部を除去する工程。
更に、第一及び第二の作製方法では、前記(1A)又は(1B)の基板の回転工程と、(3)の照射工程は、別工程として行っても、同時に行なってもよい。つまり、基板を回転方向に回転させながら電子ビーム又はイオンビームを照射してもよいし、電子ビーム又はイオンビームの照射時に基板を回転させず、照射していないときに前記基板を回転させて全周面を照射してもよい。
本発明の無端状モールドの作製では、前記電子ビーム又はイオンビームの走査方向及び走査速度、前記基板の移動方向及び移動速度、並びに前記基板の回転方向及び回転速度のうち少なくとも1つを調節することにより、様々なパターンを無端状に形成することができる。
(1) 基板の準備
本発明において基板は、円周方向において連続した無端の形状であれば、芯部を有する円柱状の基板、芯部を有さない円筒状の基板のいずれであってもよい。また、断面形状は、円、楕円、多角形などいずれであってもよく、形成されたパターン形成品の用途に応じて適宜選択できる。
以下、便宜上、本発明の基板を「円筒状基板」と称して説明する場合があるが、以降の「円筒状基板」は、「円柱状基板」、「断面が楕円形の基板」、及び「断面が多角形の基板」など適宜様々な形状の基板に読み替えられるものとする。
基板の材質は、金属、ガラス、セラミックス、樹脂等、いずれであってもよい。
基板の表面粗さは、ビーム等の照射により形成できる形状の寸法より大きいと所望の形状が得られないので、表面粗さは充分に小さいことが好ましい。具体的には、基板の表面粗さ(算術平均粗さ)(Ra)は、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。ここで平均表面粗さ(算術平均粗さ)(Ra)とは、蝕針計で測定した粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、それに直交する軸をY軸として、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、次の式で与えられた値をμm単位で表したものである(Lの決定及び平均粗さの計測はJIS B 0601に従う)。

このような平滑な表面を得るために、鏡面切削や研削、研磨できる材質の基板であることが好ましい。
また、前記平滑加工の容易さの観点から、無端状の基板の断面形状は、真円度が高いことが好ましい。また、得られた無端状モールドをロール転写に用いる際においても、高い真円度を有する基板は、被転写体にムラなく接触させるのに好適である。よって、本発明における基板は、円筒状又は円柱状であることが好ましい。
上記条件を満たすものとして、基板材質としては、比較的軟金属であるアルミや真鍮などが挙げられる。その他、無感応性基板としては、ステンレス、単体金属(銅、鉄など)、炭素鋼、合金類などを適用することもできる。
また、基板自体が、電子ビームやイオンビームの照射により硬化又は可溶化する感応性基板であれば、後述の感応性膜を付与せずとも、照射によってパターンを形成することができる。このような感応性基板としては、樹脂(アクリル樹脂、エポキシ樹脂など)、ガラスなどを挙げることができ、ナノインプリントのモールドとしてそのまま用いる場合には、強度や硬度などの観点からアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ガラスであることが好ましい。
(1B) 円筒状基板上への感応膜の付与
基板が無感応性基板の場合には、円筒状基板上に感応膜を付与する。感応膜としては、レジスト膜、金属堆積膜、酸化物層、フッ化物層などを適用することができる。前記金属堆積膜とは、真空蒸着やスパッタ蒸着により付着したものを意味する。
感応膜はビームに対して感応性に優れるものであるか、加工性が良好であるものが望まれる。高い感応性を有する材料として、レジストが好適である。レジストは有機レジスト、無機レジストのいずれであってもよく、またポジ型レジスト、ネガ型レジストのいずれであってもよい。
無機系レジストとしては、例えば、SOG(Spin On Glass)、SiO、TiO
、Al等の酸化物や、LiF、AlF等のフッ化物を適用できる。無機レジストを用いる場合、特にSOGを用いる場合には、レジストを剥離せずにそのままナノインプリントのためのモールドとして用いることができる。このように無機レジストの場合にはレジストの剥離操作が不要となり、作製の操作が簡略化できる。
SOGとしては、従来一般的に知られているものが適用可能であり、例えば、シリケート(Silicate)、水素化シロキサン(Hydrogen Siloxane)、Ladder Hydrogen Silsesquioxane、水素化シルセスキオキサン(Hydrogen Silsesqioxane:HSQ)、水素化アルキルシルセスキオキサン(Hydrogen Alkylsilsesquioxane:HOSP)、Accuglass 512Bとして知られているメチルシロキサン(Methyl Siloxane)、Ladder Methyl Silsesquioxaneなどが挙げられる。
有機系レジストとしては、例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)、ZEP−520(日本ゼオン社製)、カリックスアレーンを挙げることができる。
円筒状基板上への感応膜の付与は、真空蒸着、ディップ(浸漬)、スプレー、ドクターブレード等によって行なうことができる。感応膜の付与後に、レジスト材料中の溶媒を揮散させる乾燥工程が必要な場合には、加熱工程(後述の第一の加熱工程:PB)を加えることが好ましい。加熱は、炉、オーブン等で行なうことができる。
感応膜は、単層であっても多層であってもよい。多層の場合には、同種のレジスト材料を多層に塗布しても、違うレジスト材料を積層してもよい。
感応膜の厚さは、10nm〜100μmであることが好ましく、50nm〜10μmであることがより好ましく、100nm〜1μmであることが更に好ましい。
(2)第一の加熱工程(PB)
形成されたレジスト層は、前述のように焼成又は半焼成(PB:Pre Bake)して、一定量の溶媒を除去し、レジストの密着性、感度、形状を安定化させることが好ましい。PBの加熱温度や加熱時間は、レジストや溶媒の種類によって好適な範囲が異なるので適宜決定する。一般には、加熱温度や加熱時間を変えてパターンを形成し、アスペクト比が高くなるようなPBの条件を決定する。
PBの加熱温度としては、具体的には100℃以上500℃以下が好ましい。
(3) ビーム照射
本発明においてパターンの描画に用いられるビームは、電子ビーム及びイオンビームである。
イオンビームには、ガリウム、アルゴン、ヘリウム、シリコンなどのイオンを用いることができる。
電子ビーム及びイオンビームは、集束したビーム、シャワー状のビームを制限アパーチュアーで局所的に照射できるように加工したビーム、マルチビーム源によるもの等いずれであってもよい。
特にイオンビームとしては、イオンを電界で加速したビームを細く絞った集束イオンビーム(FIB,Focused Ion Beam)であることが、ナノオーダーの加工を行なう観点から好ましい。
ビームの照射は一般的に真空内で行なわれることが多いが、電子ビームを大気中で引き出すことができる装置も存在するため、大気中で行なってもよい。
本発明においては、(2A)前記基板を回転方向に回転させながら、前記電子ビーム又はイオンビームを照射する方法であっても(以下「連続照射方法」と称する場合がある)、或いは(2B)電子ビーム又はイオンビームの照射時に前記基板を回転させず、特定面のビーム照射を終えた後に基板を回転させ、パターンが連続するように更に別の面をビーム照射する方法(以下「継ぎ照射方法」と称する場合がある)であってもよい。パターンの継ぎ目を生じさせないようにするには、前記(2A)の連続照射方法が好適である。
以降、図1〜図7を参照しながら、本発明における照射方法を説明する。ここでは、円筒状基板100に照射を行なうとして説明しているが、ここでいう円筒状基板100は、感応性基板の場合や、無感応性基板上に感応性膜が付与されたものを含む。
図1では、前記(2A)の連続照射方法における電子ビーム又はイオンビームの照射方法を説明する。図1は、円筒状基板を斜視的に観察した模式図である。
本発明では、X軸を円筒状基板100の軸方向とし、Y軸を円筒状基板100の半径方向と定義する。円筒状基板100をR方向に回転させながら、ビームBをX軸(1軸)方向に走査して照射すれば、円筒状基板全面に描画が可能となる。
但し、ビームBはX軸方向だけでなくY軸方向に走査してもよい。図2(a)に示すように、円筒状基板100の中心Oに向かってビームBを照射すると、ビームBの入射角は0度となる。図2(b)に示すように、ビームBの照射位置を、中心Oから半径方向(Y軸方向)に平行にずらすと、入射角が0°〜90°の範囲で変動する。図2(b)に示す方法は、円筒状基板100に対して斜めからビームBを照射する方法(図3)よりも簡便に入射角を変更することができる。
電子ビーム、イオンビームにおいて、入射角θが大きくなるとビーム径がcosθとして投影されて被照射体に照射されるので、感応性基板や感応膜の二次電子放出が増大する。二次電子によっても感応性基板や感応膜の硬化又は可溶化が進行すると推測されるため、図2又は図3のようにビームの入射角θを大きくすることで、見掛けの感度を向上させることが可能であると考えられる。このビーム入射角θの効果は、後述の「継ぎ照射方法」においても同様である。
見かけの感度を向上させる観点からは、ビームの入射角θは、30°〜80°であることが好ましく、40°〜80°であることがより好ましく、45°〜70°であることが更に好ましい。
また、図2(b)に示すように、前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角を、基板の回転方向でプラス、逆回転方向でマイナスと表記したとき、ビームの入射角は、−60°〜+40°であることが好適である。
また、照射したビームの二次電子を利用して見かけの感度を向上させる観点からは、+側の照射角度で照射することが好ましい。更に、後方散乱を利用して見かけの感度を向上させる観点からは、−30°以上0°未満、又は0°より大きく+30°以下であることがより好適である。
ここで、後方散乱と二次電子について説明する。
加速電圧が低い場合、レジストに入射した電子はすぐに広がるが、加速電圧が高い場合は、固体中に深く進入してから広がる。この電子線が入射方向に広がるのを、前方散乱と呼び、散乱を繰り返した結果、入射方向に対して横方向に広がったり入射方向に戻ったりする散乱を、後方散乱と呼ぶ。後方散乱は、入射した電子の反射や、入射した電子がレジストを構成する分子に衝突してイオン化して二次電子を発生させ、この二次電子の散乱によって生じる。
なお、操作性の容易さを考慮すれば、入射角0°でビームを照射することも好適である。よって、操作性の容易さ及び見かけの感度向上を図るという観点からは、0°〜60°のビーム入射角θであることが好ましい。
連続照射方法における円筒状基板100の回転速度は、1〜10000rpmであることが好ましく、回転による治具の振動の影響を考慮すれば、100〜5000rpmであることがより好ましく、500〜2000rpmであることが微細加工の観点から更に好ましい。
また、回転による治具の振動を抑えた上で、円筒状基板100の円周方向一周分を描画することを考慮すれば、50〜80rpmとすることが微細加工の観点から好適である。
次に、連続照射方法において、円筒状基板100にライン アンド スペース(L&S)のパターンを描画する方法を図4に示す。図4(a)は、ビットマップパターンであり、図4(b)は回転させながら照射する様子を表す図であり、図4(c)は得られたパターンの断面図である。図4のように、X軸方向に照射部分と未照射部分を有するビットマップパターンで、円筒状基板100を回転させながらビームBを照射することで、L&Sパターンが形成される。
また、図5(a)に示すビットマップパターンとなるようX軸方向でのビームのドーズや加速電圧を変えてビームを照射し、基板を回転することで、図5(b)に示すようにパターンの深さや高さを制御することが可能である。なお図5(a)において、X軸上で黒い領域は、ドーズ量を多くしたり加速電圧を高くして照射した領域を示し、X軸上で白い領域は、ドーズ量を減らしたり加速電圧を低くして照射した領域を示す。図5(b)におけるZ軸は、感応性基板又は感応性膜における膜厚方向を表す。
図5に示すように、連続照射方法では三次元的な加工も可能である。
連続照射方法では、図6のように円筒状基板100の回転速度とビームの走査速度を同期させることにより、螺旋状のパターンも作製可能である。このように円筒状基板100へのビーム描画により、平面では作製できない幾何学的な形状を作製することができる。
次に、図7では、前記(2B)の継ぎ照射方法における電子ビーム又はイオンビームの照射方法を説明する。図7は、円筒状基板100を軸方向(X軸方向)から観察した模式図である。
まず、図7(a)に示すように、電子ビーム又はイオンビームの照射時に基板を回転させず、特定面のビーム照射を行なう。特定面とは、基板を回転させずにビーム走査により照射できる基板円周面の領域をいう。次に、照射を止めて、照射位置に未照射の基板表面が配置するよう基板を回転させる(図7(b))。この状態でビーム照射を行なう(図7(c))。その後、図7(d)(e)のように、ビーム照射と基板の回転の操作を繰り返して、基板の円周面全面を照射する。
なお、継ぎ照射方法においては、特定面の照射で描画されたパターンと、次に照射されて描画されたパターンとが繋がるように、パターンの継ぎ目部分では重複照射することが望ましい。
(4)第二の加熱工程(PEB)
前記照射工程を経たレジスト層は、焼成又は半焼成(PEB:Post Exposure Bake)してもよい。特に、光塩基発生剤、熱塩基発生剤、光酸発生剤、熱酸発生剤等のコントラスト増強剤を含有する無機レジストを使用する場合には、熱によってパターンのコントラストが増強されるため、PEBを施すことが好ましい。
第二の加熱工程(PEB)での加熱温度は、50℃以上500℃以下であることが好ましく、より好適には70℃以上200℃以下である。
(5)現像
照射された感応性基板又は感応膜は、前記ビーム照射によって或いは現像液によってその一部が除去される。ネガ型の感応性基板及び感応膜は、ビーム照射部分が残存し、未照射部分は除去される。ポジ型の感応性基板又は感応膜は、ビーム照射部分が除去され、未照射部分は残存する。
現像の方法としては、浸漬法、スプレー、熱脱離などがある。現像液は、レジストの種類に応じて種々のものを適用することができる。例えば、レジストとしてSOGを用いた場合には、現像液にフッ酸緩衝液(BHF)等を用いることができる。フッ酸緩衝液としては、フッ酸とフッ化アンモニウムを混合した溶液を挙げることができる。フッ酸緩衝液による現像時間は、30〜300秒が好ましく、60〜120秒がより好ましい。また、レジストとしてTMMR(東京応化工業社製)を用いた場合には、現像液にγブチロラクトン等を用いることができ、レジストとしてPMMAを用いた場合には、現像液にイソプロピルアルコールやメチルイソブチルケトン、更にこれらの混合液等を用いることができる。
現像の後に、適宜リンス、乾燥などの工程を行うことができる。
感応性膜自身が充分な硬度を有するのであれば、そのパターンをそのままナノインプリントの型(モールド)として用いることが可能である。このような無端状モールドの詳細については後述する。
例えば、無機レジストを用いた場合には、無機レジストは強度が充分であるため、これに、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのシランカップリング剤で離型処理したものをモールドとして用いることができる。また、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などをレジストとして用いることも、離型性、低摩擦などの特性を有することから好適である。
また、この凹凸を有する感応性膜の表面に離型剤をコーティングしたり、強度補強のための保護層を形成して、これを無端状モールドとすることができる。強度補強の保護層としては、チタンなどの硬質膜、およびチタン化合物などがある。
(6)エッチング
現像後、レジストをマスクとして、円筒状基板をエッチングして無端状モールドを形成してもよい。エッチングの方法には、浸漬法によるウエットエッチングや、プラズマなどのドライエッチングがある。形状が無端状であるため、ドライエッチングも回転させながら行うことも可能である。また、エッチング後に感応性膜を除去し、その後、リンス、乾燥、離型処理、補強コーティングなどの工程を施す場合もある。
2.無端状モールド
上記方法により作製した無端状モールドは、そのまま素子として適用することも可能である。例えば、上記方法により金属膜を螺旋状のパターンに形成すればコイルとして適用することができる。また、L&Sパターンを有する無端状モールドは回折格子として用いることができ、図5に示すような三次元形状の無端状モールドは曲面レンズ(f−θレンズ、レンチキュラーレンズ)等へ適用可能である。その他、無端状モールドは、フレネルゾーンプレート、バイナリ−光学素子、ホログラム光学素子、反射防止膜、CDやDVDなどのメディア等へ適用可能である。
本発明の無端状モールドは、線幅100nm以下の加工部を有することができる。このような無端状モールドは、上記製造方法によって得ることができる。なお、上記製造方法によって当然に、線幅100nmよりも広い加工部を形成することもできる。
線幅は、レジストの種類や、照射条件、現像条件などにより、100nm以下、さらには80nm以下、調整によっては10nm程度に、微細に形成することができる。
本発明の無端状モールドは、後述の樹脂パターン成形品の成形用の型として用いることができ、樹脂やフィルムにパターン転写できる。
3. 樹脂パターン成形品の製造方法
本発明の樹脂パターン成形品の製造方法は、上記無端状パターンの製造方法によって得られた無端状モールドを成形用の型として用いる。微細加工物に樹脂を押し付ける際、樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に設定して樹脂を軟らかくした上で、樹脂に型を押し付けた後、樹脂を硬化し、その後、型と樹脂とを剥離する。
樹脂パターン成形品の作製工程を図8に示す。
上記方法により凹凸が形成されたレジスト層20を基板10上に有する無端状モールドと、ガラス40との間に樹脂30を挟みこみ(図8(1))、圧力を一定に保ったまま(図8(2))、樹脂30を硬化する(図8(3))。その後、型を引き離すと、ガラス40上に樹脂30の樹脂パターン成形品が形成される(図8(4))。
本発明の樹脂パターン成形品の製造方法においては、型と樹脂との剥離が良好であることが望ましい。型が樹脂などの有機物で形成されている場合、型の剥離がし難くなる。したがって、SOG等の無機レジストを用いて形成された無端モールドを用いるか、表面に剥離剤を付与した無端モールドを用いることが好適である。剥離剤としては、シランカップリング剤を挙げることができ、剥離しやすいよう金属感応膜を設けることも好ましい。しかし、剥離剤も繰り返しインプリントすると剥がれるため、できれば剥離処理なしで行えることが好ましい。
本発明の無端状モールドは、ローラーナノインプリントに好適に用いることができる。ローラーナノインプリントによるパターン転写は、本発明の無端状パターンを型として用い、樹脂を加熱しながら本発明の無端状パターンに負荷を加えて押圧し、樹脂にパターンを転写する方法である。本発明の無端状パターンは円筒状基板等に形成されたものであるため、基板の繰り返し回転によって切れ目無く連続して樹脂にパターン転写することができる。
この方法は、長さが数m以上の樹脂フィルムへのパターン転写に対して有効な方法である。このローラ転写方式では、型と樹脂との接触が、一括転写やステップ&リピート方式の場合のような面接触ではなく、線接触となるので、型と樹脂との平行調整やヒータの温度制御がしやすくなる利点がある。また、線接触で加重を成型基板に与えることになるので、少ない荷重でも接触部の押し込み応力(圧力)を高くでき、プレス機構の出力を小さくすることができる。つまりローラ転写方式は、比較的簡単な装置構成で大面積のナノインプリントを行なえる方法である。
樹脂パターン成形品を製造するための樹脂は、熱可塑樹脂、光硬化樹脂など、いずれであってもよい。
熱可塑樹脂としては、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド等を挙げることができ、PMMA等のアクリル系樹脂が好ましい。
光硬化樹脂としては、紫外線等で硬化する樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、及びこれらの混合物を挙げることができる。
なお、光硬化性樹脂を用いる場合、基体かモールドが紫外線等の光を透過するものでなければならない。一方、熱可塑樹脂を用いると加熱工程が必要となり、またモールドも熱によって劣化しやすいため、耐熱性のある樹脂を適用することが好ましい。
4.樹脂パターン成形品
上記方法によって得られた本発明の樹脂パターン成形品は、線幅が100nm以下の加工部を有することができる。線幅が10nm以下の加工部を有することも可能である。なお、上記製造方法によって当然に、線幅100nmよりも広い加工部を形成することもできる。
得られた微細パターン成形品や3次元モールドは、その形状と材質から、光学素子に用いることができる。例えば、フレネルゾーンプレート、回折格子、バイナリ−光学素子、ホログラム光学素子、反射防止膜、CDやDVDなどのメディア等を挙げることができる。
また、前記無端状モールドによって転写されたフィルムや、該フィルムにめっき等を施した後に剥離しためっき箔を、より大きなロールに巻きつけてロールモールドとすることもできる。これは、継ぎ目のない均一パターンを作製するときに有効である。平らな面にナノインプリントで転写した場合も継ぎ目の問題が軽減されるが、大きな面に一括転写し難いなどの問題点があるので、大面積化した成形品を作製する際においてロールナノインプリントの方法は有益である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜5ではレジストとしてTMMR−S2000(東京応化工業社製)を使用し、実施例6〜11及び参照例1では、PMMA(東京応化工業社製)を使用した。
[実施例1]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−回転数の違いによる描画特性−−
<照射装置の準備>
電子ビーム照射には、走査型電子顕微鏡(SEM、エリオニクス社 ESA-2000)を用いた。この電子顕微鏡内部には、円筒状基板を取り付けつけるための冶具と、円筒状基板を回転方向に回転させる機構を有する回転装置を備えるよう改造した。
<レジスト膜の成膜>
基板として、鏡面加工を施した円柱状の真鍮を用いた。円柱状基板の直径は3cmで、長さは3cmであった。この基板を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した。
この基板の上にレジストを塗布した。レジストとしてはTMMR S2000(東京応化工業社製)を用い、PMシンナー(東京応化工業社製)をうすめ液として用いて、TMMAの体積濃度が50%であるTMMR希釈液を準備した。
TMMR希釈液はディップ(浸漬法)で塗布した。前記TMMR希釈液中に、前記円柱状基板を侵入速度3.0mm/秒、浸漬時間5.0秒、塗布引き上げ速度0.1mm/秒(一層塗布)で円柱状基板表面にレジストを塗布した。
その後、レジストを乾燥させるため、200℃、30分間焼成した。成膜されたTMMRレジストの膜厚を光学式干渉法によって測定したところ、全面に渡り、2.5〜3.0μmであった。なおTMMRレジストはネガ型レジストのため、電子ビームの照射部分が残存してパターンを形成する。
<電子ビームの照射>
レジストを付与した円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながら電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
・加速電圧: 30kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 150nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 424.4μC/cm
・回転数: 10,100,500,1000,2000,3000rpm
・パターン: ライン&スペース(L&S)パターン
:パターンの設計値: 0.1μmのライン(電子ビームの照射部分)と19.9μmのスペース(電子ビームの無照射部分)
・電子ビーム走査方式: ラスタスキャン
<PEB、現像>
電子ビーム照射後、高温炉を使用して90℃、2分間で焼成(PEB)を行った。
PEB後に現像液により現像した。現像液はSV−ガンマーブチロラクトン(室温約23℃)を使用し、2分間浸した。その後、窒素ガスで乾燥した。
<結果>
得られたL&SパターンのSEM写真を、図9(a)〜(f)に示す。図9(a)は、回転数10rpm、(b)は回転数100rpm、(c)は回転数500rpm、(d)は回転数1000rpm、(e)は回転数2000rpm、(f)は回転数3000rpmで回転させながら照射して得られたパターンのSEM写真である。
図9のSEM写真に示されるように、いずれの回転数でも全周にわたってL&Sパターンが形成されていた。また、現像後のパターン幅は、設計値の線幅よりも大きく広がっていた。これは、TMMRレジストの特性に起因し、またビーム径が150nmと大きかったためと考えられる。更に膜厚も3μmと厚いので、近接効果が大きく影響して線幅が拡がったものと推測される。
したがって、ビーム径がナノオーダーの電子ビームで照射し、レジスト膜厚を100nm程度まで薄くすれば、100nm以下の微細な加工も可能と考えられる。
図10では、図9のパターンの線幅を示す。図10における線幅は、1つの線について測定位置を変えて5箇所、計25点測定したときの平均値である。
図10から分かるように、回転数による線幅の変化は小さく、回転数500〜2000rpmのときに微細なL&Sが作製できることが確認できる。なお、500rpm以下の回転数での加工線幅の変動は、冶具の固有振動数によるぶれと推測される。
[実施例2]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−ドーズ量の違いによる描画特性−−
以下の条件により、TMMRレジストを塗布した。
<レジスト膜の成膜>
基板:円柱状試料(アルミニウム、直径10mm)
レジスト:TMMR希釈液(体積濃度50%)
TMMR:S2000(東京応化工業社製)
TMMR用うすめ液:PMシンナー(東京応化工業社製)
<塗布条件>
塗布侵入速度3.0mm/sec
浸漬時間:5.0sec
塗布引き上げ速度0.5mm/sec
以上の条件により、TMMR レジストを塗布した。
<PB>
塗布後、高温炉を使用して200℃、30分間で焼成(PB)を行った。
<電子ビームの照射>
PB後の円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながら電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
実験装置:走査型電子顕微鏡(SEM:ESA−2000)
ローラ塗布&彫刻装置(三井電気精機株式会社製)
ビーム電流:0.85nA
加速電圧:30kV
ビーム径:222nm
照射時の回転数:1500rpm
レジスト平均膜厚:2.41μm
ドーズ量:50、100、150、200μC/cm
描画パターン:図11に示すL&Sパターン
SEMの倍率300倍(描画範囲一辺300μmの正方形)で作製した。
<PEB、現像>
電子ビーム照射後、高温炉を使用して90℃、2分間で焼成(PEB)を行った。
PEB後に現像液により現像した。現像液はSV−ガンマーブチロラクトン(室温約23℃)を使用し、2分間浸した。その後、窒素ガスで乾燥した。
<結果>
得られたL&SパターンのSEM写真から測定した、ドーズ量と加工線幅の関係を、図12に示す。
図12のグラフに示されるように、ドーズ量が多くなるにしたがって加工線幅が広がることがわかった。
[実施例3]
−連続照射方法および固定照射方法による無端状モールドの作製−
−−回転数と電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例2の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
円柱状試料をSEM内に装着し、電子ビーム回転照射を以下の条件で行った。
その際、電子ビーム入射角度を−60°,−50°,−40°,−30°−20°,−10°,0°,+10°,+20°,+30°と変化させ、それぞれの場合についてL&Sパターンの線幅を測定した。
また、試料の回転方向の違いによる線幅の比較を行うため、電子ビーム入射角度を変化
させると共に、照射時の回転数2rpm、1500rpmのときのL&Sパターン線幅を測定し、−側と+側の電子ビーム入射角度変化における線幅の広がりを比較した。また、照射時に試料を回転させずに照射した場合(固定照射の場合)の電子ビーム入射角度変化における線幅の広がりを比較した。
<照射条件>
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:0.85nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:0、2、1500rpm
レジスト平均膜厚:2.02μm
ドーズ量:100μC/cm
描画パターン:実施例2と同様
電子ビーム入射角度の求め方について以下に示す。
図2(b)において、電子ビームの照射位置(±Y)を変えることで角度(θ)を変化させた。電子ビーム入射角度と移動距離の関係は下記式で求められ、それぞれの関係を下記表1に示した。
式 Y[mm]=5.0×sinθ
移動距離Yについて、円の中心線上を基準の0°とし、試料の回転方向と同じ方向にずらす場合をプラス、回転方向と逆方向にずらす場合をマイナスとする。
<結果>
照射時の回転数2rpmのときのL&Sパターンの電子顕微鏡写真を図13に示し、照射時の回転数1500rpmのときのL&Sパターンの電子顕微鏡写真を図14に示す。
図13、14のSEM写真から、照射時の回転数2rpmのときの方が1500rpmのときよりも線幅が広がることがわかった。これは、レジストTMMRが高感度であるため、回転数を少なくすることで線幅が広がってしまうと考えられる。
図13、14に示した電子ビーム入射角度とL&Sパターンの平均線幅の関係を下記表2に表し、図15にグラフとして示した。
図15のグラフより、0°のときの線幅を基準とし、電子ビーム入射角度を0°から30°と大きくしていくほど線幅が広がるが、30°で線幅の広がりが最大となり、30°よりも大きくすると、線幅の広がりは徐々に小さくなる。また、60°まで角度を大きくすると線幅が不安定になる。これは、0°から30°までは後方散乱の影響で線幅が広がるが、30°以上では角度が大きくなることで、後方散乱の影響を受けにくくなり、線幅が徐々に広がらなくなると考えられる。またレジストとしてTMMRを用いた場合に施すPEBの効果により、電子ビーム入射角度変化による線幅への影響が抑えられてしまうと考えられる。
また、照射時の回転数2rpm及び1500rpmについて、−側と+側の電子ビーム入射角度変化において、線幅の広がりに差異はなかった。また、照射時に試料を回転させずに照射した場合(固定照射の場合)の線幅は1.6μmであり、また電子ビーム入射角度変化によって変わらなかった。よって、固定照射の場合の方が回転照射よりも微細な加工線幅になることがわかった。これは、回転させることによる試料の振動が照射に影響を与えていると考えられる。
[実施例4]
−継ぎ照射方法による無端状モールドの作製−
実施例1と同様に、但し、以下の条件による継ぎ照射方法で、無端状モールドを作製した。なお、照射装置の彫刻運転の最小回転角度は0.5°である。
・加速電圧: 10kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 400nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 250μC/cm
・パターン: 図16に示すライン&スペース(L&S)パターン
・倍率: 100倍、300倍、600倍
継ぎ照射方法では、回転前に描画したパターンと回転後のパターンとが繋がるように、継ぎ目で重複して照射する。このような継ぎ目を形成するための回転角度の算出方法を説明する。
使用した円柱状試料の半径rは15mmであることより、試料を0.5°回転させた時の観察面の移動距離xは、下記式から0.135mmである。

使用した照射装置の照射可能領域が12cm×9cmであるため、100倍、300倍、600倍の各倍率における照射可能領域は、それぞれ1200μm×900μm、400μm×300μm、200μm×150μmとなる。よって、照射領域のうち短い辺を考慮すると、各倍率における照射可能な領域幅はそれぞれ、900μm、300μm、150μmになる。以上から、継ぎ目部分において重複照射するための回転角度は、表3のようになる。

得られたL&SパターンのSEM写真を、図17〜19に示す。図17は、倍率100倍、図18は倍率300倍、図19は倍率600倍で照射したときのSEM写真である。
図17〜19のSEM写真に示されるように、いずれの倍率でも全周にわたってL&Sパターンが形成されていた。
表4には、図17〜19のSEM写真から、継ぎ目ではない1度照射の部分と継ぎ目部分の2度照射部分のライン及びスペースの幅を測定した結果を示す。

表4より、1度照射の部分は、倍率が600倍の場合に最も理論値に近い値であることが分かる。また、100倍の場合には理論値の2倍近い値であった。
2度照射された部分についても、倍率が600倍の場合に最も理論値に近い値(1.5倍)であり、倍率300倍の場合には理論値の3倍近い値であった。
いずれの倍率においても1度照射された部分よりも2度照射された部分でライン幅が太くなっていた。これは、2度照射されたことによって電子ビームの照射量が増えたという理由以外に、重複照射部分では回転によって照射位置がずれたのではないかと推測される。この理由によれば、倍率が大きければ大きいほどライン幅が広がりやすくなるため、倍率を高くしすぎないことが望ましいと思われるが、今回の実施例の結果からは、倍率は600倍が最も精度が高くなることが判明した。
更に倍率600倍においては、ドーズ量を100μC/cm、400μC/cmで照射したサンプルも作製した。得られたL&SパターンのSEM写真を、図20〜21に示す。
図19〜21のSEM写真から、倍率が600倍のときの各ドーズ量における1度照射部分及び2度照射部分のライン及びスペースの幅を測定し、その結果を表5に示す。

表5より、1度照射の部分も2度照射された部分も、ドーズ量にかかわらず近似した値となることが分かった。また、いずれのドーズ量においてもパターンをはっきりと観察できることが分かり、このことから、ドーズ量が100〜400μC/cmの範囲内では、照射の精度には影響を及ぼさないと考えられる。
なお、実施例4の照射条件では、全体的にL&Sパターンが剥がれるたりズレたりという状態が多く見られた。しかし図19,20のようにパターンがねじれて重なった状態でありながらもパターンを確認することができることから、照射は正確に行われたが、現像の際にこのような剥がれ・ズレ等が発生したと考えられる。
この現象を防ぐためには、ドーズ量を更に増やしてレジスト膜の深くまで照射することが有効と思われる。レジスト深部まで硬化させることで、パターン下部が現像時に流れるという現象を抑えることが可能と思われる。
[実施例5]
−継ぎ照射方法による無端状モールドの作製−
実施例4と同様に、但し、以下の条件による継ぎ照射方法で、無端状モールドを作製した。
・加速電圧: 10kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 400nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 400μC/cm
・倍率: 300倍
・回転角度: 1°
・パターン: 下記表6に示すライン&スペース(L&S)パターン

得られたL&SパターンのSEM写真を、図22〜24に示す。図22は、表6の条件1、図23は条件2、図24は条件3で照射したときのSEM写真である。
図22〜24のSEM写真から、1度照射部分及び2度照射部分のライン及びスペースの幅を測定し、その結果を表7に示す。

表7より、ラインパターンが100dotのときはライン幅が理論値の1.1倍であったが、30dotのときには2倍以上になっていた。これは、SEMの電子ビームのスポット径によるものと考えられる。
また、図22〜24から明らかなように、ラインパターンが細ければ細いほど、2度照射させた継ぎ目部分のズレが目立っている。このことより、より微細なパターンを作製するためには、位置合わせをより正確に行う必要があると考えられる。
<実施例1〜5のまとめ>
レジストとしてTMMRを使用した場合、同じドーズ量の条件下で、電子ビーム入射角度を0°から30°と大きくしていくほど線幅が広がるが、30°で線幅の広がりが最大となり、30°よりも大きくすると、線幅の広がりは徐々に小さくなった。一方、60°まで角度をつけると線幅が不安定になった。以上から、電子ビーム入射角度が0°から30°までは、電子ビーム入射角度を大きくしていくことで、より低いドーズ量で同じ線幅のパターンが作製できることがわかった。
照射時の回転数については、2rpm及び1500rpmで作製された線幅を比較すると、2rpmのほうが1500rpmよりも線幅が広がっていた。また、−側と+側の電子ビーム入射角度変化に関しては、線幅の広がりに違いはなかった。TMMRでは、PEBの効果により電子ビーム入射角度変化による線幅への影響が抑えられていると考えられる。
[実施例6]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−ドーズ量の違いによる描画特性−−
<レジスト膜の成膜>
基板:円柱状試料(アルミニウム、直径10mm)
レジスト:PMMA希釈液(体積濃度50%)
PMMA:OEBR-1000(東京応化工業社製)
PMMA用うすめ液:LBシンナー(東京応化工業社製)
<塗布条件>
塗布侵入速度3.0mm/sec
浸漬時間:5.0sec
塗布引き上げ速度0.1mm/sec
以上の条件により、PMMAレジストを塗布した。
<PB>
塗布後、高温炉を使用して180℃、20分間で焼成(PB)を行った。
<電子ビームの照射>
PB後の円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながらドーズ量を100、200、500μC/cmと変化させて電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
実験装置:実施例2と同様の装置
ビーム電流:4.0nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
ビーム入射角度:0°
照射時の回転数:1500rpm
レジスト平均膜厚:523nm
ドーズ量:100、200、500μC/cm
描画パターン:図25に示すL&Sパターン
SEMの倍率300倍(描画範囲一辺300μmの正方形)で作製した。
<現像>
照射後、現像液により現像した。現像液はOEBR−1000用現像液(東京応化工業社製)(室温約23℃)を使用し、2分間浸した。その後、窒素ガスで乾燥した。
<結果>
得られたL&SパターンのSEM写真を図26に示す。
図26から、ドーズ量が100μC/cmのときにはパターンの深さが浅く、500μC/cmのときはパターンどうしがくっついていていることから、最適なドーズ量は200μC/cmであると考えられる。
[実施例7]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−回転数の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
円柱状試料をSEM内に装着し、試料の回転数を2,10,50,100,200,500,100,1500rpmと変化させ、電子ビーム回転照射を以下の条件で行った。また、10〜100rpmの間で10rpm毎に変化させ、電子ビーム回転照射を行なった。
<照射条件>
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:4.0nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
ビーム入射角度:0°
レジスト平均膜厚:523nm
ドーズ量:200μC/cm
描画パターン:実施例6と同様
<現像>
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
<結果>
得られたL&SパターンのSEM写真を図27に示し、図28に回転数と加工線幅の関係をグラフに示す。図28から、この条件下では、照射時の回転数50rpm付近において最微細な加工線幅が得られると考えられる。
図29に照射時の回転数50rpm付近における回転数と加工線幅の関係をグラフに示す。図29から、この条件下では、照射時の回転数40rpmのときが最も微細な加工線幅が得られているが、照射時の回転数が40rpm以下ではL&Sパターンがロールの円周方向において形成されていない部分が存在した。ロール状ナノインプリントモールドの作製ではロール周方向の全面においてパターンが形成される必要があるため、最微細な線幅が得られる照射時の回転数は50rpmであると考えられる。
[実施例8]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
円柱状試料をSEM内に装着し、ビームの入射角度を−60°、−50°、−40°、−20°、−10°、0°、+10°、+20°、+30°と変化させ、電子ビーム回転照射を以下の条件で行った。なお、ドーズ量が100μC/cm、150μC/cm
のときには、入射ビーム入射角度−10°、0°、+10°での照射は行なわなかった。
<照射条件>
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:4.0nA、2.5nA(150μC/cmのときのみ)
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:505nm、430nm(150μC/cmのときのみ)
ドーズ量:100、150、200μC/cm
描画パターン:実施例6と同様
<現像>
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
<結果>
図30、図31に、ドーズ量が200μC/cmの場合の各電子ビーム入射角度でのL&SパターンのSEM写真を示す。また、図32にドーズ量が200μC/cmの場合の電子ビーム入射角度と加工線幅の関係を示す。
図32から、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ加工線幅は大きくなっている。これは、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ2次電子の影響が大きくなるためと考えられる。電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると±20°までは−側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられ、±30°では+側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられる。したがって、電子ビーム入射角度としては+側を利用する方がドーズ量を低く抑えることができると考えられる。
図33に、ドーズ量が100μC/cmの場合の各電子ビーム入射角度でのL&SパターンのSEM写真を示す。
図33から、電子ビーム入射角度が−60°の場合以外は、L&Sパターンがロール一周分作製されていないため利用され難いと考えられる。電子ビーム入射角度が+20°,+30°ではL&Sパターンが全く存在しなかった。
以上の結果、図33から、ドーズ量が100μC/cmではドーズ量が不足していると考えられる。
次に、図34にドーズ量が150μC/cmの場合の各電子ビーム入射角度でのL&Sパターンを示す。また、図35にドーズ量が150μC/cmの場合の電子ビーム入射角度と加工線幅の関係を示す。
図35から、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ加工線幅は大きくなっている。これは、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ2次電子の影響が大きくなるためと考えられる。電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると+側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられる。したがって、電子ビーム入射角度としては、+側を利用する方がドーズ量を低く抑えることができると考えられる。
[実施例9]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−各ドーズ量での電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
円柱状試料をSEM内に装着し、ビームの入射角度を−60°、−50°、−40°、−20°、−10°、0°、+10°、+20°、+30°と変化させ、電子ビーム回転照射を以下の条件で行った。
<照射条件>
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:1.5nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:391nm
ドーズ量:100、125、150、200μC/cm
描画パターン:実施例6と同様
<現像>
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
<結果>
図36に、各ドーズ量における、電子ビーム入射角度と加工線幅の関係を示す。
図36から、電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると+側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられる。したがって、電子ビーム入射角度としては、+側を利用する方がドーズ量を低く抑えることができると考えられる。
また、電子ビーム入射角度が0°でドーズ量が200μC/cmのときの加工線幅と、電子ビーム入射角度が+30°でドーズ量が125μC/cmのときの加工線幅がほぼ等しくなっている。したがって、電子ビーム入射角度を+30°にすることでドーズ量を200μC/cmから125μC/cmへ抑えることができると考えられる。
[実施例10]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−微細加工−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
円柱状試料をSEM内に装着し、微細なL&Sパターンを作製するためL&Sパターンの設計値を変えて、電子ビーム回転照射を以下の条件で行った。
<照射条件>
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:4.0nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
ビーム入射角度:0°
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:430nm
ドーズ量:200μC/cm
描画パターン:図37、図38に示すパターン
<現像>
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
<結果>
図39にドーズ量が200μC/cmの場合の各L&SパターンのSEM写真を示す。
図39から、ライン0.3μm、スペース0.6μmの場合は、パターンどうしがくっついている部分があり、またロール一周分のパターンが形成されていない。そのため、この条件下で、電子ビーム入射角度が0°のときの最微細な線幅は、ライン0.5μm、スペース1.0μmであると考えられる。
[実施例11]
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−微細なL&Sパターンでの各ドーズ量での電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
円柱状試料をSEM内に装着し、ビームの入射角度を−60°、−50°、−40°、−20°、−10°、0°、+10°、+20°、+30°と変化させ、電子ビーム回転照射を以下の条件で行った。
<照射条件>
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:1.5nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:308nm(図37に示すパターンの場合)
439(図38に示すパターンの場合)
ドーズ量:100、125、150、200μC/cm
描画パターン:図37、図38に示すパターン
<現像>
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
<結果>
図40に、ライン0.5μm、スペース1.0μmの各ドーズ量での電子ビーム入射角度と加工線幅の関係のグラフを示す。また、図41に、電子ビーム入射角度を変えたときの、ドーズ量200μC/cmの場合のライン0.3μm、スペース0.6μmのパターンのSEM写真を示す。図42に、ライン0.3μm、スペース0.6μmの各ドーズ量での電子ビーム入射角度と加工線幅の関係のグラフを示す。
図41から電子ビーム入射角度が0°のときはパターンが完全には形成されていないが、電子ビーム入射角度が−10°のときはパターンが円一周分形成されていた。電子ビーム入射角度を変えたときの最微細なパターンは、ライン0.3μm、スペース0.6μmであると考えられる。
[参考例1]
−回転させずに照射したときの各ドーズ量での電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
円柱状試料をSEM内に装着し、ビームの入射角度を−60°、−50°、−40°、−20°、−10°、0°、+10°、+20°、+30°と変化させ、試料を回転させずに電子ビーム照射を以下の条件で行った。
<照射条件>
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:0.65nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:0rpm
レジスト平均膜厚:455nm
ドーズ量:100、125、150、200μC/cm
描画パターン:実施例6と同様。
<現像>
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
<結果>
図43に、試料を回転させずに固定したとき(0rpm)の、各ドーズ量での電子ビーム入射角度と加工線幅の関係のグラフを示した。このときのパターンのL&Sは、ライン1.0μm、スペース2.0μmである。
図43から、試料を回転させずに固定して照射した場合の方が、回転させながら照射した場合よりも微細な加工線幅になっている。したがって、回転による振動が、照射に影響を及ぼしていると考えられる。
本発明において、試料を回転させながら照射する方法では、継ぎ目の無い無端状パターンが得られるという極めて優れた効果が奏されるが、更に、参照例1の結果を踏まえると、回転による振動を抑えることでより微細なパターンが得られる可能性がある。
また、参照例1の結果を踏まえると、実施例4や5のように、試料を回転させずに固定して照射した後、試料を回転させて試料を固定し再度照射するという方法では、回転による振動の影響を抑えることができる。但し、継ぎ目部分での照射の位置決めを精度良く行なう必要がある。
<実施例6〜11及び参考例1のまとめ>
レジストとしてPMMAを使用した場合、照射時の回転数は50rpmが最適であり、電子ビーム入射角度を0°から60°と大きくしていくほど線幅が広がった。また、ドーズを大きくするほど電子ビーム入射角度変化の影響を受けやすくなり線幅が広がった。したがって、電子ビーム入射角度を大きくするほどドーズ量を低く抑えられることがわかった。
電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると、+側を利用する方がドーズ量を低く抑えられることがわかった。ドーズ量が200μC/cmで、電子ビーム入射角度が−10°のときに、ライン0.3μm、スペース0.6μmのL&Sパターンが得られ、最微細な線幅となった。
10 基板
20 レジスト層
30 樹脂
40 ガラス
100 円筒状基板

Claims (14)

  1. 円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する基板を、回転方向に回転させる工程と、
    前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
    前記照射により又は前記照射後の現像により、前記基板の一部を除去する工程と、
    を有する無端状パターンの作製方法。
  2. 円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する膜が付与された基板を、回転方向に回転させる工程と、
    前記膜に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
    前記照射により又は前記照射後の現像により、前記膜の一部を除去する工程と、
    を有する無端状パターンの作製方法。
  3. 前記基板を回転方向に回転させながら、前記電子ビーム又はイオンビームを照射することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無端状パターンの作製方法。
  4. 前記電子ビーム又はイオンビームの走査方向及び走査速度、前記基板の移動方向及び移動速度、並びに前記基板の回転方向及び回転速度のうち少なくとも1つを調節して、パターンを描画することを特徴とする請求項3に記載の無端状パターンの作製方法。
  5. 前記電子ビーム又はイオンビームの照射時に前記基板を回転させないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無端状パターンの作製方法。
  6. 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角が、0°以上90°以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の無端状パターンの作製方法。
  7. 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角が、0°以上60°以下であることを特徴とする請求項6に記載の無端状パターンの作製方法。
  8. 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角を、基板の回転方向でプラス、逆回転方向でマイナスとしたとき、前記入射角が、−60°以上+40°以下であることを特徴とする請求項7に記載の無端状パターンの作製方法。
  9. 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の方法により形成された無端状モールド。
  10. 更に、表面に保護層を形成してなることを特徴とする請求項9に記載の無端状モールド。
  11. 請求項9又は請求項10に記載の無端状モールドを成形用の型として用い、該無端状モールドに樹脂を押し付けて型を転写する工程と、
    押し付けた前記無端状モールドと前記樹脂とを剥離する工程と、
    を有することを特徴とする樹脂パターン成形品の製造方法。
  12. 請求項11に記載の方法により形成された樹脂パターン成形品。
  13. 請求項9又は請求項10に記載の無端状モールドを有する光学素子。
  14. 請求項12に記載の樹脂パターン成形品を有する光学素子。
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