JP2009223310A - 無端状パターンの作製方法、樹脂パターン成形品の製造方法、無端状モールド、樹脂パターン成形品、及び光学素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の無端状パターン作製方法は、電子ビーム又はイオンビームの照射により硬化又は可溶化する感応性基板を用いる場合には、円周方向で無端の感応性基板を回転方向に回転させる工程と、前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、前記照射により又は前記照射後の現像により前記基板の一部を除去する工程とを有する。基板が感応性基板ではない場合、円周方向で無端の基板上に感応性膜を付与する。ビーム照射は、基板を回転方向に回転させながら行なっても、前記基板を回転させずに行なってもよい。但し後者の場合には照射していないときに基板を回転させる。
【選択図】図1
Description
また、本発明の第二の課題は、前記無端状モールドをナノインプリントの型として用いる樹脂パターン成形品の製造方法を提供することである。
更に、本発明の第三の課題は、これらの製造方法によって得られる無端状モールド、樹脂パターン成形品、及び光学素子を提供することである。
前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
前記照射により又は前記照射後の現像により、前記基板の一部を除去する工程と、
を有する無端状パターンの作製方法である。
前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
前記照射により又は前記照射後の現像により、前記膜の一部を除去する工程と、
を有する無端状パターンの作製方法である。
である。
押し付けた前記無端状モールドと前記樹脂とを剥離する工程と、
を有することを特徴とする樹脂パターン成形品の製造方法である。
本発明の無端状パターンの第一の作製方法は、少なくとも以下の工程を有する。
(1A)電子ビーム又はイオンビームの照射により硬化又は可溶化する基板(以下「感応性基板」と称する場合がある)を、回転方向に回転させる工程、
(2)電子ビーム又はイオンビームを照射する工程、
(3)前記照射により又は前記照射後の現像により、前記基板の一部を除去する工程。
即ち、本発明の無端状パターンの第二の作製方法は、少なくとも以下の工程を有する。
(1B)円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する膜(以下「感応性膜」と称する場合がある)が付与された、前記基板を、回転方向に回転させる工程、
(2)電子ビーム又はイオンビームを照射する工程、
(3)前記照射により又は前記照射後の現像により、前記膜の一部を除去する工程。
本発明において基板は、円周方向において連続した無端の形状であれば、芯部を有する円柱状の基板、芯部を有さない円筒状の基板のいずれであってもよい。また、断面形状は、円、楕円、多角形などいずれであってもよく、形成されたパターン形成品の用途に応じて適宜選択できる。
以下、便宜上、本発明の基板を「円筒状基板」と称して説明する場合があるが、以降の「円筒状基板」は、「円柱状基板」、「断面が楕円形の基板」、及び「断面が多角形の基板」など適宜様々な形状の基板に読み替えられるものとする。
基板の表面粗さは、ビーム等の照射により形成できる形状の寸法より大きいと所望の形状が得られないので、表面粗さは充分に小さいことが好ましい。具体的には、基板の表面粗さ(算術平均粗さ)(Ra)は、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。ここで平均表面粗さ(算術平均粗さ)(Ra)とは、蝕針計で測定した粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、それに直交する軸をY軸として、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、次の式で与えられた値をμm単位で表したものである(Lの決定及び平均粗さの計測はJIS B 0601に従う)。
また、前記平滑加工の容易さの観点から、無端状の基板の断面形状は、真円度が高いことが好ましい。また、得られた無端状モールドをロール転写に用いる際においても、高い真円度を有する基板は、被転写体にムラなく接触させるのに好適である。よって、本発明における基板は、円筒状又は円柱状であることが好ましい。
基板が無感応性基板の場合には、円筒状基板上に感応膜を付与する。感応膜としては、レジスト膜、金属堆積膜、酸化物層、フッ化物層などを適用することができる。前記金属堆積膜とは、真空蒸着やスパッタ蒸着により付着したものを意味する。
感応膜はビームに対して感応性に優れるものであるか、加工性が良好であるものが望まれる。高い感応性を有する材料として、レジストが好適である。レジストは有機レジスト、無機レジストのいずれであってもよく、またポジ型レジスト、ネガ型レジストのいずれであってもよい。
、Al2O3等の酸化物や、LiF、AlF等のフッ化物を適用できる。無機レジストを用いる場合、特にSOGを用いる場合には、レジストを剥離せずにそのままナノインプリントのためのモールドとして用いることができる。このように無機レジストの場合にはレジストの剥離操作が不要となり、作製の操作が簡略化できる。
感応膜の厚さは、10nm〜100μmであることが好ましく、50nm〜10μmであることがより好ましく、100nm〜1μmであることが更に好ましい。
形成されたレジスト層は、前述のように焼成又は半焼成(PB:Pre Bake)して、一定量の溶媒を除去し、レジストの密着性、感度、形状を安定化させることが好ましい。PBの加熱温度や加熱時間は、レジストや溶媒の種類によって好適な範囲が異なるので適宜決定する。一般には、加熱温度や加熱時間を変えてパターンを形成し、アスペクト比が高くなるようなPBの条件を決定する。
PBの加熱温度としては、具体的には100℃以上500℃以下が好ましい。
本発明においてパターンの描画に用いられるビームは、電子ビーム及びイオンビームである。
イオンビームには、ガリウム、アルゴン、ヘリウム、シリコンなどのイオンを用いることができる。
電子ビーム及びイオンビームは、集束したビーム、シャワー状のビームを制限アパーチュアーで局所的に照射できるように加工したビーム、マルチビーム源によるもの等いずれであってもよい。
特にイオンビームとしては、イオンを電界で加速したビームを細く絞った集束イオンビーム(FIB,Focused Ion Beam)であることが、ナノオーダーの加工を行なう観点から好ましい。
以降、図1〜図7を参照しながら、本発明における照射方法を説明する。ここでは、円筒状基板100に照射を行なうとして説明しているが、ここでいう円筒状基板100は、感応性基板の場合や、無感応性基板上に感応性膜が付与されたものを含む。
本発明では、X軸を円筒状基板100の軸方向とし、Y軸を円筒状基板100の半径方向と定義する。円筒状基板100をR方向に回転させながら、ビームBをX軸(1軸)方向に走査して照射すれば、円筒状基板全面に描画が可能となる。
また、照射したビームの二次電子を利用して見かけの感度を向上させる観点からは、+側の照射角度で照射することが好ましい。更に、後方散乱を利用して見かけの感度を向上させる観点からは、−30°以上0°未満、又は0°より大きく+30°以下であることがより好適である。
加速電圧が低い場合、レジストに入射した電子はすぐに広がるが、加速電圧が高い場合は、固体中に深く進入してから広がる。この電子線が入射方向に広がるのを、前方散乱と呼び、散乱を繰り返した結果、入射方向に対して横方向に広がったり入射方向に戻ったりする散乱を、後方散乱と呼ぶ。後方散乱は、入射した電子の反射や、入射した電子がレジストを構成する分子に衝突してイオン化して二次電子を発生させ、この二次電子の散乱によって生じる。
図5に示すように、連続照射方法では三次元的な加工も可能である。
まず、図7(a)に示すように、電子ビーム又はイオンビームの照射時に基板を回転させず、特定面のビーム照射を行なう。特定面とは、基板を回転させずにビーム走査により照射できる基板円周面の領域をいう。次に、照射を止めて、照射位置に未照射の基板表面が配置するよう基板を回転させる(図7(b))。この状態でビーム照射を行なう(図7(c))。その後、図7(d)(e)のように、ビーム照射と基板の回転の操作を繰り返して、基板の円周面全面を照射する。
なお、継ぎ照射方法においては、特定面の照射で描画されたパターンと、次に照射されて描画されたパターンとが繋がるように、パターンの継ぎ目部分では重複照射することが望ましい。
前記照射工程を経たレジスト層は、焼成又は半焼成(PEB:Post Exposure Bake)してもよい。特に、光塩基発生剤、熱塩基発生剤、光酸発生剤、熱酸発生剤等のコントラスト増強剤を含有する無機レジストを使用する場合には、熱によってパターンのコントラストが増強されるため、PEBを施すことが好ましい。
照射された感応性基板又は感応膜は、前記ビーム照射によって或いは現像液によってその一部が除去される。ネガ型の感応性基板及び感応膜は、ビーム照射部分が残存し、未照射部分は除去される。ポジ型の感応性基板又は感応膜は、ビーム照射部分が除去され、未照射部分は残存する。
現像の後に、適宜リンス、乾燥などの工程を行うことができる。
例えば、無機レジストを用いた場合には、無機レジストは強度が充分であるため、これに、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのシランカップリング剤で離型処理したものをモールドとして用いることができる。また、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)などをレジストとして用いることも、離型性、低摩擦などの特性を有することから好適である。
現像後、レジストをマスクとして、円筒状基板をエッチングして無端状モールドを形成してもよい。エッチングの方法には、浸漬法によるウエットエッチングや、プラズマなどのドライエッチングがある。形状が無端状であるため、ドライエッチングも回転させながら行うことも可能である。また、エッチング後に感応性膜を除去し、その後、リンス、乾燥、離型処理、補強コーティングなどの工程を施す場合もある。
上記方法により作製した無端状モールドは、そのまま素子として適用することも可能である。例えば、上記方法により金属膜を螺旋状のパターンに形成すればコイルとして適用することができる。また、L&Sパターンを有する無端状モールドは回折格子として用いることができ、図5に示すような三次元形状の無端状モールドは曲面レンズ(f−θレンズ、レンチキュラーレンズ)等へ適用可能である。その他、無端状モールドは、フレネルゾーンプレート、バイナリ−光学素子、ホログラム光学素子、反射防止膜、CDやDVDなどのメディア等へ適用可能である。
線幅は、レジストの種類や、照射条件、現像条件などにより、100nm以下、さらには80nm以下、調整によっては10nm程度に、微細に形成することができる。
本発明の樹脂パターン成形品の製造方法は、上記無端状パターンの製造方法によって得られた無端状モールドを成形用の型として用いる。微細加工物に樹脂を押し付ける際、樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に設定して樹脂を軟らかくした上で、樹脂に型を押し付けた後、樹脂を硬化し、その後、型と樹脂とを剥離する。
上記方法により凹凸が形成されたレジスト層20を基板10上に有する無端状モールドと、ガラス40との間に樹脂30を挟みこみ(図8(1))、圧力を一定に保ったまま(図8(2))、樹脂30を硬化する(図8(3))。その後、型を引き離すと、ガラス40上に樹脂30の樹脂パターン成形品が形成される(図8(4))。
熱可塑樹脂としては、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド等を挙げることができ、PMMA等のアクリル系樹脂が好ましい。
光硬化樹脂としては、紫外線等で硬化する樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、及びこれらの混合物を挙げることができる。
上記方法によって得られた本発明の樹脂パターン成形品は、線幅が100nm以下の加工部を有することができる。線幅が10nm以下の加工部を有することも可能である。なお、上記製造方法によって当然に、線幅100nmよりも広い加工部を形成することもできる。
得られた微細パターン成形品や3次元モールドは、その形状と材質から、光学素子に用いることができる。例えば、フレネルゾーンプレート、回折格子、バイナリ−光学素子、ホログラム光学素子、反射防止膜、CDやDVDなどのメディア等を挙げることができる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−回転数の違いによる描画特性−−
<照射装置の準備>
電子ビーム照射には、走査型電子顕微鏡(SEM、エリオニクス社 ESA-2000)を用いた。この電子顕微鏡内部には、円筒状基板を取り付けつけるための冶具と、円筒状基板を回転方向に回転させる機構を有する回転装置を備えるよう改造した。
基板として、鏡面加工を施した円柱状の真鍮を用いた。円柱状基板の直径は3cmで、長さは3cmであった。この基板を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した。
TMMR希釈液はディップ(浸漬法)で塗布した。前記TMMR希釈液中に、前記円柱状基板を侵入速度3.0mm/秒、浸漬時間5.0秒、塗布引き上げ速度0.1mm/秒(一層塗布)で円柱状基板表面にレジストを塗布した。
レジストを付与した円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながら電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
・加速電圧: 30kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 150nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 424.4μC/cm2
・回転数: 10,100,500,1000,2000,3000rpm
・パターン: ライン&スペース(L&S)パターン
:パターンの設計値: 0.1μmのライン(電子ビームの照射部分)と19.9μmのスペース(電子ビームの無照射部分)
・電子ビーム走査方式: ラスタスキャン
電子ビーム照射後、高温炉を使用して90℃、2分間で焼成(PEB)を行った。
PEB後に現像液により現像した。現像液はSV−ガンマーブチロラクトン(室温約23℃)を使用し、2分間浸した。その後、窒素ガスで乾燥した。
得られたL&SパターンのSEM写真を、図9(a)〜(f)に示す。図9(a)は、回転数10rpm、(b)は回転数100rpm、(c)は回転数500rpm、(d)は回転数1000rpm、(e)は回転数2000rpm、(f)は回転数3000rpmで回転させながら照射して得られたパターンのSEM写真である。
したがって、ビーム径がナノオーダーの電子ビームで照射し、レジスト膜厚を100nm程度まで薄くすれば、100nm以下の微細な加工も可能と考えられる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−ドーズ量の違いによる描画特性−−
以下の条件により、TMMRレジストを塗布した。
<レジスト膜の成膜>
基板:円柱状試料(アルミニウム、直径10mm)
レジスト:TMMR希釈液(体積濃度50%)
TMMR:S2000(東京応化工業社製)
TMMR用うすめ液:PMシンナー(東京応化工業社製)
<塗布条件>
塗布侵入速度3.0mm/sec
浸漬時間:5.0sec
塗布引き上げ速度0.5mm/sec
以上の条件により、TMMR レジストを塗布した。
塗布後、高温炉を使用して200℃、30分間で焼成(PB)を行った。
PB後の円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながら電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
ローラ塗布&彫刻装置(三井電気精機株式会社製)
ビーム電流:0.85nA
加速電圧:30kV
ビーム径:222nm
照射時の回転数:1500rpm
レジスト平均膜厚:2.41μm
ドーズ量:50、100、150、200μC/cm2
描画パターン:図11に示すL&Sパターン
SEMの倍率300倍(描画範囲一辺300μmの正方形)で作製した。
電子ビーム照射後、高温炉を使用して90℃、2分間で焼成(PEB)を行った。
PEB後に現像液により現像した。現像液はSV−ガンマーブチロラクトン(室温約23℃)を使用し、2分間浸した。その後、窒素ガスで乾燥した。
得られたL&SパターンのSEM写真から測定した、ドーズ量と加工線幅の関係を、図12に示す。
図12のグラフに示されるように、ドーズ量が多くなるにしたがって加工線幅が広がることがわかった。
−連続照射方法および固定照射方法による無端状モールドの作製−
−−回転数と電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例2の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
その際、電子ビーム入射角度を−60°,−50°,−40°,−30°−20°,−10°,0°,+10°,+20°,+30°と変化させ、それぞれの場合についてL&Sパターンの線幅を測定した。
また、試料の回転方向の違いによる線幅の比較を行うため、電子ビーム入射角度を変化
させると共に、照射時の回転数2rpm、1500rpmのときのL&Sパターン線幅を測定し、−側と+側の電子ビーム入射角度変化における線幅の広がりを比較した。また、照射時に試料を回転させずに照射した場合(固定照射の場合)の電子ビーム入射角度変化における線幅の広がりを比較した。
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:0.85nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:0、2、1500rpm
レジスト平均膜厚:2.02μm
ドーズ量:100μC/cm2
描画パターン:実施例2と同様
図2(b)において、電子ビームの照射位置(±Y)を変えることで角度(θ)を変化させた。電子ビーム入射角度と移動距離の関係は下記式で求められ、それぞれの関係を下記表1に示した。
式 Y[mm]=5.0×sinθ
照射時の回転数2rpmのときのL&Sパターンの電子顕微鏡写真を図13に示し、照射時の回転数1500rpmのときのL&Sパターンの電子顕微鏡写真を図14に示す。
図13、14のSEM写真から、照射時の回転数2rpmのときの方が1500rpmのときよりも線幅が広がることがわかった。これは、レジストTMMRが高感度であるため、回転数を少なくすることで線幅が広がってしまうと考えられる。
−継ぎ照射方法による無端状モールドの作製−
実施例1と同様に、但し、以下の条件による継ぎ照射方法で、無端状モールドを作製した。なお、照射装置の彫刻運転の最小回転角度は0.5°である。
・加速電圧: 10kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 400nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 250μC/cm2
・パターン: 図16に示すライン&スペース(L&S)パターン
・倍率: 100倍、300倍、600倍
使用した円柱状試料の半径rは15mmであることより、試料を0.5°回転させた時の観察面の移動距離xは、下記式から0.135mmである。
表4には、図17〜19のSEM写真から、継ぎ目ではない1度照射の部分と継ぎ目部分の2度照射部分のライン及びスペースの幅を測定した結果を示す。
2度照射された部分についても、倍率が600倍の場合に最も理論値に近い値(1.5倍)であり、倍率300倍の場合には理論値の3倍近い値であった。
いずれの倍率においても1度照射された部分よりも2度照射された部分でライン幅が太くなっていた。これは、2度照射されたことによって電子ビームの照射量が増えたという理由以外に、重複照射部分では回転によって照射位置がずれたのではないかと推測される。この理由によれば、倍率が大きければ大きいほどライン幅が広がりやすくなるため、倍率を高くしすぎないことが望ましいと思われるが、今回の実施例の結果からは、倍率は600倍が最も精度が高くなることが判明した。
この現象を防ぐためには、ドーズ量を更に増やしてレジスト膜の深くまで照射することが有効と思われる。レジスト深部まで硬化させることで、パターン下部が現像時に流れるという現象を抑えることが可能と思われる。
−継ぎ照射方法による無端状モールドの作製−
実施例4と同様に、但し、以下の条件による継ぎ照射方法で、無端状モールドを作製した。
・加速電圧: 10kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 400nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 400μC/cm2
・倍率: 300倍
・回転角度: 1°
・パターン: 下記表6に示すライン&スペース(L&S)パターン
また、図22〜24から明らかなように、ラインパターンが細ければ細いほど、2度照射させた継ぎ目部分のズレが目立っている。このことより、より微細なパターンを作製するためには、位置合わせをより正確に行う必要があると考えられる。
レジストとしてTMMRを使用した場合、同じドーズ量の条件下で、電子ビーム入射角度を0°から30°と大きくしていくほど線幅が広がるが、30°で線幅の広がりが最大となり、30°よりも大きくすると、線幅の広がりは徐々に小さくなった。一方、60°まで角度をつけると線幅が不安定になった。以上から、電子ビーム入射角度が0°から30°までは、電子ビーム入射角度を大きくしていくことで、より低いドーズ量で同じ線幅のパターンが作製できることがわかった。
照射時の回転数については、2rpm及び1500rpmで作製された線幅を比較すると、2rpmのほうが1500rpmよりも線幅が広がっていた。また、−側と+側の電子ビーム入射角度変化に関しては、線幅の広がりに違いはなかった。TMMRでは、PEBの効果により電子ビーム入射角度変化による線幅への影響が抑えられていると考えられる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−ドーズ量の違いによる描画特性−−
<レジスト膜の成膜>
基板:円柱状試料(アルミニウム、直径10mm)
レジスト:PMMA希釈液(体積濃度50%)
PMMA:OEBR-1000(東京応化工業社製)
PMMA用うすめ液:LBシンナー(東京応化工業社製)
塗布侵入速度3.0mm/sec
浸漬時間:5.0sec
塗布引き上げ速度0.1mm/sec
以上の条件により、PMMAレジストを塗布した。
塗布後、高温炉を使用して180℃、20分間で焼成(PB)を行った。
PB後の円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながらドーズ量を100、200、500μC/cm2と変化させて電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
ビーム電流:4.0nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
ビーム入射角度:0°
照射時の回転数:1500rpm
レジスト平均膜厚:523nm
ドーズ量:100、200、500μC/cm2
描画パターン:図25に示すL&Sパターン
SEMの倍率300倍(描画範囲一辺300μmの正方形)で作製した。
照射後、現像液により現像した。現像液はOEBR−1000用現像液(東京応化工業社製)(室温約23℃)を使用し、2分間浸した。その後、窒素ガスで乾燥した。
得られたL&SパターンのSEM写真を図26に示す。
図26から、ドーズ量が100μC/cm2のときにはパターンの深さが浅く、500μC/cm2のときはパターンどうしがくっついていていることから、最適なドーズ量は200μC/cm2であると考えられる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−回転数の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:4.0nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
ビーム入射角度:0°
レジスト平均膜厚:523nm
ドーズ量:200μC/cm2
描画パターン:実施例6と同様
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
得られたL&SパターンのSEM写真を図27に示し、図28に回転数と加工線幅の関係をグラフに示す。図28から、この条件下では、照射時の回転数50rpm付近において最微細な加工線幅が得られると考えられる。
図29に照射時の回転数50rpm付近における回転数と加工線幅の関係をグラフに示す。図29から、この条件下では、照射時の回転数40rpmのときが最も微細な加工線幅が得られているが、照射時の回転数が40rpm以下ではL&Sパターンがロールの円周方向において形成されていない部分が存在した。ロール状ナノインプリントモールドの作製ではロール周方向の全面においてパターンが形成される必要があるため、最微細な線幅が得られる照射時の回転数は50rpmであると考えられる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
のときには、入射ビーム入射角度−10°、0°、+10°での照射は行なわなかった。
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:4.0nA、2.5nA(150μC/cm2のときのみ)
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:505nm、430nm(150μC/cm2のときのみ)
ドーズ量:100、150、200μC/cm2
描画パターン:実施例6と同様
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
図30、図31に、ドーズ量が200μC/cm2の場合の各電子ビーム入射角度でのL&SパターンのSEM写真を示す。また、図32にドーズ量が200μC/cm2の場合の電子ビーム入射角度と加工線幅の関係を示す。
図32から、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ加工線幅は大きくなっている。これは、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ2次電子の影響が大きくなるためと考えられる。電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると±20°までは−側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられ、±30°では+側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられる。したがって、電子ビーム入射角度としては+側を利用する方がドーズ量を低く抑えることができると考えられる。
図33から、電子ビーム入射角度が−60°の場合以外は、L&Sパターンがロール一周分作製されていないため利用され難いと考えられる。電子ビーム入射角度が+20°,+30°ではL&Sパターンが全く存在しなかった。
以上の結果、図33から、ドーズ量が100μC/cm2ではドーズ量が不足していると考えられる。
図35から、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ加工線幅は大きくなっている。これは、電子ビーム入射角度を大きくするにつれ2次電子の影響が大きくなるためと考えられる。電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると+側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられる。したがって、電子ビーム入射角度としては、+側を利用する方がドーズ量を低く抑えることができると考えられる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−各ドーズ量での電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:1.5nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:391nm
ドーズ量:100、125、150、200μC/cm2
描画パターン:実施例6と同様
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
図36に、各ドーズ量における、電子ビーム入射角度と加工線幅の関係を示す。
図36から、電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると+側の方が加工線幅は大きく、2次電子の影響を受けやすいと考えられる。したがって、電子ビーム入射角度としては、+側を利用する方がドーズ量を低く抑えることができると考えられる。
また、電子ビーム入射角度が0°でドーズ量が200μC/cm2のときの加工線幅と、電子ビーム入射角度が+30°でドーズ量が125μC/cm2のときの加工線幅がほぼ等しくなっている。したがって、電子ビーム入射角度を+30°にすることでドーズ量を200μC/cm2から125μC/cm2へ抑えることができると考えられる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−微細加工−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:4.0nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
ビーム入射角度:0°
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:430nm
ドーズ量:200μC/cm2
描画パターン:図37、図38に示すパターン
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
図39にドーズ量が200μC/cm2の場合の各L&SパターンのSEM写真を示す。
図39から、ライン0.3μm、スペース0.6μmの場合は、パターンどうしがくっついている部分があり、またロール一周分のパターンが形成されていない。そのため、この条件下で、電子ビーム入射角度が0°のときの最微細な線幅は、ライン0.5μm、スペース1.0μmであると考えられる。
−連続照射方法による無端状モールドの作製−
−−微細なL&Sパターンでの各ドーズ量での電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:1.5nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:50rpm
レジスト平均膜厚:308nm(図37に示すパターンの場合)
439(図38に示すパターンの場合)
ドーズ量:100、125、150、200μC/cm2
描画パターン:図37、図38に示すパターン
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
図40に、ライン0.5μm、スペース1.0μmの各ドーズ量での電子ビーム入射角度と加工線幅の関係のグラフを示す。また、図41に、電子ビーム入射角度を変えたときの、ドーズ量200μC/cm2の場合のライン0.3μm、スペース0.6μmのパターンのSEM写真を示す。図42に、ライン0.3μm、スペース0.6μmの各ドーズ量での電子ビーム入射角度と加工線幅の関係のグラフを示す。
図41から電子ビーム入射角度が0°のときはパターンが完全には形成されていないが、電子ビーム入射角度が−10°のときはパターンが円一周分形成されていた。電子ビーム入射角度を変えたときの最微細なパターンは、ライン0.3μm、スペース0.6μmであると考えられる。
−回転させずに照射したときの各ドーズ量での電子ビーム入射角度の違いによる描画特性−−
実施例6の方法と同様にしてレジスト膜の成膜及びPBを行い、レジスト膜が付与された円柱状試料を準備した。
実験装置:実施例2と同様
ビーム電流:0.65nA
加速電圧:30kV
ビーム径:150nm
照射時の回転数:0rpm
レジスト平均膜厚:455nm
ドーズ量:100、125、150、200μC/cm2
描画パターン:実施例6と同様。
照射後、実施例6と同様の方法で現像した。
図43に、試料を回転させずに固定したとき(0rpm)の、各ドーズ量での電子ビーム入射角度と加工線幅の関係のグラフを示した。このときのパターンのL&Sは、ライン1.0μm、スペース2.0μmである。
図43から、試料を回転させずに固定して照射した場合の方が、回転させながら照射した場合よりも微細な加工線幅になっている。したがって、回転による振動が、照射に影響を及ぼしていると考えられる。
また、参照例1の結果を踏まえると、実施例4や5のように、試料を回転させずに固定して照射した後、試料を回転させて試料を固定し再度照射するという方法では、回転による振動の影響を抑えることができる。但し、継ぎ目部分での照射の位置決めを精度良く行なう必要がある。
レジストとしてPMMAを使用した場合、照射時の回転数は50rpmが最適であり、電子ビーム入射角度を0°から60°と大きくしていくほど線幅が広がった。また、ドーズを大きくするほど電子ビーム入射角度変化の影響を受けやすくなり線幅が広がった。したがって、電子ビーム入射角度を大きくするほどドーズ量を低く抑えられることがわかった。
電子ビーム入射角度の+側と−側を比較すると、+側を利用する方がドーズ量を低く抑えられることがわかった。ドーズ量が200μC/cm2で、電子ビーム入射角度が−10°のときに、ライン0.3μm、スペース0.6μmのL&Sパターンが得られ、最微細な線幅となった。
20 レジスト層
30 樹脂
40 ガラス
100 円筒状基板
Claims (14)
- 円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する基板を、回転方向に回転させる工程と、
前記基板に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
前記照射により又は前記照射後の現像により、前記基板の一部を除去する工程と、
を有する無端状パターンの作製方法。 - 円周方向において無端であり、電子ビーム又はイオンビームの照射によって硬化又は可溶化する膜が付与された基板を、回転方向に回転させる工程と、
前記膜に所定の角度で電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
前記照射により又は前記照射後の現像により、前記膜の一部を除去する工程と、
を有する無端状パターンの作製方法。 - 前記基板を回転方向に回転させながら、前記電子ビーム又はイオンビームを照射することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無端状パターンの作製方法。
- 前記電子ビーム又はイオンビームの走査方向及び走査速度、前記基板の移動方向及び移動速度、並びに前記基板の回転方向及び回転速度のうち少なくとも1つを調節して、パターンを描画することを特徴とする請求項3に記載の無端状パターンの作製方法。
- 前記電子ビーム又はイオンビームの照射時に前記基板を回転させないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無端状パターンの作製方法。
- 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角が、0°以上90°以下であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の無端状パターンの作製方法。
- 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角が、0°以上60°以下であることを特徴とする請求項6に記載の無端状パターンの作製方法。
- 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角を、基板の回転方向でプラス、逆回転方向でマイナスとしたとき、前記入射角が、−60°以上+40°以下であることを特徴とする請求項7に記載の無端状パターンの作製方法。
- 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の方法により形成された無端状モールド。
- 更に、表面に保護層を形成してなることを特徴とする請求項9に記載の無端状モールド。
- 請求項9又は請求項10に記載の無端状モールドを成形用の型として用い、該無端状モールドに樹脂を押し付けて型を転写する工程と、
押し付けた前記無端状モールドと前記樹脂とを剥離する工程と、
を有することを特徴とする樹脂パターン成形品の製造方法。 - 請求項11に記載の方法により形成された樹脂パターン成形品。
- 請求項9又は請求項10に記載の無端状モールドを有する光学素子。
- 請求項12に記載の樹脂パターン成形品を有する光学素子。
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