JP5544789B2 - 無端状パターンの製造方法、樹脂パターン成形品の製造方法、無端状モールド、及び光学素子 - Google Patents

無端状パターンの製造方法、樹脂パターン成形品の製造方法、無端状モールド、及び光学素子 Download PDF

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本発明は、SOGの無端状モールドを形成する無端状パターンの製造方法、樹脂パターン成形品の製造方法、無端状モールド、及び光学素子に関する。
ナノインプリント技術において、より一層の効率化、低コスト化、大面積化をはかる技術展開としてローラ転写方式が注目されている。
ローラ転写方式で用いられるモールドの従来の作製方法としては、めっきや樹脂などの微細パターンを有する膜を円筒状基板に巻き付ける方法や、機械加工による方法、レーザー加工による方法などが存在する。
しかし、前記巻き付けの方法では、つなぎ目が発生するという問題点がある。前記機械加工による方法では、加工工具が摩耗するため長時間加工すると形状が変化し、また溝状のパターンしか形成できない。前記レーザー加工の方法では、ビーム径をナノオーダーまで絞ることができず、ナノオーダーのパターンを有する無端状モールドの作製は困難である。
一方、電子ビームの照射方法としては、ディスクを回転させながら電子ビームを照射する方法(例えば、非特許文献1参照)や、曲面上に電子ビームを照射する方法(例えば、非特許文献2参照)が提案されている。
M. KATSUMURA, M. SATO, K. HASHIMOTO, Y. HOSODA, O. KASONO, H. KITAHARA, M. KOBAYASHI, T. IIDA and K. KURIYAMA, Jpn. J. Appl. Phys., Vol. 44, No. 5B, 2005, pp. 3578−3582. K. YAMAZAKI, T. YAMAGUCHI and H. NAMATSU, Jpn. J. Appl..Phys., Vol. 43, No. 8B, 2004, pp. L 1111−L 1113.
本発明の第一の課題は、無端状モールドなどに適用し得るSOG(Spin-On-Grass)の無端状パターンを電子ビーム又はイオンビームの照射によって作製する方法を提供することである。
また、本発明の第二の課題は、前記SOG無端状モールドをナノインプリントの型として用いる樹脂パターン成形品の製造方法を提供することである。
更に、本発明の第三の課題は、これらの製造方法によって得られるSOG無端状モールド及び光学素子を提供することである。
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により課題解決に至った。
<1> 円周方向において無端のアルミニウム基板上に、SOG(Spin-On-Grass)レジスト液膜を付与する工程と、
前記SOGレジスト液膜を有するアルミニウム基板を加熱してSOGレジストを焼成する工程と、
前記焼成後、SOGレジストを有するアルミニウム基板を冷却する工程と、
前記冷却後、SOGレジストを有するアルミニウム基板を回転方向に回転させる工程と、
前記基板上のSOGレジストに電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
前記照射により又は前記照射後の現像により、前記SOGレジストの一部を除去する工程と、
を有する無端状パターンの製造方法。
<2> 前記基板を回転方向に回転させながら、前記電子ビーム又はイオンビームを前記SOGレジストに照射する前記<1>に記載の無端状パターンの製造方法。
<3> 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角を、基板の回転方向でプラス、逆回転方向でマイナスとしたとき、前記入射角が、−60°以上+60°以下である前記<1>又は<2>に記載の無端状パターンの製造方法。
<4> 前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の製造方法により形成された無端状モールド。
<5> 前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の製造方法により得られた無端状モールドを成形用の型として用い、該無端状モールドに樹脂を押し付けて型を転写する工程と、
押し付けた前記無端状モールドと前記樹脂とを剥離する工程と、
を有する樹脂パターン成形品の製造方法。
<6> 前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の製造方法により得られた無端状モールドを有する光学素子。
本発明によれば、ロールナノインプリント等に用いることのできるSOGの無端状パターン(無端状モールド)の製造方法が提供される。また、前記SOG無端状モールドをナノインプリントの型として用いる樹脂パターン成形品の製造方法が提供される。更に、ナノインプリントの型として用いることのできるSOGの無端状モールド、及び光学素子が提供される。
連続照射方法における電子ビーム又はイオンビームの照射方法を説明する図である。 ビームの入射角度を説明する図であり、(a)は、ビームBを円筒状基板の中心Oに向かって照射するときの図であり、(b)は、ビームの照射位置を、中心から半径方向(±Y)に平行にずらして照射するときの図である。 円筒状基板に対して斜めからビームを照射するときの図である。 連続照射方法においてL&Sパターンの描画方法を説明する図であり、(a)は、ビットマップパターン、(b)は回転させながら照射する様子を表す図、(c)は得られたパターンの断面図である。 3次元形状のパターンを形成するための照射方法を説明する図であり、(a)は照射パターンを示す図であり、(b)は得られる3次元形状を示す図である。 螺旋状パターンを作製するときの照射方法を説明する図である。 (a)〜(e)は、継ぎ照射方法の一連の操作を説明する図である。 樹脂パターン成形品の作製工程を説明する図である。 ローラ転写方式により、光硬化性樹脂にSOG無端状モールドのパターンを転写し、樹脂パターン成形品を製造する方法の一例を説明する図である。 円筒状基板を回転方向に回転させる回転装置の概略図である。 電子ビーム照射に用いる走査型電子顕微鏡の概略図である。 実施例1における焼成温度の制御の様子を表すグラフである。 実施例1で得られたレジスト膜厚の測定結果を表すグラフである。 実施例1における電子ビーム照射の設計図である。 実施例1の照射量750μC/cm、で得られたパターンのSEM写真である。 実施例1の照射量1000μC/cmで得られたパターンのSEM写真である。 実施例2において、図15のSOGモールドを用いて樹脂に転写して得られたパターンのAFM像である。 実施例2において、図16のSOGモールドを用いて樹脂に転写して得られたパターンのAFM像である。 比較例1において、真鍮の円柱状基板上に形成したレジスト膜厚の測定結果を表すグラフである。 実施例3で得られたレジスト膜厚の測定結果を表すグラフである。 実施例3で得られたレジスト膜の光学顕微鏡写真である。 実施例4における焼成温度の制御の様子を表すグラフである。 実施例4で得られたレジスト膜厚の測定結果を表すグラフである。 実施例5における焼成温度の制御の様子を表すグラフである。 実施例5で得られたレジスト膜厚の測定結果を表すグラフである。 実施例6で得られたレジスト膜厚の測定結果を表すグラフである。 実施例7で得られたレジスト膜厚の測定結果を表すグラフである。 実施例8における電子ビーム照射の設計図である。 実施例8の照射量1000μC/cmで得られたパターンの光学顕微鏡写真である。 実施例8の照射量1500μC/cmで得られたパターンの光学顕微鏡写真である。 実施例8の照射量2000μC/cmで得られたパターンの光学顕微鏡写真である。 実施例8の照射量1000μC/cmで、電子ビームの入射角度を変えたときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例8の照射量2000μC/cmで、電子ビームの入射角度を変えたときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例8の照射量3000μC/cmで、電子ビームの入射角度を変えたときに得られたパターンのSEM写真である。 実施例9の照射量3000μC/cmで得られたL&SパターンのSEM写真である。 実施例9の照射量4000μC/cmで得られたL&SパターンのSEM写真である。 実施例9の照射量5000μC/cmで得られたL&SパターンのSEM写真である。 実施例10における電子ビーム照射の設計図である。 実施例10の照射量3000μC/cmで得られた孤立線パターンのSEM写真である。 実施例10の照射量4000μC/cmで得られた孤立線パターンのSEM写真である。 実施例10の照射量5000μC/cmで得られた孤立線パターンのSEM写真である。
1. 無端状パターン(無端状モールド)の作製
本発明のSOG(Spin-On-Grass)の無端状パターンの製造方法は、少なくとも以下の工程を有する。
(1)円周方向において無端のアルミニウム基板上に、SOGレジスト液膜を付与する工程、
(2)SOGレジスト液膜を有するアルミニウム基板を加熱してSOGレジストを焼成する工程、
(3)焼成後、SOGレジストを有するアルミニウム基板を冷却する工程、
(4)冷却後、SOGレジストを有するアルミニウム基板を回転方向に回転させる工程、
(5)基板上のSOGレジストに電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
(6)照射により又は前記照射後の現像により、前記SOGレジストの一部を除去する工程。
更に、本発明のSOGの無端状パターンの製造方法では、前記(4)の基板の回転工程と(5)の照射工程とを、別工程として行っても、同時に行なってもよい。つまり、基板を回転方向に回転させながら電子ビーム又はイオンビームを照射してもよいし、電子ビーム又はイオンビームの照射時に基板を回転させず、照射していないときに前記基板を回転させて全周面を照射してもよい。
本発明のSOG無端状モールドの作製では、前記電子ビーム又はイオンビームの走査方向及び走査速度、前記基板の移動方向及び移動速度、並びに前記基板の回転方向及び回転速度のうち少なくとも1つを調節することにより、様々なパターンを無端状に形成することができる。
(1−1) 基板の準備
本発明において、基板は、円周方向において連続した無端の形状であれば、芯部を有する円柱状の基板、芯部を有さない円筒状の基板のいずれであってもよい。また、断面形状は、円、楕円、多角形などいずれであってもよく、形成されたパターン形成品の用途に応じて適宜選択できる。
以下、便宜上、本発明の基板を「円筒状基板」と称して説明する場合があるが、以降の「円筒状基板」は、「円柱状基板」、「断面が楕円形の基板」、及び「断面が多角形の基板」など適宜様々な形状の基板に読み替えられるものとする。
本発明における基板の材質はアルミニウムである。真鍮の場合には、その上に一定の厚さ以上のSOGレジスト膜を形成することが難しい。
基板の表面粗さは、ビーム等の照射により形成できる形状の寸法より大きいと所望の形状が得られないので、表面粗さは充分に小さいことが好ましい。具体的には、基板の表面粗さ(算術平均粗さ)(Ra)は、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが更に好ましい。ここで平均表面粗さ(算術平均粗さ)(Ra)とは、蝕針計で測定した粗さ曲線から、その中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取り部分の中心線をX軸、それに直交する軸をY軸として、粗さ曲線をY=f(X)で表したとき、次の式で与えられた値をμm単位で表したものである(Lの決定及び平均粗さの計測はJIS B 0601に従う)。


このような平滑な表面を得るために、鏡面切削や研削、研磨できる材質の基板であることが好ましい。
また、前記平滑加工の容易さの観点から、無端状の基板の断面形状は、真円度が高いことが好ましい。また、得られた無端状モールドをロール転写に用いる際においても、高い真円度を有する基板は、被転写体にムラなく接触させるのに好適である。よって、本発明における基板は、円筒状又は円柱状であることが好ましい。
アルミニウム基板は、次のレジスト膜付与を行なう前に、アセトン及びエタノールで超音波洗浄しておくことが望ましい。
(1−2) SOGレジスト膜の付与
前記円筒状基板上に、SOGレジストを付与する。
SOGとしては、従来一般的に知られているものが適用可能であり、例えば、シリケート(Silicate)、水素化シロキサン(Hydrogen Siloxane)、Ladder Hydrogen Silsesquioxane、水素化シルセスキオキサン(Hydrogen Silsesqioxane:HSQ)、水素化アルキルシルセスキオキサン(Hydrogen Alkylsilsesquioxane:HOSP)、メチルシロキサン(Methyl Siloxane)、Ladder Methyl Silsesquioxaneなどが挙げられる。
本発明には、市販のSOGを適用してもよく、例えば、Accuglass(登録商標)-312B(メチルシロキサン)、512B(メチルシロキサン)(以上、Honeyewell社製)、Fox-14(水素化シルセスキオキサン)(以上、東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
円筒状基板上へのレジスト液膜の付与は、真空蒸着、ディップ(浸漬)、スプレー、ドクターブレード等によって行なうことができる。浸漬塗布を行う場合には、レジストに円筒状基板を浸漬した後、基板の軸方向に引き上げる方法が適用できる。引き上げ速度は、所望のレジスト膜厚に応じて調節することが望ましく、具体的には例えば、0.001mm/秒〜1mm/秒であることが膜厚の均一性の観点から望ましく、0.05mm/秒〜0.1mm/秒であることがより望ましい。
レジスト液膜は、単層であっても多層であってもよい。多層の場合には、同種のレジスト材料を多層に塗布しても、異なる種類のレジスト材料を積層してもよい。
また、レジスト液膜形成工程と後述の焼成工程(PB)の操作を繰り返すことが、レジスト膜の膜厚のばらつきを抑える観点から望ましい。
レジスト液膜の厚さは、10nm〜100μmであることが好ましく、50nm〜10μmであることがより好ましく、100nm〜1μmであることが更に好ましい。
(2)焼成工程(PB)
形成されたレジスト液膜は、焼成又は半焼成(PB:Pre Bake)して、一定量の溶媒を除去し、レジストの密着性、感度、形状を安定化させることが好ましい。PBの加熱温度や加熱時間は、レジストや溶媒の種類によって好適な範囲が異なるので適宜決定する。一般には、加熱温度や加熱時間を変えてパターンを形成し、アスペクト比が高くなるようなPBの条件を決定する。
PBの加熱温度としては、具体的には100℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上450℃以下がより好ましい。なお、膜厚の均一性の観点からは、300℃以上430℃以下が好ましい。また、形成するパターンの形状の観点からは、250℃以上425℃以下が好ましく、250℃以上420℃以下がより好ましい。
上記加熱温度までの昇温速度は、1℃/分以上100℃/分以下であることが望ましく、5℃/分以上50℃/分以下であることがより望ましい。
なお、レジストの膜厚の均一性の観点からは、昇温速度を20℃/分以下とすることが望ましく、15℃/分以下とすることがより望ましい。一方、厚いレジスト膜を形成する場合には、昇温速度を20℃/分より速く40℃/分以下とすることが望ましい。
(3)冷却工程
上記焼成後、SOGレジストを有するアルミニウム基板を冷却する。冷却速度は、−1℃/分以上−100℃/分以下であることが望ましく、−2℃/分以上−50℃/分以下であることがより望ましい。
(4)基板の回転工程
本発明においては、(4A)前記基板を回転方向に回転させながら、前記SOGレジストに電子ビーム又はイオンビームを照射する方法であっても(以下「連続照射方法」と称する場合がある)、或いは(4B)電子ビーム又はイオンビームの照射時に前記基板を回転させず、特定面のビーム照射を終えた後に基板を回転させ、パターンが連続するように更に別の面をビーム照射する方法(以下「継ぎ照射方法」と称する場合がある)であってもよい。パターンの継ぎ目を生じさせないようにするには、前記(4A)の連続照射方法が好適である。
連続照射方法における円筒状基板の回転速度は、1〜10000rpmであることが好ましく、回転による治具の振動の影響を考慮すれば、100〜5000rpmであることがより好ましく、500〜2000rpmであることが微細加工の観点から更に好ましい。
また、回転による治具の振動を抑えた上で、円筒状基板の円周方向一周分を描画することを考慮すれば、40〜80rpmとすることが微細加工の観点から好適である。
(5)ビーム照射
本発明においてパターンの描画に用いられるビームは、電子ビーム及びイオンビームである。
イオンビームには、ガリウム、アルゴン、ヘリウム、シリコンなどのイオンを用いることができる。
電子ビーム及びイオンビームは、集束したビーム、シャワー状のビームを制限アパーチュアーで局所的に照射できるように加工したビーム、マルチビーム源によるもの等いずれであってもよい。
特にイオンビームとしては、イオンを電界で加速したビームを細く絞った集束イオンビーム(FIB,Focused Ion Beam)であることが、ナノオーダーの加工を行なう観点から好ましい。
ビーム径は、1nm以上1000nm以下であることが微細加工の点から望ましく、1nm以上200nm以下であることがより望ましい。
ビームの照射は一般的に真空内で行なわれることが多いが、電子ビームを大気中で引き出すことができる装置も存在するため、大気中で行なってもよい。
ビーム照射量は、パターン形成の観点から750μC/cm以上であることが好ましく、750μC/cm以上10000μC/cm以下であることがより好ましく、1000μC/cm以上7000μC/cm以下が更に好ましく、1500μC/cm以下5000μC/cm以下であることが更に好ましく、2000μC/cm以下5000μC/cm以下であることが更に好ましい。
ビーム電流は、微細化とスループットの観点から0.01nA以上50nA以下であることがより好ましく、0.5nA以上10nA以下が更に好ましい。
ビームの加速電圧は、加工線の深さに応じて設定し、一般には加速電圧が高くなるほど加工線の深さが深くなり、転写した樹脂成形品では加工線の高さが高くなる。具体的なビームの加速電圧は、0.5kV以上30kV以下であることが好ましく、1kV以上10kV以下がより好ましい。
以下、図1〜図7を参照しながら本発明における照射方法を説明する。
図1では、前記(4A)の連続照射方法における電子ビーム又はイオンビームの照射方法を説明する。図1は、円筒状基板を斜視的に観察した模式図である。
本発明では、X軸を円筒状基板100の軸方向とし、Y軸を円筒状基板100の半径方向と定義する。円筒状基板100をR方向に回転させながら、ビームBをX軸(1軸)方向に走査して照射すれば、円筒状基板全面に描画が可能となる。
但し、ビームBはX軸方向だけでなくY軸方向に走査してもよい。図2(a)に示すように、円筒状基板100の中心Oに向かってビームBを照射すると、ビームBの入射角は0度となる。図2(b)に示すように、ビームBの照射位置を、中心Oから半径方向(Y軸方向)に平行にずらすと、入射角が0°〜90°の範囲で変動する。図2(b)に示す方法は、円筒状基板100に対して斜めからビームBを照射する方法(図3)よりも簡便に入射角を変更することができる。
電子ビーム、イオンビームにおいて、入射角θが大きくなるとビーム径がcosθとして投影されて被照射体に照射されるので、感応性基板や感応膜の二次電子放出が増大する。二次電子によっても感応性基板や感応膜の硬化又は可溶化が進行すると推測されるため、図2又は図3のようにビームの入射角θを大きくすることで、見かけの感度を向上させることが可能であると考えられる。このビーム入射角θの効果は、後述の「継ぎ照射方法」においても同様である。
図2(b)に示すように、前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角を、基板の回転方向でプラス、逆回転方向でマイナスと表記したとき、ビームの入射角は、−60°〜+60°であることが好適であり、−60°〜+30°であることがより好適である。
また、照射したビームの二次電子を利用して見かけの感度を向上させる観点からは、+側の照射角度で照射することが好ましい。更に、後方散乱を利用して見かけの感度を向上させる観点からは、−30°以上0°未満、又は0°より大きく+30°以下であることがより好適である。
ここで、後方散乱と二次電子について説明する。
加速電圧が低い場合、レジストに入射した電子はすぐに広がるが、加速電圧が高い場合は、固体中に深く進入してから広がる。この電子線が入射方向に広がるのを、前方散乱と呼び、散乱を繰り返した結果、入射方向に対して横方向に広がったり入射方向に戻ったりする散乱を、後方散乱と呼ぶ。後方散乱は、入射した電子の反射や、入射した電子がレジストを構成する分子に衝突してイオン化して二次電子を発生させ、この二次電子の散乱によって生じる。
なお、操作性の容易さを考慮すれば、入射角0°でビームを照射することも好適である。
次に、連続照射方法において、円筒状基板100にライン アンド スペース(L&S)のパターンを描画する方法を図4に示す。図4(a)は、ビットマップパターンであり、図4(b)は回転させながら照射する様子を表す図であり、図4(c)は得られたパターンの断面図である。図4のように、X軸方向に照射部分と未照射部分を有するビットマップパターンで、円筒状基板100を回転させながらビームBを照射することで、L&Sパターンが形成される。
また、図5(a)に示すビットマップパターンとなるようX軸方向でのビームのドーズや加速電圧を変えてビームを照射し、基板を回転することで、図5(b)に示すようにパターンの深さや高さを制御することが可能である。なお図5(a)において、X軸上で黒い領域は、ドーズ量を多くしたり加速電圧を高くして照射した領域を示し、X軸上で白い領域は、ドーズ量を減らしたり加速電圧を低くして照射した領域を示す。図5(b)におけるZ軸は、レジスト膜における膜厚方向を表す。
図5に示すように、連続照射方法では三次元的な加工も可能である。
連続照射方法では、図6のように円筒状基板100の回転速度とビームの走査速度を同期させることにより、螺旋状のパターンも作製可能である。このように円筒状基板100へのビーム描画により、平面では作製できない幾何学的な形状を作製することができる。
次に、図7では、前記(4B)の継ぎ照射方法における電子ビーム又はイオンビームの照射方法を説明する。図7は、円筒状基板100を軸方向(X軸方向)から観察した模式図である。
まず、図7(a)に示すように、電子ビーム又はイオンビームの照射時に基板を回転させず、特定面のビーム照射を行なう。特定面とは、基板を回転させずにビーム走査により照射できる基板円周面の領域をいう。次に、照射を止めて、照射位置に未照射の基板表面が配置するよう基板を回転させる(図7(b))。この状態でビーム照射を行なう(図7(c))。その後、図7(d)(e)のように、ビーム照射と基板の回転の操作を繰り返して、基板の円周面全面を照射する。
なお、継ぎ照射方法においては、特定面の照射で描画されたパターンと、次に照射されて描画されたパターンとが繋がるように、パターンの継ぎ目部分では重複照射することが望ましい。
(6)現像
照射されたレジスト膜は、前記ビーム照射によって或いは現像液によってその一部が除去される。ネガ型のレジスト膜は、ビーム照射部分が残存し、未照射部分は除去される。ポジ型のレジスト膜は、ビーム照射部分が除去され、未照射部分は残存する。
現像の方法としては、浸漬法、スプレー、熱脱離などがある。現像液は、フッ酸緩衝液(BHF)等を用いることができる。フッ酸緩衝液としては、フッ酸とフッ化アンモニウムを混合した溶液を挙げることができる。フッ酸緩衝液による現像時間は、30秒〜300秒が好ましく、60秒〜120秒がより好ましい。
現像の後に、適宜リンス、乾燥などの工程を行うことができる。
SOGレジストは強度が充分であるため、そのままモールドとして用いることができる。モールドとして使用する際、パターンを形成したSOGレジスト膜に、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などのシランカップリング剤で離型処理したものをモールドとして用いてもよい。
また、パターンを形成したSOGレジスト膜の表面に、強度補強のための保護層を形成して、これを無端状モールドとしてもよい。強度補強の保護層としては、チタンなどの硬質膜、およびチタン化合物などがある。
(7)エッチング
現像後、レジストをマスクとして、円筒状基板をエッチングして無端状モールドを形成してもよい。エッチングの方法には、浸漬法によるウエットエッチングや、プラズマなどのドライエッチングがある。形状が無端状であるため、ドライエッチングも回転させながら行うことも可能である。
また、エッチング後にレジスト膜を除去し、その後、リンス、乾燥、離型処理、補強コーティングなどの工程を施す場合もある。
2.SOG無端状モールド
上記方法により作製したSOG無端状モールドは、そのまま素子として適用することも可能である。例えば、上記方法により金属膜を螺旋状のパターンに形成すればコイルとして適用することができる。また、L&Sパターンを有する無端状モールドは回折格子として用いることができ、図5に示すような三次元形状の無端状モールドは曲面レンズ(f−θレンズ、レンチキュラーレンズ)等へ適用可能である。その他、無端状モールドは、フレネルゾーンプレート、バイナリ−光学素子、ホログラム光学素子、反射防止膜、CDやDVDなどのメディア等へ適用可能である。
本発明のSOG無端状モールドは、継ぎ目の無いパターンを有するモールドとすることができる。このような無端状モールドは、線幅1μmよりも微細な加工部を形成することができる。線幅は、レジストの種類や、照射条件、現像条件などにより、更に微細な加工部を形成することができる。
本発明の無端状モールドは、後述の樹脂パターン成形品の成形用の型として用いることができ、樹脂やフィルムにパターン転写できる。
3. 樹脂パターン成形品の製造方法
本発明の樹脂パターン成形品の製造方法は、上記無端状パターンの製造方法によって得られたSOG無端状モールドを成形用の型として用いる。微細加工物に樹脂を押し付ける際、樹脂のガラス転移温度よりも高い温度に設定して樹脂を軟らかくした上で、樹脂に型を押し付けた後、樹脂を硬化し、その後、型と樹脂とを剥離する。
樹脂パターン成形品の作製工程を図8に示す。
上記方法により凹凸が形成されたレジスト層20を基板10上に有する無端状モールドと、ガラス40との間に樹脂30を挟みこみ(図8(1))、圧力を一定に保ったまま(図8(2))、樹脂30を硬化する(図8(3))。その後、型を引き離すと、ガラス40上に樹脂30の樹脂パターン成形品が形成される(図8(4))。
SOG無端モールドは樹脂に対する剥離性が良好であるため、樹脂パターン成形品の製造方法に好適なモールドである。更に剥離性を向上させるのに、SOG無端モールドの表面に剥離剤を付与してもよい。剥離剤としては、シランカップリング剤が挙げられる。
本発明のSOG無端状モールドは、ローラーナノインプリントに好適に用いることができる。ローラーナノインプリントによるパターン転写は、本発明のSOG無端状パターンを型として用い、樹脂を加熱しながら本発明の無端状パターンに負荷を加えて押圧し、樹脂にパターンを転写する方法である。本発明のSOG無端状パターンは円筒状基板等に形成されたものであるため、基板の繰り返し回転によって切れ目無く連続して樹脂にパターン転写することができる。
この方法は、長さが数m以上の樹脂フィルムへのパターン転写に対して有効な方法である。このローラ転写方式では、型と樹脂との接触が、一括転写やステップ&リピート方式の場合のような面接触ではなく、線接触となるので、型と樹脂との平行調整やヒータの温度制御がしやすくなる利点がある。また、線接触で加重を成型基板に与えることになるので、少ない荷重でも接触部の押し込み応力(圧力)を高くでき、プレス機構の出力を小さくすることができる。つまりローラ転写方式は、比較的簡単な装置構成で大面積のナノインプリントを行なえる方法である。
樹脂パターン成形品を製造するための樹脂は、熱可塑樹脂、光硬化樹脂など、いずれであってもよい。
熱可塑樹脂としては、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド等を挙げることができ、PMMA等のアクリル系樹脂が好ましい。
光硬化樹脂としては、紫外線等で硬化する樹脂が好ましく、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、及びこれらの混合物を挙げることができる。
なお、光硬化性樹脂を用いる場合、成形基体かモールドが紫外線等の光を透過するものでなければならない。一方、熱可塑樹脂を用いると加熱工程が必要となり、またモールドも熱によって劣化しやすいため、耐熱性のある樹脂を適用することが好ましい。
ここで、図9を参照しながら、ローラ転写方式により、光硬化性樹脂にSOG無端状モールドのパターンを転写し、樹脂パターン成形品を製造する方法の一例を説明する。
まず、図9(A)に示すように、PETフィルムなどの成形基体40上に、紫外線硬化性樹脂30を付与する。次に、図9(B)に示すように、成形基体40上の紫外線硬化性樹脂30に、上記の方法で作製したSOG無端状モールド50を押圧し(矢印A)、樹脂30にSOG無端状モールド50のパターンを転写する。ここに、成形基体40を介して紫外線Cを照射し、紫外線硬化性樹脂30を硬化させる。無端状モールド50を周方向(例えば矢印B方向)に回転させると、無端状モールド50のパターンを連続的に樹脂30に転写することができる。
なお、無端状モールド50のパターンを樹脂30に転写しながら、紫外線硬化性樹脂30に紫外線を照射して硬化させてもよいし、無端状モールド60のパターンを樹脂30に転写し終わった後に、紫外線を全面的に照射して硬化させてもよい。
4.樹脂パターン成形品
上記方法によって得られた本発明の樹脂パターン成形品は、大面積の継ぎ目の無いパターンを有する。また、線幅1μm以下の加工部を有することができる。上記製造方法によって当然に、線幅1μmよりも広い加工部を形成することもできる。
得られた微細パターン成形品や3次元モールドは、その形状と材質から、光学素子に用いることができる。例えば、フレネルゾーンプレート、回折格子、バイナリ−光学素子、ホログラム光学素子、反射防止膜、CDやDVDなどのメディア等を挙げることができる。
また、前記無端状モールドによって転写されたフィルムや、該フィルムにめっき等を施した後に剥離しためっき箔を、より大きなロールに巻きつけてロールモールドとすることもできる。これは、継ぎ目のない均一パターンを作製するときに有効である。平らな面にナノインプリントで転写した場合も継ぎ目の問題が軽減されるが、大きな面に一括転写し難いなどの問題点があるので、大面積化した成形品を作製する際においてロールナノインプリントの方法は有益である。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
[実施例1]
−無端状モールドの作製−
<照射装置の準備>
電子ビーム照射には、走査型電子顕微鏡(SEM、エリオニクス社 ESA-2000)を用いた。この電子顕微鏡内部には、円筒状基板を取り付けつけるための冶具と、円筒状基板を回転方向に回転させる機構を有する回転装置(三井電機社製)を取り付けた。図10に使用した回転装置の概略を示し、図11に走査型電子顕微鏡の概略を示す。
<レジストの成膜>
基板として、鏡面加工を施した円柱状のアルミニウムを用いた。円柱状基板の直径は1cmで、長さは3cmであった。この基板を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した。
この基板を、レジストとしてのSpin-On-Grass(SOG) Accuglass-312B(Honeyewell社製)に浸漬し、0.1mm/秒の一定速度で軸方向に引き上げて、円柱状基板表面にレジストを塗布した。
その後、高温炉により、レジストを塗布した基板を40分かけて425℃まで昇温し、60分間425℃に保ち、その後100分かけて室温(25℃)に戻して、レジストを焼成(PB)した。この焼成温度の制御の様子を図12に示す。
このレジストの浸漬−引き上げ塗布と焼成の操作を3回繰り返した。
得られたレジスト膜の膜厚を、反射率測定器によって基板の周方向に4点測定し、平均値を求めた。更に、基板の軸方向に10点の膜厚を測定した。膜厚の測定結果を図13のグラフに示す。レジスト膜の平均膜厚は494nmであった。
なおAccuglass−312Bは、約5000μC/cm以下の照射量に対してはポジ型レジストとして機能し、電子ビームの照射部分が現像液に溶解してパターンを形成する。一方、約10000μC/cmを超える照射量に対してはネガ型レジストとして機能し、電子ビームの照射部分が残存してパターンを形成する。
<電子ビームの照射>
レジストを付与した円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながら電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
・加速電圧: 3,4,5kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 100nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 750,1000μC/cm
・回転数: 50rpm
・パターン: ライン&スペース(L&S)パターン
:パターンの設計値: 200nmのラインと10μmのスペース(孤立パターン)
・電子ビーム走査方式: ラスタスキャン
・設計図:図14
図14の設計図に示すように、実施例1では、加速電圧を変えて加工深さが異なる孤立線のパターンを形成した。
<現像>
照射後、現像液により現像した。現像液は20℃の2.4%フッ酸緩衝液(50%HF25cm/Lと40%NHF30cm/Lの混合液)を使用し、1分間浸した。その後、純水で洗浄した。
<結果>
得られたL&SパターンのSEM写真を、図15及び16に示す。
図15は、照射量750μC/cm、図16は照射量1000μC/cmで得られたパターンのSEM写真であり、それぞれ円柱状基板の円周方向の数点での写真を掲載する。
図15,16のSEM写真に示されるように、照射量750,1000μC/cmで、パターンが形成されていた。このように、アルミニウムの円柱状基板上にSOGのレジスト層を形成することができ、且つそのレジスト層には電子ビームの照射によりパターンが形成されていた。
電子ビームによってSOGレジストのパターンを形成する場合、前述のように前方散乱及び後方散乱を考慮する必要があり、更に円柱状の基板では基板からの反射なども考慮する必要がある。しかし、実施例1に示すように、円柱状のアルミニウム基板上のSOGレジストに対して電子ビームを描画することでパターンが形成できることがわかった。
[実施例2]
−転写樹脂パターンの成形−
<モールドの前処理>
実施例1の照射量750,100μC/cmで得られたモールド(図15、図16)を、離型剤としてのフッ素系樹脂コーティング剤(オプツール(登録商標)DSX、ダイキン工業株式会社製、0.1質量%)に1分間浸漬し、その後、100℃3分間加熱して乾燥し、モールド表面に離型剤をコーティングした。
<転写基板の作製>
他方、PETフィルム上に、光硬化性樹脂(PAK−02、東洋合成工業株式会社製)をバーコートにより塗布し、転写基板を作製した。
<転写>
転写基板の光硬化性樹脂が付与された面に、上記モールドを押し付けてモールドのパターンを転写した。このときの押付け圧力は0.83MPaであり、加圧維持時間は60秒であった。
<樹脂の硬化>
パターンが転写された光硬化性樹脂に、PETフィルム側から紫外光を照射して樹脂を硬化させた。このときの紫外線照射量は4J/cmであった。
<結果>
図17は、照射量750μC/cmで得られたモールドによる転写パターンのAFM像である。図18は、照射量1000μC/cmで得られたモールドによる転写パターンのAFM像である。
転写前のモールドパターンである図15と転写後の図17、転写前のモールドパターンである図16と転写後の図18、をそれぞれ比べれば明らかなように、いずれのモールドでもパターンが樹脂に忠実に転写されている。
また、加速電圧に応じて転写後の加工線高さが高くなっていることが分かる。
[比較例1]
−基板材質の影響−
<基板及びレジストの種類>
基板:円柱状試料(真鍮、直径30mm)
レジスト:Accuglass-512B(Honeyewell社製)
<塗布条件>
塗布引き上げ速度0.1mm/秒(一定)で、SOGレジストを塗布した。
<PB>
塗布後、実施例1と同様に、図12に示す焼成温度で、40分かけて425℃まで昇温し、60分間425℃に保ち、その後100分かけて室温(25℃)に戻して、レジストを焼成(PB)した。
<レジスト膜厚の測定>
得られたレジスト膜の膜厚を実施例1と同様に、基板の周方向に4点測定し平均値を求め、更に基板の軸方向に10点の膜厚を測定した。膜厚の測定結果を図19のグラフに示す。レジスト膜の平均膜厚は7.47nmであり、殆どレジスト膜が形成されていなかった。
[実施例3]
−塗布引き上げ速度の影響−
<レジストの成膜>
実施例1と同様に、基板として鏡面加工を施した円柱状のアルミニウムを用いた。円柱状基板の直径は1cmで、長さは3cmであった。この基板を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した。
この基板を、Spin-On-Grass(SOG) Accuglass-512B(Honeyewell社製)に浸漬し、0.1mm/秒、0.5mm/秒、0.05mm/秒、のいずれかの一定速度で軸方向に引き上げて、円柱状基板表面にレジストを塗布した。
その後、実施例1と同様に、図12に示す焼成温度制御により、レジストを塗布した基板を高温炉で40分かけて425℃まで昇温し、60分間425℃に保ち、その後100分かけて室温(25℃)に戻して、レジストを焼成(PB)した。
なおAccuglass−512Bは、約7000μC/cm以下の照射量に対してはポジ型レジストとして機能し、電子ビームの照射部分が現像液に溶解してパターンを形成する。一方、約10000μC/cmを超える照射量に対してはネガ型レジストとして機能し、電子ビームの照射部分が残存してパターンを形成する。
得られたレジスト膜の膜厚を、実施例1と同様の方法で測定した。膜厚の測定結果を図20のグラフに示す。
塗布引き上げ速度0.1mm/秒(一定)では、レジストの平均膜厚が376nmであり、0.5mm/秒(一定)では、レジストの平均膜厚が360nmであり、0.05mm/秒(一定)では、レジストの平均膜厚が326nmであった。
また、各塗布引き上げ速度で得られたレジスト膜の光学顕微鏡写真を図21に示す。
図21の上段は、レジスト膜と基板との境界部分の光学顕微鏡写真であり、下段はそのレジスト表面の光学顕微鏡写真である。
いずれの塗布引き上げ速度であっても、レジスト膜にひび割れなどは見られず、略均一な厚さの膜が得られた。
[実施例4]
−焼成温度の影響−
<レジストの成膜>
実施例3と同様にして、但し、図22に示す焼成温度の制御条件で焼成してレジスト膜を作製した。具体的には、レジストを塗布した基板を高温炉で40分かけて300℃まで昇温し、60分間300℃に保ち、その後100分かけて室温(25℃)に戻して、レジストを焼成(PB)した。
得られたレジスト膜の膜厚を、実施例1と同様の方法で測定した。膜厚の測定結果を図23のグラフに示す。いずれの塗布引き上げ速度においても、レジスト膜の厚さは略均一であった。
また、塗布引き上げ速度0.1mm/秒(一定)では、レジストの平均膜厚が531nmであり、0.5mm/秒(一定)では、レジストの平均膜厚が309nmであり、0.05mm/秒(一定)では、レジストの平均膜厚が503nmであった。
実施例4で得られたレジスト膜と実施例3で得られたレジスト膜とを比べると、塗布引き上げ速度が0.1、0.05mm/秒の場合には、425℃の焼成よりも300℃の焼成において厚いレジスト膜が得られたことが分かる。
[実施例5]
−焼成時の昇温・冷却速度の影響−
<レジストの成膜>
実施例1と同様に、基板として鏡面加工を施した円柱状のアルミニウムを用いた。円柱状基板の直径は1cmで、長さは3cmであった。この基板を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した。
この基板を、Spin-On-Grass(SOG) Accuglass-512B(Honeyewell社製)に浸漬し、0.1mm/秒の一定速度で軸方向に引き上げて、円柱状基板表面にレジストを塗布した。
その後、図24に示す焼成温度制御により、高温炉でレジストを塗布した基板を20分で425℃まで昇温し、60分間425℃に保ち、その後10分で室温(25℃)に戻して、レジストを焼成(PB)した。
得られたレジスト膜の膜厚を、実施例1と同様の方法で測定した。膜厚の測定結果を図25のグラフに示す。レジスト膜が基板の周方向に形成されていたが、部分的にレジスト膜厚に偏りが見られた。なお、目標の焼成温度425℃まで40分かけて昇温した実施例3及び4に比べて、20分で昇温した実施例5では、レジスト膜厚が厚くなっていた。
[実施例6]
−レジスト層の積層−
<レジストの成膜>
実施例1と同様に、基板として鏡面加工を施した円柱状のアルミニウムを用いた。円柱状基板の直径は1cmで、長さは3cmであった。この基板を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した。
この基板を、Spin-On-Grass(SOG) Accuglass-512B(Honeyewell社製)に浸漬し、0.1mm/秒の一定速度で軸方向に引き上げて、円柱状基板表面にレジストを塗布した。
その後、実施例1と同様に、図12に示す焼成温度制御により、高温炉でレジストを塗布した基板を40分かけて425℃まで昇温し、60分間425℃に保ち、その後100分かけて室温(25℃)に戻して、レジストを焼成(PB)した。
このレジストの浸漬−引き上げ塗布及び焼成の操作を3回繰り返してレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜の膜厚を、実施例1と同様の方法で測定した。膜厚の測定結果を図26のグラフに示す。
一層塗布の平均膜厚は404nm、二層塗布の平均膜厚は453nm、三層塗布の平均膜厚は466nmであり、重ね塗りしても膜厚にあまり変化がなかった。但し、一層塗布に比べて二層塗布及び三層塗布では、膜厚のばらつきが小さくなっていた。したがって、一層塗布で形成したレジスト層よりも、複数回レジスト成膜の工程を繰り返して得たレジスト膜のほうが、均一なパターンが得られると考えられる。
[実施例7]
−レジスト層の積層−
<レジストの成膜>
実施例1と同様に、基板として鏡面加工を施した円柱状のアルミニウムを用いた。円柱状基板の直径は1cmで、長さは3cmであった。この基板を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した。
この基板を、Spin-On-Grass(SOG) Accuglass-512B(Honeyewell社製)に浸漬し、0.5mm/秒の一定速度で軸方向に引き上げて、円柱状基板表面にレジストを塗布した。
その後、実施例4と同様に、図22に示す焼成温度制御により、高温炉でレジストを塗布した基板を40分かけて300℃まで昇温し、60分間300℃に保ち、その後100分かけて室温(25℃)に戻して、レジストを焼成(PB)した。
このレジストの浸漬−引き上げ塗布と焼成の操作を3回繰り返し、3層を積層したレジスト膜を形成した。
得られたレジスト膜の膜厚を、実施例1と同様の方法で測定した。膜厚の測定結果を図27のグラフに示す。
一層塗布の平均膜厚は309nm、二層塗布の平均膜厚は549nm、三層塗布の平均膜厚は510nmであり、第一層、第二層及び第三層の膜厚の差は、焼成温度425℃の時と比べて大きくなったが、焼成温度425℃の時と比べて膜厚のばらつきが大きくなった。
[実施例8]
−照射量の影響−
実施例3の塗布引き上げ速度0.1mm/秒(一定)で得られたレジスト膜(平均膜厚376nm)を有する下記円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながら電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
<円柱状基板>
・基板:円柱状試料(アルミニウム、直径10mm、長さ30mm)
・レジスト:Accuglass-512B(Honeyewell社製)
・塗布引き上げ速度:0.1mm/秒
・PB:425℃
<照射条件>
・加速電圧: 10kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 100nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 1000,1500,2000,3000μC/cm
・回転数: 50rpm
・入射角度:−60°、−45°、−30°、0°、30°、45°、60°
・パターン: ライン&スペース(L&S)パターン
・パターンの設計値: 1μmのラインと2μmのスペース
・電子ビーム走査方式: ラスタスキャン
・設計図:図28
電子ビームの入射角度の求め方について以下に示す。
図2(b)において、電子ビームの照射位置(±Y)を変えることで角度(θ)を変化させた。電子ビーム入射角度と移動距離の関係は下記式で求められ、それぞれの関係を下記表1に示した。
式 Y[mm]=5.0×sinθ
移動距離Yについて、円の中心線上を基準の0°とし、試料の回転方向と同じ方向にずらす場合をプラス、回転方向と逆方向にずらす場合をマイナスとする。
<現像>
実施例1と同様の方法で現像を行なった。
具体的には、現像液は20℃の2.4%フッ酸緩衝液(50%HF25cm/Lと40%NHF30cm/Lの混合液)を使用し、照射後のレジストが付された基板を1分間浸し、その後、純水で洗浄した。
<結果>
電子ビームの入射角度が0°で得られたL&Sパターンの光学顕微鏡写真を、図29〜図31に示す。
図29は、照射量1000μC/cm、図30は照射量1500μC/cm、図31は照射量2000μC/cm、で得られたパターンの光学顕微鏡写真である。
図29〜図31の光学顕微鏡写真に示されるように、照射量1000,1500、2000μC/cmのいずれにおいても、円筒状基板の周方向の1周にパターンが形成されていた。
更に、電子ビームの入射角度を変えて作製したパターンのSEM写真を、図32〜図34に示す。
図32は、照射量1000μC/cmにおける電子ビームの入射角度−60°、−30°、0°、+30°で得られたパターンのSEM写真、図33は、照射量2000μC/cmにおける電子ビームの入射角度−60°、−30°、0°、+30°で得られたパターンのSEM写真、図34は照射量3000μC/cmにおける電子ビームの入射角度−60°、−30°、0°、+30°で得られたパターンのSEM写真である。
照射量1000μC/cmでは、目印のパターンは形成されているが、L&Sのパターンは形成されていなかった。
照射量2000μC/cm及び3000では、L&Sのパターンも形成されていた。
[実施例9]
−照射量及び焼成温度の影響−
実施例4の塗布引き上げ速度0.1mm/秒(一定)で得られたレジスト膜(平均膜厚531nm)を有する下記円柱状基板をSEM内に装着し、該基板を回転させながら電子ビームを照射した。回転及び照射の条件は以下の通りである。
<円柱状基板>
・基板:円柱状試料(アルミニウム、直径10mm、長さ30mm)
・レジスト:Accuglass-512B(Honeyewell社製)
・塗布引き上げ速度:0.1mm/秒
・PB:300℃
<照射条件>
・加速電圧: 10kV
・ビーム電流: 4.0nA
・ビーム径: 100nm(ナイフエッジ法により測定)
・ドーズ量: 3000,4000、5000μC/cm
・回転数: 50rpm
・入射角度:0°
・パターン: ライン&スペース(L&S)パターン
・パターンの設計値: 1μmのラインと2μmのスペース
・電子ビーム走査方式: ラスタスキャン
・設計図:図28
<結果>
得られたL&SパターンのSEM写真を、図35〜図37に示す。図35は、照射量3000μC/cm、図36は照射量4000μC/cm、図37は照射量5000μC/cm、で得られたパターンのSEM写真である。
照射量3000,4000、5000μC/cmのいずれにおいても、L&Sのパターンが形成されていた。
なお、焼成温度が425℃のレジスト膜を用いた実施例8に比べて、焼成温度が300℃のレジスト膜を用いた実施例9は、パターンの形状がはっきりと確認できた。
[実施例10]
−照射パターンの変更−
実施例9と同様にして、但し、照射パターンの設計図を図38に変えて、孤立線のパターンを形成した。得られた孤立線パターンのSEM写真を、図39〜図41に示す。
図39は、照射量3000μC/cm、図40は照射量4000μC/cm、図41は照射量5000μC/cm、で得られたパターンのSEM写真である。
照射量3000,4000、5000μC/cmのいずれにおいても、孤立線パターンが形成されていた。
<実施例1〜10及び比較例1のまとめ>
円筒状基板上へのSOGレジストの形成は、有機レジストを用いた場合に比べて塗布条件や焼成条件による影響が大きいことが明らかとなった。具体的には、アルミニウム基板ではレジスト層が形成されたが、真鍮基板では形成されなかった。
一方、レジスト層の膜厚のばらつきに対して、SOGを付与する際の塗布引き上げ速度の違いの影響は大きくないものと思われる。他方、焼成温度の昇温速度や冷却速度は、レジスト層の膜厚のばらつきに対して影響し、焼成温度の昇温速度や冷却速度が速くなるほどレジスト層の膜厚のばらつきが大きくなる傾向が見られた。
また、焼成温度425℃の場合には、レジスト層の塗布及び焼成の工程を繰り返すと、レジスト膜厚がより均一化した。よって、塗布及び焼成の工程を繰り返してレジスト層を形成することで、均一なパターンが得られると考えられる。
厚いレジスト層を得るには、比較的低い(実施例では300℃)焼成温度で、レジスト塗布と焼成を繰り返し行なうか、焼成時の昇温速度を速めて(実施例では20℃/分以上)焼成を行なうことが有益であった。
露光条件に関しては、ドーズ量750μC/cm以上でパターンが形成されていたが、L&Sパターンはドーズ量2000μC/cm以上必要であった。
10 基板
20 レジスト層
30 樹脂(紫外線硬化性樹脂)
40 ガラス(成形基体)
50 SOG無端状モールド
100 円筒状基板

Claims (6)

  1. 円周方向において無端のアルミニウム基板上に、SOG(Spin-On-Grass)レジスト液膜を付与する工程と、
    前記SOGレジスト液膜を有するアルミニウム基板を加熱してSOGレジストを焼成する工程と、
    前記焼成後、SOGレジストを有するアルミニウム基板を冷却する工程と、
    前記冷却後、SOGレジストを有するアルミニウム基板を回転方向に回転させる工程と、
    前記基板上のSOGレジストに電子ビーム又はイオンビームを照射する工程と、
    前記照射により又は前記照射後の現像により、前記SOGレジストの一部を除去する工程と、
    を有する無端状パターンの製造方法。
  2. 前記基板を回転方向に回転させながら、前記電子ビーム又はイオンビームを前記SOGレジストに照射する請求項1に記載の無端状パターンの製造方法。
  3. 前記電子ビーム又はイオンビームの前記基板に対する入射角を、基板の回転方向でプラス、逆回転方向でマイナスとしたとき、前記入射角が、−60°以上+60°以下である請求項1又は請求項2に記載の無端状パターンの製造方法。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により形成された無端状モールド。
  5. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により得られた無端状モールドを成形用の型として用い、該無端状モールドに樹脂を押し付けて型を転写する工程と、
    押し付けた前記無端状モールドと前記樹脂とを剥離する工程と、
    を有する樹脂パターン成形品の製造方法。
  6. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の製造方法により得られた無端状モールドを有する光学素子。
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