JP2009221070A - 金属酸化物ナノ粒子の製造方法、および金属酸化物ナノ粒子、ならびに金属酸化物ナノ粒子含有組成物 - Google Patents

金属酸化物ナノ粒子の製造方法、および金属酸化物ナノ粒子、ならびに金属酸化物ナノ粒子含有組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明によれば、金属酸化物ナノ粒子に対する高分子分散剤の配合量を従来のものと比べて少量とした金属酸化物ナノ粒子を得ることができる。また、高分子分散剤を多量に含むことがなく、顔料の分散安定性が長期間にわたって持続する金属酸化物ナノ粒子含有組成物を得ることができる。
【解決手段】溶媒中で、金属酸化物ナノ粒子の凝集体、金属アルコキシド、高分子分散剤を用いて、金属酸化物ナノ粒子の凝集体を解砕しながら、a)金属酸化物ナノ粒子表面に、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応による表面修飾相を生成する工程、及びb)高分子分散剤で前記表面修飾相の表面を覆う工程を含む工程を行い、金属酸化物ナノ粒子を得る。好ましくは、解砕する前に、前記金属酸化物ナノ粒子の凝集体と前記金属アルコキシドと前記高分子分散剤とを溶媒中に全て混合する。
【選択図】なし

Description

本発明は、コーティング材料用の樹脂・組成物などの複合材料に機能性を付与する金属酸化物ナノ粒子として、容易に分散し得る金属酸化物のナノ粒子の製造方法、ならびに金属酸化物ナノ粒子含有組成物に関する。
ナノ粒子はサイズ的な効果から、比表面積の増加に伴う高活性化や、塗膜成形品の高透明化等の機能性の向上が期待される。その為、ナノ粒子の分散状態や成形体を構成する微粒子構造体を制御し機能性を発現する必要がある。
しかし、ナノ粒子の粒子径がシングルナノに近づくとサブミクロン以上の粒子とは異なる粒子表面特性、相互作用が発現し、凝集分散特性に特異的な挙動が現れる。その為一旦凝集を起こした場合、攪拌等の操作では機能性を発現する粒子サイズまでの制御が困難である。
このように凝集により二次粒子径が増大すると、触媒活性の低下や塗膜成形時の高透明性の低下といった問題がある。以上のことから凝集体を分散してナノ粒子表面を改質する事で分散安定化を行っている。
ナノ粒子の分散性を改良する為には、表面/界面自由エネルギーの低下、酸・塩基性の制御、電荷の最適化及び立体障害性の付与といった方法が有効である。表面改質の手法としては、界面活性剤処理、高分子分散剤処理、カップリング処理等が挙げられる。
その効果として、液相−固相の界面張力を下げる事により、顔料の溶剤への濡れ性を改良する効果や、更に金属酸化物ナノ粒子表面に立体障害効果や静電反発効果を発現し、ナノ粒子の分散安定性を得ることができることが知られている(特許文献1)。
特開2003−205568号公報(従来の技術)
しかし、界面活性剤処理や高分子分散剤処理、カップリング剤処理等によって分散安定性を得るためには、界面活性剤等が多量に必要となり、そのような分散体により形成された塗膜は、界面活性剤などのブリードアウトや硬度低下といった問題が発生する。一方、界面活性剤等が少量であると、分散体により形成された塗膜の透明性が低下するといった問題が発生する。
そこで、本発明では、高分子分散剤で顔料と溶媒の表面/界面自由エネルギーを低下させ、高分子分散剤処理を行うことと共に、金属酸化物ナノ粒子と分散剤の間にアンカー部となる金属アルコキシドを導入し顔料表面と高分子分散剤との吸着力を上げることにより、高分子分散剤の量をアンカー部が無い場合に比べ、少なくすることを目的とする。
さらに、金属酸化物ナノ粒子の分散体がコーティング用の樹脂組成物に良好に使用しうるために、顔料の分散安定性が長期間にわたって持続する金属酸化物ナノ粒子を製造する方法、および金属酸化物ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子含有組成物を提供することを目的とする。
上述の課題を解決すべく鋭意研究した結果、金属酸化物ナノ粒子に表面修飾相を生成し、前記表面修飾相の表面を高分子分散剤で覆うことを見出し本発明に至ったものである。
以下、本発明を更に詳しく説明すると、金属酸化物ナノ粒子の製造方法は、溶媒中で、金属酸化物ナノ粒子の凝集体、金属アルコキシド、高分子分散剤を用いて、金属酸化物ナノ粒子の凝集体を解砕しながら、a)金属酸化物ナノ粒子表面に、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応による表面修飾相を生成する工程、及びb)高分子分散剤で前記表面修飾相の表面を覆う工程を含む工程を行うことを特徴とするものである。
また、本発明の金属酸化物ナノ粒子の製造方法は、解砕する前に、前記金属酸化物ナノ粒子の凝集体と前記金属アルコキシドと前記高分子分散剤とを溶媒中に全て混合することを特徴とするものである。
さらに、高分子分散剤の添加量が、金属酸化物ナノ粒子の比表面積1m2/gに対して1〜10mgであることを特徴とするものである。
また、本発明の金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子表面に、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応による表面修飾相を有し、更に、前記表面修飾相の表面が、高分子分散剤で覆われてなることを特徴とするものである。
さらに、金属酸化物ナノ粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズから選択された少なくとも1種類の金属酸化物ナノ粒子であることを特徴とするものである。
また、本発明の金属酸化物ナノ粒子含有組成物は、前記金属酸化物ナノ粒子が溶媒中に分散されてなることを特徴とするものである。
本発明によれば、金属酸化物ナノ粒子に対する高分子分散剤の配合量を従来のものと比べて少量とした金属酸化物ナノ粒子を得ることができる。
したがって、高分子分散剤を多量に含むことがなく、顔料の分散安定性が長期間にわたって持続する金属酸化物ナノ粒子含有組成物を得ることができる。
さらに、本発明の酸化物ナノ粒子含有組成物は分散安定性がよいため、金属酸化物ナノ粒子を高充填することができる。
また、金属アルコキシドと高分子分散剤を同時に投入し分散処理を行うことで、分散処理の回数を最低1回とすることができ、かつ高充填の分散とすることができる。
本発明の金属酸化物ナノ粒子の製造方法について説明する。本発明の金属酸化物ナノ粒子の製造方法は、溶媒中で、金属酸化物ナノ粒子の凝集体、金属アルコキシド、高分子分散剤を用いて、金属酸化物ナノ粒子の凝集体を解砕しながら、a)金属酸化物ナノ粒子表面に、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応による表面修飾相を生成する工程、及びb)高分子分散剤で前記表面修飾相の表面を覆う工程を含む工程を行うことを特徴とするものである。以下、本発明の金属酸化物ナノ粒子の製造方法の実施の形態について説明する。
本発明に用いられる金属酸化物ナノ粒子の凝集体は、粒子表面に水酸基を有するものであって、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化珪素、酸化セリウム、酸化インジウム、及びこれらナノ粒子の格子中に異種金属をドーピングしたもの並びに表面改質を施したものなどを用いることができる。その中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズは粒子表面に水酸基が多く存在し、金属アルコキシドによる被覆が容易であるため好ましい。このような金属酸化物ナノ粒子は、気相法又は液相法により作製したもの、また必要に応じて、焼成して微結晶化したものを用いることもできる。
金属酸化物ナノ粒子の凝集体は、二次粒子径が1μm以上のものであって、その一次粒子径が1〜100nmの範囲であり、好ましくは2〜50nmの範囲のものを用いることができる。
このような金属酸化物ナノ粒子は、一次粒子が強固な凝集体を形成しているため、その凝集体を一次粒子として再分散するための解砕には、超音波、ホモジナイザー、オムニミキサー、ビーズミル、ジェットミル等の公知の手段を用いることができる。
本発明において金属アルコキシドは、金属酸化物ナノ粒子表面に存在する水酸基と縮合反応することにより、表面修飾相を形成する役割を担うものである。このように表面修飾相を形成することにより、後述する高分子分散剤を吸着する水酸基を増やすことができることから、金属酸化物ナノ粒子表面の濡れ性を向上させることができる。また、表面修飾相を形成することにより、金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基だけでは、高分子分散剤を吸着させ続けることができないといった場合でも、高分子分散剤を吸着させ続けることができるため、金属酸化物ナノ粒子同士が凝集することを防止することができる。
このような表面修飾相を形成する金属アルコキシドを構成する金属元素としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、ケイ素を用いることができる。また、アルコキシドの種類としては、メトキシド、エトキシド、プロポキシド、イソプロポキシド、オキシイソプロポキシド、ブトキシド等を用いることができる。金属アルコキシドのなかでも、処理の均一性及び処理効果を考慮すれば、テトラエトキシシラン
、テトラメトキシシランが好ましい。金属アルコキシドは、金属酸化物ナノ粒子の比表面積と、金属アルコキシドの最小被覆面積などとから算出される添加量の範囲で、添加することが好ましい。
次に、高分子分散剤は、表面修飾相に存在する水酸基により吸着され、金属酸化物ナノ粒子を覆うことによって、金属酸化物ナノ粒子同士が凝集することを防ぐためのものである。そのため高分子分散剤は、カルボキシル基、アミノ基、カルボニル基、アクリル基、メタクリル基などの表面修飾相に存在する水酸基に吸着され易い基を有し、立体障害を起こすのに適度な分子鎖の高分子分散剤が好ましい。例えば、ポリエチレンイミン系、アルキルアミン系、ポリアクリル酸エステル系、エステル系、リン酸系などの高分子分散剤を用いることができる。
このような高分子分散剤としては、重量平均分子量が103〜104g/molのものが好ましい。分子量を103g/mol以上とするのは、高分子分散剤が金属酸化物ナノ粒子表面の表面修飾相に作用したときに、高分子分散剤による立体障害を起させ、凝集体となりにくくするためであり、分子量を104g/mol以下とするのは、高分子分散剤同士の吸着を防ぎ、凝集体となりにくくするためである。
高分子分散剤の添加量は、金属酸化物ナノ粒子の比表面積1m2/gに対して、1〜10mgであることが好ましい。さらに好ましくは、3〜8mgである。高分子分散剤は、金属酸化物ナノ粒子表面の水酸基によって、吸着され続けることができず、吸着と脱落を繰り返している。従来の方法では、金属酸化物ナノ粒子の本来もっている水酸基だけで高分子分散剤を吸着するため、金属ナノ粒子表面の水酸基と高分子分散剤が離れても、また吸着することができるように、高分子分散剤と金属酸化物ナノ粒子の水酸基との接触する機会を増やすために、高分子分散剤の濃度を高くすることが行われている。しかし、高分子分散剤を多量に含むことで、分散安定性が得られない。本発明は、このように従来の添加量と比べて高分子分散剤を少量とすることができるのは、金属アルコキシドによって、金属酸化物ナノ粒子の表面に水酸基を増やすことで、高分子分散剤の濃度を高くしなくても、高分子分散剤と水酸基との接触する機会を増やすことができるためである。
また、金属酸化物ナノ粒子に金属アルコキシドによって表面修飾相を形成する工程は、金属酸化物ナノ粒子の凝集体を解砕しながら行うことにより、一次粒子となった金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとを縮合反応させることができる。しかし、金属アルコキシドによって形成された表面修飾相は、そのままでは金属アルコキシドの水酸基によって、再度、凝集体となってしまう。そのため、表面修飾相を高分子分散剤で覆う工程を行うときにも、解砕しながら行うことが好ましい。さらに、解砕しながら、表面修飾相を形成する工程のときに、同時に表面修飾相を高分子分散剤によって覆う工程を行うことが好ましい。
金属アルコキシドと高分子分散剤を溶媒中に添加する時期としては、金属アルコキシドは、a)金属アルコキシドによって表面修飾相を形成する工程の前に、高分子分散剤は、b)表面修飾相を高分子分散剤で覆う工程の前に添加することができる(図1)。しかし、金属アルコキシドによって形成された表面修飾相は、凝集体になり易いため、この方法では高充填な金属酸化物ナノ粒子含有組成物とすることは難しい。そのため、表面修飾相を形成しつつ、高分子分散剤によって覆う工程を瞬時に行うため、金属酸化物ナノ粒子の凝集体と金属アルコキシドと高分子分散剤とを溶媒中に混合して、解砕を行うことが好ましい(図2)。この方法では、金属アルコキシドによって形成された表面修飾相は凝集体になる前に、高分子分散剤により覆われるため、凝集体となることを防止することができ、高充填な金属酸化物ナノ粒子含有組成物とすることができる。
各工程の処理時間としては、金属アルコキシドによって表面修飾相を形成する工程は滞留時間60〜120分、表面修飾相を高分子分散剤で覆う工程は、240〜360分程度で十分であり、表面修飾相を形成する工程のときに、同時に表面修飾相を高分子分散剤によって覆う工程を行う場合には、滞留時間240〜360分程度である。
このように、金属酸化物ナノ粒子に金属アルコキシドによって表面修飾相を形成する工程と、表面修飾相を高分子分散剤によって覆う工程は、溶媒中で行われる。用いる溶媒としては、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応を阻害しないように、水や活性水素を持たない有機化合物が好ましい。
水や活性水素を持たない有機化合物としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、ハイドロフルオロエーテル、n−ヘキサン、キシレン、シクロペンタンなどが挙げられる。
溶媒として、樹脂バインダーを用いることもできる。樹脂バインダーとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール等を挙げることができる。また光硬化性又は熱硬化性モノマー等を添加して、製膜後、光照射又は加熱により重合させることによりポリマー化することができる。
以上のような金属酸化物ナノ粒子の製造方法により、金属酸化物ナノ粒子表面に、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応による表面修飾相を有し、更に、前記表面修飾相の表面が、高分子分散剤で覆われてなる金属酸化物ナノ粒子及び、金属酸化物ナノ粒子含有組成物を得ることができる。
このようにして製造された金属酸化物ナノ粒子は、溶媒中に存在しているが、樹脂バインダー以外の溶媒を用いた場合には、加熱により溶剤を揮発させても、再度、溶媒中で解砕することで、良好な分散液とすることができる。
本発明により、金属酸化物ナノ粒子含有組成物中で、平均粒子径1〜100nmの金属酸化物ナノ粒子を得ることができる。また、本発明によれば、透明性が重視される用途に使用できる粒子径が2〜50nmの金属酸化物ナノ粒子を得ることができる。
また、本発明の金属酸化物ナノ粒子含有組成物は、塗料設計を行う場合、レベリング剤、開始剤等の添加剤を加えても金属酸化物ナノ粒子の含有量が高い塗料を設計する事ができる。
また、本発明の金属酸化物ナノ粒子含有組成物は、金属酸化物ナノ粒子の配合量を高充填とすることができるため、薄膜であってもナノ粒子の特性を発現した高性能な塗膜を生成することができる。
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
<実施例1>
メチルエチルケトン50gに、酸化ジルコニウムの凝集体(PCS:日本電工社、比表面積33.6m2/g)を10g、高分子分散剤(Disperbyk−111:BYK-Chemie社)を1.34g添加し、室温で約1時間攪拌させた後、テトラエトキシシラン(KBE-04:信越化学工業社)1gを投入し室温で攪拌を行った。
上述のプレミックス液を、粒子径0.3mm〜0.05mmのジルコニアビーズを使用し、滞留時間300分としてビーズミル分散機により、解砕及び分散処理を行い、実施例1の酸化ジルコニウム分散液を得た。
<実施例2>
メチルエチルケトン50gに、酸化ジルコニウム凝集体(PCS:日本電工社、比表面積33.6m2/g)を10g、高分子分散剤(Disperbyk-111:BYK−Chemie社)を0.67g添加し、室温で約1時間攪拌させた後、テトラエトキシシラン(KBE−04:信越化学工業社)1gを投入し室温で攪拌を行った。
上述のプレミックス液を、粒子径0.3mmのジルコニアビーズを使用し、ペイントシェーカーにより滞留時間300分として解砕及び分散処理を行い、実施例2の酸化ジルコニウム分散液を得た。
<実施例3>
実施例2のプレミックス液の高分子分散剤の量を、3.36gに変更した以外は、実施例2と同様に解砕及び分散処理を行い、実施例3の酸化ジルコニウム分散液を得た。
<比較例1、2>
実施例2、3のプレミックス液から、テトラエトキシシランを除いた以外は、実施例2と同様に解砕及び分散処理を行い、比較例1及び2の酸化ジルコニウム分散液を得た。
<比較例3>
実施例2のプレミックス液から、テトラエトキシシランを除き、高分子分散剤を6.72gとした以外は、実施例2と同様に解砕及び分散処理を行い、比較例3の酸化ジルコニウム分散液を得た。
<比較例4>
実施例2のプレミックス液から、高分子分散剤を除いた以外は、実施例2と同様に解砕及び分散処理を行い、比較例4の酸化ジルコニウム分散液を得た。
実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた酸化ジルコニウム分散液の粒度分布を、動的散乱法により求め、実施例1〜3及び比較例1〜4で得られた酸化ジルコニウムの平均粒子径を求めた。また、分散液の分散直後の状態を観察した。結果を表1に示す。
さらに、得られた酸化ジルコニウム分散液の分散安定性を確認するために、1ヶ月経過後の分散液の状態を観察した。結果を表1に示す。
Figure 2009221070
実施例1〜3の酸化ジルコニウム分散液は、酸化ジルコニウムの凝集体を解砕しながら、酸化ジルコニウム粒子表面に、金属アルコキシドによる表面修飾相を生成し、高分子分散剤によって、表面修飾相を覆ったものである。高分子分散剤が酸化ジルコニウム粒子表面に安定に吸着し立体障害を起こし、再凝集することが少ないため、酸化ジルコニウムの一次粒子径付近の平均粒子径が45〜70nmの粒子となった。
また、実施例1〜3の酸化ジルコニウム分散液は、金属アルコキシドによって酸化ジルコニウム粒子表面を修飾することによって、酸化ジルコニウム粒子表面に高分子分散剤を吸着する基が増え、酸化ジルコニウム粒子表面の濡れ性がよくなったこと、酸化ジルコニウム粒子表面から高分子分散剤が脱落しにくくなったことなどにより、分散直後の分散液、及び1ヶ月経過後の分散液の分散安定性も良好なものとなった。
実施例2は、高分子分散剤の配合量が実施例1と比べて少ないため、実施例1と比べて酸化ジルコニウムの凝集が起こりやすくなり、平均粒子径が実施例1と比べて大きいものとなった。
実施例3は、高分子分散剤の配合量が実施例1と比べて多いため、実施例1と比べて酸化ジルコニウム粒子表面の高分子分散剤同士の吸着作用により、実施例1と比べて酸化ジルコニウムの凝集が起こりやすくなり、平均粒子径が実施例1と比べて大きいものとなった。
比較例1、2の酸化ジルコニウム分散液は、酸化ジルコニウム粒子表面に、金属アルコキシドによる表面修飾相を形成しないものであるため、実施例2、3と同じ高分子分散剤の量では、酸化ジルコニウム粒子表面を高分子分散剤で十分に被覆することができず、分散途中で、凝集を起こしてしまった。
比較例3の酸化ジルコニウム分散液も、比較例1、2と同様に、酸化ジルコニウム粒子表面に、金属アルコキシドによる表面修飾相を形成しないものである。酸化ジルコニウム粒子表面に金属アルコキシドによる表面修飾相を有しないため、金属酸化物ナノ粒子を得るために、実施例より高分子分散剤を多く必要とするものであった。また、酸化ジルコニウム粒子に吸着されていない高分子分散剤が多量に存在するため、時間の経過と共に、吸着されていない高分子分散剤が介在し、酸化ジルコニウムが再凝集を起こし、ゲル化してしまった。
比較例4の酸化ジルコニウム分散液は、高分子分散剤を除いたものである。酸化ジルコニウム粒子表面に金属アルコキシドによる表面修飾相だけが形成され、酸化ジルコニウム粒子表面が、他の酸化ジルコニウム粒子と吸着し易くなり、凝集を起こしてしまった。
また、実施例1〜3の酸化ジルコニウム分散液は、分散液中の溶媒を加熱により蒸発させて、酸化ジルコニウム粒子を得ることができた。さらに、溶媒中で解砕することにより分散液とすることができ、再分散性も良好であった。
また、実施例1及び比較例3の酸化ジルコニウム分散液を用いて、塗膜を形成したところ、実施例1の酸化ジルコニウム分散液を用いた塗膜は、塗膜中の酸化ジルコニウムの割合が高い塗膜となった。
一方、比較例3の酸化ジルコニウム分散液を用いた場合には、高分子分散剤が多量に含まれているため塗膜が硬化しにくく、塗膜を形成するためにバインダーとなる樹脂の割合を多くしたため、塗膜中の酸化ジルコニウムの割合が実施例1のものと比べて低いものとなった。
本発明の金属アルコキシドと高分子分散剤を溶媒中に添加する時期の一例 本発明の金属アルコキシドと高分子分散剤を溶媒中に添加する時期の他の例

Claims (6)

  1. 溶媒中で、金属酸化物ナノ粒子の凝集体、金属アルコキシド、高分子分散剤を用いて、金属酸化物ナノ粒子の凝集体を解砕しながら、下記a)工程、及びb)工程を含む工程を行うことを特徴とする金属酸化物ナノ粒子の製造方法。
    a)金属酸化物ナノ粒子表面に、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応による表面修飾相を生成する工程
    b)高分子分散剤で前記表面修飾相の表面を覆う工程
  2. 解砕する前に、前記金属酸化物ナノ粒子の凝集体と前記金属アルコキシドと前記高分子分散剤とを溶媒中に全て混合することを特徴とする請求項1記載の金属酸化物ナノ粒子の製造方法。
  3. 前記高分子分散剤の添加量が、金属酸化物ナノ粒子の比表面積1m2/gに対して1〜10mgであることを特徴とする請求項1又は2記載の金属酸化物ナノ粒子の製造方法。
  4. 金属酸化物ナノ粒子であって、金属酸化物ナノ粒子表面に、金属酸化物ナノ粒子と金属アルコキシドとの縮合反応による表面修飾相を有し、更に、前記表面修飾相の表面が、高分子分散剤で覆われてなることを特徴とする金属酸化物ナノ粒子。
  5. 前記金属酸化物ナノ粒子は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化スズから選択された少なくとも1種類の金属酸化物ナノ粒子であることを特徴とする請求項4記載の金属酸化物ナノ粒子。
  6. 請求項4又は5に記載の金属酸化物ナノ粒子が溶媒中に分散されてなることを特徴とする金属酸化物ナノ粒子含有組成物。
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