以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、説明が重複して冗長になるのを避けるため、各図において同一または相当する機能を有する要素には同一符号を付してある。
また、各実施の形態に用いられるトランジスタは、絶縁ゲート型電界効果トランジスタである。絶縁ゲート型電界効果トランジスタは、ゲート絶縁膜中の電界により半導体層内のドレイン領域とソース領域との間の電気伝導度が制御される。ドレイン領域およびソース領域が形成される半導体層の材料としては、ポリシリコン、アモルファスシリコン、ペンタセン等の有機半導体、単結晶シリコンあるいはZnO等の化合物半導体などを用いることができる。
よく知られているように、トランジスタは、それぞれ制御電極(狭義にはゲート(電極))と、一方の電流電極(狭義にはドレイン(電極)またはソース(電極))と、他方の電流電極(狭義にはソース(電極)またはドレイン(電極))とを含む少なくとも三つの電極を有する素子である。トランジスタは、ゲートに所定の電圧を印加することによりドレインとソース間にチャネルが形成されるスイッチング素子として機能する。トランジスタのドレインとソースは、基本的に同一の構造であり、印加される電圧条件によって互いにその呼称が入れ代わる。例えばN型トランジスタであれば、相対的に電位の高い電極をドレイン、低い電極をソースと呼称する(P型トランジスタの場合はその逆となる)。
特に示さない限り、それらのトランジスタは半導体基板上に形成されるものであってもよく、またガラスなどの絶縁性基板上に形成される薄膜トランジスタ(TFT)であってもよい。トランジスタが形成される基板としては、単結晶基板あるいはSOI、ガラス、樹脂などの絶縁性基板であってもよい。
本発明のドライバ回路およびレベル変換回路は、単一導電型のトランジスタのみを用いて構成される。例えばN型トランジスタは、ゲートがソースに対しハイ(H)レベルになると活性状態(オン状態、導通状態)となり、同じくロー(L)レベルで非活性状態(オフ状態、非導通状態)となる。従って本明細書においては、N型トランジスタを用いた実施の形態では信号のHレベルを「活性レベル」、Lレベルを「非活性レベル」として説明する。つまりN型トランジスタを用いて構成した回路の各ノードは、充電されることによって非活性レベルから活性レベルへの変化が生じ、放電されることによって活性レベルから非活性レベルへの変化が生じる。
逆に、P型トランジスタは、ゲートがソースに対しLレベルになると活性状態となり、同じくHレベルで非活性状態となるので、P型トランジスタを用いた実施の形態では信号のLレベルを「活性レベル」、Hレベルを「非活性レベル」として説明する。つまりP型トランジスタを用いて構成した回路の各ノードは、充電されることによって活性レベルから非活性レベルへの変化が生じ、放電されることによって非活性レベルから活性レベルへの変化が生じる。
また本明細書においては、二つの素子間、二つのノード間あるいは一の素子と一のノードとの間の「接続」とは、その他の要素(素子やスイッチなど)を介しての接続であるが実質的に直接接続されているのと等価な状態をも含むものとして説明する。例えば二つの素子がスイッチを介して接続している場合であっても、それらが直接接続されているときと同一に機能できるような場合には、その二つの素子が「接続している」と表現する。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係るドライバ回路の構成を示す図である。当該ドライバ回路は、N型トランジスタのみを用いて構成されており、入力段回路100と出力段回路110とから成っている。入力段回路100の入力端子INには入力信号INSが入力され、出力段回路110に設けられた出力端子OUTには、入力信号INSの論理レベル(Hレベル、Lレベル)を反転した出力信号/OUTSが出力される。
このドライバ回路には、ハイ側電源として電圧VH、ロー側電源として電圧VSSが供給されている。ハイ側電源電圧VHは、各信号の電圧の基準レベルとなる基準電圧GNDよりも高い正極性の電圧である。通常、基準電圧GNDは接地電位(0V)である。またロー側電源電圧VSSは、基準電圧GNDと同じ電圧レベル(電位)であってもよいし、それよりも低い負極性の電圧であってもよい。
当該ドライバ回路は、出力信号/OUTSとして、Hレベルがハイ側電源電圧VH、Lレベルがロー側電源電圧VSSとなる電圧信号を出力することができる。一方、入力信号INSは、Hレベルが電圧VDD、Lレベルが電圧VSSである電圧信号とする。電圧VDDは、トランジスタQ2,Q6のしきい値電圧よりもある程度高いレベルであればよい。なお、電圧VDDは上記のハイ側電源電圧VHと同じ電圧でもよい。
入力信号INSのHレベル電圧VDDが出力信号/OUTSのHレベル電圧VHよりも低い場合、ドライバ回路は、比較的低いHレベル電圧(VDD)を有する入力信号INSを、それよりも高いHレベル電圧(VH)を有する出力信号/OUTSへと変換するレベル変換回路として動作する。このように本発明に係るドライバ回路はレベル変換回路としても機能するが、負荷容量を駆動可能であることに変わりはないため、以下の各実施の形態ではその用途に関わらず「ドライバ回路」と称することとする。
以下の実施の形態では、入力信号INSのHレベル電圧VDDは、出力信号/OUTSのHレベル電圧VHよりも低く、ドライバ回路がレベル変換回路としても機能しているものとして説明を行う。また簡単のため、ロー側電源電圧VSSは基準電圧GND(=0V)と同レベルであるとする。またドライバ回路構成する各N型トランジスタのしきい値電圧は全て等しく、その値をVthnとする。
再び図1を参照し、本実施の形態に係るドライバ回路の構成を説明する。上記のように当該ドライバ回路は、入力段回路100および出力段回路110から成っている。それらの各回路には、ハイ側電源線102およびロー側電源線104から電源が供給される。ハイ側電源線102には、ハイ側電源ノードS2を通して電圧VHが供給されており、ロー側電源線104には、ロー側電源ノードS1を通して電圧VSSが供給されている。
入力段回路100はブートストラップ回路であり、N型のトランジスタQ1〜Q4および容量素子C1から構成される。当該入力段回路100において、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間には、トランジスタQ4,Q1,Q2がこの順に直列接続している。ここで図1の如く、トランジスタQ1とトランジスタQ2との間の接続ノードをノードN1、トランジスタQ1のゲートが接続するノードをノードN2、トランジスタQ4とトランジスタQ1との間の接続ノードをノードN3と定義する。
即ち、トランジスタQ4はハイ側電源線102とノードN3との間に接続し、トランジスタQ1はノードN3とノードN1との間に接続し、トランジスタQ2はノードN1とロー側電源線104との間に接続している。トランジスタQ4のゲートは、ハイ側電源線102に接続される(即ちトランジスタQ4はダイオード接続されている)。トランジスタQ1のゲート(ノードN2)とノードN1との間には、フィードバック容量としての容量素子C1が接続され、またノードN2とハイ側電源線102との間には、ゲートがハイ側電源線102に接続したトランジスタQ3が接続される(即ちトランジスタQ3はダイオード接続されている)。トランジスタQ2のゲートは当該ドライバ回路の入力ノードであり、入力信号INSを受ける入力端子INに接続される。入力段回路100の出力ノードはノードN1である。
トランジスタQ1,Q2から成る回路は、入力端子INを入力ノード、ノードN1を出力ノードとするレシオ型インバータを構成している。即ち当該インバータは、トランジスタQ1を負荷素子(負荷トランジスタ)、トランジスタQ2を駆動素子(駆動トランジスタ)としており、入力信号INSの論理レベルを反転した信号をノードN1に出力する。負荷トランジスタQ1および駆動トランジスタQ2それぞれのオン抵抗値は、ノードN1にて所定レベルの信号が得られるように適切な比率で設定される。
出力段回路110は、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列接続したトランジスタQ5,Q6から成るプッシュプル回路を有している。その間の接続ノードをノードN6とすると、トランジスタQ5はハイ側電源線102とノードN6との間に接続し、ゲートがノードN1に接続している。トランジスタQ6は、ノードN6とロー側電源線104との間に接続し、ゲートが入力端子INに接続している。ノードN6は、トランジスタQ5,Q6から成るプッシュプル回路の出力ノードであると共に、当該ドライバ回路の出力端子OUTとなる。
出力段回路110はさらに、ノードN6とノードN3との間に接続した容量素子C2を備えている。この容量素子C2は、ノードN6(出力端子OUT)とノードN3とを容量結合し、ノードN6の電圧レベルの変化に応じてノードN3の電圧レベルを変化させる。
上記したように、トランジスタQ1,Q2から成るインバータの働きにより、入力信号INSとノードN1の信号とは論理レベルが反転した関係になるので、ノードN1の信号で制御されるトランジスタQ5と入力信号INSで制御されるトランジスタQ6とは、相補的に(交互に)オンすることとなる。トランジスタQ5,Q6がそのように制御されることにより、それらから成るプッシュプル回路は直流電流を伴わない所定の動作を行うことになる。
ダイオード接続されたトランジスタQ3は、ハイ側電源線102からノードN2への方向のみに電流を流す、即ちその方向を順方向とする一方向性電流駆動素子として働く。なお本明細書における一方向性電流駆動素子とは、逆方向電流を全く流さない素子のみならず、逆方向電流が順方向電流に対し無視できるほど小さい素子をも含むものとする。
ハイ側電源線102の電圧はVHであるので、トランジスタQ3がオンしたときには、ノードN2は電圧VH−Vthnに充電される(このVthnはトランジスタQ3のしきい値電圧である)。ハイ側電源電圧VHは、このVH−Vthnの値がトランジスタQ1のしきい値電圧よりも高くなるように設定されている。つまりノードN2が電圧VH−Vthnのとき、トランジスタQ1はオン状態になる。
図1の回路では、トランジスタQ3はハイ側電源線102とノードN2との間にダイオード接続されているが、上記と同様にノードN2を充電してトランジスタQ1をオンにすることが可能な一方向性電流駆動素子として機能できればこの接続構成でなくてもよい。例えば、トランジスタQ3のドレインおよびゲートの接続先は、電圧VHとは異なる電圧を供給する他の電圧源であってもよいし、また非特許文献1のFigure 1(b)ように繰り返し信号源(交流信号源)であってもよい。
トランジスタQ4は、ハイ側電源線102からノードN3への向きを順方向とする一方向性電流駆動素子として働き、それがオンしたときにはノードN3を電圧VH−Vthnに充電する(このVthnはトランジスタQ4のしきい値電圧である)。当該トランジスタQ4は、ノードN3を充電することにより、トランジスタQ1,Q2から成るインバータにハイ側電源を供給する。
図2は、本実施の形態のドライバ回路(図1)の動作を示す信号波形図である。図2を参照し、図1に示すドライバ回路の動作を説明する。なお、以下の説明では特に示さない限り、寄生容量およびトランジスタの電流駆動力(またはオン抵抗)に起因する各ノードの電圧レベルへの影響は無視する。
まず初期状態として、入力信号INSがLレベル(VSS)であるとする。このときトランジスタQ2,Q6はオフ状態である。ノードN2,N3はそれぞれトランジスタQ3,Q4により電圧VH−Vthnに充電されており、トランジスタQ1はオン状態である。よってトランジスタQ1,Q2から成るインバータの出力ノード(入力段回路100の出力ノード)N1はHレベルである。従ってトランジスタQ5はオン状態であり、当該ドライバ回路の出力端子OUT(ノードN6)はHレベルになっている。
この初期状態から、時刻t0で入力信号INSが電圧VDDのHレベルになると、トランジスタQ2がオンし、ノードN1の電圧レベルが低下する。このときトランジスタQ4,Q1も共にオン状態であるが、トランジスタQ4のオン抵抗はトランジスタQ1よりも充分低く設定されており、ノードN3の電圧レベルはほぼVH−Vthnで維持される。
またノードN1の電圧レベルが低下すると、容量素子C1を介した結合のためノードN2の電圧レベルも低下しようとするが、トランジスタQ3がオン状態であるのでノードN2の電圧レベルはVH−Vthnに維持される。よってトランジスタQ1はオン状態に維持される。
ノードN1の電圧レベルは、トランジスタQ1,Q2のオン抵抗の比(電流駆動力の比)により決定される値となる。トランジスタQ2はトランジスタQ1よりもオン抵抗が充分低く設定されており、ノードN1はほぼ電圧VSSのLレベルになる。つまり、入力段回路100の出力ノードN1におけるオフセット電圧は、トランジスタQ2のオン抵抗をトランジスタQ1のオン抵抗よりも極めて小さく設定することによりほぼ0にすることが可能である。
一方、出力段回路110においては、時刻t0で入力信号INSがHレベルになったときトランジスタQ6がオンし、出力端子OUT(ノードN6)の電圧レベルが低下する。また上記のように入力段回路100の出力ノードN1がLレベル(≒VSS)になるので、トランジスタQ5のゲート(ノードN1)とソース(ノードN6)との間の電圧がしきい値電圧以下になり、トランジスタQ5はオフになる。その結果、出力端子OUT(出力信号OUTS)は電圧VSSのLレベルになる。
このように出力端子OUTの電圧レベルが低下すると、容量素子C2を介する結合により、ノードN3の電圧レベルが低下しようとする。しかしトランジスタQ4はオン状態であるので、ノードN3は電圧VH−Vthnに維持される。出力端子OUTは電圧VSSであるので、その結果、容量素子C2は電圧VH−Vthnに充電されることになる。
そして時刻t1で、入力信号INSがHレベル(VDD)からLレベル(VSS)になると、入力段回路100ではトランジスタQ2がオフとなり、トランジスタQ4を流れる電流により容量素子C2に充電された電荷がトランジスタQ1を通してノードN1に流れ込み、ノードN1のレベルが上昇する。応じてトランジスタQ5がオンになり、出力端子OUTの電圧レベルが上昇する。
出力端子OUTの電圧レベルが上昇すると、容量素子C2を介する結合により、ノードN3のレベルが上昇する。トランジスタQ4はダイオード接続されているので、ノードN3の電圧がVH−Vthnから上昇するとオフになる。またトランジスタQ1はオン状態、トランジスタQ2はオフ状態であるため、ノードN3の電圧レベルの上昇に伴いノードN1のレベルがさらに上昇する。
このように、トランジスタQ5がオンしたことによる出力端子OUTの電圧レベルの上昇が、当該トランジスタQ5のゲート(ノードN1)へとフィードバックされる。この正帰還動作により、ノードN1は、トランジスタQ5を非飽和動作させる電圧レベルに達し、出力端子OUTは電圧VHのHレベルになる。つまり出力信号/OUTSのHレベルはトランジスタQ5のしきい値電圧分の損失を伴わない。
なお、ノードN1の電圧レベルが上昇したとき、容量素子C1を介する結合により当該トランジスタQ1のゲート(ノードN2)の電圧レベルも上昇する。トランジスタQ3は、ダイオード接続しているためノードN2の電圧レベルがVH−Vthnから上昇するとオフになるので、ノードN2の電圧レベルは更に上昇する。
このようにトランジスタQ1がノードN1を充電することによる当該ノードN1の電圧レベルの上昇は、トランジスタQ1のゲート電圧へとフィードバックされる。つまり入力段回路100はブートストラップ回路として動作する。よってノードN1の電圧レベルが上昇してもトランジスタQ1は非飽和領域でオンに維持され、上記のトランジスタQ5のゲート電圧に係る正帰還動作が滞りなく行われる。
以上のように、当該ドライバ回路におけるトランジスタQ5のゲート電圧に係る正帰還ループは、ノードN1の電圧レベル上昇→トランジスタQ5を流れる電流の増大→出力端子OUTの電圧レベル上昇→ノードN3の電圧レベル上昇→トランジスタQ1を流れる電流の増大→ノードN1のレベル上昇…というループとなる。
その正帰還動作をより詳細に説明する。まず図2の時刻t1の直前においては、トランジスタQ1のゲート(ノードN2)およびノードN3の電圧レベルは共にVH−Vthnであり、ノードN1はほぼ電圧VSSのLレベル、出力端子OUTは電圧VSSのLレベルである。
時刻t1で、トランジスタQ2,Q6がオフすると、ノードN1のレベルが上昇する。このノードN1の電圧変化は容量素子C1を介してノードN2に結合され、ノードN2のレベルがVH−Vthnから上昇する。ノードN2のレベル上昇はトランジスタQ1を非飽和領域動作に向かわせ、その駆動電流をより増大させる。他方、ノードN1の電圧レベルの上昇はトランジスタQ5をオンにし、トランジスタQ5を流れる電流によって出力端子OUTのレベルが上昇する。
この出力端子OUTの電圧レベルの変化は容量素子C2を介してノードN3に結合され、ノードN3のレベルがVH−Vthnから上昇する。ノードN3すなわちトランジスタQ1のドレインの電圧が上昇することで、非飽和領域で動作しているトランジスタQ1を流れる電流が増大し、ノードN1の電圧レベルがさらに上昇する。このノードN1のレベル上昇はさらにトランジスタQ5のゲート電圧を高め、トランジスタQ5を流れる電流がより増大し、出力端子OUTのレベルがさらに上昇する。
この正帰還動作が繰り返されてトランジスタQ5のゲート(ノードN1)の電圧レベルが充分に上昇し、トランジスタQ5は非飽和領域で動作するようになる。それにより出力信号/OUTSのHレベル電圧の最終的な値は、トランジスタQ5のしきい値電圧分の損失を伴わずに電圧VHとなる。
つまり時刻t1で出力端子OUTがLレベル(VSS=GND)からHレベル(VH)に変化したとき、その電圧変化分ΔV2はVHである。この出力端子OUTの電圧変化分は、容量素子C2を介して、VH−Vthnの電圧レベルとなっていたノードN3に結合する。容量素子C2の容量値に対してノードN3,N1の寄生容量が充分小さいと仮定すると、時刻t1後のノードN3のレベルVN3は、次の式(1)で表される。
VN3=VH−Vthn+ΔV2=2・VH−Vthn …(1)
また時刻t1では、トランジスタQ1のゲート(ノードN2)の電圧レベルは、容量素子C1によるブートストラップ作用により、ノードN1の電圧レベル上昇に従って充分高くなる。そのためトランジスタQ1は非飽和領域で動作するので、ノードN1には、ノードN3の電圧レベルがトランジスタQ1のしきい値電圧分の損失を伴わずに伝達される。よって時刻t1後におけるノードN1の電圧レベルVN1は、上記のノードN3の電圧レベルVN3と同じになる。
VN1=VN3=2・VH−Vthn …(2)
時刻t1後におけるトランジスタQ5のゲート電圧は式(2)のVN1である。トランジスタQ5のドレイン電圧はVHであるので、VN1がVHより充分大きくなるように、VHの値をVthnより充分大きく設定することにより、トランジスタQ5を非飽和領域で動作させることができる。
時刻t1におけるノードN1の電圧変化分ΔV1(=2・VH−Vthn)は、容量素子C1を介する結合により、ノードN2の電圧レベルを上昇させる(ブートストラップ動作)。よって時刻t1後のノードN2の電圧レベルVN2は、次の式(3)で表せる。
VN2=VH−Vthh+ΔV1=3・VH−2・Vthn …(3)
時刻t1後におけるトランジスタQ1のゲート電圧は式(3)のVN2である。トランジスタQ1のドレイン電圧は式(1)のVN3であるので、VN2がVN3より充分大きくなるように、VHの値をVthnより充分大きく設定することにより、トランジスタQ1を非飽和領域で動作させることができる。
以上のように本実施の形態に係るドライバ回路によれば、出力段回路110において、トランジスタQ5は、入力段回路100のノードN1の電圧レベル上昇に従ってオンになり出力端子OUTの電圧レベルを上昇させる。トランジスタQ5は、出力端子OUTの電圧上昇分を自身のゲート電圧に正帰還させることにより非飽和領域で動作する。よって出力端子OUT(出力信号/OUTS)をHレベルにする際、トランジスタQ5のしきい値電圧分の損失を伴わずに電圧VHにまで上昇させることができ、且つその立ち上がり速度は高速である。
またそのとき入力段回路100のトランジスタQ1も、ノードN1の電圧レベルを上昇させるとき、その電圧上昇分を自身のゲートに正帰還させることで非飽和領域で動作する(ブートストラップ作用)。よってノードN1の電圧レベルはトランジスタQ1のしきい値電圧分の損失を伴わず、且つその立ち上がり速度は高速である。つまり、入力段回路100はトランジスタQ5のゲート電圧を高速に上昇させることで、出力信号/OUTSの立ち上がり速度の高速化に寄与している。
[第1の変更例]
図3は、実施の形態1の第1の変更例であるドライバ回路の構成を示す図である。図1の回路では、トランジスタQ5による出力端子OUTの充電時に、その出力端子OUTの電圧変化をトランジスタQ5のゲート電圧に正帰還させていた。それに対し図3のドライバ回路では、出力端子OUTを駆動するためのプッシュプル回路(以下「駆動用プッシュプル回路」)とは別に、それと同様に動作するプッシュプル回路(以下「帰還用プッシュプル回路」)を設け、帰還用プッシュプル回路の出力ノードの電圧変化をトランジスタQ5のゲート電圧に帰還させるように構成したものである。
図3を参照し、帰還用プッシュプル回路は、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列接続したN型トランジスタQ7,Q8から成っている。この帰還用プッシュプル回路とトランジスタQ5,Q6から成る駆動用プッシュプル回路とが同様に動作するように、両者は互いに並列に接続される。
即ち、トランジスタQ7,Q8の間の接続ノードをノードN4とすると、トランジスタQ7はハイ側電源線102とノードN4との間に接続し、ゲートはトランジスタQ5のゲートと共にノードN1に接続している。トランジスタQ8は、ノードN4とロー側電源線104との間に接続し、ゲートはトランジスタQ6のゲートと共に入力端子INに接続している。帰還用プッシュプル回路の出力ノードはノードN4である。本変更例では容量素子C2はこのノードN4とノードN3との間に接続され、出力端子OUTには接続しない。
帰還用プッシュプル回路は、駆動用プッシュプル回路と同様に動作するので、ノードN4の電圧レベルは原則として出力端子OUT(ノードN6)の電圧レベルと同様に変化する。従って、図3の回路と図1の回路とでは容量素子C2の接続先が異なるものの、その動作はほぼ同じである。但し図3の回路では、帰還用プッシュプル回路は専ら容量素子C2を用いた正帰還動作を行い、駆動用プッシュプル回路は専ら出力端子OUTに接続される負荷容量の駆動を行うように、役割分担されている。
この変更例では、トランジスタQ5のゲート電圧に係る正帰還のループの経路が図1の回路とは異なる。つまり当該正帰還の動作が出力端子OUTではなく、それとは分離したノードN4の信号に基づいて行われる。
出力端子OUTには負荷容量が接続されるため、その容量値の影響により出力信号/OUTSの立ち上がり速度が低下することが考えられる。図1の回路では、出力端子OUTの電圧変化がトランジスタQ5のゲート電圧に正帰還されるため、出力信号/OUTSの立ち上がり速度が低下するとそれがトランジスタQ5のゲート電圧の上昇速度にも影響し、出力信号/OUTSの立ち上がり速度のさらなる低下を招く。
それに対し図3の回路では、出力端子OUTとは分離したノードN4の電圧変化が、トランジスタQ5のゲート電圧に正帰還されるため、その正帰還動作は出力信号/OUTSの立ち上がり速度の影響を受けない。つまり出力端子OUTに接続される負荷容量の影響を受けない。
またノードN4には負荷容量が接続されないため、通常その電圧レベルの立ち上がり速度は出力端子OUTよりも高速である。そのため正帰還動作におけるノードN3およびノードN1(トランジスタQ5のゲート)の電圧レベルの上昇速度は図1の回路よりも高速化され、出力信号/OUTSの立ち上がり速度を図1の回路よりも高速化することが可能である。
[第2の変更例]
図4は、実施の形態1の第2の変更例であるドライバ回路の構成を示す図である。当該ドライバ回路は、図1の回路に対し、入力段回路100のトランジスタQ1とトランジスタQ2との間に、ゲートをハイ側電源線102に接続させたN型トランジスタQ9を介在させたものである。
トランジスタQ5のゲートおよび容量素子C2は、トランジスタQ9のドレイン側(ノードN1)に接続され、当該ノードN1が入力段回路100の出力ノードとなる。またここではトランジスタQ9,Q2間の接続ノードをノードN5と定義する。トランジスタQ9は、ゲートがHレベル(VH)に固定されているため、常時オン状態にある。
図1の回路では、入力信号INSがLレベル(VSS)のとき、ノードN1の電圧レベルVN1は上記の式(2)に示されるように2・VH−Vthnの高電圧となる。このとき、入力端子INのレベルはVSSなので、トランジスタQ2のドレイン・ゲート間にはその高電圧が掛かることになる。
低温ポリシリコンプロセスにより形成された薄膜トランジスタは、そのドレイン・ゲート間に高い電圧が長時間印加されるとそのオン抵抗が高くなることが知られている。そのためそのようなトランジスタを図1のドライバ回路に用いた場合、トランジスタQ2のオン抵抗が高くなることが懸念される。トランジスタQ1,Q2はレシオ型インバータを構成しているため、トランジスタQ2のオン抵抗の上昇は、入力段回路100の出力ノードN1における出力オフセット電圧を増大させ、ドライバ回路の動作マージンが低下するため問題となる。
図4の回路では、ノードN1が2・VH−Vthnの高電圧レベルにあるとき、トランジスタQ9のドレイン(ノードN1)とゲート(ハイ側電源線102)との間の電圧は、VH−Vthnになる。またこのときノードN5のレベルはVH−Vthnとなるので、トランジスタQ2のドレイン(ノードN5)とゲート(入力端子IN)との間の電圧もVH−Vthnになる。
このように入力信号INSがLレベルのとき、ノードN1の高電圧VN1(=2・VH−Vthn)が、トランジスタQ9,Q2により分割して保持される。そのためトランジスタQ9,Q2それぞれのドレイン・ゲート間電圧は比較的低く抑えられ、それらのオン抵抗の上昇が防止される。
一方、入力信号INSがLレベルのときはノードN2も式(3)で示される高電圧VN2(=3・VH−2・Vthn)になるので、トランジスタQ3のドレイン(ノードN2)とゲート(ハイ側電源線102)との間の電圧も2・VH−2・Vthnという高電圧になる。しかしトランジスタQ3は、ノードN2におけるリーク電流を補償する程度の電流を流せれば充分であり、高い電流駆動力が要求されるものではない。よってトランジスタQ3においてはオン抵抗の上昇はそれほど問題とならない。
なお図4の回路では、トランジスタQ9のゲートはハイ側電源線102に接続され、その電圧をVHに設定したが、トランジスタQ9,Q2それぞれのドレイン・ゲート間の電圧を抑制できる電圧であれば、トランジスタQ9のゲートには電圧VHとは異なる電圧を供給してもよい。また図4においては、図1の回路にトランジスタQ9を設けた構成を示したが、図3の回路のトランジスタQ1とトランジスタQ2との間にそれを設けることも可能であり、同様の効果を得ることができる。
[第3の変更例]
上記のとおり、図1の回路におけるトランジスタQ3は、ノードN2におけるリーク電流を補償する程度の電流を流せれば充分なので、高い電流駆動力は必要とされない。そのためトランジスタQ3のオン抵抗の上昇はそれほど問題とならない。
しかし、トランジスタQ3におけるのオン抵抗の上昇を抑制したい場合には、図5のドライバ回路を用いればよい。当該ドライバ回路は、図1の回路に対し、トランジスタQ1のゲート(ノードN2)とトランジスタQ3との間に、ゲートをノードN3に接続させたトランジスタQ10を介在させたものである。ここでトランジスタQ3,Q10間の接続ノードをノードN5aとする。
図5の回路においては、入力信号INSがLレベルのとき、トランジスタQ3のゲート(ハイ側電源線102)とソース(ノードN5a)間の電圧は略[VH−(2・VH−2・Vthn)]=−(VH−2・Vthn)になる。またこのときトランジスタQ10のゲート(ノードN3)とソース(ノードN2)間の電圧は略[(2・VH−Vthn)−(3・VH−2・Vthn)]=−(VH−Vthn)になる。
このように入力信号INSがLレベルのとき、ノードN2とハイ側電源線102間の高電圧(2・VH−2・Vthn)が、トランジスタQ3,Q10により分割して保持される。そのためトランジスタQ3,Q10それぞれのゲート・ソース間電圧は比較的低く抑えられ、それらのオン抵抗の上昇が防止される。
なお図5においては、図1の回路にトランジスタQ10を設けた構成を示したが、図3,図4の回路のトランジスタQ1のゲート(ノードN2)とトランジスタQ3との間にそれを設けてもよく、同様の効果を得ることができる。
[第4の変更例]
図6は、実施の形態1の第4の変更例であるドライバ回路であり、出力信号/OUTSの立ち上がり速度をさらに速くした回路である。当該ドライバ回路は、図1の回路に対し、電圧発生回路50を設けたものである。この電圧発生回路50は、トランジスタQ4のゲートにVH+Vthnの電圧を供給するものであり、図6の如く、N型トランジスタQ50〜Q52および容量素子C50,C51から成っている。
トランジスタQ50,Q51は共にダイオード接続されており、それらは電圧VHが供給されるハイ側電源ノードS2とトランジスタQ4のゲート(ノードN51)との間に直列に接続している。トランジスタQ50,Q51の間の接続ノードN50とすると、トランジスタQ50はハイ側電源ノードS2からノードN50への向きを順方向とするダイオードとして機能し、トランジスタQ51はノードN50からノードN51への向きを順方向とするダイオードとして機能する。
容量素子C50は、所定の繰り返し信号CLKが入力される端子CK(繰り返し信号入力端子)とノードN50との間に接続される。ここで、繰り返し信号CLKの振幅はVHとする。
これらトランジスタQ50,Q51および容量素子C50は、チャージポンプ回路を構成している。即ち、トランジスタQ50はノードN50にVH−Vthnの電圧を供給し、容量素子C50は繰り返し信号CLKの立ち上がりに応じてそれを2・VH−Vthnに昇圧する。そのためトランジスタQ51は、当該チャージポンプ回路の出力ノードN51に略2・VH−2Vthnの電圧を供給することが可能である。
但し、ノードN51とハイ側電源線102との間には、ノードN51からハイ側電源線102への向きが順方向となるようにダイオード接続されたトランジスタQ52が接続されており、これがノードN51の電圧をVH+Vthnにクランプする。またノードN51とハイ側電源線102との間に接続した容量素子C51は、ノードN51の電圧レベルを安定化させるために設けられたものである。
図6の回路では、トランジスタQ4のゲート電圧がVH+Vthnに固定されるので、当該トランジスタQ4はノードN3をVHの電圧にまで充電することができる。つまり図1の回路よりも、ノードN3,N1の電圧をVthnだけ高くできるので、トランジスタQ5のオン抵抗が小さくなり、出力信号/OUTSの立ち上がり速度が高速化される。
また出力信号/OUTSの立ち上がりに応じてノードN3が昇圧されたときには(このときノードN3がハイ側電源線102よりも高電位であるのでハイ側電源線102側がソースになる)、トランジスタQ4のゲート・ソース間電圧はVthnになり、トランジスタQ4にはサブスレッシュホールド電流しか流れず、トランジスタQ4は実質的にオフ状態になる。従って、ノードN3からハイ側電源線102には電流は流れない。
仮にトランジスタQ4のゲート電圧がVH+Vthnよりも高く設定されていた場合、ノードN3の昇圧時にそのゲート・ソース間電圧がしきい値電圧Vthnを超えるため、ノードN3からハイ側電源線102へと電流が流れる(トランジスタQ4が一方向性電流駆動素子として機能しなくなる)。そうなるとノードN3が充分に昇圧されず、トランジスタQ5のゲート電圧に係る正帰還動作が正常に行われない結果となる。電圧発生回路50において、トランジスタQ52がトランジスタQ4のゲート電圧をVH+Vthnにクランプしているのは、そのような不具合を回避するためである。
なお、電圧発生回路50のトランジスタQ50のドレインおよびゲートに供給する電圧はVHに限られるものではなく、繰り返し信号CLKの振幅に相当する電圧もVHに限られない。それらの値は、電圧発生回路50がノードN51に電圧VH+Vthnを供給可能な範囲であれば、任意の値でよい。
さらに電圧発生回路50が備えるトランジスタQ50〜Q52、容量素子C50、C51は、製造プロセスの簡略化の観点から、それぞれ入力段回路100および出力段回路110と同一基板上に形成されていることが好ましい。但し、ダイオード接続したトランジスタQ50〜Q52に代えてディスクリートのダイオード素子を用いてもよいし、容量素子C50、C51もディスクリートの素子を用いてもよい。
また本変更例のドライバ回路における入力段回路100および出力段回路110に対しても、上記の第1〜第3の変更例を適用してもよい。このことは以下の変更例においても同様に言える。
[第5の変更例]
図7は、実施の形態1の第5の変更例であるドライバ回路であり、図6(第4の変更例)の回路に対し、電圧発生回路50に繰り返し信号CLKに代えて出力信号/OUTSを供給させたものである。即ちトランジスタQ5を構成するチャージポンプ回路は、出力信号/OUTSにより駆動される。そのことを除いては図6と同様の構成である。
本変更例によれば、電圧発生回路50を動作させるための特別な繰り返し信号CLKを供給する必要がなくなる。つまり図6の回路に比べ、ドライバ回路の動作に必要な制御信号数が少なくなるので、繰り返し信号入力端子CKおよびそれに付随する配線等を省略でき、回路の占有面積の縮小化に寄与できる。
なお電圧発生回路50(チャージポンプ回路)を駆動する信号は、その電圧レベルが繰り返し変化するものであればよいので、出力信号/OUTS以外にも、例えば入力信号INSを用いて駆動させることも可能である(図示は省略する)。この場合も特別な繰り返し信号CLKを供給する必要がないので、上記と同様の効果が得られる。
[第6の変更例]
図8は、実施の形態1の第6の変更例であるドライバ回路であり、図6(第4の変更例)の回路に対し、トランジスタQ3のゲートにも電圧発生回路50が生成する電圧VH+Vthnを供給させたものである。トランジスタQ3のゲートがノードN51に接続していることを除いては、図6と同様である。
本変更例によれば、トランジスタQ3がノードN2を電圧VHのレベルにまで充電できるようになるので、図1の回路よりもノードN2の電圧がVthnだけ高くなる。よってトランジスタQ1のオン抵抗は低くなり、ノードN1の信号(入力段回路100の出力信号)の立ち上がり速度が高速化され、その結果、出力信号/OUTSの立ち上がり速度をさらに向上させることができる。本変更例は、電圧発生回路50を用いた他の変更例(例えば図7の回路)に対しても適用可能である。
ここで、トランジスタQ1,Q2はレシオ型インバータを構成しており、そのLレベルの電圧はトランジスタQ1,Q2のオン抵抗の比によって決定される。そのため本変更例によりトランジスタQ1のオン抵抗値を低くする場合には、それに応じてトランジスタQ2のオン抵抗値も低くしなければ、当該インバータの出力オフセット電圧が大きくなる点に留意すべきである。トランジスタQ2のオン抵抗値を低くするには、そのゲート幅を広くすればよい。
[第7の変更例]
図9は、実施の形態1の第7の変更例であるドライバ回路であり、出力信号/OUTSの振幅を大きくした回路である。当該ドライバ回路は、図1の回路に対し、電圧発生回路60を設けたものである。この電圧発生回路60は、トランジスタQ5のドレインに2・VH−2・Vthnの電圧を供給するものであり、図6の如くN型トランジスタQ60,Q61および容量素子C60,C61から成っている。
トランジスタQ60,Q61は共にダイオード接続されており、電圧VHが供給されるハイ側電源ノードS2とトランジスタQ5のドレイン(ノードN61)との間に直列に接続している。トランジスタQ60,Q61の間の接続ノードN60とすると、トランジスタQ60はハイ側電源ノードS2からノードN60への向きを順方向とするダイオードとして機能し、トランジスタQ61はノードN60からノードN61への向きを順方向とするダイオードとして機能する。容量素子C60は、所定の繰り返し信号CLKが入力される端子CK(繰り返し信号入力端子)とノードN60との間に接続される。ここで、繰り返し信号CLKの振幅はVHとする。
これらトランジスタQ60,Q61および容量素子C60は、チャージポンプ回路を構成している。即ち、トランジスタQ60はノードN60にVH−Vthnの電圧を供給し、容量素子C60は繰り返し信号CLKの立ち上がりに応じてそれを2・VH−Vthnに昇圧する。そしてトランジスタQ61は、当該チャージポンプ回路の出力ノードN61に略2・VH−2Vthnの電圧を供給することが可能である。ノードN61とハイ側電源線102との間に接続した容量素子C61は、ノードN61の電圧レベルを安定化させるために設けられている。
出力段回路110のプッシュプル回路を構成するトランジスタQ5,Q6は互いに相補的に(交互に)オンするので、トランジスタQ5のドレイン(ノードN61)とロー側電源線104との間には直流電流は流れない。従って出力段回路110は、出力インピーダンスが比較的高いチャージポンプ回路である電圧発生回路60をハイ側電源として用いても正常に動作することができる。
本変更例においては出力段回路110に供給されるハイ側電源電圧が高くなるので、出力信号/OUTSの振幅が大きくなる。この場合も、出力信号/OUTSの立ち上がり時にノードN3,N1が昇圧されてトランジスタQ5は非飽和領域で動作するので、出力信号/OUTSのHレベル電圧はノードN61と同じく略2・VH−2・Vthnになる。
また図示は省略するが、上記の第5の変更例で電圧発生回路50に対して行ったように、電圧発生回路60に対しても繰り返し信号CLKに代えて出力信号/OUTSあるいは入力信号INSを供給させてもよい。それにより、特別な繰り返し信号CLKを供給する必要がなくなるので、繰り返し信号入力端子CKおよびそれに付随する配線等を省略でき、回路の占有面積の縮小化に寄与できる。
[第8の変更例]
図10は、実施の形態1の第8の変更例であるドライバ回路であり、第7の変更例(図9)に示した電圧発生回路60を第1の変更例(図3)のドライバ回路に適用した例である。図10に示すように当該ドライバ回路においては、駆動用プッシュプル回路のトランジスタQ5のドレインと帰還用プッシュプル回路のトランジスタQ7のドレインの両方が、電圧発生回路60のノードN61に接続される。即ち、トランジスタQ5,Q7のドレインには、共に電圧発生回路60から略2・VH−2・Vthnの電圧が供給される。
駆動用プッシュプル回路のトランジスタQ5,Q6は互いに相補的に(交互に)オンし、同様に帰還用プッシュプル回路のトランジスタQ7,Q8も互いに相補的にオンするので、トランジスタQ5,Q7のドレイン(ノードN61)とロー側電源線104との間には直流電流は流れない。従って出力段回路110は、出力インピーダンスが比較的高いチャージポンプ回路である電圧発生回路60をハイ側電源として用いても正常に動作することができる。
本変更例においては、出力段回路110に供給されるハイ側電源電圧が高くなるので、出力信号/OUTSおよびノードN4の信号の振幅が大きくなる。この場合も、ノードN4の信号の立ち上がり時にノードN3,N1が昇圧されてトランジスタQ5は非飽和領域で動作するので、出力信号/OUTSのHレベル電圧はノードN61と同じく略2・VH−2・Vthnになる。
本変更例ではトランジスタQ5,Q7のドレインの両方に電圧発生回路60の生成電圧を供給したが、それをトランジスタQ7のドレインだけに供給し、トランジスタQ5のドレインは図3と同様にハイ側電源線102に接続させたままでもよい。その場合、出力信号/OUTSのHレベル電圧は図3の場合と同じVHになるが、トランジスタQ5のゲート電圧が高くなるため出力信号/OUTSの立ち上がり速度は図3の場合よりも向上される。
また本変更例においても、電圧発生回路60に対し、繰り返し信号CLKに代えて出力信号/OUTSあるいは入力信号INSを供給してもよい。それにより、特別な繰り返し信号CLKを供給する必要がなくなるので、繰り返し信号入力端子CKおよびそれに付随する配線等を省略でき、回路の占有面積の縮小化に寄与できる。
[第9の変更例]
図1の回路において出力信号/OUTSの立ち上がり速度を速くする一手法として、入力段回路100の駆動能力を高めることによりトランジスタQ5のゲート電圧の立ち上がり速度(充電速度)を高速化することが考えられる。しかし、入力段回路100のトランジスタQ1,Q2はレシオ型回路であるので、消費電流削減の観点からトランジスタQ1の駆動能力を上げるのには制限がある。
図11は、実施の形態1の第9の変更例であるドライバ回路であり、消費電流の増大を抑制しつつ、出力信号/OUTSの立ち上がり速度を速くした回路である。図1の回路では入力段回路100の出力ノードN1の信号を出力段回路110のトランジスタQ5のゲートに直接供給させていたが、本変更例では入力段回路100と出力段回路110との間に、プッシュプル回路120を介在させる。このプッシュプル回路120は、出力段回路110のトランジスタQ5のゲートを高速に充電するためのものである。
プッシュプル回路120の動作については後述するが、当該プッシュプル回路120は、その出力レベルの電圧が出力信号/OUTSの立ち上がりに応じて昇圧されるので、以下の説明ではそれを「昇圧プッシュプル回路」と称する。
昇圧プッシュプル回路120は、N型のトランジスタQ1a,Q2a,Q4aおよび容量素子C1aから成っている。当該昇圧プッシュプル回路120においては、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間にトランジスタQ4a,Q1a,Q2aがこの順に直列接続している。
トランジスタQ4a,Q1a間の接続ノードをノードN3a、トランジスタQ1a,Q2a間の接続ノードをノードN1aとすると、ハイ側電源線102とノードN3aとの間に接続するトランジスタQ4aは、ゲートがハイ側電源線102に接続されており(トランジスタQ4aはダイオード接続されている)、ハイ側電源線102からノードN3aへの向きを順方向とする一方向性電流駆動素子として機能する。ノードN3aとノードN1aとの間に接続するトランジスタQ1aのゲートは、入力段回路100の出力ノードN1に接続される。ノードN1aとロー側電源線104との間に接続したトランジスタQ2aのゲートは入力端子INに接続される。また容量素子C1aはノードN1aと入力段回路100のノードN3との間に接続される。
上記のノードN1aは、昇圧プッシュプル回路120の出力ノードであり、トランジスタQ1aはそれを充電してHレベルにするプルアップトランジスタであり、トランジスタQ2aはそれを放電してLレベルにするプルダウントランジスタである。
出力段回路110のトランジスタQ5のゲートは、昇圧プッシュプル回路120のノードN1aに接続される。また容量素子C2は出力段回路110のノードN6(出力端子OUT)と昇圧プッシュプル回路120のノードN3aとの間に接続される。
図11のドライバ回路においては、出力段回路110は昇圧プッシュプル回路120により駆動され、昇圧プッシュプル回路120は入力段回路100により駆動される。昇圧プッシュプル回路120の駆動能力は、入力段回路100よりも大きく設定される。即ち、トランジスタQ1aの駆動能力はトランジスタQ1の駆動能力以上に設定されている。
つまりトランジスタQ1a,Q2aはノードN1の信号の駆動能力を高めるためのバッファ回路として機能しており、ダイオード接続したトランジスタQ4aはこのバッファ回路にハイ側電源電圧を供給している。トランジスタQ1a,Q2aは互いに相補的に(交互に)オンになるレシオレス回路を構成しているため、トランジスタQ1a,Q2aには直流的な電流が流れない。よってトランジスタQ1aの駆動能力を大きく設定しても消費電流の増大は殆どない。
なお、出力段回路110において出力端子OUTを駆動するプッシュプル回路は、出力端子OUTに接続される負荷容量を駆動するため、昇圧プッシュプル回路120よりも駆動能力が大きく設定される。即ち、トランジスタQ5の駆動能力はトランジスタQ1aの駆動能力以上に設定されている。
このように図11のドライバ回路では、ノードN1から出力端子OUTに向かって(ノードN1を充電するトランジスタQ1、ノードN1aを充電するトランジスタQ1a、出力端子OUTを充電するトランジスタQ5の順に)、トランジスタの電流増幅度が大きくなっている。よって、入力段回路100のトランジスタQ1を流れる電流が小さくても、出力段回路110のトランジスタQ5のゲート電圧を高速に立ち上げることができる。つまり入力段回路100における直流電流を小さく維持して消費電流を抑制しつつ、出力信号/OUTSの立ち上がり速度の高速化を図ることができる。
以下、当該ドライバ回路の動作を説明する。入力信号INSがHレベルのとき、入力段回路100のノードN1はLレベルなので、昇圧プッシュプル回路120は、トランジスタQ2aがオン、トランジスタQ1aがオフの状態である。そのためノードN1aは電圧VSSのLレベルである。よって出力段回路110は、トランジスタQ5がオフ、トランジスタQ6がオンの状態であり、出力端子OUT(出力信号/OUTS)は電圧VSSのLレベルである。
そして入力信号INSがLレベルに変化すると、入力段回路100のノードN1がHレベルになるので、昇圧プッシュプル回路120は、トランジスタQ1aがオン、トランジスタQ2aがオフの状態になる。このときノードN3aの電圧はVH−Vthnであるので、ノードN1aはHレベルに変化する。よって出力段回路110は、トランジスタQ5がオン、トランジスタQ6がオフの状態になり、出力端子OUT(出力信号/OUTS)は電圧VHのHレベルに変化する。
出力端子OUTがLレベル(VSS)からHレベル(VH)に変化するとき、容量素子C2を介した結合により、ノードN3aの電圧が略2・VH−Vhnへと上昇される。応じてノードN1aの電圧も上昇するが、このノードN1aの電圧上昇は容量素子C1aを介して入力段回路100のノードN3,N1の電圧を上昇させ、トランジスタQ1aのゲート電圧に正帰還される。よってトランジスタQ1aは非飽和動作し、ノードN1aの電圧は略2・VH−Vthnまで上昇する。これによりトランジスタQ5は非飽和領域で動作するので、出力信号/OUTSの立ち上がり速度は高速化される。
なおノードN1aの電圧が略2・VH−Vthnまで上昇するとき、容量素子C1aを介する結合により、ノードN3は略3・VH−2・Vthnにまで上昇する。応じてノードN1の電圧レベルも上昇するが、このとき容量素子C1によるブートストラップ作用によりトランジスタQ1は非飽和動作するため、ノードN1のレベルも略3・VH−2・Vthnにまで上昇される。
本変更例によれば、トランジスタQ5のゲートは、トランジスタQ1よりも駆動能力の高いトランジスタQ1aによって高速に略2・VH−Vthnにまで充電される。つまり図1の回路よりもトランジスタQ5のゲート電圧の立ち上がりが高速になるので、出力信号/OUTSの立ち上がり速度が速くなる。
但し本変更例においては、図1の回路と異なり、出力段回路110のトランジスタQ5のゲートは入力段回路100のノードN1に直接接続されておらず、その間に昇圧プッシュプル回路120が介在している。そのためノードN1の電圧上昇とトランジスタQ5のゲート電圧の上昇との間に、トランジスタQ1aによるノードN1aの充電動作が介在するため、入力信号INSの立ち下がりタイミングと出力信号/OUTSの立ち上がりタイミングとの間の遅延時間が長くなることに留意する必要がある。
[第10の変更例]
図12は、実施の形態1の第10の変更例に係るドライバ回路を示す図である。本変更例は、図11の回路の更なる変更例であり、トランジスタQ1a,Q2a,Q4aおよび容量素子C1aから成る単位回路を1段のみ備える図11の昇圧プッシュプル回路120に代えて、当該単位回路を複数段(n段)備えた多段昇圧プッシュプル回路120aを設けたものである。
多段昇圧プッシュプル回路120aにおいて、トランジスタQ1a1,Q2a1,Q4a1および容量素子C1a1から成る最前段の単位回路は、図11の昇圧プッシュプル回路120と同様に入力段回路100により駆動される。2段目以降の単位回路は自己の前段に単位回路によって駆動される。そして出力段である出力段回路110は、最後段の単位回路によって駆動される。多段昇圧プッシュプル回路120aでは、それを構成する複数の単位回路において、各段のトランジスタQ1a(Q1a1〜Q1an)の駆動能力が、後段のものほど大きく設定されている。
本変更例によれば、トランジスタQ5のゲートを充電する最後段のトランジスタQ1anの駆動能力を極めて大きく設定することができる。そのため出力端子OUTに接続される負荷容量が極めて大きい場合に対応可能なように、トランジスタQ5の駆動能力(ゲート幅)が大きく設計されていても、そのゲートを高速に充電することができ、出力信号/OUTSの立ち上がり速度の低下を防止することができる。
[第11の変更例]
図13は、実施の形態1の第11の変更例に係るドライバ回路を示す図である。本変更例は、図12の回路の更なる変更例であり、図3(第1の変更例)に示した出力段回路110を適用したものである。
即ち第1の変更例と同様に、出力端子OUTを駆動するための駆動用プッシュプル回路とは別の帰還用プッシュプル回路の出力ノードN4に基づいて、トランジスタQ5のゲート電圧に係る正帰還動作が行われる。第1の変更例で説明したように、当該出力段回路110を用いることにより、その正帰還動作が、出力信号/OUTSの立ち上がり速度に影響されずに行われる。よって、当該ドライバ回路の動作が負荷容量の影響を受けないので、図12の場合よりも出力信号/OUTSの立ち上がり速度を安定して高速化することができる。
[第12の変更例]
図14は、実施の形態1の第12の変更例であるドライバ回路であり、第7の変更例(図9)に示した電圧発生回路60を第9の変更例(図11)のドライバ回路に適用した例である。図14に示すように当該ドライバ回路においては、出力段回路110のトランジスタQ5のドレイン、並びに昇圧プッシュプル回路120のトランジスタQ4aのゲートおよびドレインが、電圧発生回路60のノードN61に接続される。即ち、トランジスタQ5,Q4aのドレインには、共に電圧発生回路60から略2・VH−2・Vthnの電圧が供給される。
出力段回路110のプッシュプル回路を構成するトランジスタQ5,Q6は互いに相補的に(交互に)オンする。同様に昇圧プッシュプル回路120においてトランジスタQ4aに直列に接続したトランジスタQ1a,Q2aも互いに相補的にオンする。よって、トランジスタQ5,Q4aのドレイン(ノードN61)とロー側電源線104との間には直流電流は流れない。従って出力段回路110および昇圧プッシュプル回路120は、出力インピーダンスが比較的高いチャージポンプ回路である電圧発生回路60をハイ側電源として用いても正常に動作することができる。
本変更例においては、出力段回路110および昇圧プッシュプル回路120に供給されるハイ側電源電圧が高くなるので、出力信号/OUTSおよびノードN3a,N1aの信号の振幅が大きくなる。この場合も、出力信号/OUTSの立ち上がり時にノードN3a,N1aが昇圧されてトランジスタQ5は非飽和領域で動作するので、出力信号/OUTSのHレベル電圧はノードN61と同じく略2・VH−2・Vthnになる。
本変更例ではトランジスタQ4a,Q5のドレインの両方に電圧発生回路60の生成電圧を供給したが、それをトランジスタQ4aのドレインだけに供給し、トランジスタQ5のドレインは図11と同様にハイ側電源線102に接続させたままでもよい。その場合、出力信号/OUTSのHレベル電圧は図11の場合と同じVHになるが、トランジスタQ5のゲート電圧が高くなるため出力信号/OUTSの立ち上がり速度は図11の場合よりも向上される。
また本変更例においても、電圧発生回路60に対し、繰り返し信号CLKに代えて出力信号/OUTSあるいは入力信号INSを供給してもよい。それにより、特別な繰り返し信号CLKを供給する必要がなくなるので、繰り返し信号入力端子CKおよびそれに付随する配線等を省略でき、回路の占有面積の縮小化に寄与できる。
図示は省略するが、電圧発生回路60は、複数の単位回路から成る多段昇圧プッシュプル回路120aを備えた図12,図13の回路に対しても適用可能である。即ち、図12,図13の多段昇圧プッシュプル回路120aにおいて、トランジスタQ4a1〜Q4anそれぞれのゲートおよびドレインを電圧発生回路60のノードN61に接続させてもよい。もちろん図12,図13の出力段回路110のトランジスタQ5(およびトランジスタQ7)のドレインも電圧発生回路60のノードN61に接続させてもよい。
[第13の変更例]
図15は、実施の形態1の第13の変更例であるドライバ回路であり、出力信号/OUTSの立ち上がり速度を速くしたものである。当該ドライバ回路は、図3(第1の変更例)の回路に対し、トランジスタQ7のドレインとハイ側電源線102との間にトランジスタQ11を介在させると共に、トランジスタQ7,Q11間の接続ノード(ノードN7)と出力端子OUT(ノードN6)との間に容量素子C3を接続させたものである。トランジスタQ11は、ゲートがハイ側電源線102に接続されており(トランジスタQ11はダイオード接続されている)、ハイ側電源線102からノードN7への向きを順方向とする一方向性電流駆動素子として機能する。
本変更例の出力段回路110では、トランジスタQ7,Q8から成るプッシュプル回路のハイ側電源ノードはノードN7であり、当該ノードN7にはトランジスタQ11を介して電圧VH−Vthnが供給される。但し、出力信号/OUTSの立ち上がり時には、容量素子C3を介する結合によりノードN7の電圧は2・VH−Vthnにまで上昇する。それによりノードN4の電圧も略2・VH−Vthnになる。このとき容量素子C2を介する結合により、ノードN3およびノードN1(トランジスタQ5のゲート)の電圧は3・VH−Vthnにまで上昇する。
本変更例においては、トランジスタQ5のゲート電圧を図1や図3等の場合(略2・VH−Vthn)よりも高くすることができる。それによりトランジスタQ5の駆動能力が向上し、出力信号/OUTSの立ち上がり速度が速くなる。
なお図15の構成は、図3(第1の変更例)の回路における出力段回路110の構成を変更したものとして説明したが、本変更例の適用はそれに限定されるものではない。即ち、その他の実施の形態および変更例のドライバ回路における出力段回路110を、図15の出力段回路110に置き換えてもよい。
[第14の変更例]
第13の変更例(図15)に示した出力段回路110は、図3(第1の変更例)のものに構成上は類似しているが、出力端子OUTを駆動するトランジスタQ5,Q6から成るプッシュプル回路とは別にトランジスタQ7,Q8から成るプッシュプル回路を設けた目的は異なっている。図3の回路では、トランジスタQ5のゲート電圧に係る正帰還動作を出力端子OUTとは分離したノードN4に基づいて行わせる目的でそれを設けた。つまり、出力端子OUTに接続した負荷容量の影響が当該正帰還動作に及ばないようにして、出力信号/OUTSの立ち上がり速度の低下を抑制するものであった。
それに対し図15の回路では、出力端子OUTの電圧上昇は容量素子C3を介してノードN7を昇圧させ、それがノードN4,N3,N1を経てトランジスタQ5のゲート電圧へと伝達されることにより、正帰還動作が行われている。つまり図15の回路では、出力端子OUTの電圧変化は上記正帰還動作に関与しており、出力端子OUTに接続される負荷容量が大きくなるとそれが正帰還動作に影響する。
そこで本変更例では、図15の回路に対しさらに上記の第1の変更例の技術を適用して、出力端子OUTに接続される負荷容量が、上記正帰還動作に影響しないようにする。
図16は本変更例に係るドライバ回路の回路図であり、図15の回路に対し、さらにトランジスタQ7D,Q8Dから成る帰還用プッシュプル回路を設けたものである。この帰還用プッシュプル回路と、トランジスタQ5,Q6から成る駆動用プッシュプル回路とは、同様に動作するように互いに並列に接続されている。
即ち、トランジスタQ7D,Q8Dの間の接続ノードをノードN4Dとすると、トランジスタQ7Dはハイ側電源線102とノードN4Dとの間に接続し、ゲートはトランジスタQ5のゲート共にノードN1に接続している。トランジスタQ8Dは、ノードN4Dとロー側電源線104との間に接続し、ゲートはトランジスタQ6のゲート共に入力端子INに接続している。
帰還用プッシュプル回路の出力ノードはノードN4Dである。本変更例では、容量素子C3はこのノードN4DとノードN7との間に接続され、出力端子OUTには接続しない。
ノードN4Dは出力端子OUT(ノードN6)と同様に電圧レベルが変化する。従って、図16の回路と図15の回路とでは容量素子C3の接続先が異なるものの、その動作はほぼ同じである。但し図16の回路においては、帰還用プッシュプル回路は専ら容量素子C3を用いた正帰還動作を行い、駆動用プッシュプル回路は専ら出力端子OUTに接続される負荷容量の駆動を行うように、役割分担されている。
つまり、トランジスタQ5のゲート電圧に係る正帰還動作が、出力端子OUTとは分離した帰還用プッシュプル回路の出力ノードN4Dの信号に基づいて行われる。従って本変更例によれば、第13の変更例と第3の変更例との相乗効果により、出力端子OUT(出力信号/OUTS)の立ち上げ速度をさらに高速化することができる。
なお図16の構成は、図15(第13の変更例)の回路における出力段回路110の構成を変更したものとして説明したが、本変更例の適用はそれに限定されるものではない。即ち、その他の実施の形態および変更例のドライバ回路における出力段回路110を、図16の出力段回路110に置き換えてもよい。
[第15の変更例]
図17は、実施の形態1の第15の変更例であるドライバ回路であり、第7の変更例(図9)に示した電圧発生回路60を第13の変更例(図15)のドライバ回路に適用した例である。図17に示すように当該ドライバ回路においては、出力段回路110のトランジスタQ5のドレイン、トランジスタQ11のゲートおよびドレインが、電圧発生回路60のノードN61に接続される。即ち、トランジスタQ5,Q11のドレインには、共に電圧発生回路60から略2・VH−2・Vthnの電圧が供給される。
出力段回路110のトランジスタQ5,Q6は互いに相補的に(交互に)オンし、同様にトランジスタQ11に直列接続したトランジスタQ7,Q8も互いに相補的にオンする。よって、トランジスタQ5,Q11のドレイン(ノードN61)とロー側電源線104との間には直流電流は流れない。従って出力段回路110は、出力インピーダンスが比較的高いチャージポンプ回路である電圧発生回路60をハイ側電源として用いても正常に動作することができる。
本変更例においては、出力段回路110に供給されるハイ側電源電圧が高くなるので、出力信号/OUTSおよびノードN7,N4の電圧の振幅が大きくなる。この場合も、出力信号/OUTSの立ち上がり時にノードN7,N4が昇圧され、応じて入力段回路100のノードN3,N1も昇圧されて、トランジスタQ5は非飽和領域で動作するので、出力信号/OUTSのHレベル電圧はノードN61と同じく略2・VH−2・Vthnになる。
本変更例ではトランジスタQ5,Q11のドレインの両方に電圧発生回路60の生成電圧を供給したが、それをトランジスタQ11のドレインだけに供給し、トランジスタQ5のドレインは図15と同様にハイ側電源線102に接続させたままでもよい。その場合、出力信号/OUTSのHレベル電圧は図15の場合と同じVHになるが、トランジスタQ5のゲート電圧が高くなるため出力信号/OUTSの立ち上がり速度は図15の場合よりも向上される。
また本変更例においても、電圧発生回路60に対し、繰り返し信号CLKに代えて出力信号/OUTSあるいは入力信号INSを供給してもよい。それにより、特別な繰り返し信号CLKを供給する必要がなくなるので、繰り返し信号入力端子CKおよびそれに付随する配線等を省略でき、回路の占有面積の縮小化に寄与できる。
図示は省略するが、電圧発生回路60は、さらにトランジスタQ7D,Q8Dから成る帰還用プッシュプル回路を備えた図16の回路に対しても適用可能である。即ち、図16の出力段回路110において、トランジスタQ5のドレイン並びにトランジスタQ7D,Q11のゲートおよびドレインを電圧発生回路60のノードN61に接続させてもよい。
<実施の形態2>
実施の形態2では、実施の形態1と同様の機能を有するドライバ回路を、P型トランジスタを用いて構成した本発明に係るドライバ回路について説明する。
図18は、実施の形態2に係るドライバ回路の構成を示す図である。当該ドライバ回路は、図1の回路と同様に機能する回路を、P型トランジスタにより実現した例である。即ち図18の回路は、図1の回路に対し、N型トランジスタに代えてP型トランジスタを用い、電源電圧の極性を逆にし(図1の電源線102にロー側電源電圧を供給し、電源線104にハイ側電源電圧を供給する)、また各信号の電圧極性を逆に(活性レベルをLレベル、非活性レベルをHレベルにする)したものである。なお図18において、図1のドライバ回路に示したものに対応する各要素については、それと同一の符号に「B」の添え字を付して示している。
図18のドライバ回路は、P型トランジスタのみを用いて構成されており、入力段回路100Bと出力段回路110Bとから成っている。入力段回路100Bの入力端子INBには入力信号INSBが入力され、出力段回路110Bに設けられた出力端子OUTBには、入力信号INSBの論理レベル(Hレベル、Lレベル)を反転した出力信号/OUTSBが出力される。
このドライバ回路には、ロー側電源として電圧VLB、ハイ側電源として電圧VHBが供給されている。ロー側電源電圧VLBは、各信号の電圧の基準レベルとなる基準電圧GND(=0V)と同じ電圧でも、それよりも低い負極性の電圧でもよい。またハイ側電源電圧VHBは、基準電圧GNDよりも高い正極性の電圧である。
当該ドライバ回路は、出力信号/OUTSBとして、Lレベルがロー側電源電圧VLB、Hレベルがハイ側電源電圧VHBとなる電圧信号を出力することができる。一方、入力信号INSBは、Lレベルが電圧VMB、Hレベルが電圧VHBである電圧信号とする。ここで、電圧VMBと電圧VHBとの差をVDDとする。電圧VDDは、トランジスタQ2B,Q6Bのしきい値電圧の絶対値よりもある程度大きい値であればよい。また電圧VMBは、例えば上記のロー側電源電圧VLBと同じ電圧でもよい。実使用上では、電圧VLBは、N型トランジスタを用いた場合のロー側電圧レベル(電圧VSS)と同じに設定される。
入力信号INSBのLレベル電圧VMBが出力信号/OUTSBのLレベル電圧VLBよりも高い場合、ドライバ回路は、比較的高いLレベル電圧(VMB)を有する入力信号INSBを、それよりも低いLレベル電圧(VLB)を有する出力信号/OUTSBへと変換するレベル変換回路として動作する。
以下の実施の形態では、入力信号INSBのLレベル電圧VMBは、出力信号/OUTSBのLレベル電圧VLBよりも高く、ドライバ回路がレベル変換回路としても機能しているものとして説明を行う。また簡単のため、入力信号INSのHレベル電圧はドライバ回路のハイ側電源電圧VHBと同レベルとする。またドライバ回路構成する各P型トランジスタのしきい値電圧は全て等しく、その絶対値をVthpとする。
再び図18を参照し、本実施の形態に係るドライバ回路の構成を説明する。上記のように当該ドライバ回路は、入力段回路100Bおよび出力段回路110Bから成っている。それらの各回路には、ロー側電源線102Bおよびハイ側電源線104Bから電源が供給される。ロー側電源線102Bには、ロー側電源ノードS2Bを通して電圧VLBが供給されており、ハイ側電源線104Bには、ハイ側電源ノードS1Bを通して電圧VHBが供給されている。
入力段回路100Bはブートストラップ回路であり、P型のトランジスタQ1B〜Q4Bおよび容量素子C1Bから構成される。当該入力段回路100Bにおいて、ロー側電源線102Bとハイ側電源線104Bとの間には、トランジスタQ4B,Q1B,Q2Bがこの順に直列接続している。ここで図18の如く、トランジスタQ1BとトランジスタQ2Bとの間の接続ノードをノードN1B、トランジスタQ1Bのゲートが接続するノードをノードN2B、トランジスタQ4BとトランジスタQ1Bとの間の接続ノードをノードN3Bと定義する。
即ち、トランジスタQ4Bはロー側電源線102BとノードN3Bとの間に接続し、トランジスタQ1BはノードN3BとノードN1Bとの間に接続し、トランジスタQ2BはノードN1Bとハイ側電源線104Bとの間に接続している。トランジスタQ4Bのゲートは、ロー側電源線102Bに接続される(即ちトランジスタQ4Bはダイオード接続されている)。トランジスタQ1Bのゲート(ノードN2B)とノードN1Bとの間には、フィードバック容量としての容量素子C1Bが接続され、またノードN2Bとロー側電源線102Bとの間には、ゲートがロー側電源線102Bに接続したトランジスタQ3Bが接続される(即ちトランジスタQ3Bはダイオード接続されている)。トランジスタQ2Bのゲートは当該ドライバ回路の入力ノードであり、入力信号INSBを受ける入力端子INBに接続される。入力段回路100Bの出力ノードはノードN1Bである。
トランジスタQ1B,Q2Bから成る回路は、入力端子INBを入力ノード、ノードN1Bを出力ノードとするレシオ型インバータを構成している。即ち当該インバータは、トランジスタQ1Bを負荷素子(負荷トランジスタ)、トランジスタQ2Bを駆動素子(駆動トランジスタ)としており、入力信号INSBの論理レベルを反転した信号をノードN1Bに出力する。負荷トランジスタQ1Bおよび駆動トランジスタQ2Bそれぞれのオン抵抗値は、ノードN1Bにて所定レベルの信号が得られるように適切な比率で設定される。
出力段回路110Bは、ロー側電源線102Bとハイ側電源線104Bとの間に直列接続したトランジスタQ5B,Q6Bから成るプッシュプル回路を有している。その間の接続ノードをノードN6Bとすると、トランジスタQ5Bはロー側電源線102BとノードN6Bとの間に接続し、ゲートがノードN1Bに接続している。トランジスタQ6Bは、ノードN6Bとハイ側電源線104Bとの間に接続し、ゲートが入力端子INBに接続している。ノードN6Bは、トランジスタQ5B,Q6Bから成るプッシュプル回路の出力ノードであると共に、当該ドライバ回路の出力端子OUTBとなる。
出力段回路110Bはさらに、ノードN6BとノードN3Bとの間に接続した容量素子C2Bを備えている。この容量素子C2Bは、ノードN6B(出力端子OUTB)とノードN3Bとを容量結合し、ノードN6Bの電圧レベルの変化に応じてノードN3Bの電圧レベルを変化させる。
上記したように、トランジスタQ1B,Q2Bから成るインバータの働きにより、入力信号INSBとノードN1Bの信号とは論理レベルが反転した関係になるので、ノードN1Bの信号で制御されるトランジスタQ5Bと入力信号INSBで制御されるトランジスタQ6Bとは、相補的に(交互に)オンすることとなる。トランジスタQ5B,Q6Bがそのように制御されることにより、それらから成るプッシュプル回路は直流電流を伴わない所定の動作を行うことになる。
ダイオード接続されたトランジスタQ3Bは、ノードN2Bからロー側電源線102Bへの向きを順方向とする一方向性電流駆動素子として働く。ロー側電源線102Bの電圧はVLBであるので、トランジスタQ3Bがオンしたときには、ノードN2Bは電圧VLB+Vthpに放電される(このVthpはトランジスタQ3Bのしきい値電圧の絶対値である)。ロー側電源電圧VLBは、このVLB+Vthpの絶対値がトランジスタQ1Bのしきい値電圧の絶対値よりも大きくなるように設定されている。つまりノードN2Bが電圧VLB+Vthpのとき、トランジスタQ1Bはオン状態になる。
図18の回路では、トランジスタQ3Bはロー側電源線102BとノードN2Bとの間にダイオード接続されているが、上記と同様にノードN2Bを放電してトランジスタQ1Bをオンにすることが可能な一方向性電流駆動素子として機能できればこの接続構成でなくてもよい。例えば、トランジスタQ3Bのドレインおよびゲートの接続先は、電圧VLBとは異なる電圧を供給する他の電圧源であってもよいし、また非特許文献1のFigure 1(b)ように繰り返し信号源(交流信号源)であってもよい。
トランジスタQ4Bは、ノードN3Bからロー側電源線102Bへの向きを順方向とする一方向性電流駆動素子として働き、それがオンしたときにはノードN3Bを電圧VLB+Vthpに放電する(このVthpはトランジスタQ4Bのしきい値電圧の絶対値である)。当該トランジスタQ4Bは、ノードN3Bを放電することにより、トランジスタQ1B,Q2Bから成るインバータにロー側電源を供給する。
図19は、本実施の形態のドライバ回路(図18)の動作を示す信号波形図である。図19を参照し、図18に示すドライバ回路の動作を説明する。なお、以下の説明では特に示さない限り、寄生容量およびトランジスタの電流駆動力(またはオン抵抗)に起因する各ノードの電圧レベルへの影響は無視する。
まず初期状態として、入力信号INSBがHレベル(VHB)であるとする。このときトランジスタQ2B,Q6Bはオフ状態である。ノードN2B,N3BはそれぞれトランジスタQ3B,Q4Bにより電圧VLB+Vthpに放電されており、トランジスタQ1Bはオン状態である。よってトランジスタQ1B,Q2Bから成るインバータの出力ノード(入力段回路100Bの出力ノード)N1BはLレベルである。従ってトランジスタQ5Bはオン状態であり、当該ドライバ回路の出力端子OUTB(ノードN6B)はLレベルになっている。
この初期状態から、時刻t10で入力信号INSBが電圧VMBのLレベルになると、トランジスタQ2Bがオンし、ノードN1Bの電圧レベルが上昇する。このときトランジスタQ4B,Q1Bも共にオン状態であるが、トランジスタQ4Bのオン抵抗はトランジスタQ1Bよりも充分低く設定されており、ノードN3Bの電圧レベルはほぼVLB+Vthpで維持される。
またノードN1Bの電圧レベルが上昇すると、容量素子C1Bを介した結合のためノードN2Bの電圧レベルも上昇しようとするが、トランジスタQ3Bがオン状態であるのでノードN2Bの電圧レベルはVLB+Vthpに維持される。よってトランジスタQ1Bはオン状態に維持される。
ノードN1Bの電圧レベルは、トランジスタQ1B,Q2Bのオン抵抗の比(電流駆動力の比)により決定される値となる。トランジスタQ2BはトランジスタQ1Bよりもオン抵抗が充分低く設定されており、ノードN1Bはほぼ電圧VHBのHレベルになる。つまり、入力段回路100Bの出力ノードN1Bにおけるオフセット電圧は、トランジスタQ2Bのオン抵抗をトランジスタQ1Bのオン抵抗よりも極めて小さく設定することによりほぼ0にすることが可能である。
一方、出力段回路110Bにおいては、時刻t10で入力信号INSBがLレベルになったときトランジスタQ6Bがオンし、出力端子OUTB(ノードN6B)の電圧レベルが上昇する。また上記のように入力段回路100Bの出力ノードN1BがHレベル(≒VHB)になるので、トランジスタQ5Bのゲート(ノードN1B)とソース(ノードN6B)との間の電圧がしきい値電圧を超え、トランジスタQ5Bはオフになる。その結果、出力端子OUTB(出力信号OUTS)は電圧VHBのHレベルになる。
このように出力端子OUTBの電圧レベルが上昇すると、容量素子C2Bを介する結合により、ノードN3Bの電圧レベルが上昇しようとする。しかしトランジスタQ4Bはオン状態であるので、ノードN3Bは電圧VLB+Vthpに維持される。
そして時刻t11で、入力信号INSBがLレベル(VMB)からHレベル(VHB)になると、入力段回路100BではトランジスタQ2Bがオフとなり、ノードN1Bの電荷はトランジスタQ1B,Q4Bを通して放電され、ノードN1Bのレベルが下降する。応じてトランジスタQ5Bがオンになり、出力端子OUTBの電圧レベルが下降する。
出力端子OUTBの電圧レベルが下降すると、容量素子C2Bを介する結合により、ノードN3Bのレベルが下降する。トランジスタQ4Bはダイオード接続されているので、ノードN3Bの電圧がVLB+Vthpよりも低下するとオフになる。またトランジスタQ1Bはオン状態、トランジスタQ2Bはオフ状態であるため、ノードN3Bの電圧レベルの下降に伴いノードN1Bのレベルがさらに下降する。
このように、トランジスタQ5Bがオンしたことによる出力端子OUTBの電圧レベルの低下が、当該トランジスタQ5Bのゲート(ノードN1B)へとフィードバックされる。この正帰還動作により、ノードN1Bは、トランジスタQ5Bを非飽和動作させる電圧レベルに達し、出力端子OUTBは電圧VLBのLレベルになる。つまり出力信号/OUTSBのLレベルはトランジスタQ5Bのしきい値電圧分の損失を伴わない。
なお、ノードN1Bの電圧レベルが下降したとき、容量素子C1Bを介する結合により当該トランジスタQ1Bのゲート(ノードN2B)の電圧レベルも下降する。トランジスタQ3Bは、ダイオード接続しているためノードN2Bの電圧レベルがVLB+Vthpから低下するとオフになるので、ノードN2Bの電圧レベルは更に低下する。
このようにトランジスタQ1BがノードN1Bを放電することによる当該ノードN1Bの電圧レベルの低下は、トランジスタQ1Bのゲート電圧へとフィードバックされる。つまり入力段回路100Bはブートストラップ回路として動作する。よってノードN1Bの電圧レベルが低下してもトランジスタQ1Bは非飽和領域でオンに維持され、上記のトランジスタQ5Bのゲート電圧に係る正帰還動作が滞りなく行われる。
以上のように、当該ドライバ回路におけるトランジスタQ5Bのゲート電圧に係る正帰還ループは、ノードN1Bの電圧レベル低下→トランジスタQ5Bを流れる電流の増大→出力端子OUTBの電圧レベル低下→ノードN3Bの電圧レベル低下→トランジスタQ1Bを流れる電流の増大→ノードN1Bのレベル低下…というループとなる。
その正帰還動作をより詳細に説明する。まず図19の時刻t11の直前においては、トランジスタQ1Bのゲート(ノードN2B)およびノードN3Bの電圧レベルは共にVLB+Vthpであり、ノードN1Bはほぼ電圧VHBのHレベル、出力端子OUTBは電圧VHBのHレベルである。
時刻t11で、トランジスタQ2B,Q6Bがオフすると、ノードN1Bのレベルが低下する。このノードN1Bの電圧変化は容量素子C1Bを介してノードN2Bに結合され、ノードN2BのレベルがVLB+Vthpから低下する。ノードN2Bのレベル低下はトランジスタQ1Bを非飽和領域動作に向かわせ、その駆動電流をより増大させる。他方、ノードN1Bの電圧レベルの低下はトランジスタQ5Bをオンし、トランジスタQ5Bを流れる電流によって出力端子OUTBのレベルが低下する。
この出力端子OUTBの電圧レベルの変化は容量素子C2Bを介してノードN3Bに結合され、ノードN3BのレベルがVLB+Vthpから低下する。ノードN3BすなわちトランジスタQ1Bのドレインの電圧が低下することで、非飽和領域で動作しているトランジスタQ1Bを流れる電流が増大し、ノードN1Bの電圧レベルがさらに低下する。このノードN1Bのレベル低下はさらにトランジスタQ5Bのゲートの電圧レベルを下げ、トランジスタQ5Bを流れる電流がより増大し、出力端子OUTBのレベルがさらに低下する。
この正帰還動作が繰り返されてトランジスタQ5Bのゲート(ノードN1B)の電圧レベルが充分に低下し、トランジスタQ5Bは非飽和領域で動作するようになる。それにより出力信号/OUTSBのLレベル電圧の最終的な値は、トランジスタQ5Bのしきい値電圧分の損失を伴わずに電圧VLBとなる。
以上のように本実施の形態に係るドライバ回路によれば、出力段回路110Bにおいて、トランジスタQ5Bは、入力段回路100BのノードN1Bの電圧レベル低下に従ってオンになり出力端子OUTBの電圧レベルを低下させる。トランジスタQ5Bは、出力端子OUTBの電圧低下分を自身のゲート電圧に正帰還させることにより非飽和領域で動作する。よって出力端子OUTB(出力信号/OUTSB)をLレベルにする際、トランジスタQ5Bのしきい値電圧分の損失を伴わずに電圧VLBにまで低下させることができ、且つその立ち下がり速度は高速である。
またそのとき入力段回路100BのトランジスタQ1Bも、ノードN1Bの電圧レベルを低下させるとき、その電圧低下分を自身のゲートに正帰還させることで非飽和領域で動作する(ブートストラップ作用)。よってノードN1Bの電圧レベルはトランジスタQ1Bのしきい値電圧分の損失を伴わず、且つその立ち下がり速度は高速である。つまり、入力段回路100BはトランジスタQ5Bのゲート電圧を高速に低下させることで、出力信号/OUTSBの立ち下がり速度の高速化に寄与している。
[変更例]
以上では、図1の回路と同様の機能を有するドライバ回路をP型トランジスタを用いて構成した例を示したが、本実施の形態は、実施の形態1の各変更例の回路(図3〜図17)の回路にも適用することができる。
即ち、図3〜図17の回路に対し、N型トランジスタに代えてP型トランジスタを用い、電源電圧の極性を逆にし(各図の電源線102にロー側電源電圧VLBを供給し、電源線104にハイ側電源電圧VHBを供給する)、また各信号の電圧極性を逆に(活性レベルをLレベル、非活性レベルをHレベルにする)すれば、それらの回路と同様の機能を有するドライバ回路をP型トランジスタを用いて構成することができる(図示は省略する)。
<実施の形態3>
実施の形態1のドライバ回路においては、出力端子OUTの放電(出力信号/OUTSの立ち下げ)を行うトランジスタQ6の駆動は、入力信号INSによって行われていた。しかし当該ドライバ回路をレベル変換回路として使用するケースでは、入力信号INSの振幅が小さい場合も考えられ、その場合にはトランジスタQ6のオン抵抗を充分に小さくできずに出力端子OUTの放電速度(出力信号/OUTSの立ち下がり速度)が遅くなることが懸念される。
入力信号INSの振幅が小さい場合でも、出力端子OUTの放電速度を高速に保たせるには、トランジスタQ6のゲート幅を大きくする必要がある。しかしトランジスタQ6のゲート幅を大きくすると回路の占有面積の増大を伴う。さらにトランジスタQ6のゲート容量が大きくなるので、入力端子INの入力容量値が大きくなり、入力信号INSの生成回路の駆動能力が小さい場合には入力信号INS自体の立ち上がり速度が遅くなり、結果として動作の高速化が妨げられる結果となることも考えられる。
そこで実施の形態3では、回路の占有面積の増大を抑えつつ、入力信号INSの振幅が小さい場合でも出力端子OUTの充放電を高速に行うことが可能なドライバ回路を提供する。
図20は、実施の形態3に係るドライバ回路の構成を示す回路図である。同図の如く、当該ドライバ回路は、2つの入力段回路200X,200Y、昇圧プッシュプル回路220および出力段回路210から構成されている。
入力段回路200X,200Yのそれぞれは、実施の形態1およびその変更例に係るドライバ回路と同じ構成を有するものである。図20では入力段回路200X,200Yがそれぞれ、図1のドライバ回路の構成を有している例を示しているが、もちろん上記の何れの変更例のドライバ回路を適用してもよい。なお図20の入力段回路200X,200Yにおいて、図1のドライバ回路に示したものに対応する各要素については、それと同一の符号に「X」又は「Y」の添え字を付して示している。
本実施の形態では、入力信号INSは入力段回路200Yの入力ノードに入力され、一方入力段回路200Xの入力ノードには入力段回路200YのノードN6Yの信号(第1内部信号)が入力される。つまり、入力段回路200Yは入力信号INSにより駆動され、入力段回路200Xは入力段回路200YのノードN6Yの信号により駆動される。
昇圧プッシュプル回路220は、図11の昇圧プッシュプル回路120または図12の多段昇圧プッシュプル回路120aと同様のものである。昇圧プッシュプル回路220が図11の昇圧プッシュプル回路120である場合には、容量素子C1aは省略される。また昇圧プッシュプル回路220が多段昇圧プッシュプル回路120aの場合には、最前段の容量素子C1a1が省略される。図20では、昇圧プッシュプル回路220が図11の昇圧プッシュプル回路120のように一つの単位回路から成る例を示している。
昇圧プッシュプル回路220のノードN1aを充電するトランジスタQ1aのゲートには、入力段回路200YのノードN1Yの信号が入力され、当該ノードN1aを放電するトランジスタQ2aのゲートには入力段回路200XのノードN6Xの信号(第2内部信号)が入力される。
また出力段回路210は、実施の形態1およびその変更例に係るドライバ回路の出力段回路110と同じ構成を有するものである。図20では出力段回路210が図3の出力段回路110の構成を有している例を示しているが、もちろん上記の何れの変更例に係る出力段回路110を適用してもよい。
出力段回路210のノードN4および出力端子OUT(ノードN6)をそれぞれ充電するトランジスタQ7,Q5のゲートには共に昇圧プッシュプル回路220の出力ノードN1aの信号が入力され、それらノードN4および出力端子OUTをそれぞれ放電するトランジスタQ8,Q6のゲートには共に入力段回路200XのノードN6Xの信号が入力される。
実施の形態1のドライバ回路は、その入力ノードの信号の論理レベルを反転した信号を出力するインバータとして機能するので、図20の入力段回路200YのノードN1Y,N6Yの信号は入力信号INSとは逆の論理レベルになり、入力段回路200XのノードN6Xの信号は入力信号INSと同じ論理レベルになる。従って、昇圧プッシュプル回路220および出力段回路210の論理的な動作は、それぞれ実施の形態1のドライバ回路における昇圧プッシュプル回路120(または多段昇圧プッシュプル回路120a)および出力段回路110と同じになる。従って、出力端子OUTからは実施の形態1のケースと同様に入力信号INSの論理レベルを反転した出力信号/OUTSが出力される。
ここで、実施の形態1のドライバ回路は、Hレベル電圧がVDDの信号を、Hレベル電圧がVHの信号に変換するレベル変換回路としても機能する。従って図20の入力段回路200YのノードN1Y,N6Yの信号、および入力段回路200XのノードN6Xの信号は、入力信号INSの振幅に関わらず、それぞれHレベル電圧がVH、Lレベル電圧がVSSとなる。また実施の形態1で説明した所定の正帰還動作により、それらノードN1Y,N6Y,N6Xの信号の立ち上がり速度は高速である。
特に図20のドライバ回路では、出力端子OUTの放電(出力信号/OUTSの立ち下げ)を行うトランジスタQ6の駆動は、入力信号INSではなく、そのHレベル電圧をVH、Lレベル電圧をVSSに変換した信号(入力段回路200XのノードN6Xの信号)により行われる。従って、入力信号INSの振幅が小さい場合でも、トランジスタQ6のゲート・ソース間電圧を大きくしてオン抵抗を充分に小さくでき、出力端子OUTの放電(出力信号/OUTSの立ち下げ)を高速に行うことができる。つまりトランジスタQ6のゲート幅を大きくせずとも、入力信号INSの振幅が小さい場合における出力端子OUTの放電速度の低下を防止できるので、回路の占有面積の縮小化に寄与できる。
もちろん出力端子OUTの充電速度(出力信号/OUTSの立ち上がり速度)は、実施の形態1で説明したとおり高速である。本実施の形態では、それに加えてその放電速度も高速になるため、実施の形態1のドライバ回路よりもさらなる動作の高速化が可能である。
[変更例]
図20では、実施の形態1と同じように、入力信号(INS)の論理レベルを反転した(逆相の)出力信号(/OUTS)を生成するドライバ回路を示したが、本実施の形態は、入力信号と同じ論理レベルをとる(同相の)出力信号を生成するものに対しても適用可能である。ここではそのような変更例を示す。
図21は、実施の形態3の第1の変更例に係るドライバ回路の構成を示す回路図である。当該ドライバ回路は、図20と同様に2つの入力段回路200X,200Y、昇圧プッシュプル回路220および出力段回路210から構成されている。
但し、本実施の形態では、入力信号INSは入力段回路200Xの入力ノードに入力され、入力段回路200Yの入力ノードには入力段回路200XのノードN6Xの信号が入力される。つまり本変更例では、入力段回路200Xが入力信号INSにより駆動され、入力段回路200Yが入力段回路200XのノードN6Xの信号により駆動される。即ち入力段回路200X,200Yにおいては、駆動する側とされる側が図20の場合とは入れ替わっている。即ち本変更例では、ノードN6Xの信号が第1内部信号となり、ノードN6Yの信号が第2内部信号となる。
但し、入力段回路200X,200Yと昇圧プッシュプル回路220および出力段回路210との接続関係は図20と同様である。即ち、昇圧プッシュプル回路220のノードN1aを充電するトランジスタQ1aのゲートには入力段回路200YのノードN1Yの信号が入力され、当該ノードN1aを放電するトランジスタQ2aのゲートには入力段回路200XのノードN6Xの信号が入力される。また出力段回路210のノードN4および出力端子OUT(ノードN6)をそれぞれ放電するトランジスタQ8,Q6のゲートには共に入力段回路200XのノードN6Xの信号が入力される。
図21の構成によれば、入力段回路200YのノードN1Yの信号は入力信号INSとは同じ論理レベルになり、入力段回路200XのノードN6Xの信号は入力信号INSと逆の論理レベルになる。従って、昇圧プッシュプル回路220および出力段回路210の論理的な動作は、それぞれ図20の場合とは逆になる。よって、出力端子OUTからは入力信号INSと同じ論理レベルをとる出力信号OUTSが出力される。
図21のドライバ回路においても、出力端子OUTの放電(出力信号OUTSの立ち下げ)を行うトランジスタQ6の駆動は、入力信号INSではなく、そのHレベル電圧をVH、Lレベル電圧をVSSに変換した信号(入力段回路200XのノードN6Xの信号)により行われる。従って、入力信号INSの振幅が小さい場合でも、出力端子OUTの放電を高速に行うことができる。つまりトランジスタQ6のゲート幅を大きくせずとも、入力信号INSの振幅が小さい場合における出力端子OUTの放電速度の低下を防止できるので、回路の占有面積の縮小化に寄与できる。
もちろん出力端子OUTの充電速度(出力信号OUTSの立ち上がり速度)は、実施の形態1で説明したとおり高速である。本実施の形態では、それに加えてその放電速度も高速になるため、実施の形態1のドライバ回路よりもさらなる動作の高速化が可能である。
<実施の形態4>
本実施の形態に係るドライバ回路も、上記の実施の形態2を適用して、P型トランジスタのみを用いて構成することができる。即ち、本実施の形態の回路に対し、N型トランジスタに代えてP型トランジスタを用い、電源電圧の極性を逆にし、また各信号の電圧極性を逆に(活性レベルをLレベル、非活性レベルをHレベルにする)すればよい。
例えば図20に対応するドライバ回路をP型トランジスタを用いて構成すると図22のドライバ回路になる。また例えば図21に対応するドライバ回路をP型トランジスタを用いて構成すると図23のドライバ回路になる。なお、図22および図23において、および図22のドライバ回路に示したものに対応する各要素については、それと同一の符号に「B」の添え字を付して示している。
<実施の形態5>
上記の各実施の形態にて説明したドライバ回路は、高い駆動能力を有するため負荷容量を高速で駆動可能であるが、ハイ側電源とロー側電源との間に直流的な電流(貫通電流)が流れるレシオ型回路を含んでいる。レシオ型回路において、それを構成するトランジスタの駆動能力を高めればより大きな負荷容量を高速で駆動可能になるが、トランジスタのオン抵抗が低くなる分、貫通電流が増大して消費電力が大きくなるという問題を伴う。従って消費電力低減の観点から、レシオ型回路自体の駆動能力を高めるには限界がある。
そのためレシオ型回路を含むドライバ回路にあっては、実施の形態1〜3のように、負荷容量をレシオ型回路で直接駆動させず、低消費電力且つ高駆動能力な出力段回路を介して負荷容量を駆動させることが好ましい。本実施の形態では、より消費電力を抑えることができる出力段回路に本発明を適用した例を示す。
図24は、実施の形態5に係るドライバ回路の構成を示す図である。当該ドライバ回路は、2つの入力段回路200X,200Yと、出力段回路310とから構成されている。入力段回路200X,200Yのそれぞれは、実施の形態3のものと同様である。即ちそれらは実施の形態1およびその変更例に係るドライバ回路と同じ構成を有するものである。
本実施の形態では、入力信号INSは入力段回路200Xの入力ノードに入力され、入力段回路200Yの入力ノードには入力段回路200XのノードN6Xの信号(第1内部信号)が入力される。つまり、入力段回路200Xは入力信号INSにより駆動され、入力段回路200Yは入力段回路200XのノードN6Xの信号により駆動される。
入力段回路200X,200Yは、それぞれその入力ノードの信号の論理レベルを反転した信号を出力するインバータとして機能するので、図24の入力段回路200Xの出力信号(ノードN6Xの信号)は入力信号INSとは逆の論理レベルになり、入力段回路200Yの出力信号(ノードN6Yの信号(第2内部信号))はさらにその逆の論理レベルすなわち入力信号INSと同じ論理レベルになる。但し、入力段回路200Yにおける信号遅延のため、入力段回路200Yの出力信号のレベル変化は、入力段回路200Xのレベル変化から僅かに遅れて起こる。
出力段回路310は、低消費電力且つ高駆動能力なレシオレス型のドライバ回路であり、これと同様の回路が米国特許第3898479号明細書の図2に開示されている。より詳細には、同図2のトランジスタQ13〜Q15および容量素子54の部分(当該部分はブートストラップ型回路の入力段回路である)を除く回路である。
出力段回路310は、N型のトランジスタQ13〜Q20および容量素子C5から成っている。トランジスタQ13,Q14は、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列に接続している。トランジスタQ13,Q14間の接続ノードをノードN8とすると、ハイ側電源線102とノードN8との間に接続するトランジスタQ13のゲートは、入力段回路200XのノードN6Xに接続される。またノードN8とロー側電源線104との間に接続するトランジスタQ14のゲートは、当該ドライバ回路の出力端子OUT(ノードN13)に接続される。即ち、トランジスタQ13は、ノードN6Xの電圧レベル(入力段回路200Xの出力信号)に従ってノードN8をハイ側電源線102からの電流により充電するものであり、トランジスタQ14は、出力端子OUTの電圧レベル(出力信号OUTS)に従ってノードN8の電荷をロー側電源線104へと放電するものである。
トランジスタQ17,Q18も、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列に接続している。トランジスタQ17,Q18間の接続ノードをノードN10とすると、ハイ側電源線102とノードN10との間に接続するトランジスタQ17のゲートは、入力段回路200YのノードN6Yに接続される。即ち、トランジスタQ17は、ノードN6Yの電圧レベル(入力段回路200Yの出力信号)に従ってノードN10をハイ側電源線102からの電流により充電するものである。一方ノードN10とロー側電源線104との間に接続するトランジスタQ18のゲートは、入力段回路200XのノードN6Xに接続される。即ちトランジスタQ18は、ノードN6Xの電圧レベルに従ってノードN10の電荷をロー側電源線104へと放電するものである。
同様にトランジスタQ15,Q16も、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列に接続している。トランジスタQ15,Q16間の接続ノードをノードN9とすると、ハイ側電源線102とノードN9との間に接続するトランジスタQ15のゲートはノードN10に接続され、ノードN9とロー側電源線104との間に接続するトランジスタQ16のゲートはノードN8に接続される。また容量素子C5は、ノードN9とノードN10との間に接続される。即ち、トランジスタQ15は、ノードN10の電圧レベルに従ってノードN9をハイ側電源線102からの電流により充電するものであり、トランジスタQ16は、ノードN8の電圧レベルに従ってノードN9の電荷をロー側電源線104へと放電するものである。
さらにトランジスタQ19,Q20も、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列に接続している。トランジスタQ19,Q20間の接続ノードN13が、当該ドライバ回路の出力端子OUTであり、そこから出力信号OUTSが出力される。ハイ側電源線102と出力端子OUTとの間に接続するトランジスタQ19のゲートはノードN10に接続され、出力端子OUTとロー側電源線104との間に接続するトランジスタQ20のゲートは、入力段回路200Xの出力ノードN6Xに接続される。即ち、トランジスタQ19は、ノードN10の電圧レベルに従って出力端子OUTをハイ側電源線102からの電流により充電するものであり、トランジスタQ20は、ノードN6Xの電圧レベルに従ってノードN9の電荷をロー側電源線104へと放電するものである。
出力段回路310においては、以下に詳細にその動作を説明するように、各ノードの電圧変化の遅延を利用して、ハイ側電源線102からロー側電源線104への貫通電流経路を遮断しており、それにより消費電流を抑制している。また、この出力段回路310の動作によって、出力信号OUTSは正確に電圧VHおよびVSSの間で変化するようになる。
図25は、本実施の形態に係るドライバ回路(図24)の動作を示す信号波形図である。以下、図25を参照して、当該ドライバ回路の動作について説明する。なお入力段回路200X,200Yの動作は、実施の形態1のドライバ回路(図1)と同じであるのでここでの詳細な説明は省略する。
まず初期状態として、入力端子INに供給される入力信号INSが電圧VSSのLレベルである状態を想定する。入力段回路200XのノードN6XはHレベル(VH)であり、入力段回路200YのノードN6YはLレベル(VSS)である。そのため出力段回路310のトランジスタQ13,Q18,Q20はオン状態であり、トランジスタQ17はオフ状態である。よってノードN10はLレベル(VSS)であり、トランジスタQ15,Q19はオフ状態である。故に出力端子OUTはLレベル(VSS)であり、トランジスタQ14はオフ状態である。従ってノードN8はHレベル(VH−Vthn)であり、トランジスタQ16はオン状態なのでノードN9はLレベル(VSS)である。
この初期状態から、入力信号INSが電圧VDDのHレベルに変化すると、入力段回路200XのノードN6Xは電圧VSSのLレベルになる。ノードN6Xの信号は入力段回路200Yに入力されているので、ノードN6XがLレベルになるのに追随して、入力段回路200YのノードN6Yは電圧VHのHレベルになる。
すると出力段回路310においては、以下の動作が行われる。まず入力段回路200XのノードN6XがLレベル(VSS)になったときに、トランジスタQ13,Q18,Q20がオフになる。この時点では出力信号OUTはまだLレベル(VSS)であるので、トランジスタQ14もオフ状態にある。よってトランジスタQ13がオフになってもノードN8はフローティング状態で、電圧VH−VthnのHレベルに維持される。
また入力段回路200YのノードN6YがHレベル(VH)になるので、トランジスタQ17がオンになり、ノードN10が充電されてその電圧レベルが上昇する。上記のようにノードN6Yの電圧変化はノードN6Xの電圧変化に応じて起こるため、このノードN10の充電の際には、トランジスタQ17がオンするよりも先にトランジスタQ18がオフになる。それにより、このときトランジスタQ17,Q18を経路とする貫通電流の発生は防止されている。
ノードN10は容量素子C5を介してノードN9と容量結合しているが、この時点ではノードN8はHレベルに維持されておりトランジスタQ16はオン状態であるので、ノードN10の電圧レベルが上昇してもノードN9はほぼ電圧VSSでLレベルに維持される。またノードN10の充電が進み、ノードN10,N9間の電圧がトランジスタQ15のしきい値電圧を超えるとトランジスタQ15がオンになるが、トランジスタQ15はトランジスタQ16よりもオン抵抗が充分大きく設定されており、このときもノードN9はほぼ電圧VSSでLレベルに維持される。その結果ノードN10は電圧VH−VthnのHレベルになる。
ノードN10がHレベル(VH−Vthn)になるとトランジスタQ19がオンになり、出力端子OUTは充電され、その電圧レベルが上昇する。この出力端子OUTの充電時においても、トランジスタQ19がオンするより前に、トランジスタQ20がオフになっているので、トランジスタQ19,Q20を経路とする貫通電流の発生は防止されている。
出力端子OUTの充電が進むと、トランジスタQ14がオンになり、ノードN8が放電されてLレベル(VSS)になる。応じて、トランジスタQ16がオフになるので、ノードN9はトランジスタQ15を通して充電され、電圧レベルが上昇する。このノードN9の電圧レベルの上昇は、容量素子C5を介してノードN10に伝達されるので、ノードN10の電圧レベルも上昇する。ノードN10の電圧レベルが上昇するとトランジスタQ17はオフ状態になり、ノードN10はフローティング状態になるので、ノードN10の電圧レベルは更に上昇し、電圧VHよりも高い電圧VH+ΔVAになる(ΔVAは、ノードN9の電圧変化量および、ノードN10に付随する寄生容量と容量素子C5の容量値との比によって決まる)。
このようにトランジスタQ13〜Q16から成る回路は、トランジスタQ19がオンしして出力信号OUTSが活性化するときに、ノードN9の電圧レベルを上昇させることで、ノードN10の電圧レベルを上昇させる。これによりトランジスタQ19のゲート・ソース間電圧が昇圧される。つまりトランジスタQ13〜Q16から成る回路は、出力信号OUTSに基づいて動作し、出力信号OUTSの活性化時にトランジスタQ19のゲート・ソース間電圧を高める昇圧回路を構成している。
以上のように、出力段回路310では、トランジスタQ19が出力端子OUTを充電することで当該出力端子OUTの電圧レベルが上昇すると、その電圧上昇がノードN10(トランジスタQ19のゲート)にフィードバックされるブートストラップ効果が得られる。それによりノードN10の電圧レベルが上昇することで、トランジスタQ19は電流駆動力が高くなり、且つ非飽和動作する。従って、出力端子OUTは高速に充電されて電圧VHのHレベルになる。
なお、このときトランジスタQ15も非飽和動作するため、ノードN9の電圧レベルはVHになる。上記のように、トランジスタQ15はノードN10が充電されたときにオンになり、トランジスタQ16はその後にノードN8が放電されることでオフになる。つまりトランジスタQ16がオフするよりも先に、トランジスタQ15がオンになるので、その間はトランジスタQ15,Q16を通して貫通電流が流れる。但し、トランジスタQ15,Q16の電流駆動力を充分に小さくすれば、消費電流の増大は防止できる。
またその貫通電流が生じる期間は、トランジスタQ15と共にトランジスタQ19がオンしてから出力端子OUTが充電されてHレベルになるまでの短い期間に過ぎない。トランジスタQ19の電流駆動力が大きいほどその期間を短くでき、当該貫通電流による消費電流を小さくできる。特に出力端子OUTにかかる負荷容量が大きい場合には、出力端子OUTの充電に時間がかかるのを防止するために、トランジスタQ19の電流駆動力を充分大きく設定しておくことが望ましい。出力段回路310はレシオレス型の回路であり、定常状態では貫通電流が生じないので、トランジスタQ19の電流駆動力を大きく設定しても定常状態における消費電力の増大は伴わない。
再び図24および図25を参照し、入力信号INSが、Hレベル(VDD)からLレベル(GND)に変化すると、入力段回路200XのノードN6Xは電圧VHのHレベルになる。またそれに応じて入力段回路200YのノードN6YはLレベル(VSS)になる。
このとき出力段回路310では、ノードN6XがHレベルになったことでトランジスタQ18,Q20がオンし、またノードN6YがLレベルになったことでトランジスタQ17がオフになる。よってノードN10および出力端子OUTが放電される。ノードN10がLレベルになるときトランジスタQ19,Q15はオフになるので、出力信号OUTSは電圧VSSのLレベルになる。
またトランジスタQ13はノードN6XがHレベルになった時点で既にオンしているので、出力端子OUTがLレベルになりトランジスタQ14がオフになると、ノードN8が充電されて電圧VH−VthnのHレベルになる。応じてトランジスタQ16がオンし、ノードN9は電圧VSSのLレベルになる。
このノードN8の充電の際には、トランジスタQ14がオフより先にトランジスタQ13がオンしているため、トランジスタQ13がオンしてトランジスタQ14がオフするまでの間は、トランジスタQ13,Q14を通して貫通電流が流れる。しかし出力信号OUTは高速で放電されてLレベル(VSS)になるため、その期間はごく短期間であり貫通電流の電流量は僅かである。またノードN9の放電に際しては、トランジスタQ16がオンするより先にトランジスタQ15がオフになるので、トランジスタQ15,Q16を通しての貫通電流は生じない。
以上の動作により、ドライバ回路は上記の初期状態に戻る。その後は、入力信号INSのレベル変化に応じて、上で説明した動作が繰り返される。
なお定常状態においては、この出力段回路310においてハイ側電源線102からロー側電源線104への貫通電流の経路は存在しない。そのためトランジスタQ19,Q20の駆動能力を大きく設定することができ、そうすることで出力端子OUTの出力負荷容量が大きい場合でも、高速に出力端子OUTを充放電して出力信号OUTSのレベルを高速に変化させることができる。
図24の回路においては、入力段回路200XはトランジスタQ2Y,Q6Y,Q13,Q18,Q20を駆動し、ドライバ段200YはトランジスタQ17を駆動する。通常、これら各トランジスタのゲート容量値は、出力端子OUTに接続される負荷容量の容量値に比べて桁違いに小さいので、入力段回路200X,200Y個々の駆動能力は、出力段回路310の駆動能力に対して桁違いに小さくてよい。つまり本実施の形態では、レシオ型回路を含む入力段回路200X,200Yの消費電力を、実施の形態1のドライバ回路よりも極めて小さく設定することが可能である。
このように本実施の形態のドライバ回路においては、実施の形態1のドライバ回路よりも極めて低消費電力な入力段回路200X,200Yの出力信号(ノードN6X,6Yの信号)に基づいて、定常状態での貫通電流が生じない低消費電力なレシオレス型のブートストラップ回路である出力段回路310を駆動させて出力信号OUTSを生成している。出力段回路310は定常状態での貫通電流が生じないので、貫通電流を抑えるために駆動電力が制限されることがなく、その駆動能力を高く設定することができる。よって、低消費電力且つ高駆動能力のドライバ回路を実現できる。
[第1の変更例]
図26は、実施の形態5の第1の変更例に係るドライバ回路の回路図である。当該ドライバ回路は、図24の回路に対し、トランジスタQ21〜Q24で構成される遅延回路を出力段回路310に設けたものである。本変更例ではこの遅延回路が、出力信号OUTSの活性化時にトランジスタQ19のゲート・ソース間電圧を高める昇圧回路として機能する。
上記したように図24の回路では、トランジスタQ19による出力端子OUTの充電(出力信号OUTSの立ち上げ)の際、ノードN10(トランジスタQ19のゲート)がHレベル(VH−Vthn)になった後に、遅れてノードN9の電圧レベルが上昇する。このとき容量素子C5を介するノードN9,N10間の結合により、ノードN10のHレベル電圧が昇圧されて充分に高い電圧レベル(図25に示す電圧VH+ΔVA)になり、トランジスタQ19が非飽和領域で動作するようになる。つまりノードN9の電圧レベルの立ち上がりとノードN10の電圧レベルの立ち上がりとの間に、ある程度の遅延時間を確保する必要がある。
図24の回路では、上記遅延時間を確保するために、出力信号OUTSがノードN10(トランジスタQ19のゲート)の電圧レベルに遅れて立ち上がることを利用している。即ち図24の回路では、ノードN10の電圧レベルがHレベルになった後に立ち上がる出力信号OUTSを用いてトランジスタQ14をオンにし、それによりトランジスタQ16をオフにしてノードN9の電圧レベルを立ち上げている。
それに対し図26の回路では、上記遅延時間をトランジスタQ21〜Q24で構成される遅延回路によって作る。トランジスタQ21,Q22はハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列接続されている。その間の接続ノードをノードN11とすると、ハイ側電源線102とノードN11との間のトランジスタQ21のゲートは入力段回路200YのノードN6Yに接続され、ノードN11とロー側電源線104との間のトランジスタQ22のゲートは入力段回路200XのノードN6Xに接続される。
同様にトランジスタQ23,Q24もハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列接続されている。その間の接続ノードをノードN12とすると、ハイ側電源線102とノードN11との間のトランジスタQ21のゲートはノードN11に接続され、ノードN11とロー側電源線104との間のトランジスタQ22のゲートは入力段回路200XのノードN6Xに接続される。そして本変更例では、トランジスタQ14のゲートを当該遅延回路の出力ノードであるノードN12に接続させる。
遅延回路では、入力段回路200YのノードN6Yの信号が立ち上がると(このときトランジスタQ22,Q24はオフ状態である)、トランジスタQ21がオンしてノードN11がHレベルになり、それに応じてトランジスタQ23がオンしてノードN12がHレベルになる。つまりノードN6Yの信号がHレベルになってからノードN11,N12の充電に要する時間だけ遅れたタイミングで、ノードN12がHレベルになる。ノードN12がHレベルになるとトランジスタQ14がオンになり、それによりトランジスタQ16がオフしてノードN9の電圧レベルが立ち上がる。
このように遅延回路は、ノードN6Yの立ち上がりから一定の時間だけ遅らせてトランジスタQ14をオンにする。その結果、図24の回路と同様に、出力段回路310のノードN9の電圧レベルの立ち上がりとノードN10の電圧レベルの立ち上がりとの間に、ある程度の遅延時間が確保される。従って、図27のドライバ回路も図24の回路と同様に動作し、同様の効果を得ることができる。
また図24の回路では、出力端子OUTに接続される負荷容量の影響を受けて、出力信号OUTSの立ち上がり速度が変化する場合があり、それによってノードN10の電圧レベルの立ち上がりとノードN9の電圧レベルの立ち上がりとの間の遅延時間が変動することが考えられる。しかし図26の回路では、その遅延時間は負荷容量の影響を受けることなく、遅延回路により一定に保たれる。従って、負荷容量の状態によって出力信号OUTSの立ち上がり速度に変動が生じて動作が不安定になることが防止される。つまり安定して高速な動作が可能になる。
[第2の変更例]
図27は、実施の形態5の第2の変更例に係るドライバ回路の回路図である。当該ドライバ回路は、図24の回路に対し、出力段回路310のトランジスタQ15のゲートとトランジスタQ19のゲートとを分離したものである。つまりトランジスタQ19のゲート(ノードN10)を充放電するトランジスタQ17,Q18とは別に、トランジスタQ15のゲート(ノードN10D)を充放電するトランジスタQ17D,Q18Dを設けたものである。またノードN9,N10間の容量素子C5とは別に、ノードN9とノードN10Dとの間に容量素子C5Dが接続される。
トランジスタQ17D,Q18Dは、ハイ側電源線102とロー側電源線104との間に直列に接続される。トランジスタQ17DのゲートはトランジスタQ17のゲートと共に入力段回路200YのノードN6Yに接続され、トランジスタQ18DのゲートはトランジスタQ18のゲートと共に入力段回路200XのノードN6Xに接続される。つまりトランジスタQ17D,Q18Dは、それぞれトランジスタQ17,Q18と同様に動作する。従って図27の回路では、図24の回路とはトランジスタQ15のゲート電圧を制御する回路が異なるものの、その動作はほぼ同じである。
図27の回路では、図24の回路に比較して、トランジスタQ19のゲート容量の分だけトランジスタQ15のゲートノードの寄生容量が小さくなる。そのためノードN9の充電時には、容量素子C5Dを介する結合により、トランジスタQ15のゲート電圧がより高く上昇される。よってそのときのトランジスタQ15のオン抵抗はより小さくなり、ノードN9の電圧レベルの立ち上がりが高速化される。その結果、容量素子C5を介する結合によるノードN10(トランジスタQ19のゲート)の昇圧速度が速くなり、出力信号OUTSの立ち上がり速度が高速化されるという効果が得られる。但し、図24の回路よりも占有面積が増大することに留意すべきである。
[第3の変更例]
図24から図27では、入力信号(INS)の同じ論理レベルの(同相の)出力信号(OUTS)を生成するドライバ回路を示したが、本実施の形態は、実施の形態1と同じように入力信号(INS)の論理レベルを反転した(逆相の)出力信号(/OUTS)を生成するドライバ回路にも適用可能である。ここではそのような変更例を示す。
図28は、実施の形態5の第3の変更例に係るドライバ回路の構成を示す回路図である。当該ドライバ回路では、入力信号INSは入力段回路200Yの入力ノードに入力され、入力段回路200Xの入力ノードには入力段回路200YのノードN6Yの信号が入力される。つまり本変更例では、入力段回路200Yが入力信号INSにより駆動され、入力段回路200Xが入力段回路200YのノードN6Yの信号により駆動される。即ち入力段回路200X,200Yにおいては、駆動する側とされる側が図24の場合とは入れ替わっている。即ち本変更例では、ノードN6Yの信号が第1内部信号となり、ノードN6Xの信号が第2内部信号となる。
但し、入力段回路200X,200Yと出力段回路310との接続関係は図24と同様である。即ち、出力段回路310のトランジスタQ13,Q18,Q20のゲートには入力段回路200XのノードN6Xの信号が入力され、トランジスタQ17のゲートにはトランジスタQ14のゲートには入力段回路200XのノードN1Xの信号が入力される。
図28の構成によれば、入力段回路200YのノードN1Yの信号は入力信号INSとは逆の論理レベルになり、入力段回路200XのノードN6Xの信号は入力信号INSと同じ論理レベルになる。従って、出力段回路310の論理的な動作は、それぞれ図24の場合とは逆になる。よって、出力端子OUTからは入力信号INSと逆の論理レベルをとる出力信号/OUTSが出力される。
なお図28においては、図24の回路に対し、入力段回路200X,200Yの関係を入れ替えた例を示したが、本変更例は図25から図27の回路に対しても適用可能である。
<実施の形態6>
実施の形態6では、実施の形態5と同様の機能を有するドライバ回路を、P型トランジスタを用いて構成した本発明に係るドライバ回路について説明する。
図29は、実施の形態2に係るドライバ回路の構成を示す図である。当該ドライバ回路は、図24の回路と同様に機能する回路を、P型トランジスタにより実現した例である。即ち図29の回路は、図24の回路に対し、N型トランジスタに代えてP型トランジスタを用い、電源電圧の極性を逆にし(図24の電源線102にロー側電源電圧VLBを供給し、電源線104にハイ側電源電圧VHBを供給する)、また各信号の電圧極性を逆に(活性レベルをLレベル、非活性レベルをHレベルにする)したものである。なお図29において、図24のドライバ回路に示したものに対応する各要素については、それと同一の符号に「B」の添え字を付して示している。
図29は、実施の形態6に係るドライバ回路の構成を示す図である。当該ドライバ回路は、2つの入力段回路200XB,200YBと、出力段回路310Bとから構成されている。入力段回路200XB,200YBのそれぞれは、実施の形態4のものと同様である。即ちそれらは実施の形態2およびその変更例(実施の形態1と同様のドライバ回路をP型トランジスタを用いて構成したもの)と同じ構成を有するものである。
本実施の形態では、入力信号INSBは入力段回路200XBの入力ノードに入力され、入力段回路200YBの入力ノードには入力段回路200XBのノードN6XBの信号(第1内部信号)が入力される。つまり、入力段回路200XBは入力信号INSBにより駆動され、入力段回路200YBは入力段回路200XBのノードN6XBの信号により駆動される。
入力段回路200XB,200YBは、それぞれその入力ノードの信号の論理レベルを反転した信号を出力するインバータとして機能するので、図29の入力段回路200XBの出力信号(ノードN6XBの信号)は入力信号INSBとは逆の論理レベルになり、入力段回路200YBの出力信号(ノードN6YBの信号(第2内部信号))はさらにその逆の論理レベルすなわち入力信号INSBと同じ論理レベルになる。但し、入力段回路200YBにおける信号遅延のため、入力段回路200YBの出力信号のレベル変化は、入力段回路200XBのレベル変化から僅かに遅れて起こる。
出力段回路310Bは、低消費電力且つ高駆動能力なレシオレス型のドライバ回路である。出力段回路310Bは、P型のトランジスタQ13B〜Q20Bおよび容量素子C5Bから成っている。トランジスタQ13B,Q14Bは、ロー側電源線102Bとハイ側電源線104Bとの間に直列に接続している。トランジスタQ13B,Q14B間の接続ノードをノードN8Bとすると、ロー側電源線102BとノードN8Bとの間に接続するトランジスタQ13Bのゲートは、入力段回路200XBのノードN6XBに接続される。またノードN8Bとハイ側電源線104Bとの間に接続するトランジスタQ14Bのゲートは、当該ドライバ回路の出力端子OUTB(ノードN13B)に接続される。即ち、トランジスタQ13Bは、ノードN6XBの電圧レベル(入力段回路200XBの出力信号)に従ってノードN8Bの電荷をロー側電源線102Bへと放電するものであり、トランジスタQ14Bは、出力端子OUTBの電圧レベル(出力信号OUTS)に従ってノードN8Bをハイ側電源線104Bからの電流で充電するものである。
トランジスタQ17B,Q18Bも、ロー側電源線102Bとハイ側電源線104Bとの間に直列に接続している。トランジスタQ17B,Q18B間の接続ノードをノードN10Bとすると、ロー側電源線102BとノードN10Bとの間に接続するトランジスタQ17Bのゲートは、入力段回路200YBのノードN6YBに接続される。即ち、トランジスタQ17Bは、ノードN6YBの電圧レベル(入力段回路200YBの出力信号)に従ってノードN10Bの電荷をロー側電源線102Bへと放電するものである。一方ノードN10Bとハイ側電源線104Bとの間に接続するトランジスタQ18Bのゲートは、入力段回路200XBのノードN6XBに接続される。即ちトランジスタQ18Bは、ノードN6XBの電圧レベルに従ってノードN10Bをハイ側電源線104Bからの電流で充電するものである。
同様にトランジスタQ15B,Q16Bも、ロー側電源線102Bとハイ側電源線104Bとの間に直列に接続している。トランジスタQ15B,Q16B間の接続ノードをノードN9Bとすると、ロー側電源線102BとノードN9Bとの間に接続するトランジスタQ15BのゲートはノードN10Bに接続され、ノードN9Bとハイ側電源線104Bとの間に接続するトランジスタQ16BのゲートはノードN8Bに接続される。また容量素子C5Bは、ノードN9BとノードN10Bとの間に接続される。即ち、トランジスタQ15Bは、ノードN10Bの電圧レベルに従ってノードN9Bの電荷をロー側電源線102Bへと放電するものであり、トランジスタQ16Bは、ノードN8Bの電圧レベルに従ってノードN9Bをハイ側電源線104Bからの電流で充電するものである。
さらにトランジスタQ19B,Q20Bも、ロー側電源線102Bとハイ側電源線104Bとの間に直列に接続している。トランジスタQ19B,Q20B間の接続ノードN13Bが、当該ドライバ回路の出力端子OUTBであり、そこから出力信号OUTSBが出力される。ロー側電源線102Bと出力端子OUTBとの間に接続するトランジスタQ19BのゲートはノードN10Bに接続され、出力端子OUTBとハイ側電源線104Bとの間に接続するトランジスタQ20Bのゲートは、入力段回路200XBの出力ノードN6XBに接続される。即ち、トランジスタQ19Bは、ノードN10Bの電圧レベルに従って出力端子OUTBの電荷をロー側電源線102Bへと放電するものであり、トランジスタQ20Bは、ノードN6XBの電圧レベルに従ってノードN9Bをハイ側電源線104Bからの電流で充電するものである。
出力段回路310Bにおいては、以下に詳細にその動作を説明するように、各ノードの電圧変化の遅延を利用して、ロー側電源線102Bからハイ側電源線104Bへの貫通電流経路を遮断しており、それにより消費電流を抑制している。また、この出力段回路310Bの動作によって、出力信号OUTSBは正確に電圧VLBおよびVHBの間で変化するようになる。
図30は、本実施の形態に係るドライバ回路(図29)の動作を示す信号波形図である。以下、図30を参照して、当該ドライバ回路の動作について説明する。
まず初期状態として、入力端子INBに供給される入力信号INSBが電圧VHBのHレベルである状態を想定する。入力段回路200XBのノードN6XBはLレベル(VLB)であり、入力段回路200YBのノードN6YBはHレベル(VHB)である。そのため出力段回路310BのトランジスタQ13B,Q18B,Q20Bはオン状態であり、トランジスタQ17Bはオフ状態である。よってノードN10BはHレベル(VHB)であり、トランジスタQ15B,Q19Bはオフ状態である。故に出力端子OUTBはHレベル(VHB)であり、トランジスタQ14Bはオフ状態である。従ってノードN8BはLレベル(VLB+Vthp)であり、トランジスタQ16Bはオン状態なのでノードN9BはHレベル(VHB)である。
この初期状態から、入力信号INSBが電圧VMBのLレベルに変化すると、入力段回路200XBのノードN6XBは電圧VHBのHレベルになる。ノードN6XBの信号は入力段回路200YBに入力されているので、ノードN6XBがHレベルになるのに追随して、入力段回路200YBのノードN6YBは電圧VLBのLレベルになる。
すると出力段回路310Bにおいては、以下の動作が行われる。まず入力段回路200XBのノードN6XBがHレベル(VHB)になったときに、トランジスタQ13B,Q18B,Q20Bがオフになる。この時点では出力信号OUTはまだHレベル(VHB)であるので、トランジスタQ14Bもオフ状態にある。よってトランジスタQ13BがオフになってもノードN8Bはフローティング状態で、電圧VLB+VthpのLレベルに維持される。
また入力段回路200YBのノードN6YBがLレベル(VLB)になるので、トランジスタQ17Bがオンになり、ノードN10Bが放電されてその電圧レベルが低下する。上記のようにノードN6YBの電圧変化はノードN6XBの電圧変化に応じて起こるため、このノードN10Bの放電の際には、トランジスタQ17Bがオンするよりも先にトランジスタQ18Bがオフになる。それにより、このときトランジスタQ17B,Q18Bを経路とする貫通電流の発生は防止されている。
ノードN10Bは容量素子C5Bを介してノードN9Bと容量結合しているが、この時点ではノードN8BはLレベルに維持されておりトランジスタQ16Bはオン状態であるので、ノードN10Bの電圧レベルが低下してもノードN9Bはほぼ電圧VHBでHレベルに維持される。またノードN10Bの放電が進み、ノードN10B,N9B間の電圧がトランジスタQ15Bのしきい値電圧を超えるとトランジスタQ15Bがオンになるが、トランジスタQ15BはトランジスタQ16Bよりもオン抵抗が充分大きく設定されており、このときもノードN9Bはほぼ電圧VHBでHレベルに維持される。その結果ノードN10Bは、電圧VLB+VthpのLレベルになる。
ノードN10BがLレベル(VLB+Vthp)になるとトランジスタQ19Bがオンになり、出力端子OUTBは放電され、その電圧レベルが低下する。この出力端子OUTBの放電時においても、トランジスタQ19Bがオンするより前に、トランジスタQ20Bがオフになっているので、トランジスタQ19B,Q20Bを経路とする貫通電流の発生は防止されている。
出力端子OUTBの放電が進むと、トランジスタQ14Bがオンになり、ノードN8Bが充電されてHレベル(VHB)になる。応じて、トランジスタQ16Bがオフになるので、ノードN9BはトランジスタQ15Bを通して放電され、電圧レベルが低下する。このノードN9Bの電圧レベルの低下は、容量素子C5Bを介してノードN10Bに伝達されるので、ノードN10Bの電圧レベルも低下する。ノードN10Bの電圧レベルが低下するとトランジスタQ17Bはオフ状態になり、ノードN10Bはフローティング状態になるので、ノードN10Bの電圧レベルは更に低下し、電圧VLBよりも高い電圧VLB+ΔVAになる(ΔVAは、ノードN9Bの電圧変化量および、ノードN10Bに付随する寄生容量と容量素子C5Bの容量値との比によって決まる)。
このようにトランジスタQ13B〜Q16Bから成る回路は、トランジスタQ19Bがオンして出力信号OUTSBが活性化するときに、ノードN9Bの電圧レベルを低下させることで、ノードN10Bの電圧レベルを低下させる。これによりトランジスタQ19Bのゲート・ソース間電圧が昇圧される。つまりトランジスタQ13B〜Q16Bから成る回路は、出力信号OUTSに基づいて動作し、出力信号OUTSの活性化時にトランジスタQ19Bのゲート・ソース間電圧を高める昇圧回路を構成している。
以上のように、出力段回路310Bでは、トランジスタQ19Bが出力端子OUTBを放電することで当該出力端子OUTBの電圧レベルが低下すると、その電圧低下がノードN10B(トランジスタQ19Bのゲート)にフィードバックされるブートストラップ効果が得られる。それによりノードN10Bの電圧レベルが低下することで、トランジスタQ19Bはその電流駆動力が高くなり、且つ非飽和動作する。従って、出力端子OUTBは高速に放電されて電圧VLBのLレベルになる。
なお、このときトランジスタQ15Bも非飽和動作するため、ノードN9Bの電圧レベルはVLBになる。上記のように、トランジスタQ15BはノードN10Bが放電されたときにオンになり、トランジスタQ16Bはその後にノードN8Bが充電されることでオフになる。つまりトランジスタQ16Bがオフするよりも先に、トランジスタQ15Bがオンになるので、その間はトランジスタQ15B,Q16Bを通して貫通電流が流れる。但し、トランジスタQ15B,Q16Bの電流駆動力を充分に小さくすれば、消費電流の増大は防止できる。
またその貫通電流が生じる期間は、トランジスタQ15Bと共にトランジスタQ19Bがオンしてから出力端子OUTが放電されてLレベルになるまでの短い期間に過ぎない。トランジスタQ19Bの電流駆動力が大きいほどその期間を短くでき、当該貫通電流による消費電流を小さくできる。特に出力端子OUTBにかかる負荷容量が大きい場合には、出力端子OUTBの放電に時間がかかるのを防止するために、トランジスタQ19Bの電流駆動力を充分大きく設定しておくことが望ましい。出力段回路310Bはレシオレス型の回路であり、定常状態では貫通電流が生じないので、トランジスタQ19Bの電流駆動力を大きく設定しても定常状態における消費電力の増大は伴わない。
再び図29および図30を参照し、入力信号INSBが、Lレベル(VMB)からHレベル(VHB)に変化すると、入力段回路200XBのノードN6XBは電圧VLBのLレベルになる。またそれに応じて入力段回路200YBのノードN6YBはHレベル(VHB)になる。
このとき出力段回路310Bでは、ノードN6XBがLレベルになったことでトランジスタQ18B,Q20Bがオンし、またノードN6YBがHレベルになったことでトランジスタQ17Bがオフになる。よってノードN10Bおよび出力端子OUTが充電される。ノードN10BがHレベルになるときトランジスタQ19B,Q15Bはオフになるので、出力信号OUTSBは電圧VHBのHレベルになる。
またトランジスタQ13BはノードN6XBがLレベルになった時点で既にオンしているので、出力端子OUTBがHレベルになりトランジスタQ14Bがオフになると、ノードN8Bが放電されて電圧VLB+VthpのLレベルになる。応じてトランジスタQ16Bがオンし、ノードN9Bは電圧VHBのHレベルになる。
このノードN8Bの放電の際には、トランジスタQ14Bがオフより先にトランジスタQ13Bがオンしているため、トランジスタQ13BがオンしてトランジスタQ14Bがオフするまでの間は、トランジスタQ13B,Q14Bを通して貫通電流が流れる。しかし出力信号OUTは高速で充電されてHレベル(VHB)になるため、その期間はごく短期間であり貫通電流の電流量は僅かである。またノードN9Bの充電に際しては、トランジスタQ16Bがオンするより先にトランジスタQ15Bがオフになるので、トランジスタQ15B,Q16Bを通しての貫通電流は生じない。
以上の動作により、ドライバ回路は上記の初期状態に戻る。その後は、入力信号INSBのレベル変化に応じて、上で説明した動作が繰り返される。
なお定常状態においては、この出力段回路310Bにおいてロー側電源線102Bからハイ側電源線104Bへの貫通電流の経路は存在しない。そのためトランジスタQ19B,Q20Bの駆動能力を大きく設定することができ、そうすることで出力端子OUTBの出力負荷容量が大きい場合でも、高速に出力端子OUTBを充放電して出力信号OUTSBのレベルを高速に変化させることができる。
図29の回路においては、入力段回路200XBはトランジスタQ2YB,Q6YB,Q13B,Q18B,Q20Bを駆動し、ドライバ段200YBはトランジスタQ17Bを駆動する。通常、これら各トランジスタのゲート容量値は、出力端子OUTBに接続される負荷容量の容量値に比べて桁違いに小さいので、入力段回路200XB,200YB個々の駆動能力は、出力段回路310Bの駆動能力に対して桁違いに小さくてよい。つまり本実施の形態では、レシオ型回路を含む入力段回路200XB,200YBの消費電力を、実施の形態2のドライバ回路よりも極めて小さく設定することが可能である。
このように本実施の形態のドライバ回路においては、実施の形態2のドライバ回路よりも極めて低消費電力な入力段回路200XB,200YBの出力信号(ノードN6XB,6Yの信号)に基づいて、低消費電力なレシオレス型のブートストラップ回路である出力段回路310Bを駆動させて出力信号OUTSBを生成している。出力段回路310は定常状態での貫通電流が生じないので、貫通電流を抑えるために駆動電力が制限されることがなく、その駆動能力を高く設定することができる。よって、低消費電力且つ高駆動能力のドライバ回路を実現できる。
[変更例]
以上では、図24の回路と同様の機能を有するドライバ回路をP型トランジスタを用いて構成した例を示したが、本実施の形態は、実施の形態5の各変更例の回路(図26〜図28)の回路にも適用することができる。
即ち図26〜図28の回路に対し、N型トランジスタに代えてP型トランジスタを用い、電源電圧の極性を逆にし(各図の電源線102にロー側電源電圧VLBを供給し、電源線104にハイ側電源電圧VHBを供給する)、また各信号の電圧極性を逆に(活性レベルをLレベル、非活性レベルをHレベルにする)すれば、それらの回路と同様の機能を有するドライバ回路をP型トランジスタを用いて構成することができる(図示は省略する)。
IN 入力端子、OUT 出力端子、100 入力段回路、110 出力段回路、120 昇圧プッシュプル回路、120a 多段昇圧プッシュプル回路、200X,200Y 入力段回路、210 出力段回路、220 昇圧プッシュプル回路、310 出力段回路。