JP2009215572A - 降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.03〜0.30%、Si:0.1〜3.0%、Mn:0.1〜5.0%、P:0.1%以下、S:0.005%以下、N:0.01%以下、Al:0.01〜1.00%を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、硬さ380Hv以下の焼戻しマルテンサイトを面積率で50%以上(100%を含む)、残部がフェライトからなる組織であり、全組織中の転位密度が1×1015〜4×1015m- 2、かつ、下記式1で定義されるSi等量が下記式2を満足することを特徴とする高強度冷延鋼板。式1:[Si等量]=[%Si]+0.36[%Mn]+7.56[%P]+0.15[%Mo]+0.36[%Cr]+0.43[%Cu]式2:[Si等量]≧4.0-5.3×10-8√[転位密度]
【選択図】なし
Description
このため、伸び(全伸び;El)と伸びフランジ性(穴広げ率;λ)がともに高められた高強度鋼板の提供が切望されており、例えば引張強度980MPa級の鋼板に対しては全伸び10%以上で穴広げ率100%以上のものが要望されている。
質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.03〜0.30%、
Si:0.1〜3.0%、
Mn:0.1〜5.0%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01〜1.00%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
硬さ380Hv以下の焼戻しマルテンサイトが面積率で50%以上(100%を含む)を含み、残部がフェライトからなる組織を有し、
全組織中の転位密度が1×1015〜4×1015m―2であり、
かつ、下記式1で定義されるSi等量が下記式2を満足する
ことを特徴とする降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
式1:[Si等量]=[%Si]+0.36[%Mn]+7.56[%P]+0.15[%Mo]+0.36[%Cr]+0.43[%Cu]
式2:[Si等量]≧4.0− 5.3×10−8√[転位密度]
成分組成が、更に、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜1.0%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1に記載の降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
鋼板である。
成分組成が、更に、
Ni:0.05〜1.0%、
B:0.0002〜0.0030%、
の1種または2種を含むものである
請求項1または2に記載の降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
更に、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板である。
上述したとおり、本発明鋼板は、焼戻しマルテンサイト単相、または、上記特許文献2、3と同様の二相組織(フェライト+焼戻しマルテンサイト)をベースとするものであるが、特に、該焼戻しマルテンサイトの硬さが380Hv以下に制御されているとともに、全組織中の転位密度が制御されている点で、上記特許文献2、3の鋼板とは相違している。
焼戻しマルテンサイトの硬さを制限して該焼戻しマルテンサイトの変形能を高めることで、フェライトと該焼戻しマルテンサイトの界面への応力集中を抑制し、該界面での亀裂の発生を防止して伸びフランジ性を確保するとともに、焼戻しマルテンサイト主体の組織にすることで、該焼戻しマルテンサイトの硬さを低下させても高降伏強度を確保できる。
上記成分組成を有するC−Si−Mn系の低合金鋼において、焼戻し温度が400℃を超えるマルテンサイト主体の組織の降伏強度は、4つの強化機構(固溶強化、析出強化、微細化強化、転位強化)のなかでも特に転位強化に強く依存することを見出し、900MPa以上の降伏強度を確保するには、全組織中の転位密度を1×1015m−2以上確保する必要があることがわかった。
上述のとおり、10%以上の伸びを確保するためには、全組織中に導入できる転位密度に上限が存在する。そこで、さらに検討を行った結果、900MPa以上の降伏強度を確実に得るためには、転位強化の次に降伏強度に寄与する固溶強化を活用する必要があることを見出した。
ただし、HvF=102+209[%P]+27[%Si]+10[%Mn]+4[%Mo]−10[%Cr]+12[%Cu](藤田利夫ら訳:「鉄鋼材料の設計と理論」(丸善株式会社)、昭和56年9月30日発行、p.10の図2.1から、低Cフェライト鋼の降伏応力の変化に及ぼす各合金元素量の影響の度合い(直線の傾き)を読み取って定式化を行った。なお、Al、Nなどその他の元素はフェライトの硬さに影響しないとした。)
ここに、HvF:フェライトの硬さ、VF:フェライトの面積率(%)、VM:マルテンサイトの面積率(%)、[%X]:成分元素Xの含有量(質量%)である。
C:0.03〜0.30%
Cは、マルテンサイトの面積率およびその硬さに影響し、降伏強度および伸びフランジ性に影響する重要な元素である。0.03%未満ではマルテンサイトの面積率が不足して降伏強度が確保できず、一方、0.30%超ではマルテンサイトの硬さが高くなりすぎて伸びフランジ性が確保できない。C含有量の範囲は、好ましくは0.05〜0.25%、さらに好ましくは0.07〜0.20%である。
Siは、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに降伏強度を高めるとともに、焼戻し時における、マルテンサイト中に存在するセメンタイト粒子の粗大化を抑制する作用も有し、このような粗大なセメンタイト粒子の生成を防止することで、伸びフランジ性を向上させる効果も有する有用な元素である。0.10%未満では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、3.0%超では加熱時におけるオーステナイトの形成を阻害するため、マルテンサイトの面積率を確保できず、降伏強度と伸びフランジ性が確保できない。Si含有量の範囲は、好ましくは0.30〜2.5%、さらに好ましくは0.50〜2.0%である。
Mnは、上記Siと同様、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに降伏強度を高めるとともに、焼戻し時におけるセメンタイトの粗大化を抑制する作用も有し、粗大なセメンタイト粒子の生成を防止して伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。また、焼入れ性を高めてマルテンサイト面積率の確保に寄与することで、降伏強度と伸びフランジ性を高める効果も有する。0.1%未満では、固溶強化作用およびセメンタイト粗大化抑制作用を有効に発揮しえないうえ、焼入れのための急速冷却時にベイナイトが形成され、マルテンサイト面積率が不足するため、降伏強度と伸びフランジ性が確保できない。一方、5.0%超とすると焼入れ時(焼鈍加熱後の冷却時)にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。Mn含有量の範囲は、好ましくは0.30〜4.0%、さらに好ましくは0.50〜3.0%である。
Pは不純物元素として不可避的に存在し、固溶強化により強度の上昇に寄与するが、旧オーステナイト粒界に偏析し、粒界を脆化させることで伸びフランジ性を劣化させるので、0.1%以下とする。好ましくは0.05%以下、さらに好ましくは0.03%以下である。
Sも不純物元素として不可避的に存在し、MnS介在物を形成し、穴拡げ時に亀裂の起点となることで伸びフランジ性を低下させるので、0.005%以下とする。より好ましくは0.003%以下である。なお、Sの下限は上記観点からはできるだけ低くするのが望ましいが、工業的には0.0003%以下にすることは困難である。
Nも不純物元素として不可避的に存在し、歪時効により伸びと伸びフランジ性を低下させるので、低い方が好ましく、0.01%以下とする。
AlはNと結合してAlNを形成し、歪時効の発生に寄与する固溶Nを低減させることで伸びフランジ性の劣化を防止するとともに、固溶強化により強度向上に寄与する。0.01%未満では鋼中に固溶Nが残存するため、歪時効が起こり、伸びと伸びフランジ性を確保できず、一方、1.00%超では加熱時におけるオーステナイトの形成を阻害するため、マルテンサイトの面積率を確保できず、伸びフランジ性を確保できなくなる。
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜1.0%、
の1種または2種以上
これらの元素は、焼入れ性を高めてマルテンサイト面積率の確保に寄与することで、降伏強度と伸びフランジ性を高めるとともに、固溶強化元素として、伸びを劣化させずに降伏強度を高めるのに有用な元素である。各元素とも0.01%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも1.0%を超える添加では析出強化が過剰となり、マルテンサイトの硬さが高くなりすぎ伸びフランジ性が低下してしまう。
B:0.0002〜0.0030%、
の1種または2種
これらの元素は、焼入れ性を高めてマルテンサイト面積率の確保に寄与することで、降伏強度と伸びフランジ性を高めるのに有用な元素である。Niで0.05%未満、Bで0.0002%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、Niで1.0%超、Bで0.0030%超の添加では焼入れ時にオーステナイトが残存し、伸びフランジ性を低下させる。
これらの元素は、介在物を微細化し、破壊の起点を減少させることで、伸びフランジ性を向上させるのに有用な元素である。各元素とも0.0005%未満の添加では上記のような作用を有効に発揮しえず、一方、各元素とも0.01%を超える添加では逆に介在物が粗大化し、伸びフランジ性が低下する。
上記のような冷延鋼板を製造するには、まず、上記成分組成を有する鋼を溶製し、造塊または連続鋳造によりスラブとしてから熱間圧延を行なう。熱間圧延条件としては、仕上げ圧延の終了温度をAr3点以上に設定し、適宜冷却を行った後、450〜700℃の範囲で巻き取る。熱間圧延終了後は酸洗してから冷間圧延を行うが、冷間圧延率は30%程度以上とするのがよい。
焼鈍条件としては、焼鈍加熱温度:[(Ac1+Ac3)/2]〜1000℃に加熱し、焼鈍保持時間:3600s以下保持した後、焼鈍加熱温度から直接Ms点以下の温度まで 50℃/s以上の冷却速度で急冷するか、または、焼鈍加熱温度から、焼鈍加熱温度未満で600℃以上の温度(第1冷却終了温度)まで1℃/s以上の冷却速度(第1冷却速度)で徐冷した後、Ms点以下の温度(第2冷却終了温度)まで50℃/s以下の冷却速度(第2冷却速度)で急冷するのがよい。
焼鈍加熱時に十分にオーステナイトに変態させ、その後の冷却時にオーステナイトから変態生成するマルテンサイトの面積率を50%以上確保するためである。
焼鈍加熱温度が[(Ac1+Ac3)/2]℃未満では、焼鈍加熱時においてオーステナイトへの変態量が不足するため、その後の冷却時にオーステナイトから変態生成するマルテンサイトの量が減少して面積率50%以上を確保できなくなり、一方、1000℃を超えると、オーステナイト組織が粗大化して鋼板の曲げ性や靭性が劣化するとともに、焼鈍設備の劣化をもたらすため好ましくない。
冷却中にオーステナイトからフェライトやベイナイト組織が形成されることを抑制し、マルテンサイト組織を得るためである。
面積率で50%未満のフェライト組織を形成させることにより、伸びフランジ性を確保したまま伸びの改善が図れるためである。
焼戻し条件としては、上記焼鈍冷却後の温度から焼戻し加熱温度:550〜650℃まで加熱し、同温度範囲にて、焼戻し保持時間:3〜30s保持した後、冷却すればよい。
これを熱間圧延で厚さ25mmにした後、再度、熱間圧延で厚さ3.2mmとした。これを酸洗した後、厚さ1.6mmに冷間圧延して供試材とし、表2に示す条件にて熱処理を施した。
Claims (4)
- 質量%で(以下、化学成分について同じ。)、
C:0.03〜0.30%、
Si:0.1〜3.0%、
Mn:0.1〜5.0%、
P:0.1%以下、
S:0.005%以下、
N:0.01%以下、
Al:0.01〜1.00%
を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなる成分組成を有し、
硬さ380Hv以下の焼戻しマルテンサイトが面積率で50%以上(100%を含む)を含み、残部がフェライトからなる組織を有し、
全組織中の転位密度が1×1015〜4×1015m−2であり、
かつ、下記式1で定義されるSi等量が下記式2を満足する
ことを特徴とする降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
式1:[Si等量]=[%Si]+0.36[%Mn]+7.56[%P]+0.15[%Mo]+0.36[%Cr]+0.43[%Cu]
式2:[Si等量]≧4.0− 5.3×10−8√[転位密度] - 成分組成が、更に、
Cr:0.01〜1.0%、
Mo:0.01〜1.0%、
Cu:0.01〜1.0%、
の1種または2種以上を含むものである
請求項1に記載の降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。 - 成分組成が、更に、
Ni:0.05〜1.0%、
B:0.0002〜0.0030%、
の1種または2種を含むものである
請求項1または2に記載の降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。 - 更に、
Ca:0.0005〜0.01%、および/または
Mg:0.0005〜0.01%
を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の降伏応力と伸びと伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板。
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