JP2009214670A - 倒立振子型車輪移動体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】移動体100は、ボディ10から下方へ向けて伸びており、駆動輪の車軸14の前後で接地しているとともに、その下端がボディ10の傾斜に応じて上下する支持脚20と、支持部材の下端の位置を固定するロック機構26を備えている。支持脚20は、倒立振子制御の動作/非動作に関わらずに接地しているとともに、ボディ10の傾斜に応じて上下する。従って、支持脚20は、常に接地しているものの、倒立振子制御を妨げない。倒立振子制御を停止する場合に、ロック機構26を作動させて支持脚20の下端の位置を固定する。常に接地しており伸縮自在の支持脚20とロック機構26を備えることによって、倒立振子制御が機能している状態から機能しない状態に移行するときに、タイムラグなく支持脚20でボディ10を支持することができるので、ボディがふらつくことがない。
【選択図】図1
Description
ボディの重心は駆動輪の車軸よりも上方に位置している。そのため、制御しない状態では、この移動体は不安定である。ここでいう「不安定」とは、ボディのバランスが保たれている状態において小さな外乱が加わるだけで、ボディのバランスが崩れてしまうことを意味する。従って、ボディと車輪の全状態量もしくはその一部の状態量をフィードバックすることでボディの姿勢(鉛直方向に対するボディの傾斜角)を安定化する制御を行う必要がある。そのような制御を本明細書では倒立振子制御と称する。簡単にいえば、駆動輪を駆動することによってボディの傾斜角を維持する制御を倒立振子制御という。
倒立振子型車輪移動体は、制御的な観点からいうと不安定システムである。すなわち、倒立振子制御を停止するとボディが転倒する。或いは、倒立振子制御が適切に機能しないとボディが転倒する。従って、倒立振子型車輪移動体は、ボディの転倒を防止するために補助的な支持部材を有している。例えば、昇降可能な支持脚を備えた倒立振子制御型の移動ロボットが特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示された移動ロボットは、倒立振子制御の作動時には支持脚を地面の上方に離間させて維持する。倒立振子制御を停止する場合、或いは不測の事態によって倒立振子制御が適切に機能しなくなった場合に、支持脚を降ろして接地させる。支持脚がボディを支持することによって転倒を防止する。
不測の事態に限らず、倒立振子制御を停止する場合でも、倒立振子制御を停止してから支持脚が接地するまでにタイムラグが生じると同じ課題が起こり得る。
不測の事態が発生して倒立振子制御が適切に機能しなくなった場合、或いは、倒立振子制御を停止する場合に、タイムラグなく支持部材によってボディを支持することができる倒立振子型車輪移動体が望まれている。
支持部材は、例えばバネによってボディに取り付けられている。支持部材の下端が、倒立振子制御の動作/非動作に関わらずに接地しているとともに、ボディの傾斜に応じてボディに対して上下する。従って、支持部材は、常に接地しているものの、倒立振子制御を妨げない。不測の事態が生じて倒立振子制御が適切に機能しなくなった場合、或いは、倒立振子制御を停止する場合に、ロック機構を作動させて支持部材の下端のボディに対する位置を固定する。上下動が可能な支持部材とロック機構を備えることによって、倒立振子制御が機能している状態から機能しない状態に移行するときに、タイムラグなく支持部材でボディを支持することができる。
ロック機構は、不測の事態が生じて倒立振子制御が適切に機能しなくなった場合に支持部材を固定する。或いは、ロック機構は、不測の事態でなくとも、倒立振子制御を停止するときに支持部材を固定してよい。
不測の事態の発生は、例えば、次のいずれかの条件の成立によって特定されてよい。
(1)鉛直方向に対するボディの傾斜角が角度許容範囲を超える傾斜角条件
(2)ボディの傾斜角速度が傾斜角速度許容範囲を超える傾斜角速度条件
(3)移動体の速度が速度許容範囲を超える走行速度条件
いずれの条件も、倒立振子制御が適切に機能しなくなる状態を特定する条件である。
スリップが発生すると、ボディのバランスを維持することが困難になり転倒しやすくなる。スリップの発生を検知できると、これを制御に反映して、スリップ時に転倒し難くすることができる。例えば、スリップの発生時に、倒立制御を停止するとともにロック機構を作動させればよい。
(第1特徴)支持脚20は、弾性部材(バネ24)によって、その下端が常に接地するように付勢されている。バネによる付勢力は、ボディ10の傾斜を阻害しない程度に弱く設定してよい。
(第2特徴)スリップが検知された場合に、倒立振子制御を停止する。
図1、2において、符号Bは地面を示しており、符号Gはボディ10の重心を示している。
移動体100は、ボディ10と、一対の駆動輪16と、一対の支持脚20a、20bを備えている。一対の駆動輪16は、同軸に配置されている。夫々の駆動輪16は、車軸14を介してモータ12に連結されている。即ち、駆動輪16は、モータ12によって駆動される。
一対の支持脚20a、20bは、同じ構造を有している。一対の支持脚20a、20bは、それらの下端が車軸14の前後で接地している。以下では、一方の支持脚20aについて説明し、他方の支持脚20bについては説明を省略する。
支持脚20aは、ボディ10から下方に伸びている。支持脚20aの下端に、補助輪22aが取り付けられている。支持脚20aは、バネ24aによってボディ10に連結されている。支持脚20aは、バネ24aによって、補助輪22aが常に接地するように、下方に付勢されている。また、支持脚20aは、バネ24aによって、ボディ10の上下方向にスライドすることができる。即ち支持脚20aの下端(補助輪22a)は、接地を維持しながらボディ10の傾斜に応じてボディ10に対して上下する。バネ24aによる付勢力は、ボディ10の傾斜を阻害しない程度に弱く設定されている。すなわち、バネ24aの付勢力だけでは、ボディ10が倒れることを防止できない。
支持脚20aの途中に、ボディ10に対する支持脚20aの下端の相対的な位置を固定するためのブレーキ26a(ロック機構)が配置されている。ブレーキ26aは、ボディ10に内蔵されたコントローラ30から指令によって、支持脚20aの下端の位置を固定したり、その固定を解除したりする。以下では、「支持脚20aの下端の位置を固定する」ことを、「支持脚20aをロックする」と表現することがある。
ボディ10には、ボディ10の車軸14回りの傾斜角速度を検出するためのジャイロ32が搭載されている。ジャイロ32の出力は、コントローラ30に送られる。
一対の支持脚20a、20bは、ブレーキ26a、26bがロックを解除している間は、ボディ10の傾斜に応じて伸縮する。そのため、ボディ10は、ブレーキ26a、26bがロックを解除している間は、倒立振子制御が作動していなければ倒れてしまう。倒立振子制御とは、駆動輪を駆動してボディ10を倒れないようにする制御をいう。「ボディ10を倒れないようにする」ことを、「ボディ10のバランスを維持する」と表現することがある。
図2に示すように、ボディ10には、重力が作用している。重力は、ボディ10の重心Gを通り、鉛直方向下方を向くベクトルFGで表現できる。
他方、駆動輪16を駆動すると、ボディ10には水平方向の慣性力が作用する。図2の矢印Vが示すように、移動体100を図2の右側へ加速するように駆動輪16を駆動するときの慣性力は、重心Gを通り水平方向左側を向くベクトルFEで表現できる。
重力ベクトルFGと慣性力ベクトルFEの合力ベクトルを符号FTで表す。合力ベクトルFTは、車軸14回りのモーメントを発生させる。倒立振子制御は、駆動輪16を制御することによって、合力ベクトルFTの方向、即ち、車軸14回りのモーメントの向きや大きさを変化させる。倒立振子制御は、ボディ10のバランスを維持するように、車軸14回りのモーメントの向きや大きさを変化させる。
ボディ10のバランスを維持しながらボディ傾斜角Abを修正するには、車体が右に傾いている時は、車体から車輪に右回りのモーメントを与えれば、車輪は右に加速し、車体は起き上がる。また、車体が左に傾いている時は、その逆となる。このように駆動輪16に加える駆動力を調整することによって、ボディ傾斜角Abを望ましい角度へ近づけることができる。すなわち、ボディ10のバランスを維持することができる。直線Sが鉛直線Pと一致するようにボディ傾斜角Abを制御すると、ボディ10のバランスを維持したまま、移動体100は停止、または一定速で走行することができる。移動体100は、ボディ傾斜角Abを適切に制御することによって(すなわち駆動力を適切に制御することによって)、ボディ10のバランスを維持しながら加減速することもできる。
倒立振子制御を停止するとき、あるいは、不測の事態によって倒立振子制御が適切に機能しなくなった場合(すなわち、倒立振子制御ではボディ10のバランスを維持することが困難な場合)には、ブレーキ26a、26bを動作させて、支持脚20a、20bをロックする。そうすることによって、支持脚20a、20bによってボディ10を安定に支持することができる。ここで、支持脚先端の補助輪22a、22bは、常に接地しているので、ブレーキ26a、26bを作動させると直ちにボディ10を支持することができる。予定された倒立振子制御の停止時、あるいは、不測の事態の検知によって緊急に倒立振子制御を停止するとき、ロックされた支持脚20a、20bによってボディ10を直ちに(タイムラグなく)安定に支持することができる。従って、倒立振子制御を停止するときに、ボディ10がふらつくことがない。
以下では、支持脚20a、20bを、「支持脚20」と総称する場合がある。ブレーキ26a、26b等についても同様である。
本実施例の移動体100では、ブレーキ26が解放状態(支持脚20の下端のボディ10に対する位置を固定していない状態)のときには、支持脚20はスライド自在なので接地しているが倒立振子制御を妨げない。倒立振子制御の停止と同時にブレーキ26をロックしても(支持脚20の下端のボディ10に対する位置を固定しても)、ボディ10のバランスを崩すことなく、スムーズに支持脚による支持状態に移行することができる。
図3の符号「As」は、補助輪22の回転角を表している。補助輪22に取り付けられた回転角センサ(不図示)が、回転角Asを検出する。補助輪22の回転センサが検出した回転角Asは、支持脚制御部46に入力される。図3では、ブロック図が複雑になることを避けるために、補助輪22と支持脚制御部46を結ぶべき回転角Asの線を省略している。なお、回転角Asを微分することで、補助輪22の回転角速度を得ることができる。
ブロック図が複雑になることを避けるために、支持脚制御部46に入力される信号(並進移動量Aw、並進移動速度dAw、ボディ傾斜角速度dAb)を示す線の一部も図示を省略している。
外部コントローラ90のコマンドは、メイン制御部47に入力される。メイン制御部47は、コマンドを解析し、他の制御モジュールを管理する。外部コントローラ90から送られる目標軌道のデータは、メイン制御部47から目標値生成部48に送られる。
2輪走行モードにおいて、コントローラ30は、ボディ10のバランスを維持しながら、目標軌道に追従するように駆動輪16を駆動するためのトルク指令値を算出してモータ12(モータドライバ)へ出力する。ボディのバランスを維持するとともに、移動体100を直進させるためのトルク指令値が倒立振子制御部54によって算出される。すなわち、倒立振子制御部54が出力するトルク指令値(T1)は、並進方向左右輪分配部64で分配され、左右の駆動輪16へのトルク指令値(TR1、TL1)となる。並進方向左右輪分配部64では、例えば、倒立振子制御部54から入力されるトルク指令値を1/2づつして、左右輪のトルク指令値とする(数4)。左右輪で摩擦特性などが異なり、トルク指令値に対する特性や感度が異なる場合には、左右輪で異なるようにして摩擦補償したり、左右へのトルク配分を感度に応じた係数を掛けて行うようにしてもよい。
旋回制御部56が出力するトルク指令値(T2)は、移動体100を旋回させるために必要なトルク値であり、旋回角度の偏差に対応した旋回トルクを算出することで求められる。旋回方向左右輪分配部66では、旋回制御部56から入力されるトルク値を左右駆動輪のトルク値(TR2、TL2)に分配する。
旋回方向左右輪分配部66では、例えば旋回制御部56からの入力に対し、左右輪で符号を変えて車輪半径rを掛けさらに車輪間のトレッド幅の半分の長さdで割りさらに2で割ることで左右輪のトルク値へ配分を行うことができる(数5)。
倒立振子制御部54の制御系を設計する際に、支持脚20(補助輪22)と地面との接触を考慮して移動体100をモデル化している。倒立振子制御部54の制御系は、その移動体100のモデルに基づいて設計されている。すなわち、倒立振子制御部54は、床反力の影響が考慮されたトルク指令値を出力する。移動体100のモデルについては後述する。
支持脚制御部46は、ブレーキ26を制御するモジュールである。支持脚制御部46は、後述する非常停止条件が成立したときに、ブレーキ26を作動させる。ブレーキ26が作動すると、支持脚20がロックされる。すなわち、支持脚20がボディ10を安定に支持する。ブレーキ26が解放されると、支持脚20が、補助輪22を接地させながら、ボディ傾斜角に応じてスライドする。
目標値生成部48は、目標軌道を、移動体100の目標並進速度dAwrと目標旋回角度Azrに分解する。目標並進速度は、目標軌道の接線方向の速度で表される。目標旋回角度とは、目標軌道の接線の方位で表される。目標値生成部48は、目標並進速度dAwrおよびそれを積分した目標並進移動量Awrを出力する。目標値生成部48はまた、目標旋回角度Azrを出力する。
目標値生成部48から出力された目標並進移動量Awrは、差分器60aに入力される。差分器60aは、目標並進移動量Awrと、移動体100の実際の並進移動量Awとの差分を算出する。算出された差分は倒立振子制御部54に入力される。
目標値生成部48から出力された目標並進速度dAwrは、差分器60bに入力される。差分器60bは、目標並進速度dAwrと、移動体100の実際の並進速度dAwとの差分を算出する。算出された差分は倒立振子制御部54に入力される。
倒立振子制御部54にはまた、ボディ傾斜角速度dAbが入力される。
倒立振子制御部54は、ボディ傾斜角速度dAbを積分してボディ傾斜角Abを得る。そして、ボディ10のバランスを維持しながら、差分器60a、60bの出力した差分を小さくするトルク指令値を算出する。ボディ傾斜角Abとボディ傾斜角速度dAbは、ボディのバランスを維持する条件として利用される。ボディ10のバランスを維持するための制御則は、例えばH無限大制御を用いてよい。H無限大制御を採用することによって、ロバストな倒立振子制御を実現することができる。
目標値生成部48から出力された目標旋回角度Azrは、差分器60cに入力される。差分器60cは、目標旋回角度Azrと、移動体100の実際の旋回角度Azとの差分を算出する。算出された差分が旋回制御部56に入力される。
旋回制御部56は、差分器60cが出力した差分を小さくするために左右の駆動輪16に与えるトルク値を算出し、トルク指令値として出力する。旋回制御部56において旋回角度の偏差を小さくするための制御則としては例えばPID制御を用いることができる。旋回制御部56の出力は旋回方向左右輪分配部66によって、左右の駆動輪のトルク値に配分される。
モータ12(モータドライバ)がトルク指令値に従って作動することで、移動体100は、ボディ10のバランスを維持しながら目標軌道に沿って移動する。倒立振子制御部54には、床反力を考慮したモデルに基づいた制御系が構築されているので、床反力があってもボディ10のバランスを維持することができる。
図示を省略しているが、支持脚制御部46は、倒立振子制御部54と連動してブレーキ26を制御する。すなわち、外部コントローラ90から移動体100の制御開始のコマンド(2輪モードコマンド或いは4輪モードコマンド)が入力されると、倒立振子制御部54が制御を開始するとともに支持脚制御部46がブレーキ26を解放する(ボディ10の傾斜に応じて支持脚20がスライドできるようにする)。外部コントローラ90から移動体100の制御停止のコマンドが入力されると、倒立振子制御部54が制御を停止するとともに支持脚制御部46がブレーキ26を作動させる(支持脚20をロックする)。
(1)ボディ傾斜角Abが角度許容範囲を超える傾斜角条件
(2)ボディ傾斜角速度dAbが傾斜角速度許容範囲を超える傾斜角速度条件
(3)移動体100の並進速度dAwが速度許容範囲を超える走行速度条件
傾斜角度許容範囲等は、移動体100の動特性に基づいて予め設定されており、コントローラ30に記憶されている。上記の非常停止条件はいずれも、ボディ10のバランスを維持することが困難となる条件である。いずれかの非常停止条件が成立したときに、支持脚20a、20bをロックするとともに、倒立振子制御を停止することで、ボディ傾斜角が不安定となることなく、すばやくボディ10を安定に支持することができる。
コントローラ30は、所定のサンプリングタイムが経過するまで待つ(ステップS10)。その間にコントローラ30は、外部コントローラ90からコマンドを受信する。外部コントローラ90から受けるコマンドの主なものには、前述したように、「2輪モードコマンド」、「4輪モードコマンド」、及び、「停止コマンド」が存在する。
コントローラ30は、所定のサンプリングタイムが経過するまでにコマンドを受信すると(ステップS12:YES)、コマンドに応じた処理(ステップS22、S24、S26)を実行する。所定のサンプリングタイムが経過するまでにコマンドを受信しなかった場合(ステップS12:NO)は、ステップS20に処理が移る。
コントローラ30は、「停止コマンド」を受信すると(ステップS14:YES)、ブレーキ26をロックし(即ち、支持脚20を固定する)とともに、(もし、倒立振子制御が作動中であれば)倒立振子制御を停止する(ステップS26)。そして、メインルーチンを終了する。
コントローラ30は、「2輪モードコマンド」を受信すると(ステップS16:YES)、ブレーキ26のロックを解除する(即ち、支持脚20をスライド自在にする)とともに、前述した倒立振子制御を実行する(ステップS24)。コントローラ30は、ボディ10のバランスを維持しながら、目標軌道に追従するようにモータ12(駆動輪16)を制御する。
コントローラ30は、「4輪モードコマンド」を受信すると、ブレーキ26をロックし(即ち、支持脚20を固定する)とともに、倒立振子制御を停止する(ステップS22)。ステップS22では、倒立振子制御なしに、目標軌道に追従するようにモータ12(駆動輪16)を制御する。
ステップS12の判定が「NO」の場合、コントローラ30は、前述した非常停止条件が成立するか否かをチェックする(ステップS20)。非常停止条件が成立する場合(ステップS20:YES)、ステップS22に処理が移る。すなわち、ブレーキ26a、26bをロックするとともに、倒立振子制御を停止する。
ステップS20では、前記した3つの非常停止条件(傾斜角条件、傾斜角速度条件、及び、走行速度条件)のいずれかが成立するか否かがチェックされる。各条件のチェックは、並列に実行されてよい。
ステップS20の判定が「NO」の場合、ステップS22の実行後、及び、ステップS24の実行後、再び、所定のサンプリングタイムが経過するまで待つ(ステップS10)。
駆動輪16の回転角速度と、補助輪22の回転角速度が異なる場合に、スリップの発生が検知される。スリップが検出された場合、倒立振子制御を停止するとともに、駆動輪16の角速度を制限する。具体的には、ボディ10に対する駆動輪16の角速度を、補助輪22の回転速度から得られるボディ10の速度に対応する車輪速度に対して上下限値の間に制限する。換言すれば、スリップ率を一定の範囲に制限する。
駆動輪16の角速度を制限することによって、スリップが止まる可能性を高めることができる。倒立振子制御を停止するのは、スリップ状態では駆動輪の駆動力が地面に伝わらないためにボディのバランスを維持することが困難となるからである。ただし、スリップは一時的な場合も多く、スリップの発生を検知しても直ちにブレーキ26をロックする必要はない。
図5に記した記号の意味を以下に示す。
m1:ボディ10の質量
m2:駆動輪16(2個分)の質量
J1:ボディ10の重心回りのイナーシャ
J2:駆動輪16の車軸14回りのイナーシャ
l:ボディ10の重心と車軸14の間の距離
L1:ボディ10の中心と補助輪22の間の距離
ke1:バネ24a、24bのばね定数
η:鉛直方向に対するボディ10の傾斜角
Δx1、Δx2:支持脚20a、20bの変位量(ボディ10の傾斜角ηがゼロのときを基準とする)
θ:駆動輪16の回転角
Fe1、Fe2:バネ24a、24bが発生するバネ力(即ち床反力)
Text:床反力によって生じる車軸14回りのモーメント
また、以下の数式で用いる記号の意味は以下のとおりである。
r:駆動輪16の半径
d:2つの駆動輪16の間の距離
fr:粘性係数
Jm:モータロータのイナーシャ(減速機を含む)
n:減速機のギヤ比
g:重力加速度
支持脚20が常に接地していると、支持脚20が地面から床反力を受けるが、倒立振子制御部54の制御系は床反力を考慮した移動体モデルに基づいて設計されているのでボディ10が床反力の影響で倒れたりする可能性を小さくすることができる。支持脚が常に接地していても、ボディのバランスを維持することができる。床反力がボディのバランス維持に悪影響を与えるのは、例えば補助輪が地面の隆起に乗り上げてしまう場合などである。
移動体200の支持脚120aは、第1ロッド121aと第2ロッド122aを備えている。第1ロッド121aは、図1の移動体100の支持脚20aと同様に、バネ24aによってボディ10に連結されている。また、第1ロッド121aには、図1の移動体100の支持脚20aと同様に、ブレーキ26aが取り付けられている。ただし、第1ロッド121aの下端には、補助輪の代わりに第2ロッド122aが連結されている。
第2ロッド122aの一端が、ボディ10に枢動自在に連結されている。第2ロッド122aの他端に、補助輪22aが取り付けられている。第2ロッド122aの途中に、第1ロッド121aの下端が連結されている。
支持脚120bは、支持脚120aと同じ構造であるので説明を省略する。
図6から明らかなように、支持脚120a、120bの下端は、ブレーキ26a、26bがロックを解放している間は、ボディ10の傾斜に応じてボディ10に対して上下する。ブレーキ26a、26bが作動すると、支持脚120a、120bの下端の位置が固定され、ボディ10は安定に支持される。
モータの出力トルクが限界に達したときに、支持部材をロックすることも好適である。
移動体が、周囲の障害物を検出するセンサを備えている場合、倒立振子制御を継続すると障害物に接触する可能性があると判断したときに支持部材をロックすることも好適である。
12:モータ
14:車軸
16:駆動輪
20a、20b:支持脚
22a、22b:補助輪
26a、26b:ブレーキ
30:コントローラ
32:ジャイロ
46:支持脚制御部
48:目標値生成部
52:反力補償部
54:倒立振子制御部
56:旋回制御部
90:外部コントローラ
100、200:倒立振子型車輪移動体
Claims (4)
- 倒立振子型車輪移動体であり、
駆動輪と、
鉛直方向に対して駆動輪の車軸の回りに傾斜可能なボディと、
ボディから下方へ向けて伸びており、その下端が駆動輪の車軸の前後で接地しているとともに、ボディの傾斜に応じて下端がボディに対して上下する支持部材と、
支持部材の下端のボディに対する位置を固定するロック機構と、
を備えることを特徴とする倒立振子型車輪移動体。 - 鉛直方向に対するボディの傾斜角が角度許容範囲を超える傾斜角条件、ボディの傾斜角速度が傾斜角速度許容範囲を超える傾斜角速度条件、当該車輪移動体の速度が速度許容範囲を超える走行速度条件、倒立振子制御を停止する停止条件、のいずれかの条件が成立した場合に、ロック機構が、支持部材の下端のボディに対する位置を固定することを特徴とする請求項1に記載の倒立振子型車輪移動体。
- ロック機構は、倒立振子制御の開始と同時に支持部材の下端の位置の固定を解除することを特徴とする請求項1又は2に記載の倒立振子型車輪移動体。
- 支持部材の下端に補助輪が取り付けられており、補助輪の回転角速度と駆動輪の回転角速度差に基づいて、駆動輪のスリップを検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の倒立振子型車輪移動体。
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