JP2009083726A - 車両 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両の重心移動速度について設定された2つの異なる閾(しきい)値に基づいて、車両が停止状態にあるか否かを判別するようにして、坂道であっても、路面勾(こう)配に関わらず安定した停止状態を維持することができるようにする。
【解決手段】回転可能に車体に取り付けられた駆動輪12と、該駆動輪12に付与する駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、前記車体の姿勢に基づいて路面勾配を推定し、車両10の重心移動速度の絶対値について設定された2つの異なる閾値に基づいて停止状態にあるか否かを判別し、停止状態にあるときには前記路面勾配の推定値を固定する。
【選択図】図1

Description

本発明は、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関するものである。
従来、倒立振り子の姿勢制御を利用した車両に関する技術が提案されている。例えば、同軸上に配置された2つの駆動輪を有し、運転者の重心移動による車体の姿勢変化を感知して駆動する車両、球体状の単一の駆動輪により車体の姿勢を制御しながら移動する車両等の技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
この場合、センサで車体のバランスや動作の状態を検出し、回転体の動作を制御して車両を停止又は移動させるようになっている。
特開2004−129435号公報
しかしながら、前記従来の車両においては、坂道で停止状態を維持したり、安定して走行したりすることができなかった。例えば、坂道で車両を停止させておくためには、車両が下り方向に移動しないように駆動輪に駆動トルクを付与したり、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように車体の重心を移動させたりして、車体の姿勢を制御しているが、路面勾(こう)配の推定値の変動に起因して、車体が振動してしまうことがある。一般的に、車両の乗員は、走行状態の振動よりも停止状態の振動に対してより敏感であるから、停止状態で車体が振動すると、乗員は非常に不快に感じ、乗り心地が大幅に低下する。
本発明は、前記従来の車両の問題点を解決して、車両の重心移動速度について設定された2つの異なる閾(しきい)値に基づいて、車両が停止状態にあるか、走行状態にあるかを的確に判別するようにして、坂道であっても、路面勾配に関わらず安定した停止状態を維持することができ、乗り心地のよい車両を提供することを目的とする。
そのために、本発明の車両においては、回転可能に車体に取り付けられた駆動輪と、該駆動輪に付与する駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、該車両制御装置は、前記車体の姿勢に基づいて路面勾配を推定し、車両の重心移動速度の絶対値について設定された2つの異なる閾値に基づいて停止状態にあるか否かを判別し、停止状態にあるときには前記路面勾配の推定値を固定する。
本発明の他の車両においては、さらに、前記閾値は、停止状態から走行状態に遷移したか否かを判別するための走行遷移閾値、及び、走行状態から停止状態に遷移したか否かを判別するための停止遷移閾値であり、前記走行遷移閾値は停止遷移閾値より大きい。
本発明の更に他の車両においては、さらに、前記車両制御装置は、停止状態から車両の重心移動速度の絶対値が前記走行遷移閾値より大きくなると、走行状態に遷移したと判別し、走行状態から車両の重心移動速度の絶対値が停止遷移閾値未満になると、停止状態に遷移したと判別する。
請求項1の構成によれば、車両が停止状態にあるときに、路面勾配の推定値の変動に起因する車体の振動を防止することができる。そのため、坂道であっても、路面勾配に関わらず安定した停止状態を維持することができ、乗り心地が良好になる。
請求項2及び3の構成によれば、車両が停止状態にあるのか、あるいは走行状態にあるのかをより適切に把握し、車両が微妙に前後動作した際に発生するチャタリングを防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態で加速前進している状態を示す図、図2は本発明の第1の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。
図において、10は、本実施の形態における車両であり、車体の本体部11、駆動輪12、支持部13及び乗員15が搭乗する搭乗部14を有し、倒立振り子の姿勢制御を利用して車体の姿勢を制御する。そして、前記車両10は、車体を前後に傾斜させることができるようになっている。図1に示される例においては、車両10は矢印Aで示される方向に加速中であり、車体が進行方向前方に向かって傾斜した状態が示されている。
前記駆動輪12は、車体の一部である支持部13によって回転可能に支持され、駆動アクチュエータとしての駆動モータ52によって駆動される。なお、駆動輪12の軸は図1の図面に垂直な方向に延在し、駆動輪12はその軸を中心に回転する。また、前記駆動輪12は、単数であっても複数であってもよいが、複数である場合、同軸上に並列に配設される。本実施の形態においては、駆動輪12が2つであるものとして説明する。この場合、各駆動輪12は個別の駆動モータ52によって独立して駆動される。なお、駆動アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、内燃機関等を使用することもできるが、ここでは、電気モータである駆動モータ52を使用するものとして説明する。
また、車体の一部である本体部11は、支持部13によって下方から支持され、駆動輪12の上方に位置する。そして、本体部11には、能動重量部として機能する搭乗部14が、車両10の前後方向に本体部11に対して相対的に並進可能となるように、換言すると、車体回転円の接線方向に相対的に移動可能となるように、取り付けられている。
ここで、能動重量部は、ある程度の質量を備え、本体部11に対して並進する、すなわち、前後に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正するものである。そして、能動重量部は、必ずしも搭乗部14である必要はなく、例えば、バッテリ等の重量のある周辺機器を並進可能に本体部11に対して取り付けた装置であってもよいし、ウェイト、錘(おもり)、バランサ等の専用の重量部材を並進可能に本体部11に対して取り付けた装置であってもよい。また、搭乗部14、重量のある周辺機器、専用の重量部材等を併用するものであってもよい。
本実施の形態においては、説明の都合上、乗員15が搭乗した状態の搭乗部14が能動重量部として機能する例について説明するが、搭乗部14には必ずしも乗員15が搭乗している必要はなく、例えば、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、搭乗部14に乗員15が搭乗していなくてもよいし、乗員15に代えて、貨物が積載されていてもよい。
前記搭乗部14は、乗用車、バス等の自動車に使用されるシートと同様のものであり、座面部14a、背もたれ部14b及びヘッドレスト14cを備え、図示されない移動機構を介して本体部11に取り付けられている。
前記移動機構は、リニアガイド装置等の低抵抗の直線移動機構、及び、能動重量部アクチュエータとしての能動重量部モータ62を備え、該能動重量部モータ62によって搭乗部14を駆動し、本体部11に対して進行方向に前後させるようになっている。なお、能動重量部アクチュエータとしては、例えば、油圧モータ、リニアモータ等を使用することもできるが、ここでは、回転式の電気モータである能動重量部モータ62を使用するものとして説明する。
リニアガイド装置は、例えば、本体部11に取り付けられている案内レールと、搭乗部14に取り付けられ、案内レールに沿ってスライドするキャリッジと、案内レールとキャリッジとの間に介在するボール、コロ等の転動体とを備える。そして、案内レールには、その左右側面部に2本の軌道溝が長手方向に沿って直線状に形成されている。また、キャリッジの断面はコ字状に形成され、その対向する2つの側面部内側には、2本の軌道溝が、案内レールの軌道溝と各々対向するように形成されている。転動体は、軌道溝の間に組み込まれており、案内レールとキャリッジとの相対的直線運動に伴って軌道溝内を転動するようになっている。なお、キャリッジには、軌道溝の両端をつなぐ戻し通路が形成されており、転動体は軌道溝及び戻し通路を循環するようになっている。
また、リニアガイド装置は、該リニアガイド装置の動きを締結するブレーキ又はクラッチを備える。車両10が停車しているときのように搭乗部14の動作が不要であるときには、ブレーキによって案内レールにキャリッジを固定することで、本体部11と搭乗部14との相対的位置関係を保持する。そして、動作が必要であるときには、このブレーキを解除し、本体部11側の基準位置と搭乗部14側の基準位置との距離が所定値となるように制御される。
前記搭乗部14の脇(わき)には、目標走行状態取得装置としてのジョイスティック31を備える入力装置30が配設されている。乗員15は、ジョイスティック31を操作することによって、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するようになっている。なお、乗員15が操作して走行指令を入力することができる装置であれば、ジョイスティック31に代えて他の装置、例えば、ジョグダイヤル、タッチパネル、押しボタン等の装置を目標走行状態取得装置として使用することもできる。
なお、車両10がリモートコントロールによって操縦される場合には、前記ジョイスティック31に代えて、コントローラからの走行指令を有線又は無線で受信する受信装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。また、車両10があらかじめ決められた走行指令データに従って自動走行する場合には、前記ジョイスティック31に代えて、半導体メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に記憶された走行指令データを読み取るデータ読取り装置を目標走行状態取得装置として使用することができる。
また、車両10は、車両制御装置としての制御ECU(Electronic Control Unit)20を有し、該制御ECU20は、主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23を備える。前記制御ECU20並びに主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、CPU、MPU等の演算手段、磁気ディスク、半導体メモリ等の記憶手段、入出力インターフェイス等を備え、車両10の各部の動作を制御するコンピュータシステムであり、例えば、本体部11に配設されるが、支持部13や搭乗部14に配設されていてもよい。また、前記主制御ECU21、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23は、それぞれ、別個に構成されていてもよいし、一体に構成されていてもよい。
そして、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、駆動輪センサ51及び駆動モータ52とともに、駆動輪12の動作を制御する駆動輪制御システム50の一部として機能する。前記駆動輪センサ51は、レゾルバ、エンコーダ等から成り、駆動輪回転状態計測装置として機能し、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角及び/又は回転角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、該駆動輪制御ECU22は、受信した駆動トルク指令値に相当する入力電圧を駆動モータ52に供給する。そして、該駆動モータ52は、入力電圧に従って駆動輪12に駆動トルクを付与し、これにより、駆動アクチュエータとして機能する。
また、主制御ECU21は、能動重量部制御ECU23、能動重量部センサ61及び能動重量部モータ62とともに、能動重量部である搭乗部14の動作を制御する能動重量部制御システム60の一部として機能する。前記能動重量部センサ61は、エンコーダ等から成り、能動重量部移動状態計測装置として機能し、搭乗部14の移動状態を示す能動重量部位置及び/又は移動速度を検出し、主制御ECU21に送信する。また、該主制御ECU21は、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信し、該能動重量部制御ECU23は、受信した能動重量部推力指令値に相当する入力電圧を能動重量部モータ62に供給する。そして、該能動重量部モータ62は、入力電圧に従って搭乗部14を並進移動させる推力を搭乗部14に付与し、これにより、能動重量部アクチュエータとして機能する。
さらに、主制御ECU21は、駆動輪制御ECU22、能動重量部制御ECU23、車体傾斜センサ41、駆動モータ52及び能動重量部モータ62とともに、車体の姿勢を制御する車体制御システム40の一部として機能する。前記車体傾斜センサ41は、加速度センサ、ジャイロセンサ等から成り、車体傾斜状態計測装置として機能し、車体の傾斜状態を示す車体傾斜角及び/又は傾斜角速度を検出し、主制御ECU21に送信する。そして、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
なお、主制御ECU21には、入力装置30のジョイスティック31から走行指令が入力される。そして、該主制御ECU21は、駆動トルク指令値を駆動輪制御ECU22に送信し、能動重量部推力指令値を能動重量部制御ECU23に送信する。
また、前記制御ECU20は、車両10の走行状態及び車体姿勢の時間変化に基づいて路面勾配を推定する路面勾配推定手段として機能する。また、目標走行状態及び路面勾配に応じて目標とする車体姿勢、すなわち、車体傾斜状態及び/又は能動重量部移動状態を決定する目標車体姿勢決定手段として機能する。さらに、各センサによって取得した車両10の走行状態及び車体姿勢、並びに、目標走行状態、目標車体姿勢及び路面勾配に応じて各アクチュエータの出力を決定するアクチュエータ出力決定手段として機能する。さらに、車両10の前後方向の路面勾配を取得する路面勾配取得手段として機能する。さらに、路面勾配に応じて付加する駆動トルクを決定する登坂トルク決定手段として機能する。さらに、登坂トルクに応じて、車体の重心補正量を決定する重心補正量決定手段として機能する。
なお、各センサは、複数の状態量を取得するものであってもよい。例えば、車体傾斜センサ41として加速度センサとジャイロセンサとを併用し、両者の計測値から車体傾斜角と傾斜角速度とを決定するようにしてもよい。
次に、前記構成の車両10の動作について説明する。まず、走行及び姿勢制御処理の概要について説明する。
図3は本発明の第1の実施の形態における坂道上での車両の動作を示す概略図、図4は本発明の第1の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。なお、図3(a)は比較のための従来技術による動作例を示し、図3(b)は本実施の形態による動作を示している。
本実施の形態においては、搭乗部14が能動重量部として機能し、図3(b)に示されるように、並進させる、すなわち、前後に移動させることによって、車両10の重心位置を能動的に補正するようになっている。これにより、坂道で車両10を停止させるために、すなわち、該車両10が下り方向に移動しないように駆動輪12に駆動トルクを付与し、その反作用である反トルクが車体に作用しても、車体が下り方向に傾いてしまうことがない。また、坂道を走行する場合にも、車体が下り方向に傾いてしまうことがなく、安定して走行することができる。
これに対し、仮に、「背景技術」の項で説明した従来の車両のように、路面勾配に応じた重心位置補正を行わない場合、図3(a)に示されるように、坂道で車両10を停止させておくために駆動輪12に付与した駆動トルクの反作用、すなわち、反トルクが車体に作用するので、車体が下り方向に傾いてしまう。そして、坂道を走行する場合にも、安定した車体姿勢及び走行の制御を行うことができない。
そこで、本実施の形態においては、走行及び姿勢制御処理を実行することによって、路面勾配に関わらず、車両10は安定して停止及び走行することができるようになっている。
走行及び姿勢制御処理において、制御ECU20は、まず、状態量の取得処理を実行し(ステップS1)、各センサ、すなわち、駆動輪センサ51、車体傾斜センサ41及び能動重量部センサ61によって、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態を取得する。
次に、制御ECU20は、路面勾配の取得処理を実行し(ステップS2)、状態量の取得処理で取得した状態量、すなわち、駆動輪12の回転状態、車体の傾斜状態及び搭乗部14の移動状態と、各アクチュエータの出力値、すなわち、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力値とに基づき、オブザーバによって路面勾配を推定する。ここで、前記オブザーバは、力学的なモデルに基づいて、制御系の内部状態を観測する方法であり、ワイヤードロジック又はソフトロジックで構成される。
次に、制御ECU20は、目標走行状態の決定処理を実行し(ステップS3)、ジョイスティック31の操作量に基づいて、車両10の加速度の目標値、及び、駆動輪12の回転角速度の目標値を決定する。
次に、制御ECU20は、目標車体姿勢の決定処理を実行し(ステップS4)、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配と、目標走行状態の決定処理によって決定された車両10の加速度の目標値とに基づいて、車体姿勢の目標値、すなわち、車体傾斜角及び能動重量部位置の目標値を決定する。
最後に、制御ECU20は、アクチュエータ出力の決定処理を実行し(ステップS5)、状態量の取得処理によって取得された各状態量、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配、目標走行状態の決定処理によって決定された目標走行状態、及び、目標車体姿勢の決定処理によって決定された目標車体姿勢に基づいて、各アクチュエータの出力、すなわち、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力を決定する。
次に、走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。まず、状態量の取得処理について説明する。
図5は本発明の第1の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。
本実施の形態においては、状態量やパラメータを次のような記号によって表す。なお、図5には状態量やパラメータの一部が示されている。
θW :駆動輪回転角〔rad〕
θ1 :車体傾斜角(鉛直軸基準)〔rad〕
λS :能動重量部位置(車体中心点基準)〔m〕
τW :駆動トルク(2つの駆動輪の合計)〔Nm〕
S :能動重量部推力〔N〕
g:重力加速度〔m/s2
η:路面勾配〔rad〕
W :駆動輪質量(2つの駆動輪の合計)〔kg〕
W :駆動輪接地半径〔m〕
W :駆動輪慣性モーメント(2つの駆動輪の合計)〔kgm2
W :駆動輪回転に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
1 :車体質量(能動重量部を含む)〔kg〕
1 :車体重心距離(車軸から)〔m〕
1 :車体慣性モーメント(重心周り)〔kgm2
1 :車体傾斜に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
S :能動重量部質量〔kg〕
S :能動重量部重心距離(車軸から)〔m〕
S :能動重量部慣性モーメント(重心周り)〔kgm2
S :能動重量部並進に対する粘性減衰係数〔Nms/rad〕
Figure 2009083726
次に、路面勾配の取得処理について説明する。
図7は本発明の第1の実施の形態における路面勾配の取得処理の動作を示すフローチャートである。
路面勾配の取得処理において、主制御ECU21は、路面勾配ηを推定する(ステップS2−1)。この場合、状態量の取得処理で取得した各状態量と、前回(一つ前のステップ)の走行及び姿勢制御処理におけるアクチュエータ出力の決定処理で決定した各アクチュエータの出力とに基づき、次の式(1)により、路面勾配ηを推定する。
Figure 2009083726
このように、本実施の形態においては、駆動モータ52が出力する駆動トルクと、状態量としての駆動輪回転角加速度、車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度とに基づいて路面勾配を推定する。この場合、駆動輪12の回転状態を示す駆動輪回転角加速度だけでなく、車体の姿勢変化を示す車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度をも考慮している。すなわち、倒立振り子の姿勢制御を利用した、いわゆる倒立型車両に特有の要素である車体の姿勢変化を考慮している。
従来においては、駆動トルクと駆動輪回転角加速度とに基づいて路面勾配を推定するため、特に車体の姿勢が変化しているとき、路面勾配の推定値に大きな誤差が生じることがあった。しかし、本実施の形態においては、車体の姿勢変化を示す車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度をも考慮して路面勾配を推定するので、大きな誤差が生じることがなく、極めて高い精度で路面勾配を推定することができる。
一般的に、倒立型車両では、駆動輪と相対的に車体の重心が前後に移動するので、駆動輪が停止していても、車両の重心が前後に移動することがある。したがって、重心の加速度と駆動力、あるいは、駆動トルクとから路面勾配を高い精度で推定するためには、このような影響を考慮する必要がある。一般的な倒立型車両においては、車両全体に対する車体の重量比率が高いので、特に車両停止時には、このような影響が大きくなる。
なお、路面勾配の値にローパスフィルタをかけることによって、推定値の高周波成分を除去することもできる。この場合、推定に時間遅れが生じるが、高周波成分に起因する振動を抑制することができる。
本実施の形態においては、駆動力、慣性力及び路面勾配による重力成分を考慮しているが、駆動輪12の転がり抵抗や回転軸の摩擦による粘性抵抗、あるいは、車両10に作用する空気抵抗などを副次的な影響として考慮してもよい。
また、本実施の形態においては、駆動輪12の回転運動に関する線形モデルを使用しているが、より正確な非線形モデルを使用してもよいし、車体傾斜運動や能動重量部並進運動についてのモデルを使用してもよい。なお、非線形モデルについては、マップの形式で関数を適用することもできる。
さらに、計算の簡略化のために、車体姿勢の変化を考慮しなくてもよい。
次に、目標走行状態の決定処理について説明する。
図8は本発明の第1の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標走行状態の決定処理において、主制御ECU21は、まず、操縦操作量を取得する(ステップS3−1)。この場合、乗員15が、車両10の加速、減速、旋回、その場回転、停止、制動等の走行指令を入力するために操作したジョイスティック31の操作量を取得する。
続いて、主制御ECU21は、取得したジョイスティック31の操作量に基づいて、車両加速度の目標値を決定する(ステップS3−2)。例えば、ジョイスティック31の前後方向への操作量に比例した値を車両加速度の目標値とする。
続いて、主制御ECU21は、決定した車両加速度の目標値から、駆動輪回転角速度の目標値を算出する(ステップS3−3)。例えば、車両加速度の目標値を時間積分し、駆動輪接地半径RW で除した値を駆動輪回転角速度の目標値とする。
次に、目標車体姿勢の決定処理について説明する。
図9は本発明の第1の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフ、図10は本発明の第1の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。
目標車体姿勢の決定処理において、主制御ECU21は、まず、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する(ステップS4−1)。この場合、目標走行状態の決定処理によって決定された車両加速度の目標値と、路面勾配の取得処理によって取得された路面勾配ηとに基づき、次の式(2)及び(3)により、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
Figure 2009083726
Figure 2009083726
続いて、主制御ECU21は、残りの目標値を算出する(ステップS4−2)。すなわち、各目標値を時間微分又は時間積分することにより、駆動輪回転角、車体傾斜角速度及び能動重量部移動速度の目標値を算出する。
このように、本実施の形態においては、車両加速度に伴って車体に作用する慣性力及び駆動モータ反トルクだけでなく、路面勾配ηに応じた登坂トルクに伴って車体に作用する反トルクも考慮して、車体姿勢の目標値、すなわち、能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値を決定する。
このとき、車体に作用して車体を傾斜させようとするトルク、すなわち、車体傾斜トルクを重力の作用によって打ち消すように、車体の重心を移動させる。例えば、車両10が加速するとき及び坂を上るときには、搭乗部14を前方へ移動させ、あるいは、さらに車体を前方へ傾ける。また、車両10が減速するとき及び坂を下るときには、搭乗部14を後方へ移動させ、あるいは、さらに車体を後方へ傾ける。
本実施の形態においては、図9に示されるように、まず、車体を傾斜させずに搭乗部14を移動させ、該搭乗部14が能動重量部移動限界に達すると、車体の傾斜を開始させる。そのため、細かい加減速に対しては車体が前後に傾かないので、乗員15にとっての乗り心地が向上する。また、格別な急勾配でなければ、坂道の上でも車体が直立状態を維持するので、乗員15にとっての視界の確保が容易となる。さらに、格別な急勾配でなければ、坂道の上でも車体が大きく傾斜することがないので、車体の一部が路面に当接することが防止される。
なお、本実施の形態においては、能動重量部移動限界が前方と後方とで等しい場合を想定しているが、前方と後方とで異なる場合には、各々の限界に応じて、車体の傾斜の有無を切り替えるようにしてもよい。例えば、加速性能よりも制動性能を高く設定する場合、後方の能動重量部移動限界を前方よりも遠くに設定する必要がある。
また、本実施の形態においては、加速度が低いときや勾配が緩やかなときには、搭乗部14の移動だけで対応させているが、その車体傾斜トルクの一部又は全部を車体の傾斜で対応させてもよい。車体を傾斜させることにより、乗員15に作用する前後方向の力を軽減することができる。
さらに、本実施の形態においては、線形化した力学モデルに基づいた式を使用しているが、より正確な非線形モデルや粘性抵抗を考慮したモデルに基づいた式を使用してもよい。なお、式が非線形になる場合には、マップの形式で関数を適用することもできる。
次に、アクチュエータ出力の決定処理について説明する。
図11は本発明の第1の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。
アクチュエータ出力の決定処理において、主制御ECU21は、まず、各アクチュエータのフィードフォワード出力を決定する(ステップS5−1)。この場合、各目標値と路面勾配ηとから、後述の式(4)により駆動モータ52のフィードフォワード出力を決定し、また、同じく後述の式(5)により能動重量部モータ62のフィードフォワード出力を決定する。
Figure 2009083726
このように、路面勾配ηに応じた登坂トルクを自動的に付加することにより、つまり、路面勾配ηに応じて駆動トルクを補正することにより、坂道であっても、平地と同様の操縦感覚を提供することができる。すなわち、坂道で停止した後、乗員15がジョイスティック31から手を放しても、車両10は動くことがない。また、坂道の上であっても、ジョイスティック31の一定の操縦操作に対して、平地と同様の加減速を行うことができる。
Figure 2009083726
このように、本実施の形態においては、理論的にフィードフォワード出力を与えることによって、より高精度な制御を実現する。
なお、必要に応じて、フィードフォワード出力を省略することもできる。この場合、フィードバック制御により、定常偏差を伴いつつ、フィードフォワード出力に近い値が間接的に与えられる。また、前記定常偏差は、積分ゲインを適用することによって低減させることができる。
続いて、主制御ECU21は、各アクチュエータのフィードバック出力を決定する(ステップS5−2)。この場合、各目標値と実際の状態量との偏差から、後述の式(6)により駆動モータ52のフィードバック出力を決定し、また、同じく後述の式(7)により能動重量部モータ62のフィードバック出力を決定する。
Figure 2009083726
なお、スライディングモード制御等の非線形のフィードバック制御を導入することもできる。また、より簡単な制御として、KW2、KW3及びKS5を除くフィードバックゲインのいくつかをゼロとしてもよい。さらに、定常偏差をなくすために、積分ゲインを導入してもよい。
最後に、主制御ECU21は、各要素制御システムに指令値を与える(ステップS5−3)。この場合、主制御ECU21は、前述のように決定したフィードフォワード出力とフィードバック出力との和を駆動トルク指令値及び能動重量部推力指令値として、駆動輪制御ECU22及び能動重量部制御ECU23に送信する。
このように、本実施の形態においては、路面勾配ηをオブザーバによって推定し、登坂トルクを与えるとともに、搭乗部14を上り側に移動させる。そのため、坂道で車体を直立に保持することができ、急勾配にも対応することができる。また、路面勾配ηを計測する装置が不要となり、構造を簡素化してコストを低減することができる。
さらに、車体の姿勢を示す車体傾斜角θ1 及び能動重量部位置λS をも考慮して路面勾配ηを推定するので、大きな誤差が生じることなく、極めて高い精度で路面勾配ηを推定することができる。
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
図12は本発明の第2の実施の形態における路面勾配の取得処理の動作を示すフローチャートである。
前記第1の実施の形態において、坂道上で停止又は走行するとき、常に、駆動モータ52が出力する駆動トルクと、状態量としての駆動輪回転角加速度、車体傾斜角加速度及び能動重量部移動加速度とに基づいて路面勾配ηを遂次推定し、その値を更新する。このとき、主として次の(ア)〜(ウ)の原因により、路面勾配ηの推定値が変動する。そして、走行及び姿勢制御処理において、路面勾配ηの推定値に基づいて駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力が決定されるので、路面勾配ηの推定値が変動すると、駆動モータ52及び能動重量部モータ62の出力も変動し、車体が振動してしまうことがある。
(ア)各センサによってセンシングされた各状態量(駆動輪回転角θW 、車体傾斜角θ1 、能動重量部位置λS 等)に含まれるノイズ
(イ)加速度の後退差分計算による時間遅れ
(ウ)乾性摩擦の影響(特に、静摩擦と動摩擦との相違)
各状態量のノイズはローパスフィルタをかけることによって解決することができるが、該ローパスフィルタをかけると、推定時間の遅れを伴うので、走行状態においては、路面勾配ηの変化への対応が遅れることになる。
また、車両10がほぼ停止状態にあるときには、乾性摩擦の静摩擦と動摩擦との相違により推定値に変動が生じ、これに加速度計算の時間遅れが影響すると、断続的な振動(スティックスリップ現象)が発生する。
前記(ア)の影響は停止状態に限るものではないが、前記(イ)及び(ウ)との相乗作用の影響が大きいこと、並びに、人の感受性は走行状態の振動よりも停止状態の振動に対してより敏感であることから、本実施の形態においては、車両10の停止状態を対象として、路面勾配ηの推定値を変えず、その固定値に基づいて制御を行う。
しかし、車両10はいわゆる倒立型車両であり、駆動輪12に対して車体等が相対的に移動するので、駆動輪12の回転運動のみに基づいて車両10の停止状態を判別することは、困難である。例えば、停止状態において駆動輪12と搭乗部14とを微小に動かしながら姿勢のバランスを保っているときに、駆動輪12の回転運動のみに基づく車両10の停止状態判別条件を用いると、停止状態でないと判別する可能性がある。
また、駆動輪12の微少な回転運動を伴いながら姿勢制御を行っているときに、停止状態と走行状態との間における双方向の状態遷移を1つの閾値に基づいて判別すると、チャタリングのように、両状態間の遷移を繰り返す可能性がある。このような現象は、各状態に対して制御方法及びパラメータを変更した場合に発生したり、各センサによってセンシングされた各状態量のノイズに起因して発生したりする。その結果、車体が振動したりして、車両10の乗り心地が悪化する。
そこで、本実施の形態においては、車両10の重心移動速度について2つの異なる閾値を設定し、この2つの異なる閾値に基づいて、車両10が停止状態にあるか走行状態にあるかを判別する。より厳密には、停止状態から走行状態への遷移を判別するための閾値を、走行状態から停止状態への遷移を判別するための閾値よりも高く設定することにより、状態の遷移を不適切に判別することを防止する。
そして、車両10が停止状態にあるときには、路面勾配ηの推定値を変えないようにする。車両10が停止しているならば路面勾配ηは不変であるから、その推定値を固定して不変とすることは妥当である。
これにより、坂道であっても、路面勾配ηに関わらず安定した停止状態を維持することができ、車両10の乗り心地が良好となる。
なお、本実施の形態における車両10の構成については、前記第1の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。
次に、本実施の形態における走行及び姿勢制御処理の詳細について説明する。なお、状態量の取得処理、目標走行状態の決定処理、目標車体姿勢の決定処理及びアクチュエータ出力の決定処理については、前記第1の実施の形態と同様であるので、説明を省略し、路面勾配の取得処理についてのみ説明する。
路面勾配の取得処理において、主制御ECU21は、まず、車両状態判別処理を実行する(ステップS2−11)。該車両状態判別処理においては、車両10の重心移動速度を計算し、算出された重心移動速度に基づいて、車両10が停止状態にあるか走行状態にあるかを判別する。
続いて、主制御ECU21は、車両状態判別処理の結果にに基づいて、車両10が走行状態にあるか停止状態にあるかを判断する(ステップS2−12)。そして、主制御ECU21は、車両10が走行状態にある場合のみ、路面勾配ηを推定する(ステップS2−13)。
この場合、前記第1の実施の形態における路面勾配の取得処理と同様にして路面勾配ηを推定し、その推定値を更新する。
つまり、主制御ECU21は、車両10が走行状態にあるか停止状態にあるかを判断して、走行状態にある場合には、路面勾配ηを推定し、その値を路面勾配ηの推定値として更新する。また、車両10が停止状態にある場合には、前回の走行及び姿勢制御処理の制御ステップにおける路面勾配ηの推定値をそのまま使用する。
次に、車両状態判別処理について説明する。
図13は本発明の第2の実施の形態における停止状態及び走行状態での車両の重心移動速度の変化を示すグラフ、図14は本発明の第2の実施の形態における車両状態判別処理の動作を示すフローチャートである。
Figure 2009083726
なお、ローパスフィルタをかけることによって、車両重心速度VG の計算値の高周波成分を除去することもできる。車両重心速度VG の値は、車両10が動いているか否かを判断するためにだけ使用されるので、ローパスフィルタをかけても、制御系に対する時間遅れの影響は発生しない。
また、車両重心速度VG の計算の簡略化のために、車体姿勢の変化を考慮しなくてもよい。
次に、車両10の状態が停止状態であるか走行状態であるかを、以下の処理によって判別する。この各々の遷移方向に対して異なる値の閾値が設定されている。すなわち、車両10が停止状態から走行状態に遷移したか否かを判別するための閾値としての走行遷移閾値VG1、及び、車両10が走行状態から停止状態に遷移したか否かを判別するための閾値としての停止遷移閾値VG2が設定され、かつ、図13に示されるように、走行遷移閾値VG1が停止遷移閾値VG2より大きくなるように設定されている。
まず、主制御ECU21は、車両10は停止状態だったか否か、すなわち、前回(1つ前の時間ステップ)の判別結果が停止状態だったか否かを判断する(ステップS2−11−2)。そして、停止状態だった場合、主制御ECU21は、車両重心速度VG の絶対値が走行遷移閾値VG1より大きいか否かを判断する(ステップS2−11−3)。
ここで、車両重心速度VG の絶対値が走行遷移閾値VG1より大きい場合、主制御ECU21は、車両10は走行状態にあると判断する(ステップS2−11−4)。つまり、前回は車両10が停止状態にあって、今回は車両重心速度VG の絶対値が走行遷移閾値VG1より大きい場合には、車両10が停止状態から走行状態に遷移したと判別される。
また、車両重心速度VG の絶対値が走行遷移閾値VG1より大きくない場合、すなわち、車両重心速度VG の絶対値が走行遷移閾値VG1以下である場合、主制御ECU21は、車両10は停止状態にあると判断する(ステップS2−11−5)。つまり、前回は車両10が停止状態にあって、今回は車両重心速度VG の絶対値が走行遷移閾値VG1以下である場合には、車両10が引き続き停止状態にあると判別される。
一方、車両10は停止状態だったか否かを判断して、停止状態でなかった、すなわち、走行状態だった場合、主制御ECU21は、車両重心速度VG の絶対値が停止遷移閾値VG2未満であるか否かを判断する(ステップS2−11−6)。
ここで、車両重心速度VG の絶対値が停止遷移閾値VG2未満である場合、主制御ECU21は、車両10は停止状態にあると判断する(ステップS2−11−7)。つまり、前回は車両10が走行状態にあって、今回は車両重心速度VG の絶対値が停止遷移閾値VG2未満である場合には、車両10が走行状態から停止状態に遷移したと判別される。
また、車両重心速度VG の絶対値が停止遷移閾値VG2未満でない場合、すなわち、車両重心速度VG の絶対値が停止遷移閾値VG2以上である場合、主制御ECU21は、車両10は走行状態にあると判断する(ステップS2−11−8)。つまり、前回は車両10が走行状態にあって、今回は車両重心速度VG の絶対値が停止遷移閾値VG2以上である場合には、車両10が引き続き走行状態にあると判別される。
これにより、図13に示されるように、車両重心速度VG の値がゼロ近傍の微小な数値範囲で変動した際にも、安定した判定結果を得ることができ、停止状態と走行状態との間の遷移を短い周期で繰り返す現象、すなわち、チャタリングの発生を防止することができる。
このように、本実施の形態においては、車両10の重心移動速度について2つの異なる閾値、すなわち、走行遷移閾値VG1及び停止遷移閾値VG2を設定し、前記走行遷移閾値VG1及び停止遷移閾値VG2に基づいて、車両10が停止状態にあるか走行状態にあるかを判別する。そして、車両10が停止状態にあるときには路面勾配ηの推定値を固定して変更しない。
これにより、車両重心速度VG の値が極めて低く、停止状態にあるときに、路面勾配ηの推定値の変動に起因する車体の振動を防止することができる。そのため、坂道であっても、路面勾配ηに関わらず安定した停止状態を維持することができ、乗り心地が良好になる。
また、停止状態から車両重心速度VG の絶対値が、大きい方の閾値である走行遷移閾値VG1より大きくなると、車両10が走行状態に遷移したと判別し、走行状態から車両重心速度VG の絶対値が、小さい方の閾値である停止遷移閾値VG2未満になると、停止状態に遷移したと判別する。そのため、車両重心速度VG の値がゼロ近傍の微小な数値範囲で変動することに起因する、チャタリングの発生を防ぐことができる。
なお、本実施の形態においては、車両10の重心移動速度に基づいて車両10の停止状態を判断しているが、車両10の重心移動加速度に基づいて判断してもよい。
Figure 2009083726
さらに、駆動輪回転角θW (所定の時間内における移動量)に基づいて判断してもよい。
また、本実施の形態においては、車両10が動いていると再び判断した場合に、路面勾配ηの推定値変化が不連続になる可能性があるが、これをローパスフィルタによって滑らかに遷移させてもよい。これにより、路面勾配ηの推定値の不連続性に伴う車両運動や車体姿勢のショックを緩和することができる。
さらに、本実施の形態においては、2つの異なる閾値を使用して車両10の状態を判別する例について説明したが、他の判定条件を加えて車両10の状態を判別してもよい。例えば、本実施の形態における状態遷移の条件を満足していても、前回の状態遷移時から所定の時間以内ならば、遷移をしていないと判定してもよい。
さらに、本実施の形態においては、車両10の状態の判別方法を坂道で停止している際の路面勾配ηの推定に適用した例について説明したが、他の制御に適用することもできる。例えば、制動灯の点灯の制御に適用し、走行状態にあって車両10の減速度が閾値を超えた場合にのみ、制動灯を点灯させるようにして、停止状態における制動灯の点滅を防止することができる。
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
本発明の第1の実施の形態における車両の構成を示す概略図であり乗員が搭乗した状態で前進している状態を示す図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の制御システムの構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における坂道上での車両の動作を示す概略図である。 本発明の第1の実施の形態における車両の走行及び姿勢制御処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における車両の力学モデル及びそのパラメータを示す図である。 本発明の第1の実施の形態における状態量の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における路面勾配の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における目標走行状態の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態における能動重量部位置の目標値及び車体傾斜角の目標値の変化を示すグラフである。 本発明の第1の実施の形態における目標車体姿勢の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第1の実施の形態におけるアクチュエータ出力の決定処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における路面勾配の取得処理の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における停止状態及び走行状態での車両の重心移動速度の変化を示すグラフである。 本発明の第2の実施の形態における車両状態判別処理の動作を示すフローチャートである。
符号の説明
10 車両
12 駆動輪
20 制御ECU

Claims (3)

  1. 回転可能に車体に取り付けられた駆動輪と、
    該駆動輪に付与する駆動トルクを制御して前記車体の姿勢を制御する車両制御装置とを有し、
    該車両制御装置は、
    前記車体の姿勢に基づいて路面勾配を推定し、
    車両の重心移動速度の絶対値について設定された2つの異なる閾値に基づいて停止状態にあるか否かを判別し、
    停止状態にあるときには前記路面勾配の推定値を固定する
    ことを特徴とする車両。
  2. 前記閾値は、停止状態から走行状態に遷移したか否かを判別するための走行遷移閾値、及び、走行状態から停止状態に遷移したか否かを判別するための停止遷移閾値であり、前記走行遷移閾値は停止遷移閾値より大きい請求項1に記載の車両。
  3. 前記車両制御装置は、停止状態から車両の重心移動速度の絶対値が前記走行遷移閾値より大きくなると、走行状態に遷移したと判別し、走行状態から車両の重心移動速度の絶対値が前記停止遷移閾値未満になると、停止状態に遷移したと判別する請求項2に記載の車両。
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